説明

炭化水素用脱硫剤

【課題】炭化水素中の硫黄分を効率よくppbレベルの低濃度まで除去し得て、かつ破過時間が延長された長寿命の炭化水素用脱硫剤を提供すること。
【解決手段】ニッケルを酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、ルテニウムを酸化物(RuO)換算で0.1〜12質量%、及び無機酸化物を含有することを特徴とする炭化水素用脱硫剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素、とりわけ燃料電池などにおいて水素製造のための改質原料に使用される炭化水素の脱硫剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題から新エネルギー技術が脚光を浴びており、この新エネルギー技術の一つとして燃料電池が注目されている。この燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するものであって、エネルギーの利用効率が高いという特徴を有しており、民生用、産業用あるいは自動車用などとして、実用化研究が積極的になされている。この燃料電池の水素源としては、メタノール、メタンを主体とする液化天然ガス、この天然ガスを主成分とする都市ガス、天然ガスを原料とする合成液体燃料、さらにはLPG、ナフサ、灯油などの石油系燃料といった、様々な炭化水素の使用が研究されている。
【0003】
これらの炭化水素を用いて水素を製造する場合、一般に、該炭化水素を、改質触媒の存在下に水蒸気改質又は部分酸化改質処理する方法が用いられる。しかしながら、これらの炭化水素には、硫黄分が含有されており、上記改質触媒は、炭化水素中の硫黄分により被毒される。これは、該改質触媒に一般に用いられているニッケルもしくはルテニウムといった活性金属が、硫黄に対する耐性が低いためである。そこで原料炭化水素に硫黄分が含有されている場合、改質触媒寿命の点から、あらかじめ該炭化水素に脱硫処理を施し、硫黄分含有量を通常100質量ppb以下にすることが要求される。
【0004】
一般的な脱硫方法としては、200〜400℃、2〜15MPaの水素雰囲気下でコバルト−モリブデンもしくはニッケル−モリブデン系触媒により、硫黄化合物を硫化水素の形にして取り除く、いわゆる水素化脱硫方法が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような水素を利用した炭化水素(灯油等)の脱硫方法が古くから盛んに研究されているが、水素化脱硫方法により原料炭化水素の硫黄分を低減させる場合、高温・高圧条件が必要であることや、別途水素が必要になるなど、経済的に不利である。加えて、この水素化脱硫方法は、改質触媒を被毒から保護するに十分なレベルまでの脱硫を行うには未だ至っていない。
そこで定置型燃料電池発電システムにおいては、市販の炭化水素をオンサイトで吸着により脱硫する手法が種々提案されており、炭化水素、とりわけ灯油などの重質炭化水素を、200℃付近の反応条件でNi‐Cu系脱硫剤や、Ni−Zn系脱硫剤を用いて脱硫する方法などが提案されている。(例えば、特許文献2および3参照)。
【特許文献1】特開平6−91173号公報
【特許文献2】特開2004−230317号公報
【特許文献3】特開2003−290660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のNi系脱硫剤の中には比較的短時間で破過(生成油の硫黄濃度が基準値を超える)してしまう場合もあり、脱硫剤の寿命が十分ではないことから、その破過に達する時間(破過時間)を延長することが、脱硫剤交換頻度の減少や装置の小型化・高効率化の観点から望まれている。
そこで、本発明は、水素を炭化水素と共に供給することなく、炭化水素中の硫黄分を効率よくppbレベルの低濃度まで除去し得て、かつ破過時間が延長された寿命の長い炭化水素用脱硫剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく炭化水素の吸着による脱硫に関して鋭意検討したところ、特定組成の脱硫剤を使用することで、脱硫反応における破過時間を改善することができることを見い出し、この知見に基づいて本発明に到達したものである。すなわち、本発明は以下の炭化水素用脱硫剤に関するものである。
1.ニッケルを酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、ルテニウムを酸化物(RuO)換算で0.1〜12質量%、及び無機酸化物を含有することを特徴とする炭化水素用脱硫剤。
2.無機酸化物が、SiO、Al、およびSiO-Alのうちいずれか1つもしくは2つ以上の組合せである上記1に記載の炭化水素用脱硫剤。
3.上記1または2に記載の脱硫剤を用い、反応温度0〜400℃、反応圧力0.1MPa以上、液空間速度0.01〜100hr−1の条件下で、炭化水素中の硫黄分を50質量ppb以下にする、炭化水素の脱硫方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の脱硫剤は特定の組成を有することにより、灯油、ジェット燃料、ナフサ、ガソリン、LPG、天然ガスなど炭化水素中の硫黄分を極めて効率よく除去でき、50質量ppb破過時間を著しく増加させることができる長寿命の炭化水素用脱硫剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<脱硫剤組成>
本発明における脱硫剤は、ニッケルおよびルテニウムを含んでなり、原料炭化水素中に存在する硫黄含有化合物を吸着除去して、原料炭化水素中の硫黄濃度を低減(脱硫)させるものである。
脱硫剤におけるニッケルの含有量は、酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、好ましくは60〜90質量%である。ニッケル酸化物量が50質量%以上であれば所望の脱硫性能が発現されるため好ましく、95質量%以下であれば、脱硫効果が飽和せず、またNi同士の凝集による脱硫性能の低下が生じにくいため好ましい。
【0009】
脱硫剤におけるルテニウムの含有量は、酸化物(RuO)換算で0.1〜12質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。ルテニウム酸化物量が0.1質量%以上であれば所望の脱硫性能が発現されるため好ましく、12質量%以下であれば、脱硫効果が飽和せず、また経済的にも望ましい。
【0010】
本脱硫剤においては、上記ニッケルおよびルテニウムに加えてさらに、無機酸化物を含有する。無機酸化物を用いると、それに吸着活性金属が分散付着しその分散性が良くなり、脱硫性能が向上し、破過時間の延長が期待される。また、脱硫剤の成型性や強度も向上するため、無機酸化物を用いることは高活性かつ高耐久性の脱硫剤を得る上で望ましい。
無機酸化物の種類は特に限定されないが、Si、Al、B、Mg、Ce、Zr、P、Ti、W、Mnからなる群から選ばれるいずれか1種の元素の酸化物もしくはこれらの混合物、または2種以上の元素の複合酸化物が好ましく、これらは結晶構造が無定形であっても結晶性であっても構わない。例えば、SiO、Al、TiO、B、MgO、SiO-Al、Al-B、MgO-SiO、ゼオライトなどが挙げられる。各種無機酸化物の中でも、高表面積、高成形性、高耐破壊・耐磨耗性を有していることから、SiO、Al、およびSiO-Alが特に好ましい。無機酸化物成分含有量については、特に制限はなく、各種条件において適宜選定すればよいが、通常は脱硫剤全体に対して好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは0.5〜40質量%の範囲であればよい。含有量が0.5質量%以上であれば、無機酸化物成分としての効果が十分に発揮され、また50質量%以下であれば、吸着活性成分の低下による脱硫性能の低下が防ぐことができ、好ましい。
【0011】
さらに、本発明の脱硫剤では、脱硫反応前に、上記含有金属が脱硫反応に適する程度な金属状態に還元されていることが好ましい。これにより、含有金属は活性化され、脱硫剤の硫黄吸着能を向上することができる。脱硫剤の含有金属を金属状態とするには、使用前に水素などで還元処理を施せばよい。なお、金属の状態は、X線回折法(XRD)により、各金属のピークを測定することなどで確認することができる。例えば、金属ニッケルの存在は、X線回折測定(線源Cu−Kα線)により2θ=51.6°付近にピークトップを有する回折ピークを検出することで確認できる。
【0012】
また、本発明の脱硫剤の比表面積は、還元処理前の状態で150〜600m/g、より好ましくは180〜500m/gが好ましい。比表面積が150m/g以上であれば、硫黄を吸着する吸着点の数が多くなり、十分な吸着能力が得られて好ましい。また、比表面積が600m/g以下であれば、相対的に平均細孔径が大きくなり、十分な吸着能力が得られて好ましい。
【0013】
脱硫剤の形状については特に規定されず、成型体(押出し円柱、タブレット円柱、球など)、メッシュで篩い分けられた粒状体、粉末などいずれの状態でもかまわないが、取り扱いの簡便さを考えると、成型体またはメッシュで篩い分けられた粒状体が好ましい。脱硫剤の形状を成型体あるいはメッシュで篩い分けられた粒状体にするためには、無機酸化物を用いることが望ましい。また、脱硫剤の大きさは、成型体、メッシュで篩い分けられた粒状体に関らず特に限定されないが、通常直径、あるいは長さが0.1〜10mm、より好ましくは0.1〜5mmであることが好ましい。
【0014】
<脱硫剤の調製>
脱硫剤の調製方法については特に規定されず、任意の方法で適宜調製することができるが、望ましくは無機酸化物を用いて、含浸法、混練法、共沈法、ゾルゲル法、平衡吸着法などにより調製することができ、ニッケルおよびルテニウムを有効的に機能させるためには含浸法および共沈法が好ましい。さらに、ニッケルの場合、含浸法であると1回の操作における担持量が少ないため、共沈法がより好ましい。ルテニウムの場合、高活性が得られることから含浸法がより好ましい。
【0015】
以下に本発明の脱硫剤の製造方法を具体的に説明するが、本発明の脱硫剤の製造方法はこれに限定されるものではない。
好適な脱硫剤の調製方法としては、まず、ニッケル原料及びアルミニウム原料を含む酸性水溶液と、Si原料および無機塩基を含む塩基性水溶液を別個に調製する。
上記ニッケル原料としては特に限定されないが、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケルなどの水溶性ニッケル金属塩およびその水和物が好適に使用できる。これらのニッケル原料は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アルミニウム原料としては、特に限定されないが、ベーマイト、擬ベーマイト、γアルミナ、βアルミナなどが好ましい。これらは粉体状、あるいはゾルの形態で用いることができ、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ニッケル原料及びアルミニウム原料を含む水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸などの酸によって調整することが好ましい。
【0016】
さらにまた、Si原料としては、特に限定されないが、シリカや水ガラス、メタケイ酸ソーダ、珪藻土、メソポーラスシリカ(MCM41)などが好ましい。
また、無機塩基としては、アルカリ金属の炭酸塩や水酸化物などが好ましく、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてよいが、特に炭酸ナトリウムが好適である。この無機塩基の使用量は、次の工程において、前記酸性水溶液と、塩基性水溶液を混合した場合の混合液が実質上中性から塩基になるように選ぶのが有利である。
なお、上記アルミニウム原料やSi原料は、脱硫剤に無機酸化物成分を加えるために用いるものである。
【0017】
次に、このようにして調製した各水溶液を、それぞれ25〜90℃に加温し、両者をできるだけ素早く混合する。そして25〜90℃において0.5〜3時間程度撹拌し、反応を完結させる。そしてこの沈殿物をろ過、水洗後、次いで、この固形物を公知の方法により50〜150℃程度の温度で乾燥処理する。このようにして得られた乾燥処理物を、好ましくは200〜450℃の範囲の温度において1〜5時間焼成する。
【0018】
そして、上記のようにして得られた焼成体に、ルテニウム原料をイオン交換水に溶解した水溶液を含浸担持し、乾燥後、アルカリ性水溶液でルテニウム成分を不溶・固定化し、ろ過・水洗・乾燥する。
ルテニウム原料としては、特に限定されないが、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウムなどの水溶性ルテニウム金属塩およびその水和物が好適に使用できる。
【0019】
また、ルテニウム成分を固定化するのに用いるアルカリ性水溶液としては、特に限定されないが、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の水溶液を使用できる。
次いで、上記ルテニウム成分の含浸、固定化物を乾燥させる際の温度としては120℃以下であることが好ましい。120℃以下であれば、酸化ルテニウムの生成を抑制でき、後の還元工程を効率化することができる。また、乾燥方法は特に限定されず、常圧での乾燥、減圧での乾燥、空気中での乾燥、不活性ガス雰囲気下での乾燥を任意に選ぶことができる。
【0020】
<脱硫方法>
上記のようにして調製した脱硫剤は、脱硫反応に供す前に、還元処理しておくことが好ましい。これにより、脱硫剤の含有金属が活性化され、硫黄分を吸着しやすい状態となる。還元方法は、水素、CO等による気相還元、ホルムアルデヒド、エタノール等を用いた液相還元等の公知の方法を用いることが可能であるが、気相による水素化還元が好ましく、この場合、水素雰囲気で200〜500℃、より好ましくは300〜450℃の温度で行うことが好ましい。
なお、水素化還元処理は、実際の脱硫器内(オンサイト)でも、事前の水素化還元処理装置(オフサイト)でもかまわないが、使用脱硫器の耐熱性などを考慮するとオフサイト還元が好ましい。さらにオフサイト水素化還元処理においては、還元処理後に脱硫剤の安定性を向上させるために、酸素や二酸化炭素などによる安定化処理を施すことがさらに好ましい。
【0021】
本発明の脱硫剤を用いて炭化水素の脱硫を行うには、通常、吸着槽に脱硫剤を充填し、吸着槽で原料炭化水素を脱硫剤と接触することにより脱硫が行われる。炭化水素と脱硫剤を接触させる方法としては、一般的には、固定床式脱硫剤床を吸着槽内に形成し、原料を吸着槽の下部に導入し、固定床の下から上に通過させ、吸着槽の上部から生成油を流出させることが好ましい。
【0022】
脱硫反応の条件としては特に規定されないが、圧力は常圧(0.1MPa)以上が好ましく、さらには0.1〜1.1MPaが好ましい。圧力を0.1MPa以下にするには減圧装置など特殊な機器が必要となり、経済的に好ましくない。逆に圧力を1.1MPa以上とするには脱硫器や供給ポンプの耐圧が必要となり経済的に好ましくない。
また、温度は0〜400℃が好ましく、より好ましくは100〜300℃、更に好ましくは140〜300℃である。低温すぎると吸着脱硫速度が低下し、逆に高温すぎる場合には脱硫剤中のニッケル成分が凝集して脱硫サイト数が減少し、脱硫性能が低下する恐れがある。
また、液空間速度(LHSV)は0.01〜100hr−1、より好ましくは0.1〜20hr−1が好ましい。
【0023】
原料とする炭化水素としては灯油、ジェット燃料、ナフサ、ガソリン、LPG、天然ガスが好ましく、市場における流通度や取り扱いの簡便さから特に灯油が好ましい。灯油としては、硫黄分が80質量ppm程度のものまでなら本願の脱硫剤による所望の効果が得られる。
脱硫条件を上記範囲で適当に選択することにより、硫黄分をppbレベルに低減した炭化水素を長時間得ることができる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例における脱硫剤の物性、及び炭化水素(生成油)中の硫黄分の機器分析方法を以下に示す。
【0025】
<脱硫剤の比表面積測定>
BET(Braunauer−Emmett−Tailor specific surface area)比表面積の測定には、日本ベル社製表面積測定装置(Belsorp Mini)を用いた。試料約200〜300mgを精秤し、これを石英製の試料管に充填し、10-1〜10-3mmHg台に減圧しながら室温から400℃まで1時間かけて昇温し、減圧下、同温度で3時間保持して脱気処理を行った。その後、減圧しながら室温まで降温させ、高純度ヘリウムガスで置換し、脱気後の試料重量を精秤した。この後、液化窒素温度で窒素吸着を行い、比表面積を測定した。
<炭化水素中の硫黄分析>
炭化水素中の硫黄分析は、HOUSTON ATLAS社製Thermo Onix XVIを用いた。
【0026】
実施例1;Ni共沈+Ru含浸
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N HNO水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO)・6HOを159g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けた。次いで、RuCl・nHO(小島化学薬品製、Ru含有量41mass%、n=1〜3)2.3gをイオン交換水11.4gに溶解させた水溶液に上記メッシュ破砕したもの30gを1時間浸漬し、該メッシュ破砕したものに該水溶液を含浸担持させ、乾燥後、7規定(mol/L)のNH水150gに1時間漬け、ろ過後、イオン交換水2Lでろ過洗浄、120℃で乾燥し、脱硫剤1を得た。
【0027】
実施例2;Ni共沈+Ru含浸
1NHNO水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO)・6HOを160g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)36.4g、炭酸ナトリウム99.4gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けた。次いで、RuCl・nHO(小島化学薬品製、Ru含有量41mass%、n=1〜3)0.4gをイオン交換水11.4gに溶解させた水溶液にメッシュ破砕したもの30gを1時間浸漬し、該メッシュ破砕したものに該水溶液を含浸担持させ、乾燥後、7N NH水150gに1時間漬け、ろ過後、イオン交換水2Lでろ過洗浄し、120℃で乾燥し、脱硫剤2を得た。
【0028】
実施例3;Ni共沈+Ru含浸
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.9g、1NHNO水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO)・6HOを140g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)53.3g、炭酸ナトリウム99.4gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けた。次いで、RuCl・nHO(小島化学薬品製、Ru含有量41mass%、n=1〜3)5.4gをイオン交換水11.4gに溶解させた水溶液に上記メッシュ破砕したもの30gを1時間浸漬し、該メッシュ破砕したものに該水溶液を含浸担持させ、乾燥後、7N NH水150gに1時間漬け、ろ過後、イオン交換水2Lでろ過洗浄し、120℃で乾燥し、脱硫剤3を得た。
【0029】
実施例4;NiRu共沈
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1NHNO水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO)・6HOを164g、RuCl・nH2O(小島化学薬品製、Ru含有量41mass%、n=1〜3)3.6g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)26.7g、炭酸ナトリウム99.4gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、脱硫剤4を得た。
【0030】
比較例1;Ni共沈
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N HNO水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO)・6HOを159g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、脱硫剤5を得た。
【0031】
比較例2;NiCu共沈
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N HNO水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO)・6HOを149g、Cu(NO)・4HOを7.9g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、脱硫剤6を得た。
【0032】
比較例3;NiZn共沈
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N HNO水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO)・6HOを149g、Zn(NO)・6HOを8.9g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、脱硫剤7を得た。
【0033】
<実施例1〜4、比較例1〜3の脱硫剤の灯油脱硫試験>
脱硫剤1〜7を用い、灯油の脱硫試験を行い、脱硫性能を比較した。この脱硫試験では、初留温度148℃、10%留出温度172℃、30%留出温度185℃、50%留出温度202℃、70%留出温度225℃、90%留出温度251℃、終点281℃の蒸留性状を有し、硫黄分6質量ppmを含むJIS 1号灯油を用いた。この用いた灯油の性状を表1に示す。
まず、脱硫反応に先立ち、脱硫剤を還元・活性化した。脱硫剤1〜3および5〜7については、内径16mmのSUS製反応管に脱硫剤11.6mlを充填した。そして、反応管を400℃に昇温し、常圧下、水素気流中で3時間保持することによって、脱硫剤を還元・活性化した。
一方、脱硫剤4については、内径16mmのSUS製反応管に脱硫剤20mlを充填した。水素ガス流通下で400℃まで昇温し、400℃で3時間保持後、室温まで冷却し、その後希釈酸素雰囲気下で100℃以下で酸化安定化した。次いで酸化安定化した脱硫剤を抜き出し、そのうち11.6mlを別の内径16mmのSUS製反応管に充填した。そしてその反応管を220℃に昇温し、常圧下、水素気流中で3時間保持することによって、脱硫剤を還元・活性化した。
その後、上記JIS 1号灯油を、圧力0.4MPa、温度220℃、液空間速度10hr-1で、上記活性化された脱硫剤が入った各反応管に流通させ、反応管の下流で生成油を1時間ごとに採取した。採取した生成油中の硫黄分が50質量ppbを越えるまで脱硫実験を継続し、50質量ppbを破過するまでの時間を50質量ppb破過時間とした。結果を表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
上記結果より、特定量のニッケルおよびルテニウムを含む本発明の脱硫剤は、50質量ppb破過時間を著しく延長し、長寿命の脱硫剤であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルを酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、ルテニウムを酸化物(RuO)換算で0.1〜12質量%、及び無機酸化物を含有することを特徴とする炭化水素用脱硫剤。
【請求項2】
無機酸化物が、SiO、Al、およびSiO-Alのうちいずれか1つもしくは2つ以上の組合せである請求項1に記載の炭化水素用脱硫剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の脱硫剤を用い、反応温度0〜400℃、反応圧力0.1MPa以上、液空間速度0.01〜100hr−1の条件下で、炭化水素中の硫黄分を50質量ppb以下にする、炭化水素の脱硫方法。

【公開番号】特開2007−224212(P2007−224212A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48866(P2006−48866)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】