説明

炭化水素系燃料の製造方法および炭化水素系燃料製造設備

【課題】製鉄所の副生ガスから液化貯蔵可能な炭化水素系燃料を効率的に製造することのできる炭化水素系燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】原料ガスである副生ガスを圧縮機3により所定の圧力まで昇圧し、昇圧された副生ガスを触媒反応器4に供給して副生ガスに含まれる水素と一酸化炭素から炭化水素系燃料を合成した後、触媒反応器4から排出されたオフガスを炭化水素系燃料の液化温度まで冷却し、冷却されたオフガスを気液分離器6により液体成分と気体成分とに分離して炭化水素系燃料を製造するに際して、気液分離器6により液体成分から分離された気体成分に含まれる未反応の燃料成分を膜分離法または物理的吸着法により非燃料成分と分離して未反応の燃料成分を回収し、回収された未反応の燃料成分を原料ガスとして再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所等で発生する副生ガスからジメチルエーテルなどの液化貯蔵可能な炭化水素系燃料を製造する方法と設備に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所ではコークス炉、高炉、転炉などを操業した際に、副生ガスと呼ばれるガスが副産物として発生し、このガスには窒素、二酸化炭素などのほかに水素、一酸化炭素、メタンといった燃料として利用可能な成分が含まれていることから、製鉄所の発電所や加熱炉などにおいて燃焼熱を発生させる用途に使用されている。
しかし、製鉄所で発生する副生ガスはその発生量や消費量が時々刻々と変動する。このため、数万〜数十万mの容積を有するガスホルダーを用いて副生ガスの需給量を調整しているが、このようなガスホルダーを用いても副生ガスの需給量を調整できる時間は数分から数十分程度と非常に短い。そこで、副生ガスの成分の一部をメタノール(CHOH)、エタノール(CHCOOH)、ジメチルエーテル(CHOCH)などの炭化水素系燃料に転換して液化貯蔵可能な燃料として用いることが従来から提案されており、特に、ジメチルエーテルはメタノールやエタノールに比べて、より低い温度と圧力で合成が可能であると共に常温常圧で気体であり、LPGやLNGと同様な使用が可能であることから、副生ガスを触媒に接触させ、副生ガスに含まれる水素と一酸化炭素とを触媒により化学反応させてジメチルエーテルを製造する方法が知られている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかし、特許文献1〜3に開示された方法を用いてジメチルエーテルを製造する場合、原料ガスとしての副生ガス中には水素と一酸化炭素との反応に関わらない不活性成分(窒素、メタンなど)が存在するため、水素と一酸化炭素の分圧は天然ガスを原料とする場合に比べて低くなってしまい、水素と一酸化炭素がジメチルエーテルに反応変化する割合(転化率)は2割程度と低い。そのため、副生ガスの中でも熱量の高いコークス炉ガスを原料ガスとして大量に消費してもジメチルエーテルを得られる量はわずかであり、昨今の原料価格高騰、炭酸ガス排出量削減要求に伴う還元材比の低減、溶銑配合比率の低下傾向などによって副生ガスの発生量が減少している状況では、特許文献1〜3に開示された方法を採用することはできない。
【0004】
また、副生ガスに含まれる水素と一酸化炭素とを触媒により化学反応させてジメチルエーテルを合成する触媒反応器から排出されるガス(オフガス)中には、ジメチルエーテル以外に未反応の副生ガス成分やジメチルエーテル合成時に副生する二酸化炭素が含まれる。そのため、このオフガスからジメチルエーテルとその他の成分とに分離する必要がある。しかし、触媒反応器からのオフガスをジメチルエーテルとその他の成分とに分離するためには、オフガスを−20℃あるいは−40℃に冷却する必要があるため、特許文献1〜3に開示された方法では、触媒反応器からのオフガスを冷却するための設備と動力を必要とする。
そこで、反応後のガスからジメチルエーテルを分離する方法として、反応後のガスにメタノールを添加し、添加されたメタノールにジメチルエーテルを吸収させて分離する方法が提案されている(特許文献4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−212259号公報
【特許文献2】特開2002−155003号公報
【特許文献3】特開2002−155004号公報
【特許文献4】特開2004−091327号公報
【特許文献5】特開2006−063046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献4あるいは特許文献5に開示された方法は、メタノールを別途用意する必要があるとともに、メタノールとジメチルエーテルとの混合物からジメチルエーテルを分離する操作に設備と動力を要するという問題がある。また、原料ガスとして製鉄所の副生ガスを用いると、副生ガスは二酸化炭素の濃度が高いため、未反応ガスとジメチルエーテルとを分離した後に、ジメチルエーテルから分離された未反応ガスを原料ガスとして再利用しようとすると水素と一酸化炭素との反応率が低下するという問題もある。
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、製鉄所の副生ガスから液化貯蔵可能な炭化水素系燃料を効率的に製造することのできる炭化水素系燃料の製造方法と炭化水素系燃料製造設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、原料ガスに含まれる水素と一酸化炭素から触媒により炭化水素系燃料を合成する触媒反応器から排出されたオフガスを炭化水素系燃料の液化温度まで冷却し、冷却されたオフガスを液体成分と気体成分とに分離して炭化水素系燃料を製造するに際して、液体成分から分離された気体成分が加圧状態であることに着目し、これを物理的吸着法または膜分離法によって非燃料成分と分離することにより、未反応の燃料成分を含むガスの二酸化炭素濃度を低減することで、未反応の燃料成分を原料ガスとして再利用可能であることを見出した。
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、製鉄所で発生する副生ガスを原料ガスとして炭化水素系燃料を製造する方法であって、前記原料ガスを昇圧し、触媒反応を用いて、昇圧した原料ガスに含まれる水素と一酸化炭素とから炭化水素系燃料を合成した後、液化温度まで冷却し、液体成分と気体成分とに分離して炭化水素系燃料を製造するに際して、前記液体成分から分離された気体成分に含まれる未反応の燃料成分を膜分離法または物理的吸着法を用いて回収し、未反応の燃料成分を原料ガスとして再利用することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の炭化水素系燃料の製造方法において、前記液体成分から分離された気体成分の圧力を前記原料ガスの昇圧用エネルギとして利用することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2記載の炭化水素系燃料の製造方法において、前記副生ガスが転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスのうちいずれか1種または2種以上の混合ガスであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、製鉄所で発生する副生ガスを原料ガスとして炭化水素系燃料を製造する設備であって、前記原料ガスから不純物を除去する不純物除去器と、この不純物除去器を通過した原料ガスを脱硫処理する脱硫処理器と、この脱硫処理器により脱硫処理された原料ガスを所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、この圧縮機により昇圧された原料ガスに含まれる水素と一酸化炭素とから炭化水素系燃料を触媒により合成する触媒反応器と、この触媒反応器から排出されたオフガスを炭化水素系燃料の液化温度まで冷却するガス冷却器と、このガス冷却器により冷却されたオフガスを液体成分と気体成分とに分離する気液分離器と、この気液分離器により気体成分から分離された液体成分を炭化水素系燃料として貯蔵する燃料貯蔵容器と、前記気液分離器により液体成分から分離された気体成分に含まれる未反応の燃料成分を膜分離法または物理的吸着法により非燃料成分と分離して回収する未反応燃料成分回収器と、この未反応燃料成分回収器により回収された未反応の燃料成分を貯蔵するバッファタンクと、このバッファタンクに貯蔵された燃料成分を原料ガスの一部として前記圧縮機に供給する回収成分供給ラインと、を備えたことを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項4記載の炭化水素系燃料製造設備において、前記気液分離器により液体成分から分離された気体成分の圧力を利用して前記圧縮機を駆動するガスタービンと、をさらに備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1,3及び4記載の発明によれば、触媒反応器からのオフガスに含まれる未反応の燃料成分を二酸化炭素などの非燃料成分と分離して回収することができ、これにより、回収された未反応の燃料成分を原料ガスとして再利用する際に原料ガスの二酸化炭素濃度が高くなって水素と一酸化炭素との反応率が低下することを抑制できるので、製鉄所の副生ガスからジメチルエーテルなどの液化貯蔵可能な炭化水素系燃料を効率的に製造することができる。
請求項2及び5記載の発明によれば、気液分離器により液体成分から分離された気体成分の圧力を圧縮機の動力源として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る炭化水素系燃料の製造方法に用いられる炭化水素系燃料製造設備の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る炭化水素系燃料製造設備の概略構成例を示す図であり、本発明の一実施形態に係る炭化水素系燃料製造設備は、不純物除去器1、脱硫処理器2、圧縮機3、触媒反応器4、ガス冷却器5、気液分離器6、燃料貯蔵容器7、ガスタービン8、未反応燃料成分回収器の一例としての吸着分離装置9、バッファタンク16および回収成分供給ライン10を備えている。
【0014】
不純物除去器1は液化貯蔵可能な炭化水素系燃料を合成するための原料ガス(転炉ガス、コークス炉ガス、高炉ガスのうちいずれか1種または2種以上の混合ガス)に含まれるダスト、タールミストなどの不純物を除去するものであって、この不純物除去器1により不純物が除去された原料ガスは脱硫処理器2に供給されるようになっている。また、不純物除去器1は本実施形態では二つのフィルタ1a,1bを有し、これらのフィルタ1a,1bに原料ガスを交互に供給して不純物を除去するように構成されている。
【0015】
脱硫処理器2は不純物除去器1からの原料ガスを脱硫処理するものであって、例えば酸化鉄などを利用して原料ガスを脱硫処理するように構成されている。
圧縮機3は脱硫処理器2からの原料ガスを所定の圧力(例えば、得ようとする燃料がジメチルエーテルの場合は3〜5MPa、メタノールの場合は5〜10MPa、エタノールの場合は8MPa)まで昇圧するものであって、この圧縮機3により昇圧された原料ガスは触媒反応器4に供給されるようになっている。
【0016】
触媒反応器4は原料ガスに含まれる水素と一酸化炭素とから触媒によりジメチルエーテル、メタノール、エタノール、直鎖パラフィン、直鎖オレフィンなどの炭化水素系燃料(二酸化炭素より高温、低圧で液化する化合物)を生成するものであって、この触媒反応器4で生成される炭化水素系燃料がジメチルエーテルやメタノールの場合には銅−アルミナ系の触媒が触媒反応器4に収容されている。また、触媒反応器4で生成される炭化水素系燃料がエタノールの場合にはニッケル−モリブデン系の触媒が触媒反応器4に収容されている。
【0017】
また、触媒反応器4内での反応温度は、ジメチルエーテルの場合は260〜300℃、メタノールの場合は200〜300℃、エタノールの場合は300℃以上とすることが望ましい。
ガス冷却器5は触媒反応器4から排出されたオフガスを炭化水素系燃料の液化温度(例えば、ジメチルエーテルの場合は−40℃、エタノールの場合は40℃)まで冷却するものであって、このガス冷却器5により冷却されたガスは気液分離器6に供給されるようになっている。
【0018】
気液分離器6はガス冷却器5により冷却されたオフガスを液体成分と気体成分とに分離するものであって、この気液分離器6により気体成分から分離された液体成分は液化貯蔵可能な炭化水素系燃料として燃料貯蔵容器7に貯蔵されるようになっている。また、気液分離器6により液体成分から分離された気体成分はガスタービン8に供給されるようになっている。
ガスタービン8は気液分離器6により液体成分から分離された気体成分の圧力を回転エネルギに変換して圧縮機3を駆動するものであって、このガスタービン8から排出されたガスは吸着分離装置9に供給されるようになっている。
【0019】
吸着分離装置9は気液分離器6により液体成分から分離された気体成分を、水素を多量に含む成分と水素濃度の比較的低い成分とに分離するものであって、この吸着分離装置9により分離された水素を多量に含む成分は、原料ガスの一部として、いったんバッファタンク16に貯蔵された後に回収成分供給ライン10を通じて圧縮機3に供給され、脱硫処理器2からの原料ガスと共に所定の圧力まで昇圧された後、触媒反応器4に再供給されるようになっている。また、吸着分離装置9は本実施形態では二つの吸着器9a,9bを有し、これらの吸着器9a,9bに触媒反応器4からのオフガスを交互に供給して水素などの未反応燃料成分を回収するように構成されている。
【0020】
なお、吸着分離装置9から排出された水素濃度の比較的低い成分にも一酸化炭素やメタン等の燃料成分が含まれているので、工場や発電所などの製鉄所施設11で燃料ガスとして利用される。
上述のように、気液分離器6により液体成分から分離された気体成分から、吸着分離装置9で未反応の燃料成分を回収し、回収された未反応の燃料成分を原料ガスとして再利用することで、回収された未反応の燃料成分を原料ガスとして再利用する際に原料ガスの二酸化炭素濃度が高くなって水素と一酸化炭素との反応率の低下を抑制できる。したがって、製鉄所の副生ガスからジメチルエーテルなどの液化貯蔵可能な炭化水素系燃料を効率的に製造することができる。
【0021】
また、気液分離器6により液体成分から分離された気体成分の圧力を圧縮機3の動力源として利用することで、製鉄所の副生ガスからジメチルエーテルなどの液化貯蔵可能な炭化水素系燃料を製造する際における電力等の外部エネルギ投入を削減することができる。
なお、上述した本発明の一実施形態では、気液分離器6により液体成分から分離された気体成分に含まれる未反応の燃料成分を回収する方法として、PSA(Pressure Swing Adsorption)法、TSA(Temperature Swing Adsorption)法などの物理的吸着法を用いて回収できるが、これに限られるものではなく、例えば膜分離法を用いて未反応の燃料成分を回収するようにしてもよい。なお、PSA法を用いた場合には、一酸化炭素に対する吸着性の高い吸着剤を使用することによって未反応の一酸化炭素を回収して再利用することができる。
【実施例】
【0022】
触媒反応器4に供給される原料ガスとして、転炉ガス(一酸化炭素:58体積%、水素:1体積%、二酸化炭素:17体積%、窒素:24体積%)と、コークス炉ガス(一酸化炭素:7体積%、水素:54体積%、二酸化炭素:3体積%、窒素:7体積%、メタン:29体積%)と、未反応燃料成分回収器9により回収された水素を多量に含むガス(一酸化炭素:13体積%、水素:63体積%、二酸化炭素:8体積%、窒素:10体積%、メタン:7体積%)を46:33:22の割合で混合した混合ガス(水素:32体積%、一酸化炭素:32体積%、二酸化炭素:10体積%、窒素:15体積%、メタン:11体積%、熱量:2800kcal/Nm)を用いた。そして、この混合ガスを圧縮機3により3MPaまで昇圧した後、触媒反応器4に温度:260℃、流量:6000L/kg−cat/hrの条件で供給し、触媒反応器4に収容された触媒(酸化銅−酸化亜鉛−アルミナからなるメタノール合成用触媒とγ−アルミナからなるメタノール脱水用触媒)に接触させた後、触媒反応器4から排出した。
【0023】
次に、触媒反応器4から排出されたガスをガス冷却器5により40℃まで冷却した後、気液分離器6に供給してガス成分と液体成分とに分離し、気液分離器6によりガス成分から分離された液体成分を液化貯蔵可能な炭化水素系燃料として燃料貯蔵容器7に貯蔵した。
このとき、気液分離器6により液体成分から分離されたガス成分(一酸化炭素:25体積%、水素:25体積%、二酸化炭素:17体積%、窒素:19体積%、メタン:14体積%)をガスタービン8に供給し、圧縮機3の動力源として利用した後、PSA法を利用した未反応燃料成分回収器9に供給した。未反応燃料成分回収器9は同じ吸着剤を充填した二本の吸着器9aおよび9bからなり、交互にガスの吸着と放出を繰り返すことで連続的に使用した。すなわち、以下に述べる(1)の工程と(2)の工程を繰り返すことでガスタービン8に供給された後のガスの未反応燃料成分回収器9への供給と、同回収器9からのガスの放出を連続的に行なえるようにした。
【0024】
(1)開閉弁12aと13bを開、12bと13aを閉として、吸着器9b内のガスを開閉弁13bを通して吸着器9b内の圧力が100kPa程度になるまでガスを放出すると同時に、吸着器9aにガスタービン8に供給された後のガスを吸着器9a内の圧力が800kPaに達するまで供給した。
(2)吸着器9a内の圧力が800kPaに達した時点で開閉弁12aと13bを閉、12bと13aを開として、吸着器9a内のガスを開閉弁13aを通して吸着器9a内の圧力が100kPa程度になるまでガスを放出すると同時に、吸着器9bにガスタービン8に供給された後のガスを同様に吸着器9b内の圧力が800kPaに達するまで供給した。
【0025】
ここで未反応燃料成分回収器9から放出されるガスは開閉弁14および開閉弁15によって、バッファタンク16および圧縮機3を介して触媒反応器4に供給されて再利用される成分と、工場や発電所などの製鉄所施設11に供給されて利用される成分とに分けられる。この操作は、開閉弁14と開閉弁15の開閉操作を、先述のガスを放出する工程にある吸着器(9aあるいは9b)の圧力に連動させることで行った。
【0026】
すなわち、吸着器(9aあるいは9b)からの放出が開始した時点で開閉弁14を開、開閉弁15を閉として、ガス放出中の吸着器内の圧力が800kPaから400kPaに達するまで放出される水素を多量に含むガス(一酸化炭素:13体積%、水素:63体積%、二酸化炭素:8体積%、窒素:10体積%、メタン:7体積%)をバッファタンク16に供給し、ガス放出中の吸着器内の圧力が400kPaに達した時点で開閉弁14を閉、開閉弁15を開として、ガス放出中の吸着器内の圧力が400kPaから100kPa程度に達するまで放出される水素濃度の比較的低いガス(一酸化炭素:30体積%、水素:12体積%、二酸化炭素:20体積%、窒素:22体積%、メタン:16体積%)を工場や発電所などの製鉄所施設11に供給した。
【0027】
なお、未反応燃料成分回収器9から開閉弁14を介して供給される水素を多量に含むガスは、上述のように間歇的に供給されるため、いったんバッファタンク16に貯められたのち、流量制御弁17によって連続的に圧縮機3を介して触媒反応器4に供給されるようにした。
このとき、回収成分供給ライン10を通じて供給されるガスを除く原料ガスに含まれる水素と一酸化炭素がジメチルエーテルやメタノールに転化する転化率(反応率)を求めたところ、26.8%であった。これは、気液分離器6により液体成分から分離されたガス成分を未反応燃料成分回収器9に供給しないでジメチルエーテルなどの炭化水素系燃料を製鉄所の副生ガスから製造した場合の24.4%に比べ、転化率が約1割程度向上していた。また、転化率向上による原料ガスである転炉ガスおよびコークス炉ガスの使用量はそれぞれ3%および44%減少した。
【符号の説明】
【0028】
1 不純物除去器
2 脱硫処理器
3 圧縮機
4 触媒反応器
5 ガス冷却器
6 気液分離器
7 燃料貯蔵容器
8 ガスタービン
9 吸着分離装置(未反応燃料成分回収器)
10 回収成分供給ライン
11 製鉄所施設
12〜15 開閉弁
16 バッファタンク
17 流量制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄所で発生する副生ガスを原料ガスとして炭化水素系燃料を製造する方法であって、前記原料ガスを昇圧し、触媒反応を用いて、昇圧した原料ガスに含まれる水素と一酸化炭素とから炭化水素系燃料を合成した後、液化温度まで冷却し、液体成分と気体成分とに分離して炭化水素系燃料を製造するに際して、前記液体成分から分離された気体成分に含まれる未反応の燃料成分を膜分離法または物理的吸着法を用いて回収し、未反応の燃料成分を原料ガスとして再利用することを特徴とする炭化水素系燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の炭化水素系燃料の製造方法において、前記液体成分から分離された気体成分の圧力を前記原料ガスの昇圧用エネルギとして利用することを特徴とする炭化水素系燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の炭化水素系燃料の製造方法において、前記副生ガスが転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスのうちいずれか1種または2種以上の混合ガスであることを特徴とする炭化水素系燃料の製造方法。
【請求項4】
製鉄所で発生する副生ガスを原料ガスとして炭化水素系燃料を製造する設備であって、
前記原料ガスから不純物を除去する不純物除去器と、
この不純物除去器を通過した原料ガスを脱硫処理する脱硫処理器と、
この脱硫処理器により脱硫処理された原料ガスを所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、
この圧縮機により昇圧された原料ガスに含まれる水素と一酸化炭素とから炭化水素系燃料を触媒により合成する触媒反応器と、
この触媒反応器から排出されたオフガスを炭化水素系燃料の液化温度まで冷却するガス冷却器と、
このガス冷却器により冷却されたオフガスを液体成分と気体成分とに分離する気液分離器と、
この気液分離器により気体成分から分離された液体成分を炭化水素系燃料として貯蔵する燃料貯蔵容器と、
前記気液分離器により液体成分から分離された気体成分に含まれる未反応の燃料成分を膜分離法または物理的吸着法により非燃料成分と分離して回収する未反応燃料成分回収器と、
この未反応燃料成分回収器により回収された未反応の燃料成分を貯蔵するバッファタンクと、
このバッファタンクに貯蔵された燃料成分を原料ガスの一部として前記圧縮機に供給する回収成分供給ラインと、
を備えたことを特徴とする炭化水素系燃料製造設備。
【請求項5】
前記気液分離器により液体成分から分離された気体成分の圧力を利用して前記圧縮機を駆動するガスタービンと、をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の炭化水素系燃料製造設備。

【図1】
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【公開番号】特開2010−173985(P2010−173985A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20492(P2009−20492)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】