説明

炉壁の熱膨張吸収構造

【課題】炉内に対して膨張代が通じてなく、しかも高さ方向のみでなく水平方向の熱膨張も吸収できる炉壁の熱膨張吸収構造を提供すること。
【解決手段】円筒炉における炉壁の熱膨張吸収部4に、下面は下部炉壁1bで形成された水平面Xで支持され、背面は上部炉壁1aの内面Zと接するようにした耐火ブロック4aを周方向に配置し、この耐火ブロック4aの背面に耐火ウール4bを充填した高さ方向の膨張代Aを設け、かつ鉄皮3側は耐熱布4cでガスシールした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒炉における炉壁の熱膨張吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄皮内面を耐火物でライニングした縦型の円筒炉において鉄皮又は耐火物の熱膨張吸収を行う場合、通常、予想膨張量に応じた膨張代が設けられるが、円筒炉において熱膨張は高さ方向のみでなく水平方向にも生じる場合がある。
【0003】
例えば図6には円筒炉1の出口側に連絡管5が連結されている場合を示す。円筒炉1及び連絡管5は鉄皮3内面に炉壁耐火物2がライニングされてなる。この場合、円筒炉1の高さ方向の熱膨張及び連絡管5の水平方向の熱膨張を吸収するため、熱膨張吸収部4が設けられる。
【0004】
図4は熱膨張吸収部4の従来例を示す。高さ方向の膨張代としてA、水平方向の膨張代としてBの隙間が設けられ、これらの隙間には可縮性のある耐火ウール4bが充填されている。また、鉄皮3の外側部分では耐熱布4cにより上下の鉄皮3を連絡し、上下の鉄皮3の相対移動に対して自在な移動を可能としつつガスシールを行っている。
【0005】
ところが、この従来の熱膨張吸収構造では、炉内に対して膨張代Aが通じているため、とくにダストの多い高温ガスを取り扱う炉では炉の運転停止とともに同部分にダストが侵入し圧縮され、次第に伸縮機能を消失し大きな膨張力が鉄皮や耐火物に作用する。そして、この膨張力により耐火物損傷や鉄皮変形に至る。このため、定期的に炉内から膨張代部分の清掃が必要となっていた。
【0006】
一方、この膨張代部分が炉内に通じるのを避けるため、図5に示すように上下部分を重ねる構造もあるが、この構造では、高さ方向の膨張吸収のみで水平方向の膨張吸収はできない。
【0007】
また、特許文献1には、上下の炉壁を段差をもって接合する構造が開示されているが、この構造でも、高さ方向の膨張吸収のみで水平方向の膨張吸収はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−162169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、炉内に対して膨張代が通じてなく、しかも高さ方向のみでなく水平方向の熱膨張も吸収できる炉壁の熱膨張吸収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の炉壁の熱膨張吸収構造は、円筒炉における炉壁の熱膨張吸収部に、下面は下部炉壁で形成された水平面で支持され、背面は上部炉壁の内面と接するようにした耐火ブロックを周方向に配置し、この耐火ブロックの背面に耐火ウールを充填した高さ方向の膨張代を設け、かつ鉄皮側は耐熱布でガスシールしたものである。
【0011】
このように、本発明では、上部炉壁と下部炉壁との間に設けられた熱膨張吸収部が炉内に通じるのを防ぐため、熱膨張吸収部に耐火ブロックを周方向に配置し、この耐火ブロックの下面は下部炉壁で形成された水平面で支持され、かつ背面は上部炉壁の内面と接する構造とすることで、高さ方向の熱膨張は耐火ブロックの背面に設けた膨張代部分で吸収する。つまり、耐火ブロックの背面は上部炉壁の内面と接しているため、高さ方向の熱膨張はこの接した部分が摺動することにより吸収できる。また、この膨張代部分は耐火ブロックの背面にあり、炉内に開放されていないため、ダスト侵入を防止できる。一方、水平方向の熱膨張については、耐火ブロックの下面を支持している下部炉壁との摺動により吸収できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱膨張吸収構造では熱膨張吸収部分(膨張代部分)が炉内に通じていないため、ダスト侵入による膨張吸収能力の低下を防止でき、膨張反力による耐火物や鉄皮の損傷を防止できる。
【0013】
また、本発明の熱膨張吸収構造では、上記の効果を奏しつつ、高さ方向のみでなく水平方向の熱膨張も吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の熱膨張吸収構造を示す縦断面図である。
【図2】図1のC−C断面図である。
【図3】図1の初期状態から熱膨張した状態を示す縦断面図である。
【図4】従来の熱膨張吸収構造を示す縦断面図である。
【図5】従来の熱膨張吸収構造を示す縦断面図である。
【図6】円筒炉の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施例に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の熱膨張吸収構造を示す縦断面図、図2は図1のC−C断面図である。
【0017】
上部炉壁1aと下部炉壁1bとの間の熱膨張吸収部4に耐火ブロック4aが配置されている。この耐火ブロック4aは、図2に示すように放射状に等間隔で分割され、下部炉壁1bで形成された平面X上に周方向に載置されている。また耐火ブロック4aの背面は、上部炉壁1aの内面Zと接触している。さらに耐火ブロック4aの背面には、耐火ウール4bが充填され、高さ方向の膨張代Aが形成されている。高さ方向の膨張に対しては膨張代A部分が圧縮されることになる。
【0018】
なお、実施例では、耐火ブロック4aの背面側上部を切り欠いて上部炉壁1aの内面Zと接触させるようにしているが、これは、平面X上に載置される耐火ブロック4aの下面の面積を大きくして、耐火ブロック4aの安定性を向上させるためである。
【0019】
耐火ブロック4aは、炉内側へは隣接するブロックとのせりにより単独では移動はできず、背面は上部炉壁1aの内面Zで止められている。したがって、耐火ブロック4aは水平方向へは上部炉壁1aと一体的に移動する。上下炉壁の相対移動は上部炉壁1aと連動して動く耐火ブロック4aが平面X上をすべることにより可能となっている。
【0020】
図3には、図1の初期状態から熱膨張した状態を示す。高さ方向には図1のAはA´まで圧縮され、水平方向には耐火ブロック4aが平面X上をすべり、B´移動している。このように高さ方向の熱膨張に対しては耐火ブロック4aが上部炉壁1aの内面Zで摺動し、水平方向の熱膨張に対しては耐火ブロック4aが平面Xで摺動するので、耐火ブロック4aの背面にある膨張代C部分は炉内ダスト環境からは隔離されている。さらに上下の鉄皮3は鉄皮外側において耐熱布4cで連結され、上下の鉄皮3の相対移動に抵抗することなくガスシールされている。この耐熱布4cは耐火ウール4bで断熱されているため、炉内高温雰囲気からは熱的に保護されている。
【0021】
なお、実施例では、耐火ブロック4aを周方向に放射状に分割したが、分割することなくリング状の一体物としてもよい。ただし、一体物は製作が難しく、熱衝撃等で破損するおそれもあるため、実施例ように周方向に放射状に分割するのが好ましい。
【0022】
また、本発明を適用する円筒炉の横断面形状は、典型的には円形であるが、楕円形であっても本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、熱膨張吸収を必要とする耐火物でライニングされた円筒炉(その煙道管や連絡管も含む)に利用可能である。例えば、高温ガス中に多量のダストを含む廃棄物燃焼炉にとくに有効である。
【符号の説明】
【0024】
1 円筒炉
1a 上部炉壁
1b 下部炉壁
2 炉壁耐火物
3 鉄皮
4 熱膨張吸収部
4a 耐火ブロック
4b 耐熱ウール
4c 耐熱布
5 連絡管
A 高さ方向の膨張代
A´ 高さ方向移動後寸法
B 水平方向の膨張代
B´ 水平方向移動寸法
X 下部炉壁1bで形成された平面(水平方向摺動面)
Z 上部炉壁1aの内面(高さ方向摺動面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒炉における炉壁の熱膨張吸収部に、下面は下部炉壁で形成された水平面で支持され、背面は上部炉壁の内面と接するようにした耐火ブロックを周方向に配置し、この耐火ブロックの背面に耐火ウールを充填した高さ方向の膨張代を設け、かつ鉄皮側は耐熱布でガスシールした炉壁の熱膨張吸収構造。
【請求項2】
前記耐火ブロックは、周方向に放射状に分割されている請求項1に記載の炉壁の熱膨張吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−17899(P2012−17899A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155025(P2010−155025)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】