説明

炎症性皮膚状態を寛解するための方法

本発明は、炎症性皮膚状態を治療するために皮膚表面に対する適用に適当な医薬の製造におけるチオレドキシンの使用に関する。本発明は更に、皮膚表面に対してチオレドキシンを含んで成る有効量の組成物を適用することを含んで成る、炎症性皮膚状態を寛解する方法に関する。本発明は更に、0.0001〜0.5%w/vのチオレドキシンを含んで成る炎症性皮膚状態を寛解するために適当な医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、炎症性皮膚状態を寛解するための方法に関する。
【0002】
炎症性皮膚状態は、ケモカイン及びサイトカイン、並びに特に炎症促進性サイトカイン、例えば、IL−1α、IL−1β、並びに腫瘍壊死因子α(TNF−α)の活性に関係することが知られている。またこれらの同様のサイトカインは、皮膚免疫応答の開始において中心的な役割を果たすことが知られており、そして実際に皮膚からの表皮ランゲルハンス細胞(LC)の遊走に必須のシグナルを供する。皮膚からのLCの移動、及び続く皮膚排出リンパ節におけるこれらの蓄積は、免疫応答が誘発される部位(局所リンパ節)に対する抗原の輸送のための機構を供する。
【0003】
表皮からのLCの遊走がIL−1α、IL−1β、及びTNF−αによるシグナルの供給に依存するという我々の理解は、皮膚組織内のこれらのサイトカインの利用能及び機能活性を研究するための実験系を供する。実験は、IL−1α、IL−1β、又はTNF−αの利用能又は機能を阻害することが知られている因子が誘発されたLC遊走の有意な阻害に関することを示している。
【0004】
LC動員の刺激に必要とされることに加え、IL−1βは皮膚炎症の原因となることが知られており、そして直接的又は間接的に、いくつかの皮膚炎症性障害の病因に関係する。IL−1βは、生理活性である成熟したカルボキシ末端フラグメントを生産するために切断及び分泌され、そしてほとんど全ての細胞種に見られる特定の細胞表面受容体に結合し、そして一連の応答の引き金を引くことによりこれらの効果を発揮する、不活性な細胞内の前駆体タンパク質として合成される。
【0005】
本発明は、皮膚に局所的に適用された場合、特定の分子が生理活性のIL−1α及び/又はIL−1βの生産及び/又は利用能を阻害することができるという驚くべき発見に基づく。とりわけ、IL−1α及び/又はIL−1βが病因に関係する場合、このようなこれらの分子は炎症性皮膚状態の治療に適当である。適当な分子は、チオレドキシン(TRX)、Cys−Gly−Pro−Cys活性部位を伴う12kDaのタンパク質、及び更に「レドックス(redox)−不活性」TRX分子を含む(ここで活性部位におけるシステインはシステイン以外のアミノ酸により置換されてよい)。一方これらの分子は、IL−1α又はIL−1βの生産又は活性を阻害することによりこれらの治療効果を発揮するようであることが示されている―また、これらは抗炎症性サイトカイン、例えば、インターロイキン−10(IL−10)の生産を刺激することにより、関連する又は追加的な有利な効果を発揮することが可能である。
【0006】
本発明に従い、炎症性皮膚状態を寛解することが可能なポリペプチドであって、当該ポリペプチドが修飾されたチオレドキシンであり、当該修飾が、
a.修飾されていないチオレドキシン中に存在するモチーフCys1−Gly−Pro−Cys2中のCys1及びCys2をシステイン以外のアミノ酸で置換すること(但し1つのCysがSerで置換される場合、他方のCysはSerで置換されない);又は
b.修飾されていないチオレドキシン中に存在するモチーフCys1−Gly−Pro−Cys2中のCys1及びCys2のいずれかをシステイン以外のアミノ酸で置換し、そして置換されていないシステインを欠失すること、
を含んで成ることを特徴とするポリペプチドを供する。
【0007】
好ましくは、上記修飾は、Cys1及びCys2の両方をSer以外のアミノ酸で独立に置換することから成る。活性部位の修飾は、活性部位レドックス(酸化還元)不活性を与え、そして驚くべきことに、これらのレドックス不活性分子は炎症性皮膚状態を寛解することが可能であることが発見されている。
【0008】
本発明は更に、修飾されていないチオレドキシンがCys1及びCys2に追加して1又は複数のシステインを含む場合、上記修飾が、1又は複数の更なるシステインを置換及び/又は欠失することを含んで成る、修飾されたチオレドキシンを供する。
【0009】
Cys1及びCys2は共に独立に置換されてよい。例えば、本発明のポリペプチドの1つの態様は、Ser−Gly−Pro−Ala、他にはAla−Gly−Pro−Serを含んで成ることができる。本発明の好ましい態様において、Cys1及びCys2は共に、Alaにより置換され、Ala−Gly−Pro−Alaを与える。より好ましくは置換されていないTRXがヒトTRXであるポリペプチドであり、そして更により好ましくは配列番号3、配列番号9、及び配列番号10から成る群から選択されるポリペプチドである。
【0010】
本発明の更なる態様は、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列である。DNA配列の正確な性質は、当然にポリペプチドの特異的な性質、及びDNA配列の意図される使用に依存する。例えば、DNA配列のコドン最適化は組換え発現系におけるDNA配列の発現に必要とされ得る(コドン最適化配列の例は配列番号6として供される)。このようなDNA配列を供するために必要とされる技術は当業者に周知である。本発明の好ましいDNA配列は配列番号4に示される。
【0011】
本発明はまた、好ましくは本発明のポリペプチド含んで成る、炎症性皮膚状態を治療するために適当な医薬−及び医薬組成物/医薬品としての本発明のポリペプチドの使用に関する。治療目的のために、本発明のポリペプチドは、いずれかの慣習的な手段により個々の治療剤又は他の治療剤との組み合わせとして投与することができる。本発明の医薬組成物は、医薬業界の当業者に周知な方法を使用して、所望される的確な投与経路に依存して適応させることができる。本発明の組成物は、制限することなく、皮膚を介する適用、例えば、局所適用及び皮下適用に適当なものを含む。乾癬の治療のためには、局所適用は治療効果を与えるために十分である。
【0012】
本発明は更に、本発明のポリペプチドを生産する方法に関する。このような方法は、上記ポリペプチドの組換え発現、及び特に当該ポリペプチドをコードするDNA配列を含んで成るベクター(ここで当該ベクターは生物内において当該DNA配列を発現する)で生物を形質転換すること、及び当該ポリペプチドを生産するために当該DNA配列の発現を許容する条件において当該生物を生育すること、を含んで成る。生育により、例えば、生育が細胞数を増加させることを意味する当該生物が単細胞生物である場合、バイオマスを増加することを意味する。「生物」は本発明のポリペプチドの組換え発現に適当ないずれかの生物を含む。適当な組換え発現系は、制限することなく、哺乳類細胞培養液、酵母及び細菌を含む。特に好ましくは大腸菌(E. coli)である。このような宿主細胞における発現に適当なベクターは、当業者に容易に明らかとなり、そして例えば、T7プロモーターを宿すベクター、例えば、大腸菌(E. coli)における発現のための、例えば、pETベクター、及び酵母ピチア・パストリス(Pichia pastoris)における発現に適当な他のベクターを含む。また、当該ポリペプチドの生産方法は、当該ポリペプチドの精製を含んでよい。精製により、生産材料から組換えポリペプチドを得ることを意味する。このような方法は、これらのポリペプチドの適正製造基準(GMP)を通して利用することができる。
【0013】
本発明は更に、以下の群から選択される分子を含んで成る有効量の組成物を皮膚表面に適用することを含んで成る、炎症性皮膚状態を寛解するための方法に関する:
a.チオレドキシン活性部位(Cys1−Gly−Pro−Cys2)を含んで成るタンパク質;
b.チオレドキシン(TRX);
c.修飾されたチオレドキシンであって、ここで当該修飾が、修飾されていないチオレドキシンに存在する少なくとも1つのシステインをシステイン以外のアミノ酸で置換及び/又は欠失することを含んで成る、チオレドキシン;
d.本発明に従うポリペプチド;及び
e.配列番号1に示されるタンパク質の三次元構造中に存在する領域に類似する三次元構造の領域を含んで成る分子であって、そしてこれが炎症性皮膚状態を寛解することが可能である、分子。
【0014】
「炎症性皮膚状態」の語は、例えば、ヒト炎症性皮膚状態、及び動物炎症性皮膚状態を含む。好ましい態様において、当該炎症性皮膚状態は、乾癬、扁平苔癬、アトピー性湿疹、刺激性若しくはアレルギー性接触皮膚炎、接触蕁麻疹、乳児湿疹、及び尋常性ざ瘡から成る群から選択される。本発明の方法はまた、創傷治癒、及び火傷、特に日焼けの治療を補助することにおいて有用である。乾癬は、分散した乾癬プラークの出現により特徴付けられる慢性炎症性皮膚状態である。乾癬は、皮膚形態におけるいくらかの変化に関係する。炎症誘発性サイトカインが乾癬の病因において重要な役割を果たす証拠が増えている。現在の治療は、抗炎症剤−典型的には副腎皮質ステロイド、の局所投与を含む。このような治療は完全には有効ではなく、そして望ましくない副作用が付随する。他の治療ストラテジーは、TNF−α機能の破壊であるが、これもまた有害反応の原因となることがわかっている。このため、炎症性皮膚障害の治療に有効であるが、有害な副作用をほとんど又は全く示さず、そして理想的には非観血法により、例えば、炎症に直接適用することにより送達することができる更なる分子を供することが必要である。
【0015】
本発明の方法における使用に好ましいものは、IL−1α及び/又はIL−1βの生産及び/又は活性を阻害することができる、及び/又はIL−10の生産及び/又は活性を刺激若しくは増強することができる分子である。
【0016】
TRXは、細胞のレドックス制御系の重要な成分である、小さな(10〜14kDa)、偏在性のタンパク質である。本発明の方法における使用に適当なTRXは、(1)原核生物(例えば、大腸菌(E. coli)−配列番号7)、(2)植物(例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis)−配列番号8)、及び(3)動物(例えば、ヒト−配列番号1)由来のTRXを含む。TRXは、還元状態(この場合、活性部位(Cys1−Gly−Pro−Cys2)における2つのシステインはジチオールを供する)、及び酸化状態(この場合、活性部位における2つのシステイン間において形成されるジスルフィド架橋が存在する)において存在することができる。生理条件下において、両方のレドックス状態が存在でき、そして本発明において両方の形態を利用することができる。更に一定のチオレドキシンは多量体形態において存在できることが知られている。例えば、ヒトTRX(hTRX)は、Cys−73間にジスルフィド架橋が存在する二量体を形成できることが知られている。単量体形態に追加して、本発明の方法において上記分子のこれらの多量体形態もまた利用することができる。しかしながら、好ましくは当該分子、例えば、チオレドキシンは、実質的に還元状態において存在する。実質的に還元されるとは、>80%、好ましくは>90%、より好ましくは>95%の存在分子が還元状態にあることを意味する。上記方法における使用のための好ましい分子は、配列番号1に示されるヒトチオレドキシンである―当該タンパク質は内在性ヒトタンパク質であり、このため患者に投与されたときの副作用又は免疫応答のいずれかの原因とはならないようである。本発明の方法における使用に適当な他の分子は、活性部位における1つ又は両方のシステインがシステイン以外のアミノ酸により置換されている、チオレドキシン活性部位を含んで成るタンパク質を含む。一方又は他方のシステインが置換される例は、Cys1−Gly−Pro−Ala、及びAla−Gly−Pro−Cys2を含む。驚くべきことに、Cys1とCys2の両方が置換されているレドックス不活性TRX分子もまた本発明の方法に成功的に使用できることが発見された。更に、当該TRX分子が活性部位以外において更なるスステインを含んで成る場合、これらの追加的なシステインもまた活性を全く失うことなく置換することができる。例えば、5つのシステイン(C32、C35、C62、C69、及びC73)を含む、ヒトチオレドキシンに関して、(1)C73A、(2)C32A、C35A、及びC73A;並びに(3)C32A、C35A、C62A、C69A、及びC73Aを含んで成る修飾されたヒトチオレドキシンは、生理活性を維持することが示されている。また、修飾されていないチオレドキシン中の活性部位以外に存在するシステインが置換及び/又は欠失されたとしても活性が維持されることが示されている。例えば、配列番号11(C73A)において示されるタンパク質は活性であることが示されている。また当該活性分子は、95℃で30分間、又は56℃で30分間の加熱処理により不活性となり得ることが判明し、観察された活性の原因であるこれらの分子に関する構造特性が存在することを示している。従って、本発明は更に、炎症性皮膚状態を寛解することができる、本願に開示される活性分子、例えば、配列番号1の三次元構造中に存在する領域と三次元的に相同な領域を含んで成る分子に関する。当該方法における使用に特に好ましいものは、本発明のポリペプチドであり、配列番号3、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるポリペプチド配列を含む。
【0017】
記載された分子は、極めて低い投与割合において、炎症性皮膚状態を治療するために使用することができることが示されている。従って、本発明は更に、医薬組成物中の活性分子の濃度が、好ましくは0.0001〜0.5%w/v(1μg/ml〜5mg/ml)、より好ましくは0.0001〜0.1%w/v、より好ましくは0.0001〜0.01%w/v、そして更により好ましくは0.0001〜0.001%w/vである、医薬組成物を供する。当該組成物がクリームである場合には、活性分子は0.0001%〜0.02%w/vの濃度において存在することが特に好ましい。実質的に還元された単量体状態において組換えヒトチオレドキシンを含んで成る組成物が特に好ましい。
【0018】
皮膚表面に対する上述の分子の適用割合は、好ましくは0.05〜10μg/cm2、より好ましくは0.05〜5μg/cm2、及びより好ましくは0.1〜1μg/cm2である。実質的に還元された単量体状態においてヒトチオレドキシンが皮膚表面に適用されることが好ましい。
【0019】
本発明は更に、上述の分子及び追加的な活性成分を含んで成る有効量の組成物を皮膚表面に適用することを含んで成る、炎症性皮膚状態の治療方法に関する。追加的な活性とは、医薬的効果も有する成分を意味し−これは上記分子に対して相加的又は相乗的であってよい。更なる活性成分の例は、ラクトフェリン(例えば、配列番号5に示される)、及び/又は副腎皮質ステロイドを含む。本発明はまた、上述の分子及び追加的な活性成分を含んで成る医薬組成物に関する。好ましい追加的な活性成分は、ラクトフェリン(例えば、配列番号5に示される)、及び/又は副腎皮質ステロイド、及び/又は炎症性皮膚状態の治療に適当な局所用医薬を含む。好ましい組成物は、当該分子が配列番号1に示されるヒトチオレドキシン及び/又は配列番号3に示される修飾されたTRXであり、そして追加的な活性成分が配列番号5に示されるラクトフェリンである。本発明の組成物はまた、更なる成分、例えば、抗酸化剤、例えば、グルタチオン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、又は植物、例えば、アロエ(Aloe vera)由来の実際の抽出物を含んで成る。本発明の医薬組成物はまた、重篤な炎症性皮膚状態の治療のための併用療法において使用することができる。
【0020】
本発明の組成物は皮膚への適用に適当であることが好ましい。従って、当該組成物は、典型的には、溶液、ゲル、ローション、軟膏、クリーム、懸濁液、ペースト、リニメント剤、粉末、チンキ、エアロゾル、経皮薬物送達システム、又は医薬的に許容される形態に類似して、当業界に周知な方法により処方される。活性成分の皮膚を介した浸透を増強する物質、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン、アルコール、アセトン、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールを更に加えることができる。当該組成物は、皮膚に直接的に、あるいは多様な経皮薬物送達システム、例えば、パッチを介して適用することができる。
【0021】
本発明は更に、医薬として炎症性皮膚状態を寛解することができるポリペプチドの使用であって、当該ポリペプチドが修飾されたチオレドキシンであって、当該修飾が、
a.修飾されていないチオレドキシン中に存在するモチーフCys1−Gly−Pro−Cys2中のCys1及びCys2をシステイン以外のアミノ酸で置換すること;又は
b.修飾されていないチオレドキシン中に存在するモチーフCys1−Gly−Pro−Cys2中のCys1及びCys2のいずれかをシステイン以外のアミノ酸で置換し、そして置換されていないシステインを欠失すること、
を含んで成ることを特徴とする使用に関する。
【0022】
本発明は更に、医薬としての配列番号11及び17に示されるポリペプチドの使用に関する。
【0023】
本発明は更に、炎症性皮膚状態を寛解することができるポリペプチド等の使用であって、当該ポリペプチドが修飾されたチオレドキシンであって、当該修飾が、
a.修飾されていないチオレドキシン中に存在するモチーフCys1−Gly−Pro−Cys2中のCys1及びCys2をシステイン以外のアミノ酸で置換すること;又は
b.修飾されていないチオレドキシン中に存在するモチーフCys1−Gly−Pro−Cys2中のCys1及びCys2のいずれかをシステイン以外のアミノ酸で置換し、そして置換されていないシステインを欠失すること、
を含んで成ることを特徴とする、炎症性皮膚状態を寛解させるために皮膚表面に対する適用に適当な医薬の製造におけるポリペプチド使用;炎症性皮膚状態を寛解させるために皮膚表面に対する適用に適当な医薬の製造におけるチオレドキシンの使用;及び炎症性皮膚状態を寛解させるために皮膚表面に対する適用に適当な医薬の製造における配列番号1に示されるヒトチオレドキシンの使用、に関する。
【0024】
本発明は、更に、炎症性皮膚状態を寛解させるために皮膚表面に対する適用に適当な医薬の製造における配列番号11及び17に示されるポリペプチドの使用に関する。
【実施例】
【0025】
マウス実験
マウス
Specific Pathogen Free Breeding Unit (Alderley Park, Cheshire, UK)から得た若年成体(6〜8週齢)のオスのBALB/c系マウスを以下の調査において使用した。
【0026】
チオレドキシン
組換え型の未変性ヒトTRX(hTRX−配列番号1)又は修飾したヒトTRX(配列番号3)を水性クリームBD中16.7μg/mlに希釈し、そして同じ部位を化学薬品又はサイトカインに暴露する前に、30μl(0.5μgのTRX)を両耳の背側に局所的に適用した。コントロールマウスは等量のクリームのみを受けた。同じ実験において、動物は0.5、0.1、及び0.05μgのTRXを受けた。
【0027】
化学薬品及び暴露
皮膚感作性化学薬品4−エトキシ−2−フェニルオキサゾール−5−オン(オキサゾロン;Sigma Chemical Co. , St Louis, MO)を4:1のアセトン:オリーブ油(AOO)に溶解させた。マウス群は25μlの0.5%オキサゾロン、又は媒体(AOO)単独を両耳の背側に受けた。他のコントロールマウスは処理しなかった(未処理)。
【0028】
サイトカイン
組換えマウスTNF−α(L929細胞毒性アッセイによる特異活性2×108U/mg;エンドトキシンレベル:0.009ng/μg)をGenzyme (West Malling, Kent, UK)から得た。組換えマウスTNF−α(L929細胞毒性アッセイによる特異活性1〜2×108U/mg; エンドトキシンレベル:<0.1ng/μg)をR&D Systems (Oxon, UK)から購入した。担体タンパク質として、サイトカインを0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の無菌溶液中に供給するか、あるいは再構成させた。サイトカインを0.1%BSAを含む無菌PBSで希釈し、そして30ゲージステンレス針を伴う1mlシリンジを使用して投与した。マウスは両耳介に30μlの皮内注射を受けた。
【0029】
表皮シートの調製及び分析
化学薬品又はIL−1βに暴露して4時間後、あるいはTNF−αで処理して30分後に耳を除去した。鉗子により試料を背側の耳と腹側の耳半分にわけた。背側半分をPBS中に溶解した0.02Mのエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA;Sigma)と共に37℃で90分間インキュベートした。鉗子により表皮を真皮から分離し、そしてPBS中で洗浄した。表皮シートをアセトン中−20℃で20分間固定した。固定後、シートをPBS中で洗浄し、それから0.1%BSA/PBSにおいて5μg/mlに希釈した抗マウスMHC(I−Ad/I−Ed)モノクローナル抗体と共に室温で30分間インキュベートした。0.1%BSA/PBSにおいて1:100に希釈した、FITC−結合F(ab)2ヤギ抗ラットIgGと共に更に30分間インキュベートする前に当該シートを洗浄した。最後にシートをPBS中で洗浄し、そしてCitifluor (Citifluor Ltd. , London, UK)において顕微鏡スライド上にのせ、マニキュア液で封着した。蛍光顕微鏡により試料を盲検法において検査し、そして染色された細胞の頻度を目盛り付格子(×40拡大率において0.32×0.213)を有する接眼を使用して評価した。各試料のために、耳の中心部分における10連続フィールドを検査した。
【0030】
表皮サイトカイン生産の測定
0.5%オキサゾロンへの暴露から2時間後、耳を除去し、そして無菌条件下で外植片用培養液を調製した。直ぐに耳を70%エタノール中で洗浄し、PBS中でリンスし、そして鉗子により背側と腹側半分に分けた。背側半分を24ウェル組織培養プレート中の250μlのRPMI−1640培地上に浮かべた(1つの背側耳半分/ウェル)。16時間の培養後、上清を回収し、各マウスのためにプールし、そして−70℃の貯蔵前に150gで5分間遠心分離した。製造業者の指示に従いBio-PlexTMサイトカインアレイシステム(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)を使用して上清中のIL−10含量を測定した。
【0031】
樹状細胞(DC)の調製及び分析
化学薬品で処理してから18時間後、又はサイトカインTNF−α及びIL−1βの投与から、それぞれ4時間及び17時間後、流入領域耳介リンパ節を切除した。各実験群のために当該節をプールした。無菌200メッシュステンレススチールガーゼを通して機械的な脱凝集により無菌条件下においてリンパ節細胞(LNC)の単一細胞懸濁液を調製し、そして25mMのHEPES、400μg/mlのストレプトマイシン、400μg/mlのアンピシリン、及び10%加熱不活性化ウシ胎児血清(RPMI−FCS)を補充したRPMI−1640成長培地(Gibco, Renfrewshire, UK)中に再懸濁した。生細胞カウントは、トリパンブルー染色の除外により行い、そしてリンパ節あたりの全細胞を記録した。細胞濃度をRPMI−FCS中5×10細胞/mlに調整し、メトリザミド(Sigma Chemical Co. ; RPMI−FCS中14.5%)における不連続勾配遠心分離によりDC−濃縮群を調製した。このような低い浮遊密度画分におけるDCの頻度は位相差顕微鏡観察を使用する直接的な形態検査により慣習的に評価した。
【0032】
ヒト実験
TRX及び暴露
水性クリーム中のTRX(50μl中0.5μg)を日が当らない臀部又は尻において認識される2箇所の皮膚部位(各2cm2の面積)に局所的に適用した。反対側の臀部又は尻における更に2箇所の部位に50μlの水性クリームを単独で与えた。2時間後、ボランティアは、通常の無菌生理食塩水において希釈された500Uの相同組換えTNF−αの皮内注射及び50μlの無菌生理食塩水のコントロール注射を対の部位(一方は前もってTRXに暴露し、そして一方はクリーム単独に暴露した)に受けた。2時間後、それぞれ処理した部位から、局所麻酔(1%リグノカイン)下においてパンチバイオプシー(6mm)を採取した。
【0033】
表皮シートの調製及び分析
表皮ランゲルハンス細胞(LC)をCD1a(ヒト表皮中のLCを特徴付ける膜決定要因)の発現に基づき認識した。LCを染色するために、バイオプシーをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解した0.02Mのエチレンジアミンテトラ酢酸(Sigma, St Louis, MO, USA)中に直ぐに置き、そして37℃で2時間インキュベートした。鉗子を使用して真皮から表皮を分離し、PBS中で洗浄し、そして−20℃においてアセトン中で固定した。PBS中で洗浄後、表皮シートを0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBS中で10μg/mlに希釈したCD1aに特異的なモノクローナル抗体[クローンNA1/34(マウスIgG2a);DAKO Ltd, Cambridge, UK]と共に室温で30分間インキュベートした。0.1%BSA/PBS中で1:100に希釈したフルオレッセインイソチオシアネート結合ヤギF(ab’)2抗マウス免疫グロブリン(DAKO)と共に更に30分間インキュベートする前に、シートを洗浄した。最後にPBS中でシートを洗浄し、そしてCitifluor (Citifluor Ltd. , London, UK)において顕微鏡スライド上にのせ、そしてマニキュア液で封着した。それから各スライドの識別はテープを使用して隠した。
【0034】
蛍光顕微鏡により試料を検査し、そして染色された細胞の頻度を目盛り付格子(×40拡大率において0.32×0.213)を有する接眼を使用して評価した。各試料のために、50連続フィールドを検査した。全ての試料をカウントした後、各スライドの識別を明らかにした。結果は、細胞数/mm2の平均値±標準偏差として表す。
【0035】
実験1
当該実験の目的は、未変性hTRXのマウスの皮膚に対する局所適用が、その後の強力な接触アレルゲンであるオキサゾロンへの同じ部位における暴露により誘発されるLC遊走のインテグリティ(integrity)に影響できるか否かを決定することである。代表的な実験の結果を図1に示す。当該結果は、hTRXの事前暴露がアレルゲン誘発LC遊走の完全な阻害を生じることを明らかとする。記載された結果は、当該接触アレルゲンの場合において、局所適用されたhTRXが、刺激に対する有効なLC動員及び遊走に必要な1又は複数の生物学的過程を阻害するために十分な濃度において、マウス皮膚の生存表皮に達することができることを意味する。
【0036】
実験2
以前の実験は、マウス及び人の両方において、表皮LCの遊走が一定のサイトカイン及びケモカイン(特に重要であることが知られているもののうち2つはインターロイキン−1β(IL−1β)及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)である)の利用能に依存するという明確な証拠を供している。損なわれたLC遊走をもたらすサイトカイン機能の摂動の前例が存在する。従って、次の実験において、我々は、hTRXがIL−1β又はTNF−αのいずれかにより誘発されるLC遊走に影響し得るか否かを調査した。代表的な実験の結果を図2に表す。これらのデータは、マウスのhTRXに対する事前局所暴露が相同的TNF−αの皮内(id)注射により誘発されたLC遊走のほぼ完全な阻害を起こすことができることを明らかにした。一方、同じように適用されたhTRXは、相同的IL−1βの皮内投与により誘発されたLC遊走のインテグリティにおいて影響がなかった。これは、hTRXの局所適用がLC−1β機能の摂動に関係すること意味する。このようにhTRXは、生理活性のIL−1βの利用能に必要とされる環境において、アレルゲン(オキサゾロン)(図1)、又はTNF−α(図2)のいずれかの応答におけるLC動員を極めて有効に阻害した。しかしながら、hTRXの阻害効果は、遊走の有効性が損なわれていない場合、IL−1βの外来源の追加により克服することができる。
【0037】
実験3
並行した一連の実験において、実験2で取り組んだ同じ問題を調査したが、補充的な指標(endpoint)を使用した。この場合、使用した指標は皮膚流入領域リンパ節における樹状細胞(DC)の蓄積とした。当該測定の関連性は、表皮LCが求心性リンパを介して皮膚輸送から流入領域リンパ節に遊走するために誘発されることである(適応免疫系と相互作用するため)。従って表皮からのLCの喪失の機能として、あるいは皮膚流入領域リンパ節におけるこれらの引き続く蓄積の機能として、LC動員の有効性を測定することができる。IL−1β又はTNF−αのいずれかの皮下投与後のリンパ節におけるDC蓄積におけるhTRXの影響を検査した場合の代表的な実験を図3に示す。当該結果は図2に示す結果と一致する。即ち、TNF−αに応答するDC蓄積を阻害するが、IL−1βに応答する蓄積は阻害しないことが判明した。
【0038】
実験4
TRXのほとんどの生物学的特性は、当該タンパク質のレドックス活性の機能であることが考慮される。タンパク質レドックス−不活性を与える別のアミノ置換基を有する利用できるタンパク質のレドックス−不活性突然変異体が存在する。これらの突然変異体の1つは配列番号3に示されるC32A/C35Aである。実験の他の系列において、C32A/C35AのLC遊走を阻害する能力を調査し、そして未変性hTRX(配列番号1)の活性と比較した。代表的な実験を図4に示す。これらの実験において、LC動員は化学的なアレルゲンのオキサゾロンで刺激され、そして当該応答を阻害するためのhTRX又はC32A/C35Aの能力を測定した。図4に概要される結果は、未変性hTRX及びレドックス−不活性突然変異体C32A/C35Aは共にLC遊走のインテグリティを実質的にきわめて阻害することができることを明確に示す。LC遊走におけるTRXの効果(及びIL−1βシグナリングのインテグリティ)は活性レドックス機能と独立していることが結論付けられる。
【0039】
実験5
続く実験において、未変性hTRX(配列番号1)及びC32A/C35A(配列番号3)の相対的な効力をLC遊走の阻害の観点から比較した。1つの実験計画において、多様な濃度のレドックス不活性突然変異タンパク質を単一の濃度の未変性hTRXと比較した。代表的な実験結果を図5に概要する。利用可能なデータは、LC遊走の用量依存的な阻害を明らかにする。0.5μgのC32A/C35A(又は0.5μgの未変性hTRX)に対するマウスの暴露は、アレルゲン誘発LC遊走の完全な阻害により特徴付けられた。より低濃度のC32A/C35A(0.1μg又は0.05μg)はアレルゲン誘発LC遊走を阻害することができたが、これらの結果はより高用量のタンパク質でみられたものよりも完全ではなかった。
【0040】
実験6
並行的な調査において、反対の見当識を伴う同様の実験計画を利用した。即ち、未変性hTRXで用量応答を行い、当該結果を単用量のレドックス不活性突然変異体の効果と比較した。代表的な実験を図6に示す。再度、明らかな用量応答の関係が観察された。0.5μgのhTRX(又は0.5μgのC32A/C35A)でのマウスの処理は、アレルゲン誘発LC遊走の完全な阻害を生じた。より低用量のhTRX(0.1μg又は0.05μg)は同様の効果を有したが、0.5μgで行った場合よりも低い遊走の完全阻害を生じた。これらのデータを併せると、hTRX及びC32A/C35Aは共にLC遊走の阻害を生じ、そして匹敵する効力であることが確認される。
【0041】
実験7
次の一連の実験において、健康な成人のボランティアによりヒトにおけるLC遊走のインテグリティにおけるhTRXの影響を調査した。これらの2人のボランティアにより得られた結果を図7に示す。マウスにおいて行った以前の実験(上述の図2を参照のこと)と共通して、hTRXに対する事前局所暴露が相同組換えTBF−αの皮下投与により実質的に刺激されたLC遊走の有意な阻害を生じたことが各2人のボランティアにおいて観察された。これらのデータは、hTRXの効果がマウスの皮膚において最初に観察されたものと比較してヒトの皮膚において変化することを確認する。
【0042】
実験8
当該実験は、C32A/C35A修飾ヒトTRXがレドックス不活性であることを示すために計画された。当該アッセイは室温で15分間行い、そしてジチオニトロ安息香酸(DTNB)の還元を分光光度計で超過時間412nmにて追跡した。当該反応混合物は、TRXを還元するためのTRXレダクターゼにより消費される過剰な濃度のNADPHを含有する。その後、TRXが優先的にDTNBを還元し、そしてTRXは、レダクターゼ及びNADPHによりその還元形態において再循環する。図8は、当該実験においえて得られた結果を示し、C32A/C35A修飾ヒトTRXがレドックス不活性であることを確認する。
【0043】
実験9
別の一連の実験において、IL−10の皮膚細胞による同化作用におけるTRXでの局所処理のマウスにおける影響を測定した。代表的な実験を図9に示す。コントロール動物から単離した皮膚組織(媒体(AOO)単独に暴露し、接触アレルゲンのオキサゾロンでは感作していない)は、極めて低レベルのIL−10を生産し、そしてhTRXはIL−10における影響がなかった。しかしながら反対に、オキサゾロンでの感作に応答してhTRXはIL−10の生産を増強することができた。これは、TRXの更なる特性が、IL−10(皮膚及び他の組織において抗炎症性効果を有することが知られているサイトカイン)の皮膚細胞による生産を増大することであることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】マウス群(n=3)は、両耳の背側において30μlの水性クリーム(cr)又は30μlの未変性ヒトTRX(0.5μg;TRX−配列番号1)を受けた。2時間後、両耳の背側においてマウスを0.5%オキサゾロン(Ox)又は媒体単独(アセトン:オリーブ油;AOO)に暴露した。コントロールマウスは処理しなかった(未処理;−)。4時間後、主要組織適合複合体(MHC)クラスII(Ia)+LC頻度の分析のために表皮シートを調製した。LC数(平均値±標準偏差)は、n=6の表皮シート/処理群の分析に由来する。
【0045】
【図2】マウス群(n=3)は、両耳の背側において30μlの水性クリーム(cr)又は30μlの未変性ヒトTRX(0.5μg;チオ)を受けた。2時間後、耳介における皮下注射によりマウスは50ngのマウスTNFα又はIL−1βを受けた。コントロールマウスは処理しなかった(未処理;−)。4時間(IL−1β)又は30分(TNFα)後、主要組織適合複合体(MHC)クラスII(Ia)+LC頻度の分析のために表皮シートを調製した。LC数(平均値±標準偏差)は、n=6の表皮シート/処理群の分析に由来する。
【0046】
【図3】マウス群(n=10)は、両耳の背側において30μlの水性クリーム(cr)又は30μlの未変性ヒトTRX(0.5μg;チオ)を受けた。2時間後、耳介における皮下注射によりマウスは50ngのマウスTNFα又はIL−1βを受けた。コントロールマウスは処理しなかった(未処理)。17時間(IL−1β)又は4時間(TNFα)後、排出耳介リンパ節を切除し、各実験群のためにプールし、そしてLNCの単細胞懸濁液を調製した。濃度勾配遠心分離によりDCを濃縮した。DCの数はDC濃縮画分の直接的な形態調査後に評価し、そしてリンパ節あたりの数として表す。
【0047】
【図4】マウス群(n=3)は、両耳の背側において30μlの水性クリーム(cr)又は30μlの未変性ヒトTRX(0.5μg;hTRX)又は30μlの修飾ヒトTRX(0.5μg;C32AC35A−配列番号3)を受けた。2時間後、両耳の背側においてマウスを0.5%オキサゾロン(Ox)に局所的に暴露した。コントロールマウスは処理しななかった(未処理)。4時間後、MHCクラスII(Ia)+LC頻度の分析のために表皮シートを調製した。LC数(平均値±標準偏差)は、n=6の表皮シート/処理群の分析に由来する。
【0048】
【図5】マウス群(n=3)は、両耳の背側において30μlの水性クリーム(cr)又は30μlの未変性ヒトTRX(0.5μg;hTRX)又は30μlの多様な量の修飾ヒトTRX(0.5μg、0.1μg、又は0.05μg;C32AC35A−配列番号3)を受けた。2時間後、両耳の背側においてマウスを0.5%オキサゾロン(Ox)に局所的に暴露した。コントロールマウスは処理しなかった(未処理)。4時間後、MHCクラスII(Ia)+LC頻度の分析のために表皮シートを調製した。LC数(平均値±標準偏差)は、n=6の表皮シート/処理群の分析に由来する。
【0049】
【図6】マウス群(n=3)は、両耳の背側において30μlの水性クリーム(cr)、又は30μlの修飾ヒトTRX(0.5μg;C32AC35A−配列番号3)、又は30μlの多様な量の未変性ヒトTRX(0.5μg、0.1μg、又は0.05μg;hTRX)を受けた。2時間後、両耳の背側においてマウスを0.5%オキサゾロン(Ox)に局所的に暴露した。コントロールマウスは処理しなかった(未処理)。4時間後、MHCクラスII(Ia)+LC頻度の分析のために表皮シートを調製した。LC数(平均値±標準偏差)は、n=6の表皮シート/処理群の分析に由来する。
【0050】
【図7】健康なボランティアを2箇所の部位において未変性ヒトTRX(Trx;50μl中0.5μg)に局所的に暴露させ、そして更に2箇所の部位において等量の水性クリーム単独に暴露させた。2時間後、ヒト組換えTNF−α(500U)又は等量の生理食塩水を対の部位(1つはTrxで前処理し、そして他方はクリームで前処理)に皮内注射し、2時間後バイオプシーを採取した。表皮シートの間接的な免疫蛍光染色後、CDla+LC密度を評価した。結果は、50フィールド/試料の検査に由来する細胞数/mm2の平均値±標準偏差として表す。
【0051】
【図8】修飾ヒトTRX(0.5μg;C32AC35A−配列番号3)がレドックス不活性であることを示すグラフ。
【0052】
【図9】マウス群(n=5)は、両耳の背側において30μlの水性クリーム、又は未変性ヒトチオレドキシン(0.5μg;hTRX)を受けた。2時間後、両耳の背側においてマウスを0.5%オキサゾロン(Ox)に局所的に暴露した。コントロールマウスは等量の媒体(AOO)のみを受けた。2時間後、耳を切除し、そして外植片を調製し、そして37℃で16時間培養した。BioplexサイトカインアレイによりIL−10含量を分析し、そして結果をマウスあたり生産されたIL−10のpg/mlとして表す。
【0053】
【図10】マウスにおける単量体hTRX突然変異体C73Aによるオキサゾロン誘発LC遊走の阻害。マウス群(n=3)を両耳の背側において、0.5μgのオリゴマーhTRX、0.5μgのC73A若しくはクリームのみを含有する30μlの水性クリームBPに暴露し、同じ部位における適用の2時間前に、0.5%オキサゾロン(Ox)を媒体(4:1 アセトン:オリーブ油)中に懸濁した。コントロールマウスは処理しなかった(未処理)。4時間後、耳を除去し、そしてMHCクラスII(Ia)発現のための間接的な免疫蛍光染色用に背側の耳の半分から表皮シートを調製した。結果は、各6つの耳の10フィールド/耳の検査後に、表皮のIa+LC/mm2平均数(±標準偏差)として表す。
【0054】
【図11】マウスにおける無システインhTRX突然変異体(C32AC35AC62AC69AC73A)によるオキサゾロン誘発LC遊走の阻害。マウス群(n=3)を両耳の背側において、0.5μgのオリゴマーhTRX、0.5μgのC32AC35AC62AC69AC73A(Cys無し)若しくはクリームのみを含有する30μlの水性クリームBPに暴露し、同じ部位における適用の2時間前に、0.5%オキサゾロン(Ox)を媒体(4:1 アセトン:オリーブ油)中に懸濁した。コントロールマウスは処理しなかった(未処理)。4時間後、耳を除去し、そしてMHCクラスII(Ia)発現のための間接的な免疫蛍光染色用に背側の耳の半分から表皮シートを調製した。結果は、各6つの耳の10フィールド/耳の検査後に、表皮のIa+LC/mm2平均数(±標準偏差)として表す。
【0055】
【図12】マウスにおけるトリプル突然変異体C32AC35AC73Aによるオキサゾロン誘発LC遊走の阻害。マウス群(n=3)を両耳の背側において、0.5μgのオリゴマーhTRX、0.5μgのC32AC35AC73A若しくはクリームのみを含有する30μlの水性クリームBPに暴露し、同じ部位における適用の2時間前に、0.5%オキサゾロン(Ox)を媒体(4:1 アセトン:オリーブ油)中に懸濁した。コントロールマウスは処理しなかった(未処理)。4時間後、耳を除去し、そしてMHCクラスII(Ia)発現のための間接的な免疫蛍光染色用に背側の耳の半分から表皮シートを調製した。結果は、各6つの耳の10フィールド/耳の検査後に、表皮のIa+LC/mm2平均数(±標準偏差)として表す。
【0056】
【図13】マウスにおけるオリゴマーhTRXによるオキサゾロン誘発LC遊走の阻害における加熱処理(95℃で30分間)の影響。マウス群(n=3)を両耳の背側において、0.5μgのオリゴマーhTRX、0.5μgの加熱処理(95℃で30分間)オリゴマーhTRX(hTRX−HT)若しくはクリームのみを含有する30μlの水性クリームBPに暴露し、同じ部位における適用の2時間前に、0.5%オキサゾロン(Ox)を媒体(4:1 アセトン:オリーブ油)中に懸濁した。コントロールマウスは処理しなかった(未処理)。4時間後、耳を除去し、そしてMHCクラスII(Ia)発現のための間接的な免疫蛍光染色用に背側の耳の半分から表皮シートを調製した。結果は、各6つの耳の10フィールド/耳の検査後に、表皮のIa+LC/mm2平均数(±標準偏差)として表す。
【0057】
【図14】マウスにおけるオリゴマーhTRXによるオキサゾロン誘発LC遊走の阻害における加熱処理(56℃で30分間)の影響。マウス群(n=3)を両耳の背側において、0.5μgのオリゴマーhTRX、0.5μgの加熱処理(56℃で30分間)オリゴマーhTRX(hTRX−HT)若しくはクリームのみを含有する30μlの水性クリームBPに暴露し、同じ部位における適用の2時間前に、0.5%オキサゾロン(Ox)を媒体(4:1 アセトン:オリーブ油)中に懸濁した。コントロールマウスは処理しなかった(未処理)。4時間後、耳を除去し、そしてMHCクラスII(Ia)発現のための間接的な免疫蛍光染色用に背側の耳の半分から表皮シートを調製した。結果は、各6つの耳の10フィールド/耳の検査後に、表皮のIa+LC/mm2平均数(±標準偏差)として表す。
【0058】
【図15】誘発されたモノマーhTRXによるオキサゾロン誘発LC遊走の阻害。マウス群(n=3)を両耳の背側において、多様な濃度のhTRXrm(0.5μg、4μg、20μg)、若しくはクリームのみを含有する30μlの水性クリームBPに暴露し、同じ部位における適用の2時間前に、0.5%オキサゾロン(Ox)を媒体(4:1 アセトン:オリーブ油)中に懸濁した。コントロールマウスは処理しななかった(未処理)。4時間後、耳を除去し、そしてMHCクラスII(Ia)発現のための間接的な免疫蛍光染色用に背側の耳の半分から表皮シートを調製した。結果は、各6つの耳の10フィールド/耳の検査後に、表皮のIa+LC/mm2平均数(±標準偏差)として表す。
【配列表フリーテキスト】
【0059】
全ての配列は、N末端メチオニンを伴い明細書中に供される。疑義を避けるために、本発明はN末端メチオニンが非存在である配列も含むことを理解されるべきである。
【0060】
配列番号1 ヒトTRX(タンパク質)
配列番号2 ヒトTRX(DNA)
配列番号3 修飾ヒトTRX(タンパク質)
配列番号4 修飾ヒトTRX(DNA)
配列番号5 ヒトラクトフェリン(タンパク質)
配列番号6 大腸菌(E. coli)における発現のために最適化したヒトTRXをコードするDNA配列
配列番号7 大腸菌(E. coli)チオレドキシン
配列番号8 シロイナズナ(Arabidopsis)チオレドキシン
配列番号9 トリプル修飾ヒトチオレドキシン(C32A,C35A,C73A)
配列番号10 無システインヒトチオレドキシン(C32A,C35A,C62A,C69A,C73A)
配列番号11 修飾ヒトTRX(C73A)
配列番号12 修飾ヒトTRX(C32S)
配列番号13 修飾ヒトTRX(C35S)
配列番号14 修飾ヒトTRX(C32S C35S)
配列番号15 修飾ヒトTRX(C32S C69S)
配列番号16 修飾ヒトTRX(C35S C69S)
配列番号17 修飾ヒトTRX(C73S)
【0061】
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性皮膚状態を寛解するための皮膚表面に対する適用に適当な医薬の製造におけるチオレドキシン使用。
【請求項2】
チオレドキシンがヒトチオレドキシンである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
チオレドキシンが配列番号1に示される配列を有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
チオレドキシンが実質的に還元状態である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
チオレドキシンが多量体形態である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
チオレドキシンがインターロイキン1α及び/又はインターロイキン1βの生産及び/又は活性を阻害することが可能である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
チオレドキシンがインターロイキン10の生産及び/又は活性を刺激及び/又は増強することが可能である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
医薬が、溶液、ゲル、ローション、軟膏、クリーム、及びペーストから成る群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
炎症性皮膚状態が、乾癬、扁平苔癬、アトピー性湿疹、刺激性若しくはアレルギー性接触皮膚炎、接触蕁麻疹、乳児湿疹、及び尋常性ざ瘡から成る群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
皮膚状態が乾癬である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
医薬が、更に追加的な活性成分を含んで成る、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
追加的な活性成分が、副腎皮質ステロイド、及び/又はラクトフェリン、及び/又は皮膚炎疾患の治療に有効ないずれかの他の局所用医薬である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
追加的な活性成分がラクトフェリンである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
皮膚表面に対してチオレドキシンを含んで成る有効量の組成物を適用することを含んで成る炎症性皮膚状態を寛解する方法。
【請求項15】
前記チオレドキシンが、実質的に還元状態における配列番号1に示されるヒトチオレドキシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
チオレドキシンが0.05〜5μg/cm2の濃度において皮膚表面に適用される、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
0.0001〜0.5%w/vのチオレドキシンを含んで成る、炎症性皮膚状態を寛解するために適当な医薬組成物。
【請求項18】
チオレドキシンが、実質的に還元状態における配列番号1に示されるヒトチオレドキシンである、請求項17に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−501772(P2008−501772A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526552(P2007−526552)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002300
【国際公開番号】WO2005/121329
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】