説明

炎症性疾患の治療

ヒト等の哺乳類への投与のための、流体状の少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液であって、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは、200-4000の分子量を有し、前記水溶液中に0.01-10mg/mL、好ましくは1-10mg/mLの濃度で溶解している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性疾患の治療のための薬剤、及び炎症性疾患の治療のためのそのような薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
急性の医学的及び外科的緊急事態の特徴は、サイトカインによって誘導される大量の炎症性媒介物質の産生である。急性及び慢性疾患の領域を越えて、高レベルの炎症は早すぎる死亡または費用のかかる病的状態をもたらす。現在、米国のみで167億ドルの医療費に関連した215,000の敗血症(感染により生じる炎症)による死亡があり、全体では、危篤患者が1年につき米国GDPの0.6-1.0%を消費している。同様に、イギリスでは、敗血症が全ての病院または集中治療入院の11%までを占める。敗血症の発生率は、1年につき1.5%増加すると推定される。過去25年にわたる集中的な研究努力にもかかわらず、敗血症、重い外傷、または大手術による死亡率及び罹病率は依然として高い。集中治療室における敗血症は、典型的に50%の死亡率をもたらす。これらの共通の臨床問題を処理する主な普遍的に受け入れられる成分は流体の投与である。多くの医薬処置ストラテジーの中心的部分になっているにもかかわらず、いずれかの場合において重篤患者に常に投与される流体に抗炎症性の特質を付加するための研究はほとんど着手されていない。
【0003】
種々の異なる流体組成物を用いて出血性ショックを治療することは当該技術分野において既知である。しかし、出血性ショックは敗血症性ショックとは全く異なり、出血性ショックを治療するための当該技術分野で既知の組成物が敗血症性ショックを治療するのに有効であろうことを示すものはない。
【0004】
“Survival in rat model of lethal hemorrhagic shock is prolonged following resuscitation with a small volume of a solution containing a drag-reducing polymer derived from aloe vera”(Carlos A. Macias et al., Shock, Vol. 22, No. 2, pp.151-156, 2004)と題した論文中で、出血性の実験室モデルのラットを治療するための、アロエ・ベラから抽出した抵抗減少性ポリマーを含む蘇生液の使用が開示されている。しかし、当該実験データは、コントロールとしての生理食塩水と比較した前記抵抗減少性ポリマーを使用した結果に関して、かなり多義的な結果を示した。また、前記結果は出血症の実験室モデルであった。急性または慢性炎症性疾患の治療を直接的に検討した結果はない。
【0005】
別の例として、WPI登録番号1994-125274/15及びSU-1635330は、15,000-20,000の分子量を有し、出血性ショックの実験モデルに10-20g/Lの濃度で投与される高分子量ポリエチレングリコール(PEG)に基づく溶液を開示している。筆者らにより提唱されている作用メカニズムは、血液の血行力学的効果及び流体力学的特性の増強であると示され、敗血症性ショックの治療に関わる全身性の炎症過程のいずれかの軽減に直接的に関連しない。
【0006】
さらなる例として、“Blood soluble drag-reducing polymers prevent lethality form hemorrhagic shock in acute animal experiments”(Kameneva et al., Biorheology, Vol. 41, pp.53-64, 2004)と題した論文中で、出血性ショックのモデルにおける、抵抗減少性ポリマーとしての3500kDaのポリエチレングリコールの使用が開示されている。しかし、筆者らは彼らの実験モデルにおける低分子量ポリエチレングリコールの無効性を示し、ポリエチレングリコールの効果はその化学的特性に関連しないと結論づけた。筆者らに提唱された作用メカニズムは、高分子量ポリエチレングリコールの抵抗減少性特性に関係し、それらは低分子量ポリエチレングリコールと対照的に、流動抵抗を低下させることが示されている。この提唱されたメカニズムは、敗血症性ショックの治療に関わる全身性の炎症過程のいずれかの軽減に関連しない。
【0007】
ポリエーテルポリオール、特にポリエーテルグリコール、とりわけポリエチレングリコールは、家庭及び産業目的の両方ために広く用いられる物質である。ポリエチレングリコールは、異なる実験条件下で作用するメカニズムについては不明であるが、いくつかの実験室に基づくシナリオで探索されているいくつかの注目すべき特性を有する。ポリエチレングリコールは、実験的移植臓器の機能を改善し(JP Faure et al, American Journal of Transplantation, vol. 4: 495-504, 2004)、実験的脊椎損傷を好転させ(R Borgens and R Shi, FASEB J. vol. 14: 27-35, 2000)、及び実験的に誘発させた大腸癌から保護する(DE Corpet et al. Carcinogenesis, vol. 20, no. 5: 915-918, 1999)。
【0008】
また、当該技術分野で「PEG化」として知られる方法で、治療薬のための溶剤としてポリエチレングリコールを利用することが当該技術分野で既知である。
【0009】
例えば、“PEG-BP-30 Monotherapy Attenuates the Cytokine-Mediated Inflammatory Cascade in Baboon Escherichia coli Septic Shock…”(Espat et al., Journal of Surgical Research, Vol. 59, pp. 153-158, 1995)と題した論文中で、「PEG化」技術に用いられるポリエチレングリコールに連結した可溶性腫瘍壊死因子レセプターの効果が開示され、それは免疫産生力及びクリアランスを低下させ、前記可溶性レセプターの血漿中半減期を増大させる。この研究の実験計画は、ポリエチレングリコールに連結したペプチドに関する他の膨大な研究と同様に欠陥がある。第一に、この研究は非常重要なコントロールを考慮しておらず、すなわちポリエチレングリコールそれ自体の効果を測定していない。第二に、PEG-BP-30が敗血症の誘発前に提供され、当該研究の臨床上の重要性を無価値にしている。従って、この研究に基づいて、炎症性疾患及び敗血症を治療するためのポリエチレングリコールの使用可能性に関して何も結論づけることができない。
【0010】
別の例として、“Plasma expansion by polyethylene-glycol-modified albumin”(Assaly et al., Clinical Science, Vol. 107, pp. 263-272, 2004)と題した論文中で、「PEG化」技術におけるポリエチレングリコールに連結したアルブミンの効果が開示され、それはアルブミンを修飾する。この研究の実験計画にも欠陥があり、非常に重要なコントロール、すなわちポリエチレングリコールそれ自体の投与が欠けている。前述の研究と同様に、PEG-アルブミン処理が敗血症の誘発前に実施され、当該研究のいずれかの臨床上の重要性を無価値にしている。従って、この論文に基づいて、炎症性疾患及び敗血症を治療するためのポリエチレングリコールの使用可能性に関して何も結論づけることができない。
【0011】
FR-A-2316923は、高分子量(6000)ポリエチレングリコールを高濃度(2.5%)で含む多くの成分(ウレタン、エチレングリコール等)を含む複合溶液を開示している。この溶液の有益な効果がポリエチレングリコールの特性に関連しているという証拠は提供されていない。
【0012】
DE-A-10204696は、咳及びくしゃみを引き起こすウイルス感染症を治療するための鼻内噴霧(いくつかの他の物質を含む)でのポリエチレングリコールの使用を開示している。
【0013】
WO-A-2004/047778は、細菌介在性上皮疾患の実験モデルに非常に高濃度で提供される少なくとも5,000ダルトンの高分子量ポリエチレングリコールに基づく溶液を開示している。開示された実施例では、病原体(Pseudomonas aeruginosa)がポリエチレングリコール溶液と混合されて投与された。高分子量、高濃度のポリエチレングリコールは上皮表面と病原体の接触を妨害すると提唱され、それは全身性の炎症過程の軽減には関連しない。病気に起因する成分がすでに完全に明らかであるかもしれない場合、当該開示は、外傷後の急性多病原性敗血症の治療に関連しない。
【0014】
さらに、ポリエチレングリコールは、一般的な臨床行為において腸の下剤として使用されることが知られている。
【0015】
これらの先行する開示のいずれも、重度の急性及び慢性炎症疾患、特に外科的及び医学的緊急事態のための、並びに慢性炎症疾患のための治療について検討していない。
【特許文献1】FR-A-2316923
【特許文献2】DE-A-10204696
【特許文献3】WO-A-2004/047778
【非特許文献1】Carlos A. Macias et al., Shock, Vol. 22, No. 2, pp.151-156, 2004
【非特許文献2】Kameneva et al., Biorheology, Vol. 41, pp.53-64, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
重度の急性及び慢性炎症疾患、特に外科的及び医学的緊急事態のための、並びに慢性炎症疾患のための改良された治療が必要とされている。
【0017】
また、重度の急性及び慢性炎症疾患を弱める及び/または治癒するような治療が必要とされている。
【0018】
さらに、容易に且つ効果的に実施され得るような治療が必要とされている。
【0019】
さらに、ヒトへの投与のための食物及び薬剤の両方における使用が安全であることが知られている活性成分として容易に使用可能な化合物を用いて実施され得るような治療が必要とされている。
【0020】
本発明は、それらの必要性の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第一の特徴点として、本発明は、哺乳類への投与のための水性流体状の少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液を提供し、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは200-4000の分子量を有し、0.01-10mg/mLの濃度で前記水性流体に溶解している。
【0022】
第二の特徴点として、本発明は、哺乳類への投与のための薬剤としての使用のための水性流体状の少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液を提供し、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは200-4000の分子量を有し、炎症性疾患の治療に適した、好ましくは0.01-10mg/mLの濃度で前記水性流体に溶解している。
【0023】
第三の特徴点として、本発明は、少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液の使用を提供し、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは、200-4000の分子量を有し、炎症性疾患の治療、哺乳類への投与のための炎症性疾患を治療するための薬剤の製造に適した、好ましくは0.01-10mg/mLの濃度で前記水溶液に溶解している。
【0024】
第四の特徴点として、本発明は、少なくとも1つのポリエーテルポリオールと水溶液を含む組成物の使用を提供し、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは、200-4000の分子量を有し、炎症性疾患の治療、哺乳類への投与のための炎症性疾患を治療するための薬剤としての同時、別々、または連続使用のための組み合わせた製剤の製造に適した、好ましくは0.01-10mg/mLの濃度で前記水溶液に溶解している。
【0025】
第五の特徴点として、本発明は、200-4000の分子量を有し、ヒトへの投与のための、薬剤としての使用のための、特に炎症性疾患を治療するための組み合わせた製剤として、0.01-10mg/mLの濃度で溶解している少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液を含む組成物を提供する。
【0026】
これらの特徴点のそれぞれにおいて、好ましくは、当該水溶液中の少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は1-10mg/mLである。
【0027】
第六の特徴点として、本発明は、哺乳類への投与のための薬剤を提供し、前記薬剤は水溶液中に少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含み、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは当該薬剤の唯一の活性治療成分からなり、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは、200-4000の分子量を有し、1つ以上のクリスタロイドの水溶液、1つ以上のコロイドの水性コロイド状懸濁液、またはそのような1つ以上のクリスタロイドの水溶液とそのような1つ以上のコロイドのコロイド状懸濁液の混合液から選択される水性流体に溶解している。
【0028】
好ましくは、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの当該水溶液中の濃度は、0.01-10mg/mL、好ましくは1-10mg/mLである。
【0029】
本発明のこれらの特徴点によれば、前記ポリエーテルポリオールは1つのポリエーテルポリオールを含んで良く、または少なくとも2つのポリエーテルポリオールの混合物を含んで良い。前記ポリエーテルポリオールは、好ましくはポリエーテルグリコール、より好ましくはポリエチレングリコールである。前記ポリエチレングリコールは、好ましくは200-1000の分子量を有する。
【0030】
本発明は、他の哺乳類、例えば家庭用ペット(ネコ、イヌ等)、ウマ、家畜(ウシ等)を治療するための獣医学的使用を有しても良いが、非常に好ましくはヒトを治療するための医学的使用を有する。
【0031】
ヒトへの投与のための前記水性流体は、1つ以上のクリスタロイドの水溶液、1つ以上のコロイドの水性コロイド状懸濁液、またはそのような1つ以上のクリスタロイドの水溶液とそのような1つ以上のコロイドのコロイド状懸濁液の混合液を好ましくは含む医薬級の液体、例えば水性静脈内蘇生液、あるいはクモ膜下腔内または腹腔内治療のための水性流体である。好ましい水性クリスタロイド溶液は、乳酸リンガー液、複合乳酸ナトリウム溶液(例えば、131mmol/Lのナトリウム、5mmol/Lのカリウム、2mmol/Lのカルシウム、111mmol/Lの塩化物、29mmol/Lの乳酸塩を含み、pH 6-7、浸透圧278mOsmol/L)、及び通常の生理食塩水(例えば、水中に0.9%に塩化ナトリウム)、あるいはこれらの溶液の2つ以上の混合液を含む。好ましい水性コロイド状懸濁液は、例えば0.9%食塩水中に懸濁したスクシニル化ゼラチン、及び水性懸濁液中にデンプンベースのコロイド状製剤(ヒドロキシエチルデンプンを含む)を含む。前記好ましいクリスタロイド−コロイド状溶液は、1つ以上の水性コロイド状懸濁液と混合して、1つ以上の水性クリスタロイド溶液を含む。
【0032】
前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは、ヒトへの投与のための前記水性流体中に、0.01-10mg/mL、好ましくは1-10mg/mLの濃度(最初の水性流体の容量に関して)で溶解している。
【0033】
第七の特徴点として、本発明は、炎症性疾患、または炎症作用を有する疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、200-4000の分子量を有し、0.01-10mg/mLの濃度で前記水溶液に溶解している少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液を患者へ投与する工程を含む。
【0034】
炎症性疾患または炎症性成分を有する疾患を治療するために、本発明の薬剤溶液は、好ましくは、中枢神経系投与のために静脈内、腹腔内、またはクモ膜下腔内へ投与される。前記投与方法は、静脈内蘇生液の従来の投与、あるいはクモ膜下腔内または腹腔内治療の実施と同様である。前記投与は、単一用量またはある期間の間の複数用量で実施されて良い。
【0035】
非常に好ましい特徴点として、本発明者は、1-7mg/mLの低濃度で投与された低分子量ポリエチレングリコールが主要な内在性の炎症誘発性媒介物質の産生及び/または放出を阻害し、敗血症の誘発の2時間後、すなわち臨床的に妥当なシナリオで提供された場合でさえ、重度の細菌性敗血症の実験モデルの死亡を防ぐことを発見した。さらに、本発明者は、ポリエチレングリコールの前記保護効果は、敗血症に媒介される細胞機能不全の重要な部位であるミトコンドリアの機能の保護によってもたらされるかもしれないという直接的証拠を得た。
【0036】
本発明の実施態様は、ここで、添付の図面に関してのみ例として記載されるであろう。
【0037】
本発明は、急性炎症の実験モデルにおいて、ポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコール−食塩水溶液の投与により、致死的炎症/敗血症における死亡の阻止を含む著しい効果を生じるという本発明者による発見に根拠を置いている。この発見の治療的応用は、例えば蘇生液のような流体、ただしその流体中に抗炎症物質の付加的効果を備えた流体の投与によって臓器機能を維持する/回復させる広く実践され受け入れられている方法を用いる。
【0038】
従って、本発明は、既知の化合物の新しく且つ予期しない医学的使用の発見に部分的に基づき、前記化合物は、本発明者によって得られた実験データによれば、強い抗炎症特性を有し、本発明者の知る限りでは当業者によりこれまで認識されていないものである。本発明によれば、前記ポリエチレングリコール−食塩水溶液は、容易に、安全に、及び効果的に投与され得る。ポリエチレングリコールは、これまでヒトへの使用について安全であると認識され、食物及び薬剤(米国食品薬品局によって“GRAS(Generally Recognised as Safe:一般的に安全と認識される)”と分類されている物質)に広く用いられているため、危篤の人間における救命のための治療的介入としてポリエチレングリコール−食塩水溶液を開発する即時の臨床的機会があると考えられる。さらに、前記ポリエーテルポリオール−食塩水溶液の投与は、標準的治療方法(流体治療)を用いることによって容易に達成されて良く、蘇生液中に前記ポリエーテルポリオール化合物の付加的抗炎症効果を供給する。
【0039】
本発明者により実験的に得られたデータは、蘇生のために内部に用いられる流体(例えば、1つ以上のクリスタロイドの水溶液、1つ以上のコロイドの水性懸濁液、またはそれらの混合液)に溶解した少量のポリエチレングリコールが、敗血症の誘発の2時間後に投与された場合でさえ、重度の敗血症の実験モデルにおける死亡を防ぐことを示す。
【0040】
本発明の薬剤は、急性及び/または慢性的な炎症性媒介物質の放出、例えば、敗血症/敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群、及び重度の炎症反応をともなう大きな外科的処置を含む病態生理学的状態の治療のために、その抗炎症特性により用いられて良い。
【0041】
本発明は、ここで以下の非制限的実施例に関してより詳細に記載されるであろう。
【実施例】
【0042】
<実施例1>
本発明によれば、複合乳酸ナトリウム溶液中にポリエチレングリコールの2つの等張性溶液を調製した。第一の溶液は、複合乳酸ナトリウム溶液中に6.2mg/mLの濃度の前記ポリエチレングリコールを有し、前記ポリエチレングリコールは200の平均分子量を有し、特にSigma社(Poole, UK)から商業的に入手可能である。このポリエチレングリコール溶液は、この後のこれらの実施例中でPEG 200−食塩水として言及される。第二の溶液は、複合乳酸ナトリウム溶液中に6.2mg/mLの濃度の前記ポリエチレングリコールを有し、前記ポリエチレングリコールは4000の平均分子量を有し、特にSigma社(Poole, UK)から商業的に入手可能である。このポリエチレングリコール溶液は、この後のこれらの実施例中でPEG 4000−食塩水として言及される。
【0043】
成体マウスに、重度の炎症を誘発し、消化管系の炎症により5日目までに80%の予測死亡率を有する全身性の菌血症及びエンドトキシン血症を引き起こすザイモサンを腹腔内に注射した。
【0044】
前記等張性ポリエチレングリコール−食塩水溶液(25mL/kg)を腹膜炎の発症2時間後に腹腔内に投与した(その後、一日につき2回、12時間ごとに)。この投与プロトコールは、現実的な臨床上及び治療上の時間枠の両方を表した。10匹のマウス(すなわちn=10)に低分子量(200)ポリエチレングリコール−食塩水溶液(前記第一の溶液)を投与し、残り10匹のマウス(すなわちn=10)に高分子量(4000)ポリエチレングリコール−食塩水溶液(前記第二の溶液)を投与した。さらに13匹のマウス(すなわちn=13)に、コントロールとして、いずれかのポリエチレングリコールも含まない食塩水のみを投与した。
【0045】
当該結果は、敗血症の発症後の時間に対する生存するマウスのパーセンテージを表す生存プロットを示す図1(a)及び(b)に要約される。カッコ内の数字は、当該実験の最初の時点のサンプル数を示す。この前記等張性ポリエチレングリコール−食塩水溶液の投与は、死亡率を55-75%低下させることが分かった(ポリエチレングリコールの分子量に依存する)。前記低分子量(200)ポリエチレングリコールは、前記高分子量(4000)ポリエチレングリコールより生存率を向上させた。
【0046】
この実施例は、本発明に係るポリエチレングリコール−食塩水溶液の投与が、重度の炎症及び敗血症の臨床的に適切なモデルにおける死亡率を実質的に低下させ得ることを示す。
【0047】
<比較例1>
実施例1を、複合乳酸ナトリウム溶液中に30mg/mLの高濃度のポリエチレングリコールを含むポリエチレングリコール4000−食塩水を用いて繰返し、マウス(n=10)に25mL/kgの用量で投与した。これは、有害作用を有し、前記食塩水コントロールと比較した場合でさえ、ザイモサンに誘発された敗血症の結果を悪化させた。当該生存率はほんの24時間後に20%未満であり、48時間後にはゼロであった。これを図2に示す。
【0048】
<実施例2>
実験的エンドトキシン性敗血症は、雌性動物においてより高い死亡率をもたらすことが示されている(MK Angele et al., Shock, Vol. 14, pp. 81-90, 2000)。雌のマウスに、致死量(2.5mg/kg)の大腸菌エンドトキシンリポポリサッカライドを注射し、その2時間後に、コントロールの食塩水(n=15)、または前記低分子量(200)ポリエチレングリコール−食塩水溶液(実施例1の第一の溶液)(n=12)のどちらかの蘇生液を投与した。前記マウスに、その後一日につき2回腹腔内に注射した。
【0049】
当該結果を図3に要約する。
【0050】
コントロール(すなわち、食塩水処理された)マウスは、リポポリサッカライド注射後48時間以内に全て死亡し、一方、ポリエチレングリコール200-食塩水を投与された動物の~35%は生存し、完全に回復した。
【0051】
腹腔内に投与されたエンドトキシンは残存するマクロファージによって瞬時に除去され、ポリエチレングリコール−食塩水の最初の注射が実施される時点で腹膜腔中に存在しないであろうことを留意すべきである。従って、理論に拘束されることなく、本発明者は、リポポリサッカライドの直接的中性化、またはポリエチレングリコールによる当該レセプターとのそれの相互作用の阻害は起こりそうもなく、ポリエチレングリコール−食塩水は、吸収後にリポポリサッカライドにより誘発される炎症過程を妨害することによって、その保護効果を発揮すると考える。
【0052】
この実施例は、本発明に係るポリエチレングリコール−食塩水溶液の投与が致死的エンドトキシン血症及び敗血症における死亡率を実質的に低下させ得るというさらなる証拠を提供する。
【0053】
<実施例3>
高張性の蘇生液は、標準浸透圧の溶液を用いた蘇生と比較して、実験的炎症を軽減することが以前報告されている(Wade CE, Crit Csre, Vol. 6 (5), pp. 397-398, 2002)。しかし、致死的エンドトキシン血症にさらされた(2.5mg/kgの大腸菌リポポリサッカライド)敗血症過敏性の雌のマウスが、等張性(正常血液と同じ浸透圧:293mOsmol/L、6.2mg/mL PEG 200)または高張性(正常血液より高い浸透圧:318mOsmol/L、50mg/mL PEG 200)のどちらかのポリエチレングリコール−食塩水溶液で蘇生された場合(一日に2回の腹腔内注射を用いて)、生存率に変化が見られないことが分かった。前記ポリエチレングリコールは、実施例1の第一の溶液に用いられた低分子量(200)ポリエチレングリコールと同じであった。
【0054】
当該結果を図4に要約する。等張及び高張の両方のポリエチレングリコール−食塩水で処理された群(n=11-12マウス)において、死亡率は同じ程度に低下した。ポリエチレングリコール−食塩水溶液で処理された敗血症過敏性の雌のマウスのおよそ30%は、致死的エンドトキシン血症から完全に回復した。食塩水で処理されたコントロール群(n=15)において、48時間の時点を過ぎて生存した動物はいなかった。これらの結果は、敗血症の間の生存へのポリエチレングリコールの有益な効果は、流体浸透圧への効果によるものではないことを示している。
【0055】
<比較例2>
この実施例において、高濃度の高分子量ポリエチレングリコールの有害な効果を、さらに高濃度の低分子量ポリエチレングリコールの効果と比較した。
【0056】
ザイモサンまたはリポポリサッカライド注射を受けていない正常マウスに、PEG-200濃度100mg/mLのPEG-200−食塩水溶液、またはPEG-4000濃度30mg/mLのPEG-4000−食塩水溶液のどちらかを注入した(25mL/kg)。当該結果を図5に要約する。
【0057】
前記PEG-200−食塩水溶液で処理された動物は全て生存し、疾患または不快の明らかな徴候を示さなかった。
【0058】
対照的に、前記PEG-4000−食塩水溶液で(前記PEG-200−食塩水溶液より約1/3の低濃度で)処理された動物は、当該注射後48時間以内に全て死亡した。またこれを、6.2mg/mLの低濃度で投与されたPEG-4000がザイモサンによって誘発された敗血症の臨床的に適切なモデルにおける生存率を向上させた実施例1(図1)と比較しても良い。
【0059】
<実施例4>
この実施例において、PEG-200−食塩水溶液(1mL/kgの用量中に10% PEG-200)を、大腸菌エンドトキシンリポポリサッカライドの腹腔内注射によって誘発された熱を有するラット(n=10)に、50μg/ kg体重の量で腹腔内に注射した。前記ラットの体温を2時間の期間測定した。比較として、腹腔内への大腸菌エンドトキシンリポポリサッカライドによって発熱させた後、コントロール食塩水を腹腔内に注射されたラット(n=9)について、体温を同様に測定した。当該結果を図6に要約する。各測定時間に対する体温データは、体温の平均値±前記平均値の標準誤差として示されている。
【0060】
ポリエチレングリコール200−食塩水溶液とリポポリサッカライドの両方で処理されたラットの体温は、食塩水とリポポリサッカライドを注射されたラットのそれよりも有意に低いことが分かった(p<0.05)。当該データは、全身性の炎症の重要なインジケーターの1つ、すなわち熱が、本発明に係るポリエチレングリコール−食塩水の1回の腹腔内注射後に著しく低下することを示す。
【0061】
<実施例5>
この実施例において、細菌性エンドトキシンリポポリサッカライド(LPS)によって誘導される主要な炎症誘発性サイトカイン、例えばインターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の産生及び/または放出は、ラットにおけるポリエチレングリコール200−食塩水溶液(実施例1の第一の溶液に用いられた前記低分子量ポリエチレングリコール)の処理によって著しく低下することが分かった。
【0062】
この実施例において、ラットに(a)食塩水と食塩水(n=4);(b)前記低分子量(200)ポリエチレングリコール−食塩水溶液(1mL/kgの用量中に10% PEG)と食塩水(n=4);(c)食塩水と食塩水に溶解した細菌性エンドトキシン−大腸菌リポポリサッカライド(LPS、50μg/kg)(n=6);または(d)前記低分子量(200)ポリエチレングリコール−食塩水溶液と食塩水に溶解した細菌性エンドトキシン−大腸菌リポポリサッカライド(LPS、50μg/kg)(n=6)を連続的に注射した。前記各溶液(LPSを含むまたは含まない溶液のどちらか)の注射の1時間後に、血漿中のIL-1β、IL-6、及びTNF-αの濃度を測定した。当該結果を図7(a)、(b)、及び(c)に要約し、平均±前記平均の標準誤差として表されるデータを示す。カッコ内の数字は、サンプル数を示す。
【0063】
ポリエチレングリコール200−食塩水溶液とリポポリサッカライドの両方で処理されたラットの血漿中のIL-1β、IL-6、及びTNF-αのレベルは、食塩水とリポポリサッカライドを注射されたラットの血漿中よりも有意に低いことが分かった(p<0.05)。
【0064】
この実施例は、本発明に係るポリエチレングリコール−食塩水溶液の投与は、細菌性エンドトキシンによって誘導される全身性炎症の間の主要な炎症誘発性サイトカインの産生及び/または放出を実質的に低下させ得ることを示す。
【0065】
<実施例6>
この実施例は、ポリエチレングリコールが、細菌性エンドトキシン−リポポリサッカライドの細胞エネルギー量への有害作用を低下させることによって、細胞機能を有効に保護することを示す。
【0066】
この実施例において、ポリエチレングリコール400の存在または非存在下で、マクロファージをin vitroにおいてLPSで処理した。“細胞エネルギー量”は、細胞内のアデノシン-5-三リン酸(ATP)−ミトコンドリアによって産生される主要な細胞エネルギー源の量を測定することによって決定される。当該結果を図8に示す。
【0067】
非処理のコントロールにおいて、細胞エネルギーを表す細胞内ATP濃度を測定し、比較のためのベースラインとして100%に設定した。食塩水とLPSで処理後、当該ATP濃度はコントロールのそれの55%に低下した。このLPSによってもたらされた細胞内ATP濃度の低下は、ポリエチレングリコールの存在下で著しく軽減した。これらの条件において、ATP濃度は15%低下した。ポリエチレングリコール−食塩水の濃度は、前記動物実験において生存率が向上したもの(実施例1)と同一である。
【0068】
要するに、これらのデータは、ミトコンドリア(従って、細胞機能)が本発明に係るポリエチレングリコール−食塩水の投与によって保護/防御され得ることを示している。
【0069】
要するに、本発明に係るこれらの実施例は、ポリエチレングリコール−食塩水溶液での処理は、重度の急性全身性炎症及び敗血症の2つの実験モデルにおける死亡率を低下させることを示している。前記ポリエチレングリコール−食塩水は、30%のマウスについて致死的エンドトキシン血症から保護し、80%の死亡率が予測されるザイモサンにより誘発される実験的腹膜炎における死亡をほとんどなくすことが分かった。エンドトキシンにより誘導される炎症誘発性サイトカインの産生は、ポリエチレングリコール−食塩水の浸透作用によって阻害された。また、ミトコンドリア機能は、本発明に係るポリエチレングリコール−食塩水によって保護/防御され得ることも示されている。これらのデータから、本発明者は、理論に拘束されることなく、重度の炎症性疾患におけるポリエチレングリコール−食塩水の注入の保護効果は、有害な量の炎症誘発性サイトカインの過剰な産生及び/または放出の阻害によるものであり、ミトコンドリア機能の保護及び細胞エネルギーの保存をともなうと結論する。
【0070】
本発明に係る本実施例は、ポリエチレングリコール−食塩液が炎症誘発性媒介物質の産生を減少させ、細胞機能を保護し、重度の敗血症における死亡を防ぐことを示す。当該データの示唆は、臨床医には明白であろうように、即時の商業的及び臨床的応用に関して、到達するのははるか先である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明の実施例1に従い、敗血症の誘発の2時間後、及びその後一日につき2回(12時間ごと)に薬剤で処理されたマウス、並びに比較コントロールサンプルにおける生存率を示す。
【図2】図2は、比較例1に従い、敗血症の誘発の2時間後、及びその後一日につき2回(12時間ごと)に薬剤で処理されたマウスの生存率を示す。
【図3】図3は、実施例2に従い、敗血症の誘発の2時間後、及びその後一日につき2回(12時間ごと)に薬剤で処理されたマウスの生存率を示す。
【図4】図4は、本発明の実施例3に従い、敗血症の誘発の2時間後、及びその後一日につき2回(12時間ごと)に薬剤で処理されたマウス、並びに比較コントロールサンプルにおける生存率を示す。
【図5】図5は、比較例2に従い、12時間ごとに薬剤で処理されたマウスの生存率を示す。
【図6】図6は、本発明の実施例4に従い、薬剤で処理されたマウス、及び比較コントロールサンプルに対する体温及び時間の相関関係を示す。
【図7】図7(a)、(b)、及び(c)は、本発明の実施例5に従い、薬剤で処理されたラット、及び比較コントロールサンプルに対する各サイトカインの血漿中のレベルと当該注射の組成物の相関関係を示す。
【図8】図8は、本発明の実施例6及び比較コントロールに係る溶液で、活性化マクロファージをin vitroにおいて処理した後の細胞エネルギー量の測定結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類への投与のための水性流体状の少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液であって、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは200-4000の分子量を有し、0.01-10mg/mLの濃度で前記水性流体に溶解している水溶液。
【請求項2】
哺乳類への投与のための薬剤としての使用のための水性流体状の少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液であって、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは200-4000の分子量を有し、炎症性疾患の治療に適した濃度で前記水性流体に溶解している水溶液。
【請求項3】
前記水溶液中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は0.01-10mg/mLである、請求項2に記載の水溶液。
【請求項4】
前記水溶液中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は1-10mg/mLである、請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオールは1つのポリエーテルポリオール、または少なくとも2つのポリエーテルポリオールの混合物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項6】
前記ポリエーテルポリオールはポリエーテルグリコールである、請求項1から5のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項7】
前記ポリエーテルポリオールはポリエチレングリコールである、請求項6に記載の水溶液。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールは200-1000の分子量を有する、請求項7に記載の水溶液。
【請求項9】
前記水性流体はヒトへの投与のための水性静脈内蘇生液、あるいはヒトへの投与のためのクモ膜下腔内または腹腔内治療のための水性流体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項10】
前記水性流体は1つ以上のクリスタロイドの水溶液、1つ以上のコロイドの水性コロイド状懸濁液、またはそのような1つ以上のクリスタロイドの水溶液とそのような1つ以上のコロイドのコロイド状懸濁液の混合液である、請求項9に記載の水溶液。
【請求項11】
前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは前記水溶液の唯一の活性治療成分からなる、請求項1から10のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項12】
前記水溶液は、食塩水、乳酸リンガー液、複合乳酸ナトリウム溶液、水性コロイド状懸濁液、または2つ以上のこれらの液体の混合液から選択される液体中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールからなる、請求項11に記載の水溶液。
【請求項13】
少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液の使用であって、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは200-4000の分子量を有し、且つ炎症性疾患の治療、哺乳類への投与のための炎症性疾患を治療するための薬剤の製造に適した濃度で前記水溶液中に溶解している、使用。
【請求項14】
少なくとも1つのポリエーテルポリオールと水溶液を含む組成物の使用であって、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは200-4000の分子量を有し、且つ炎症性疾患の治療、哺乳類への投与のための炎症性疾患を治療するための薬剤としての同時、別々、または連続使用のための組み合わせた製剤の製造に適した濃度で前記水溶液に溶解している、使用。
【請求項15】
前記水溶液中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は0.01-10mg/mLである、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
前記水溶液中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は1-10mg/mLである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記ポリエーテルポリオールは1つのポリエーテルポリオール、または少なくとも2つのポリエーテルポリオールの混合物を含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記ポリエーテルポリオールはポリエーテルグリコールである、請求項13から17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記ポリエーテルポリオールはポリエチレングリコールである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記ポリエチレングリコールは200-1000の分子量を有する、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記水溶液はヒトへの投与のための水性静脈内蘇生液、あるいはヒトへの投与のためのクモ膜下腔内または腹腔内治療のための水性流体である、請求項13から20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記水溶液は1つ以上のクリスタロイドの水溶液、1つ以上のコロイドの水性コロイド状懸濁液、またはそのような1つ以上のクリスタロイドの水溶液とそのような1つ以上のコロイドのコロイド状懸濁液の混合液である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記水溶液は、食塩水、乳酸リンガー液、複合乳酸ナトリウム溶液、水性コロイド状懸濁液、または2つ以上のこれらの液体の混合液から選択される液体中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールからなる、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは前記水溶液の唯一の活性治療成分からなる、請求項13から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
200-4000の分子量を有し、且つヒトへの投与のための、特に炎症性疾患を治療するための薬剤としての使用のための組み合わせた製剤のとして、0.01-10mg/mLの濃度で溶解している少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液を含む組成物。
【請求項26】
前記ポリエーテルポリオールは1つのポリエーテルポリオール、または少なくとも2つのポリエーテルポリオールの混合物を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリエーテルポリオールはポリエーテルグリコールである、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ポリエーテルポリオールはポリエチレングリコールである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリエチレングリコールは200-1000の分子量を有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記水溶液はヒトへの投与のための水性静脈内蘇生液、あるいはヒトへの投与のためのクモ膜下腔内または腹腔内治療のための水性流体である、請求項25から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記水溶液は1つ以上のクリスタロイドの水溶液、1つ以上のコロイドの水性コロイド状懸濁液、またはそのような1つ以上のクリスタロイドの水溶液とそのような1つ以上のコロイドのコロイド状懸濁液の混合液である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記水溶液は、食塩水、乳酸リンガー液、複合乳酸ナトリウム溶液、水性コロイド状懸濁液、または2つ以上のこれらの液体の混合液から選択される液体中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールからなる、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは前記水溶液の唯一の活性治療成分からなる、請求項25から32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記水溶液中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は1-10mg/mLである、請求項25から33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
哺乳類への投与のための薬剤であって、前記薬剤は水溶液中に少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含み、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは前記薬剤の唯一の活性治療成分からなり、前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールは200-4000の分子量を有し、且つ1つ以上のクリスタロイドの水溶液、1つ以上のコロイドの水性コロイド状懸濁液、またはそのような1つ以上のクリスタロイドの水溶液とそのような1つ以上のコロイドのコロイド状懸濁液の混合液から選択される水性流体中に溶解している、薬剤。
【請求項36】
前記水性流体中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は0.01-10mg/mLである、請求項35に記載の薬剤。
【請求項37】
前記水性流体中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は0.01-10mg/mLである、請求項36に記載の薬剤。
【請求項38】
前記ポリエーテルポリオールは1つのポリエーテルポリオール、または少なくとも2つのポリエーテルポリオールの混合物を含む、請求項35から37のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項39】
前記ポリエーテルポリオールはポリエーテルグリコールである、請求項33から38のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項40】
前記ポリエーテルポリオールはポリエチレングリコールである、請求項39に記載の薬剤。
【請求項41】
前記ポリエチレングリコールは200-1000の分子量を有する、請求項40に記載の薬剤。
【請求項42】
前記薬剤は静脈内蘇生液、あるいはクモ膜下腔内または腹腔内治療のための流体である、請求項35から41のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項43】
前記水性流体は、食塩水、乳酸リンガー液、複合乳酸ナトリウム溶液、水性コロイド状懸濁液、または2つ以上のこれらの液体の混合液から選択される、請求項35から42のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項44】
炎症性疾患、または炎症作用を有する疾患を治療する方法であって、前記方法は、200-4000の分子量を有し、0.01-10mg/mLの濃度で前記水溶液に溶解している少なくとも1つのポリエーテルポリオールの水溶液を患者へ投与する工程を含む方法。
【請求項45】
前記水溶液中の前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールの濃度は1-10mg/mLである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記水溶液は静脈内に投与される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記水溶液はクモ膜下腔内に投与される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項48】
前記水溶液は腹腔内に投与される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項49】
前記患者はヒトである、請求項44から48のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−525415(P2008−525415A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547662(P2007−547662)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2005/005070
【国際公開番号】WO2006/067502
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(507210568)ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン・ホスピタルズ・エヌエイチエス・ファウンデーション・トラスト (1)
【Fターム(参考)】