説明

炭化水素の酸化

炭化水素を対応するヒドロペルオキシド、アルコール、ケトン、カルボン酸又はジカルボン酸に酸化するための方法において、炭化水素が一般式(I):


(式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、但し、R1 及びR2 が共有結合を介して互いに結合し得ることを条件とし、Q1 及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、lは0、1、又は2であり、mは1〜3であり、かつR3 はR1 についてリストされた物のいずれかであってもよい)
の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させられる。その接触が酸化された炭化水素生成物及び未反応の前記式(I)のイミド触媒を含む流出物を生じ、その流出物が固体吸収剤で処理されて未反応のイミド触媒の少なくとも一部を除去し、前記の酸化された炭化水素生成物を含む処理された流出物を生じる。次いで有機相が回収し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
この出願は2007年10月31日に出願された米国仮特許出願第60/984,264号(これは参考として本明細書にそのまま含まれる)の利益を主張する。
本発明は炭化水素、特にアルキル芳香族炭化水素を酸化して、例えば、フェノール及び置換フェノールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の酸化は工業有機化学に重要な反応である。こうして、例えば、シクロヘキサンの酸化がシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンを商業的に製造するのに使用され、これらはナイロンの製造に重要な前駆体であり、一方、アルキル芳香族炭化水素の酸化がポリカーボネート及びエポキシ樹脂の製造における前駆体である、フェノールを製造するのに使用される。
炭化水素の酸化は公知の酸化剤、例えば、KMnO4、CrO3 及びHNO3を使用して行ない得る。しかしながら、これらの酸化剤は比較的高価であるという不利な点を有し、更にそれらの使用は望ましくないカップリング生成物(これらは廃棄問題及び生態汚染に相当し得る)の生成により伴なわれる。
それ故、過酸化物又はN2O をベースとする酸化剤が使用される。しかしながら、最も安価な酸化剤は純粋な形態の、又は大気酸素としての分子状酸素である。しかしながら、酸素それ自体は炭化水素を酸化するのに通常不適である。何とならば、O2 分子(これはエネルギー的に有利な三重項形態で生じる)の反応性が充分ではないからである。
酸化還元金属触媒を使用することにより、有機化合物を酸化するために分子状酸素を利用することが可能であり、それ故、多数の工業プロセスが炭化水素の金属触媒自動酸化に基づいている。こうして、例えば、シクロヘキサノール/シクロヘキサノンへのO2 によるシクロヘキサンの酸化がコバルト塩の使用により進行する。これらの工業プロセスは遊離基連鎖メカニズムに基づいており、その場合、ビラジカル酸素がペルオキシ遊離基の生成及び更に別の炭化水素からのH原子の引き抜きによるその後の連鎖伝播を伴なって、炭化水素遊離基と反応する。しかしながら、金属塩に加えて、有機分子がまた遊離基開始剤として作用し得る。
しかしながら、選択率が増大する転化率とともに非常に大きく減少し、それ故、そのプロセスは非常に低い転化率のレベルで操作される必要があることがこれらのプロセスの不利な点である。こうして、例えば、シクロヘキサノール及び/又はシクロヘキサノンへの酸化は10〜12%の転化率で行なわれ、その結果、選択率が80〜85%である(“工業有機化学” 1994, 261, VCH-Verlag, D-69451 Weinheim)。
【0003】
金属塩触媒の代案は有機媒介物質、例えば、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)の使用である。こうして、米国特許第6,852,893号及び同第6,720,462号は基質を遊離基開始剤及び触媒、典型的にはN-ヒドロキシカルボジイミド触媒、例えば、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)の存在下で酸素含有ガス(この場合、その酸素含量は5容量%から100容量%までである)と接触することにより炭化水素基質を酸化するための方法を記載している。その方法は0℃〜500℃の温度及び大気圧〜100バール(100〜10,000 kPa)の圧力で行なわれる。その触媒対炭化水素基質のモル比は10-6モル%から1モル%までの範囲であってもよく、一方、遊離基開始剤対その触媒のモル比は4:1以下、例えば、1:1〜0.5:1であってもよい。この方法により酸化し得る好適な基質として、クメン、シクロヘキシルベンゼン、シクロドデシルベンゼン及びsec-ブチルベンゼンが挙げられる。
米国特許第7,038,089号は一級炭化水素、二級炭化水素からなる群から選ばれた炭化水素からのヒドロペルオキシド及び前記ヒドロペルオキシドに対応するこれらの混合物を調製するための方法を開示しており、その方法は前記炭化水素の酸化を130〜160℃の範囲の温度で前記炭化水素と環状イミド化合物及びアルカリ金属化合物を含む触媒とを含む反応混合物中で酸素含有ガスを用いて行なうことを含む。好適な炭化水素はC4 〜C20 ターシャリーアルカン(例えば、イソ-ブタン、イソ-ペンタン、イソ-ヘキサン等)、1〜6個の芳香族環を含むC7 〜C20 (アルキル)芳香族炭化水素又は1〜6個の芳香族環を含むC9 to C20 (シクロアルキル)芳香族炭化水素(例えば、キシレン、クメン、シメン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、インダン等)等を含むと言われている。使用される環状イミド化合物の量は、その反応混合物を基準として0.0001質量%から1質量%まで、好ましくは0.0005質量%から0.5質量%までであってもよく、一方、アルカリ金属化合物の量はその反応混合物を基準として0.000005質量%から0.01質量%まで、好ましくは0.00001質量%から0.005質量%までであってもよい。
しかしながら、現在の研究は炭化水素酸化触媒としての環状イミドの実用性を実証するために続けられてきたが、商用プロセスにおけるそれらの適用は更なる調査を必要とすることがまた示されていた。特に、N-ヒドロキシフタルイミドの如き環状イミドは高価であり、しかも酸化反応の条件下で直ぐに加水分解される。更に、未反応のイミド触媒及びそれらの分解生成物(酸及びエーテル)は重大な問題を下流の反応、例えば、ヒドロペルオキシド開裂に課し得る。こうして、炭化水素の酸化への環状イミドの成功裏の適用は未反応のイミド及びそれらの分解生成物を除去するための酸化流出物の処理並びに、可能な場合には、貴重な未反応のイミドの回収及び循環を必要とするであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、未反応のイミド触媒及びその分解生成物は塩基の性質を有する固体吸収剤による流出物の処理によりアルキル芳香族化合物の接触酸化の流出物から少なくとも部分的に除去し得ることが今わかった。未反応のイミドは流出物から選択的に除去されて、イミド種を実質的に含まない生成物を残す。その後に吸着剤を極性溶媒で洗浄することにより、イミド種が酸化工程への循環のために回収し得る。
一局面において、本発明は炭化水素を対応するヒドロペルオキシド、アルコール、ケトン、カルボン酸又はジカルボン酸に酸化するための方法にあり、その方法は
(a) 炭化水素を一般式(I):
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、但し、R1 及びR2 が共有結合を介して互いに結合し得ることを条件とし、
Q1 及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、
X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期表の4族の元素から選ばれ、
YはO又はOHであり、
kは0、1、又は2であり、
lは0、1、又は2であり、
mは1〜3であり、かつ
R3 はR1 についてリストされた物(基、又は原子)のいずれかであってもよい)
の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させ(前記接触は酸化された炭化水素生成物及び前記式(I)の未反応のイミド触媒を含む流出物を生じる)、そして
(b) その流出物を固体吸収剤で処理して前記流出物から前記式(I)の前記の未反応のイミド触媒の少なくとも一部を除去し、そして前記の酸化された炭化水素生成物を含む処理された流出物を製造することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例2の方法による690kPag(100psig)における0.46質量%のNHPIの存在下のsec-ブチルベンゼン(SBB)の酸化における流れ(T.O.S.)についての時間に対する転化率及びsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド(SBBHP)選択率をプロットするグラフである。
【図2(a)−(c)】実施例3の方法による種々の吸収剤による流出物の抽出後の実施例2の方法の流出物の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)スペクトルである。
【図3】実施例4の方法による、エタノールの添加の有無の両方の、0.11質量%のNHPIの存在下の大気圧におけるSBBの酸化における流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン(SBB)転化率をプロットするグラフである。
【図4】実施例4の方法におけるSBB転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド(SBBHP)選択率をプロットするグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
都合良くは、前記固体吸収剤は金属酸化物、金属炭酸塩、炭酸水素塩、クレー又はイオン交換樹脂を含む。
都合良くは、前記金属酸化物は0.5より大きい、例えば、0.75より大きい、例えば、1.0より大きい、金属酸化物1g当りのCO2の化学吸収対金属酸化物1g当りのNH3の化学吸収のモル比を有する。
一実施態様において、その方法は前記固体吸収剤により除去された未反応のイミド触媒を回収し、その触媒を(a)に循環することを更に含む。都合良くは、未反応のイミド触媒が固体吸収剤を極性溶媒で洗浄することにより前記固体吸収剤から回収される。
都合良くは、前記炭化水素がアルカン又はシクロアルカン、例えば、イソブタン又はシクロヘキサンである。
また、前記炭化水素は一般式(II)のアルキル芳香族化合物である。
【0009】
【化2】

【0010】
式中、R4 及びR5 は夫々独立に水素又は1個から4個までの炭素原子を有するアルキル基を表し、但し、R4 及びR5 が結合されて4個から10個までの炭素原子を有する環式基を形成してもよいことを条件とし、前記環式基は必要により置換されていてもよく、かつR6 は水素、1個から4個までの炭素原子を有する1個以上のアルキル基又はシクロヘキシル基を表す。
都合良くは、一般式(II)の前記アルキル芳香族化合物がエチルベンゼン、クメン、sec-ブチルベンゼン、sec-ペンチルベンゼン、p-メチル-sec-ブチルベンゼン、1,4-ジフェニルシクロヘキサン、sec-ヘキシルベンゼン、及びシクロヘキシルベンゼンから選ばれる。
都合良くは、前記環状イミドが一般式(III)に従う。
【0011】
【化3】

【0012】
式中、R7、R8、R9、及びR10 の夫々が独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、
X及びZの夫々が独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YがO又はOHであり、
kが0、1、又は2であり、かつ
lが0、1、又は2である。
一実施態様において、前記環状イミドがN-ヒドロキシフタルイミドを含む。
更なる局面において、本発明はフェノールを製造するための方法にあり、前記方法が
(a) 一般式(II):
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R4 及びR5 は夫々独立に水素又は1個から4個までの炭素原子を有するアルキル基を表し、但し、R4 及びR5 が結合されて4個から10個までの炭素原子を有する環式基を形成してもよいことを条件とし、前記環式基が必要により置換されていてもよく、かつR6 が水素、1個から4個までの炭素原子を有する1個以上のアルキル基又はシクロヘキシル基を表す)
のアルキル芳香族化合物を含む反応媒体を一般式(I):
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、但し、R1 及びR2 が共有結合を介して互いに結合し得ることを条件とし、
Q1 及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、
X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YはO又はOHであり、
kは0、1、又は2であり、
lは0、1、又は2であり、
mは1〜3であり、かつ
R3 がR1についてリストされた物(基、又は原子)のいずれかであってもよい)
の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素と接触させ(前記接触が前記式(I)の未反応のイミド触媒及び一般式(IV):
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、R4、R5 及びR6 は式(II)中と同じ意味を有する)
のヒドロペルオキシドを含む流出物を生成する)、
(b) その流出物を固体吸収剤で処理して前記式(I)の前記の未反応のイミド触媒の少なくとも一部を前記流出物から除去し、一般式(IV)の前記ヒドロペルオキシドを含む処理された流出物を生成し、そして
(c) 前記有機相からの式(IV)のヒドロペルオキシドをフェノール及び一般式R4COCH2R5 (V)(式中、R4 及びR5 は式(II)中と同じ意味を有する)のアルデヒド又はケトンに変換することを特徴とする。
都合良くは、前記接触(a)が約20℃〜約150℃、例えば、約70℃〜約130℃の温度で行なわれる。接触(a)が行なわれる圧力は都合良くは約15kPa〜約500kPa、例えば、100kPa〜約150kPaである。
“基”、及び“置換基”という用語はこの書類中で互換可能に使用される。この開示の目的のために、“ヒドロカルビル基”は水素原子及び20個までの炭素原子を含み、かつ線状、分岐、又は環状であってもよく、また環状の場合に、芳香族又は非芳香族であってもよい基であると定義される。“置換ヒドロカルビル基”はヒドロカルビル基中の少なくとも1個の水素原子が少なくとも1個の官能基で置換された基又は少なくとも1個の非炭化水素原子もしくは基がそのヒドロカルビル基内に挿入された基である。都合良くは、R1 及びR2 の夫々が独立に脂肪族アルコキシ基又は芳香族アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシ-カルボニル基及び炭化水素基から選ばれ、これらの基の夫々がH020 炭素原子を有する。
本発明は炭化水素を対応するヒドロペルオキシド、アルコール、ケトン、カルボン酸又はジカルボン酸の少なくとも一種に酸化するための方法を提供する。その方法は炭化水素を含む反応媒体を一般式(I):
【0019】
【化7】

【0020】
(式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、但し、R1 及びR2 が共有結合を介して互いに結合し得ることを条件とし、Q1 及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、lは0、1、又は2であり、mは1〜3であり、かつR3 はR1についてリストされた物(基、又は原子)のいずれかであってもよい)
の環式イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させることを特徴とする。本明細書に使用される、周期表の族についての新しいナンバリングスキームはChemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985)に開示されたように使用される。
その接触は前記式(I)の未反応のイミド触媒と一緒に所望の酸化された炭化水素生成物を含む流出物を生じる。次いで、流出物が、酸化された炭化水素生成物の濃縮の前後に、前記の未反応のイミドの、少なくとも一部を除去し、典型的にはその実質的に全てを流出物から除去し、酸化された炭化水素生成物を含む処理された流出物を生成するように固体吸収剤で処理される。次いで酸化された炭化水素生成物が更なる加工のために回収し得る。
イミドが入れられた固体吸収剤を極性溶媒、例えば、エタノールで洗浄することにより、未反応のイミド触媒が酸化工程への可能な循環のために回収し得る。
炭化水素供給原料
本方法を使用して、広範囲にわたる置換又は未置換飽和又は不飽和炭化水素、例えば、アルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン、及び芳香族化合物が、選択的に酸化し得る。しかしながら、特に、その方法はターシャリーブチルヒドロペルオキシド及びターシャリーブタノールへのイソブタンの選択的酸化、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、シクロヘキサノール及びシクロヘキサノンへのシクロヘキサンの選択的酸化並びに下記の一般式(II)のアルキル芳香族化合物の対応するヒドロペルオキシドへの選択的酸化に実用性を有する。
【0021】
【化8】

【0022】
式中、R4 及びR5 は夫々独立に水素又は1個から4個までの炭素原子を有するアルキル基を表し、但し、R4 及びR5 が結合されて4個から10個までの炭素原子を有する環式基を形成してもよいことを条件とし、前記環式基が必要により置換されていてもよく、かつR6 は水素、1個から4個までの炭素原子を有する1個以上のアルキル基又はシクロヘキシル基を表す。実施態様において、R4 及びR5は1個から4個までの炭素原子を有する1個以上のアルキル基又は1個以上のフェニル基で置換された、4個から10個までの炭素原子を有する環式基、都合良くはシクロヘキシル基を形成する。好適なアルキル芳香族化合物の例はエチルベンゼン、クメン、sec-ブチルベンゼン、sec-ペンチルベンゼン、p-メチル-sec-ブチルベンゼン、1,4-ジフェニルシクロヘキサン、sec-ヘキシルベンゼン、及びシクロヘキシルベンゼンであり、sec-ブチルベンゼン及びシクロヘキシルベンゼンが好ましい。R4 及びR5が結合されて環式基を形成する場合には、環式環を形成する炭素の数が4個から10個までであることがまた理解されるであろう。しかしながら、その環それ自体は1個以上の置換基、例えば、1個から4個までの炭素原子を有する1個以上のアルキル基又は1,4-ジフェニルシクロヘキサンの場合のような、1個以上のフェニル基を有してもよい。
一つの実用的な実施態様において、一般式(II)のアルキル芳香族化合物がsec-ブチルベンゼンであり、ベンゼンをアルキル化条件下で不均一触媒、例えば、ゼオライトベータ又は更に好ましくはMCM-22ファミリー(以下に特定されるような)の少なくとも一種のモレキュラーシーブの存在下で少なくとも一種のC4 アルキル化剤でアルキル化することにより生成される。そのアルキル化条件は都合良くは約60℃から約260℃まで、例えば、約100℃〜約200℃の温度を含む。そのアルキル化圧力は都合良くは7000kPa以下、例えば、約1000kPaから約3500kPaまでである。そのアルキル化は都合良くはC4 アルキル化剤を基準として約0.1〜約50hr-1、例えば、約1〜約10hr-1の質量毎時空間速度(WHSV)で行なわれる。
C4 アルキル化剤は都合良くは少なくとも一種の線状ブテン、即ち、ブテン-1、ブテン-2又はこれらの混合物を含む。アルキル化剤はまたエタン、プロパン、ブタン、LPG及び軽質ナフサのスチームクラッキング、ナフサ及びその他の製油所供給原料の接触クラッキング及び低級オレフィンへのオキシゲネート、例えば、メタノールの変換により得られるような、線状ブテンを含むオレフィン性C4 炭化水素混合物であってもよい。例えば、下記のC4 炭化水素混合物が一般にあらゆる製油所でスチームクラッキングを使用してオレフィンを製造するのに利用でき、C4 アルキル化剤としての使用に適している:スチームクラッキングされた粗ブテン流、ラフィネート-1(ブタジエンをスチームクラッキングされた粗ブテン流から除去するための溶媒抽出又は水素化後に残っている生成物)及びラフィネート-2(スチームクラッキングされた粗ブテン流からのブタジエン及びイソブテンの除去後に残っている生成物)。
【0023】
更なる実用的な実施態様において、一般式(II)のアルキル芳香族化合物がシクロヘキシルベンゼンであり、ベンゼンを不均一二機能性触媒(典型的にはパラジウム、ルテニウム、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれた、水素化活性を有する少なくとも一種の金属と、アルキル化活性を有する結晶性無機酸化物物質、典型的にはMCM-22ファミリー(以下に特定されるような)の少なくとも一種のモレキュラーシーブとを含む)の存在下で水素と接触させることにより生成される。接触工程が都合良くは約50℃〜約350℃の温度で行なわれる。接触圧力は、例えば、約100kPaから約7000kPaであってもよい。接触工程におけるベンゼン対水素モル比は約0.01から約100までであることが好ましい。接触工程中のWHSVは約0.01〜約100の範囲であることが好ましい。
【0024】
本明細書に使用される、“MCM-22ファミリー物質”(“MCM-22ファミリーの物質”もしくは“MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ”又は“MCM-22ファミリーゼオライト”)という用語は
・普通の第一級(first degree)結晶性ビルディングブロック単位セル(その単位セルはMWWフレームワークトポロジーを有する)からつくられたモレキュラーシーブ(単位セルは原子の空間配置であり、これは三次元空間中で傾斜された場合に結晶構造を記載する。このような結晶構造が“ゼオライトフレームワーク型のアトラス“, 第五編, 2001(その全内容が参考として含まれる)に説明されている);
・一つの単位セル厚さ、好ましくは一つのc-単位セル厚さの単層を形成する、このようなMWWフレームワークトポロジー単位セルの2次元の傾斜である、普通の第二級(second degree)ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ;
・一つ以上の一単位セル厚さの層である、普通の第二級ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ(一つより多い単位セル厚さの層が一単位セル厚さの少なくとも二つの単層を積み重ね、充填し、又は結合することからつくられる。このような第二級ビルディングブロックの積み重ねは規則的な様式、不規則な様式、ランダム様式、又はこれらのあらゆる組み合わせであってもよい);及び
・MWWフレームワークトポロジーを有する単位セルのあらゆる規則的又はランダムな2次元又は3次元の組み合わせによりつくられたモレキュラーシーブ
の一つ以上を含む。
【0025】
MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブは12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有するこれらのモレキュラーシーブを含む。その物質を特性決定するのに使用されるX線回折データは通常の技術により、例えば、入射放射線としての銅のK-α二重線及び収集システムとしてのシンチレーションカウンター及び関連コンピュータを備えたディフラクトメーターを使用して得られる。
MCM-22ファミリーの物質として、MCM-22 (米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH-3 (米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ-25 (米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB-1 (欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ-1 (米国特許第6,077,498号に記載されている), ITQ-2 (国際特許公開WO97/17290に記載されている)、MCM-36 (米国特許第5,250,277号に記載されている)、MCM-49 (米国特許第5,236,575号に記載されている)、MCM-56 (米国特許第5,362,697号に記載されている)、UZM-8 (米国特許第6,756,030号に記載されている)、及びこれらの混合物が挙げられる。MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブがアルキル化触媒として好ましい。何とならば、それらがその他のブチルベンゼン異性体と較べて、sec-ブチルベンゼンの生成に高度に選択的であることがわかったからである。モレキュラーシーブは(a) MCM-49、(b) MCM-56 並びに(c) MCM-49 及びMCM-56のイソタイプ、例えば、ITQ-2から選ばれることが好ましい。
炭化水素酸化
本方法における酸化工程は炭化水素基質を下記の一般式(I)の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させることにより達成される。
【0026】
【化9】

【0027】
式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、但し、R1 及びR2 が共有結合を介して互いに結合し得ることを条件とし、Q1 及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、lは0、1、又は2であり、mは1〜3であり、かつR3 はR1についてリストされた物(基、又は原子)のいずれかであってもよい。都合良くは、R1 及びR2 の夫々が独立に脂肪族アルコキシ基又は芳香族アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシ-カルボニル基及び炭化水素基から選ばれ、これらの基の夫々が1〜20個の炭素原子を有する。
一般に、酸化触媒として使用される環状イミドは下記の一般式に従う。
【0028】
【化10】

【0029】
式中、R7、R8、R9、及びR10 の夫々が独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、X及びZの夫々が独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YがO又はOHであり、kが0、1、又は2であり、かつlが0、1、又は2である。都合良くは、R7、R8、R9、及びR10 の夫々が独立に脂肪族アルコキシ基又は芳香族アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシ-カルボニル基及び炭化水素基から選ばれ、これらの基の夫々が1〜20個の炭素原子を有する。
一つの実用的な実施態様において、環状イミド触媒がN-ヒドロキシフタルイミドを含む。
その酸化工程を行なうのに使用される条件は酸化される炭化水素基質の型によりかなり変化するが、一般に好適な条件は約20℃〜約150℃、例えば、約70℃〜約130℃の温度を含む。その酸化工程は約15kPa〜約500kPa、例えば、15kPa〜約150kPaの圧力で行なわれることが好ましい。
酸化流出物の処理
炭化水素基質の性質に応じて、酸化工程の生成物は対応する炭化水素のヒドロペルオキシド、アルコール、ケトン、カルボン酸又はジカルボン酸の一種以上を含んでもよい。しかしながら、加えて、酸化方法からの流出物は所望の炭化水素酸化生成物に加えて未反応の環状イミド触媒を含んでもよい。こうして、本方法に従って、酸化流出物が前記の酸化された炭化水素生成物に富み、かつ減少されたレベル又はゼロレベルの環状イミドを含む処理された流出物を生成するように、固体吸収剤(これは未反応のイミド触媒の一部又は実質的に全てを除去するのに有効である)で処理される。その吸収方法は有機相中のイミドのレベルを有機相の100ppm未満、例えば、50ppm未満、例えば、10ppm未満に減少するように行なわれる。これはイミドが高価であるからだけでなく、それが下流の操作及び分離、例えば、ヒドロペルオキシド開裂に有害な作用を有し得るからである。
【0030】
好適な固体吸収剤は金属炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含む、塩基の性質を有するものであり、これらは多孔性支持体、クレー、イオン交換樹脂及び金属酸化物、特に混合金属酸化物の上に用意されてもよい。
本方法で有効な吸収剤であるのに充分な塩基の性質を有する金属酸化物はこれらの金属酸化物物質にわたってのCO2 及びNH3 の化学吸収のモル比により決められてもよい。緩酸である、CO2は試験される金属酸化物上に存在する塩基の部位を滴定するのに使用される。同様に、強塩基である、NH3はその物質上の酸の部位を示すために滴定される。多くの因子が化学吸収の実際の量、例えば、その物質の表面積(しばしば金属酸化物調製方法によりかなり影響される)、化学吸収が試験される温度、及び化学吸収が試験される圧力を決める。その目的のために、“塩基性”酸化物は、以下に記載されるように試験される場合に、0.5より大きく、典型的には0.75より大きく、特に1.0より大きい、金属酸化物1g当りのCO2 の化学吸収対金属酸化物1g当りのNH3 の化学吸収のモル比を有する酸化物と定義される。
金属酸化物1g当りのCO2 の化学吸収対金属酸化物1g当りのNH3 の化学吸収のモル比を決めるための試験は周囲圧力におけるメトラーTGA/SDTA 851 熱重量分析システムを使用して行なわれる。金属酸化物サンプルは、少なくとも一定のサンプル質量が得られるまで、約3時間にわたって流れている空気中で約500℃(表1に示されている以外)に焼成される。次いでサンプルの温度が流れている空気(ヘリウムがまた使用し得る)中で化学吸収の所望の温度に下げられる。次に、サンプルが流れているヘリウム中で所望の温度で平衡にされ、計量される。二酸化炭素の化学吸収が100℃で測定され、アンモニアの化学吸収が250℃で測定された。計量された後、そのサンプルは一定の質量が得られるまでヘリウム及び二酸化炭素又はアンモニアを含むガス混合物の相当の数のパルス(約12秒/パルス)にかけられる。ガス混合物は約10質量%の二酸化炭素又はアンモニアを含み、残部がヘリウムである。ガス混合物の夫々のパルスが試験された後に、金属酸化物サンプルが約3分間にわたって流れているヘリウムでフラッシされる。ガス混合物の約20の別々のパルスが夫々の試験で使用される。焼成後の金属酸化物サンプル質量を基準とするサンプルの質量(金属酸化物1g当りのmg数に換算)の増加が金属酸化物1g当たりに吸着されたCO2 又はNH3 のモル数を測定するのに使用される。
実施例で試験された物質の幾つかを含む幾つかの金属酸化物種についての吸収剤1g当りのCO2の化学吸収対NH3の化学吸収のモル比が表1に示される。
【0031】
表1

【0032】
本方法で固体吸収剤としての使用に適した金属酸化物として、周期律表の2族、3族、4族、ランタニド系列、又はアクチニド系列の金属の酸化物及び混合酸化物が挙げられる。一実施態様において、吸収剤は2種以上の金属酸化物、好ましくは4族金属酸化物並びに2族、3族、ランタニド系列、及びアクチニド系列の金属酸化物から選ばれた一種以上を含む。酸化物は種々の方法を使用して調製し得るが、一般に溶液からの沈殿及び/又は焼成による好適な前駆体の変換により調製される。好適な前駆体として、金属塩、例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、オキシ塩化物、アルコキシド及び酢酸塩が挙げられる。
一実施態様において、金属酸化物が最初に水の如き、溶媒中の金属の塩を含む液体溶液を調製することにより生成される。次いで得られる溶液が沈殿試薬、典型的には塩基、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウムの添加によるような、固体酸化物物質の沈殿を生じるのに充分な条件にかけられる。その液体溶液は一般に沈殿中に200℃以下、例えば、約0℃から約200℃まで、例えば、約20℃から約100℃までの範囲の温度に維持される。次いで得られるゲルが10日まで、例えば、5日まで、例えば、3日までにわたって少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃の温度で水熱処理されることが好ましい。次いで得られる物質が、例えば、濾過又は遠心分離により回収され、洗浄され、乾燥される。次いで得られる粒状物質が典型的には、通常酸化雰囲気中で、48時間までにわたって、例えば、約0.5時間〜約24時間にわたって、例えば、約1時間〜約10時間にわたって、少なくとも400℃、例えば、約400℃から約800℃までの温度で焼成される。
2種以上の金属酸化物が使用される場合、それらは共沈されてもよく、又は別々に沈殿され、焼成固体粒子として含む加工のあらゆるその後の段階で互いと合わされてもよい。
固体吸収剤としての使用に適したイオン交換樹脂として、酸性種又は塩基性種を除去するために通常使用される樹脂、例えば、アンバーリスト交換樹脂が挙げられる。
環状イミド吸収工程で使用される条件は厳密に制御されないが、一般に約10℃〜約130℃、例えば、約20℃〜約80℃の温度が挙げられる。吸収の時間は、例えば、約1分から約30分まで、例えば、約5分〜約10分であってもよい。
固体吸収剤による除去後に、未反応の環状イミドが吸収剤を極性溶媒、例えば、エタノール又はアセトンで洗浄することにより直ぐに回収し得る。次いで回収されたイミドがエタノールの先の除去とともに、又はその除去を用いずに、酸化工程に循環し得る。何とならば、エタノールとイミドの存在が触媒の酸化活性又は選択性に悪影響しないことがわかったからである(図3及び4を参照のこと)。
【0033】
酸化生成物
本酸化方法の生成物は酸化される炭化水素基質の性質に依存するが、一般にヒドロペルオキシド、アルコール、ケトン、カルボン酸又はジカルボン酸、特にヒドロペルオキシドである。
例えば、炭化水素基質がイソブタンである場合、酸化生成物はターシャリーブチルヒドロペルオキシド(これは、例えば、オレフィンエポキシド化のための酸化剤として有益である)及びターシャリーブタノール(これはガソリン添加剤として有益である)を含む。
炭化水素基質がシクロヘキサンである場合、酸化生成物はシクロヘキシルヒドロペルオキシド、シクロヘキサノール及びシクロヘキサノンを含む。シクロヘキシルヒドロペルオキシドは熱により、又は触媒の助けにより更にシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンに直ぐに分解される。シクロヘキサノールは硝酸水溶液で酸化されてアジピン酸(これはナイロン6,6の合成における前駆体である)を生成することができ、一方、シクロヘキサノンはシクロヘキサンオキシム(これは酸触媒転位を受けてナイロン6の合成における前駆体である、カプロラクタムを生成する)に変換し得る。
炭化水素基質が一般式(II)のアルキル芳香族化合物である場合、酸化反応の生成物は下記の一般式(IV)のヒドロペルオキシドを含む。
【0034】
【化11】

【0035】
式中、R4、R5 及びR6 は式(II)中と同じ意味を有する。ヒドロペルオキシドはsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド又はシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドであることが好ましい。次いでこのヒドロペルオキシドが酸開裂によりフェノール又は置換フェノール及び一般式R4COCH2R5 (V)(式中、R4 及びR5 は式(II)中と同じ意味を有する)のアルデヒド又はケトンに変換し得る。フェノールは、勿論、アセトンと反応させられてポリカーボネート樹脂及びエポキシ樹脂の製造における前駆体である、ビスフェノールAを生成し得る。
ヒドロペルオキシド開裂反応はヒドロペルオキシドを約20℃〜約150℃、例えば、約40℃〜約120℃の温度、及び/又は約50kPa〜約2500kPa、例えば、約100kPa〜約1000kPaの圧力及び/又はヒドロペルオキシドを基準として約0.1hr-1〜約100hr-1、好ましくは約1hr-1〜約50hr-1の毎時の液空間速度(LHSV)で液相中で触媒と接触することにより都合良く行なわれる。ヒドロペルオキシドは開裂反応に不活性な有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、フェノール又はsec-ブチルベンゼン中で希釈されて、熱除去を助けることが好ましい。開裂反応は接触蒸留ユニット中で都合良く行なわれる。
開裂工程で使用される触媒は均一触媒又は不均一触媒であってもよい。
好適な均一開裂触媒として、硫酸、過塩素酸、リン酸、塩酸及びp-トルエンスルホン酸が挙げられる。塩化鉄(III)、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄がまた有効な均一開裂触媒である。好ましい均一開裂触媒は硫酸である。
sec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂における使用に適した不均一触媒として、スメクタイトクレー、例えば、米国特許第4,870,217号(テキサコ)(その全開示が参考として本明細書に含まれる)に記載されたような酸性モンモリロナイトシリカ-アルミナクレーが挙げられる。
今、本発明が下記の非限定実施例を参考にして更に特別に記載される。
【実施例】
【0036】
実施例1 金属酸化物吸収剤の調製
(a) 5% La/ZrO2
硝酸ランタン6水和物7.79g及び脱イオン(DI)水30gからなる溶液を調製した。この溶液を以下に記載される調製(d)において調製されたジルコニア61.3gに徐々に添加した。その生成物を80℃で一夜乾燥させ、次いで空気中で3時間にわたって700℃で焼成した。
(b) 5% Y/Al2O3
硝酸イットリウム6水和物4.3g及びDI水30gからなる溶液を調製した。この溶液をアルミナ28.65gに徐々に添加した。生成物を80℃で一夜乾燥させ、次いで空気中で3時間にわたって700℃で焼成した。
(c) 5% La/SiO2
硝酸ランタン6水和物7.79g及びDI水30gからなる溶液を調製した。この溶液をシリカ56gに徐々に添加した。生成物を80℃で一夜乾燥させ、次いで空気中で3時間にわたって500℃で焼成した。
(d) ZrO2
ZrO(Cl)2・xH2O 150gを撹拌しながら蒸留水0.5リットルに溶解した。濃NH4OH 50g及び蒸留水0.5リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃で焼成して活性酸化物物質を生成した。
【0037】
(e) 5% La/Al2O3
硝酸ランタン6水和物3.9g及びDI水30gからなる溶液を調製した。この溶液をアルミナ28.65gに徐々に添加した。生成物を80℃で一夜乾燥させ、次いで空気中で700℃で3時間焼成した。
(f) La2O3
La(NO3)3・xH2O 100gを撹拌しながら蒸留水0.5リットルに溶解した。濃NH4OH20g及び蒸留水0.5リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(g) Y2O3
Y(NO3)3・6H2O 100gを蒸留水0.75リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 50g及び蒸留水0.75リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(h) Nd2O3
Nd(NO3)3・6H2O 100gを蒸留水0.5リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 20g及び蒸留水0.5リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
【0038】
(i) Pr2O3
Pr(NO3)3・6H2O 100gを蒸留水0.5リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 20g及び蒸留水0.5リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(j) CeO2
Ce(NO3)3・6H2O 100gを蒸留水0.75リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 30g及び蒸留水0.75リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
【0039】
(k) Sm2O3
Sm(NO3)3・6H2O 100gを蒸留水0.5リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 20g及び蒸留水0.5リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(l) 95% Y2O3/ 5% ZrO2
Y(NO3)3・6H2O 150g及びZrO(NO3)2xH2O 8.75gを蒸留水0.75リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 100g及び蒸留水0.75リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(m) 75% Y2O3/ 25% ZrO2
Y(NO3)3・6H2O 150g及びZrO(NO3)2xH2O 55.4gを蒸留水0.75リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 100g及び蒸留水0.75リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
【0040】
(n) TiO2
TiOSO4・H2SO4・H2O 150gを蒸留水0.5リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 50g及び蒸留水0.5リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(o) MgO
Mg(NO3)2・6H2O 200gを蒸留水0.5リットルに撹拌しながら溶解した。濃NH4OH 50g及び蒸留水0.5リットルを含む別の溶液を調製した。ノズル混合を使用して、これらの2種の溶液を50ml/分の速度で合わせた。その最終組成物のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約9に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって700℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(p) SiO2
NaSiO3 175gを蒸留水1.6リットルに撹拌しながら溶解した。その溶液のpHを50%の硫酸の添加により約8に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって500℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
【0041】
(q) 75% SiO2/ 25% Al2O3
NaSiO3 132gを蒸留水0.8リットルに撹拌しながら溶解した。Al2(SO4)3・14H2O 73g及び脱イオンH2O 0.8リットルからなる別の溶液を調製した。これらの2種の溶液を撹拌しながら徐々に合わせた。その溶液のpHを50%の硫酸の添加により約8に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって500℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(r) 50% SiO2/ 50% Al2O3
NaSiO3 88gを蒸留水0.8リットルに撹拌しながら溶解した。Al2(SO4)3・14H2O 145g及び脱イオンH2O 0.8リットルからなる別の溶液を調製した。その2種の溶液を撹拌しながら徐々に合わせた。その溶液のpHを50%の硫酸又は濃水酸化アンモニウムの添加により約8に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって500℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(s) 25% SiO2/ 75% Al2O3
NaSiO3 44gを蒸留水0.8リットルに撹拌しながら溶解した。Al2(SO4)3・14H2O 218g及び脱イオンH2O 0.8リットルからなる別の溶液を調製した。その2種の溶液を撹拌しながら徐々に合わせた。その溶液のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約8に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって500℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
【0042】
(t) 13% SiO2/ 87% Al2O3
NaSiO3 22gを蒸留水0.8リットルに撹拌しながら溶解した。Al2(SO4)3・14H2O 253g及び脱イオンH2O 0.8リットルからなる別の溶液を調製した。その2種の溶液を撹拌しながら徐々に合わせた。その溶液のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約8に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって500℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(u) Al2O3
Al2(SO4)3・14H2O 290g及びDI水1.6リットルからなる溶液を調製した。その溶液のpHを濃水酸化アンモニウムの添加により約8に調節した。次いでこのスラリーをポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。生成された生成物を濾過により回収し、過剰の水で洗浄し、85℃で一夜乾燥させた。この生成物の一部を流れている空気中で3時間にわたって500℃に焼成して活性酸化物物質を生成した。
(v) 5% La/ シリカ押出物
硝酸ランタン6水和物7.79g及びDI水30gからなる溶液を調製した。この溶液をシリカ押出物56gに徐々に添加した。生成物を80℃で一夜乾燥させ、次いで空気中で500℃で3時間焼成した。
(w) La/SiO2
水1000gと10質量%のSiO2を含むTMAシリケート(テトラメチルアンモニウムシリケート)溶液310gとを混合することにより溶液を調製した。水1300g及び硝酸ランタン6水和物14gを含む別の溶液を調製した。これらの2種の溶液を撹拌しながら合わせた。生成物のpHを濃硫酸の添加により9に調節した。その物質をポリプロピレンびんに入れ、スチームボックス(100℃)に72時間入れた。次いでその物質を濾過し、洗浄し、約85℃で乾燥させた。その物質の一部を空気中で3時間にわたって500℃に焼成した。次いでその物質をシリケート物質10g当り硝酸アンモニウム溶液100mlの比で1N硝酸アンモニウムの溶液と合わせた。この混合物を室温で1時間撹拌し、次いで濾過した。この交換操作を毎回新しい硝酸アンモニウム溶液で合計4回繰り返した。次いでその物質を脱イオン水で洗浄し、約85℃で一夜乾燥させた。最後にその物質を空気中で3時間にわたって500℃で焼成した。化学分析はランタン-13.6質量%、ケイ素-39.12質量%であった。焼成された物質の表面積は218m2/gであった。
【0043】
(x) AlPOx
DI水500g、濃リン酸45g、及び濃硫酸75gからなる溶液を調製した。DI水1600g及びアルミン酸ナトリウム300gからなる別の溶液を調製した。これらの2種の溶液を撹拌しながら合わせ、必要な場合に、そのpHを濃硫酸の添加により9に調節した。次いでこの混合物をポリプロピレンびんに入れ、スチームボックスに100℃で48時間入れた。次いでその混合物を濾過し、洗浄し、80℃で一夜乾燥させた。次いでその物質を空気中で540℃で3時間焼成し、続いて1N硝酸アンモニウム溶液100ml当りその物質10gをスラリーにすることによりアンモニウム交換した。この交換操作を合計4回繰り返した。次いで交換された生成物を濾過し、洗浄し、次いで80℃で一夜乾燥させた。最後に、生成物を空気中で500℃で3時間焼成した。
【0044】
実施例2 NHPIの存在下のSBB酸化
TCIアメリカにより供給されたsec-ブチルベンゼン(SBB)150g及びN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)0.69g(0.46質量%)を撹拌機、熱伝対、ガス導入口、サンプリングポート及び水除去のためのディーン・スタークトラップを含む冷却器が取り付けられたパール反応器に計り取った。その反応器及び内容物を700rpmで撹拌し、5分間にわたって250cc/分の流量で窒素でスパージした。次いでその反応器を窒素で100psig(790kPa)に加圧し、その間に窒素スパージ下に維持し、次いで115℃に加熱した。その反応温度に達した時、ガスを窒素から空気に切り替え、その反応器を6時間にわたって空気で250cc/分でスパージした。サンプルを時間毎に採取し、夫々のサンプルのNHPI濃度及び酢酸濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。水分析をカール・フィッシャー滴定により測定した。6時間後、ガスを逆に窒素に切り替え、加熱を止めた。反応器が冷却した時、それを圧抜きし、内容物を除去した。結果を図1に示す。
【0045】
実施例3 吸収剤を使用する酸化混合物からのNHPI除去
一連の試験を実施し、これらの夫々で実施例2からの酸化生成物のサンプル5gを固体吸収剤1gで充填されたカラムに通した。夫々の試験を窒素流のもとに室温(25℃)で行なった。HPLC分析方法を使用して、NHPI含量を吸収処理の前後で分析した。HPLC装置を二つの検出器i)UV検出器及びii)窒素導電(conductive)検出器に取り付けた。使用した吸収剤はアルドリッチにより供給されたポリビニルアルコール(比較目的のためのみ)、W.グレースにより供給された塩基性クレー(ナトカ・コーリン、02-77681)、並びに実施例1の調製(a)及び(b)で夫々製造された5% La/ZrO2及び5% Y/Al2O3を含んだ。結果を図2(a)〜2(c)に示し、ポリビニルアルコールがNHPIを除去するのに有効ではなかったが、一方、塩基性クレー並びに5% La/ZrO2及び5% Y/Al2O3吸収剤が実質的に全てのNHPIを実施例2の酸化生成物から除去したことを実証する。
【0046】
実施例4 NHPI及びエタノールの存在下のSBB酸化
TCIアメリカにより供給されたsec-ブチルベンゼン(SBB)150g及びN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)0.16g(0.11質量%)並びにエタノール7.5gを撹拌機、熱伝対、ガス導入口、サンプリングポート及び水除去のためのディーン・スタークトラップを含む冷却器が取り付けられたパール反応器に計り取った。その反応器及び内容物を1000rpmで撹拌し、5分間にわたって250cc/分の流量で窒素でスパージした。次いでその反応器を、窒素スパージ下に維持しながら、125℃に加熱した。その反応温度に達した時、ガスを窒素から空気に切り替え、その反応器を4時間にわたって空気で250cc/分でスパージした。サンプルを時間毎に採取し、夫々のサンプルのNHPI濃度及び酢酸濃度をHPLC及びガスクロマトグラフィーにより測定した。水分析をカール・フィッシャー滴定により測定した。4時間後、ガスを逆に窒素に切り替え、加熱を止めた。反応器が冷却した時、それを圧抜きし、内容物を除去した。結果を図3及び4に示し、NHPIによるSBB酸化がエタノールの添加により実質的に影響されないことを示す。これらの試験はエタノールがNHPIを吸収剤から回収するため、またNHPIを酸化反応器に導入するために使用し得ることを実証する。
【0047】
実施例5 NHPIの存在下のSBB酸化及び異なる吸収剤を使用する酸化混合物からのNHPI除去
TCIアメリカにより供給されたsec-ブチルベンゼン(SBB)150g及びN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)0.16g(0.11質量%)を撹拌機、熱伝対、ガス導入口、サンプリングポート及び水除去のためのディーン・スタークトラップを含む冷却器が取り付けられたパール反応器に計り取った。その反応器及び内容物を1000rpmで撹拌し、5分間にわたって250cc/分の流量で窒素でスパージした。次いでその反応器を、窒素スパージ下に維持しながら、125℃に加熱した。その反応温度に達した時、ガスを窒素から空気に切り替え、その反応器を4時間にわたって空気で250cc/分でスパージした。サンプルを時間毎に採取し、夫々のサンプルのNHPI濃度及び酢酸濃度をHPLC及びガスクロマトグラフィーにより測定した。水分析をカール・フィッシャー滴定により測定した。4時間後、ガスを逆に窒素に切り替え、加熱を止めた。反応器が冷却した時、それを圧抜きし、内容物を除去した。
一連の試験を実施し、これらの夫々で得られる酸化生成物のサンプル5gを実施例1で生成された種々の金属酸化物種で充填されたカラムに通した。HPLC分析方法及びGC分析方法を使用して、NHPI含量(質量基準のppm)及び混合物組成を吸収処理の前後で分析した。HPLC装置を二つの検出器i)UV検出器及びii)窒素導電検出器に取り付けた。結果を表2に示す。
【0048】
実施例6 80℃で吸収剤及び濃ヒドロペルオキシド溶液(88質量%)を使用する酸化混合物からのNHPI除去
SBBを80℃の温度で13.3Pa(0.1mm Hg)の真空下で生成物からストリッピングすることにより実施例5からの酸化生成物の一部を濃縮した。一連の試験を実施し、これらの夫々で濃縮生成物のサンプル5gを実施例1で生成された種々の金属酸化物種と混合し、その混合物を80℃で15分間加熱した。HPLC分析方法及びGC分析方法を使用して、NHPI含量(質量基準のppm)及び混合物組成を吸収処理の前後で分析した。HPLC装置を二つの検出器i)UV検出器及びii)窒素導電検出器に取り付けた。結果を表3に示す。
【0049】
表2

【0050】
表3

【0051】
実施例7 吸収剤充填カラムを使用する酸化混合物からのNHPI除去次いで極性溶媒を使用するカラムからのNHPIの除去
直径0.64cm(1/4インチ)x長さ15.2cm(6インチ)のステンレス鋼カラムにLa SiO2押出物サンプル又はAlPOサンプル3.3gを充填した。そのカラムを80℃に加熱し、次いで実施例6からの濃縮酸化生成物(80℃に加熱)15gを約2cc/分でカラムにポンプ輸送した。次いでカラムを65℃に冷却し、エタノール(65℃に加熱)25gをそのカラムにポンプ輸送した。結果は吸収剤がNHPIを80℃で濃縮酸化生成物から除去し、エタノールがNHPIを吸収剤から完全に除去したことを示す。そのデータはエタノール洗浄により回収されたNHPIの量が2144ppmであることを示した。
本発明が特別な実施態様を参照して記載され、説明されたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも説明されていない変化に適応することを認めるであろう。この理由のために、本発明の範囲を決める目的のために特許請求の範囲のみが参考にされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を対応するヒドロペルオキシド、アルコール、ケトン、カルボン酸又はジカルボン酸に酸化するための方法であって、
(a) 炭化水素を一般式(I):
【化1】

(式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、但し、R1 及びR2 が共有結合を介して互いに結合し得ることを条件とし、
Q1 及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、
X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期表の4族の元素から選ばれ、
YはO又はOHであり、
kは0、1、又は2であり、
lは0、1、又は2であり、
mは1〜3であり、かつ
R3 はR1 についてリストされた物のいずれかであってもよい)
の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させ、ここで、前記接触は酸化された炭化水素生成物及び前記式(I)の未反応のイミド触媒を含む流出物を生じる、そして
(b) その流出物を固体吸収剤で処理して前記流出物から前記式(I)の前記の未反応のイミド触媒の少なくとも一部を除去し、そして前記の酸化された炭化水素生成物を含む処理された流出物を製造することを特徴とする前記方法。
【請求項2】
前記環状イミドが一般式(III)
【化2】

(式中、R7、R8、R9、及びR10 の夫々が独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br及びIから選ばれ、
X及びZの夫々が独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YがO又はOHであり、
kが0、1、又は2であり、かつ
lが0、1、又は2である)
に従う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
環状イミドがN-ヒドロキシフタルイミドを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
接触(a)を20℃〜150℃の温度で行なう、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
温度が70℃〜130℃である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
接触(a)を15kPa〜500kPaの圧力で行なう、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
圧力が15kPaから150kPaまでである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
固体吸収剤が金属酸化物、金属炭酸塩、炭酸水素塩、クレー、イオン交換樹脂及びこれらのいずれかの2種以上の混合物から選ばれる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
固体吸収剤が0.5より大きい、金属酸化物1g当りのCO2の化学吸収対金属酸化物1g当りのNH3の化学吸収のモル比を有する金属酸化物である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
その比が0.75より大きい、請求項9記載の方法。
【請求項11】
その比が1.0より大きい、請求項10記載の方法。
【請求項12】
固体吸収剤により除去された未反応のイミド触媒を回収し、その触媒を(a)に循環することを更に含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
固体吸収剤を極性溶媒で洗浄することにより未反応のイミド触媒を固体吸収剤から回収する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
炭化水素がアルカン又はシクロアルカンを含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
炭化水素がイソブタン又はシクロヘキサンを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
炭化水素がシクロヘキサンを含み、酸化された炭化水素生成物がシクロヘキサノールを含み、かつその方法がシクロヘキサノールをアジピン酸に変換することを更に含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
炭化水素がシクロヘキサンを含み、酸化された炭化水素生成物がシクロヘキサノンを含み、かつその方法がシクロヘキサノンをカプロラクタムに変換することを更に含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
炭化水素がイソ-ブタンを含み、酸化された炭化水素生成物がtert-ブチルヒドロペルオキシドを含み、かつその方法がtert-ブチルヒドロペルオキシドを酸化触媒として使用することを更に含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
炭化水素が一般式(II):
【化3】

(式中、R4 及びR5 は夫々独立に水素又は1個から4個までの炭素原子を有するアルキル基を表し、但し、R4 及びR5 が結合されて4個から10個までの炭素原子を有する環式基を形成してもよいことを条件とし、前記環式基が必要により置換されていてもよく、かつR6 は水素、1個から4個までの炭素原子を有する1個以上のアルキル基又はシクロヘキシル基を表す)
のアルキル芳香族化合物を含み、かつ酸化された炭化水素生成物が一般式(IV):
【化4】

(式中、R4、R5 及びR6 は式(II)中と同じ意味を有する)
のヒドロペルオキシドを含む、請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
一般式(II)のアルキル芳香族化合物がエチルベンゼン、クメン、sec-ブチルベンゼン、sec-ペンチルベンゼン、p-メチル-sec-ブチルベンゼン、1,4-ジフェニルシクロヘキサン、sec-ヘキシルベンゼン、及びシクロヘキシルベンゼンから選ばれる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
アルキル芳香族化合物がsec-ブチルベンゼン又はシクロヘキシルベンゼンである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
式(IV)のヒドロペルオキシドをフェノール及び一般式R4COCH2R5 (V)(式中、R4 及びR5 は式(II)中と同じ意味を有する)のアルデヒド又はケトンに変換することを更に含む、請求項19、20又は21記載の方法。
【請求項23】
生成されたフェノールをビスフェノールに変換することを更に含む、請求項22記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−500816(P2011−500816A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531119(P2010−531119)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079150
【国際公開番号】WO2009/058527
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】