説明

炭化水素の直接アミノ化法

炭化水素をアンモニアでアミノ化する方法であって、反応器出口での混合物におけるN2含有量は、反応器出口での混合物の合計体積に対して、0.1体積%未満であることを特徴とするアミノ化法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはアミノ化に触媒作用を及ぼす触媒の存在下で、好ましくは炭化水素、更に好ましくは芳香族炭化水素、特にベンゼンをアンモニアと反応させることによって、炭化水素を好ましくは連続的にアミノ化し、好ましくは直接的にアミノ化する方法であって、反応器出口での混合物におけるN2含有量は、反応器出口での混合物の合計体積に対して、0.1体積%未満であることを特徴とするアミノ化法に関する。反応器出口での混合物におけるN2含有量は、100ppm未満であるのが好ましく、最も好ましくは10ppm未満である。“ppm”なる表現は、理想気体の法則と仮定してモル−ppmに対応する体積−ppmを意味すると理解されるべきである。更に本発明は、好ましくはアミノ化に触媒作用を及ぼす触媒の存在下で、好ましくは炭化水素、更に好ましくは芳香族炭化水素、特にベンゼンをアンモニアと反応させることによって、炭化水素を好ましくは連続的にアミノ化し、好ましくは直接的にアミノ化する方法であって、好ましくは同一の条件下でアミノ化、アンモニアの分解及び水素の酸化に対して相互に異なる活性を有する少なくとも2種の触媒(i)及び(ii)の存在下でアミノ化を行うことを特徴とするアミノ化法を提供する。特に本発明は、特に以下の反応:
【0002】
【化1】

に従い、触媒作用が及ぼされるのが好ましい、芳香族炭化水素、更に好ましくはベンゼンをアンモニアと好ましくは反応させることによって、炭化水素をアミノ化する方法に関する。
【0003】
更に本発明は、炭化水素をアミノ化し、好ましくは炭化水素、更に好ましくは芳香族炭化水素、特にベンゼンをアンモニアと直接的にアミノ化する方法であって、少なくとも2種の触媒(i)及び(ii)の存在下でアミノ化を行い、且つ触媒(ii)は、好ましくは同一の条件下で、触媒(i)と比較して、アンモニアの水素及び窒素への分解に対して低い活性を有することを特徴とするアミノ化法に関する。
【背景技術】
【0004】
アミン、特に芳香族アミン、例えばアニリンの商業的な調製法は、多段階反応で行われるのが一般的である。一般に、アニリンは、例えば、ベンゼンをベンゼン誘導体、例えばニトロベンゼン、クロロベンゼン又はフェノールに転化し、次に、かかる誘導体をアニリンに転化することによって調製される。
【0005】
特に芳香族アミンを調製するかかる間接的な方法よりも更に有利なのは、対応の炭化水素からアミンを直接調製することが可能な方法である。極めて簡潔な経路は、Wibautによって1917年に最初に記載された、ベンゼンの、不均一な触媒作用が及ぼされる直接アミノ化に関する経路である(Berichte, 50, 541-546頁)。直接アミノ化は平衡制限されるので、水素を反応から選択的に除去することによって平衡制限をシフトし、ベンゼンの転化率を上昇することが可能である幾つかの系が記載されている。殆どの方法は、水素によって還元される金属酸化物を使用することを基礎とし、これにより、反応系から水素を除去するので、平衡をシフトする。
【0006】
CN1555921Aは、液相中におけるベンゼンのオキシドアミノ化について開示し、過酸化水素が、“O”供与体として機能する。しかしながら、H22の使用は、コストに起因する汎用化学製品及び次の反応に起因する低い選択性に対して、限定的に好適なだけである。
【0007】
CA553988は、ベンゼンからアニリンを製造する方法であって、ベンゼン、アンモニア及び気体の酸素を、約1000℃の温度条件下で白金触媒にて反応させる製造方法を開示している。好適な白金含有触媒は、白金のみ、白金と所定の特定金属の組み合わせ、及び白金と所定の特定金属酸化物の組み合わせである。更に、CA553988は、アニリンの製造方法であって、気相におけるベンゼンを、100〜1000℃の温度条件下、還元性金属酸化物の存在下に、気体の酸素を加えることなくアンモニアと反応させる製造方法を開示している。好適な還元性金属酸化物は、鉄、ニッケル、コバルト、スズ、アンチモン、ビスマス及び銅の酸化物である。
【0008】
US3919155は、芳香族炭化水素とアンモニアの直接アミノ化に関し、使用される触媒は、ニッケル/酸化ニッケルであり、更に、ジルコニウム、ストロンチウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、チタン、アルミニウム、ケイ素、セリウム、トリウム、ウラン及びアルカリ金属の酸化物及び炭酸塩を含んでいても良い。
【0009】
US3929889も同様に、ニッケル/酸化ニッケル触媒における芳香族炭化水素とアンモニアの直接アミノ化に関し、使用される触媒は、元素のニッケルに部分的に還元され、次に、再酸化されて、0.001:1〜10:1のニッケル:酸化ニッケル比を有する触媒を得る。
【0010】
US4001260は、芳香族炭化水素をアンモニアと直接アミノ化する方法を開示し、ニッケル/酸化ニッケル触媒をここでも使用し、これは、二酸化ジルコニウムに施されて、アミノ化反応で使用する前にアンモニアで還元された。
【0011】
US4031106は、ランタノイド系及び希土類金属から選択される酸化物を更に含む二酸化ジルコニウム担体におけるニッケル/酸化ニッケル触媒での芳香族炭化水素とアンモニアの直接アミノ化に関する。
【0012】
DE19634110は、10〜500バールの圧力及び50〜900℃の温度の条件下での非酸化的アミノ化を記載し、反応は、軽白金族の金属及び重白金族の金属で変性された酸性の不均一系触媒の存在下で行われる。
【0013】
WO00/09473は、少なくとも1種の酸化バナジウムを含む触媒での芳香族炭化水素の直接アミノ化によるアミンの製造方法を記載している。
【0014】
WO99/10311は、<500℃の温度及び<10バールの圧力の条件下で芳香族炭化水素を直接アミノ化する方法を教示している。使用される触媒は、遷移金属、ランタニド系及びアクチニド系、好ましくはCu、Pt、V、Rh及びPdから選択される少なくとも1種の金属を含む触媒である。選択率及び/又は転化率を上昇させるために、酸化剤の存在下で直接アミノ化を行うのが好ましい。
【0015】
WO00/69804は、触媒として、貴金属及び還元性金属酸化物を含む錯体を使用する芳香族炭化水素の直接アミノ化方法に関する。
【0016】
パラジウム及びニッケルの酸化物又はパラジウム及びコバルトの酸化物を含む触媒が特に好ましい。
【0017】
また、間接合成は、CN1424304、CN1458140及びWO2004/052833に記載されている。
【0018】
【特許文献1】CN1555921A
【特許文献2】CA553988
【特許文献3】US3919155
【特許文献4】US3929889
【特許文献5】US4001260
【特許文献6】US4031106
【特許文献7】DE19634110
【特許文献8】WO00/09473
【特許文献9】WO99/10311
【特許文献10】WO00/69804
【特許文献11】CN1424304
【特許文献12】CN1458140
【特許文献13】WO2004/052833
【非特許文献1】Berichte, 50, 541-546頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述した方法の殆どは、WO00/69804の要約において詳述されているような直接アミノ化に関する機構から出発する。その後、最初に、芳香族炭化水素及びアンモニアから所望のアミン化合物を(貴)金属−触媒作用調製し、次の工程で、最初の工程で形成される水素を還元性金属酸化物にて“除去”する。同じ機構の研究が、酸化バナジウムから得られる酸素で水素を除去するWO00/09473(1頁、30〜33行目)における方法の基礎を形成している。また、同じ機構が、第2欄、16〜44行目における備考及びダイアグラムから明らかなように、US4001260の基礎である。
【0020】
従って、本発明の目的は、炭化水素をアミノ化する特に経済的に実現性がある方法、特に、ベンゼンをアンモニアと反応させる方法であって、極めて高い選択率及び/又は極めて高い転化率にて好ましい連続法が可能である方法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的は、冒頭に説明される方法によって達成される。
【0022】
従来技術の技術的な教示によると、アンモニアは、例えばニッケル−酸化ニッケル系で水素及び窒素に殆ど分解される。驚くべきことに、アミノ化、アンモニアの分解及び水素の酸化に対して相互に異なる活性を有する2種類の触媒(i)及び(ii)を使用することにより、アニリンへの転化率を、同じ選択率にて高めることが可能であることが見出された。本発明の触媒系を使用することにより、アンモニアの水素及び窒素への分解を低減することが可能である。同時に、反応混合物における水素濃度の低下は、アニリンへの転化に対して直接影響を与える。触媒(ii)と比較して触媒(i)は、アミノ化において高い活性を有すると同時に、触媒(ii)は、水素の除去に対して高い活性であり、そしてアンモニアの水素及び窒素への分解に対して低い活性である点において顕著である。かかる触媒の組み合わせの結果として、アニリンへのベンゼンの転化率を十分に高めることが可能である。このような利点は、圧力を著しく増大させる必要がない本発明によって達成可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
従って、使用される触媒(ii)は、少なくとも360℃、好ましくは少なくとも375℃に至るまでアンモニアを水素及び窒素に分解せず、更に好ましくは、使用されるアンモニアの0.2体積%未満を分解する化合物である方法が好ましい。特に好ましい触媒(ii)は、380℃の条件下で、水素及び窒素への反応混合物の1回の変化あたり、反応混合物における全てのアンモニアに対して、1%以下、特に0.8%以下を分解する化合物である。
【0024】
アンモニアの分解に対する触媒(i)及び(ii)の異なる活性は、温度の比較を参照して説明することも可能である。アンモニアの水素及び窒素への分解に対する触媒(ii)の活性が、アンモニアの水素及び窒素への分解に対する触媒(i)の活性と等しい場合の温度は、その他の点で同一条件下であるのが好ましい触媒(i)がアンモニアの水素及び窒素への分解に対する同じ活性を有する場合の温度より、少なくとも15K高く、好ましくは少なくとも20K高い。
【0025】
触媒(ii)は、触媒(i)と比較して、アンモニアの水素及び窒素への分解に対して低い活性を有するので、反応混合物からの水素の除去に対して全体として高い効率を有する。更に、50〜250℃の温度範囲において水素含有気体混合物での温度プログラム還元中に、触媒(ii)は、触媒(i)よりも高い水素摂取量を有するのが好ましく、そして触媒(i)と比較して水素の消費量は、更に、より高温条件下、好ましくは少なくとも15K高い温度条件下にて最大となる。
【0026】
従って、使用される触媒(ii)が、50〜250℃の温度範囲において、触媒(i)と比較して、高い触媒摂取量、更に好ましくは少なくとも1ミリモルの水素/1gの触媒だけ高い水素摂取量を有する化合物である方法も好ましい。水素摂取量は、触媒の好ましくは温度プログラム還元中に、1gの触媒あたりミリモル単位のH2での水素の絶対消費量を意味すると理解されるべきである。更に、水素摂取量が最大となる50〜250℃の温度範囲内における温度が触媒(i)より触媒(ii)に関して高くなる場合に触媒(i)及び(ii)を使用する方法が好ましい。同時に、50〜250℃の温度範囲内における触媒(ii)の最大水素摂取量は、触媒(i)が最大水素摂取量を有する場合の温度より少なくとも15℃高い温度条件下であるのが好ましい。
【0027】
使用される触媒は、炭化水素の直接アミノ化の場合に公知の触媒、特に、アニリンを得るためのベンゼンとアンモニアの直接アミノ化に公知の触媒であっても良い。触媒(i)は、冒頭で説明された触媒(ii)と異なっている、すなわち、直接アミノ化に対して極めて活性であるものの、アンモニアの水素及び窒素への分解に触媒(ii)より大きく至る。かかる触媒は、特許文献に多種多様に記載され、一般的に知られている。有用な触媒としては、例えば、通常の金属触媒、例えば、ニッケル、鉄、コバルト、銅、貴金属又は上述の金属の合金を基礎とする触媒を挙げられる。有用な貴金属(NM)は、全ての貴金属、例えばRu、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuを含んでいても良く、且つ貴金属のRu及びRhは、単独で使用されず、むしろ、他の遷移金属、例えばCo、Cu、Fe及びニッケル又はこれらの混合物との合金で使用されるのが好ましい。かかる合金は、他の貴金属を使用する場合に好ましく使用され;例えば、担持されたNiCuNM;CoCuNM;NiCoCuNM、NiMoNM、NiCrNM、NiReNM、CoMoNM、CoCrNM、CoReNM、FeCuNM、FeCoCuNM、FeMoNM、FeReNMの合金に興味があり、且つNMは、貴金属であり、Ag及び/又はAuであるのが特に好ましい。
【0028】
触媒(i)は、一般に、通常の形態、例えば粉末又は固定床で使用可能な系(例、押出物、球体、タブレット、環)として使用されても良く、その場合、触媒活性成分は、適宜、担体材料に存在していても良い。有用な担体材料としては、例えば、無機酸化物、例えばZrO2、SiO2、Al23、TiO2、B23、ThO2、CeO2、Y23及びこれらの酸化物の混合物が挙げられ、TiO2、ZrO2、Al23及びSiO2が好ましく、ZrO2が更に好ましい。ZrO2は、純粋なZrO2又は通常のHf−含有ZrO2を意味すると理解される。
【0029】
本発明の方法で好ましく使用される触媒は、例えば、還元雰囲気(例、H2雰囲気)を触媒上に通過させるか、或いは最初に酸化雰囲気、その後に還元雰囲気を触媒床上又は触媒床中に通過させることによって再生されても良い。
【0030】
触媒(i)は、その還元された状態又は酸化された状態で存在していても良く;触媒(ii)は、その酸化された状態で存在するのが好ましい。
【0031】
使用される触媒(i)は、Ni、Cu、Fe、Coの群から選択される1種以上の元素、好ましくは、Mo又はAgとの組み合わせを含む化合物であるのが好ましく、且つ元素は、還元された状態及び/又は酸化された状態でそれぞれ存在していても良い。特に好ましい触媒(i)は、Co−Cu、Ni−Cu及び/又はFe−Cuの組み合わせであり、特に、これらと追加のドーピング元素のNi−Cu−X、Fe−Cu−X、Co−Cu−X(但し、XがAg又はMoである。)との組み合わせである。特に好ましくは、NiCu(Ag又はMo)及び/又はFeCu(Ag又はMo)の合金である。
【0032】
触媒(i)において、一緒に含まれる元素のNi、Co及びFeの質量換算による割合、すなわちこれらの元素の合計質量の割合(全ての元素は、必ずしも触媒に存在している必要はない。)は、触媒(i)の合計質量に対して、0.1〜75質量%の範囲であるのが好ましく、更に好ましくは1〜70質量%の範囲であり、特に2〜50質量%の範囲であり、そしてCuの質量換算による割合は、触媒(i)の合計質量に対して、0.1〜75質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜25質量%の範囲であり、更に好ましくは0.1〜20質量%の範囲であり、特に2.5〜10質量%の範囲である。更に、触媒(i)は、担体材料を含んでいても良い。
【0033】
触媒(i)の合計質量に対するドーピング元素Xの質量換算による割合は、0.01〜8質量%の範囲であるのが好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%の範囲であり、特に0.5〜4質量%の範囲である。
【0034】
触媒(i)は、本発明の方法での使用前に好ましくは活性化され得る。かかる活性化は、200〜600℃の範囲の温度条件下で行われるのが好ましく、更に好ましくは250〜500℃の範囲の温度条件下であり、特に280〜400℃の範囲の温度条件下であり、活性化は、不活性気体及び水素又はアンモニアを含む混合物を用いて行われるのが好ましい。また、活性化気体は、他の化合物を含んでいても良い。活性化により、金属酸化物を金属に還元する。触媒(i)の活性化は、触媒(ii)の存在下で好ましくは行われ得る。
【0035】
使用される触媒(ii)は、Cu、Fe、Ni又はこれらの混合物を含む化合物であっても良く、層状化二重水酸化物(LDH)又はLDH様化合物に担持される。LDH又はLDH様化合物をか焼することによって得られるマグネシウムアルミニウム酸化物を担体として使用するのが好ましい。LDH又はLDH様化合物をか焼する工程を含む、マグネシウムアルミニウム酸化物の好適な製造方法は、例えば、Catal. Today 1991, 11, 173又は"Comprehensive Supramolecular Chemistry", (Ed. Alberti, Bein), Pergamon, NY, 1996, 第7巻, 251に開示されている。
【0036】
本発明の方法において、使用される触媒(ii)は、Ni、Cu、Fe及びMoからなる群から選択される1種以上の元素を含む化合物であるのが更に好ましく、そしてこれらの元素は、1価以上の酸化状態で、好ましくは担体としてのマグネシウムアルミニウム酸化物に存在していても良く、更に好ましくは、担体としてのマグネシウムアルミニウム酸化物におけるNiO、CuO及び/又はFe23である。特に好ましくは、担体としてのマグネシウムアルミニウム酸化物におけるNiO及び/又はCuOである。
【0037】
既に説明したように、触媒(i)及び(ii)は、これらの活性、特に、これらの、アンモニアの水素及び窒素への分解に対する活性の点で異なる。触媒(ii)は、アンモニアの分解に対して著しく低い活性を有し、反応混合物からの水素の除去において高い活性を有するのが好ましい。また、触媒(ii)は、触媒(i)より低い活性であるにも拘わらず、アニリンを得るためのベンゼンとアンモニアの反応に触媒作用を及ぼすのが好ましい。使用される触媒(ii)は、アンモニアの分解において、触媒(i)より低い活性を有する化合物であるのが好ましい。従って、触媒(i)及び(ii)は、異なっているのが好ましく;触媒(i)及び(ii)は、物質の観点で異なっているのが更に好ましく;触媒(i)は、触媒(ii)が含まない元素を含むのが特に好ましい。
【0038】
本発明の方法において2種類の異なる触媒(i)及び(ii)を使用するのが好ましい;異なる触媒は、本発明の方法が行われる反応器において、処理の開始時に既に含まれるのが更に好ましい。
【0039】
アンモニアの分解に対する触媒の活性は、50〜600℃の範囲の温度条件下で測定されるのが好ましく、且つ触媒は、アルゴン中における5体積%のNH3の混合物において2℃/分の加熱速度で加熱され、そしてオフガス流におけるアンモニア、水素及び窒素の濃度がモニターされる。アンモニアの分解の開始は、オフガスにおける50ppmを超える窒素濃度にて示されるのが好ましい。かかる処置は、温度プログラム還元という意味で行われ得る。
【0040】
本発明のアミノ化方法により、任意の炭化水素、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素をアミノ化することが可能であり、これらの炭化水素は、任意の置換基を有していても良く、これらの鎖内又はこれらの環内にヘテロ原子及び二重又は三重結合を有していても良い。本発明のアミノ化法において、芳香族炭化水素及びヘテロ芳香族炭化水素を使用するのが好ましい。特定の生成物は、対応のアリールアミン又はヘテロアリールアミンである。
【0041】
本発明に関して、芳香族炭化水素は、1個以上の環を有し、芳香族性のC−H結合だけを含む不飽和の環式炭化水素を意味すると理解されるべきである。芳香族炭化水素は、1個以上の5員又は6員環を有するのが好ましい。
【0042】
ヘテロ芳香族炭化水素は、芳香族環における1個以上の炭素原子をN、O及びSから選択されるヘテロ原子で置換した芳香族炭化水素を意味すると理解されるべきである。
【0043】
芳香族炭化水素又はヘテロ芳香族炭化水素は、置換されていても、又は無置換であっても良い。置換芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素は、芳香族環における炭素原子又はヘテロ原子に結合する1個以上の水素原子を他の基で置換した化合物を意味すると理解されるべきである。かかる基は、例えば、置換又は無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、シクロアルキル及び/又はシクロアルキニルの各基である。更に、以下の基であっても良い:ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、チオ及びホスフィノ。芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素における好ましい基は、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ及びアミドから選択され、且つC1-6は、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の主鎖における炭素原子の数に関し、C3-8は、シクロアルキル又はシクロアルケニル環における炭素原子の数に関する。置換芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素の置換基(基)は、他の置換基を有することも可能である。
【0044】
芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素の置換基(基)の数は、任意である。しかしながら、好ましい実施形態において、芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素は、芳香族環の炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する少なくとも1個の水素原子を有する。従って、6員環は、5個以下の置換基(基)を有するのが好ましく、5員環は、4個以下の置換基(基)を有するのが好ましい。6員の芳香族又はヘテロ芳香族環は、4個以下の置換基を有するのが更に好ましく、3個以下の置換基(基)を有することでさえ更に好ましい。5員の芳香族又はヘテロ芳香族環は、3個以下の基を有するのが好ましく、2個以下の基を有するのが更に好ましい。
【0045】
本発明の方法における特に好ましい実施形態において、一般式:
【0046】
【化2】

[但し、Aが独立して、アリール又はヘテロアリールであり、フェニル、ジフェニル、ジフェニルメタン、ベンジル、ジベンジル、ナフチル、アントラセン、ピリジル及びキノリンから選択されるのが好ましく;
nが0〜5であり、特にAが6員のアリール又はヘテロアリール環である場合、0〜4であるのが好ましく;Aが5員のアリール又はヘテロアリール環である場合、nが0〜4であるのが好ましく;環の寸法に関係なく、nが0〜3であるのが更に好ましく、0〜2であるのが最も好ましく、特に0〜1であり;置換基Bを有さないAにおける残りの炭化水素原子又はヘテロ原子が、水素原子を有するか、又は適宜、置換基を有さず;
Bが独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、置換ヘテロアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、アミノ、アミド、チオ及びホスフィノからなる群から選択され、好ましくは、独立してC1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ及びアミドから選択される。]
で表される芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素を使用する。
【0047】
“独立して”なる用語は、nが2以上である場合、置換基Bが、同一又は異なる、上述した群から選択される基であっても良いことを意味する。
【0048】
本願発明において、アルキルは、分岐又は非分岐の、飽和非環式ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。アルキル基の適例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル等である。使用されるアルキル基は、1〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは1〜20個の炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に1〜3個の炭素原子を有する。
【0049】
本願発明において、アルケニルは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する分岐又は非分岐の、非環式ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。好適なアルケニル基は、例えば、2−プロペニル、ビニル等である。アルケニル基は、2〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは2〜20個の炭素原子を有し、2〜6個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に2〜3個の炭素原子を有する。また、アルケニルなる用語は、cis−配向又はtrans−配向(或いはE又はZ配向)を有する基を包含する。
【0050】
本願発明において、アルキニルは、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する分岐又は非分岐の、非環式ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。アルキニル基は、2〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは2〜20個の炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に2〜3個の炭素原子を有する。
【0051】
置換アルキル、置換アルケニル及び置換アルキニルは、これらの基における1個の炭素原子に結合する1個以上の水素原子を別の基で置換したアルキル、アルケニル及びアルキニル基を意味すると理解されるべきである。かかる別の基の例示は、ヘテロ原子、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル及びこれらの組み合わせである。置換アルキル基の適例は、中でもベンジル、トリフルオロメチルである。
【0052】
ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル及びヘテロアルキニルなる用語は、炭素鎖における1個以上の炭素原子を、N、O及びSから選択されるヘテロ原子で置換したアルキル、アルケニル及びアルキニル基を意味すると理解されるべきである。ヘテロ原子と他の炭素原子との間の結合は、飽和であるか、又は適宜、不飽和であっても良い。
【0053】
本願発明において、シクロアルキルは、単一の環又は複数の縮合環から構成される飽和で環式の非芳香族ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。シクロアルキル基の適例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクタニル、ビシクロオクチル等である。シクロアルキル基は、3〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは3〜20個の炭素原子を有し、3〜8個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に3〜6個の炭素原子を有する。
【0054】
本願発明において、シクロアルケニルは、単一の縮合環又は複数の縮合環を有する部分不飽和で環式の非芳香族ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。好適なシクロアルケニル基は、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル等である。シクロアルケニル基は、3〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは3〜20個の炭素原子を有し、3〜8個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に3〜6個の炭素原子を有する。
【0055】
置換シクロアルキル及び置換シクロアルケニル基は、炭素環の炭素における1個以上の水素原子を別の基で置換したシクロアルキル及びシクロアルケニル基である。かかる別の基の例示は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、脂肪族のヘテロ環式基、置換された脂肪族のヘテロ環式基、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノ及びこれらの組み合わせである。置換シクロアルキル及びシクロアルケニル基の例示は、中でも4−ジメチルアミノシクロヘキシル、4,5−ジブロモシクロヘプタ−4−エニルである。
【0056】
本願発明の場合、アリールは、単一の芳香族環或いは縮合され、共有結合を介して結合され、又は適当な単位、例えばメチレン又はエチレン単位によって結合される複数の芳香族環を有する芳香族基を意味すると理解されるべきである。また、かかる好適な単位は、ベンゾフェノールにおけるようなカルボニル単位、又はジフェニルエーテルにおけるような酸素単位、又はジフェニルアミンにおけるような窒素単位であっても良い。芳香族環は、例えばフェニル、ナフチル、ジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン及びベンゾフェノンである。アリール基は、6〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは6〜20個の炭素原子を有し、最も好ましくは6〜8個の炭素原子を有する。
【0057】
置換アリール基は、アリール基の炭素原子に結合する1個以上の水素原子を1個以上の他の基で置換したアリール基である。好適な他の基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、ヘテロシクロ、置換ヘテロシクロ、ハロゲン、ハロゲン置換アルキル(例、CF3)、ヒドロキシル、アミノ、ホスフィノ、アルコキシ、チオ並びに芳香族環で縮合されているか、又は結合によって結合されていても良く、或いは適当な基を介して相互に結合されていても良い飽和及び不飽和の環式炭化水素の両方である。好適な基は、既に上述した通りである。
【0058】
本願発明によると、ヘテロシクロは、基における1個以上の炭素原子を、ヘテロ原子、例えばN、O又はSで置換した飽和、部分不飽和又は不飽和の環式基を意味すると理解されるべきである。ヘテロシクロ基の例示は、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピロリジニル、オキサゾリニル、ピリジル、ピラジル、ピリダジル、ピリミジルである。
【0059】
置換ヘテロシクロ基は、1個の環原子に結合する1個以上の水素原子を別の基で置換したヘテロシクロ基である。好適な別の基は、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノ及びこれらの組み合わせである。
【0060】
アルコキシ基は、一般式−OZ1(但し、Z1がアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、シリル及びこれらの組み合わせから選択される。)で表される基を意味すると理解されるべきである。好適なアルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ、t−ブトキシ等である。アリールオキシなる用語は、一般式−OZ1(但し、Z1がアリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール及びこれらの組み合わせから選択される。)で表される基を意味すると理解されるべきである。好適なアリールオキシ基は、中でもフェノキシ、置換フェノキシ、2−ピリジノキシ、8−キノリノキシである。
【0061】
アミノ基は、一般式−NZ12(但し、Z1及びZ2が独立して、それぞれ水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、シリル及びこれらの組み合わせから選択される。)で表される基を意味すると理解されるべきである。
【0062】
本発明の方法で好ましく使用される芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素は、ベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、アントラセン、トルエン、キシレン、フェノール及びアニリン、更にはピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン及びキノリンから選択される。上述した芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素の混合物を使用することも可能である。芳香族炭化水素、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、トルエン、キシレン、ピリジン、フェノール及びアニリンを使用するのが特に好ましく、ベンゼン、トルエン及びピリジンを使用するのが極めて好ましい。
【0063】
特に好ましくは、ベンゼンを本発明のアミノ化法で使用し、これにより形成される生成物は、アニリンである。
【0064】
アミノ基を導入するための化合物は、アンモニアであるのが更に好ましい。これは、本発明により、炭化水素、特にベンゼンをアンモニアと反応させるのが更に好ましいことを意味する。適宜、反応条件下でアンモニアを除去する化合物についても、使用法を見出すことが可能である。
【0065】
モノ−及びジアルキル−N,(N)−置換芳香族アミン、例えばモノ−及び/又はジメチルアニリンを調製する場合、モノ−及びジアルキルアミン、好ましくはモノ−及びジ(メ)エチルアミンを使用することも可能である。
【0066】
本発明のアミノ化法における反応条件は、アミノ化されるべき芳香族炭化水素及び使用される触媒を含む要因に応じて異なる。
【0067】
アミノ化、好ましくはベンゼンのアミノ化、すなわち、ベンゼンとアンモニアの反応は、200〜800℃、好ましくは300〜700℃、更に好ましくは325〜600℃、最も好ましくは350〜500℃の温度条件下で行われるのが一般的である。
【0068】
アミノ化、好ましくはベンゼンのアミノ化、すなわち、ベンゼンとアンモニアの反応における反応圧力は、0.1〜90MPa(1〜900バール)であるのが好ましく、更に好ましくは0.1〜30MPa(1〜300バール)であり、特に0.5〜12.5MPa(5〜125バール)であり、特に好ましくは1.5〜11MPa(15〜110バール)である。
【0069】
本発明のアミノ化法、好ましくはベンゼンのアミノ化における滞留時間は、バッチ法にて行う場合、一般に15分〜8時間であり、好ましくは15分〜4時間であり、更に好ましくは15分〜1時間である。好ましい連続法にて行う場合、滞留時間は、一般に0.1秒〜20分であり、好ましくは0.5秒〜10分である。好ましい連続法の場合、この場合の“滞留時間”は、触媒上における滞留時間であるので、固定床触媒用の触媒床における滞留時間を意味し;流動床反応器の場合、反応器の合成部(触媒が配置される反応器の部分)が考えられる。
【0070】
使用される炭化水素及びアミン成分の相対量は、行われるアミノ化反応及び反応条件に応じて異なる。一般に、少なくとも化学量論量の炭化水素及びアミン成分を使用する。しかしながら、一方の反応パートナーを化学量論過剰に使用して、所望の生成物側に平衡をシフトさせて、より高い転化率を達成するのが一般に好ましい。アミン成分を化学量論過剰に使用するのが好ましい。
【0071】
本発明のアミノ化法は、連続的に、バッチ式で、又は半連続的に行われても良い。従って、好適な反応器は、撹拌器付きタンク型反応器又は管型反応器の両方である。一般的な反応器は、例えば、撹拌器付き高圧タンク型反応器、オートクレーブ、固定床反応器、流動床反応器、移動床、循環流動床、塩浴反応器、反応器としての平板熱交換器、熱交換しても又は熱交換が無くても良い複数のトレイを有するか、或いはトレイの間で副流を取り出し/供給するトレイ型反応器、半径流又は軸流反応器として可能な構造において、連続撹拌タンク、泡鐘タンク等であり、そして所望の反応条件(例えば、温度、圧力及び滞留時間)に好適な反応器を使用する。反応器は、単一の反応器として、連続する個々の反応器として及び/又は2基以上の平行する反応器の形で使用されても良い。反応器は、AB型(交互型)で運転されても良い。本発明の方法は、バッチ反応、半連続反応又は連続反応として行われても良い。反応における特定の反応器の構造及び性能は、行われるべきアミノ化法、アミノ化される芳香族炭化水素の物質状態、必要とされる反応時間及び使用される窒素含有触媒の性質に応じて変更可能である。直接アミノ化に用いる本発明の方法を撹拌器付き高圧タンク型反応器、固定床反応器又は流動床反応器において行うのが好ましい。
【0072】
特に好ましい実施形態において、ベンゼンのアニリンへのアミノ化では、1基以上の固定床反応器を使用する。
【0073】
炭化水素及びアミン成分を、気体又は液体の状態で、特定の反応器の反応領域に導入しても良い。好ましい相は、行われるアミノ化及び使用される反応器に応じて異なる。好ましい実施形態において、例えばベンゼンからアニリンを調製する場合、ベンゼン及びアンモニアは、反応領域において気体の反応物質として存在するのが好ましい。一般に、ベンゼンは、加熱及び蒸発されて、気体を形成する液体として供給され、一方、アンモニアは、反応領域において、気体の状態又は超臨界相で存在する。ベンゼンは、少なくともアンモニアと一緒に超臨界状態で存在することも同様に可能である。
【0074】
炭化水素及びアミン成分を一緒に、反応器の反応領域に対して、例えば予備混合反応材料流として、又は別個に導入しても良い。別個に添加する場合、炭化水素及びアミン成分を同時に、時間を分けて、又は連続的に反応器の反応領域に導入しても良い。アミン成分を添加し、そして炭化水素を、時間を分けて添加するのが好ましい。
【0075】
適宜、他の共反応材料、助触媒又は他の試薬を、行われるべきアミノ化に応じて、本発明の方法における反応器の反応領域に導入する。例えば、ベンゼンのアミノ化において、酸素又は酸素含有気体を、共反応材料として反応器の反応領域に導入しても良い。反応領域に導入され得る気体の酸素の相対量は、変更可能であり、使用される触媒を含む要因に応じて異なる。アニリンに対する気体の酸素のモル比は、例えば、0.05:1〜1:1の範囲であっても良く、好ましくは0.1:1〜0.5:1の範囲である。しかしながら、酸素又は酸素含有気体を反応領域に添加することなくベンゼンのアミノ化を行うことも可能である。
【0076】
2種の触媒(i)及び(ii)の質量割合は、アミノ化の過程で変化する方法が好ましい。更に、触媒(i)及び(ii)を構造配置が好ましい。なぜなら、かかる構造配置により、触媒(i)又は(ii)の独立した使用と比較して、ベンゼンのアニリンへの高い転化率を達成することが可能だからである。
【0077】
また、層状化構造、好ましくは少なくとも4層の層状化構造についても好ましく、その場合、触媒(i)及び(ii)は、交互に配置される、すなわち触媒1を含む1層の後に、触媒2を含む層が在り、その後に再び、触媒1を含む層が在り、そして触媒2を含む層が在る等である。
【0078】
更に、アミノ化が触媒(i)を含む領域で最初に生じ、これより先で触媒(ii)の含有量が増大するような触媒の構成が極めて好ましい。反応領域における触媒(ii)の増大は、一定及び/又は段階的であっても良く、そして線形で又は比例を上回る形態で増大する。かかる構造配置により、水素を平衡から益々除去することが可能となるので、ベンゼンの転化率を増大させることが可能となる。反応領域における触媒(ii)の含有量は、線形形態にて増大する方法が好ましい。
【0079】
構造配置は、最初に、100%の触媒(i)を有する領域、その後、75%の触媒(i)及び25%の触媒(ii)の領域、その後、50%の触媒(i)及び50%の触媒(ii)の領域、その後、25%の触媒(i)及び75%の触媒(ii)の領域、その後、100%の触媒(ii)の領域を使用するような外観を好ましくは有していても良い。
【0080】
アミノ化は、炭化水素に対するアンモニアの少なくとも1のモル比にて好ましくは行われ得る。
【0081】
アミノ化の後、所望の生成物は、当業者に公知の方法によって単離され得る。
【実施例】
【0082】
実施例1:触媒(i)の調製
触媒は、DE−A4428004に従って調製された。
【0083】
4.48質量%のNi(NiOとして計算)、1.52質量%のCu(CuOとして計算)及び2.28質量%のZr(ZrO2として計算)を含む、硝酸ニッケル、硝酸銅及び酢酸ジルコニウムの水溶液を、70℃の温度条件下、20%の炭酸ナトリウム水溶液との一定の流れにおいて撹拌容器中で同時に沈殿させて、ガラス電極で測定される7.0のpHを得た。これにより得られる懸濁液をろ過し、そしてろ液の電気伝導率が約20μsになるまで、ろ過ケークを脱イオン水で洗浄した。その後、十分なアンモニウムヘプタモリブデートを、依然として湿潤のろ過ケークに取り込み、以下に規定される酸化物混合物を得た。その後、ろ過ケークを、乾燥キャビネット又は噴霧乾燥器において150℃の温度条件下で乾燥した。その後、このようにして得られる水酸化物−炭酸塩混合物を430〜460℃の温度条件下で4時間に亘って熱処理した。これにより調製される酸化物種は、以下の組成を有していた:50質量%のNiO、17質量%のCuO、1.5質量%のMoO3及び31.5質量%のZrO2。50〜250℃の温度範囲における水素を含む気体流中での加熱中に、触媒は、1.07ミリモルの水素/1gの触媒の水素摂取量を有し、そして最大水素消費量は、140℃の温度条件下であった。
【0084】
実施例2:触媒(ii)の調製
8.1kgのNiO、2.9kgのCuO、2.8kgのMgO及び10.2kgのAl23を合計して111kgの溶液中に含む、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムの水溶液を、20℃の温度条件下、7.75kgの炭酸ナトリウム及び78kgの水酸化ナトリウムの合計体積244リットルである水溶液との一定の流れにおいて撹拌容器中で同時に沈殿させて、ガラス電極で測定される9.5のpHを得た。これにより得られる懸濁液をろ過し、そしてろ液の電気伝導率が約20μsになるまで、ろ過ケークを脱イオン水で洗浄した。その後、ろ過ケークを、150℃の温度条件下の乾燥キャビネットにおいて乾燥した。その後、このようにして得られる水酸化物−炭酸塩混合物を430〜460℃の温度条件下で4時間に亘って熱処理した。これにより調製される酸化物種は、以下の組成を有していた:56.6質量%のNiO、19.6質量%のCuO、15.4質量%のMgO及び8.5質量%のAl23。50〜250℃の温度範囲における水素を含む気体流中での加熱中に、触媒は、2.41ミリモルの水素/1gの触媒の水素摂取量を有し、そして最大水素消費量は、159℃の温度条件下であった。
【0085】
実施例3:アンモニアにおける触媒の温度プログラム還元
100mgの触媒粉末を、30ml/分の、アルゴン中における5体積%のアンモニアの気体流中において、1分あたり2℃の加熱速度で加熱した。触媒床の下流側における反応気体に対するアンモニア、水素及び窒素の濃度は、質量分析によってモニターされた。アンモニアを、50ppmより高い窒素濃度条件下で転化した。2種類の触媒(i)及び(ii)に関する値を、表から使用することが可能であった。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例4:純粋な触媒(i)でのベンゼンのアミノ化
6×3mmのタブレットの形である220mlの触媒(i)を、管型反応器中で350℃に加熱した。4MPa(40バール)の全圧条件下、156g/時のベンゼン及び306g/時のアンモニアを触媒に供給した。反応器から得られる溶出液を10℃未満の温度で冷却し、そして凝縮物における有機層を、ガスクロマトグラフィによって分析した。5時間に亘って平均化される質量%単位のアニリン含有量は、2.91%であり、空時収量は、1時間あたり触媒(i)1kgあたり9.56gのアニリンであった。
【0088】
実施例5:純粋な触媒(ii)でのベンゼンのアミノ化
6×3mmのタブレットの形である220mlの触媒(ii)を、管型反応器中で350℃に加熱した。4MPa(40バール)の全圧条件下、156g/時のベンゼン及び306g/時のアンモニアを触媒に供給した。反応器から得られる溶出液を10℃未満の温度で冷却し、そして凝縮物における有機層を、ガスクロマトグラフィによって分析した。5時間に亘って平均化される質量%単位のアニリン含有量は、1.77%であり、空時収量は、1時間あたり触媒(ii)1kgあたり8.64gのアニリンであった。
【0089】
実施例6:触媒(i)及び触媒(ii)の構造化混合物におけるアミノ化(本願)
6×3mmのタブレットの形である220mlの触媒(i)を、6×3mmのタブレットの形である220mlの触媒(ii)と一緒に管型反応器に配置した。第1の領域において、50mlの触媒(i)を配置し、その後に、112mlの触媒(i)及び57mlの触媒(ii)を含み、均一に混合された領域を配置し、その後に、57mlの触媒(i)及び114mlの触媒(ii)を含み、均一に混合された領域を配置し、その後に、50mlの触媒(ii)を含む領域を配置した。反応器を350℃に加熱し、その後、反応混合物を供給した。4MPa(40バール)の全圧条件下、156g/時のベンゼン及び306g/時のアンモニアを触媒に供給した。反応器から得られる溶出液を10℃未満の温度で冷却し、そして凝縮物における有機層を、ガスクロマトグラフィによって分析した。5時間に亘って平均化される質量%単位のアニリン含有量は、6.08%であり、空時収量は、1時間あたりで且つ1kgの触媒床あたり11.56gのアニリンであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素をアンモニアでアミノ化する方法であって、
反応器出口での混合物におけるN2含有量が、反応器出口での混合物の合計体積に対して、0.1体積%未満であることを特徴とするアミノ化法。
【請求項2】
炭化水素をアンモニアでアミノ化する方法であって、
アミノ化、アンモニアの分解及び水素の酸化に対して相互に異なる活性を有する少なくとも2種の触媒(i)及び(ii)の存在下でアミノ化を行うことを含むアミノ化法。
【請求項3】
炭化水素をアンモニアでアミノ化する方法であって、
少なくとも2種の触媒(i)及び(ii)の存在下でアミノ化を行うことを含み、且つ触媒(ii)が、触媒(i)と比較して、アンモニアの水素及び窒素への分解に対して低い活性を有することを特徴とするアミノ化法。
【請求項4】
アンモニアの水素及び窒素への分解に対する触媒(ii)の活性が、アンモニアの水素及び窒素への分解に対する触媒(i)の活性と等しい場合の温度が、好ましくは、その他の点で同一条件下における、触媒(i)がアンモニアの水素及び窒素への分解に対して等しい活性を有する場合の温度より、少なくとも15K高いことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
使用される触媒(ii)が、少なくとも360℃の温度に至るまでアンモニアを水素及び窒素に分解しない化合物であることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
使用される触媒(ii)が、380℃の温度条件下で、1%以下、好ましくは0.8%以下のアンモニアを水素及び窒素に分解する化合物であることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
使用される触媒(ii)が、50〜250℃の温度範囲において、触媒(i)よりも高い水素摂取量を有する化合物である請求項2又は3に記載の方法。
【請求項8】
水素摂取量が最大となる50〜250℃の温度範囲内での温度が、触媒(i)の場合より触媒(ii)の場合が高いことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項9】
50〜250℃の温度範囲内で触媒(ii)の最大水素摂取量を有する場合の温度が、触媒(i)が最大水素摂取量を有する場合の温度より少なくとも15℃高い温度であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
触媒(i)を、当該方法で使用する前に活性化することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項11】
活性化を、200〜600℃の範囲の温度条件下で行うことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
触媒(i)の活性化を、水素又はアンモニア及び適宜、不活性ガスを含む混合物を用いて行うことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
触媒(i)の活性化を、触媒(ii)の存在下で行うことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
使用される触媒(i)が、Ni、Cu、Fe、Coから選択される1種以上の元素を含む化合物であり、当該元素は、それぞれ還元された状態及び/又は酸化された状態で存在していても良い請求項2又は3に記載の方法。
【請求項15】
使用される触媒(ii)が、Ni、Cu、Fe及びMoから選択される1種以上の元素を含む化合物であり、当該元素は、1価以上の酸化状態で存在していても良い請求項2又は3に記載の方法。
【請求項16】
2種類の相互に異なる触媒の質量割合が、アミノ化の過程で変化することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項17】
反応領域における触媒(ii)の含有量が、常に及び/又は段階的に、線形で又は比例を上回る形態で増大することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
反応領域における触媒(ii)の含有量が、線形形態にて増大することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アミノ化を連続的に行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項20】
アミノ化を、200〜800℃の範囲の温度条件下で行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項21】
アミノ化を、0.1〜90MPa(1〜900バール)の範囲の圧力条件下で行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項22】
アミノ化を、炭化水素に対するアンモニアの少なくとも1のモル比にて行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。

【公表番号】特表2009−527523(P2009−527523A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555748(P2008−555748)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051376
【国際公開番号】WO2007/099028
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】