説明

炎症性疾患の診断および処置のためのゲルゾリンの使用

【課題】炎症性疾患を診断し、そして治療を評価するための新しい進歩した試験及び道筋を提供すること。
【解決手段】本発明は炎症性疾患(例えば慢性関節リウマチ)を治療するためのゲルゾリンの使用、及び、炎症性疾患(例えば慢性関節リウマチ)を診断、モニタリング及びその療法を評価するためのゲルゾリンの使用に関する。本発明は血漿中ゲルゾリンレベルは炎症性疾患、慢性関節リウマチ(RA)を有するヒト対象に由来する血液試料中では低減するという意外な発見に基づいている。これらの所見は血漿中ゲルゾリンレベルの低減が慢性関節リウマチの病因物質による間接組織上で生じる一次傷害を反映し、そしてその結果として生じる炎症過程による関節の疼痛及び破壊に進行するという仮説を裏付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲルゾリンの診断及び治療に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は傷害、感染、又は外来物として免疫系により近くされる分子に対する身体の応答である。炎症は患部組織の疼痛、浮腫及び改変された機能を特徴とする。炎症応答を発生させる能力は生存のためには必須であるが、炎症を制御する能力も健康のためには必要である。炎症性疾患は組織又は臓器における異常な機能及び/又は疾患をもたらす場合がある異常なレベルまでの組織又は臓器における免疫系の活性化を特徴とする。
【0003】
炎症性疾患は全世界の罹患及び死亡の主因である。それらは種々の臓器及び組織、例えば血管、心臓、脳、神経、関節、皮膚、肺、眼、胃腸管、腎臓、甲状腺、副腎、膵臓、肝臓、及び筋肉に影響する。炎症性疾患の治療は製薬業界から大きな注目を集めている。炎症性障害に対する治療の選択肢の考察において繰り返されている主題は治療の基準の不十分さである。管理及び治療は進歩を求め続けているが改善が得られない。過去10年における炎症性障害の治療への最も一般的な道筋は、サイトカインのプロ炎症性の役割とそのような分子又はそれらの受容体に結合する化合物に向けられていた。
【0004】
最近の進歩にもかかわらず、炎症性疾患に対する現在の療法はなお非特異的な薬剤を用いた症状の緩解及び炎症の低減、疾患変調剤による疾患進行の緩徐化、及び生活習慣の変更によるクオリティーオブライフの改善に限定されており、全て副作用及び薬剤治療に対する抵抗性に対抗しなければならなかった。副作用の潜在性の低い、より良い治療の選択肢が必要とされている。
【0005】
治療の結果は適切な診断に依存しているため、炎症性疾患を診断するため、及び、それらの疾患の治療をモニタリングするためには、適切な試験を有することが重要である。適切な診断により適切で適時な療法を医師が構築できるようになる。治療の適切なモニタリングにより医師は治療の過程を決定することができ、そして予測される疾患の過程に関して患者及びその家族に対して助言できるようになる。即ち、炎症性疾患を診断し、そして治療を評価するための新しい進歩した試験及び道筋を発見するための強力な動機が存在する。
【0006】
細胞の運動性に関与する細胞内アクチン結合蛋白として最初に発見されたゲルゾリン(非特許文献1)は最近多くの疾患に関与することが示唆されている。血漿中ゲルゾリンの真の機能は不明であるが、臨床及び動物試験によれば、傷害及び炎症による血漿中ゲルゾリンの枯渇が不良な転帰に関連していることがわかった。ゲルゾリン枯渇の考えられる機序はそれが組織破壊により曝露された細胞内の豊富なアクチンに結合することである。より最近では、ゲルゾリンは生物活性炎症メディエーター、リソホスファチジン酸、ジアデノシンホスフェート、Aβペプチド(アルツハイマー病の病因に関与するとされているペプチド)、血小板活性化因子及び恐らくは他のものにも結合することがわかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yin,H.L.Stossel,T.P.(1979)Nature 281,583−6
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ゲルゾリン(GSN)、特に細胞質ゲルゾリン(cGSN)は、細胞の運動性に関与している細胞内アクチン結合蛋白であることに加えて、豊富に存在する分泌蛋白でもある(Yin,H.L.,Kwiatkowski,D.J.,Mole,J.E.&Cole,F.S.(1984)J Biol Chem 259,5271−6)。ゲルゾリンのエキスポートされたアイソフォーム、即ち、血漿中ゲルゾリン(pGSN)と表記されるものは25個の追加的アミノ酸を有し、そして単一の遺伝子のオルタナティブスプライシングから生じる(Kwiatkowski,D.J.,Stossel,T.P.,Orkin,S.H.,Mole,J.E.,Colten,H.R.&Yin,H.L.(1986)Nature 323,455−8)。
【0009】
本発明は血漿中ゲルゾリンレベルは炎症性疾患、慢性関節リウマチ(RA)を有するヒト対象に由来する血液試料中では低減するという意外な発見に基づいている。これらの所見は血漿中ゲルゾリンレベルの低減が慢性関節リウマチの病因物質による間接組織上で生じる一次傷害を反映し、そしてその結果として生じる炎症過程による関節の疼痛及び破壊に進行するという仮説を裏付けている。これらの観察結果は炎症性疾患の顕在化を防止及び/又は抑制するためのゲルゾリンによる治療の根拠を与える。これらの観察結果の1つの相関は血漿中ゲルゾリンレベルのモニタリングが慢性関節リウマチの管理方策の部分となりえることである。
【0010】
特定の機序又は理論に制約されないが、ゲルゾリンは炎症のメディエーターを抑制することによりその保護作用を発揮していると考えられる。即ち、本発明は炎症性疾患を診断するため、及び、療法の効果をモニタリングするためにゲルゾリンを使用する方法に関する。本発明は又炎症及び炎症性疾患を治療するためのゲルゾリンの使用も包含する。
【0011】
本発明の1つの特徴によれば、将来の炎症性疾患(例えば一部の好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を発症する対象の危険性プロファイルを特徴付けるための方法が提供される。方法は対象におけるゲルゾリンのレベルを求めること、及びゲルゾリンのレベルを予備決定値と比較することを含む。炎症性疾患(例えば慢性関節リウマチ)を発症する対象の危険性プロファイルは予備決定値に比較した場合のゲルゾリンのレベルに基づいて特徴付けられる。予備決定レベル以下のゲルゾリンのレベルは対象が炎症性疾患を発症する危険性が上昇していることを示し、そして、予備決定レベル以上のゲルゾリンのレベルは対象が炎症性疾患を発症する危険性が上昇していないことを示す。
【0012】
一部の実施形態においては、方法は、炎症性疾患を評価するために試験1つ以上を実施することを更に含む。炎症性疾患の評価は、対象における炎症のマーカーのレベルを計測することを包含する。炎症のマーカーの例は、限定しないが、CRP、可溶性細胞内接着分子(sICAM−1)、ICAM3、BL−CAM、LFA−2、VCAM−1、NCAM、PECAM、フィブリノーゲン、血清アミロイドA(SAA)、ホスホリパーゼA2に関連するリポ蛋白(LpPlA2)、sCD40リガンド(sCD40L)、ミエロペルオキシダーゼ、インターロイキン−6(IL−6)、又はインターロイキン−8(IL−8)を包含する。
【0013】
本発明の別の特徴によれば、将来の炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を発症する対象の危険性プロファイルを特徴付けるための方法が提供される。方法は、対象におけるゲルゾリンのレベルを求めること、及びゲルゾリンのレベルを第1の予備決定値と比較することにより第1の危険性の値を確立することを含む。対象中の炎症の第2のマーカーのレベルを求め、そして、炎症の第2のマーカーのレベルを第2の予備決定値と比較することにより第2の危険性の値を確立する。第1の危険性の値及び第2の危険性の値の組み合わせに基づいて炎症性疾患を発症する対象の危険性プロファイルを特徴付けし、ここで、第1の危険性の値及び第2の危険性の値の組み合わせは該第1及び第2の危険性の値とは異なる第3の危険性の値を確立するものである。
【0014】
一部の実施形態においては、対象は見かけ上は健康な対象である。
【0015】
一部の実施形態においては、第1の予備決定値が複数の予備決定ゲルゾリンレベルの範囲であり、複数の1つは約250mg/L血漿未満であり、そして該範囲の別のものが約250mg/L血漿超であり、そして比較工程が予備決定ゲルゾリンレベル範囲の該複数のうちのいずれに該対象のゲルゾリンレベルが属するかを調べることを含む。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を有するか、又は発症する危険性のある対象を治療するための方法が提供される。方法はそのような治療を要する対象にゲルゾリンの有効量を投与することにより対象を治療することを含む。
【0017】
本発明の別の特徴によれば、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を有するか、又は発症する危険性のある対象を治療するための方法が提供される。方法はそのような治療を要する対象にゲルゾリンの有効量を投与することにより対象におけるゲルゾリンのレベルを予備決定値より高値まで上昇させることを含む。
【0018】
一部の実施形態においては、対象は、別様にはゲルゾリンによる治療の適応症を有さない。ゲルゾリンは好ましくは、経口、舌下、口内、鼻内、静脈内、筋肉内、関節内、腹腔内、皮下又は局所投与される。ゲルゾリンは予防的に投与されてよい。
【0019】
一部の実施形態においては、治療方法は更に炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するための第2の薬剤を投与することを含む。炎症性疾患を治療するための薬剤の例は、限定しないが、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アムフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ、アナキンラ、アニロラック、アニオトラザフェン、アパゾン、バルサラジド2ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾールプロピオネート、クロベタゾンブチレート、クロピラック、クロチカゾンプロピオネート、コルメタゾンアセテート、コルトドキソン、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、ジフロラソンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニザール、ジフプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラック、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコート、フルフェナミン酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロンアセテート、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオネート、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロプレドンアセテート、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニソロンスルエプタネート、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペンドサンポリスルフェートナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロケアゾン、プロキザゾール、プロキサゾールシトレート、リメキソロン、ロマザリト、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、ズリンダック、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン又はゾメピラックナトリウムを包含する。
【0020】
抗炎症剤は又シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤を包含する。シクロオキシゲナーゼは種々のプロスタグランジン及びトロンボキサンをアラキドン酸から生産する大部分の組織に存在する酵素複合体である。非ステロイド抗炎症剤はシクロオキシゲナーゼ(プロスタグランジンG/Hシンターゼ及び/又はプロスタグランジンエンドパーオキシドシンターゼとしても知られている)の阻害を介して大部分のそれらの抗炎症、鎮痛及び解熱活性を発揮し、そしてホルモン誘導子宮収縮及び特定の型の癌の成長を抑制する。当初は、シクロオキシゲナーゼのわずか1つの形態のみ、即ち「構成的酵素」又はシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)が知られていた。これは元はウシ精嚢において発見されていた。
【0021】
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)は当初はニワトリ、ネズミ及びヒトの原料からクローニングされ、配列決定され、そして特徴付けられていた(例えばCromlishらに1996年8月6日に発行され、Merck Frosst Canada,Inc.,Kirkland,CAに譲渡された、「Human cyclooxygenase−2 cDNA and assays for evaluating cyclooxygenase−2 activity」と題された米国特許5,543,297参照)。この酵素はCOX−1とは異なる。COX−2は有糸分裂促進物質、内毒素、ホルモン、サイトカイン及び成長因子を包含する多くの物質により迅速に、そして容易に誘導される。プロスタグランジンは生理学的及び病理学的な役割の両方を有しているため、構成的酵素COX−1は大部分においてプロスタグランジンの内因性基礎放出を担っており、そしてこのため胃腸の一体性及び腎血流の維持のようなその生理学的機能において重要であると考えられる。これとは対照的に、誘導型のCOX−2は主にプロスタグランジンの病理学的作用を担っており、この場合、酵素の急速な誘導は、炎症物質、ホルモン、成長因子及びサイトカインのような物質に応答して生じる。従って、COX−2の選択的阻害剤は従来の非ステロイド抗炎症剤と同様の抗炎症、解熱及び鎮痛特性を有し、そして追加的にはホルモン誘導子宮収縮を抑制し、更に潜在的な抗ガン作用を有するが、副作用は低減されていると考えられる。特に、このようなCOX−2阻害剤は胃腸毒性の低減された潜在性、腎副作用の低減された潜在性、出血回数の低減された作用、及び恐らくはアスピリン感受性喘息対象における喘息発作を誘導する低下した潜在性を有し、そのため本発明によれば有用であると考えられる。
【0022】
多くの選択的COX−2阻害剤が当該分野で知られている。選択的COX−2阻害剤の例は限定しないが、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、バルデコキシブ(Bextra(登録商標))、及びロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))を包含する。選択的COX−2阻害剤は又限定しないが、米国特許5,474,995「COX−2の阻害剤としてのフェニル複素環」;米国特許5,521,213「シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤としてのジアリール2環複素環」;米国特許5,536,752「COX−2阻害剤としてのフェニル複素環」;米国特許5,550,142「COX−2阻害剤としてのフェニル複素環」;米国特許5,552,422「抗炎症剤としてのアリール置換5,5縮合芳香族窒素化合物」;米国特許5,604,253「シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのN−ベンジルインドール−3−イルプロパン酸誘導体」;米国特許5,604,260「シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤としての5−メタンスルホンアミド−1−インダノン」;米国特許5,639,780「シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのN−ベンジルインドール−3−イルブタン酸誘導体」;米国特許5,677,318「抗炎症剤としてのジフェニル−1,2,3−チアジアゾール」;米国特許5,691,374「COX−2阻害剤としてのジアリール−5−酸化−2−(5H)−フラノン」;米国特許5,698,584「COX−2阻害剤のプロドラッグとしての3,4−ジアリール−2−ヒドロキシ−2,5−ジヒドロフラン」;米国特許5,710,140「COX−2阻害剤としてのフェニル複素環」;米国特許5,733,909「COX−2阻害剤のプロドラッグとしてのジフェニルスチルベン」;米国特許5,789,413「COX−2阻害剤のプロドラッグとしてのアルキル化スチレン」;米国特許5,817,700「シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのビスアリールシクロブテン誘導体」;米国特許5,849,943「シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤として有用なスチルベン誘導体」;米国特許5,861,419「選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤としての置換ピリジン」;米国特許5,922,742「選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤としてのピリジニル−2−シクロペンテン−1−オン」;米国特許5,925,631「COX−2阻害剤のプロドラッグとしてのアルキル化スチレン」に記載されたCOX−2阻害剤を包含し;これらの全てはMerck Frosst Canada,Inc.(Kirkland,CA)に共通して譲渡されている。別のCOX−2阻害剤もまた「Substituted sulfonylphenylheterocycles as cyclooxygenase−2 and 5−lipoxygenase inhibitors」と題されたG.D.Searle&Co.(Skokie,IL)に譲渡された米国特許5,643,933に記載されている。
【0023】
上記したCOX−2阻害剤の多くは選択的COX−2阻害剤のプロドラッグであり、そして活性で選択的なCOX−2阻害剤へのインビボの返還によりその作用を発揮する。上記COX−2阻害剤プロドラッグから形成された活性で選択的なCOX−2阻害剤は1995年1月5日に公開されたWO95/00501、1995年7月13日に公開されたWO95/18799、及び1995年12月12日に発行された米国特許5,474,995に詳細に説明されている。「Human cyclooxygenase−2 cDNA and assays for evaluating cyclooxygenase−2 activity」と題された米国特許5,543,297の教示があれば、当業者はある薬剤が選択的COX−2阻害剤又はCOX−2阻害剤の前駆体であるかを判定することができ、したがって本発明の部分を構成する。
【0024】
一部の実施形態においては、方法は更に慢性関節リウマチを治療するための第2の薬剤を投与することを包含する。慢性関節リウマチを治療するための薬剤の例は限定しないが、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)、クロロキン(アラレン)、メトトレキセート、スルファサラジン(アズルフィジン)、レフルノミド(アラバ)、アザチオプリン(イムラン)、ペニシラミン(クプリミン又はデペン)、金塩(リダウラ又はオウロレート)、ミノサイクリン(ダイナシン又はミノシン)、シクロスポリン(ネオラル又はサンジムン)、シクロホスファミド(サイトキサン又はネオサル)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、アナキンラ(キネレット)又はアダリムマブ(フミラ)を包含する。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)の危険性を低下するために対象を治療するための方法が提供される。方法は対象がゲルゾリンの正常値未満を有することが分かっているという根拠に基づき対象を選択すること、及び、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を対象が発症する危険性を低減するためにゲルゾリン及び/又は第2の薬剤の有効量を対象に投与することを含む。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)の危険性を低下するために対象を治療するための方法が提供される。方法は対象がゲルゾリンの正常値未満を有することが分かっているという根拠に基づき対象を選択すること、及び、予備決定値より高値まで対象におけるゲルゾリンのレベルを上昇させるために対象にゲルゾリン及び/又は第2の薬剤の有効量を投与することを含む。
【0027】
一部の実施形態においては、方法は更に、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するための第2の薬剤を対象に投与することを含む。炎症性疾患及び慢性関節リウマチを治療するための薬剤の例は上記した通りである。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、ゲルゾリンの正常未満のレベルを有する対象を治療するための方法が提供される。方法は炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するため、又はその危険性を低減するために第1の療法で対象を治療することを含む。対象におけるゲルゾリンのレベルを求める。ゲルゾリンのレベルをゲルゾリンの予備決定レベル(例えば見かけ上健康な対照集団におけるもの)に相当する予備決定レベルと比較する。ゲルゾリンの予備決定レベルに到達していなければ、ゲルゾリンの予備決定レベルに到達するまで炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するため、又はその危険性を低減するための第2の薬剤で対象を治療する。
【0029】
「ゲルゾリンの正常未満のレベル」とは対象のある集団に関する測定された平均レベルよりも少なくとも10%低値のゲルゾリンレベルである。平均ゲルゾリンレベルは対象の特定の集団に応じたものとなる。例えば見かけ上健康な集団は、以前の状態を有していた対象の集団が有する者とは異なるゲルゾリンの「正常」範囲を有することになる。一部の実施形態においては、ゲルゾリンレベルは、対象のある集団に関する測定された平均レベルよりも少なくとも10%低値である。他の実施形態においては、ゲルゾリンレベルは、対象のある集団に関する測定された平均レベルよりも少なくとも20%低値である。更に他の実施形態においては、ゲルゾリンレベルは、対象のある集団に関する測定された平均レベルよりも少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%低値である。1つの実施形態においては、ゲルゾリンレベルは約250mg/L血漿未満である。他の重要な実施形態においては、ゲルゾリンレベルは約2.4μM/L(マイクロモル/リットル)血漿未満である。
【0030】
一部の実施形態においては、対象は、別様には薬剤による治療の適応症を有さない。薬剤がゲルゾリンである場合はゲルゾリンによる治療の適応症を有さない対象はゲルゾリンによる治療を要する兆候又は症状を有さない対象である。ゲルゾリンは敗血症及び感染症の治療に適応される。ゲルゾリンは又アクチン関連障害、例えば成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、劇症肝壊死症、急性腎障害、筋肉傷害、BUN及び/又はクレアチニン値上昇を特徴とする障害の治療に適応される。アクチン関連障害は当該分野で知られている。
【0031】
他の実施形態においては、対象は見かけ上健康である。本明細書においては、「見かけ上健康な対象」とは、疾患の兆候及び/又は症状を有さない対象である。
【0032】
本発明の別の特徴によれば、対象における炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するため、又はその危険性を低減するための療法の有効性を評価するための方法が提供される。方法は炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するため、又はその危険性を低減するための薬剤を用いた療法を受けている対象におけるゲルゾリンのレベルを求めることを含む。得られたゲルゾリンのレベルをゲルゾリンのレベルに相当する予備決定値(例えば見かけ上健康な対照集団におけるもの)と比較する。ゲルゾリンのレベルが予備決定レベルより高値であるかどうかの判定が、療法が有効であるかどうかを示す。一部の実施形態においては、ゲルゾリンのレベルを求めることは、経時的にゲルゾリンの対象中レベルをモニタリングするために反復される。
【0033】
療法はゲルゾリン、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アムフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ、アナキンラ、アニロラック、アニオトラザフェン、アパゾン、バルサラジド2ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾールプロピオネート、クロベタゾンブチレート、クロピラック、クロチカゾンプロピオネート、コルメタゾンアセテート、コルトドキソン、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、ジフロラソンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニザール、ジフプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラック、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコート、フルフェナミン酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロンアセテート、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオネート、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロプレドンアセテート、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニソロンスルエプタネート、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペンドサンポリスルフェートナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロケアゾン、プロキザゾール、プロキサゾールシトレート、リメキソロン、ロマザリト、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、ズリンダック、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラックナトリウム、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)、クロロキン(アラレン)、メトトレキセート、スルファサラジン(アズルフィジン)、レフルノミド(アラバ)、アザチオプリン(イムラン)、ペニシラミン(クプリミン又はデペン)、金塩(リダウラ又はオウロレート)、ミノサイクリン(ダイナシン又はミノシン)、シクロスポリン(ネオラル又はサンジムン)、シクロホスファミド(サイトキサン又はネオサル)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、アナキンラ(キネレット)又はアダリムマブ(フミラ)を用いて行ってよい。
【0034】
本発明の更に別の特徴によれば、対象における療法の経過に関して決定を下すための方法が提供される。方法は、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するため、又はその危険性を低減するための療法を受けている対象におけるゲルゾリンのレベルを求めることを含む。ゲルゾリンのレベルは、ゲルゾリンのレベルに相当する予備決定値(例えば見かけ上健康な対照集団におけるもの)と比較される。求められたゲルゾリンのレベルが予備決定レベル以上又は以下であるかどうかを判定し、そしてそのような判定に基づいて療法の経過に関する決定が下される。一部の実施形態においては、経時的にゲルゾリンの対象中レベルをモニタリングするために、ゲルゾリンのレベルを求めることは反復される。
【0035】
以下の実施形態は特段の記載が無い限り本明細書に記載する本発明の種々の特徴に適用される。
【0036】
炎症性疾患は関節炎、慢性関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性結腸炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、血管炎(結節性多発性動脈炎、側頭動脈炎、ヴェーゲナー肉腫、高安動脈炎、又はベーチェット症候群)、炎症性神経障害、乾癬、全身エリテマトーデス(SLE)、慢性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、アジソン病、リウマチ性多発性筋痛、シェーグレン症候群又はチャーグ−ストラウス症候群であってよい。一部の重要な実施形態においては、炎症性疾患は慢性関節リウマチである。
【0037】
ゲルゾリンのレベルは対象の体液中のものであってよい。体液の例は限定しないが、血液、血漿、血清、尿、滑液又は肺胞液を包含する。
【0038】
ゲルゾリンのレベルは対象の身体組織中のものであってよい。身体組織は関節、胃腸、甲状腺、副腎、血管、肺、腎臓、心臓、皮膚、眼、脳、膵臓、肝臓、神経又は筋肉の組織であってよい。一部の実施形態においては、対象は見かけ上健康な対象である。
【0039】
一部の実施形態においては、予備決定値は約250mg/L血漿以下である。一部の実施形態においては、ゲルゾリンの予備決定値は約240mg/L、230mg/L、220mg/L、210mg/L、200mg/L、190mg/L、180mg/L、170mg/L、160mg/L、150mg/L、140mg/L、130mg/L、120mg/L、110mg/L、100mg/L、90mg/L、80mg/L、70mg/L、60mg/L、50mg/L、40mg/L、30mg/L、20mg/L又は10mg/L血漿以下である。
【0040】
一部の実施形態においては、予備決定値は約2.4μM/L血漿以下である。一部の実施形態においては、ゲルゾリンの予備決定値は約2.3μM/L、2.2μM/L、2.1μM/L、2.0μM/L、1.9μM/L、1.8μM/L、1.7μM/L、1.6μM/L、1.5μM/L、1.4μM/L、1.3μM/L、1.2μM/L、1.1μM/L、1.0μM/L、0.9μM/L、0.8μM/L、0.7μM/L、0.6μM/L、0.5μM/L、0.4μM/L、0.3μM/L、0.2μM/L血漿以下である。
【0041】
本発明の制限事項の各々は本発明の種々の実施形態を包含できる。従って、何れかの要素または要素の組み合わせを含む本発明の制約事項の各々は本発明の各特徴に包含され得るものと理解される。本発明は他の実施形態も可能であり、そして種々の態様において実施又は実行することができる。本明細書において使用した表現及び用語は説明を目的としており、限定的なものとみなしてはならない。「包含する」、「含む」又は「有する」、「含有する」、「関与する」及びそれらの変形表現は本明細書においては、その後に続いて記載されるアイテム及びその等価物並びに追加的アイテムを包含することを意味している。
【0042】
これら及び他の本発明の特徴、並びに種々の利点及び利用性は発明を実施するための最良の形態を参照すれば自明である。本発明の各特徴は当然ながら種々の実施形態を包含できる。
【0043】
本出願において記載した全ての文書は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
将来の炎症性疾患を発症する対象の危険性プロファイルを特徴付けるための方法であって、下記工程:
該対象におけるゲルゾリンのレベルを求めること、
該ゲルゾリンのレベルを予備決定値と比較すること、及び、
該予備決定値との比較におけるゲルゾリンのレベルに基づいて炎症性疾患を発症する対象の危険性プロファイルを特徴付けること、ここで、該予備決定レベル以下のゲルゾリンのレベルは該対象が炎症性疾患を発症する危険性が上昇していることを示し、該予備決定レベル以上のゲルゾリンのレベルは該対象が炎症性疾患を発症する危険性が上昇していないことを示すこと、
を含む上記方法。
(項目2)
上記炎症性疾患が関節炎、慢性関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性結腸炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、血管炎(結節性多発性動脈炎、側頭動脈炎、ヴェーゲナー肉腫、高安動脈炎、又はベーチェット症候群)、炎症性神経障害、乾癬、全身エリテマトーデス(SLE)、慢性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、アジソン病、リウマチ性多発性筋痛、シェーグレン症候群又はチャーグ−ストラウス症候群である項目1記載の方法。
(項目3)
上記炎症性疾患が慢性関節リウマチである項目2記載の方法。
(項目4)
上記ゲルゾリンのレベルが上記対象の体液中のものである項目1記載の方法。
(項目5)
上記体液が血液、血漿、血清、尿、滑液又は肺胞液である項目4記載の方法。
(項目6)
上記ゲルゾリンのレベルが上記対象の身体組織中のものである項目1記載の方法。
(項目7)
上記身体組織が関節、胃腸、甲状腺、副腎、血管、肺、腎臓、心臓、皮膚、眼、脳、膵臓、肝臓、神経又は筋肉の組織である項目6記載の方法。
(項目8)
上記予備決定値が約250mg/L血漿以下である項目1記載の方法。
(項目9)
上記対象が見かけ上は健康な対象である項目1記載の方法。
(項目10)
炎症性疾患を評価するために1つ以上の試験を実施することを更に含む項目1記載の方法。
(項目11)
上記試験が対象における炎症のマーカーのレベルを計測することである項目10記載の方法。
(項目12)
上記炎症のマーカーがCRP、可溶性細胞内接着分子(sICAM−1)、ICAM3、BL−CAM、LFA−2、VCAM−1、NCAM、PECAM、フィブリノーゲン、血清アミロイドA(SAA)、ホスホリパーゼA2に関連するリポ蛋白(LpPlA2)、sCD40リガンド(sCD40L)、ミエロペルオキシダーゼ、インターロイキン−6(IL−6)、又はインターロイキン−8(IL−8)である項目11記載の方法。
(項目13)
将来の炎症性疾患を発症する対象の危険性プロファイルを特徴付けるための方法であって、下記工程:
該対象におけるゲルゾリンのレベルを求めること、
該ゲルゾリンのレベルを第1の予備決定値と比較することにより第1の危険性の値を確立すること、
該対象中の炎症の第2のマーカーのレベルを求めること、
炎症の該第2のマーカーのレベルを第2の予備決定値と比較することにより第2の危険性の値を確立すること、及び、
該第1の危険性の値及び該第2の危険性の値の組み合わせに基づいて炎症性疾患を発症する対象の危険性プロファイルを特徴づけること、ここで、該第1の危険性の値及び該第2の危険性の値の組み合わせは該第1及び第2の危険性の値とは異なる第3の危険性の値を確立すること、
を含む上記方法。
(項目14)
上記対象が見かけ上は健康な対象である項目13記載の方法。
(項目15)
上記第1の予備決定値が約250mg/L血漿以下である項目13記載の方法。
(項目16)
上記第1の予備決定値が複数の予備決定のゲルゾリンレベルの範囲であり、該複数のうちの1つは約250mg/L血漿未満であり、そして該範囲の別のものが約250mg/L血漿超であり、そして該比較工程が該予備決定のゲルゾリンレベル範囲の該複数のうちのいずれに該対象のゲルゾリンレベルが属するかを調べることを含む項目13記載の方法。
(項目17)
上記炎症性疾患が関節炎、慢性関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性結腸炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、血管炎(結節性多発性動脈炎、側頭動脈炎、ヴェーゲナー肉腫、高安動脈炎、又はベーチェット症候群)、炎症性神経障害、乾癬、全身エリテマトーデス(SLE)、慢性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、アジソン病、リウマチ性多発性筋痛、シェーグレン症候群又はチャーグ−ストラウス症候群である項目13記載の方法。
(項目18)
上記炎症性疾患が慢性関節リウマチである項目17記載の方法。
(項目19)
炎症性疾患を有するか発症する危険性のある対象を治療するための方法であって、下記工程:
そのような治療を必要とする対象にゲルゾリンの有効量を投与することにより該対象を治療すること、
を含む方法。
(項目20)
炎症性疾患を有するか発症する危険性のある対象を治療するための方法であって、下記工程:
そのような治療を必要とする対象にゲルゾリンの有効量を投与することにより該対象のゲルゾリンレベルを予備決定値より高値にまで上昇させること、
を含む方法。
(項目21)
上記対象が別様にはゲルゾリンによる治療の適応症を有さない項目19又は20に記載の方法。
(項目22)
上記炎症性疾患が関節炎、慢性関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性結腸炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、血管炎(結節性多発性動脈炎、側頭動脈炎、ヴェーゲナー肉腫、高安動脈炎、又はベーチェット症候群)、炎症性神経障害、乾癬、全身エリテマトーデス(SLE)、慢性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、アジソン病、リウマチ性多発性筋痛、シェーグレン症候群又はチャーグ−ストラウス症候群である項目19又は20記載の方法。
(項目23)
上記炎症性疾患が慢性関節リウマチである項目22記載の方法。
(項目24)
上記ゲルゾリンが血漿中ゲルゾリン(pGSN)、細胞質ゲルゾリン(cGSN)、アドビリン、ビリン、capG、フライトレス蛋白、フラグミン、セベリン、アドセベリン、プロトビリン、又はスーパービリンである項目19又は20記載の方法。
(項目25)
上記ゲルゾリンが経口、舌下、口内、鼻内、静脈内、筋肉内、関節内、腹腔内、皮下又は局所投与される項目19又は20記載の方法。
(項目26)
上記ゲルゾリンが予防的に投与される項目19又は20記載の方法。
(項目27)
炎症性疾患を治療するための第2の薬剤を投与することを更に含む項目19、20又は23記載の方法。
(項目28)
炎症性疾患を治療するための上記第2の薬剤が、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アムフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ、アナキンラ、アニロラック、アニオトラザフェン、アパゾン、バルサラジド2ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾールプロピオネート、クロベタゾンブチレート、クロピラック、クロチカゾンプロピオネート、コルメタゾンアセテート、コルトドキソン、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、ジフロラソンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニザール、ジフプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラック、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコート、フルフェナミン酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロンアセテート、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオネート、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロプレドンアセテート、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニソロンスルエプタネート、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペンドサンポリスルフェートナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロケアゾン、プロキザゾール、プロキサゾールシトレート、リメキソロン、ロマザリト、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、ズリンダック、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン又はゾメピラックナトリウムである項目27記載の方法。
(項目29)
慢性関節リウマチを治療するための第2の薬剤を投与することを更に含む項目23記載の方法。
(項目30)
慢性関節リウマチを治療するための上記第2の薬剤が、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)、クロロキン(アラレン)、メトトレキセート、スルファサラジン(アズルフィジン)、レフルノミド(アラバ)、アザチオプリン(イムラン)、ペニシラミン(クプリミン又はデペン)、金塩(リダウラ又はオウロレート)、ミノサイクリン(ダイナシン又はミノシン)、シクロスポリン(ネオラル又はサンジムン)、シクロホスファミド(サイトキサン又はネオサル)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、アナキンラ(キネレット)又はアダリムマブ(フミラ)である項目29記載の方法。
(項目31)
下記工程:
対象がゲルゾリンの正常値未満を有することが分かっているという根拠に基づき対象を選択すること、及び、
炎症性疾患を対象が発症する危険性を低減するために有効な量においてゲルゾリン及び/又は第2の薬剤を該対象に投与すること、
を含む、該対象を治療して炎症性疾患の危険性を低減するための方法。
(項目32)
下記工程:
対象がゲルゾリンの正常値未満を有することが分かっているという根拠に基づき対象を選択すること、及び、
予備決定値より高値まで対象におけるゲルゾリンのレベルを上昇させるために有効な量においてゲルゾリン及び/又は第2の薬剤を該対象に投与すること、
を含む、該対象を治療して炎症性疾患の危険性を低減するための方法。
(項目33)
上記対象が別様にはゲルゾリンによる治療の適応症を有さない項目31又は32に記載の方法。
(項目34)
上記炎症性疾患が関節炎、慢性関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性結腸炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、血管炎(結節性多発性動脈炎、側頭動脈炎、ヴェーゲナー肉腫、高安動脈炎、又はベーチェット症候群)、炎症性神経障害、乾癬、全身エリテマトーデス(SLE)、慢性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、アジソン病、リウマチ性多発性筋痛、シェーグレン症候群又はチャーグ−ストラウス症候群である項目31又は32記載の方法。
(項目35)
上記炎症性疾患が慢性関節リウマチである項目34記載の方法。
(項目36)
上記ゲルゾリンが血漿中ゲルゾリン(pGSN)、細胞質ゲルゾリン(cGSN)、アドビリン、ビリン、capG、フライトレス蛋白、フラグミン、セベリン、アドセベリン、プロトビリン、又はスーパービリンである項目31又は32記載の方法。
(項目37)
上記対象が見かけ上は健康である項目31又は32記載の方法。
(項目38)
炎症性疾患を治療するための第2の薬剤を投与することを更に含む項目31、32又は35記載の方法。
(項目39)
上記炎症性疾患を治療するための第2の薬剤が、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アムフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ、アナキンラ、アニロラック、アニオトラザフェン、アパゾン、バルサラジド2ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾールプロピオネート、クロベタゾンブチレート、クロピラック、クロチカゾンプロピオネート、コルメタゾンアセテート、コルトドキソン、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、ジフロラソンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニザール、ジフプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラック、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコート、フルフェナミン酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロンアセテート、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオネート、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロプレドンアセテート、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニソロンスルエプタネート、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペンドサンポリスルフェートナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロケアゾン、プロキザゾール、プロキサゾールシトレート、リメキソロン、ロマザリト、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、ズリンダック、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン又はゾメピラックナトリウムである項目38記載の方法。
(項目40)
慢性関節リウマチを治療するための第2の薬剤を投与することを更に含む項目35記載の方法。
(項目41)
上記慢性関節リウマチを治療するための第2の薬剤がヒドロキシクロロキン(プラケニル)、クロロキン(アラレン)、メトトレキセート、スルファサラジン(アズルフィジン)、レフルノミド(アラバ)、アザチオプリン(イムラン)、ペニシラミン(クプリミン又はデペン)、金塩(リダウラ又はオウロレート)、ミノサイクリン(ダイナシン又はミノシン)、シクロスポリン(ネオラル又はサンジムン)、シクロホスファミド(サイトキサン又はネオサル)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、アナキンラ(キネレット)又はアダリムマブ(フミラ)である項目40記載の方法。
(項目42)
下記工程:
(i)炎症性疾患を治療するため、又はその危険性を低減するための第1の治療薬で対象を治療すること、
(ii)該対象におけるゲルゾリンのレベルを求めること、
(iii)ゲルゾリンの予備決定レベルに相当する予備決定値と、(ii)で求められたゲルゾリンのレベルを比較すること、そしてゲルゾリンの該予備決定レベルが達成されていない場合は、
(iv)炎症性疾患を治療するため、又はその危険性を低減するための第2の治療薬で対象を治療すること、及びゲルゾリンの該予備決定レベルが達成されるまで、(ii)及び(iii)を反復すること、
を含むゲルゾリンの正常未満のレベルを有する対象を治療するための方法。
(項目43)
ゲルゾリンの上記予備決定レベルが見かけ上健康な対照集団におけるゲルゾリンのレベルである項目42記載の方法。
(項目44)
上記予備決定レベルが約250mg/L血漿以上である項目42記載の方法。
(項目45)
上記炎症性疾患が関節炎、慢性関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性結腸炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、血管炎(結節性多発性動脈炎、側頭動脈炎、ヴェーゲナー肉腫、高安動脈炎、又はベーチェット症候群)、炎症性神経障害、乾癬、全身エリテマトーデス(SLE)、慢性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、アジソン病、リウマチ性多発性筋痛、シェーグレン症候群又はチャーグ−ストラウス症候群である項目42記載の方法。
(項目46)
上記炎症性疾患が慢性関節リウマチである項目45記載の方法。
(項目47)
炎症性疾患を治療するため、又はその危険性を低減するための上記第2の薬剤が、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アムフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ、アナキンラ、アニロラック、アニオトラザフェン、アパゾン、バルサラジド2ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾールプロピオネート、クロベタゾンブチレート、クロピラック、クロチカゾンプロピオネート、コルメタゾンアセテート、コルトドキソン、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、ジフロラソンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニザール、ジフプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラック、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコート、フルフェナミン酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロンアセテート、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオネート、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロプレドンアセテート、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニソロンスルエプタネート、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペンドサンポリスルフェートナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロケアゾン、プロキザゾール、プロキサゾールシトレート、リメキソロン、ロマザリト、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、ズリンダック、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン又はゾメピラックナトリウムである項目42記載の方法。
(項目48)
慢性関節リウマチを治療するための第2の薬剤を投与することを更に含む項目46記載の方法。
(項目49)
慢性関節リウマチを治療するための上記第2の薬剤が、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)、クロロキン(アラレン)、メトトレキセート、スルファサラジン(アズルフィジン)、レフルノミド(アラバ)、アザチオプリン(イムラン)、ペニシラミン(クプリミン又はデペン)、金塩(リダウラ又はオウロレート)、ミノサイクリン(ダイナシン又はミノシン)、シクロスポリン(ネオラル又はサンジムン)、シクロホスファミド(サイトキサン又はネオサル)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、アナキンラ(キネレット)又はアダリムマブ(フミラ)である項目48記載の方法。
(項目50)
下記工程:
(i)炎症性疾患を治療するため、又はその危険性を低減するための薬剤を用いた療法を受けている対象におけるゲルゾリンのレベルを求めること、
(ii)見かけ上健康な対照集団におけるゲルゾリンのレベルに相当する予備決定値に(i)で求められたゲルゾリンのレベルを比較すること、及び、
(iii)(i)におけるゲルゾリンのレベルが該予備決定レベル以上であるかどうかを判定すること、該判定は療法が有効であるかどうかを示すものであること、
を含む対象における炎症性疾患を治療するため、又はその危険性を低減するための療法の有効性を評価するための方法。
(項目51)
経時的にゲルゾリンの対象中レベルをモニタリングするために工程(i)及び工程(ii)及び/又は工程(iii)を反復する項目50記載の方法。
(項目52)
上記予備決定値が約250mg/L血漿以下である項目50記載の方法。
(項目53)
上記薬剤が、ゲルゾリン、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アムフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ、アナキンラ、アニロラック、アニオトラザフェン、アパゾン、バルサラジド2ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾールプロピオネート、クロベタゾンブチレート、クロピラック、クロチカゾンプロピオネート、コルメタゾンアセテート、コルトドキソン、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、ジフロラソンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニザール、ジフプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラック、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコート、フルフェナミン酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロンアセテート、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオネート、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロプレドンアセテート、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニソロンスルエプタネート、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペンドサンポリスルフェートナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロケアゾン、プロキザゾール、プロキサゾールシトレート、リメキソロン、ロマザリト、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、ズリンダック、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラックナトリウム、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)、クロロキン(アラレン)、メトトレキセート、スルファサラジン(アズルフィジン)、レフルノミド(アラバ)、アザチオプリン(イムラン)、ペニシラミン(クプリミン又はデペン)、金塩(リダウラ又はオウロレート)、ミノサイクリン(ダイナシン又はミノシン)、シクロスポリン(ネオラル又はサンジムン)、シクロホスファミド(サイトキサン又はネオサル)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、アナキンラ(キネレット)又はアダリムマブ(フミラ)である項目50記載の方法。
(項目54)
下記工程:
(i)炎症性疾患を治療するため、又はその危険性を低減するための療法を受けている対象におけるゲルゾリンのレベルを求めること、
(ii)ゲルゾリンのレベルに相当する予備決定値に(i)で求められたゲルゾリンのレベルを比較すること、
(iii)(i)で求められたゲルゾリンのレベルが予備決定レベル以下であるかどうかを判定すること、及び、
(iv)そのような判定に基づいて療法の経過に関する決定を下すこと、
を含む対象における療法の経過に関して決定を下すための方法。
(項目55)
ゲルゾリンの上記予備決定レベルが見かけ上健康な対照集団におけるゲルゾリンのレベルである項目54記載の方法。
(項目56)
経時的にゲルゾリンの対象中レベルをモニタリングするために工程(i)及び工程(ii)及び/又は工程(iii)を反復する項目54記載の方法。
(項目57)
上記予備決定値が約250mg/L血漿以下である項目54記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は血漿中ゲルゾリン(pGSN)濃度は慢性関節リウマチ(RA)患者においては健康対照と比較して低下しており、そしてRA患者では血中よりも滑液において低値であることを示している。
【図2】図2はRA患者の滑液(SF)中に存在するゲルゾリンが主に血漿中アイソフォームよりなることを示すゲルゾリンの血漿中アイソフォームに特異的な抗体を用いたイムノブロットである。
【図3】図3は敗血症性関節炎:A)スタフィロコッカス・アウレウス(S.アウレウス)誘導関節炎、B)スタフィロコッカス・アウレウス(S.アウレウス)誘導敗血症、及びC)ストレプトコッカス・アガラクチア(Str.アガラクチア)誘導敗血症性関節炎のマウスモデルにおいて血漿中ゲルゾリン(pGSN)濃度が低下することを示すヒストグラムのセットである。低下は試験した最も早期の時点(接種後2日)に生じた。 図面は本発明の可能化のために必要ではないと理解される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
本発明は血漿中ゲルゾリンレベルが炎症性疾患、慢性関節リウマチ(RA)を有するヒト対象由来の血液試料中で低下しているという意外な発見に基づいている。血漿中ゲルゾリンレベルはRAの起因体により発症させられる初期(未知)傷害に応答して低下するという仮説がある。従って、末梢ゲルゾリンの置換は種々の炎症細胞により媒介される二次傷害を緩解することができる。疾患を予測するためのゲルゾリン枯渇のパターン及び疾患を治療するためのゲルゾリンの使用は一般的に炎症性疾患に関しては当てはまると考えられる。
【0046】
即ち、本発明は一部の特徴において、対象の炎症性疾患を治療するために対象にゲルゾリンを投与することが関与している。「治療する」又は「治療」という用語は疾患の予防、緩解、防止又は治癒を包含することを意図している。
【0047】
本明細書においては、「対象」という用語は治療を必要としていてよい何れかの哺乳類を意味する。対象は限定しないが、ヒト、非人霊長類、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、げっ歯類、例えばマウス、ハムスター及びラットを包含する。好ましい対象は人対象である。
【0048】
本明細書においては、「ゲルゾリン」という用語は野生型ゲルゾリン(GenBankアクセッション番号X04412)、ゲルゾリンのアイソフォーム、類縁体、変異体、フラグメント又は機能的誘導体を包含する。
【0049】
ゲルゾリン(GSN)は他の哺乳類蛋白とは異なり、細胞質(cGSN)及び分泌又はエキスポートのアイソフォーム、即ち血漿中ゲルゾリン(pGSN)と称されるものの両方を有し、これらは単一の遺伝子からメッセージのオルタナティブスプライシングにより誘導される(Sunら、J.Biol.Chem.274:33179−33182(1999))。本明細書においては、ゲルゾリンアイソフォームはそのアミノ酸配列において一部僅かに相違を有するゲルゾリンの型を包含し、通常はスプライス変異体又は何らかの翻訳後修飾の結果である。
【0050】
ゲルゾリンはネイティブ並びに合成及び組み換えのゲルゾリン及びゲルゾリン類縁体を包含する。ゲルゾリンは分泌蛋白に豊富に存在する(Yin,H.L.,Kwiatkowski,D.J.,Mole,J.E.&Cole,F.S.(1984)J Biol Chem 259,5271−6)。ゲルゾリンのエキスポートされたアイソフォームであるpGSNは25個の追加的アミノ酸を有し、そして単一の遺伝子のオルタナティブスプライシングから生じる(Kwiatkowski,D.J.,Stossel,T.P.,Orkin,S.H.,Mole,J.E.,Colten,H.R.&Yin,H.L.(1986)Nature 323,455−8)。組み換えヒトゲルゾリン(rhGSN)(Biogen IDEC,Inc.,Cambridge,MA)はE.coli中で生産され、そしてネイティブの蛋白と同じ一次構造を有するが、精製の標準的条件下で、天然の蛋白中には存在するジスルフィド結合により天然のヒト血漿中ゲルゾリンとは異なっている。従って組み換え蛋白は精製後に適宜酸化され、そしてその構造及び機能はヒト血漿中ゲルゾリン特別不可能となる(Wenら、Biochemistry 35:9700−9709(1996))。本発明の重要な治療上の特徴及び実施形態の一部において、rhGSNの使用が好ましい。本発明の重要な治療上の特徴及び実施形態の一部において、pGSNの使用が好ましい。
【0051】
「ゲルゾリン類縁体」とはネイティブのゲルゾリン又はそのフラグメントと機能において実質的に同様の化合物を指す。ゲルゾリン類縁体はゲルゾリン配列と実質的に同様の生物活性アミノ酸配列を包含し、そしてゲルゾリンと実質的に同様な生物活性を保有する置換された、欠失した、伸長された、置き換えられた又は別様に修飾された配列を有してよい。例えば、ゲルゾリンの類縁体はゲルゾリンと同じアミノ酸配列を有さないが、ゲルゾリンの生物活性を保持する程度に十分ゲルゾリンに相同であるものである。生物活性は例えばゲルゾリン類縁体の特性を測定することにより、及び/又は慢性関節リウマチを治療又は防止するゲルゾリン類縁体の能力を測定することにより、調べることができる。ゲルゾリンの生物活性試験の一例はアクチンの核化を刺激するゲルゾリンの能力である。ゲルゾリン生物活性試験は実施例に記載しており、そして当該分野で知られている。
【0052】
「フラグメント」はゲルゾリンの生物活性を維持しているゲルゾリンのセグメントを与えるゲルゾリン分子の何れかの部分を包含し;用語は何れかの原料から、例えば天然に存在するペプチド配列、合成又は化学合成されたペプチド配列及び遺伝子操作されたペプチド配列から作成されたゲルゾリンフラグメントを包含することを意味している。
【0053】
ゲルゾリンの「変異体」はネイティブのゲルゾリン又はそのフラグメントの何れかと構造及び生物活性において実質的に同様である化合物を指す意味を有する。用語変異体は蛋白のゲルゾリンファミリーを包含する。蛋白のゲルゾリンファミリーは同じ折り畳みを採用している約15kDaの相同ドメインのリピートを共有しているアクチン結合蛋白の群である。ゲルゾリンファミリー蛋白の例は限定しないが、アドビリン、ビリン、capG、フライトレス蛋白、フラグミン、セベリン、アドセベリン、プロトビリン及びスーパービリンを包含する。
【0054】
ゲルゾリンの「機能的誘導体」とはゲルゾリンの生物活性と実質的に同様である生物活性を保有している誘導体である。「実質的に同様」とは定量的には異なるが定性的には同じである活性を意味する。例えばゲルゾリンの機能的誘導体はゲルゾリンと同じアミノ酸骨格を含有するが、他の修飾、例えば翻訳後の修飾、例えば、結合したリン脂質、又は共有結合的に連結した炭水化物も、診断試験又は施療的治療の性能のためのそのような修飾の必要性に応じて含有している。本明細書においては、用語はゲルゾリンの化学的誘導体も包含することを意味している。そのような誘導体はゲルゾリンの溶解度、吸収、生物学的半減期等を向上させる場合がある。誘導体は又、ゲルゾリンの毒性を低下させたり、又はゲルゾリンの何れかの望ましくない副作用等を排除又は減衰させる場合がある。そのような作用を媒介することができる化学的部分はRemington’s Pharmaceutical Sciences(1980)に開示されている。そのような部分をゲルゾリンのような分子にカップリングするための操作法は当該分野で良く知られている。「機能的誘導体」という用語はゲルゾリンの「フラグメント」、「変異体」、「類縁体」、又は「化学的誘導体」を包含することを意図している。
【0055】
本発明には、一部の特徴において、対象における炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するための方法が関与している。対象は炎症性疾患を有することが分かっているか、有することが疑われるか、又は有する危険性を有している。ゲルゾリンは対象における炎症性疾患を治療するために有効な量で投与される。
【0056】
本発明の治療方法に対する応答は、例えば治療の生理学的作用、例えば治療施行後の症状の低下又は欠如を調べることにより計測できる。
【0057】
本発明の別の実施形態においては、対象における療法をモニタリングするための方法が提供される。方法では、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するための療法を受けている対象中のゲルゾリンのレベルを求める。ゲルゾリンのレベルをゲルゾリンの予備決定レベル(例えば見かけ上健康な対照集団におけるもの)に相当する予備決定レベルと比較する。ゲルゾリンのレベルが予備決定レベル以下であるかどうかの判定は、対象が同じ療法による継続療法から利益を被るか、又は、療法の変化から利益を被るかを示すものとなる。一部の実施形態においては、経時的にゲルゾリンの対象中レベルをモニタリングするために、ゲルゾリンのレベルを求めることが反復される。一部の実施形態においては、対象は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間以上療法を受け続けている場合がある。一部の実施形態においては、対象は少なくとも3、4、5、6カ月以上療法を受け続けている場合がある。
【0058】
ゲルゾリンを用いた療法の変更はゲルゾリンの用量の増大、あるゲルゾリンから別のゲルゾリンへの切り替え、ゲルゾリンから他の薬剤への切り替え、ゲルゾリン治療用法への別の薬剤の追加、又はこれらの組み合わせを指す。
【0059】
本発明の別の特徴によれば、炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を治療するため、又はその危険性を低減するための療法の有効性を評価するための方法が提供される。方法では炎症性疾患を治療するための療法を受けている対象におけるゲルゾリンのレベルを求める。ゲルゾリンのレベルをゲルゾリンの対照レベル(例えば見かけ上健康な対照集団におけるもの)に相当する予備決定レベルと比較する。ゲルゾリンのレベルが予備決定レベル以上であるという判定は、治療が有効であることを示している。一部の実施形態においては、対象は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間以上療法を受け続けている場合がある。一部の実施形態においては、対象は少なくとも3、4、5、6カ月以上療法を受け続けている場合がある。
【0060】
本発明の1つの特徴は対象における転帰を向上させるための治療の指針となるゲルゾリンの測定に関する。ゲルゾリンの療法中のレベルは炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)の治療に対する応答に関する予測的値を有している。ゲルゾリンの療法中のレベルは疾患の転帰の従来の予想指針に追加的なものである。
【0061】
本発明の特徴から利益を被る対象は例えば慢性関節リウマチのような炎症性疾患を治療又は防止するための療法を受けている対象(即ち「療法中」対象)である。療法中対象は既に診断されており、そして慢性関節リウマチのような炎症性疾患を治療するための療法による治療の経過中にある。療法は本明細書に記載した治療薬の何れかであることができる。療法は又非薬物治療であることができる。重要な実施形態において、療法はゲルゾリンのレベルを上昇させるものである。特に重要な実施形態において、療法はゲルゾリンを用いた療法である。好ましい対象はヒト対象である。本明細書から利益を被る可能性が最も高い対象は、療法中であり、そして約250mg/L(又は2.4μM/L)血漿以下のゲルゾリンレベルを有するヒト対象である。
【0062】
一部の実施形態において、対象は既に疾患を有している。一部の実施形態においては、対象は疾患を有する危険性が上昇している。
【0063】
疾患の危険性因子は当該分野で知られている。例えば慢性関節リウマチの危険因子は年齢(25〜45歳)、女性、白人又はアメリカ原住民、肥満、及び陽性の家族歴を包含する。慢性関節リウマチの危険性の程度は対象が有する危険因子の多重度及び重症度又は程度に依存している。危険因子の存在及び重症度に基づいて対象における慢性関節リウマチのような炎症性疾患の危険性を評価するための危険チャート及び予測アルゴリズムが入手可能である。一部の実施形態においては、炎症性疾患を有する危険性が上昇している対象は見かけ上健康な対象であってよい。見かけ上健康な対象は疾患の兆候又は症状を有さない対象である。
【0064】
対象における炎症性疾患の危険性を評価する別の方法は当該分野で知られている。
【0065】
本発明の好ましい治療はゲルゾリンである。ゲルゾリンは単独、医薬組成物中で、又は他の療法用法と組み合わせて投与してよい。ゲルゾリン及び任意の他の治療薬は同時又は逐次的に投与してよい。他の治療薬を同時に投与する場合、それらは同じか別個の製材中で投与できるが、同じ時間に投与する。他の治療薬及びゲルゾリンの投与が時間的に分離している場合は、他の治療薬は相互に、そしてゲルゾリンとも逐次的に投与してよい。これらの化合物の投与の間の時間の分離は、分単位であってよく、又はより長くてもよい。
【0066】
本発明の特定の方法を実施する場合、対象におけるゲルゾリンのレベルを求めることが必要である。次にこのレベルを予備決定値と比較し、その場合、予備決定値との比較におけるゲルゾリンのレベルは、対象が継続療法から利益を被る尤度を示す。次に療法の変更から得られる可能性のある実質利益の点において対象を特徴付けることができる。
【0067】
対象に関するゲルゾリンのレベルは何れかの当該分野で知られた方法により求めることができる。典型的には、レベルは体液、例えば血液、血清、血漿、リンパ、唾液、尿、滑液中などのゲルゾリンのレベルを計測することにより測定する。レベルはELISA、又はゲルゾリンの存在を測定するための他の従来の手法により測定できる。従来の手法は対象の体液の試料を測定のための商業的研究所に送付することを包含してよい。ゲルゾリンの測定方法は実施例に記載する。
【0068】
本発明では又、対象に関するゲルゾリンのレベルを予備決定値と比較することを行う。予備決定値は種々の形態をとることができる。単一のカットオフ値、例えばメジアン又は平均値であることができる。それは比較群に基づいて決定することができ、その場合、例えばある明示された群における危険性は別の明示された群における危険性の2倍となる。それは範囲であることができ、その場合、例えば被験集団を均等(又は非均等)に分割して群、例えば低危険性群、中危険性群、及び高危険性群とするか、又は4分割し、最低の4分の1が最高の危険性を有する対象であり、そして最高の4分の1が最低の危険性を有する対象とするか、又は3分割し、最低の3分の1が最高の危険性を有する対象であり、そして最高の3分の1が最低の危険性を有するようにする。予備決定値はカットオフ値であってよく、これはカットオフ値以上のゲルゾリンレベルを有する群は比較群と比較して炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を発症する危険性の統計学的に有意な増大を示すという事実により、予備決定される。一部の実施形態においては、比較群はゲルゾリンのより低いレベルを有する群である。
【0069】
予備決定値は選択された対象の特定の集団に応じて変動できる。例えば見かけ上健康な集団は他の状態を有する対象の集団が有するものとは異なるゲルゾリンの「正常な」範囲を有してよい。従って、選択された予備決定値は対象が属するカテゴリを考慮してよい。適切な範囲及びカテゴリは当業者による定型的な実験を超えることなく選択できる。好ましい体液は血液である。一部の実施形態においては、ゲルゾリンの予備決定値は250mg/L血漿以下である。一部の実施形態においては、ゲルゾリンの予備決定値は約240mg/L、230mg/L、220mg/L、210mg/L、200mg/L、190mg/L、180mg/L、170mg/L、160mg/L、150mg/L、140mg/L、130mg/L、120mg/L、110mg/L、100mg/L、90mg/L、80mg/L、70mg/L、60mg/L、50mg/L、40mg/L、30mg/L、20mg/L又は10mg/L血漿以下である。
【0070】
一部の実施形態においては、予備決定値は約2.4μM/L血漿以下である。一部の実施形態においては、ゲルゾリンの予備決定値は約2.3μM/L、2.2μM/L、2.1μM/L、2.0μM/L、1.9μM/L、1.8μM/L、1.7μM/L、1.6μM/L、1.5μM/L、1.4μM/L、1.3μM/L、1.2μM/L、1.1μM/L、1.0μM/L、0.9μM/L、0.8μM/L、0.7μM/L、0.6μM/L、0.5μM/L、0.4μM/L、0.3μM/L、0.2μM/L血漿以下である。
【0071】
ゲルゾリンの重要な予備決定値は健康な対象の集団(即ち疾患の兆候又は症状を有さない対象)に関する平均値である。予備決定値は当然ながら対象が属する対象集団の特性に依存する。危険性を特徴付ける場合、多くの予備決定値が確立される場合がある。
【0072】
現在ゲルゾリンに関する試験のための試薬を製造している商業的入手元が存在する。それらには例えば、Cytoskeleton(Denver,CO)、Sigma(St.Louis,MO)及びCalbiochem(San Diego,CA)が包含される。
【0073】
一部の実施形態においては、本発明は更に炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)の第2のマーカーのレベルと共にゲルゾリンのレベルを測定することを含む。炎症性疾患のマーカーは当業者の知る通りであり、そしてその例は上記した通りである。慢性関節リウマチに関するマーカーの例は、例えば抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)抗体、HLA−DR4及びC反応性蛋白(CRP)を包含する。対象におけるゲルゾリンのレベルを求める。ゲルゾリンのレベルを予備決定値と比較することにより第1の危険性の値を確立する。対象における炎症性疾患の第2のマーカーのレベルをやはり求める。対象における炎症性疾患の第2のマーカーのレベルを第2の予備決定値と比較することにより第2の危険性の値を確立する。次に炎症性疾患(例えば好ましい実施形態においては慢性関節リウマチ)を発症する対象の危険性プロファイルを、第1の危険性の値及び第2の危険性の値の組み合わせに基づいて特徴付け、ここで、第1の危険性の値及び第2の危険性の値の組み合わせは該第1及び第2の危険性の値とは異なる第3の危険性の値を確立するものである。一部の実施形態においては、第3の危険性の値は第1及び第2の危険性の値の何れよりも高値である。好ましい被験対象及び予備決定値は上記した通りである。疾患は上記した炎症性疾患のいずれかであることができる。
【0074】
本発明は対象が継続療法から利益を被るか、又は療法の変更から利益を被るかどうかを判定するための方法を提供する。利益は典型的には疾患の兆候及び症状の低減、又は顕在化からのより迅速な回復である。疾患の兆候、症状及び顕在化は当業者の知る通りである。例えば慢性関節リウマチにおいては、疾患の兆候及び症状は罹患関節の疼痛、浮腫及び過敏性を包含する。
【0075】
これらの方法は患者の治療のため、及び、新しい療法の臨床開発のために重要な意味を有する。対象が継続療法から利益を被るか、又は療法の変更から利益を被るかどうかを判定は臨床上有用である。本発明の方法の臨床上の有用性の一例は療法に応答する可能性が低いか高い対象を発見することを包含する。本発明の方法は又、対象が継続療法から利益を被るか、又は療法の変更から利益を被るかどうかを予測又は判定する場合に有用である。医療専門家は対象に対する予測される実質的利益に基づいて治療のための療法用法を選択する。実質的利益は危険性の利益に対する比から誘導される。本発明は対象が継続療法から利益を被るか、又は療法の変更から利益を被るかどうかの判定を可能とし、これにより医師が療法を選択する場合に支援することができる。
【0076】
臨床上の有用性の別の例は、例えばヒト対象の場合、実質的な利益を得る高い尤度を有する対象の臨床治験のための選択において臨床研究者を支援することを包含する。ここで臨床研究者は臨床治験のための参加基準を決定するために本発明を使用することになる。
【0077】
継続療法から利益を被る対象は、自身の療法中のゲルゾリンレベルが特定の予備決定値に達しているか、自身のゲルゾリンレベルが上昇中である対象である。ゲルゾリンの予備決定値は上記した通りである。療法の変更から利益を被る対象は、自身の療法中のゲルゾリンレベルが特定の予備決定値に達していないか、自身の療法中のゲルゾリンレベルが上昇していない対象である。
【0078】
本明細書においては、「療法の変更」とは既存の療法の用量の増大又は低下、ある療法から別の療法への切り替え、既存の療法への別の療法の追加、又はこれらの組み合わせを指す。ある療法から別の療法への切り替えには、高危険性プロファイルを有する療法への切り替えであるが、予測される利益の尤度が増大する場合が包含される。一部の実施形態においては、好ましい療法はゲルゾリンのレベルを増大させる療法である。既存の療法の用量を増大させることにより療法の変更から利益を被る対象は、例えば、療法中であるが療法の最大耐容性用量又は最大許可用量を投与されておらず、そして自身のゲルゾリンレベルが特定の予備決定値に達していない対象である。そのような例においては、既存の療法の用量はゲルゾリンレベルが特定の予備決定値に達するまで増大させる。一部の場合においては、既存の療法の用量は既存の用量から、療法の最大耐容性用量及び最大許可用量ではない高用量まで増大させる。別の例においては、用量は療法の最大耐容性用量及び最大許可用量まで増大させる。既存の療法の用量を低下させることにより療法の変更から利益を被る対象は、例えば、自身の療法中のゲルゾリンレベルが療法のより低用量で特定の予備決定値に達するか、達することが可能な対象である。
【0079】
既存の療法から別の両方への切り替えにより療法の変更から利益を被る対象は、例えば療法の最大耐容性用量又は最大許可用量にあるが、自身のゲルゾリンレベルが特定の予備決定値に達していない対象である。別の例は、療法の最大耐容性用量又は最大許可用量にはないが、医療専門家により別の療法から利益を被る可能性がより高いと判定されている対象である。そのような判定は、例えば初期療法に対する望ましくない副作用の対象における発生、又は初期療法への応答の欠如に基づく。
【0080】
既存の療法への別の療法の追加により療法の変更から利益を被る対象は、例えば、療法中であるが自身のゲルゾリンレベルが特定の予備決定値に達していない対象である。そのような場合、別の療法を既存の療法に追加する。既存の療法に追加される別の療法は、ゲルゾリンレベルを上昇させることにおいて、既存の療法とは異なる作用機序を有することができる。一部の場合においては、上記した療法の変更の組み合わせを使用してよい。
【0081】
本発明は又療法の有効性を判定するための方法を提供する。有効性は典型的にはゲルゾリンのレベルを上昇させる場合の療法の有効性である。これは場合により陽性応答又は望ましい応答と称される。有効性はゲルゾリンレベルが療法の結果として上昇しているかどうかを判定するゲルゾリン血液試験により判定できる。一部の実施形態においては、有効性の判定は、ゲルゾリンを増大させること、及び、炎症のマーカーのレベルを正常化すること及び/又は白血球(WBC)数を正常化することにおける療法の有効性に基づく。
【0082】
ゲルゾリン計測は典型的にはμM/L(マイクロモル/リットル)、mg/dl(ミリグラム/デシリットル)又はmg/L(ミリグラム/リットル)で報告される。
【0083】
本発明は又、慢性関節リウマチのような炎症性疾患に対する療法を受けている対象における療法の経過に関して決定を下すための方法を提供する。そのような療法の経過はゲルゾリンのレベルに基づいて決定が下される。一部の実施形態においては、対象は既に疾患を有するか、又は炎症性疾患を有する危険性を有する。一部の実施形態においては、対象は炎症性疾患を有する危険性が上昇しており、対象は疾患を有する危険因子1つ以上を有する。
【0084】
治療の量は例えばゲルゾリン又は薬理学的物質又は治療用組成物の量を増大又は低下することにより、投与する治療用組成物を変更することにより、投与経路を変更することにより、投薬時期を変更することによる等、変動させてよい。有効量は治療すべき特定の状態、治療すべき対象の年齢及び身体状態、状態の重症度、治療の持続期間、併用療法(行う場合い)の性質、投与の特定の経路、及び医療専門家の知識及び専門技術の範囲内の同様の要因より変動する。例えば有効量は炎症性疾患を個体が既に有している持続時間に応じたものであることができる。
【0085】
有効量は医療上望ましい結果を与えるために十分な治療薬の用量である。有効量は又、例えば個体がゲルゾリンの異常に低下したレベルを有している程度に応じたものであってよい。本発明の治療薬は炎症性疾患(例えば慢性関節リウマチ)を治療又は防止するために使用され、即ち、それらは炎症性疾患(例えば慢性関節リウマチ)を発症する危険性のある対象において予防的に使用してよい。即ち、有効量は炎症性疾患(例えば慢性関節リウマチ)の発症の危険性低下、緩徐化又は恐らくは防止の全てが可能である量である。当然ながら、治療薬を急性の状況において使用する場合は、それは典型的にはそのような有害事象に起因する医療上望ましくない結果1つ以上を防止するために使用される。
【0086】
有効量を決定することに関与する要因は当該分野で知られており、そして定型的な実験を超えることなく特定できる。一般的に、本発明の薬理学的物質の最大用量(単独又は他の治療薬との組み合わせ)、即ち調和の取れた医療上の判断に従った最高安全用量を使用することが好ましい。しかしながら当業者の知る通り、患者は医療上の理由、心理学的な理由、又は事実上何れかの他の理由により、より低用量又は耐容用量を主張する場合がある。
【0087】
本発明の薬理学的物質の治療有効量は炎症性疾患を治療するために有効な量である。例えば慢性関節リウマチの場合、所望の応答は慢性関節リウマチの進行を抑制することである。これは、単に一時的に慢性関節リウマチの進行を緩徐化することを含んでよいが、永久に慢性関節リウマチの進行を停止させることも含む。これは当該分野で知られた定型的な診断方法によりモニタリングできる。慢性関節リウマチの治療に対する所望の応答は又、慢性関節リウマチの発症を遅延すること、又はむしろ発症を防止することであることもできる。
【0088】
本発明の方法において使用される薬理学的物質は好ましくは滅菌されており、そして対象への投与に適する重量又は容量の単位において所望の応答をもたらすために有効な量のゲルゾリンを含有する。対象に投与すべき薬理学的物質の用量は種々のパラメーターに従って、特に使用される投与様式及び対象の状態に従って、選択することができる。他の要因には所望の治療期間が包含される。対象における応答が適用初回用量において不十分である場合は、より高用量(又は異なるより限局的な送達経路による効果的に高値の用量)をその患者の耐容性の程度まで用いてよい。薬理学的物質の用量は個々の医師又は獣医師により、特に何れかの合併症があった場合には調節されてよい。治療有効量は典型的には1日以上、毎日1回以上の投与において、0.01mg/kg〜約1000mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg〜約500mg/kg、そして最も好ましくは約0.2mg/kg〜約250mg/kgに変動する。
【0089】
ゲルゾリン及び任意の他の治療薬は、それ自体、又は、製薬上許容しうる塩の形態において投与してよい。
【0090】
投与の種々の様式は当業者の知る通りであり、それらは所望の組織、細胞又は体液に本発明の薬理学的物質を効果的に送達する。投与方法は出願の何れかの部分において考察する通りである。本発明は本明細書に開示した投与の特定の様式に限定されない。当該分野の標準的な参考書(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,20th Edition,Lippincott,Williams
and Wilkins,Baltimore MD,2001)は薬学的担体中での種々の薬学的調製品及び製剤の送達のための投与及び製剤の様式を示している。本発明の薬理学的物質の投与に有用な他のプロトコルは当該分野で知られており、その場合、用量、投与予定、投与部位、投与様式等は本明細書に記載したものから変動する。
【0091】
例えば試験目的のため、又は獣医科の治療目的のためのヒト以外の哺乳類への本発明の薬理学的物質の投与は、上記したものと実質的に同じ条件下に行う。当業者の知る通り本発明はヒト及び動物の疾患の両方に適用される。即ち、本発明は畜産獣医用の医薬並びにヒトの治療薬中に使用されることを意図している。
【0092】
投与される場合、本発明の薬学的調製品は製薬上許容しうる量において、そして、製薬上許容しうる組成物中で適用される。「製薬上許容しうる」という用語は悪意の生物活性の有効性を妨害しない非毒性の物質を意味する。そのような調製品は定型的には、塩、緩衝剤、保存料、適合した担体、及び場合により他の治療薬を含有してよい。医薬において使用する場合、塩は製薬上許容しうるものでなければならないが、非製薬上許容性の塩を好都合に使用することによりその製薬上許容しうる塩を製造してよく、そして本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的及び製薬上許容しうる塩は限定しないが、以下の酸、即ち、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから製造されるものを包含する。更に又、製薬上許容しうる塩はナトリウム、カリウム又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩として製造できる。
【0093】
薬理学的物質及び組成物は所望により製薬上許容しうる担体と組み合わせてよい。「製薬上許容しうる担体」という用語は本明細書においては、ヒトへの投与に適する1つ以上の適合する固体又は液体の充填剤、希釈剤又はカプセル化物質を意味する。「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分を組み合わせる有機又は無機の天然または合成の成分を指す。医薬組成物の成分は又本発明の薬理学的物質と、そして相互に、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用が無いような態様において、混合されることができる。
【0094】
医薬組成物は上記した通り適当な緩衝剤、例えば酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、グリシン塩、ホウ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物(又は他の塩基)及び上記した成分の製薬上許容しうる塩を含有してよい。医薬組成物は又場合により適当な保存料、例えば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン及びチメロサールを含有してよい。
【0095】
医薬組成物は好都合には単位剤型において製造してよく、そして製薬分野でよく知られた方法の何れかにより製造してよい。全ての方法は活性剤を、副次的成分1つ以上を構成する担体と会合させる工程を包含する。一般的に組成物は、活性化合物を液体担体、微細分割固体担体、又はその両方と均一及び緊密に会合させること、そして次に必要に応じて製品に形状化することにより製造される。
【0096】
化合物は、それを全身送達することが望まれる場合は、注射により、例えば瞬時注射又は連続注入により非経腸投与するために製剤してよい。注射用の製剤は、単位剤型において、例えばアンプルにおいて、又は他用量容器中で、添加された保存料と共に提示してよい。組成物は油性又は水性のベヒクル中の懸濁液、溶液又は乳液のような形態をとってよく、そして、調製剤、例えば懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤を含有してよい。
【0097】
非経腸投与のための医薬品製剤は水溶性形態の活性化合物の水溶液を包含する。更に又活性化合物の懸濁液を適切な油性注射用懸濁液として製造してよい。適当な親油性の溶媒又はベヒクルは、油脂類、例えばゴマ油、又は合成の脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド又はリポソームを包含する。水性注射用懸濁液は懸濁液の粘度を増大させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランを含有してよい。場合により、懸濁液は又、適当な安定化剤、又は高濃度の溶液の製造を可能にするために化合物の溶解度を上昇させる薬剤を含有してよい。
【0098】
或いは、活性化合物は使用前に適当なベヒクル(例えば食塩水、緩衝液又は滅菌発熱物質非含有水)で再建するための粉末形態であってよい。
【0099】
経口投与に適する組成物は個別の単位として、例えばカプセル、錠剤、丸薬、ロゼンジ剤として提示してよく、各々が活性化合物(例えばゲルゾリン)の所定量を含有する。他の組成物は、シロップ、エリキシル、乳液、又はゲルのような水性液体又は非水性の液体中の懸濁液を包含する。
【0100】
経口使用のための薬学的調製品は固体の賦形剤として得ることができ、場合により得られた混合物を粉砕し、そして所望により適当な補助剤を添加した後に顆粒の混合物を処理して錠剤又はドラジェ剤コアを得る。適当な賦形剤は特に充填剤、例えば糖類、例えば乳糖、スクロース、マンニトール、ソルビトール又はセルロース調製品、例えばトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)である。所望により、錠剤崩壊剤、例えば、交差結合ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加してよい。場合により、経口用製剤は又、食塩水、又は内部酸条件を中和するための緩衝液、即ちEDTA中に製剤してよく、或いは如何なる担体も伴うことなく投与してもよい。
【0101】
同様に特に意図されるものは上記成分の経口用剤型である。成分は誘導体の経口送達が効率的となるように化学修飾されてよい。一般的に、意図される化学修飾は成分分子自体に対する少なくとも1つの部分の結合であり、その場合該部分は(a)蛋白分解の抑制;及び(b)胃又は腸から血流内への取り込みを可能とする。同様に所望な点は成分の全体的安定性の増大及び身体内の循環時間の増大である。そのような部分の例は、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリプロリンを包含する。Abuchowski and Davis,1981,”Soluble Polymer−Enzyme Adducts”,Enzymes as Drugs,Hocenberg and Roberts編、Wiley−Interscience,New York,NY,pp.367−383;Newmarkら、1982,J.Appl.Biochem.4:185−189。使用される他の重合体はポリ−1,3−ジオキサン及びポリ−1,3,6−トリオキサンである。医薬品用途のために好ましいものは、上記した通り、ポリエチレングリコール部分である。
【0102】
成分(又は誘導体)に関して、放出の位置は胃、小腸(十二指腸、空腸、又は回腸)又は大腸であってよい。当業者は胃では溶解しないが十二指腸又は腸内の別の場所で物質を放出する製剤を入手できる。好ましくは、ゲルゾリンの保護によるか、又は腸のような胃の環境よりも先方で生物活性物質を放出することにより、放出は胃の環境の不都合な作用を回避している。
【0103】
完全な胃における抵抗性を確保するためには、少なくともpH5.0に対して不透過性であるコーティングが必要である。腸溶性コーティングとして使用されるより一般的な不活性の成分の例は、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、オイドラギットL30D、アクアテリック、セルロースアセテートフタレート(CAP)、オイドラギットL、オイドラギットS、及びシェラックである。これらのコーティングは混合フィルムとして使用してよい。
【0104】
コーティング又はコーティングの混合物は胃に対する保護を意図しない錠剤上で使用することもできる。これは糖衣、または錠剤を嚥下し易くするためのコーティングを包含する。カプセルは乾燥治療薬、即ち粉末の送達のためのハードシェル(例えばゼラチン)よりなるものであってよく;液体形態の場合は、ソフトゼラチンシェルを使用してよい。悪液質剤のシェル物質は肥厚な澱粉又は他の食用の紙材であってよい。丸薬、ロゼンジ剤、鋳造錠剤又は錠剤粉砕物の場合は、湿式塊状化の手法を使用できる。
【0105】
治療薬は粒径約1mmの顆粒又はペレットの形態の微細多重粒子としての製剤中に包含させることができる。カプセル投与のための物質の製剤は又、粉末、軽度に圧縮された充填物として、又はむしろ錠剤としてもよい。治療薬は圧縮成型できる。
【0106】
着色料及びフレーバー剤は全て包含させてよい。例えば、ゲルゾリンを製剤(例えばリポソーム又は微小球カプセル化による)し、そして次に食用製品、例えば着色料及びフレーバー剤を含有する冷蔵された飲料内に含有させてよい。
【0107】
不活性の物質で治療薬を希釈又は容量増大させてよい。これらの希釈剤は炭水化物、特にマンニトール、乳糖、無水乳糖、セルロース、スクロース、変性デキストラン及び澱粉を包含する。特定の無機塩も充填剤として使用してよく、例えば3リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムが包含される。一部の市販されている希釈剤はFast−Flo、Emdex、STA−Rx1500、エンコンプレス及びアビセルである。
【0108】
錠剤崩壊剤は固体剤型への治療薬の製剤において包含されてよい。錠剤崩壊剤として使用される無機物は限定しないが、澱粉、例えば澱粉系の市販の錠剤崩壊剤、エキスプロタブが包含される。ナトリウム澱粉グリコレート、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然海綿及びベントナイトは全て使用してよい。錠剤崩壊剤の別の形態は不溶性のカチオン交換樹脂である。粉末ガム類を錠剤崩壊剤として、及び結合剤として使用してよく、これらには粉末ガム類、例えば寒天、カラヤ又はトラガカントが包含される。アルギン酸及びそのナトリウム塩もまた錠剤崩壊剤として有用である。
【0109】
結合剤は治療薬を共に保持することにより硬質の錠剤を形成するために使用してよく、天然物、例えばアカシア、トラガカント、澱粉及びゼラチンに由来する物質を包含する。その他にはメチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が包含される。ポリビニルピロリドン(PVP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は共に、治療薬を顆粒化するためにアルコール溶液中で使用される。
【0110】
抗摩擦材を治療薬の製剤中に包含させることにより製剤工程中の付着を防止してよい。潤滑剤は治療薬とダイス壁面との間の層として使用してよく、そしてこれらには限定しないが、ステアリン酸及びそのマグネシウム及びカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油及びワックスが包含される。可溶性の潤滑剤もまた使用してよく、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、カーボワックス4000及び6000が挙げられる。
【0111】
製剤中の薬剤の流動特性を向上させ、そして圧縮の間の再配列を支援するための滑剤を添加してよい。滑剤は澱粉、タルク、発熱性シリカ及び水和型シリコアルミネートを包含してよい。
【0112】
水性の環境中への治療薬の溶解を支援するために、界面活性剤を水和剤として添加してよい。界面活性剤はアニオン性洗剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム及びスルホン酸ジオクチルナトリウムを包含してよい。カチオン性洗剤を使用してよく、そして塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムを包含する。界面活性剤として製剤中に包含させることができる潜在的なノニオン性洗剤を例示すれば、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油10、50及び60、グリセロールモノステアレート、ポリソルベート40、60、65及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースである。これらの界面活性剤はゲルゾリンの製剤中、単独で、又は種々の比における混合物として存在してよい。
【0113】
経口使用できる薬学的調製品はゼラチンから作成されたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールから作成されたソフトシールカプセルを包含する。プッシュフィットカプセルは充填剤、例えば乳糖、結合剤、例えば澱粉、及び/又は潤滑材、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム及び場合により安定化剤との添加混合物として活性成分を含有できる。ソフトカプセルにおいては、活性化合物を適当な液体、例えば油脂類、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁してよい。更に又、安定化剤を添加してよい。
【0114】
経口投与用に製剤される微小球も又使用してよい。そのような微小球は当該分野で良く知られている。経口投与用の全ての製剤はそのような投与に適する用量としなければならない。
【0115】
口内投与のためには、組成物は従来の態様で製剤された錠剤又はロゼンジ剤の形態をとってよい。
【0116】
吸入による投与のためには、本発明により使用する為の化合物は好都合には、加圧パック又はネブライザーから発生するエアロゾルスプレー状の形態において送達してよく、その場合、適当な高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当なガスを使用する。加圧エアロゾルの場合、投与単位は軽量された量を送達するための弁を設けることにより決定してよい。吸入器又は通気器における使用のための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物及び乳糖又はでんぷんのような適当な粉末基剤の粉末混合物を含有するように製剤してよい。
【0117】
同様に本明細書において意図されるものはゲルゾリンの肺送達である。ゲルゾリンは吸入時には哺乳類の肺に送達され、そして肺の上皮内張りを通過して血流に至る。吸入分子の他の報告例はAdjeiら、1990、Pharmaceutical Research,7:565−569;Adjeiら、1990、International Journal of Pharmaceutics,63:135−144(酢酸ロイプロリド);Braquetら、1989、Journal of Cardiovascular Pharmacology,13(補遺5):143−146(エンドセリン−1);Hubbardら、1989、Annals of Internal Medicine,Vol.III,pp.206−212(a1−アンチトリプシン);Smithら、1989、J.Clin.Invest.84:1145−1146(a−1−プロテイナーゼ);Osweinら、1990、「Aerosolization of Proteins」、Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II,Keystone,Colorado,March,(組み換えヒト成長ホルモン);Debsら、1988、J.Immunol.140:3482−3488(インターフェロン−γ及び腫瘍壊死因子アルファ)及びPlatzら、米国特許5,284,656(顆粒球コロニー刺激因子)を包含する。全身作用のための薬剤の肺送達のための方法及び組成物はWongらへの1995年9月19日に発行された米国特許5,451,569に記載されている。
【0118】
本発明の実施における使用のために意図されるものは、治療用製品の肺送達のために設計された広範な機器であり、例えば限定しないが、ネブライザー、計量用量吸入器、及び粉末吸入器が挙げられ、これらは全て当業者の知る通りである。
【0119】
本発明の実施のために適する市販の装置の一部の特定の例は、Mallinckrodt,Inc.,St.Louis,Missouri製造のウルトラベントネブライザー;Marquest Medical Products,Englewood,Colorado製造のAcorn IIネブライザー;Glaxo Inc.,Research Triangle Park,North Carolina製造のベントリン軽量用量吸入器;及びFisons Corp.,Bedford,Massachusetts製造のスピンヘラー粉末吸入器である。
【0120】
このような装置は全てゲルゾリンの供給に適する製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は使用する装置の型に対して特定のものであり、そして療法において有用な通常の希釈剤、アジュバント及び/又は担体に加えて適切な高圧ガス剤を使用してよい。更に又、リポソーム、マイクロカプセル又は微小球、封入複合体又は他の型の担体の使用も意図される。化学的に修飾されたゲルゾリンも又化学修飾の型及び使用する装置の型に応じて種々の製剤中に製造してよい。
【0121】
ジェット式又は超音波式の何れかのネブライザーによる使用に適する製剤は、典型的には、溶液mLあたり生物学的に活性なゲルゾリン約0.1〜25mgの濃度において水中に溶解されたゲルゾリンを含む。製剤は又緩衝液及び単なる糖類(例えばゲルゾリンの安定化及び浸透圧調節のため)も含んでよい。ネブライザー製剤は又エアロゾルを形成する場合に溶液の霧状化により誘発されるゲルゾリンの表面誘導凝集を低減又は防止するために界面活性剤を含有してよい。
【0122】
計量用量吸入装置による使用のための製剤は一般的に界面活性剤を補助剤としながら高圧ガス中に懸濁されたゲルゾリンを含有する微細分割粉末を含む。高圧ガスはこの目的のために使用される何れかの従来の物質、例えばクロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、又はヒドロカーボン、例えばトリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン、又はこれらの組み合わせであってよい。適当な界面活性剤はソルビタントリオレエート及び大豆レシチンを包含する。オレイン酸も又界面活性剤として有用である場合がある。
【0123】
粉末吸入装置から供給するための製剤は、ゲルゾリンを含有する微細分割乾燥粉末を含み、そして装置からの粉末の分散を促進する量、例えば製剤の50〜90重量%において、乳糖、ソルビトール、スクロース又はマンニトールのような増量剤も包含してよい。ゲルゾリンは最も好都合には、遠位の肺への最も有効な送達のために、10mm未満(又はミクロン)、最も好ましくは0.5〜5mmの平均粒径を有する粒子状形態として製造しなければならない。
【0124】
本発明の医薬組成物の経鼻(鼻内)送達も又意図される。経鼻送達は鼻に治療薬を投与した後の直接血流中への本発明の医薬組成物の通過を可能とし、肺内の薬品の付着を必要としない。経鼻送達のための製剤はデキストラン又はシクロデキストランを使用するものを包含する。
【0125】
経鼻投与のためには、有用な装置は計量投薬用スプレーを取り付けた小型の硬質のビンである。1つの実施形態において、計量された用量を送達するには、所定の容量のチャンバー内に本発明の溶液の医薬組成物を導入することであり、その場合、チャンバーは、チャンバーが圧縮された時にスプレーを形成することによりエアロゾル製剤エアロゾル化するための寸法を有する穿孔部を有する。チャンバーを圧縮して本発明の医薬組成物を投与する。特定の実施形態において、チャンバーはピストン配置とする。そのような装置は市販されている。
【0126】
或いは、絞り込んだ時にスプレーを形成することによりエアロゾル製剤をエアロゾル化するような寸法を有する穿孔部又は開口部を有するプラスチックの絞り出しビンを使用する。開口部は通常はビンの上部に存在し、上部は一般的には、エアロゾル製剤の効率的な投与のために鼻孔内で部分的にフィットするようにテーパリングされている。好ましくは警備吸入器は薬剤の軽量された用量の投与のために、エアロゾル製剤の計量された量を提供するものとなる。
【0127】
化合物は又、例えばカカオ脂又は他のグリセリドのような従来の座薬基剤を含有する座薬又は滞留浣腸のような直腸投与用又は膣内投与用の組成物に製剤してよい。
【0128】
前記した製剤の他に、化合物は又蓄積調製品として製剤してもよい。そのような長時間作用製剤は適当な重合体又は疎水性の物質(例えば許容される油脂中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に、又は水難溶性の誘導体として、例えば水難溶性の塩として製剤してよい。
【0129】
医薬組成物は又、適当な固体又はゲル相の担体又は賦形剤を含んでよい。そのような担体又は賦形剤の例は限定しないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、及び重合体、例えばポリエチレングリコールを包含する。
【0130】
適当な液体又は固体の薬学的調製品は例えば吸入用の水性又は食塩水の溶液、皮膚内に移植するためのマイクロカプセル化、共キレート化、顕微鏡的金粒子上にコーティングされた、リポソーム内に含有された、霧状化された、エアロゾル化されたペレット、又は皮膚内に刷り込むべき鋭利な物体上に乾燥されたものである。医薬組成物は又、顆粒、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、(マイクロ)カプセル、座薬、シロップ、乳液、懸濁液、クリーム、ドロップオア活性化合物の延長された放出のための調製品を包含し、その製造においては、不経済及び添加物及び/又は補助剤、例えば錠剤崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、フレーバー剤、甘味料又は可溶化剤が上記した通り慣用的に使用される。医薬組成物は種々の薬物送達系における使用に適している。薬物送達のための方法に関する概説は、例えば参照により本明細書に組み込まれるLanger,Science 249:1527−1533,1990を参考にできる。
【0131】
治療薬、特に限定しないがゲルゾリンは粒子として提供してよい。粒子は本明細書においてはゲルゾリンまたは本明細書に記載した他の治療薬より全体又は部分的になることができるナノ又はマイクロ粒子(一部の場合はより大型)を意味する。粒子は例えば限定しないが、腸溶性コーティングのようなコーティングにより包囲されたコア内に治療薬を含有してよい。治療薬は又粒子全体に渡って分散していてよい。治療薬は又粒子内に吸着されていてよい。粒子は何れかの次数の放出動態、例えば、ゼロ次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、及びこれらの組み合わせ等のものであってよい。粒子は治療薬に加えて、薬学及び医学の分野で定型的に使用されている物質の何れか、例えば限定しないが、腐食性、非腐食性、生体分解性又は非生体分解性の物質又はその組み合わせを包含してよい。粒子は溶液中又は半固体状態中にゲルゾリンを含有するマイクロカプセルであってよい。粒子は実質的に如何なる形状であってもよい。
【0132】
非生体分解性及び場での重合体物質の両方を治療薬を送達するための粒子の製造に使用できる。そのような重合体は天然又は合成の重合体であってよい。重合体は放出が望まれる時間の長さに基づいて選択する。特に着目される生体接着性重合体はH.S.Sawhney,C.P.Pathak and J.A.Hubell,Micromolecules,(1993)26:581−587に記載の生体腐食性ヒドロゲルを包含し、その教示内容は参照により本明細書に組み込まれる。これらにはポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、及びポリ(オクタデシルアクリレート)が包含される。
【0133】
治療薬は制御放出系内に含有させてよい。「制御放出」という用語は、製剤からの薬剤の放出の態様及びプロファイルが制御されるいずれかの薬剤含有製剤を指すことを意図している。これは即時ならびに非即時放出製剤を指し、非即時放出製剤は、限定しないが持続放出及び遅延放出の製剤を包含する。「持続放出」(延長放出とも称する)という用語は延長された時間にわたって薬剤を徐々に放出し、そして必須ではないが好ましくは、延長された時間にわたって実質的に一定の血中濃度をもたらす薬剤の製剤を指す。「遅延放出」という用語は製剤の投与とそこからの薬剤の放出との間に時間遅れが存在する薬剤製剤を指すためのその従来の意味において使用される。「遅延放出」は延長された時間に渡る薬剤の段階的放出を含んでも含まなくてもよく、従って、「持続放出」であっても無くてもよい。
【0134】
長期持続放出インプラントの使用は慢性の状態の治療に特に適している場合がある。「長期」放出とは、本明細書においては、インプラントが少なくとも7日間、そして好ましくは30〜60日間、活性成分の治療的レベルを送達するように構築及び配置されていることを意味する。長期持続放出インプラントは当該分野で良く知られており、そして上記した放出系の一部を包含する。
【0135】
眼、鼻の膜、粘膜への、又は皮膚への局所的投与のためには、ゲルゾリンは軟膏、クリーム又はローションとして、又は、経皮パッチまたは眼内へのインサート又はイオントフォレシスとして製剤してよい。例えば、軟膏及びクリームは水性又は油性の基剤のみを用いて、又は、適当な濃厚化剤及び/又はゲル化在とともに製剤することができる。ローションは水性又は油性の基剤で製剤することができ、そして典型的にはさらに1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、濃厚化剤、又は着色を包含できる(例えば製薬上許容しうるゲル系局所用担体の説明に関しては、Mueller,D.らに発行された「Sterile Topical Anesthetic Gel」と題された米国特許5,563,153参照)。
【0136】
一般的には、ゲルゾリンは組成物の総重量に基づいて、約0.01〜約30.0重量%の範囲の量で局所用製剤中に存在する。好ましくは、ゲルゾリンは約0.5〜約30重量%の範囲の量で存在し、そして最も好ましくは、ゲルゾリンは約0.5〜約10重量%の範囲の量で存在する。1つの実施形態において、本発明の組成物は局所的疼痛の表面との接触を最大限にするため、そして局所的疼痛を軽減するために必要な容量及び用量を最低限にするために、ゲル混合物を含む。GELFOAM(登録商標)(Upjohn Corporation製造のメチルセルロース系のゲル)が好ましい製薬上許容しうる局所用担体である。他の製薬上許容しうる担体は経皮薬剤送達のためのイオントフォレシスを包含する。
【0137】
本発明はキットの使用を意図している。本発明の一部の態様において、キットは薬学的調製品のバイアル、薬学的調製品の希釈バイアル、及びゲルゾリンを包含できる。薬学的調製品のための希釈剤を含有するバイアルは任意である。希釈剤バイアルはゲルゾリンの濃縮された溶液又は凍結乾燥された粉末であるものを希釈するための生理食塩水のような希釈剤を含有する。説明書は希釈剤の特定の量を濃縮された薬学的調製品の特定の量と混合することにより注射または注入のための最終製剤を製造することに関する説明書を包含できる。説明書はゲルゾリンの有効量を用いて対象を治療するための説明書を包含してよい。調製品を含有している容器は、容器がビン、セプタム付きバイアル、セプタム付きアンプル、注入バッグ等の何れかにかかわらず、調製品をオートクレーブ又は別様に滅菌してある場合には色が変化する従来のマーキングのようなインジケーターを含有できる。
【0138】
本発明は更に以下の実施例により説明するが、これは限定的とみなしてはならない。本明細書において引用する参考文献(文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係争中の特許出願)の全ての全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0139】
血漿中ゲルゾリン(pGSN)は平均250mg/lの濃度でヒトの細胞外体液中を循環する分泌蛋白である。多様な型の組織傷害が血漿中ゲルゾリンレベルの延長された低減をもたらす。重度の外傷、熱傷、敗血症、大手術及び造血幹細胞移植患者において遭遇する重度の組織傷害の後、正常の約25%未満までのゲルゾリン(GSN)レベルの低下が補助呼吸の必要性、集中治療室滞留の長さ、及び全体的な入院期間、脂肪及び特定の後発症、例えば二次的な肺の傷害(例えば成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺傷害(ALI)、多臓器不全症候群(MODS))を尺度とする重大な治療合併症に先行して起こり、従ってそれを予測するものとなる。動物モデルにおける同様の血漿中ゲルゾリンの低減は肺の透過性の変化及び炎症に先行して起こり、組み換え血漿中ゲルゾリンの注入がこれらの作用を緩解する。
【0140】
(実施例1)血漿中ゲルゾリン(pGSN)濃度は健康対照と比較して慢性関節リウマチ(RA)患者において低下し、RA患者では血中よりも滑液中において低値である。
【0141】
本発明者らは、血漿中ゲルゾリンレベルが慢性関節リウマチ(RA)を誘発する物質によりもたらされた初期(未知)の傷害に応答して低下するという仮説を実験的に試験するために慢性関節リウマチ患者における血漿中ゲルゾリン(pGSN)レベルを測定した。図1に示すとおり、循環系中(pGSN)レベルはマッチした健康対照と比較してRA患者において有意に低値であった(103±23vs142±29、p=0,0002、図1)。pGSNレベルは男女で同様であり、そして患者の年齢又は関節炎の持続期間とは無関係であった。循環系中のpGSNレベルはC反応性蛋白のレベルと逆相関していた(r=−0.272、p=0.026)。
【0142】
材料及び方法
患者:血漿及び滑液の試料は、急性関節浸出液について、GothenburgのSahlgrenska大学病院リウマチ科の82人のRA患者から収集された。RAはAmerican Collegae of Rheumatologyの基準に従って診断した。滑液及び血液の採取時においては、全患者が非ステロイド抗炎症剤を投与されていた。手及び足の最近のレントゲン写真を全患者につき入手した。関節の皮質輪郭の消失として定義される骨侵食の存在を、近位の指節間、中手指節関節、手根、指節間及び中手指節関節の関節において記録した。1侵食の存在は侵食性疾患の条件を満たすものとして十分であった。試験した免疫グロブリンアイソタイプ(IgM、−A、−G)の何れかのリウマチ様因子の存在を陽性とみなした。対照血液試料(n=87)をSahlgrenska大学病院の輸血室を訪問していた血液ドナーから入手し、年齢及び性別に関してRA患者とマッチさせた。
【0143】
試料の収集及び調製:滑液は関節穿刺により膝関節から入手し、無菌的に吸引し、クエン酸ナトリウム(0.129モル/l;pH7.4)含有試験管中に移した。血液試料を肘静脈から同時に入手し、クエン酸ナトリウム媒体中に収集した。収集した血液及び滑液の試料は800gで15分間遠心分離し、細分量化し、使用時まで−70℃で凍結保存した。ピレンアクチン核化試験による血漿及び滑液中のpGSN濃度の測定:pGSNをカルシウムにより活性化し、アクチン単量体2個と結合させて核を生じさせ、ここからアクチンはポインティングされた(最緩徐政調)末端の方向に重合する。ピレンアクチンはN−ピレニルヨードアセトアミド(Molecular Probes,Eugene Oregon)を用いてアクチンを誘導体化することにより製造した。使用前に、ピレンアクチンを20μMとなるまで脱重合緩衝液(緩衝液A:0.5mM ATP、5mM β−メルカプトエタノール、0.2mM Tris、0.2mM CaCl、pH7.4)中に希釈し、1時間37℃で保存することにより単量体平衡に到達させ、そしてOptimaTMTL超遠心分離機(Beckman)中で250,000gにおいて4℃で30分間遠心分離することにより、全ての残存腺維様アクチンをペレット化した。上澄みを取り出し、使用時まで氷水バス中で保存した。分析すべき貧血小板血漿は緩衝液B(0.1M KCl、0.2mM MgCl、0.2mM CaCl、0.5mM ATP、10mM Tris、0.5mMメルカプトエタノール、pH7.4)中に1:5希釈した。ピレンアクチン蛍光をルミネセンス蛍光計(FluoroMax−2(登録商標),Jobin Yvon−Spex Instruments S.A.,Inc)を用いて記録した。励起及び発光の波長はそれぞれ366及び386nmとした。ピレンアクチンを6x50mmのホウケイ酸塩ガラス培養試験管(Kimble)中、0.4μMファロイジン、1.5mM CaCl及び希釈試料5μlを含有する緩衝液B 280μl中で終濃度1μMとなるように添加した。核化は急速回転混合後、蛍光計において240秒間に渡りモニタリングした。蛍光の増大の直線の傾きを100〜200秒で計算した。全試料を2連で試行した。各試料における重合率は組み換えヒトpGSNの標準曲線を用いることによりpGSN濃度に変換した。
【0144】
統計処理:血液及び滑液試料中のpGSNのレベルを平均±SDとして表示した。マッチした血液お酔い滑液の試料の間の比較は、一対t検定により分析した。pGSNのレベルの比較は又、患者の血液試料と健康対照との間でも行った。更に比較するために、患者の材料を放射線所見に従って層化した(侵食性RAvs非侵食性RA)。群間の血液及び滑液中のpGSNの差はMann−WhitneyのU検定を用いて別個に計算した。pGSNレベルに対する実施中の治療の考えられる影響を評価するために、患者の材料をDMARD治療に従って層化した(治療vs未治療)。群間の比較はMann−WhitneyのU検定を用いて実施した。結果の統計学的評価の全てについて、0.05未満のP値を統計学的に有意とみなした。
【0145】
(実施例2):RA患者の滑液(SF)中に存在するゲルゾリンアイソフォームはゲルゾリンの血漿中アイソフォーム(pGSN)である。
【0146】
ゲルゾリンは細胞内及び細胞外のアイソフォームの両方として生産され、その各々がアクチンの重合を誘導する能力を有するため、本発明者らは血漿中アイソフォーム(α−pGSN)に対して特異的な抗体を用いたイムノブロッティングによりゲルゾリン活性の起源を分析した。SF中に存在するゲルゾリンは主に血漿中アイソフォームを含む(図2)。ゲルゾリンの血漿起源は又、試料のマッチした対における血漿中と滑液中のゲルゾリンレベルの間の相関によっても裏付けられている(r=0.39、p=0.0006)。しかしながら、RA患者のSF試料中のpGSN活性は血漿中の値より有意に低値(pg/ml、69±18vs103±23、p=0.04)であり、局所的消費を示していた。
【0147】
材料及び方法
イムノブロッティング:貧血小板血漿又は滑液をゲルゾリンアイソフォームの試験のための1X試料緩衝液(SB、20%グリセロール、4.6%Tris、0.25M Tris−HCl、0.01%ブロムフェノールブルー、10%v/v 2−メルカプトエタノール、pH6.8)中に1:100希釈し、短時間回転混合し、100℃で10分間煮沸した。試料(10μl)を改良型Laemmliシステム中、10%SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲル上で泳動させた。血小板溶解物(2x10/ml、5μl)及びヒト組み換えpGSNをそれぞれpGSNに関する陰性及び陽性対照として泳動した。蛋白は1.5時間に120Vで分離した。イモビリオンPメンブレン(PVDF、0.45μm;Millipore Corp.,Bedford,MA)をメタノール中に1分間、そして転移緩衝液(192mMグリシン、25mM Tris、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、20%メタノール)中5分間浸漬した後に転移させた。転移は可変電圧において、1Aで90分間実施した。4℃において0.05%Tween−20、5%カーネーションノンファットドライミルク及び0.05%アジ化ナトリウムを含有するPBS、pH7.4中、一夜メンブレンをブロックした。pGSNに関しては、ヒト血漿アイソフォームに特異的なポリクローナル抗体を使用した(1:2000、2h、実験室作成)。GSNの全アイソフォームに関して、一次モノクローナル2c4抗ゲルゾリン抗体を使用した(1:2500,2h、実験室作成)。使用した二次抗体はそれぞれ、ウサギ抗マウスIgG(H+L)−HRP(1:5000,80分)及びヤギ抗マウスIgG(H+L)−HRP(1:3300,80分、Bio−Rad,Hercules、CA)コンジュゲートとした。メンブレンはインキュベーションの合間に0.05%Tween−20を含有するPBS中で3回洗浄した。
【0148】
ケミルミネセンスの検出はHRPの検出のためのSuperSignal(登録商標)West Picoケミルミネセント基質(PIERCE,Rockford,IL)を用いて実施した。メンブレンを2分間SuperSignal(登録商標)West Pico安定パーオキシド溶液及びSuperSignal(登録商標)West Picoルミノール/エンハンサー溶液の各2mlに露光した。HyBlot CLオートラジオグラフィーフィルム(Denville Scientific,Inc.,Metuchen,NJ)をFBXC810オートラジオグラフィーフカセット(FischerBiotech,Pittsburg,PA)中で1分間膜に露光した。フィルムはM35A X−OMATプロセッサー(Kodak)を用いて現像した。
【0149】
(実施例3)pGSNは敗血症性関節炎/敗血症の実験マウスモデルの早期の段階において低下する。
【0150】
循環系中のpGSNのレベルは連鎖球菌及びブドウ球菌による感染の間、共に低下している。低下は疾患の過程の早期に起こり、動物の関節炎及び敗血症の群の両方において細菌接種後2日に開始している。注射(第0日)の前、マウスの平均のpGSNレベルは200±20mg/Lであった。第2日までに、pGSNのレベルはスタフィロコッカス・アウレウス(S.アウレウス)処理(7x10cfu/マウス)動物では138±16mg/L、敗血症S.アウレウス注射動物(3.5x10cfu/マウス)では157±15mg/L、そしてストレプトコッカス・アガラクチア(Str.agalactiae)を注射した動物(1x10cfu/マウス)では152±15mg/Lまで低下した。第9日におけるpGSNレベルはそれぞれ、141±21、151±15、及び124±13mg/Lであった。連鎖球菌を注射した動物のみ、第9日における循環系中のpGSNのレベルが更に低下していた。pGSNの低下は、より高値の死亡率をもたらす敗血症用量(関節炎の場合の5倍高値)の投与後のpGSNの濃度が関節炎用量マウスで観察されたものより低値ではなかったことから、感染の強度とは関連していなかった。
【0151】
材料及び方法
S.アウレウス関節炎及び敗血症の誘導:雌性の5〜6週齢のNMRIマウスをALAB(Stockholm,Sweden)より購入し、イエーテボリ大学のリウマチ学科の動物使節において飼育した。温度及び照明の標準的な条件下にケージ当たり10〜11匹を収容し、標準的な実験用飼料及び水を自由摂取させた。自発的関節炎のNZBxWマウスNewman系統の浮腫関節から元来単離されているS.アウレウス菌株LS−1、並びに血清型IIIに属する臨床単離株であるStr.アガラクチア菌株6313を敗血症性関節炎及び敗血症の誘導のために使用した。細菌は使用時まで5%BSA及び10%ジメチルスルホキシドを含有するPBS(0.13M塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.4)中−20℃で凍結保存した。注射の前に、細菌の溶液を解凍し、PBSで2回洗浄し、そしてPBSで所望の濃度に調節した。0.2mlPBS中S.アウレウス又はStr.アガラクチアの懸濁液をマウス尾静脈に注射した。注射した細菌の厳密な数を確認するために残存溶液の生菌数を計数し、コロニー形成単位(cfu/ml)として表示した。
【0152】
全マウスとも、関節の外観、重量、全身の外観、警戒性及び皮膚の異常の評価により8〜9日の観察期間、個体別にモニタリングした。血液試料は抗凝固剤を含有しない滅菌試験管に尾静脈から採取し、6〜8時間凝固させた。試料を3000xgで15分間遠心分離し、血清を細分量化し、使用時まで−70℃で凍結保存した。
【0153】
実験プロトコル:マウス20匹に静脈内(iv)で敗血症性(LS−1、4x10cfu/マウス、n=10)又は関節炎発生性(7x10cfu/マウス、n=10)の用量のS.アウレウスを投与した。別の10匹のマウスには敗血症性の用量のStr.agalactiar(1x10cfu/マウス)を投与した。第−3、2、4、6及び9日に、pGSNレベルの測定のために尾静脈石灰により血液試料を採取した。第9日において、断首によりマウスを屠殺した。pGSNレベルはヒト試料に関するものと同じ方法により測定した(ピレンアクチン核化試験)。
【0154】
(実施例4):マウスへのpGSNの補充は関節炎の発症を遅延させる。
【0155】
組み換えゲルゾリンのマウスへの補充を、細菌接種(4x10/ml)直後から開始して24時間の時間間隔を置きながら7日間に渡り実施した。マウス5匹にはゲルゾリンを、そしてマウス7匹にはPBSを投与することにより対照群として使用した。ブドウ球菌の感染の最初の9日間、体重減少、生存率又は関節炎発症に関してはゲルゾリン投与及び対照群には差は観察されなかった。しかしながら、少数のゲルゾリン投与マウスが第3日に関節炎を発症した(1投与群vs4非投与、表1参照)。
【0156】
【表1】

材料および方法
12匹のマウスに敗血症性の用量のS.アウレウス(Newman、4x10cfu/マウス)を静脈内(iv)注射した。5匹のマウスには組み換えヒトpGSNを腹腔内(ip)に第0〜7日間、そして残余の7匹のマウスにはPBSを投与した。マウスは個体別に第28日までモニタリングし、そして関節炎の兆候、体重、全身の外観及び警戒性を観察した。
【0157】
組み換えpGSNはE.coli内で生産させ、GSSGで再度折り畳み、0.1M NaCl及び1mM CaCl中でBiogen−Idec,Inc(Cambridge,MA)により製剤され、そして使用時まで−70℃で保存した。マウスには細菌攻撃の1時間前に組み換えpGSNをip注射(6mg/マウス)し、7日間24時間の間隔(3mg/マウス)で継続した。対照群には相当する容量のPBSを投与した。
【0158】
(実施例5)
炎症過程にゲルゾリン投与が影響を与えるかもしれないという仮説を、慢性関節リウマチを模倣した自己免疫モデルであるコラーゲン誘発関節炎(CIA)のげっ歯類モデルにおいて試験する。フロインドの完全アジュバント中の非相同又は相同のコラーゲンII(約50マイクログラム)で皮内プライミングし、そして2週間後にフロインドの不完全アジュバント中の同じ量のコラーゲンIIでブーストすることにより近親交配DBA/1雄性マウスにおいてCIAを誘導できる。プライミング投薬後約3週間で関節炎が発症し、そしてプライミング後8週間以内にその最大に達する。マウスは高レベルのコラーゲンII特異的抗体、コラーゲンII特異的T細胞並びに全身炎症の兆候(例えばIL−6、TNF等の生産)を有する。関節に限局して、圧倒的な炎症浸潤(T細胞、マクロファージ、好中球及び線維芽細胞よりなる)並びに軟骨及び軟骨下の骨の重度の破壊が観察される。これらの特徴は、ヒトの慢性関節リウマチにおいて観察される過程を十分模倣している(Myersら、Life Science 61,p.1861−1878,1997)。
【0159】
療法試験においては、1セットの被験動物が、例えば皮下で8mgのウシ血清アルブミン又は8mgのヒト組み換え血漿中ゲルゾリンを療法開始時から第10日に1回(1X)又は第2,5及び10日に3投薬を投与される。投与及び投薬のこの経路は以前より、敗血症のために50%枯渇していたゲルゾリンのレベルを正常まで上昇させることが分かっている。一部の疾患パラメーター(例えば臨床兆候及び症状、発症、進行、重症度、及び症状の後退)が測定される。
【0160】
総括すれば、本発明者らの所見は提示された仮説の2つの特徴、即ち慢性関節リウマチのような炎症性疾患の顕在化に先行して血漿中のゲルゾリンレベルの低減が起こること、及び、血漿中ゲルゾリンの全身治療はこれらの顕在化を防止及び/又は抑制することを裏付けるものである。これらの観察結果の1つの臨床的創刊は血漿中ゲルゾリンレベルの連続モニタリングは療法を強化する時期を躊躇している慢性関節リウマチのような炎症性疾患の対応策の部分となることができる。他の相関は血漿中ゲルゾリンレベルの予防的上昇が炎症の続発症から患者を保護する可能性があることである。
【0161】
いかなる特定の機序又は理論にも制約されないが、血漿中ゲルゾリンは炎症性疾患(例えば慢性関節リウマチ(RA))の間に血液から枯渇し、そして傷害/炎症(慢性関節リウマチにおける関節空間)の部位に局在化して封鎖されると推定される。血漿中ゲルゾリンは炎症メディエーターに結合することにより炎症の部位において機能し、そしてそれらがそれ以上の損傷を誘発することを、細胞受容体上のその作用を抑制することにより防止すると考えられる。このことはリソホスファチジン酸(LPA)、Aβ(アルツハイマー)ペプチド、ジアデノシン5’,5’’’−P1,P3−トリホスフェート(Ap3A)、フィブロネクチン、フィブリノーゲン及びリポ多糖類(LPS)のような一部の炎症メディエーターに血漿中ゲルゾリンがインビトロで結合し、そして血小板活性化因子(PAF)に対する特定の細胞応答を低下させるという事実により裏付けられる。更に又、炎症関節の損傷細胞はアクチンを放出し、そしてゲルゾリンがアクチンに結合する。ゲルゾリンは別様には毒性である繊維状のアクチンを切断することにより保護的役割を有す。本発明者らはゲルゾリンは抗炎症作用を有するが、RAの場合のように炎症が重度であり長期化している場合、ゲルゾリンの補充は炎症の低減又は治療において有益であると考えられる。炎症部位(例えば慢性関節リウマチにおける関節空間)にゲルゾリンが封鎖又はリクルートされることは、血漿中レベルが低減される理由を説明しているが、他の説明もあり得る。
【0162】
(等価物)
上記した書面による明細書は当業者が本発明を実施することができるために十分であると考えられる。本発明は記載した例により範囲が限定されるわけではなく、その理由は例は本発明の特徴1つ以上を単に説明しているに過ぎないからである。他の機能的に等価な実施形態は本発明の範囲内に属すると考えられる。本明細書に示し、説明したもの以外の本発明の種々の変形例は上記説明から当業者には自明である。本発明の制限事項の各々は本発明の種々の実施形態を包含できる。従って、何れかの要素または要素の組み合わせを含む本発明の制約事項の各々は本発明の各特徴に包含され得るものと理解される。本発明は構造及び図面において記載又は説明した成分の配置の詳細にその適用が限定されるものではない。本発明は他の実施形態も可能であり、そして種々の態様において実施又は実行することができる。
【0163】
本明細書において使用した表現及び用語は説明を目的としており、限定的なものとみなしてはならない。「包含する」、「含む」又は「有する」、「含有する」、「関与する」及びそれらの変形表現は本明細書においては、その後に続いて記載されるアイテム及びその等価物並びに追加的アイテムを包含することを意味している。
【0164】
本明細書において引用する全ての参考文献、特許及び特許出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−83359(P2012−83359A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−270249(P2011−270249)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2009−500462(P2009−500462)の分割
【原出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】