説明

炉内加熱ヒータ用碍子およびそれを用いた炉内加熱ヒータ

【課題】加熱線の各二重線部における折返し先端部での短絡を良好に防止する。
【解決手段】炉内加熱ヒータ1は、折返し先端部11aおよび二重線部11bを有する加熱線11を複数セット備える。各加熱線11の先端側には炉内加熱ヒータ用碍子12が配置される。碍子12は、各二重線部11bを1本ずつ通す線挿通孔のセットSを複数有するベース板部12aを備える。ベース板部12aは、基準線Lを中心として放射状に突出し、隣り合う折返し先端部11a同士が短絡しないように線挿通孔のセットSをセット毎に仕切る第1仕切り壁12cと、それら第1仕切り壁12cの突出端を円筒状に繋ぎ、折返し先端部11aのいずれもが保護管31(保護カバー)の内周面と短絡しないように線挿通孔12a1の全てと保護管31の内周面とを仕切る第2仕切り壁12dとを一体に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内加熱ヒータ用碍子およびそれを用いた炉内加熱ヒータに関し、特に加熱線の先端側に配置される碍子、およびその碍子を用いた炉内加熱ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の炉内加熱ヒータ用碍子として通常、複数積み重ねた絶縁支持碍子の孔に複数の発熱線を差し込んだ構造や、発熱線を例えば下記特許文献1に記載されているように、加熱線を螺旋状に巻いて形成した発熱コイル内に配置されるものが知られている。この特許文献1では、碍子の基部に板状の第1短絡防止体が複数設けられ、各第1短絡防止体の先端に板状の第2短絡防止体が設けられている。そして、碍子が発熱コイルのピッチ間を回転しつつ移動できるように、各第1短絡防止体の取り付け位置や形状が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−162943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたような加熱線が螺旋状に巻かれた形態以外にも、加熱線が基端から先端に向かって延び、先端側で折り返されて再び基端側に戻る形態とされ、そのような折返し形態からなる二重線部が複数セット設けられるものがある。通常、後者の形態の加熱線によると、前者の形態の加熱線に比べて有効発熱部の長さを長く設定できるので、より大きな出力(発熱量)を得ることが可能である。この場合、後者の形態の加熱線においては、各セットの二重線部同士、および隣り合う各二重線部のセット同士の短絡を防止するために、碍子が加熱線の基端から先端にかけて二重線部の各加熱線を単独で通過させるように複数配置されることが多い。
【0005】
ところが、例えば図21に示すように、碍子130が複数配置される後者の形態では、加熱線110が通電による発熱で線膨張し、各二重線部110bにおける折返し先端部110a(ループ部分)が広がるように熱変形することがある。このため、隣り合う折返し先端部110a同士が接触することで、加熱線110が短絡し、断線してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、上記した後者の形態の加熱線が通電による発熱で線膨張しても、加熱線の各二重線部における折返し先端部での短絡を良好に防止し得る炉内加熱ヒータ用碍子およびその碍子を用いた炉内加熱ヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、基端から先端に向かって延び、先端側で折り返されて再び基端側に戻る加熱線の折返し形態からなる二重線部が複数セットあり、各セットの二重線部同士、および隣り合う各二重線部のセット同士の短絡を防止するために、加熱線の基端から先端にかけて二重線部の各加熱線を単独で通過させるように複数配置される炉内加熱ヒータ用碍子であって、それら複数の炉内加熱ヒータ用碍子のうち、先端部に配置される碍子は、各セットの二重線部を1本ずつ通す線挿通孔のセットを、基準線の周りに所定の角度間隔で有するベース板部を備えており、そのベース板部の、加熱線の各二重線部における折返し先端部側には、基準線を中心として放射状に突出し、隣り合う折返し先端部同士が短絡しないように線挿通孔のセットをセット毎に仕切る第1仕切り壁と、それら第1仕切り壁の突出端を筒状に繋ぎ、折返し先端部のいずれもが該ベース板部の外周上を基準線から離れる向きに超えないように仕切る第2仕切り壁とが一体に形成されていることを特徴とする。
【0008】
この炉内加熱ヒータ用碍子を用いると、複数のセットの二重線部の任意の1セットが、第1仕切り壁の隣り合うもの同士の間に位置し、その第1仕切り壁の近傍で折り返されるようになる。つまり、ベース板部の「行き方向」の線挿通孔から先端側に出た線部分は、隣り合う第1仕切り壁の近傍で折り返され、ベース板部の「帰り方向」の線挿通孔を通過して基端側へ戻る。これらの第1仕切り壁によって、複数セットの二重線部同士がベース板部の線挿通孔より先端側に延び出た部分で接触すること(短絡)が防止される。つまり、通電による発熱で各二重線部の折返し先端部のループが広がるように熱変形しても、第1仕切り壁があるから、それに当たってそれ以上、隣の二重線部側へ寄ることが阻止され、短絡が防止される。
【0009】
また、上記課題を解決するために本発明は、基端から先端に向かって延び、先端側で折り返されて再び基端側に戻る加熱線の折返し形態からなる二重線部が複数セットあり、各セットの二重線部同士、および隣り合う各二重線部のセット同士の短絡を防止するために、加熱線の基端から先端にかけて二重線部の各加熱線を単独で通過させるように複数配置される炉内加熱ヒータ用碍子を備え、それら炉内加熱ヒータ用碍子の隣り合うもの同士が相互に連結可能とされ、連結状態にあるそれら複数の炉内加熱ヒータ用碍子が装着された碍子付き加熱線のアッセンブリの外側に、筒状の金属製の保護カバーが装着されてなる炉内加熱ヒータであって、それら複数の炉内加熱ヒータ用碍子のうち、先端部に配置される碍子は、各セットの二重線部を1本ずつ通す線挿通孔のセットを、基準線の周りに所定の角度間隔で有するベース板部を備えており、そのベース板部の、加熱線の各二重線部における折返し先端部側には、基準線を中心として放射状に突出し、隣り合う折返し先端部同士が短絡しないように線挿通孔のセットをセット毎に仕切る第1仕切り壁と、それら第1仕切り壁の突出端を筒状に繋ぎ、折返し先端部のいずれもが保護カバーの内周面と短絡しないように線挿通孔の全てと該保護カバーの内周面とを仕切る第2仕切り壁とが一体に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の炉内加熱ヒータを用いると、通電による発熱で各二重線の折返し先端部が中心の基準線から離れる向きに反り返るように熱変形しても、筒状の第2仕切り壁が存在するため、反り返るように熱変形する折返し先端部が、この筒状の第2仕切り壁に当たることで、保護カバーの内周面に接触すること(短絡)が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る炉内加熱ヒータ用碍子およびそれを用いた炉内加熱ヒータを適用した加熱炉を概略的に示す説明図。
【図2】図1に示した炉内加熱ヒータの主要部を構成するヒータ本体(碍子付き加熱線)のアッセンブリの斜視図。
【図3】図2に示した加熱線の斜視図。
【図4】図2に示した各碍子の斜視図。
【図5】図2に示した碍子12,13の連結状態を示す斜視図。
【図6】図2の部分拡大図。
【図7】(a)は図2に示した加熱線とヒータ端子とを接続する前の、加熱線同士の結線状態を示す斜視図。(b)は(a)の正面図。
【図8】図7の加熱線に碍子14を組み付けた状態(差し込んだ状態)を示す斜視図。
【図9】図8の加熱線に碍子15を組み付けた状態(差し込んだ状態)を示す斜視図。
【図10】(a)は図2に示したヒータ端子の斜視図。(b)は碍子16,17等が介装された(a)のヒータ端子と図9の加熱線とを接続した状態を示す斜視図。
【図11】図2に示したヒータ本体の外側に装着される保護管の斜視図。
【図12】図2に示したヒータ本体と図11に示した保護管とを組み付けた状態を示す平面断面図(保護管のみ破断)。
【図13】(a)は碍子12の平面図。(b)は(a)の縦断面図。(c)は(a)の底面図。(d)は(a)のA−A断面図。
【図14】(a)は碍子13の平面図。(b)は(a)の縦断面図。(c)は(a)の底面図。(d)は(a)のB−B断面図。
【図15】(a)は碍子14の平面図。(b)は(a)の縦断面図。(c)は(a)のC−C断面図。
【図16】(a)は碍子15の平面図。(b)は(a)の縦断面図。
【図17】(a)は碍子16の平面図。(b)は(a)の縦断面図。
【図18】(a)は碍子17の平面図。(b)は(a)の縦断面図。
【図19】加熱線の折返し先端部が発熱により線膨張した状態を示す説明図。
【図20】本発明の変形例に係る碍子12’の縦断面図。
【図21】従来の碍子を用いた場合において、加熱線の発熱による線膨張に起因して折返し先端部が断線した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1(a),1(b)は、本発明に係る炉内加熱ヒータ用碍子(以下、単に碍子という)12、およびその碍子12を用いた炉内加熱ヒータ1(加熱源)を適用した工業用熱処理設備としての加熱炉F1,F2を例示したものである。炉内加熱ヒータ1は、炉内の熱分布および熱処理効果の観点から、加熱炉F1のように垂直方向に複数設置される場合や、加熱炉F2のように水平方向に複数設置される場合がある。なお、本発明に係る碍子12および炉内加熱ヒータ1は、炉内への扉が一つである加熱炉に限らず、入口用と出口用の各扉が設けられている加熱炉(例えば、連続炉)に広く適用することができる。
【0014】
炉内加熱ヒータ1(図12参照)の主要部を構成するヒータ本体(碍子付き加熱線)のアッセンブリ10は、図2および図3に示すように、加熱線(ヒータ素線)11、碍子12〜17、およびヒータ端子21を備えている。
【0015】
加熱線11は、線状の金属製の電熱素材(例えば、ニクロム製の電熱素材)を基端から先端に向かって直線状に延び出させ、先端側でU字状に折り返して再び基端側に直線状に戻すような折返し形態を1セットとするものであり、折返し先端部11aと二重線部11bとを有している。このような形態の加熱線11が複数セット使用されて、全体で一つの発熱体を構成している。
【0016】
この実施例では、例えば6セットの加熱線11が使用されており、そのうち4セットの加熱線11Aは基端から先端までの全長(有効発熱部)がほぼ同じ長さに設定されている。残り2セットの加熱線11Bは、いずれも2本ある基端部の一方が他方に比べて所定長だけ長く設定されており、この長く設定された部位がヒータ端子21(図10参照)と溶接により接続されるリード部11c(溶接しろ)として機能するようになっている。
【0017】
碍子12〜15は、図2および図4に示すように、加熱線11の先端側から基端側(ヒータ端子21側)に向かってこの順に装着されている。また、碍子16,17は、ヒータ端子21の基端側(加熱線11側)から先端側に向かってこの順に装着されている。最初に、碍子13〜17について説明する。
【0018】
碍子13は、図4(b)および図14(a),14(d)に示すように、各セットの加熱線11における二重線部11bを1本ずつ通す線挿通孔のセットを、基準線Lの周りの所定の角度間隔で有する円板状のベース板部13aを備えている。この実施例では、6セットの加熱線11に対応して、12個の線挿通孔13a1が、所定のピッチ円Pに沿って角度θ(=30度)の等角度間隔で形成されている。
【0019】
ベース板部13aには、各加熱線11の折返し先端部11a側に突出する連結基部13bが設けられている(図14(b)参照)。連結基部13bは、基準線Lを中心軸線とする略円柱状(先端側が基端側に比べて若干量だけ先細りとなる形態)をなし、ベース板部13aの各線挿通孔13a1よりも径方向内側部位に一体形成されている。
【0020】
連結基部13bには、基準線Lを中心軸線とする円形かつ段付き状の挿通孔13b1が形成されている。挿通孔13b1は、補強のための芯棒や、温度検出のためのセンサを組み入れる等して適宜利用される。ベース板部13aには、挿通孔13b1に連通する正四角錐台状の凹部13a2が形成されている(図14(b),14(c)参照)。連結基部13bの先端には、ベース板部13aの凹部13a2における底辺および高さ寸法を若干量だけ小さくした正四角錐台状の凸部13b2が形成されている(図14(a),14(b)参照)。
【0021】
このように構成された碍子13は、図5に示すように、複数用いられ、任意の碍子13の凸部13b2が他の碍子13の凹部13a2に嵌合することで、複数の碍子13が基準線Lの方向に数珠繋ぎ状に連結される。この場合、凸部13b2および凹部13a2が正四角錐台状に形成されているので、各碍子13が連結された状態では、碍子13同士の基準線L回りの相対回転が防止されるようになっている。
【0022】
各碍子13の線挿通孔13a1には、図6に示すように、各加熱線11の二重線部11bが1本ずつ通り、各二重線部11bの基端部は、図7(a)に示すように、最も基端側に近い位置に配置される碍子13のベース板部13aから突出した状態となる。この状態で、一方の加熱線11Bのリード部11cと他方の加熱線11Bのリード部11cとが、図7(b)にて矢印で示すように、全加熱線11の二重線部11bを経由して直列に繋がるよう、所定の加熱線11A同士、所定の加熱線11Aと加熱線11Bとが、円柱状の結線部材19aで接続され、あるいは板状の結線部材19bで接続されている。
【0023】
碍子14は、図4(c)、図8および図15に示すように、碍子13から連結基部13bを取り除いて凹部13a2を円形の貫通孔14aに代えたものとほぼ同じ形状をなし、碍子13のベース基板部13aにおける線挿通孔13a1にそれぞれ対応する線挿通孔14bを有している。碍子14は、各加熱線11Bのリード部11cのみを挿通させ(図8参照)、線挿通孔14bの形成されていない板面にて結線部材19a,19bの端面と当接することにより、碍子13側への配置位置が規定されるようになっている。
【0024】
碍子15は、図4(d)、図9および図16に示すように、碍子14とほぼ同じ大きさの円板状をなし、各加熱線11Bのリード部11cのみを挿通させる線挿通孔15aを有していて、碍子14の板面に当接した状態で配置される。
【0025】
碍子16は、図4(e)、図10および図17に示すように、碍子15とほぼ同じ大きさの円板状をなし、各ヒータ端子21のみを挿通させる線挿通孔16aを有していて(図10参照)、各加熱線11Bのリード部11cにおける基端面に当接した状態で配置される。
【0026】
碍子17は、図4(f)、図10および図18に示すように、碍子14〜16に比べて直径、厚さともに大きな小径部17aと大径部17bを有する二段の円柱状をなし、各ヒータ端子21のみを挿通させる線挿通孔17cを有している。
【0027】
ヒータ端子21は、図10(a)に示すように、直線棒状の非発熱体であり、その一端にて電源(例えば、交流電源)側の端子と結線するための端子板部21aを備えている。ヒータ端子21には、図10(b)に示すように、端子板部21a側から加熱線11Bのリード部11c側に向けて碍子17、断熱部材18(例えば、複数の丸状ブランケット)、碍子16がこの順に挿通され、基端部が碍子15の板面に当接した状態で加熱線11Bのリード部11cに溶接により接続される。
【0028】
上記の碍子12〜17、断熱部材18およびヒータ端子21が装着されたヒータ本体のアッセンブリ10(図2参照)の外側には、図11に示すような、保護カバーとしての円筒状の金属製(例えば、ステンレス製)の保護管(ラジアントチューブ)31が装着される。保護管31は、先端部にて底部31aを備え、基端部にて加熱炉F1,F2のフランジ部(図1参照)に固定するためのフランジ部31bを備えている。
【0029】
この実施例では、例えば図12に示すように、上記碍子16を流用して、保護管31側の碍子として保護管31の底部31aに着座させた状態で、ヒータ本体のアッセンブリ10を保護管31内に組み込み、先端側に配置される碍子12をその碍子16に接触させることにより、アッセンブリ10の保護管31内での先端位置を規定するようにしている。
【0030】
ヒータ本体のアッセンブリ10が保護管31内に組み込まれた状態では、碍子12〜16の外側面と保護管31の内周面との間に所定長の隙間が形成され、また、碍子17の小径部17aにおける外側面と保護管31の内周面との間に極僅かの隙間が形成されるとともに、大径部17bが保護管31のフランジ部31bに着座するようになっている。
【0031】
そして、上記のように構成された炉内加熱ヒータ1では、電源(図示省略)からヒータ端子21への通電により、加熱線11が発熱し、発生した熱が保護管31を経て外部へ放射されることとなる。
【0032】
ところで、この実施例では、加熱線11の先端側に配置される碍子12が、図4(a)、図12および図13に示すように、碍子13に共通する形状と、共通しない形状との両形状を具備するように構成されている。具体的には、図13に示すように、各セットの加熱線11における二重線部11bを1本ずつ通す線挿通孔のセットS(2個の線挿通孔12a1で1セット)を、基準線Lの周りの所定の角度間隔で有する円板状のベース板部12aを備え、かつ各加熱線11の折返し先端部11a側に突出する連結基部12bを備える点において共通している。
【0033】
また、連結基部12bは、碍子13の連結基部13bと同様、基準線Lを中心軸線とする略円柱状をなし、ベース板部12aの各線挿通孔12a1よりも径方向内側部位に一体形成されている。連結基部12bには、基準線Lを中心軸線とする円形かつ段付き状の挿通孔12b1が形成されており、ベース板部12aには、挿通孔12b1に連通する正四角錐台状の凹部12a2が形成されている。凹部12a2は、碍子13に形成された凹部13a2とほぼ同じ大きさに形成されており、基端側に配置される碍子13の凸部13b2と嵌まり合って連結状態となる。
【0034】
これに対して、ベース板部12aの各加熱線11の折返し先端部11a側には、第1仕切り壁12cと第2仕切り壁12dとが一体に形成されている点において、このような仕切り壁のない碍子13と異なっている。また、碍子12の連結基部12bには、連結のための凸部が省略されている点において、連結基部13bに凸部13b2が形成されている碍子13と異なっている。
【0035】
第1仕切り壁12cは、図13(b)の図示下端にてベース板部12aに、内側端にて連結基部12bに接続され、基準線Lを中心として放射状(径方向外向き)に突出し、加熱線11の隣り合う折返し先端部11a同士が短絡しないようにベース板部12aの線挿通孔のセットSをセット毎に仕切っている。
【0036】
第2仕切り壁12dは、各第1仕切り壁12cの突出端を円筒状に繋ぎ、加熱線11の折返し先端部11aのいずれもがベース板部12aの外周上を基準線Lから離れる向きに超えないように仕切っている。つまり、第2仕切り壁12dは、加熱線11の折返し先端部11aのいずれもが保護管31の内周面と短絡しないようにベース板部12aの線挿通孔12a1の全てと保護管31の内周面とを仕切っている。
【0037】
第1仕切り壁12cと第2仕切り壁12dは、ベース板部12aの板面からの高さ寸法が同じ長さに設定されている。この高さ寸法は、加熱線11の発熱時に折返し先端部11aが基準線Lの方向に向かって最大に線膨張した場合でも超えることのない長さ、すなわち加熱線11の線径が例えば5〜10mmであり、加熱線11の有効発熱部の長さが例えば1000〜1500mmであって、ベース板部12aの直径が70〜80mmであるとき、例えば15〜30mm程度となるように設定されている。
【0038】
上記のように構成された碍子12を加熱線11の先端側に配置すると、図19にて破線で示すように、複数のセットの二重線部11bの任意の1セットが、第1仕切り壁12cの隣り合うもの同士の間に位置し、その第1仕切り壁12cの近傍で折り返されるようになる。つまり、碍子12のベース板部12aにおける「行き方向」の線挿通孔12a1から先端側に出た線部分は、隣り合う第1仕切り壁12cの近傍で折り返され、ベース板部12aの「帰り方向」の線挿通孔12a1を通過して基端側へ戻る。
【0039】
これらの第1仕切り壁12cによって、複数セットの二重線部11b同士がベース板部12aの線挿通孔12a1より先端側に延び出た部分で接触すること(短絡)が防止される。つまり、通電による発熱で各加熱線11の二重線部11bが異なる態様で線膨張し、あるいは折返し先端部11aのループが広がるように熱変形しようとしても、第1仕切り壁12cがあるから、それに当たってそれ以上、隣の折返し先端部11a側へ寄ることが阻止され、最終的には、図19にて二点鎖線で示すように、折返し先端部11aが基準線Lの方向に延び出すようになって、折返し先端部11a同士の短絡が防止される。
【0040】
また、上記のように構成された炉内加熱ヒータ1を用いると、通電による発熱で各加熱線11の二重線部11bにおける折返し先端部11aが基準線Lから離れる向きに反り返るように熱変形しようとしても、第2仕切り壁12dがあるから、それに当たってそれ以上、保護管31の内周面側へ寄ることが阻止され、最終的には、図19にて二点鎖線で示すように、折返し先端部11aが基準線Lの方向に延び出すようになって、保護管31の内周面に接触すること(短絡)が防止される。
【0041】
(変形例)
碍子12は、その先端側において他の碍子13等と連結されることがなく、単に保護管31側の碍子16等と接触できる形状であればよいので、上記実施例では、連結基端部12bの先端に凸部を設けないように構成したが、碍子13を成形するための型を利用して、碍子12を成形することも可能である。したがって、この場合には、例えば図20に示すように、碍子12’の連結基端部12bの先端に碍子13とほぼ同じ形状の凸部12b2が形成されるようになるが、このような碍子12’を用いて炉内加熱ヒータを構成してもよい。なお、図20において、凸部12b2以外の構成は碍子12と同じであるため、碍子12と同じ機能を果たす部位には同一の符号を付して説明は省略する。
【0042】
上記実施例等においては、碍子12もしくは碍子12’と碍子13、または碍子13同士が四角錐台状の凹部12a2と凸部13b2との嵌合により、または凹部13a2と凸部13b2との嵌合により、基準線L回りの相互の相対回転が防止される構成とした。ただし、凹部、凸部は四角錐台状に限らず、例えば半月状であってもよい。
【0043】
また、碍子12もしくは碍子12’のベース板部12aは、円板形状に限らず、例えば正多角形状に形成してもよい。また、これに対応して保護管31を、例えば正多角形の筒状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
F1,F2 加熱炉
1 炉内加熱ヒータ
10 ヒータ本体(碍子付き加熱線)のアッセンブリ
11,11A,11B 加熱線
11a 折返し先端部
11b 二重線部
11c リード部
12〜17 碍子
12a ベース板部
12a1 線挿通孔
12a2 凹部
12b 連結基部
12b1 挿通孔
12c 第1仕切り壁
12d 第2仕切り壁
21 ヒータ端子
31 保護管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端から先端に向かって延び、先端側で折り返されて再び基端側に戻る加熱線の折返し形態からなる二重線部が複数セットあり、各セットの二重線部同士、および隣り合う各二重線部のセット同士の短絡を防止するために、前記加熱線の基端から先端にかけて前記二重線部の各加熱線を単独で通過させるように複数配置される炉内加熱ヒータ用碍子であって、
それら複数の炉内加熱ヒータ用碍子のうち、先端部に配置される碍子は、前記各セットの二重線部を1本ずつ通す線挿通孔のセットを、基準線の周りに所定の角度間隔で有するベース板部を備えており、
そのベース板部の、前記加熱線の各二重線部における折返し先端部側には、前記基準線を中心として放射状に突出し、隣り合う折返し先端部同士が短絡しないように前記線挿通孔のセットをセット毎に仕切る第1仕切り壁と、それら第1仕切り壁の突出端を筒状に繋ぎ、前記折返し先端部のいずれもが該ベース板部の外周上を前記基準線から離れる向きに超えないように仕切る第2仕切り壁とが一体に形成されていることを特徴とする炉内加熱ヒータ用碍子。
【請求項2】
基端から先端に向かって延び、先端側で折り返されて再び基端側に戻る加熱線の折返し形態からなる二重線部が複数セットあり、各セットの二重線部同士、および隣り合う各二重線部のセット同士の短絡を防止するために、前記加熱線の基端から先端にかけて前記二重線部の各加熱線を単独で通過させるように複数配置される炉内加熱ヒータ用碍子を備え、
それら炉内加熱ヒータ用碍子の隣り合うもの同士が相互に連結可能とされ、連結状態にあるそれら複数の炉内加熱ヒータ用碍子が装着された碍子付き加熱線のアッセンブリの外側に、筒状の金属製の保護カバーが装着されてなる炉内加熱ヒータであって、
それら複数の炉内加熱ヒータ用碍子のうち、先端部に配置される碍子は、前記各セットの二重線部を1本ずつ通す線挿通孔のセットを、基準線の周りに所定の角度間隔で有するベース板部を備えており、
そのベース板部の、前記加熱線の各二重線部における折返し先端部側には、前記基準線を中心として放射状に突出し、隣り合う折返し先端部同士が短絡しないように前記線挿通孔のセットをセット毎に仕切る第1仕切り壁と、それら第1仕切り壁の突出端を筒状に繋ぎ、前記折返し先端部のいずれもが前記保護カバーの内周面と短絡しないように前記線挿通孔の全てと該保護カバーの内周面とを仕切る第2仕切り壁とが一体に形成されていることを特徴とする炉内加熱ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−29028(P2011−29028A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174450(P2009−174450)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【特許番号】特許第4402743号(P4402743)
【特許公報発行日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(596174341)ミクニ機工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】