説明

炎症症状を処置および予防するための方法および組成物

エオタキシンおよび少なくとも1つの他のTh−2関連サイトカインをダウンレギュレートすることにより好酸球増加症を処置する方法、ならびにエオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、IL−4、IL−5、IL−9、およびIL−13に対する抗体を含み、被験体において能動免疫応答を生じさせる多価免疫性組成物およびこのような組成物を用いる処置方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[本発明の背景]
サイトカインは免疫系の細胞によって産生され、免疫系の細胞に作用するペプチドメッセンジャー分子である。それらは特徴としてはパラ分泌または自己分泌であり、細胞と結合せず、リンパ液または血漿を介して全身循環に溢出した場合には全身に作用し得る。サイトカインは免疫系の化学メッセンジャーとして重要な役割を果たし、正常な免疫機能に不可欠なものであるが、特定の免疫系疾患では、特定のサイトカインのレベルが異常となり、病態が促される。
【0002】
アトピー性症状、特に喘息などの免疫系疾患、および自己免疫疾患では、ケモカイン、特定種のサイトカイン、およびそれらのサブクラスであるインターロイキンが重要な役割を果たす。組織におけるこれらのケモカインの存在およびレベルは生理学的変化を誘導し、特定の疾病に罹患している個体では、これが増幅および恒常化して、病態として認識される表現型を生じる。ケモカインは炎症の誘導および維持のメディエーターである。このケモカイン−受容体の相互作用を中和抗ケモカイン抗体またはケモカイン受容体アンタゴニストで妨げると、炎症性応答が弱まるか、または抑制される。ケモカインに対する自己抗体は、ケモカイン、ならびに免疫系に対するそれらのシグナル伝達および調節作用、さらには疾病を効果的に中和する。ケモカインレベルの異常に関連する疾病の、標的ケモカインに対する患者の自己抗体レベルの調節による治療概念は、実際、身体固有の病因論または疾病の調節を模倣したものであると言える。
【0003】
疾病におけるケモカインの重要な調節的役割は、開発中のいくつかの製品をもたらしており、その作用様式はケモカインとそれらの受容体との結合を遮断することである。いくつかは臨床試験下にあるが、これらの製品の大部分はヒト化モノクローナル 抗体(「mAb」)、非抗原性受容体アンタゴニストまたは可溶性受容体分子または類似体に基づくものであり、これらはいずれも何回も反復投与が必要で、長期の治療処置または予防処置とするには理想的とは言えない。例えば、慢性関節リウマチおよび炎症性腸疾患のためのヒト化抗TNFα mAb、ならびに喘息の処置のためのいくつかのヒト化抗IL−4、抗IL−5、抗IL−8および抗IL−9 mAbが開発中である。これらのヒト化mAb処置は急性の病態の短期処置に効力を持ち得るが、長期の管理療法を満たすに理想的とは言えない。結果として、目下臨床試験中の製品の多くの欠点を克服する手段として、ポリクローナル自己抗体に基づいた標的ケモカインレベルの制御を付与するために患者固有の免疫系を有効に活用できるようにする治療が示唆されたのである(例えば、WO00/65058および米国特許第6,093,405号参照)。
【0004】
サイトカインの中和
開発中のサイトカイン中和の最も一般的な方法は、サイトカイン受容体アンタゴニストの投与によるもの、サイトカインまたはサイトカイン受容体に対するヒト化モノクローナル抗体の投与によるもの、またはサイトカインと結合し、それを中和する、末端切断型の受容体の投与にものがある。例えば、米国特許第5,912,136号;同第5,914,110号;同第5,959,085号;同第6,168,791B1号;および同第6,171,590B1号はいずれもこのような方法を開示している。サイトカインの中和の方法としてもう1つ報告されているものとして、サイトカイン遺伝子のコード配列に相補的なアンチセンス分子の使用によるものがあり、その目的はその遺伝子の発現を阻害することである。
【0005】
今や、能動免疫により生成された自己抗体によるサイトカインの中和は、病的症状を処置する有望な方法であると考えられている(Zagury et al., “Toward a new generation of vaccines: The anti-cytokine therapeutic vaccines”, PNAS, July 3, 2001, Vol. 98, No. 14, 8024-8029, Svenson et al., Journal of Immunological Methods 236 (2000) 1-8, Richard et al., PNAS, January 18, 2000, Vol. 97, No. 2, 767-772. Dalum et al., Nature Biotechnology, Vol. 17, July 1999, 666-669)。サイトカインの中和に有用なワクチンは、サイトカイン分子を不活性化し、それを免疫原性とすることにより作製できる。例えば、Ciapponi et al., (“Induction of interleukin-6 (IL-6) autoantibodies through vaccination with an engineered IL-6 receptor antagonist.” Nature Biotechnology, Vol. 15, October 1997, pgs. 997-1001)参照、この筆者は、高循環レベルのヒトIL−6を有するトランスジェニックマウスで、抗原性がある非生活性操作型IL−6受容体アンタゴニストを接種した後のIL−6の中和を首尾良く実証している。Ciapponi et alは、継続的な非経口送達が必要なモノクローナル抗体(mAb)または受容体アンタゴニストによる治療に優る、免疫疾患または新生物性疾患の、このようなワクチン処置の優位性を想定している。あるいは、サイトカインは、それを免疫原性とするために免疫担体と結合させることができる(例えば、Richard et al., PNAS, January 18, 2000, Vol. 97, No. 2, 767-772, 米国特許第6,482,403号、同第6,471,957号、同第6,455,504号、同第6,420,141号、WO01/43771およびWO00/64397参照)。この抗サイトカインワクチンアプローチは、喘息およびアレルギー性疾患に関与するインターロイキンのレベル制御することにより、これらの病態を処置するために提案されたものである(WO00/65058、WO01/62287および米国特許第6,093,405号参照)。
【0006】
アトピー性症状:喘息、アレルギーおよびアレルギー性疾患
喘息は最も重要な医学的問題となってきており、米国だけで約千五百万人の喘息患者が存在する。喘息患者の数はここ十年で50%を超える増加を示し、米国では700,000人の罹患者が現れ、そのほとんどが小児である。
【0007】
人は誰でも肺に入ってきたアレルゲンに対して防御免疫応答を起こすが、ケモカインをはじめとする物質を放出するアレルギー性の免疫抗体IgEを産生する細胞の過剰応答を起こすことにより反応する人もあり、これが免疫発作を起こす。喘息症状が少なくとも週に2回現れる慢性喘息は、現在のところ、(1)コルチコステロイドなどの炎症を鎮静する薬物、および(2)発作が起こった際に収縮した気道を開き、呼吸を容易にする救済薬の2つのタイプの薬物で処置されている。流通している現行の薬物は喘息の症状を緩和する助けをするだけで、そのアレルギー、その後の喘息を引き起こす免疫応答を排除または抑制するものではない。さらに、現行の薬物の大部分は頻繁に服用しなければならない丸剤であるか、あるいは、頻繁に、または発作の際に吸入器で投与しなければならない。主としてステロイドに基づく治療法として、それらは望ましくない副作用をもたらし、使用が増えると、または長期の使用では効力が低下することがある。数ヶ月ごとに投与するだけの、喘息発作をもたらすアレルギー様応答を抑制または除去するワクチンタイプの投与のほうが、極めて望ましい。
【0008】
Tヘルパー細胞は免疫応答の鍵となる機能を果たし得る。一般に、Tヘルパー前駆体(Th−p)細胞は免疫応答の一部として、いずれも重要な生物学的役割を持つTヘルパー1(Th−1)またはTヘルパー2(Th−2)エフェクター細胞のいずれかへと分化する。肺に入ってくる抗原に応答すると、個体は防御的Th−1反応かまたはアレルギー性のTh−2応答のいずれかを起こし得る。Th−2応答はIgE抗体の産生とアレルギー症状を生じる。アレルギーおよび喘息個体は、IgEレベルの上昇を伴って、吸入したアレルゲンに対する過剰なTh−2応答を示す。
【0009】
喘息における気道の炎症は、Th2細胞、好酸球および肥満細胞による気道壁の炎症を特徴とする。これらの細胞は各々、喘息の特徴である生理学的変化に関与し、これらの細胞種は各々、ある限定されたサイトカイン群を産生し、それに対して反応性を有する。
【0010】
Th−p細胞の、Th−1またはTh−2細胞のいずれかへの分化は、多くの場合インターロイキンとケモカインの異なる組合せからなる異なるホルモンシグナル伝達経路を媒介とする。Th−2経路は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−10およびIL−13を含むサイトカインを媒介とする。これらのインターロイキンはTh−2およびその他の免疫系細胞によって産生され、抗体の産生およびアレルギー性の免疫応答に関与する他の細胞へのシグナル伝達に重要である。エオタキシンは、Th−2シグナル伝達カスケードにおける別種のケモカインであり、好酸球を調節する。エオタキシンはIgE抗体の産生に影響を及ぼし、アレルギー応答において重要な役割を果たす。
【0011】
新たな喘息治療においては、これまでに実質的な研究開発努力がなされている。これらとして、主としてエオタキシン、IL−4、IL−5およびIL−13に関するケモカイン中和療法、およびヒト化抗IgE mAbまたは可能性としてはIgEに対して免疫化するワクチンのいずれかを用いた直接的遮断によりIgE抗体を中和することをねらいとした他の戦略が挙げられる。他の、もっと従来的なアレルギーワクチン戦略は、例えばネコのふけまたはブタクサ花粉などの特定のペプチドアレルゲンによる免疫化または脱感作を中心としている。新たな送達方法およびアレルゲンのワクチン接種のためのDNAワクチン技術の適用に注力した研究も続いているが、アレルゲン特異的な戦略は喘息の全般的な療法を提供するものではない。
【0012】
また、Th−1免疫応答をもたらす既知のTh−1抗原またはDNAワクチンで免疫することにより、非特異的Th−1免疫応答を生じるか、または患者のTh−2応答をTh−1応答へシフトさせることに焦点を当てた汎用喘息ワクチンに対する多大な研究努力もある(例えば、米国特許第6,086,898号参照)。アレルギーおよび自己免疫疾患の治療法として提案されている能動免疫アプローチは、インターロイキンIL−4およびIL−5のレベルの制御に焦点が当てられてきた。米国特許第6,093,405号は、アレルギーまたは自己免疫疾患を処置するためにそれぞれ、免疫原性IL−4またはIL−5サイトカイン組成物で能動免疫することによってIL−4またはIL−5に対する免疫応答を誘導することを開示している。WO00/65058は、抗IL−5免疫原の構築、ならびに喘息およびその他の慢性アレルギー性疾患の管理に関して提案される方法において、IL−5をダウンレギュレートする方法におけるそれらの使用を開示している。
【0013】
アレルギー性疾患に関連づけられている好酸球増加症の発症に関する分野の現状では、Th−2ケモカインの各々の主な機能は、その経路の他のケモカインの機能に複雑かつ統合的に関連していると考えられている。例えば、エオタキシンは組織における好酸球蓄積を促進し、IL−5は血中の好酸球増加を誘導すると考えられている。そして、エオタキシンの産生はIL−13によって調節され、IL−13は、IL−5とは無関係に好酸球の移動を調節することができる。マウスでは、IL−5、エオタキシンまたはその両者の産生の欠乏がマウスにT細胞の内因的欠乏の素因をつくり、これにより次に、CD4+T細胞のIL−13産生能が損なわれるということが報告されている(Mattes, et al., J. Exp. Med., Vol. 195, No. 11, June 3, 2002, 1433-1444参照)。
【0014】
エオタキシン
エオタキシンは、好酸球蓄積を刺激する、または好酸球を誘引する好酸球特異的ケモカインである。エオタキシンは好酸球の走化性を誘導するが、好中球、単球またはT細胞の走化性は有意には誘導しない。エオタキシンはケモカインのCCサブファミリーのメンバーであり、このクラスはまた、単球走化性タンパク質(MCP)およびマクロファージ炎症タンパク質(MIP)も誘導する、Van Coillie et al., Cytokine & Growth Factor Reviews, 10 (1999) 61-86; Garcia-Zepeda, et al. (1996) Nat. Med., 2: 449-456参照。
【0015】
現在のところ、エオタキシンとして分類されるものには少なくとも3つに分子があり、最初に確認されたものが、エオタキシン−1であり、これはなおエオタキシンと呼ばれており(Kitaura, M. et al., J. Biol. Chem., 1996, 271; 7725-30およびPonath et al., J. Clin. Invest. 1996, 97: 604-12参照)、その後発見されたエオタキシン−2とエオタキシン−3がある(Conroy et al. Respir Res 2001, 2: 150-156; Guiterrez-Ramos et al. Immunology Today, November 1999, Vol. 20, No. 11, 500-504参照)。エオタキシンはケモカイン受容体3、すなわちCCR3と比較的高い親和性で結合し、それを介して好酸球補充を誘導する働きをする。その構造およびペプチド配列およびエオタキシンをコードする遺伝子は既知であり、受容体結合が研究、同定されている(Garcia-Zepeda et al. Nature Medicine, Vol. 2, No. 4, April 1996, 449-456; Ye et al., The Journal of Biological Chemistry, Vol. 275, No. 35, September 1, 2000 27250- 27257; Mayer and Stone, The Journal of Biological Chemistry, Vol. 276, No. 17, April 27 2001, 13911-13916参照)。
【0016】
好酸球は蠕虫寄生感染に対する身体のTh−2型免疫防御の主要成分の1つであり、感染個体の血液および組織中に蓄積する。好酸球は陽イオンタンパク質の顆粒を含み、 脱顆粒時にこれが細胞環境へ放出され、侵入してくる蠕虫に傷害を与える。喘息および慢性アレルギー性疾患などのアトピー性症状はアレルギー性の非蠕虫刺激に対する著しいTh−2型免疫応答を特徴とする。喘息および慢性アレルギー性疾患患者の肺の炎症は、肺および特に気管支粘膜における好酸球の浸潤および蓄積を特徴とする。蠕虫感染が存在しない場合のこれらの症状では、脱顆粒時の好酸球の陽イオンタンパク質の放出が周囲の細胞に傷害を与える。その結果、エオタキシンはアトピー性症状の処置および予防、特に喘息およびアレルギー性疾患の治療の可能性のある標的として認識されるようになった。米国特許第5,993,814号および同第6,031,080号ならびにPCT公開WO95/07985、WO97/00960、WO97/12914、およびWO99/10534は、治療におけるエオタキシンに対する抗体をはじめ種々のエオタキシンアゴニストおよびアンタゴニストの使用を示唆している。WO01/66754は、受動免疫法におけるエオタキシン介在症状の処置のための、抗エオタキシンヒト抗体CAT212および213ならびにそのフラグメントの作製および使用を開示している。
【0017】
エオタキシンが作用する受容体CC、CKR3またはCXCR3受容体が同定されており(WO97/41154および米国特許第6,171,590B1号参照)、また、治療のためにこの受容体のアゴニストおよびアンタゴニストも示唆されている(米国特許第6,271,347号参照)。米国特許第6,171,590B1号は、この受容体に由来する免疫オリゴペプチドを治療効果のため、この受容体に対する能動免疫において使用できることを示唆している。しかしながら、上記で挙げた刊行物および特許の中には、治療法としてのエオタキシンに対する能動免疫を示唆するもの、またはこのような能動免疫療法に有用な免疫性組成物を開示するものはない。
【0018】
本発明は、好酸球蓄積を特徴とする症状の処置に有用な組成物を提供する。喘息および慢性アレルギー性疾患が最も一般的であるが、これらのアトピー性症状には、乾癬などのアトピー性皮膚症状、および好酸球性潰瘍性大腸炎などの他の症状が含まれる。これらの各症状では、エオタキシンが誘導する好酸球補充により、罹患組織に著しく好酸球が蓄積する。罹患組織に高レベルの好酸球が慢性的に存在すると著しい組織損傷が起こり、これが経時的に進行し、不可逆的なものとなることがある。他の大多数により行われているサイトカイン中和療法は、IL−4、IL−5、IL−9、IL−13またはエオタキシンなどのケモカインの1つだけの作用、またはCCR3受容体に対するケモカイン、エオタキシンなど、その受容体に対するケモカインの作用を遮断することに向けられる。これらの療法では、小分子アンタゴニスト、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体による受動免疫、1つのサイトカインに対する能動免疫、またはその受容体自体に対する受動もしくは能動免疫を利用する。小分子および受動免疫アプローチは反復投与を必要とし、患者の応諾の点から問題がある。さらに、反復療法の結果として投与されるmAbに対する中和抗体の誘導は、慢性疾患の長期処置では、mAbによる受動免疫の有効性を著しく損なう(Adair, F., Drug Discovery World, Summer 2002 pp 53-59)。他方、受容体自体に対する能動免疫は、その受容体への他のケモカインの結合を妨げ、予測できない、また、意図しない生物学的結果をもたらすことがある。
【0019】
[発明の概要]
本発明は1種以上のサイトカインの免疫調節経路を含む、サイトカイン媒介疾患の処置のための方法および組成物を提供する。このような疾患としては、Th1およびTh2サイトカイン経路を含む、自己免疫疾患ならびに喘息およびアレルギー症状などのアトピー性症状が挙げられる。本発明の方法は、その機能がこの経路に関連する2種以上のサイトカインの活性の遮断を提供する。サイトカイン遮断の全体的な効果はサイトカインの全レベルおよび関連する免疫応答をダウンレギュレートし、処置する症状を改善することである。
【0020】
本発明の方法は、被験体において、対象とするサイトカイン経路における2種以上のサイトカインに対する自己抗体の免疫応答を生じさせるように被験体を免疫することを意図する。本発明の免疫性組成物は、免疫された被験体において標的サイトカインに特異的な有効免疫応答を生じさせるために使用できる。これらの方法は、各々ただ1つのサイトカイン標的に対して免疫応答を生じさせるように向けられた免疫原を個別投与すること、または、2以上のサイトカイン標的に対して免疫応答を生じ得る多価免疫原を投与することを含む。
【0021】
本発明によれば、Th−2免疫応答関連疾患が、Th−2ケモカインレベルを調節し、被験体におけるケモカインの作用を遮断することにより処置または予防できる。これは、1つの方法では、その疾病に対して作用を持ち得る1種以上のTh−2ケモカインに対して被験体を能動免疫することにより達成できる。例えば、被験体はエオタキシンに対して能動免疫すると同時に、IL−4、IL−5、IL−9またはIL−13など、Th−2経路における少なくとも1つの他のサイトカインを遮断することができる。この同時遮断は、標的サイトカインに対する能動免疫;抗体を用いた受動免疫;標的サイトカインとそれらの受容体との結合を妨げるアンタゴニストの投与;自由に循環し、それらの活性を中和する、受容体断片などのサイトカイン捕捉剤の投与をはじめとするいずれかの方法、またはこれらの方法または構成要素のいずれかの組合せにより達成することができる。例えば、好酸球増加症の処置は、エオタキシンとIL−5;エオタキシンとIL−13;エオタキシン、IL−5とIL−13;エオタキシンとIL−9;またはエオタキシンとIL−4の同時遮断により達成できる。本発明の他の実施形態では、エオタキシンの遮断に加え、エオタキシン2および/またはエオタキシン3も遮断し得る。種々の標的サイトカインは、ヒトをはじめとする動物被験体の、抗サイトカイン免疫原での能動免疫により効果的に遮断することができる。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、エオタキシンの遮断はエオタキシンに対する能動免疫により達成される。さらなるサイトカインの遮断は、能動免疫を含むいずれの手段によって達成してもよい。能動免疫は、各々1つの標的サイトカインに向けられた個々の治療用ワクチン製品を投与することにより、あるいは標的サイトカインの全てに対して能動免疫応答を誘発し得る1つの多価治療用ワクチン製品を投与することにより達成できる。能動免疫は、抗原性ペプチド免疫タンパク質複合体またはDNAワクチンをはじめ、いずれのワクチン法によって達成してもよい。
【0023】
本発明の特定の実施形態は、Th−2免疫応答に関与する2種以上のサイトカインを標的とする多価ワクチン製品に関する。例えば、本発明の一実施形態では、Th−2経路に関与する2種のサイトカイン、IL−5とエオタキシンに対して患者を能動免疫することによる、アレルギー性疾患および喘息の処置方法を提供する。関連の実施形態では、本発明は、被験体においてサイトカイン、IL−5とエオタキシンに対する自己抗体を惹起し得る多価免疫原、ならびに喘息およびアレルギー性疾患およびその他のアトピー性症状など、好酸球蓄積を含む炎症症状を処置するための、このような多価免疫原の使用を提供する。これらの多価ワクチンまたは免疫製品は種々の形態の免疫原および当技術分野で公知の送達方法を利用でき、単独で使用することもできるし、あるいは他の治療薬と併用することもできる。
【0024】
免疫性組成物は、患者において、IL−5およびエオタキシンを免疫調節または免疫中和し、さらにそれらの活性をダウンレギュレートし、炎症症状を改善するように好酸球蓄積の軽減をもたらすに十分なレベルで、これらのサイトカインに対してよう自己抗体応答を生じさせるために使用できる。これらの免疫原としては、エオタキシンおよびIL−5配列の一部を含む組合せペプチド免疫原、または免疫担体に結合されたミメティクス、またはこのような組合せペプチド免疫原をコードするDNAワクチンが挙げられる。
【0025】
本発明はまた、好酸球増加症または好酸球蓄積に関連する症状の処置方法であって、本発明の免疫性組成物で、エオタキシンおよびIL−5に対して被験体を能動免疫することを含む方法に関する。本発明の処置方法は、多価抗エオタキシンおよび抗IL−5ワクチンを用いる能動免疫に加え、他の医薬剤で被験体を処置することを含む療法を含む。
【0026】
本発明のある態様は、ヒトをはじめとする動物被験体においてTh−2サイトカインをダウンレギュレートするワクチン組成物に関する。これらのワクチン組成物は、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、IL−5、IL−9、IL−13およびIL−4などの2種以上のTh−2ケモカインに対する自己抗体含む被験体において能動免疫応答を生じさせるのに用いられる。これらの多価ワクチン製品は、喘息およびアレルギー性疾患およびその他のアトピー性症状など、エオタキシンを媒介とする好酸球蓄積から起こる炎症症状の処置に使用できる。これらのワクチンまたは免疫製品は種々の免疫原種および送達方法を利用でき、単独で使用することもできるし、あるいは他の治療薬と併用することもできる。さらに、これらの多価免疫原は種々の標的ケモカインの各々について複数の異なるペプチドエピトープを含み得る。
【0027】
これら抗原ペプチドに基づく製品は、改変ケモカイン、すなわち不活性かつ免疫原性とされているものを用いて処方することができる。ある実施形態では、これらの免疫原は、免疫担体に結合された少なくとも1つのケモカイン受容体アンタゴニストもしくはアゴニスト、またはケモカイン由来エピトープを含む。標的ケモカインまたはケモカインミメティクスに由来する免疫原は当技術分野で公知の方法を用いて構築することができ、マウスまたはウサギなどの実験動物において免疫応答を惹起するために使用できる。得られた抗体を、臨床開発に最も適当なエピトープを選択する前段階として、標的ケモカインとその受容体との結合を中和するそれらの能力に関してin vitroおよび/またはin vivoでスクリーニングすればよい。これらDNAに基づく製品は、抗原ペプチドをコードし、処置した被験体において抗原ペプチド産物の産生をもたらすDNAワクチン製品を含み、これらは免疫した被験体において標的ケモカインに対する免疫応答を惹起する。特定の製品のデザインは、一次免疫応答が求められる標的組織および主として生じる免疫応答のタイプによって異なる。
【0028】
本発明の免疫原を構築するには、特定のペプチドエピトープ配列を免疫担体と結合させる。得られた免疫原は、動物被験体に投与されると、体液性の免疫応答を惹起し、被験体において自己抗原を産生し、これが標的ケモカイン、例えばIL−5またはエオタキシンと結合し、その生物学的作用を中和することができる。免疫応答は免疫原の追加投与により長期にわたって維持することができる。好適な免疫担体は、ジフテリア毒(DT)または破傷風毒(TT)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、インフルエンザウイルスヘマグルチニンなどのタンパク質またはタンパク質毒素を含み得る。特定のペプチド配列は、二官能性架橋剤を用いた結合を介して免疫担体と結合させる。あるいは、特定のペプチドを、それを免疫原性とするためにコロイド金属と結合させてもよく、または、所望のケモカイン、例えばエオタキシンおよびIL−5標的断片に対して持続的な免疫応答を惹起するために、特定のB細胞エピトープおよびT細胞エピトープを有する合成ヘテロ官能性免疫ペプチドとして好適なT細胞エピトープ配列とタンデムで合成することもできる。
【0029】
本発明はまた、エオタキシン媒介好酸球蓄積に関連する症状の処置方法であって、本発明の免疫性組成物で、Th−2ケモカインに対して被験体を能動免疫することを含む方法に関する。本処置方法は、抗ケモカインワクチンを用いた能動免疫に加えて、他の医薬剤での被験体の処置も含む療法を含む。
【0030】
[発明の詳細な説明]
本発明は、哺乳類およびヒトをはじめとする動物被験体においてサイトカイン媒介疾患を処置するための方法および組成物を提供する。本発明の特に中心となるものは、Th−1およびTh−2、T細胞経路など、複数のサイトカインからなる免疫調節経路を含む疾患の処置である。本発明によれば、治療を必要とする被験体は、処置する疾患に関連づけられている経路における2種以上のサイトカインに対して能動免疫される。被験体は各々単一のサイトカインに対する、複数の個々の一価組成物で免疫してもよいし、あるいは、2種以上のサイトカインに対する自己抗体を含み、被験体で免疫応答を惹起し得る多価免疫性組成物で免疫してもよい。
【0031】
本発明の特定の実施形態は、Th−2免疫調節経路を含む疾患、特にアレルギー性疾患および喘息の処置のための方法および組成物を提供する。これらの疾患のいくつかは、肺組織などの特定の組織への好酸球補充およびその結果起こる組織炎症を特徴とする。本発明の方法は、好酸球の産生および補充を制御するため、および組織炎症の軽減をもたらすために、Th−2免疫応答に関与する複数のサイトカインに対する、また特定の実施形態では、Th−2免疫応答に関与する2種のサイトカインであるIL−5とエオタキシンに対する被験体の能動免疫を提供する。
【0032】
本発明は、能動免疫に有用であり、かつ、疾患に関連づけられている免疫調節経路に関与する複数のサイトカインに対して持続的な免疫応答を誘導するようにデザインされている免疫性組成物を提供する。一実施形態では、本発明は、動物およびヒトにおけるアレルギー性疾患および喘息と関連づけられているTh−2経路および好酸球蓄積に関与するエオタキシンおよびIL−5に対して特異的免疫応答を誘導するにデザインされている免疫原を提供する。本発明の種々の免疫原は、特定の症状の処置に最適な特定の免疫原を選択するために、対象とする疾病または炎症症状に好適な動物モデルにおいて生産および分析することができる。喘息およびその他のアレルギー性疾患に好適な動物モデルは当技術分野で周知のものである(Humbles et al., J. Exp. Med., Vol. 186, No. 4, August 18, 1997, 601-612, Corry et al., J. Exp. Med., Vol. 183, January 1996, 109-117, Foster et al., J. Exp. Med., Vol. 183, January 1996, 195-201, Lukacs, et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Bio., Vol. 10, 526-532, 1994参照)。
【0033】
本発明の免疫原は、標的サイトカインの生物活性を中和または調節可能とするのに十分高い、標的サイトカインに対する特異性および結合親和性の抗体を含む被験体で免疫応答を誘導しなければならない。高レベルの好酸球に関連する疾患を処置するために用いられる治療組成物では、誘導される抗サイトカイン抗体の力価が、被験体において高レベルのエオタキシンの低下をもたらし、アトピー性症状により影響を受けた組織への好酸球の補充の低下をもたらすに十分なものでなければならない。被験体または患者を本発明の免疫性組成物で能動免疫することにより、エオタキシンと反応する種々の自己抗体の全体のレベル、およびIL−5、IL−13またはIL−4など、エオタキシンレベルまたはTh−2媒介アレルギー応答に影響を及ぼす少なくとも1つの他のサイトカインは被験体内で維持され、アレルギー反応中の好酸球の補充は妨げられ、改善されている。この抗サイトカイン自己抗体レベルは本発明の免疫性組成物の追加投与で維持することができるので、小分子ケモカインアンタゴニストによって与えられるもの、すなわち、治療薬のレベルに著しい変動を示し、好ましい患者の応諾を得にくいという問題がある受動抗ケモカイン免疫に比べて、慢性疾病状態の管理に関してより優れた防御を与えるはずである。さらに、mAbの受動免疫では、反復投与した際に標的化されるmAbに対する中和抗体が発達してしまい、長期処置ではそれらの有効性が限定される。
【0034】
エオタキシンまたはその断片など、通常の非免疫原性のケモカインはまた、周知の方法(例えば、米国特許第6,217,881号;同第6,132,720号;同第5,891,992号;同第5,609,870号;同第5,607,676号;同第5,468,494号;同第5,023,077号;および同第4,201,770号、ならびにRichard et al., PNAS, January 18, 2000, Vol. 97, No. 2, 767-772; Svenson et al., Journal of Immunological Methods, 236 (2000), 1-8; Dalum et al., Nature Biotechnology, Vol. 17, July 1999, 666-669; Gonzalez et al., Annals of Oncology, 9: 431-435,1998; およびDalum et al., The Journal of Immunology, 1996, 157: 4796-4804参照)により、そのペプチドまたは断片を免疫担体タンパク質、またはジフテリア毒(DT)、破傷風毒(TT)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、BCG、OVAまたはその他などのタンパク質毒素と結合させることによって免疫原性、またそうでなければ生物学的に不活性とすることができる。あるいは、これらのケモカインはコロイド金属と結合させてそれらを免疫原性とすることもできるし(米国特許第5,112,606号、同第6,274,552号、および同第6,528,051号参照)、またはWO00/65058およびWO95/05849で開示されている方法を用い、エオタキシン配列にタンデムでTヘルパーエピトープを導入することにより、不活性であるが、免疫原性である改変されたケモカイン変異体または形態を作出することもできる。
【0035】
標的ケモカインまたはその断片の、不活性であるが、免疫原性である形態を作出するのに有用であり得る化学的、物理的および免疫学的処理がいくつか知られている(例えば、米国特許第6,093,405号; Zagury et al., PNAS, July 3, 2001, Vol. 98, No. 14, 8024-8029; Gringeri et al., Journal of Acquired Immune Deficiency Syndrome and Human Retrovirology, Vol. 20, No. 4, April 1, 1999; Ciapponi et al., Nature Biotechnology, October 1997, Vol. 15, 997-1001; Raaberg et al., Pediatric Research, Vol. 37, No.2, 1995, 169-174; Raaberg et al., Pediatric Research, Vol. 37, No. 2, 1995, 175-181; Gringeri et al., Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes, Vol. 7, No. 7, 1994, 978-988; Zagury et al., Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes, Vol. 5, No. 7, 1992, 676-681参照)。
【0036】
本発明の一実施形態は、DTまたはTTなどの免疫タンパク質担体に結合されたケモカイン分子上の所望のエピトープに対応する同じ標的ケモカイン由来の複数の異なるペプチド断片を含み、それにより無差別のT細胞エピトープを提供し、長期の抗体応答の間、免疫記憶を可能とする複合免疫原に関する。このような免疫原は、ケモカインに対する能動体液性免疫応答を生じさせるためにヒトまたは動物被験体に投与することができる。本発明の一実施形態は、それを免疫原性とするためにDTなどの免疫担体タンパク質に結合されたヒトエオタキシン分子などの完全ケモカインを含む。本発明のその他の実施形態は、免疫担体タンパク質に結合された、種々の、もっと短いケモカインペプチド断片を含む。
【0037】
これらの複合体はエピトープを含む約4〜50個のアミノ酸残基のペプチドを用いて構築することができ、被験体に存在しているケモカイン分子上にあるエピトープと交差反応する抗体を被験体に誘導する。これらのエピトープを含むこれらのペプチドを、次に、一定範囲のペプチド/担体タンパク質モル比でタンパク質担体と結合させる。このペプチドは免疫タンパク質と直接結合させてもよいし、あるいは抗原提示細胞に対する提示、およびそれにより所望のエピトープの免疫原性を増強するために、担体分子から所望のエピトープを延長すべく、ペプチドスペーサー配列を組み込んでもよい。このペプチドスペーサーはペプチド断片のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれの末端に付着させてもよく、次に、このスペーサーを免疫担体と結合させる。ペプチドと担体の結合は、所望のエピトープを含むペプチドと担体タンパク質とを付着させるための架橋剤(ホモ二官能性またはヘテロ二官能性のいずれか)を用いて達成される。二官能性架橋剤の選択は、そのペプチド上の官能部分の利用度によって異なる。これらの結合法の化合物は当技術分野で周知のものであり、米国特許第6,132,720号;同第5,609,870号;および同第5,468,494号、ならびにChemistry of Protein Conjugation and Cross-linking, S.S. Wong (1991) CRC Press, Inc.の開示に示されている。
【0038】
あるいは、免疫ケモカインペプチドは、選択されたケモカインエピトープ断片を、T細胞エピトープとタンデムで産生し、それにより無差別のT細胞エピトープとともに、選択されたB細胞エピトープ(ケモカインに由来する)を提示し、免疫された被験体で持続的な免疫応答をもたらすように、合成ペプチド化学により構築してもよい。
【0039】
本発明の複合体免疫原は、当技術分野で周知の成分および方法を用いて、医薬上許容されるビヒクル中、アジュバントまたはその他の免疫刺激剤とともに処方すればよい(Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach, (1995) Powell and Newman Eds., Plenum Press (New York), Aucouturier et al., Vaccine 19 (2001) 2666-2672)。
【0040】
免疫ケモカインペプチドは、また、ケモカイン断片、または同じもしくは異なるケモカイン由来の複数の断片の所望のDNA配列が、T細胞エピトープの、必要なDNA配列とタンデムでコードされており、それによりT細胞エピトープとともに、選択されたB細胞エピトープ(ケモカインに由来する)を含む融合タンパク質を産生するようなプラスミドベクターを作出するよう、組換えDNA技術により構築することもできる。この融合タンパク質は細胞培養/発酵技術を用いてin vitroで発現させることができ、培養物から精製することができるか、またはプラスミド表面で発現させることができるか、またはそのプラスミドDNA構築物をDNAワクチンとして使用することができる。これらの方法はいずれも、個々の調製物で免疫した被験体においてケモカイン特異的、かつ、持続的免疫応答を惹起するのに好適な調製物を提供することができる。
【実施例】
【0041】
実施例1:抗エオタキシン免疫原
成熟ヒトエオタキシン−1は、23アミノ酸の親水性アミノ末端配列を含む97アミノ酸の前駆体タンパクに由来するものであり、これが切断されると74アミノ酸、分子量約8.4kDaの成熟タンパク質となる(米国特許第6,403,782号、WO99/10534;WO97/00960; Ye et al., Journal of Biological Chemistry, Vol. 275, No. 35, Sept. 1, 2000, 27250-27257; Garcia-Zepeda et al., Nature Medicine, Vol. 2, N0. 4, April 1996, 449-45; Ponath et al., J. Clin. Invest., Vol. 97, No. 3, February 1996, 604-612; Mayer et al., Journal Biological Chemistry, Vol. 278, No. 17, April 27, 2001, 13911-13916参照)。成熟ヒトエオタキシンのアミノ酸配列(配列番号1)は次の通りである(各アミノ酸残基の一文字コードを用いている)。
【表1】

【0042】
エオタキシンは通常、免疫原性でない。このペプチドそれ自体、または対象とするエピトープに相当するそのペプチドの断片は、当技術分野で周知の方法により免疫原性とすることができる。使用できる1つの方法として、エオタキシンの生物活性は失っているが、免疫原の形態であって、動物またはヒト被験体において抗エオタキシン中和抗体を惹起し得る不活性なエオタキシンまたは不活性なエオタキシン断片を作出するものがある。不活性であるが、免疫原性であるエオタキシンまたはその断片を作出するのに有用な化学的、物理的および免疫学的処理はいくつか知られている(例えば、米国特許第6,093,405号; Zagury et al., PNAS, July 3, 2001, Vol. 98, No. 14, 8024-8029; Gringeri et al., Journal of Acquired Immune Deficiency Syndrome and Human Retrovirology, Vol. 20, No. 4, April 1, 1999; Ciapponi et al., Nature Biotechnology, October 1997, Vol. 15, 997-1001; Raaberg et al., Pediatric Research, Vol. 37, No.2, 1995, 169-174; Raaberg et al., Pediatric Research, Vol. 37, No. 2, 1995, 175-181; Gringeri et al., Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes, Vol. 7, No. 7, 1994, 978-988; Zagury et al., Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes, Vol. 5, No. 7, 1992, 676-681参照)。
【0043】
成熟ヒトエオタキシン配列を参照すれば、本発明の特定の実施形態では、この分子のアミノ末端に由来するアミノ酸残基1〜45のペプチド断片およびカルボキシル末端を構成している残渣54〜74の断片が、本発明の免疫複合体の構築に有用である。この免疫複合体は、同じ免疫担体に結合された、同じペプチド断片または異なるペプチド断片に存在し得る1以上の異なるエオタキシンエピトープを含み得る。本発明の免疫原の構築に有用ないくつかのエオタキシンペプチド断片は次の通りである:
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

これらのペプチドは当技術分野で周知の合成または組換え手段により作製できる。また、当業者ならば、どんなペプチド断片であれ、そのアミノ酸配列を、その免疫原性を高めるために、あるいは例えば電荷、電荷密度、疎水性など、その断片の他の何らかの特性を付与もしくは高めるために、溶解度を変化させるために、または被験体においてエオタキシンに対する免疫応答の誘導に寄与するその能力を維持しながら、ジスルフィドによるオリゴマー化を排除するためのシステイン残基の置換をはじめとする、オリゴマー化および凝集の可能性を低減するために、改変することができる。このような改変は例えばアミノ酸残基を誘導体化することにより、または特定のアミノ酸は別のアミノ酸に置換することにより、または当技術分野で公知の他の何らかの方法により行うことができる。
【0044】
また、特定の動物被験体においてエオタキシンの生物活性を示さないミミックまたはイムノミミックを用いて複合免疫原を構築することもできる。ミミックはそれ自体で免疫原性とはなり得ないが、免疫ペプチドと結合させることにより免疫原性となり得る。ある実施形態では、これらのミミックはマウスまたはモルモットエオタキシンなどのその他の哺乳類エオタキシン分子に由来するものであってもよい(米国特許第6,031,080号および同第5,993,814号)。
【0045】
エオタキシンペプチド断片またはイムノミミックスは免疫タンパク質担体と直接結合させてもよいし、あるいは抗原提示細胞に対する提示、およびそれにより所望のエピトープの免疫原性を増強するために、担体分子から所望のエピトープを延長すべく、ペプチドスペーサー配列を組み込んでもよい。多様なペプチドスペーサーが使用できる。米国特許第5,609,870号および同第5,468,494号は、ペプチドスペーサー、およびそれらのスペーサーを目的のペプチドと、そしてさらに本発明の複合免疫原を構築するのに有用であり得るDTまたはTTなどの免疫タンパク質担体と結合させる方法を開示している。これらのペプチドスペーサー:
【表6】

は、本発明のエオタキシンペプチド断片に使用可能である。これらのスペーサーペプチドをエオタキシンペプチド断片のアミノ末端またはカルボキシル末端のいずれかに組み込むと、例えば、
【表7】

などの免疫タンパク質と結合したペプチドが作出できる。
【0046】
一般に、これらのスペーサー配列は、エピトープを含むペプチド断片の作出の際の合成ペプチド化学によって特定のエオタキシン配列に組み込む。特に、いくつかの親水性配列を有する配列を含み、その分子の表面に提供される可能性が高いエオタキシン断片が本発明に特に有用である。これらのものとして、例えば、
【表8】

が挙げられる。
【0047】
一実施形態では、架橋剤を用いて特定のエオタキシン断片とDTおよびTTなどの担体タンパク質との結合を補助するには、トレオニン、セリンまたはアラニン残基での置換により、天然配列からシステイン残基を除去するのが望ましい。ペプチド断片のシステイン残基を除去するための、このアミノ酸の置換は、本発明のいずれの免疫原にも、また、いずれの標的ケモカインにも適用される。これにより、ペプチド断片の流体力学的品質は、架橋工程の際に潜在的に有害な副反応を排除しつつ、保持される。例としては、
【表9】

が挙げられる。
【0048】
抗エオタキシン免疫原は、免疫担体に結合された1つのペプチド断片、例えば、DTに結合された配列GPASVPTTCCFNLANRKIPL(配列番号16)のペプチド断片1以上のコピーを含み得る。他の実施形態では、エオタキシン上の2以上のエピトープに対する抗体を用いて被験体において能動免疫応答を誘導するために、2以上の異なるペプチド断片を同じ免疫担体に結合させてもよい。このような免疫原は、例えば、DTに結合されたペプチド配列GPASVPTTCCFNLANRKIPL(配列番号16)およびKKKWVQDSMKYLDQKSPTPKP(配列番号23)の各々の複数コピーを含み得る。
【0049】
もう1つの実施形態では、エオタキシン上の2以上のエピトープに対する抗体を用いて被験体において能動免疫応答を誘導するために、2以上の異なるペプチド免疫担体複合体を用いて製剤を調製してもよい。例えば、投与する組成物は、1つは担体に結合された1つの特定のエピトープを含む第一の構築物と、他の担体分子に結合された第二の異なるエピトープを含む第二の構築物の、2つの異なる免疫原構築物の同時配合混合物である。このような免疫原製剤は、例えば、ペプチド配列DT複合体、すなわち、DTに結合されたGPASVPTTCCFNLANRKIPL(配列番号16)、およびDTに結合されたKKKWVQDSMKYLDQKSPTPKP(配列番号23)の各々の複数コピーを含む。
【0050】
エオタキシン−毒素複合体は、個別処方に、または最終製剤において2以上のエピトープ特異的複合体を提供するための混合に好適な単独物として調製することができる。あるいは、2以上のエオタキシン特異的ペプチドの結合は、それらの末端スルフヒドリル基を介して単一のマレイミジル−毒素調製物と結合させることもできる。これはマレイミジル−毒素を、活性化毒素の利用可能なマレイミジル部分より1.1モル過剰の混合ペプチドと混合したエオタキシン−特異的ペプチドの1:1混合物と反応させることにより達成される。これにより、複数のエオタキシン特異的エピトープを含む単一毒素複合体が形成される。
【0051】
ある実施形態では、エオタキシン上の複数のエピトープに対する免疫応答を免疫された被験体に導入すると、相乗作用的である可能性のある、標的エオタキシンの結合および中和が起こり得る。適当なエピトープ配列は、それらの特異的エオタキシンエピトープに対する抗体間の結合の妨害の可能性を低減するよう、標的分子上の互いから十分除去された配列から選択される。このようなエオタキシンエピトープの組合せの一例として、次のエオタキシンおよびエオタキシン類似体配列が挙げられる:
【表10】

【0052】
実施例2:抗IL−5免疫原
哺乳類およびヒトにおいてIL−5に対する能動免疫応答を惹起する免疫原は当技術分野で公知のものである。WO00/65058は、抗IL−5免疫性組成物、ならびにそれらを作製および投与するための方法を開示している。WO00/65058 に開示されている抗IL−5免疫原は本発明の方法に有用であり、WO00/65058の開示は出典明示によりそのまま本明細書の一部とされる。
【0053】
本発明の免疫原を構築するのに有用なIL−5ペプチド断片は、
【表11】

である。
【0054】
実施例3:抗IL−9免疫原
哺乳類およびヒトにおいてIL−9に対する能動免疫応答を惹起する免疫原は当技術分野で公知のものである。Richard et al., PNAS, January 18, 2000, Vol. 97, No. 2, 767-772は、抗IL−9免疫性組成物、ならびにそれらを作製および投与するための方法を開示している(米国特許第6,645,486も参照)。Richard et al., PNAS, January 18, 2000, Vol. 97, No. 2, 767-772に開示されている抗IL−9免疫原は本発明の方法に有用であり、Richard et al., PNAS, January 18, 2000, Vol. 97, No. 2, 767-772の開示は出典明示によりそのまま本明細書の一部とされる。
【0055】
実施例4:抗IL−13免疫原
哺乳類およびヒトにおいてIL−13に対する能動免疫応答を惹起する免疫原は当技術分野で公知のものである。WO02/070711は、抗IL−13免疫性組成物、ならびにそれらを作製および投与するための方法を開示している。WO02/070711に開示されている抗IL−13免疫原は本発明の方法に有用であり、WO02/070711の開示は出典明示によりそのまま本明細書の一部とされる。
【0056】
実施例5:抗IL−4免疫原
哺乳類およびヒトにおいてIL−4に対する能動免疫応答を惹起する免疫原は当技術分野で公知のものである。WO02/070711は、抗IL−4免疫性組成物、ならびにそれらを作製および投与するための方法を開示している。WO02/070711に開示されている抗IL−4免疫原は本発明の方法に有用であり、WO02/070711の開示は出典明示によりそのまま本明細書の一部とされる。
【0057】
実施例6:抗エオタキシン−2免疫原
エオタキシン−2のアミノ酸配列は既知である、Grzegorewski et al., (2001) Cytokine 13; 209-219:およびMayer and Stone (2000) Biochemistry, 39, 8382-8395参照。
ペプチド断片
【表12】

は、本発明の抗エオタキシン−2免疫原を構築するために使用できる。
【0058】
実施例7:抗エオタキシン−3免疫原
エオタキシン−3のアミノ酸配列はMayer and Stone, (2003) Proteins 50: 184-191に開示されている。ペプチド断片
【表13】

は、本発明の抗エオタキシン−3免疫原を構築するために使用できる。
【0059】
実施例8:二価抗エオタキシンおよび抗IL−5免疫原
エオタキシンおよびIL−5の両者に対する能動免疫応答を惹起する免疫原も本発明の方法に従って構築でき、免疫治療用ワクチン組成物の投与は好酸球増加症を処置するために使用できる。本発明のある特定の実施形態では、この二価免疫性組成物は、同じ免疫タンパク質担体分子に結合されたハプテンとしてのエオタキシンエピトープおよびIL−5エピトープに特異的な抗原ペプチド決定基を含む。
【0060】
エオタキシン特異的エピトープとして用いるための抗原ペプチド決定基は、配列番号1〜38、117〜119および42〜61またはその任意の組合せから選択できる。
【0061】
IL−5エピトープハプテンとして有用であり得る抗原ペプチド決定基としては、
【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

および配列番号122〜123が挙げられる。
【0062】
配列番号62〜109の抗原決定基はそれらのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにおいて配列番号39〜41のものなどのスペーサーペプチド配列と結合させ、さらに、そのスペーサーペプチドリンカーによってDTまたはTTなどの免疫担体と結合させてもよい。また、抗IL−5免疫エピトープの構築に有用なイムノミミックを作出するために、この抗原ペプチド決定基に対応するIL−5断片の天然配列を改変または変更してもよい。本発明の特定の実施形態では、システイン残基をトレオニンに変換するが、トレオニンの代わりにセリンまたはアラニンによってシステイン置換を用いることもできる。このような改変ペプチド配列の例としては、
【表19】

がある。
【0063】
二価免疫原は毒素ペプチドなどの免疫担体に結合されたエオタキシンおよびIL−5エピトープの任意の組合せにおいて複数の抗原ペプチド決定基を含み得る。例えば、ヒト被験体においてエオタキシンおよびIL−5に対する能動免疫応答を惹起するのに有用な二価免疫原は、配列番号56〜61および114〜116、118、119、122および123の複数の抗原ペプチド決定基と、DTなどの免疫担体とを結合させることにより構築することができる。
【0064】
実施例9:ペプチド抗原決定基と免疫担体との結合
ペプチドと免疫タンパク質担体を結合させる方法は当技術分野で周知のものである(例えば、WO02/066056参照)。例えば、トレオニン置換エオタキシンエピトープ断片:
【表20】

を、ヘテロ二官能性架橋剤を介してDTまたはTT担体タンパク質と結合させてもよい。これらのエオタキシン断片の1以上は、N−(エピシロン−マレイミドカプロイルオキシ)−スクシンイミドエステル(EMCS)またはその水溶性類似体スルホ−EMCSなどのヘテロ二官能性架橋剤と反応させることで、DTまたはTTと架橋させる。本実施形態では、DTまたはTTをまず、毒素上のアミノ基においてスクシンイミジルエステルを介してヘテロ二官能性架橋剤と反応させる。この反応は好ましくは、6.5±0.3、約1〜3時間、室温で行う。マレイミジル基と担体タンパク質の比、例えば、5:1、10:1、15:1は、毒素(DTまたはその他の担体タンパク質)と適当過剰の架橋剤とを反応させることにより達成される。架橋剤の実際のモル過剰量は滴定により決定する。滴定の際に毒素1モル当たりに組み込まれるマレイミドのモル数は、次に、マレイミジル−毒素をシステインまたはβ−メルカプトエタノールなどのスルフヒドリル化合物と反応させることにより決定できる。マレイミジル−毒素と反応させるスルフヒドリル化合物の量は、最も容易には、残存しているスルフヒドリル化合物をビス−ジチオ−ニトロベンゾエートと反応させることで直接測定することができる。ダイアフィルトレーションかゲル濾過のいずれかによって過剰な架橋剤を除去した後、マレイミジル−毒素をその末端スルフヒドリル基を介し、活性化毒素のマレイミジル部分の1:1モル過剰のエオタキシン−スペーサーペプチドと反応させる。このペプチドと毒素との結合は好ましくは、pH6.0±0.3、約3〜6時間、室温で行う。あるいは、このペプチドとマレイミジル−毒素との結合反応は室温で一晩反応させることにより達成することができる。容器内で、マレイミド基を含む架橋剤との結合反応を行うのが好ましい。ペプチドと反応させた後、過剰量のペプチドをリン酸緩衝生理食塩水pH7.2±0.2に対してダイアフィルトレーションまたはゲル浸透クロマトグラフィーを行うことにより除去する。
【0065】
実施例10:多価抗ケモカイン免疫原
本発明の免疫原は、実施例9の結合方法または当技術分野で公知のその他の方法を用い、種々の異なる組合せで、上記実施例1〜8配列番号1〜129で示したような任意数の種々のペプチドエピトープを結合させることにより構築することができる。この方法では、標的ケモカイン、特に、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、IL−4、IL−5、IL−9、またはIL−13およびその組合せからなる群から選択されるTh−2ケモカインのいずれかの組合せを標的化する免疫原を構築することができる。例えば、a)エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3またはb)エオタキシン、IL−5、IL−13もしくはTh−2ケモカインの他のいずれかの組合せに対して多価免疫原を構築することができる。免疫原の構築のために選択される特異的標的ケモカインを処置する免疫疾患のタイプおよびその関連のサイトカイン特性によって異なる。
【0066】
実施例11:免疫ワクチン組成物の処方
抗原決定基毒素複合体の免疫原性の提供に好適な処方としては、限定されるものではないが、アルミニウムまたはアルヒドロゲルへの吸着、リポソーム、リソソームまたは類似のマイクロスフェア(マイクロ粒子およびナノ粒子を含む)内への封入、水中油または油中水エマルション(多相エマルション、およびマイクロエマルション(例えば、WO02/066056参照)が挙げられる。その他の好適であり得る処方としては、含まれている抗原(この場合、好ましいエオタキシン特異的毒素複合体)に対する免疫応答を刺激し得るアジュバント特性を有するブロックコポリマーとの調製物が挙げられる。本発明の複合免疫原はアジュバントまたはその他の免疫刺激剤を用い、医薬上許容されるビヒクル中に、当技術分野で周知の成分および方法を用いて処方することができる(Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach, (1995) Powell and Newman Eds., Plenum Press (New York), Aucouturier et al., Vaccine 19 (2001) 2666-2672参照)。
【0067】
本発明の特定の実施形態は、抗原決定基ペプチド毒素複合体の油中水エマルションの水相への処方を含む。濾過除菌(0.1〜0.2μm)したペプチド毒素複合体水溶液を、水油混合物をホモジナイズした際に安定な油中水エマルションが得られるに十分な乳化剤を含有する好適な濾過除菌(0.2μm)油混合物と合わせる。この乳化工程は、最終的な濾過、加熱滅菌または照射によって滅菌できない医薬製剤(無菌エマルションを含む)無菌調剤の無菌調剤および充填の実施に有用な層流フードまたは好適な無菌アイソレーター内で無菌的手段として実施する。
【0068】
油中水混合物は50:50〜10:90の範囲で様々であってよいが、より好ましくは40:60〜20:80油中水の範囲である。好ましい油中水エマルションを作製するというこの目的のために好適な油/乳化剤混合物はSEPPIC, SA, Paris, Franceから入手できるMontanide製品系から得られる。さらに、乳化工程中、最終の乳化の水相に水溶性アジュバントをさらに配合することが望ましい(Adams, A. Synthetic Adjuvants. 1985 John Wiley & Sons, New York)。好適なアジュバントの例としては、Quill A, QS21、またはムラミルジペプチド(nor−MDP)が挙げられる。
【0069】
炎症症状の処置方法
本発明の免疫原はまた、他の医薬または抗炎症薬を伴う処置計画で投与してもよい。例えば、喘息またはアトピー性慢性アレルギー性疾患の場合には、罹患組織におけるエオタキシンレベルおよび好酸球蓄積を制御またはダウンレギュレートするために本発明の抗エオタキシンワクチンで患者を能動免疫し、同時に、例えば過剰なアレルギー刺激によってもたらされる急性発作に対応して、救済薬または抗喘息または抗アレルギー薬を投与する。組合せ処置に有用なこのような付加的薬剤としては、コルチコステロイド、クロモグリエート、抗炎症薬、COX−2阻害剤、ロイコトリエン(受容体)アンタゴニスト、キサンチン、抗ヒスタミン薬および気管支拡張薬が挙げられる。
【0070】
DNAワクチン
本発明のもう1つの実施形態では、エオタキシンペプチド断片または上記の他のサイトカイン抗原決定基をコードする核酸配列を含み、さらにTヘルパー細胞エピトープをコードする核酸配列を含むDNA構築物をDNAワクチンとして用いる。このようなDNAワクチンを構築、処方および投与する方法は当技術分野で公知のものであり、本発明のケモカインペプチドエピトープに採用されるWO00/65058、WO98/31398、Donnelly et al., 1997, Annu. Rev. Immunol. 15: 617-648 and Donnelly et al., 1997, Life Sciences 60: 163-172参照。
【0071】
参照文献の組み込み
本願には、種々の刊行物および特許文書が引用されている。これら引用、刊行物および特許の各々の開示は、それら刊行物および特許の開示がそこに引用されているのと同様、出典明示により、そのまま本願の記載の一部とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好酸球の蓄積から起こる炎症症状に対して被験体を処置する方法であって、エオタキシンおよびIL−5に対する自己抗体を含む患者において能動免疫応答を生じさせることを含む、方法。
【請求項2】
喘息、アレルギーまたはアレルギー性疾患から起こる症状に対して被験体を処置する方法であって、被験体においてエオタキシンおよびIL−5に対する免疫応答を生じさせることを含む、方法。
【請求項3】
免疫タンパク質担体に結合されたエオタキシンまたはそのペプチド断片およびIL−5またはそのペプチド断片を含む、免疫性組成物。
【請求項4】
T細胞エピトープ、IL−5由来のエピトープおよびエオタキシン由来のエピトープを含む、免疫性組成物。
【請求項5】
免疫担体に結合されたエオタキシンまたはその一部およびIL−5またはその一部を含む、喘息、アレルギーまたはアレルギー性疾患の処置のための免疫性組成物。
【請求項6】
エオタキシンまたはその一部およびIL−5またはその一部と免疫担体とを結合させることを含む、請求項3、4または5の組成物の製造方法。
【請求項7】
複数のサイトカインを含む免疫調節経路に関連する疾患を処置する方法であって、被験体をその経路の2種以上のサイトカインに対して能動免疫し、被験体において、それらサイトカインと結合してその活性を調節し得る自己抗体を惹起することを含む、方法。
【請求項8】
前記経路がTh−2経路である、請求項7の方法。
【請求項9】
前記被験体がIL−5およびエオタキシンに対して能動免疫される、請求項8の方法。
【請求項10】
エオタキシンにより媒介される症状に対して被験体を処置する方法であって、被験体において、エオタキシン−2、エオタキシン−3、IL−4、IL−5、IL−9またはIL−13からなる群から選択される、エオタキシンおよび少なくとも1種のサイトカインに対する能動免疫応答を生じさせることを含む、方法。
【請求項11】
エオタキシンにより媒介される症状が喘息、アレルギーまたはアレルギー性疾患である、請求項10の方法。
【請求項12】
配列番号1〜38、42〜61および117〜121および130〜132で示されるペプチド配列から選択される少なくとも1つのペプチド配列と、配列番号62〜116および122〜123で示されるペプチド配列から選択される少なくとも1つのペプチド配列とを含む、請求項5の免疫性組成物。
【請求項13】
ヒト被験体において好酸球増加症を改善する方法であって、エオタキシン−2、エオタキシン−3、IL−4、IL−5、IL−9、またはIL−13からなる群から選択される、エオタキシンをダウンレギュレートすると同時にサイトカインをダウンレギュレートすることを含む、方法。
【請求項14】
Th−2免疫疾患を処置するために被験体を能動免疫するための多価免疫性組成物であって、2種以上のTh−2サイトカインに由来する複数のペプチドエピトープに結合された免疫担体を含む、組成物。
【請求項15】
前記Th−2サイトカインが、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、IL−4、IL−5、IL−9またはIL−13からなる群から選択される、請求項14の組成物。

【公表番号】特表2007−525436(P2007−525436A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507498(P2006−507498)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/008901
【国際公開番号】WO2004/084837
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505444916)マーシア・ファーマ・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Mercia Pharma, Inc.
【Fターム(参考)】