説明

炭化物処理装置

【課題】炭化物の酸洗、水洗、乾燥の各工程を効率良く遂行することができる。
【解決手段】一列に配設され上方へ開放する硫酸槽1、水槽2、乾燥槽3と、これら各槽の近傍を経由するように配設されて直線移動する駆動チェーン71と、各槽に設けられた受け片11,21,31と、脱水汚泥の炭化物を収納する回転可能な多孔ドラム93および直線移動力を回転力に変換してこれを多孔ドラム93に付与するスプロケット64を備えた複数の搬送ユニット6と、各槽を経由するように配設され、搬送ユニット6を各槽の受け片11,21,31へ搬送するホイスト82とを備え、各受け片11,21,31へ搬送された状態で各搬送ユニット6の多孔ドラム93が各槽内へ進入するとともに、スプロケット64が駆動チェーン71に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化物処理装置に関し、特に、乾燥汚泥を炭化した炭化物の発熱量を向上させて、燃料として使用できるようにするための炭化物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥から生じる脱水汚泥を含水率40%程度まで乾燥させて乾燥汚泥とし、これを炭化炉にて炭化して炭化物を得る装置が例えば特許文献1に示されている。ところで、乾燥汚泥を炭化する際に700〜900℃の高温で処理すると自己発熱の無い安全な炭化物が得られるが、その発熱量は2000〜4000kcal/kgと小さいため燃料用途よりも、肥料や土壌改良剤として使用されている。なお、特許文献2には、炭化物を酸性溶液で洗浄することによって塩素分を除去して、ボイラの腐食を防止することが示されている。
【特許文献1】特許第3840583号
【特許文献2】特開2005−8662号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高温処理された炭化物は酸洗して灰分を除去することによって、その発熱量を7000kcal/kg程度まで上昇させられることが知られているが、これを実現するために、酸洗、水洗、乾燥の各工程を効率良く遂行する装置の実現が望まれていた。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、炭化物の酸洗、水洗、乾燥の各工程を効率良く遂行することができる炭化物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本第1発明の炭化物処理装置は、少なくとも各一個が一列に配設され上方へ開放する硫酸槽(1)、水槽(2)、乾燥槽(3)と、これら各槽の近傍を経由するように配設されて直線移動する帯状の単一の直線駆動手段(71)と、各槽に設けられた位置決め手段(11,21,31)と、脱水汚泥の炭化物(M)を収納する回転可能な多孔ドラム(93)および直線移動力を回転力に変換してこれを多孔ドラム(93)に付与する回転駆動手段(64)を備えた複数の搬送ユニット(6)と、各槽を経由するように配設され、搬送ユニット(6)を各槽の位置決め手段(11,21,31)へ搬送する単一の搬送手段(82)とを備え、各位置決め手段(11,21,31)へ搬送された状態で各搬送ユニット(6)の多孔ドラム(93)が各槽内へ進入するとともに、回転駆動手段(64)が直線駆動手段(71)に連結されるようになしたものである。
【0006】
本第1発明においては、多孔ドラム内に炭化物が収納された各搬送ユニットは搬送手段によって、次の処理が行われる硫酸槽、水槽、乾燥槽のいずれかの槽の各位置決め手段へ搬送される。位置決め手段へ搬送された状態で、搬送ユニットの多孔ドラムは各槽内へ進入するとともに、回転駆動手段が直線駆動手段に連結されて多孔ドラムが回転させられる。これにより、多孔ドラム内の炭化物に対して酸洗、水洗、乾燥の各処理が効率的になされる。そしてこの場合、複数の搬送ユニットが単一の搬送手段によって硫酸槽、水槽、乾燥槽のうちの所望の槽へ選択的に搬送され、搬送された後は単一の直線駆動手段によって各搬送ユニットの多孔ドラムが回転させられるから、搬送構造や回転駆動構造が簡素化できる。
【0007】
本第2発明においては、上記直線駆動手段は駆動チェーン(71)を備え、上記回転駆動手段は、上記搬送ユニット(6)が各位置決め手段(11,21,31)へ搬送された状態で駆動チェーン(71)に噛合して当該駆動チェーンの直線移動力を回転力に変換するスプロケット(64)を備えている。本第2発明によれば、直線駆動手段と回転駆動手段を簡易に実現することができる。
【0008】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の炭化物処理装置によれば、炭化物の酸洗、水洗、乾燥の各工程を効率良く遂行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1には炭化物処理装置の全体側面図を示し、図2にはその全体平面図を示す。また、図3には炭化物処理装置の正面図を示す。本実施例においては、炭化物処理装置には二基の硫酸槽1、三基の水槽2、二基の乾燥槽3がこの順に一列に設けられている。また、硫酸槽1の手前(図1,図2の右方)には重量検出器4が設けられている。硫酸槽1、水槽2、乾燥槽3は上方へ開放する例えば塩化ビニル製の角型槽で、一体の装置フレーム5に固定されている。重量検出器4は硫酸槽1等と平面視で同形の角型架台41を有している。
【0011】
上記各槽1,2,3の開口縁および重量検出器4の架台41の奥側と手前側の上面には各一対の、位置決め手段としての受け片11,21,31,42が突設されている。これら受け片11,21,31,42には詳細を後述する搬送ユニット6の支持軸61を受け入れる凹部が上方へ向けて形成されている。なお、重量検出器4の受け片42はロードセル43(図1)上に設けられており、受け片42によって支持された搬送ユニット6の重量を測定できるようになっている。また、乾燥槽3の内壁には加熱ヒータが設けられている。
【0012】
重量検出器4および各槽1,2,3の近傍手前側にはこれらに沿って長手方向へ、直線駆動手段を構成する駆動チェーン71が配設されている。この駆動チェーン71は前後端が、装置フレーム5に設けたスプロケット72,74に懸架されて長円状に折り返されている。駆動チェーン71の前端(図1、図2の右端)が懸架されたスプロケット72は、重量検出器4の前方(図1、図2の右方)の装置フレーム5上に設けたモータ73の出力軸731(図2)に結合されている。
【0013】
重量検出器4および各槽1,2,3の上方にはこれらに沿って直線状に延びる走行レール81が設けられており、走行レール81はその前後端が装置フレーム5の支柱に固定支持されている。この走行レール81上には搬送手段を構成する公知のホイスト82がこれに沿って移動可能に設けられており、ホイスト82からは下方へ、上下動可能な吊りフック83が垂下させられている。この吊りフック83には搬送ユニット6が脱着可能に吊り下げられる。なお、ホイスト82の走行および吊りフック83の上下動はペンダントにより、あるいは制御盤からの遠隔操作により行い、重量検出器4や各槽1,2,3上でのホイスト82の停止位置は近接スイッチ等で検出される。
【0014】
搬送ユニット6の詳細を図4に示す。搬送ユニット6は平面視および側面視で長方形(図1、図2)のフレーム62を備えており、フレーム62上端にはその長辺に沿って、炭化物処理装置の幅方向へ延びる支持軸61が前後(図1の左右)位置に平行に設けられている。これら支持軸61の中間のフレーム62上には支持軸61と平行に回転軸63が設けられてその一端に回転駆動手段を構成するスプロケット64が装着されている。回転軸63の下方にはフレーム62に支持されて回転軸65が設けられており、これに設けたスプロケット67と上記回転軸63に設けたスプロケット66の間に駆動チェーン68が張設してある。回転軸65にはギア91が設けてあり、当該ギア91は、回転軸65の下方でフレーム62に支持された回転軸69に設けたギア92に噛合している。回転軸69には閉鎖円筒状の多孔ドラム93がその中心で固定されている。
【0015】
多孔ドラム93の外壁は本実施形態では50〜200メッシュの、耐硫酸性の金属材ないし樹脂材よりなる網体で構成されている。多孔ドラム93の周壁は図5に示すように、周方向の一箇所で切り離されるとともに、切り離された両端縁が内外方向で所定量重なるようにして周方向へ開放する炭化物装入用の開口931が形成されている。これにより、多孔ドラム93を、開口の向く方向(図5の矢印方向)へ回転させれば、収納された炭化物Mが零れ出ることはない。なお、多孔ドラム93の外壁は必ずしも網体で構成する必要はなく多孔板で構成しても良い。また、多孔ドラム93を、一対の半円筒体を分離可能に結合した構造とし、これら半円筒体を分離して炭化物Mを収納ないし排出するようにしても良い。
【0016】
上記構造の炭化物処理装置において、ホイスト82の吊りフック83に回転軸63を係止させて搬送ユニット6全体を吊り下げ、重量検出器4の受け片42上に搬送ユニット6の支持軸61を載置するとロードセル43によって搬送ユニット6の重量が検出される。この状態でホイスト82の吊りフック83への係止を解消すれば、ホイスト82は他の搬送ユニット6の搬送作業を行うことができる。検出重量を確認しつつ開口931(図5)から多孔ドラム93内に必要量の炭化物Mを装入する。炭化物Mが多孔ドラム93内に装入された搬送ユニット6は再びホイスト82の吊りフック83に吊り下げられて、空いている硫酸槽1へ搬送される。硫酸槽1の受け片11は重量検出器4の受け片42よりも低い位置にあり、硫酸槽1へ搬送された搬送ユニット6の支持軸61が受け片11上に載置され位置決めされて、回転軸63の吊りフック83への係止が解消された状態で、多孔ドラム93は硫酸液中に浸漬される。同時に、スプロケット64が、長円状に懸架された駆動チェーン71の上側部に係合して(図4参照)、駆動チェーン71の直線移動に伴って回転させられ、この回転力は、スプロケット66から駆動チェーン68を介してスプロケット67およびこれと一体の回転軸65に伝達される。そしてギア91よりこれに噛合するギア92および回転軸69へと伝達されて多孔ドラム93が硫酸液中で回転させられる。これに伴い、多孔ドラム93内に侵入した硫酸液によって炭化物Mが洗浄されて、その灰分が除去される。
【0017】
酸洗を終了した後は、搬送ユニット6は再びホイスト82の吊りフック83に吊り下げられて水槽2へ搬送される。水槽2の受け片21上に搬送ユニット6の支持軸61が載置され位置決めされて、回転軸63の吊りフック83への係止が解消されると、ホイスト82は他の搬送ユニット6の搬送作業を行うことができる。この状態で、多孔ドラム93は水中に浸漬され、同時に、スプロケット64が駆動チェーン71の上側部に係合して、硫酸槽1におけると同様に、多孔ドラム93に回転力が付与されてこれが水中で回転させられる。これにより、多孔ドラム93内に侵入した水によって炭化物Mに付着した硫酸液が洗い流される。
【0018】
水洗を終了した後は、搬送ユニット6は再びホイスト82の吊りフック83に吊り下げられて乾燥槽3へ搬送される。乾燥槽3の受け片31上に搬送ユニット6の支持軸61が載置され位置決めされて、回転軸63の吊りフック83への係止が解消されると、ホイスト82は他の搬送ユニット6の搬送作業を行うことができる。搬送ユニット6が受け片31上に位置決めされた状態では、多孔ドラム93は乾燥槽3内のヒータに対向する位置へ進入し、同時に、スプロケット64が駆動チェーン71の上側部に係合して、硫酸槽1におけると同様に、多孔ドラム93に回転力が付与されてこれが乾燥槽3内で回転させられる。これにより、多孔ドラム93内の炭化物に付着した水が蒸発させられ除去される。
【0019】
このようにして、空いている重量検出器4や硫酸槽1、水槽2、乾燥槽3へ一台のホイスト82によって各搬送ユニット6が搬送され、共通の一本の駆動チェーン71によって各搬送ユニット6の多孔ドラム93が回転させられる。このようにして、複数の搬送ユニットが単一のホイストによって硫酸槽、水槽、乾燥槽のうちの所望の槽へ搬送されるとともに、搬送された後は単一の駆動チェーンによって各搬送ユニットの多孔ドラムが回転させられるから、搬送構造や回転駆動構造を簡素化することができる。なお、硫酸槽、水槽、乾燥槽や搬送ユニットの設置数は上記実施形態に限られるものではなく、炭化物の処理量や処理時間に応じて最も効率的な設置数を選択する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】炭化物処理装置の全体側面図である。
【図2】炭化物処理装置の全体平面図である。
【図3】炭化物処理装置の全体正面図である。
【図4】搬送ユニットの全体側面図である。
【図5】多孔ドラムの概略断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1…硫酸槽、11…受け片(位置決め手段)、2…水槽、21…受け片(位置決め手段)、3…乾燥槽、31…受け片(位置決め手段)、6…搬送ユニット、64…スプロケット(回転駆動手段)、71…駆動チェーン(直線駆動手段)、82…ホイスト(搬送手段)、93…多孔ドラム、M…炭化物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも各一個が一列に配設され上方へ開放する硫酸槽、水槽、乾燥槽と、これら各槽の近傍を経由するように配設されて直線移動する帯状の直線駆動手段と、前記各槽に設けられた位置決め手段と、脱水汚泥の炭化物を収納する回転可能な多孔ドラムおよび直線移動力を回転力に変換してこれを前記多孔ドラムに付与する回転駆動手段を備えた複数の搬送ユニットと、前記各槽を経由するように配設され、前記搬送ユニットを各槽の位置決め手段へ搬送する単一の搬送手段とを備え、前記各位置決め手段へ搬送された状態で前記各搬送ユニットの多孔ドラムが各槽内へ進入するとともに、前記回転駆動手段が直線駆動手段に連結されるようになした炭化物処理装置。
【請求項2】
前記直線駆動手段はチェーンを備え、前記回転駆動手段は、前記搬送ユニットが前記各位置決め手段へ搬送された状態で前記チェーンに噛合して当該チェーンの直線移動力を回転力に変換するスプロケットを備えている請求項1に記載の炭化物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−100687(P2010−100687A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271537(P2008−271537)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】