説明

炉内観察装置および炉内観察方法

【課題】炉壁が輻射光で発光している場合であっても、コントラストが高く、且つ、レーザー光の反射光の画像情報だけでなく、輻射光の一部の画像情報も合わせた画像を取得することができるとともに、炉壁の凹凸や亀裂の影を判別し易くすることができる炉内観察装置を提供する。
【解決手段】輻射光で発光している炉内を観察する炉内観察装置21であって、レーザ光を炉内の炉壁面に照射するレーザ照射装置100と、炉壁面からの反射レーザ光を受光する受光装置200と、を備える。受光装置200は、レーザ光、および、3原色のうち赤色に対応する波長領域内の所定波長域の光を透過させる光学フィルタ15と、光学フィルタ15を通過した反射レーザ光を含む光に基づいて炉壁面の画像を生成する画像生成装置8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射光で発光している熱風炉等の炉内を観察する炉内観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄用高炉に高温の熱風を供給する熱風炉は、地上より約50mの高さと10m以上の内径を有し、内壁温度は運転時で約1600℃、休風時で約1400℃にも達する。また、かかる熱風炉は、大型設備であるため建設期間が約3年と長く、しかも完成後は約20年という長期に渡って連続運転される。したがって、1基でも使用不能な状況となれば、長期間の操業停止を余儀なくされるため、定期的に炉内診断するメンテナンスが重要となる。その1つの手段として、炉壁の損傷状況を監視することが古くから行われている。
【0003】
炉内観察方法には、赤外線等のレーザ光を壁面に照射して距離を測定することにより損傷の程度を計測する方法や、CCDカメラ等により炉壁を撮像して画像処理等を施すことにより損傷の程度を計測する方法等が既に存在している。例えば、特許文献1に記載の炉壁観察装置は、炉壁に光を照射する照明装置と、該光を照射した炉壁を撮像するCCDカメラと、を有する。そして、照明装置とCCDカメラとは1つの筐体内に収容されており、該筐体に形成された撮像用の観察窓から照明装置の光を照射している。
【0004】
なお、本願の他の先行技術文献として、下記の特許文献2、3がある。
特許文献2では、炉内の炉壁にレーザー・スリット光を投射し、炉壁表面を、レーザー・スリット光の反射光だけを通過させるフィルターを介して撮影して得られた撮像と、当該フィルターを介さないで撮影して得られた撮像とを合成し、合成画像上のレーザー・スリット線の歪みと基準となる寸法とを比較して、対象物表面の凹凸程度を求めている。
特許文献3では、炉内の炉壁にパルスレーザー光を照射し、炉壁表面からのパルスレーザー光の反射光を、当該反射光の波長のみを透過する光学フィルターを通すと共に、照射時間に同期して開く高速シャッターを通して撮影することで、レーザー光の照射エネルギーを抑えると共に、輻射光のノイズを低減して、炉壁の状態を比較的広範囲な画像として得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−146164号公報
【特許文献2】特開2002−90124号公報
【特許文献3】特開2008−157559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された炉壁観察装置では、上述した熱風炉のように、炉内が高温に曝され炉壁が輻射光で発光しているような場合、輻射光の明るさが強くてコントラストの低い画像しか得られないという問題や、窪みや亀裂等の影が写り難い、散乱光の影響を受け易い等の問題があった。
また、特許文献2に記載された炉壁観察装置では、炉壁の情報はスリットの情報でしか得ることはできず、炉壁の亀裂や窪み等の全体が判る広範囲の画像は得ることができない。また、フィルターを介さない輻射光の情報は、炉壁温度が1100℃以上となると実際には輻射光のノイズが大き過ぎて炉壁の情報は鮮明には得ることができず、炉壁の亀裂等の情報は得ることができない。そのため、基準となる耐火物の目地の幅も判らず、合成画像から凹凸のサイズを求めることも難しかった。
また、特許文献3に記載された炉壁観察装置では、炉壁の情報はパルスレーザー光の比較的広範囲な反射光によって得られるため、1100℃以上の高温であっても、輻射光よりも大きなエネルギー密度を有するパルスレーザー光を照射することで炉壁の凹凸や亀裂の影を得ることはできたが、コントラストがあまり高くなく、また、画像情報としてはレーザー光の情報だけしか得られないため、得られた画像から炉壁の凹凸や亀裂を判別し難いことがあった。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、炉壁が輻射光で発光している場合であっても、コントラストが高く、且つ、レーザー光の反射光の画像情報だけでなく、輻射光の一部の画像情報も合わせた画像を取得することができるとともに、炉壁の凹凸や亀裂の影を判別し易くすることができる炉内観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
輻射光や散乱光の影響を抑制するために、特許文献3にも記載されているような、照射レーザ光の波長のみを透過する光学フィルタを用いることが考えられる。しかし、それでも、十分にコントラストが高く、かつ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得することが困難であった。ところが、本願の発明者は、照射レーザ光の波長だけでなく、3原色のうち赤色に波長領域の光も透過させる光学フィルタを用いることで、十分にコントラストが高く、かつ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できることを見出した(このような知見は、上述の特許文献1〜3には開示されていない)。
【0009】
即ち、上記目的を達成するため、本発明によると、輻射光で発光している炉内を観察する炉内観察装置であって、
レーザ光を前記炉内の炉壁面に照射するレーザ照射装置と、前記炉壁面からの反射レーザ光を受光する受光装置と、を備え、
前記受光装置は、
前記レーザ光、および、3原色のうち赤色に対応する波長領域内の所定波長域の光を透過させる光学フィルタと、
該光学フィルタを通過した前記反射レーザ光を含む光に基づいて前記炉壁面の画像を生成する画像生成装置と、を備える、ことを特徴とする炉内観察装置が提供される。
【0010】
上記本発明では、前記受光装置は、前記レーザ光の波長および3原色のうち赤色の波長領域内の所定波長域の光を透過させる光学フィルタと、該光学フィルタを通過した前記反射レーザ光を含む光に基づいて前記炉壁面の画像を生成する画像生成装置と、を備えるので、上述のように、照射レーザ光の画像情報だけでなく、3原色のうち赤色(輻射光)の波長領域の光の画像情報も用いて画像を生成することができ、これにより、十分にコントラストが高く、かつ、輻射光の赤色の波長領域内の所定波長域以外のノイズとなる輻射光を遮断しながらも、より情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、前記レーザ光の波長は、3原色のうち緑色に対応する波長領域に含まれる。
【0012】
このように、前記レーザ光の波長は、原色のうち緑色の光波長領域に含まれるので、レーザー照射装置として一般的なYAGレーザーを使用することができると共に、緑色の反射レーザ光の成分と赤色輻射光の成分とを捕らえることができ、これにより、より一層十分にコントラストが高く、かつ、情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【0013】
前記光学フィルタは、前記レーザ光の波長およびその付近の波長域の光と、赤色の光の前記所定波長域の光のみを選択的に透過させる。
【0014】
このように、前記光学フィルタは、前記レーザ光の波長およびその付近の波長域の光と、赤色の光の前記所定波長域の光のみを選択的に透過させるので、散乱光などの他の影響を抑制しつつ、レーザ光と必要な量だけの赤色輻射光を利用することができ、これにより、十分にコントラストが高く、かつ、レーザー光の反射光の波長付近の画像情報も合せて得られるため、更に情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【0015】
前記所定波長域は、前記輻射光の波長のうち輻射光強度がピークとなる波長と異なっている。
【0016】
このように、前記所定波長域は、前記輻射光の波長のうち輻射光強度がピークとなる波長と異なっているので、利用する前記輻射光量を適切に抑えることができ、よりノイズの少ない画像情報を得ることができる。
【0017】
前記画像生成装置は、前記レーザ光の強度と、前記赤色の光の前記所定波長域の光の強度との差を低減するように前記光学フィルタを通過した光の強度を補正する強度補正部を備える。
【0018】
このように、前記画像生成装置は、前記レーザ光の強度と、前記赤色の光の波長領域の光の強度との差を低減するように前記光学フィルタを通過した光の強度を補正する強度補正部を備えるので、輻射光の影響を抑えつつ、輻射光も利用して画像を生成することが可能になる。これにより、十分にコントラストが高く、かつ、ノイズをより抑えながら情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明の炉内観察装置によれば、十分にコントラストが高く、かつ、輻射光の赤色の波長領域内の所定波長域以外のノイズとなる輻射光を遮断しながらも、より情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る炉内観察装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る炉内観察装置の作用を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光学フィルタの特性例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光学フィルタの別の特性例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による効果を示す画像であり、(A)は比較例であり、(B)は、本発明の実施形態の場合である。
【図6】本発明の実施形態による効果を示す別の画像であり、(A)は比較例であり、(B)は、本発明の実施形態の場合である。
【図7】(A)、(B)、(C)は、それぞれ、炉内の温度が1200℃、1300℃、1400℃である場合の、シャッタースピードと画像生成装置8による受光強度との関係を示すグラフである。
【図8】(A)、(B)、(C)は、それぞれ、炉内の温度が1200℃、1300℃、1400℃である場合の、シャッタースピードと、受光に基づいて画像生成装置が生成する画像の三原色(RGB)の各々の輝度との関係を示すグラフである。
【図9】撮像範囲ごとに得られた画像を合成する画像処理手段を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る炉内観察装置の第二実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図1、図2を用いて説明する。ここで、図1、図2は、本発明に係る炉内観察装置を示す構成図である。
【0022】
本実施形態による輻射光Hで発光している炉内を観察する炉内観察装置は、レーザ光を前記炉内の炉壁面に照射するレーザ照射装置100と、前記炉壁面からの反射レーザ光を受光する受光装置200と、を備える。なお、本実施形態では、前記炉壁面は、1100℃以上の高温となっている。
【0023】
前記受光装置200は、前記レーザ光の波長および3原色のうち赤色の光の波長領域内の所定波長域とを透過させる光学フィルタ15と、該光学フィルタ15を通過した前記反射レーザ光を含む光に基づいて前記炉壁面の画像を生成する画像生成装置8と、を備える。
【0024】
前記レーザ光の波長は、3原色のうち緑色の光の波長領域に含まれる。本願において、3原色のうち、緑色の光の波長領域は495〜570nmであり、赤色の光の波長領域は、570nm超(例えば、575nm以上)であって830nm以下である。
【0025】
本実施形態では、好ましくは、前記レーザ光の波長は、532nmである。例えば、YAGレーザの第2高調波(532nm)を前記レーザ光とすることができる。使用可能な光学フィルタ15の特性例を図3、図4に示す。図3、図4の例に示すように、前記光学フィルタ15は、前記レーザ光の波長およびその付近の波長域の光と、赤色の光の前記波長領域のうちの前記所定波長域の光のみを選択的に透過させる。当該所定波長域は、赤色波長領域内であればどこでも構わないが、600〜800nm域や800nm域等、レーザー光の波長域とは離れた赤色波長域を含むことが、より鮮明な画像情報を得るためには好ましい。また、市販されている光学フィルタを使用するのが簡便である。
なお、図3は、離散する複数(2つ)の波長域の光を透過させる光学フィルタ15の特性例を示し、図4は、連続する透過波長領域を持つ光学フィルタ15の特性例を示す。このような図3、図4の光学フィルタの特性を得るために、複数の光学フィルタを組み合わせて光学フィルタ15を構成してよい。また、図3、図4の例では、前記レーザ光の波長およびその付近の波長域を透過させているが、前記レーザ光の波長(例えば、532nm)と前記所定波長域の光(例えば、800nm)のみを選択的に透過させる光学フィルタ15を使用してもよい。なお、光学フィルタ15は、前記炉壁面からの輻射光については、当該輻射光のうち一部のみを透過させる。より好ましくは、光学フィルタ15は、前記炉壁面からの輻射光に含まれる赤色光の波長領域の輻射光のうち、当該波長領域の一部の波長領域の輻射光のみを透過させ、ノイズの影響を抑制させる。また、前記レーザ光の波長および当該波長付近の波長域と前記所定波長域の光のみを選択的に透過させる光学フィルタ、または、前記レーザ光の波長と前記所定波長域の光のみを選択的に透過させる光学フィルタであれば、図3、図4以外の特性を有するフィルタであっても本実施形態の光学フィルタ15として使用できる。
【0026】
前記画像生成装置8は、前記レーザ光の強度と、前記赤色の光の前記所定波長域の光の強度との差を自動的に低減するように前記光学フィルタを通過した光の強度を補正する強度補正部201を備える。強度補正部201は、前記レーザ光(532nmの光)の強度と、前記所定波長域内の光の合計強度との差を低減する補正を行う。例えば、前記レーザ光(532nmの光)の強度と、前記所定波長域内の光の合計強度とが一致するように、前記光学フィルタを通過した光の強度を補正する。このように補正されたデータに基づいて、画像生成装置8は炉壁面の画像を生成する。
【0027】
上述の実施形態では、前記受光装置200は、前記レーザ光の波長および3原色のうち赤色の波長領域内の所定波長域の光を透過させる光学フィルタ15と、該光学フィルタ15を通過した前記反射レーザ光を含む光に基づいて前記炉壁面の画像を生成する画像生成装置8と、を備えるので、上述のように、照射レーザ光の波長だけでなく、3原色のうち赤色に波長領域の光も用いて画像を生成することができ、これにより、十分にコントラストが高く、かつ、輻射光の赤色の波長領域内の所定波長域以外のノイズとなる輻射光を遮断しながらも、より情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【0028】
また、前記レーザ光の波長は、原色のうち緑色の光の波長領域に含まれるので、レーザー照射装置として一般的なYAGレーザーを使用することができると共に、緑色の反射レーザ光の成分と赤色輻射光の成分とを捕らえることができ、これにより、十分にコントラストが高く、かつ、より情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【0029】
さらに、前記光学フィルタ15は、前記レーザ光の波長およびその付近の波長域の光と、前記所定波長域の赤色輻射光のみを選択的に透過させるので、散乱光などの他の影響を抑制しつつ、レーザ光と必要な量だけの赤色輻射光を利用することができ、これにより、十分にコントラストが高く、かつ、レーザー光の反射光の波長付近の画像情報も合せて得られるため、更に情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【0030】
本実施形態の作用効果を、言い換えると次の通りである。反射レーザ光のエネルギーが高いため、後述の図8のように、反射レーザ光に相当するG輝度が高くなって、炉壁面から放射されるG波長領域の輻射は反射レーザ光により隠されてしまう傾向がある。一方、画像情報として取得するB波長領域の輝度(B輝度)は、後述の図8のように、RやGに比べて低いため、情報として弱い(不十分である)。これに対し、R波長域の輻射光の画像情報は、後述の図8のように、最も情報として優れている。そこで、反射レーザ光のG輝度の画像情報(すなわち、炉壁面における影の情報)を、炉壁面から放射されるR波長領域の輻射によるR輝度の画像情報と合成することで、反射レーザ光による画像情報だけの場合と比較して、炉壁面をより詳細に観察できる画像が得られる。
【0031】
また、前記画像生成装置8は、前記レーザ光の強度と、前記所定波長域の赤色輻射光の強度との差を低減するように前記光学フィルタ15を通過した光の強度を補正する強度補正部201を備えるので、輻射光の影響を抑えつつ、輻射光も適切に利用して画像を生成することが可能になる。これにより、十分にコントラストが高く、かつ、よりノイズの少ない画像情報を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像を取得できる。
【0032】
図5、図6は、本実施形態による効果を示す画像である。図5、図6において、(A)は反射レーザ光のみを利用して生成した炉壁面の画像であり、(B)は本実施形態により、反射レーザ光、および前記所定波長域の赤色光から生成した炉壁面の画像である。これら図に示すように、本実施形態では、反射レーザ光のみを利用する場合と比較して、十分にコントラストが高く、かつ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる画像が取得される。
【0033】
以下、本実施形態が適用可能な炉内観察装置の全体構成例を説明する。図1、図2に示すように、レーザ照射装置100は、レーザ光Lを前記炉内の炉壁面に照射する照射するレーザ発振装置1と、レーザ光Lの照射範囲を調整可能な投光レンズ2と、レーザ光Lを反射させて所望の観察部分を照らす投光ミラー3とからなる。なお、図1、図2のように、投光ミラー3からのレーザ光Lを透過させる第一覗き窓4が設けられ、観察部分からの反射光Rを透過させる第二覗き窓5が設けられる。受光装置200は、第二覗き窓5を透過した反射光Rを反射させる受光ミラー6と、受光ミラー6からの反射光Rを上述の光学フィルタ15を介して受け反射光Rを集光させるとともに撮像範囲を調整可能な受光レンズ7と、受光レンズ7により集光された反射光Rを受光して画像を生成する上述の画像生成装置8を備える。また、炉内観察装置は、投光ミラー3を駆動させる投光用モータ9と、受光ミラー6を駆動させる受光用モータ10と、投光用モータ9及び受光用モータ10の駆動を制御する制御手段11と、を有し、投光レンズ2及び受光レンズ7は、レーザ光Lの照射範囲と画像生成装置8の撮像範囲とが略同じ大きさとなるように調整されており、制御手段11は、照射範囲と撮像範囲が略一致するように投光ミラー3及び受光ミラー6を連動させる。
【0034】
前記レーザ発振装置1は、炉内の観察部分を照らすための照明(レーザ光L)を照射する装置である。なお、高炉用熱風炉では、輻射光Hは赤外域の2〜3μmにピーク波長を有する光である。この場合、レーザ発振装置1には、例えば、1.06μm又は0.53μm(第2高調波)の波長のNd:YAGレーザ装置が採用される。勿論、レーザ発振装置1は、輻射光Hのピーク波長(2〜3μm)から十分離れた波長であり、好ましくは、3原色のうちの緑色の光の波長域(例えば500〜565nm)内の波長(例えば、532nm)のレーザ光Lを照射できるものである。また、輻射光Hに抗して観察部分を照らし出すために、広がり角は極力小さくするように調整するのが好ましい。なお、レーザ発振装置1には、結晶や素子を励起させるエネルギーを付与する電源12が接続されている。レーザ発振装置1からのレーザ光は、パルス光であっても、連続光であってもよい。
【0035】
前記投光レンズ2は、レーザ光Lの照射範囲を調整する機器である。投光レンズ2には、例えば、共焦点レンズ式のものを使用することが好ましいが、単焦点レンズ式のものを使用してもよい。投光レンズ2は、レーザ発振装置1から照射された極細(直径1mm程度)のレーザ光Lを観察部分(約8m先の炉壁)において直径50cm程度の照射範囲を形成するように調整される。なお、レーザ光Lの直進性から広がり角が十分に小さく、レーザ発振装置1のみで照射範囲を調整することができる場合や所望の照射範囲を確保できる場合には、投光レンズ2を省略してもよい。また、図1では、レーザ発振装置1と投光レンズ2とを直に接続するようにしているが、光ファイバ等の伝送管を用いて接続するようにしてもよい。伝送管を用いることにより、レーザ発振装置1と投光レンズ2とを離して配置することができ、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0036】
前記投光ミラー3は、レーザ発振装置1から照射されたレーザ光Lを反射して所望の観察部分を照らす機器である。図1に示した投光ミラー3には、投光用モータ9が接続されており、一定方向にスイングして角度を変更できるように構成されている。また、スイング方向と略垂直な方向に投光用ミラー3の角度を変化させる第二投光用モータを接続してもよい。なお、投光レンズ2と投光ミラー3との間(投光ミラー3の上流側)に、光学フィルタ13を配置してもよい。光学フィルタ13は、レーザ光Lの波長のみを通し、それ以外の波長をカットする。光学フィルタ13には、例えば、干渉フィルタが使用される。また、光学フィルタ13は、投光ミラー3と第一覗き窓4の間(投光ミラー3の下流側)に配置してもよい。
【0037】
前記第一覗き窓4及び第二覗き窓5は、炉の内部(特に炉壁)を観察するための覗き窓である。第一覗き窓4及び第二覗き窓5は、炉の一部又は炉内に挿入される部品に形成されている。また、炉内は高温状態であるため、第一覗き窓4及び第二覗き窓5は耐熱ガラスにより構成される。図1の例のように、投光系と受光系とで異なる覗き窓(第一覗き窓4及び第二覗き窓5)を使用するのが好ましいが、投光系と受光系とで同一の覗き窓を使用してもよい。異なる覗き窓により、投光系と受光系の光軸をずらすことができ、観察部分に対して斜めにレーザ光Lを照射することができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を大きく映し出すことができ、その影の部分を画像として撮像することができる。
【0038】
また、第一覗き窓4及び第二覗き窓5の外側に耐熱シャッター14を配置するようにしてもよい。耐熱シャッター14は、機械的に光を遮蔽するシャッターで、たとえば穴の開いた羽根車が回転するものである。図1の例では、レーザ光Lを通過させる切欠孔を有する耐熱円板14dと、耐熱円板14dを回転駆動させるモータ14mとから構成される。したがって、モータ14mで耐熱円板14dを回転させると、切欠孔が第一覗き窓4及び第二覗き窓5の位置に移動してきたときのみレーザ光Lを照射することができ、それ以外のときは第一覗き窓4及び第二覗き窓5を閉鎖した状態を維持することができる。したがって、レーザ光Lの照射が不要なタイミングにおける輻射光Hの機器への進入を防止することができ、機器類を熱から保護することができる。なお、モータ14mの回転速度は、後述する制御手段11により、レーザ光Lの照射と切欠孔が第一覗き窓4及び第二覗き窓5を通過するタイミングが同期するように制御される。耐熱シャッター14の切欠孔から次の切欠孔までの時間間隔は、機器類を熱から保護するために必要な時間間隔になるように、耐熱円板14dの回転速度、切欠孔の幅、及び、切欠孔の周方向間隔を適宜設定すればよい。
【0039】
次に、受光量の制御のために、高速シャッター16または耐熱シャッター14を配置することができる。以下において単にシャッタースピードと言うときには、シャッタースピードとは、高速シャッター16または耐熱シャッター14のシャッタースピードを意味するが、高速シャッター16と耐熱シャッター14の両方を用いる場合は、高速シャッター16および耐熱シャッター14のシャッタースピードのうち早いほうのシャッタースピードを意味する。
シャッタースピード(シャッター開の時の1回当たりの開時間)は、好ましくは、受光に基づいて画像生成装置8が生成する画像の三原色(RGB)の各々の輝度が飽和せず、かつ、当該画像の三原色の各々が、当該画像を鮮明にするために必要な所定の輝度(例えば、画像構成上の輝度範囲0〜255としたときに200)以上となるように設定される。
【0040】
シャッタースピードの設定例について説明する。ここでは、炉内の温度が1200℃、1300℃、1400℃において、最適なシャッタースピードを計算した。
計算の前提条件として、炉内観察装置21の数値(CCDカメラ8、レンズ7、光学フィルタ15、レーザなど)を用いた。また炉壁面の反射率、放射率等は経験値を用いた。レーザ光の照射面積は1.223mであり、カメラ8の視野範囲は0.949mであるとした。また、レーザー光の発光時間は、ナノ秒〜数十ナノ秒オーダーと、シャッタースピードに較べて極めて短いため、レーザ光の受光強度は、シャッタースピードに影響されずに一定となる。輻射光は連続光であるため、CCDカメラ(画像生成装置)8が受光する輻射光の受光強度は、シャッタースピードに比例する。
【0041】
図7(A)、(B)、(C)は、それぞれ、炉内の温度が1200℃、1300℃、1400℃である場合の、シャッタースピードと画像生成装置8による受光強度との関係を示すグラフである。なお、図7において、符号Aは、炉壁面からの輻射光の受光強度を示し、符号Bは、レーザ発振装置1による炉壁面からの反射レーザ光の受光強度を示す。輻射光の受光強度は、RGB全ての波長領域を受光した強度であり、反射レーザー光の受光強度は、照射レーザー光として、YAGレーザー第2高調波、532nm波長のパルスレーザー光を用い、炉内耐火物表面のエネルギー密度が0.5W/mとなる強度(30パルス/秒、発光時間10ナノ秒)で照射して受光した強度である。
図7は、シャッタースピードを決める一般的な考え方を示すものであり、反射レーザー光の受光強度が、輻射光の受光強度よりも大きくなるように、シャッタースピードを短くするという考え方である。これにより、反射レーザー光の受光強度を輻射光(輝度が飽和してノイズとなる輻射光)よりも大きくすることができ、反射レーザー光による炉内の画像情報を得ることができる。すなわち、図7においては、シャッタースピードを、炉内温度が1200℃では0.0006秒以下、炉内温度が1300℃では0.0002秒以下、炉内温度が1400℃では0.0001秒以下とすることで、反射レーザー光による炉内の画像情報を得ることができる。
【0042】
次に、本発明において、光学フィルタを用いて、レーザ光、および、3原色のうち赤色に対応する波長領域内の所定波長域の光を透過させた光に基づいて画像を生成することが有効な理由と好ましいシャッタースピードについて説明する。
図8(A)、(B)、(C)は、それぞれ、炉内の温度が1200℃、1300℃、1400℃である場合の、シャッタースピードと、受光に基づいて画像生成装置8が生成する画像の三原色(RGB)の各々の輝度との関係を示すグラフである。レーザー光としては、YAGレーザー第2高調波、532nm波長のパルスレーザー光を用い、炉内耐火物表面のエネルギー密度が0.5W/mとなる強度(30パルス/秒、発光時間10ナノ秒)で照射した。図中のG輝度、R輝度、B輝度は、R、G、Bのそれぞれの波長領域のみ透過させる光学フィルタを用いて受光した際の輝度を示すものである(試験ではRGBの受光素子それぞれにおいて対応する上記の光学フィルタを使用し、RGBそれぞれの輝度を求めた)。
画像生成装置8では、レーザ発振装置1による炉壁面からの反射レーザ光と炉壁面からの輻射光とを区別なく受光するため、当該反射レーザ光と当該輻射光を足し、画像生成装置8の感度特性を考慮して、画像生成装置(カメラ)8に映る三原色(RGB)の輝度(0〜255)を算出した。従って、G輝度は、G波長領域となる反射レーザー光とG波長領域の輻射光とが合成されて決まる。また、R輝度は、R波長領域の輻射光によって決定され、B輝度は、B波長領域の輻射光によって決定される。
【0043】
炉内の温度が1200℃の場合には、図8(A)に示すように、シャッタースピードが0.00036秒以上になると、G輝度が255以上になり、飽和して、適切でない。また、鮮明に見るためにはある程度の明るさが必要であり、ここでGの輝度が200以上必要と規定すると、0.00015秒以上シャッターは開いている必要がある。そこで、この場合には、最適なシャッタースピードは、0.00015〜0.00036秒(1/4000秒など)である。
【0044】
炉内の温度が1300℃の場合には、図8(B)に示すように、シャッタースピードが0.00012秒以上になると、G輝度が255以上になり、飽和して、適切でない。また、鮮明に見るためにはある程度の明るさが必要であり、ここでGの輝度が200以上必要と規定すると、0.00005秒以上シャッターは開いている必要がある。そこで、この場合には、最適なシャッタースピードは、0.00005〜0.00012秒(1/10000秒など)である。
【0045】
炉内の温度が1400℃の場合には、図8(C)に示すように、シャッタースピードが0.00005秒以上になると、G輝度が255以上になり、飽和して、適切でない。また、鮮明に見るためにはある程度の明るさが必要であり、ここでGの輝度が200以上必要と規定すると、0.00002秒以上シャッターは開いている必要がある。そこで、この場合には、最適なシャッタースピードは、0.00002〜0.00005秒(1/40000秒など)である。
また、反射レーザー光の画像情報だけでは、コントラストが低く、また、情報としても限られている面があるため、本発明においては、更に、輻射光のうち、赤色に対応する波長領域内の所定波長域の光を透過させた光も、合せて受光する。図8から判るように、1200〜1400℃のいずれの炉内温度においても、R輝度はB輝度を大きく上回っており、且つ、G輝度よりも小さいため、飽和していない。
従って、本発明においては、反射レーザー光の波長領域と輻射光のR波長領域の両方を透過する光学フィルタを使用することで、R波長領域の輻射光の画像情報も得ることができ、且つ、合成によりコントラストの高い画像情報とすることができる。最適なシャッタースピードは、主たる画像情報は反射レーザー光が有するため、上述したシャッタースピードと変わらない。
このように、炉内温度により、適正なシャッタースピードは異なるものの、本発明においては、照射レーザ光の波長(図ではG輝度相当)だけでなく、3原色のうち赤色に波長領域の光(図ではR輝度相当)も用いて画像を生成することができ、これにより、十分にコントラストが高く、かつ、輻射光の赤色の波長領域内の所定波長域以外のノイズとなる輻射光(図ではB輝度相当)を遮断しながらも、より情報量の多い画像を得ることができ、炉壁の凹凸や亀裂の影を十分に判別できる鮮明な画像を取得できるようになる。
【0046】
前記受光ミラー6は、第二覗き窓5を透過したレーザ光Lの反射光Rを反射して画像生成装置8に入射させる機器である。図1に示した受光ミラー6には、受光用モータ10が接続されており、一定方向にスイングして角度を変更できるように構成されている。また、スイング方向と略垂直な方向に受光用ミラー6の角度を変化させる第二受光用モータを接続してもよい。なお、光学フィルタ15は、受光ミラー6の上流側に配置してもよい。
【0047】
前記受光レンズ7は、画像生成装置8の撮像範囲を調整する機器である。受光レンズ7には、例えば、望遠レンズ式のものを使用することが好ましい。かかる望遠レンズの絞りと焦点を調節することにより画像生成装置8の撮像範囲を、レーザ光Lの照射範囲と略同じ大きさとなるように調節する。理想的には照射範囲と撮像範囲が一致することが好ましいが、少なくとも撮像範囲の中に照射範囲が含まれ、かつ、それ以外の部分が極力含まれないように調整される。例えば、観察部分(約8m先の炉壁)において直径50cm程度の撮像範囲を形成するように調整される。なお、受光レンズ7は、望遠レンズ式のものに限られず、複数のレンズの組み合わせにより焦点を調節できる形式のものであってもよい。
【0048】
前記画像生成装置8は、受光レンズ7からの反射光Rを受光して画像を生成する機器である。かかる画像生成装置8には、例えば、カラー(RGB)画像を生成できるCCDカメラが使用される。図1に示した画像生成装置8では、受光レンズ7との間に高速シャッター16を備えている。上述の高速シャッター16は、たとえば、CCD素子が光を溜め込む時間を制限する電子シャッター(通常CCDカメラに内蔵される)など、機械的に動作しないシャッターを指し、機械的な稼働部がないため、1/10000秒などの速いシャッタースピードが可能になる。高速シャッター16は、レーザ光Lの照射タイミングと同期させて制御手段11により開閉される。かかる高速シャッター16を配置することにより、画像生成装置8に輻射光Hが入射し難くすることができ、画像生成装置8を熱から保護することができる。勿論、耐熱シャッター14で十分な場合には高速シャッター16を省略してもよいし、耐熱シャッター14を第一覗き窓4にのみ配置して画像生成装置8に高速シャッター16を配置するようにしてもよい。高速シャッター16を省略して耐熱シャッター14のみとする場合は、耐熱シャッター14が輝度を制御する高速シャッターの役割を兼ねるようになるが、炉内が高温では適正なシャッタースピードが非常に短くなり、機械的に制御することは難しくなることから、耐熱シャッター14のみとする場合は、炉内が比較的低温(例えば、1200℃以下)で適用することが好ましい。また、耐熱シャッター14を省略して高速シャッターのみとしても良いが、その場合は、第二覗き窓5から侵入する余分な輻射光は高速シャッター及び光学フィルター15で遮断し、第一覗き窓4から侵入する余分な輻射光は光学フィルター13で遮断することで、耐熱の役割を果たすことができる。なお、高速シャッター16は、CCDカメラに内蔵されていてもよいし、画像をデジタル的に切り取るデジタルシャッターでもよい。
【0049】
前記制御手段11は、レーザ発振装置1の照射タイミング、耐熱シャッター14及び高速シャッター16の開閉タイミング、投光ミラー3及び受光ミラー6のスイングタイミング等を制御する機器である。制御手段11は、レーザ発振装置1の照射タイミングと耐熱シャッター14及び高速シャッター16を開くタイミングとを同期させる。かかる処理により、必要なタイミングでレーザ光Lを観察部分に照射するとともに、その反射光Rを受光して画像を取得することができ、レーザ光Lが照射されないときには輻射光Hの機器への入射を防止することができる。また、制御手段11は、照射範囲と撮像範囲が略一致するように投光ミラー3及び受光ミラー6を連動させる。具体的には、投光用モータ9と受光用モータ10の回転を制御して、投光ミラー3と受光ミラー6を連動させる。例えば、投光用モータ9と受光用モータ10にロータリエンコーダ等の回転量を検知できるセンサを設置しておき、このデータを計測しながら連動させる。照射範囲と撮像範囲とを一致させる条件(投光用モータ9と受光用モータ10の回転量)は、炉内観察装置の機器構成や覗き窓の配置(距離)等の条件によって異なるため、実際に使用する条件で照射範囲と撮像範囲とが一致するように試験又はシミュレーションすることによって連動させる条件(投光用モータ9と受光用モータ10の回転量)を事前に求めておくことが好ましい。
【0050】
また、制御手段11は、コンピュータ17に接続されており、コンピュータ17からの指令に基づいて上述した処理を行うように設定されるとともに作動する。コンピュータ17は、CPU(中央処理装置)、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置、キーボード等の入力装置及びディスプレイ等の出力装置を備え、画像生成装置8により取得した画像を処理する画像処理手段を構成する。ここで、図9は、撮像範囲ごとに得られた画像を合成する画像処理手段を示すブロック図である。コンピュータ17の記憶装置31には、撮像範囲ごとに得られた画像P1,P2,P3が保存されている。コンピュータ17のCPUにより操作される画像処理手段32は、記憶装置31に保存された画像P1,P2,P3を呼び出し、これらの画像P1,P2,P3をパノラマ合成したパノラマ画像P4をディスプレイ等の出力装置に出力する。かかる処理により、撮像した炉壁の全体像を容易に把握することができる。なお、画像処理手段32は、上述した画像合成以外にも、撮像範囲ごとに得られた画像P1,P2,P3のコントラスト、ホワイトバランス、トリミング等の調整や壁面の凹凸や亀裂の影の抽出等を処理することもできる。
【0051】
次に、本発明に係る炉内観察装置の作用について説明する。ここで、図2は、本発明に係る炉内観察装置の作用を示す図である。なお、図1と同じ構成部品については同じ符号を付すとともに、炉内観察装置の構成は簡略して図示している。
【0052】
図2に示すように、炉内観察装置21は、第一覗き窓4及び第二覗き窓5が形成された炉の外側に配置される。第一覗き窓4及び第二覗き窓5が形成された壁面部22は、炉の外壁であってもよいし、炉の開口部から炉内に挿入される炉内観察装置21を囲う筐体であってもよい。また、炉内観察装置21は、レーザ発振装置1の照射範囲と画像生成装置8の撮像範囲とが、観察部分である炉壁23において略同じ大きさ(図で網掛けした観察部分S)となるように調整されている。炉壁23と第一覗き窓4及び第二覗き窓5との位置・距離関係は炉によって異なるため、設置箇所を模擬した試験設備等を利用して予め照射範囲と撮像範囲とが略同じ大きさとなるように調整しておくことが好ましい。勿論、炉内観察装置21を所定の箇所に設置してから照射範囲と撮像範囲とが略同じ大きさとなるように調整してもよいし、設置後に微調整するようにしてもよい。なお、照射範囲と撮像範囲の調整に際しては、図1に示した投光レンズ2及び受光レンズ7を用いる。
【0053】
本発明では、投光系の第一覗き窓4と受光系の第二覗き窓5とが別々に形成されている。かかる構成を採用することにより、観察部分Sにおいて斜めからレーザ光Lを照射することができ、観察部分Sにおける凹凸や亀裂の影を大きく明確に映し出すことができる。また、第一覗き窓4における反射光Wや炉内の粉塵等による散乱光Dが画像生成装置8に入射することを防止することができ、ノイズの少ない画像を取得することができる。
【0054】
また、制御手段11により投光用モータ9及び受光用モータ10を駆動させて、投光ミラー3及び受光ミラー6を連動して回動させ、図2に示したように、レーザ発振装置1の照射範囲と画像生成装置8の撮像範囲とが略一致した状態を維持させながら、観察部分Sを炉壁23の所定の方向に走査させる。ここでは、図のAB方向に観察部分Sを走査させる場合を図示しているが、投光ミラー3及び受光ミラー6にさらに別のモータを設置することにより、AB方向と略垂直な方向に観察部分Sを走査させるようにしてもよい。また、投光ミラー3及び受光ミラー6は、投光用モータ9及び受光用モータ10により一定の速度で滑らかに回動させてもよいし、所定の位相間隔で間欠的に回動させてもよいし、レーザ光Lの照射タイミングに同期させて回動させるようにしてもよい。
【0055】
上述したように、照射範囲と撮像範囲とが略同じ大きさとなるように調整することにより、観察部分Sで示したように狭い範囲の撮像画像の鮮明度を高めることができる。また、照射範囲と撮像範囲が略一致するように投光ミラー3と受光ミラー6とを連動させることにより、広範囲の炉壁23を複数の画像として撮像することができる。さらに、これらの画像を図9で示したようにパノラマ合成することにより、炉壁23の全体像を容易に観察することができる。なお、パルスレーザー光を用いる場合は、画像生成装置8と受光ミラー6の間には、図2では図示を省略しているが、高速シャッター16が配置される。
【0056】
次に、本発明に係る炉内観察装置の他の実施例について説明する。ここで、図10は、本発明に係る炉内観察装置の第二実施例を示す概略構成図である。なお、図1に示した炉内観察装置と同じ構成部品については同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0057】
図10に示した炉内観察装置41は、側面に第一覗き窓4及び第二覗き窓5が形成されるとともに内部にレーザ発振装置1、投光レンズ2、投光ミラー3、受光ミラー6、受光レンズ7、画像生成装置8等が配置される筒状の筐体42と、筐体42を軸中心に回転させる駆動手段43と、を有する。かかる炉内観察装置41は、例えば、炉44の上部に形成された開口部から炉内に挿入され、第一覗き窓4及び第二覗き窓5が観察部分である炉壁と対峙するように配置される。そして、投光ミラー3及び受光ミラー6を連動させて回動させることにより、観察部分Sを炉壁の上下方向に沿って走査させることができる。なお、図10に示した炉内観察装置41では、レーザ発振装置1と投光レンズ2とを光ファイバ18で接続した場合を図示している。
【0058】
前記筐体42は、高温状態の炉内に挿入されるため、水冷ジャケットを有していることが好ましい。したがって、筐体42は、外部から冷却水を水冷ジャケットに注水し、外部に冷却水を排水することができるように構成されている。また、筐体42の上端の外周部には、駆動手段43と連結される歯車が形成されている。駆動手段43は、回転駆動可能に配置されたモータ43mと、モータ43mの先端に接続された歯車43gとから構成されている。また、モータ43mは炉内観察装置41の制御手段11に接続されており、制御手段11又はコンピュータ17の指令に基づいて回転駆動される。なお、駆動手段43の構成は図示したものに限定されず、手動で回転できる構成であってもよいし、ベルト駆動やチェーン駆動により回転できる構成であってもよい。また、筐体42及び駆動手段43は、炉44に備え付けの機構であってもよい。この場合、筐体42の内部にレーザ発振装置1、投光レンズ2、投光ミラー3、受光ミラー6、受光レンズ7、画像生成装置8等を有する炉内観察装置41を挿入するようにすればよい。
【0059】
かかる第二実施例のように、駆動手段43を配置して炉内観察装置41そのものを炉44に対して相対的に回転できるようにしたことにより、観察部分Sを炉壁の水平方向に沿って走査させることができる。したがって、1つの炉内観察装置41を用いるだけで、炉壁の広範囲に渡って画像を取得することができる。炉内観察装置41は、駆動手段43により、ゆっくりと滑らかに回転させてもよいし、上下方向の走査が完了してから所定の位相間隔で間欠的に回転させるようにしてもよい。
【0060】
図10に示すように、炉内観察装置41を炉44の中央上部から挿入することにより、炉内観察装置41を駆動手段43で回転させた場合であっても第一覗き窓4及び第二覗き窓5と炉壁との距離を一定に保持することができ、炉内観察装置41を回転させたことによる照射範囲と撮像範囲の大きさと位置の微調整を省略することができる。なお、炉内観察装置41の回転により、第一覗き窓4及び第二覗き窓5と炉壁との距離が変化する場合には、回転ごとに照射範囲と撮像範囲の大きさと位置を微調整してもよいし、予めデータを取得しておくことにより回転位相と連動して照射範囲と撮像範囲の大きさと位置を自動的に調整するようにしてもよい。
【0061】
さらに、駆動手段43は、炉内観察装置41を回転駆動させるものに限定されず直進駆動させるものであってもよいし、回転駆動用と直進駆動用の両方の機能を備えていてもよい。炉内観察装置41を直進駆動させることにより、投光ミラー3及び受光ミラー6の操作だけでは撮像できない部分を観察することができる。炉内観察装置41を直進駆動させる場合には、筐体42の長さを直進駆動させたい長さと同等以上に形成し、ジャッキやアクチュエータにより筐体42を駆動させるようにすればよい。また、炉内観察装置41を炉壁又は床面等の炉内で駆動される移動台車や壁面ロボットに搭載して駆動させるようにしてもよい。
【実施例】
【0062】
本発明に対応する実施例1、2と、比較例1〜3とを以下のように実施した。
(実施例1)
図10の様な炉内を観察する装置を用い、温度1200℃の高炉用熱風炉の炉内内壁を観察した。
炉内壁面へ照射するレーザーとしては、YAGレーザー第2高調波、532nm波長のパルスレーザー光を用い、対象耐火物表面のエネルギー密度が0.5W/mとなる強度(30パルス/秒、17mJ/パルス、発光時間10ナノ秒)で照射した。光学フィルタ15としては、図3に示す495〜570nm、及び、770〜820nmの波長領域を透過する光学フィルタ15を使用した。また、高速シャッター16によるシャッター速度は4000分の1秒とし、パルスレーザー光の受光時に高速シャッター16が解放されるように同期させた。
照射位置を炉の周方向に変えながら、9度の間隔で合計41画像(360度分)を取得し、パノラマ合成して、図5(B)の様な画像を得た(なお、パノラマ作成において、9度の間隔だと40画像で足りるが、本実施例では、1周して同じ位置でもう1画像を取得して41画像を得た)。
これにより、炉壁を構成する煉瓦表面の目地状態まで、鮮明に把握することができた。
【0063】
(実施例2)
図10の様な炉内を観察する装置を用い、温度1200℃の高炉用熱風炉の炉内での連絡管口巻構造を観察した。
照射位置を炉の周方向に変えながら、パルスレーザー光の受光毎の画像炉内壁面へ照射するレーザーとしては、YAGレーザー第2高調波、532nm波長のパルスレーザー光を用い、幅で対象耐火物表面のエネルギー密度が0.5W/mとなる強度(30パルス/秒、17mJ/パルス、発光時間10ナノ秒)で照射した。光学フィルタ15としては、図3に示す495〜570nm、及び、770〜820nmの波長領域を透過する光学フィルタ15を使用した。また、高速シャッター16によるシャッター速度は4000分の1秒とし、パルスレーザー光の受光時にシャッターが解放されるように同期させた。
照射位置を炉の周方向に変えながら、パルスレーザー光の受光毎の画像(毎秒30枚)を取得し、パノラマ合成して、生データに加えて三原色のうちRデータの輝度を補強(+150)することで図6(B)の様な画像を得た。
生画像では判別できなかった口巻構成煉瓦の目地開き状態および表面微亀裂を鮮明に把握することができた。
【0064】
(比較例1)
光学フィルタをレーザー光波長域のみ通過するものに変更する以外は、実施例1と同様の条件で実施した。その結果、図5(A)の画像を得た。このように熱間での壁煉瓦の微亀裂および目地詳細は明瞭でない情報となった。
【0065】
(比較例2)
光学フィルタをレーザー光波長域のみ通過するものに変更する以外は、実施例2と同様の条件で実施した。その結果、図6(A)の画像の画像を得た。このように熱間での口巻および周囲煉瓦の微亀裂および目地詳細は不明瞭な情報となった。
【0066】
(比較例3)
なお、レーザ光の波長および3原色のうち赤色の波長領域内の所定波長域の光を透過させる光学フィルタ15に替えて、レーザ光の波長および3原色のうち青色の波長領域(450〜490nm)の輻射光を透過させる光学フィルタを用いること以外は実施例1と同じ条件で試験したところ、コントラストは低下し、レーザー光の波長のみを透過させる光学フィルタを用いた比較例1の場合と、殆ど差は無かった。
【0067】
(実施例3)
光学フィルターを実施例1のものに替えて、図4の透過特性を有するものとした以外は、実施例1と同様の条件で実施したところ、実施例1よりは鮮明度において劣るものの、比較例1よりは壁煉瓦の微亀裂および目地を鮮明に把握する画像情報を得ることができた。
【0068】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 レーザ発振装置
2 投光レンズ
3 投光ミラー
4 第一覗き窓
5 第二覗き窓
6 受光ミラー
7 受光レンズ
8 画像生成装置
9 投光用モータ
10 受光用モータ
11 制御手段
12 電源
13,15 光学フィルタ
14 耐熱シャッター
14d 耐熱円板
14m モータ
16 高速シャッター
17 コンピュータ
21,41 炉内観察装置
31 記憶装置
32 画像処理手段
42 筐体
43 駆動手段
43m モータ
43g 歯車
44 炉
100 レーザ照射装置
200 受光装置
201 強度補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輻射光で発光している炉内を観察する炉内観察装置であって、
レーザ光を前記炉内の炉壁面に照射するレーザ照射装置と、前記炉壁面からの反射レーザ光を受光する受光装置と、を備え、
前記受光装置は、
前記レーザ光、および、3原色のうち赤色に対応する波長領域内の所定波長域の光を透過させる光学フィルタと、
該光学フィルタを通過した前記反射レーザ光を含む光に基づいて前記炉壁面の画像を生成する画像生成装置と、を備える、ことを特徴とする炉内観察装置。
【請求項2】
前記レーザ光の波長は、3原色のうち緑色に対応する波長領域に含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の炉内観察装置。
【請求項3】
前記光学フィルタは、前記レーザ光の波長およびその付近の波長域の光と、赤色の光の前記所定波長域の光のみを選択的に透過させる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の炉内観察装置。
【請求項4】
前記所定波長域は、前記輻射光の波長のうち輻射光強度がピークとなる波長と異なっている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炉内観察装置。
【請求項5】
前記画像生成装置は、前記レーザ光の強度と、前記赤色の光の前記所定波長域の光の強度との差を低減するように前記光学フィルタを通過した光の強度を補正する強度補正部を備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炉内観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−133950(P2010−133950A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254578(P2009−254578)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】