説明

炎感知器

【課題】 赤外線センサの出力を整流した信号が基準電圧に対して正確に得られるようにして高精度な火災判別を行うことができる炎感知器を提供することを目的とする。
【解決手段】 赤外線センサ1と、赤外線センサ1の出力信号を増幅する増幅手段4と、増幅手段4で増幅された出力信号を整流する整流器5と、整流器5により整流した信号を用いて火災判別を行う判別手段であるMPU6とを備えた炎感知器において、MPU6がその電源電圧を基準電位として、上下に振幅する信号の下側半波を用いて火災判別を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炎感知器に関し、特に炎感知の検出精度を向上させた炎感知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炎感知器は、赤外線センサ(焦電センサ)の出力を増幅し、増幅した出力をMPUで構成された炎判別手段に取り込み、炎判別手段で炎感知を行うようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
図5は一例としての従来の炎感知器のセンサ出力を整流する回路図である。
従来の炎感知器のセンサ出力を整流する回路は、赤外線センサ(図示省略)の出力がコンデンサ101、抵抗102、103、105、FET104からなるソースフォロワに入力され、ダイオード106にによりダイオード検波されて整流されていた。このとき、FET104のVgsとダイオード106のVFが相殺されて、バイアス点が補償される。
このように炎感知器の赤外線センサの出力の波形の上側を検出するのが一般的である。
【特許文献1】特許第3210554号公報(第8頁、図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の炎感知器で、赤外線センサの出力を増幅する場合に、図5に示す回路構成によって上側半波を得るようにしたときに、赤外線センサの出力が小さいと、FETとダイオードとの特性の違いや部品ごとのバラツキがあるため、それらによって得られる出力波形に電圧誤差が生じ、それが正確な火災判別の妨げとなるという問題点があった。
特に、複数の赤外線センサの出力間の比に基づいて火災判別を行う多波長検出方式では、出力が小さいと電圧誤差が無視できず、両者の比率が正確に算出できないため、検出感度を上げることができないという問題点があった。
【0004】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたもので、赤外線センサのセンサ出力を増幅して整流した信号が基準電圧に対して正確に得られるようにして高精度な火災判別を行うことができる炎感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る炎感知器は、赤外線センサと、該赤外線センサの出力信号を増幅する増幅手段と、該増幅手段で増幅された出力信号を用いて火災判別を行う判別手段とを備えた炎感知器において、前記判別手段はその電源電圧を基準電位として、上下に振幅する出力信号の下側半波を用いて火災判別するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は以上説明したように、赤外線センサの出力信号を増幅手段が増幅し、該増幅手段で増幅された出力信号を用いて火災判断を行う判別手段に入力する場合に、判別手段はその電源電圧を基準電位として、上下に振幅する出力信号の下側半波を用いて火災判別するようにしたので、判別手段の電源電圧を基準として正確に整流されることとなり、出力信号の検出精度が向上し、高精度な火災判別を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明に係る実施の形態1の炎感知器の構成を示すブロック図、図2は同炎感知器のMPUの内部構成を示すブロック図、図3は同炎感知器の主赤外線センサの出力信号をMPUに取り込むまでの具体的な構成を示す回路図、図4は炎の分光特性を示すグラフである。
図1に示す炎感知器は、内部に焦電体、高抵抗、FETが組み込まれて構成された焦電素子からなる主赤外線センサ1を備えており、この主赤外線センサ1は炎を検出するためのCO2共鳴放射に関する赤外線を受光し、電気信号に変換して増幅部4に出力する。
増幅器2及びそれに後続する周波数フィルタ3によって増幅部4が構成されており、増幅器4で増幅された信号は、下側整流器5により下側整流されてMPU6に入力される。
【0008】
また、この炎感知器は主赤外線センサ1と同様の構成の副赤外線センサ11を備えており、この副赤外線センサ11は、主赤外線センサ1とは異なる波長帯域の赤外線を受光して電気信号に変換して増幅部14に出力する。
増幅器12及びそれに後続する周波数フィルタ13によって増幅部14が構成されており、増幅器14で増幅された信号は、下側整流器15により下側整流されてMPU6に入力される。
【0009】
MPU6は、図2に示すように、A/D変換器21、CPU22、RAM23、ROM24、タイマ25及びI/O(入出力)回路26を備えており、下側整流器5、15の出力をA/D変換器21を介して取り込んで、後述のように炎が発生しているかどうかを検出し、炎判別する。
MPU6のタイマ25は、A/D変換器21を介して出力を取り込むサンプリング間隔を設定する。
【0010】
また、MPU6はI/O回路26を介して火災信号発生部31と接続されている。火災信号発生部31は、MPU6が炎を検出したと判別したときに、MPU6からの検出信号を受信して火災信号を出力するためのものである。
32は電源部で、各部に電源を供給する。33は電源部32に所定の直流電圧を供給する電源兼信号線、34は電源部32及び電源兼信号線33に設けられ、電源供給されていることを監視する回線電圧監視部で、火災の場合に電源兼信号線33の回線電圧が異常でないことを確認してMPU6に検出信号の出力動作を行わせるようにしている。
【0011】
次に、本発明の実施の形態1に係る炎感知器の主赤外線センサの出力信号をMPUに取り込むまでの具体的な構成について図3に基づいて説明する。
図3において、主赤外線センサ1の出力を増幅する増幅器2はオペアンプで構成され、炎のゆらぎ成分を通過させる周波数フィルタ3は抵抗R1及びコンデンサC1からなる低い周波数帯域をカットするハイパスフィルタ3aと、抵抗R2及びコンデンサC2からなる高い周波数帯域をカットするローパスフィルタ3bとからなる。
【0012】
その増幅器2はコンデンサ8を介して下側整流器5に接続されている。その下側整流器5はオペアンプ5aと、ダイオード5b及び抵抗5cと、コンデンサ8との間に設けられた抵抗5dとで構成されている。
そのオペアンプ5aに増幅器2の出力が入力され、またオペアンプ5aにはMPU6に供給される電源電圧が基準電位として入力されて、信号の基準電位はMPU6の電源電圧とされている。
【0013】
そして、オペアンプ5aの帰還経路には、ダイオード5bが配置されているため、基準電位の上側はほぼクリップされて高い電圧とはならず、オペアンプ5aは下側を出力し、MPU6のA/D変換器21に入力される。
このMPU6のA/D変換器21の分解能は、供給される電源電圧から0Vまでの間を分割することとなり、下側整流器5からの出力は電源電圧を基準電圧としており、下側波の変換のときに、分解能を十分に利用して正確にAD変換できることになる。なお、A/D変換器21への入力は、下側整流器5において、基準電位の上側がほぼクリップされるので、高電圧によるMPU6の破壊は発生しない。
【0014】
電源部32は第1の定電圧IC32aと第2の定電圧IC32aとで構成され、その電源部32には図示しない火災受信機からの電源兼信号線33が接続されている。
また、主赤外線センサ1と直列に基準電位発生素子であるツエナーダイオード8が接続されている。
なお、基準電位を発生させる基準電位発生素子としてツエナーダイオード8を用いているが、ツエナーダイオード8の代わりにシャントレギュレータを用いることもできる。
【0015】
また、図3は炎感知器の主赤外線センサの出力信号をMPUに取り込むまでの具体的な構成を示すが、図1に示す副赤外線センサ11にも図3に増幅部4及び下側整流器5と同様に増幅部14及び下側整流器15が設けられている。
なお、主赤外線センサ1側と相違するのは、副赤外線センサ11側では焦電体の赤外線検出波長がCO2共鳴放射の波長帯域より少しずれた波長帯域(例えば、5.0μm)の信号を出力するように構成されている点である。
【0016】
次に、図4に示す炎感知器の主赤外線センサ1側と副赤外線センサ11側の分光特性に基づいて火災と判別することができる理由について説明する。
図4のグラフにおいて、横軸に波長をとり、縦軸に強度をとると、高温物体から放出されるいわゆる黒体放射による光は実線で示すように連続分布となるのに対し、炎から放射される赤外線には、いわゆるCO2共鳴放射により、点線で示すように特定の波長(例えば、例えば、4.4μm)で赤外線強度が増大する。
【0017】
火災における炎からのピーク波長を主赤外線センサ1側で検出し、そのピークを外した熱放射による波長を副赤外線センサ11側で検出し、両者のセンサ出力の比に基づいて(例えば3:1のとき)火災と判別するものである。
このような2つのセンサの出力信号を対比するときに、MPU6が両出力信号を正確に取り込むことで、高精度な火災判別を行える。わずかな誤差でも出力の比としては大きな違いとなる。
【0018】
次に、本発明に係る実施の形態1の炎感知器の動作について説明する。
主赤外線センサ1と副赤外線センサ11のセンサ出力は、増幅部4、14で各々増幅された後に、下側整流器5、15によりそれぞれ下側整流されてMPU6に入力される。
MPU6のCPU22では、タイマ25に設定されたサンプリング時間が到来すると、A/D変換器21によりA/D変換された主・副赤外線センサ1、11に基づく下側波の信号をサンプリングする。
次に、CPU22は、波形データを作成するための処理を行って波形データを作成し、RAM24に格納する。
こうしてRAM24への波形データの格納が完了する毎に、CPU22は炎かどうかを波形データに基づいて判断する。
【0019】
以上のように本実施の形態1によれば、主・副赤外線センサ1、11から交流成分のセンサ出力を増幅器2、12で増幅した後、それらの信号について下側整流器5、15により整流し、火災判別部であるMPU22の電源電圧を基準電位として信号(下側波)をMPU22に入力するようにしたので、上側の電圧はMPU22の基準電圧付近でクリップされ、下側の電圧が正確に整流されることとなり、高精度な火災判別を行うことができるという効果がある。
【0020】
上記実施の形態1では、主・副赤外線センサ1、11のセンサ出力についてそれぞれMPU6に入力し、火災判別を行うようにしているが、主赤外線センサ1側のセンサ出力だけをMPU6に入力するようにしても火災判別の閾値を設けることによって火災判別を行うことができることはいうまでもなく、逆に多数のセンサを利用できることも勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施の形態1の炎感知器の構成を示すブロック図。
【図2】同炎感知器のMPUの内部構成を示すブロック図。
【図3】同炎感知器の主赤外線センサの出力信号をMPUに取り込むまでの具体的な構成を示す回路図。
【図4】炎の分光特性を示すグラフである。
【図5】従来の炎感知器のセンサ出力を半波整流する回路図。
【符号の説明】
【0022】
1 主赤外線センサ、2 増幅器、3 周波数フィルタ、4 増幅部、5 下側整流器、6 MPU(火災判別部)、11 副赤外線センサ、12 増幅器、13 周波数フィルタ、14 増幅部、15 下側整流器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサと、該赤外線センサの出力信号を増幅する増幅手段と、該増幅手段で増幅された出力信号を用いて火災判別を行う判別手段とを備えた炎感知器において、
前記判別手段はその電源電圧を基準電位として、上下に振幅する出力信号の下側半波を用いて火災判別することを特徴とする炎感知器。
【請求項2】
前記判別手段は前記増幅手段で増幅された出力信号を半波整流する整流器を備え、
前記整流器は、オペアンプと、該オペアンプに設けられたダイオードとを有し、前記オペアンプの動作基準電位を前記判別手段としてのMPUの電源電圧としたことを特徴とする請求項1記載の炎感知器。
【請求項3】
前記赤外線センサは主赤外線センサと副赤外線センサとを有し、
前記判別手段は、各センサの出力信号についてそれぞれ基準電位から下側半波を用いて火災判別を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の炎感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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