説明

炭化物温度の水冷制御方法及び炭化物冷却システム

【課題】炭化物に噴霧する冷却水流量を適切に制御し、炭化物貯留時の発火を確実に防止するとともに炭化物の含水率を最小限に抑えることを可能とした炭化物温度の水冷制御方法及び冷却システムを提供する。
【解決手段】炭化炉1から排出された炭化物10を水冷コンベア2にて搬送冷却し、加湿器3にて水噴霧ノズル4から冷却水を直接噴霧して炭化物を冷却するシステムにおいて、水噴霧ノズル4の冷却水流量を調整する流量制御弁32と、炭化物重量を測定する重量測定手段33と、水冷コンベア下流端の炭化物温度を測定する温度測定手段35とを備えるとともに、温度測定手段35にて測定された炭化物温度と、重量測定手段33にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、発火温度より低い目標温度以下まで炭化物を冷却するための冷却水流量を算出し流量制御弁32を制御する制御装置6を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化炉から排出された高温の炭化物を水冷コンベアで搬送冷却した後、該炭化物に冷却水を噴霧して冷却するシステムにて、該噴霧する冷却水流量を適切に制御するようにした炭化物温度の水冷制御方法及び炭化物冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥や木質バイオマス等の有機性物質を酸素欠乏雰囲気下で所定時間加熱し、炭化物を製造する炭化炉が広く用いられている。炭化炉から排出された炭化物は、300〜700℃の高温で排出されるため、搬送、貯留する際には冷却を行う必要がある。これは、炭化物は低温酸化反応等により発熱する性質を持つため、搬送、貯留する際に炭化物の放熱量より発熱量の方が大きくなると炭化物が発熱、蓄熱し、この熱により炭化物の低温酸化等の発熱反応がより促進され、ある一定の温度を超えると熱暴走して、最悪の場合発火し、火災に至る可能性があるためである。
【0003】
従来、炭化物の冷却には、該炭化物を水冷式スクリューコンベアで搬送冷却し、冷却に不足がある場合には直接冷却水を噴霧して冷却させていた。
例えば特許文献1(特開2006−272180号公報)には、廃棄物を熱分解炉(炭化炉)で熱分解するシステムにて、該熱分解炉の下方に、炭化物を冷却する冷却スクリューコンベアを設けた構成が開示されている。この水冷式スクリューコンベアは外側に冷却ジャケットを持ち、該冷却ジャケットに冷却水を供給することにより炭化物を冷却するようになっている。
【0004】
また、炭化物に冷却水を直接噴霧する構成として、特許文献2(特開2005−232292号公報)には、バイオマス廃棄物を炭化炉で炭化するシステムにて、該炭化炉から排出される炭化物をスクリューコンベアで搬送しながら冷却し、コンベア出口で散水ノズルによって水を散水する構成が開示されている。
さらに特許文献3(特開平11−323345号公報)には、有機物を炭化炉で炭化するシステムにて、炭化物を搬送するスクリューコンベアを直列に複数段配置し、コンベア下流側で炭化物に水を滴下又は噴霧することにより直接冷却する構成が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−272180号公報
【特許文献2】特開2005−232292号公報
【特許文献3】特開平11−323345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では炭化炉出口より炭化物を搬送する際に水冷式スクリューコンベアを用いて冷却を行っているが、炭化物自体の温度変動もしくは炭化物の流量変動により、その冷却が十分でない場合、炭化物の搬送時、貯留時に発火する可能性がある。
そこで、特許文献2及び3に記載では、炭化物に対して冷却水を直接噴霧して冷却し、炭化物の発火抑制を図っているが、この場合炭化物を貯留する間に発火することを防止できる程度に冷却が必要であるものの、噴霧量が過多であると炭化物の含水率が高くなってしまい、炭化物が燃焼し難くなったり炭化物の品質が低下したり、或いは炭化物を燃料又は資源として利用する際に乾燥処理が必要となるなどの問題があり、炭化物に噴霧する冷却水流量の適切な制御が望まれていた。
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、炭化物に噴霧する冷却水流量を適切に制御し、炭化物貯留時の発火を確実に防止するとともに炭化物の含水率を最小限に抑えることを可能とした炭化物温度の水冷制御方法及び冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、炭化炉から排出された炭化物を水冷コンベアにて搬送冷却し、該水冷コンベアの後段に設けられた水冷装置にて前記炭化物に冷却水を直接噴霧して該炭化物を冷却する炭化物温度の水冷制御方法において、
前記水冷コンベアの下流端における炭化物温度と、前記水冷コンベアを移送される炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように冷却水の流量制御を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに、炭化物自体の含水率も制御できる。即ち、本発明では適切な冷却水流量の制御が可能であるため、炭化炉から排出される炭化物の温度、性質或いは水冷コンベアの冷却性能に関わらず、確実に発火を防止できる温度まで炭化物を冷却することができるとともに、冷却水の噴霧量が過多となることなく使用時における炭化物の燃焼を阻害しない含水率に調整できる。
また、水冷コンベアの後段に設けた水冷装置にて冷却水を噴霧するため、炭化物に対してまんべんなく冷却水を噴霧することができる。尚、本発明において冷却水の噴霧とは、冷却水の滴下、流下を含むものとする。
さらに、水冷コンベア下流端の炭化物温度を直接測定するようにしており、一つの温度測定手段と重量測定手段からの測定結果に基づき適切な水冷制御を行うことができるため、簡単な演算処理にて制御が可能で且つ装置構成を簡素化することが可能である。
【0010】
また、炭化炉から排出された炭化物を水冷コンベアにて搬送冷却し、該水冷コンベアの下流端にて前記炭化物に冷却水を直接噴霧して該炭化物を冷却する炭化物温度の水冷制御方法において、
前記水冷コンベアの下流端における炭化物温度と、前記水冷コンベアを移送される炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように冷却水の流量制御を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに、炭化物自体の含水率も制御できる。
また、水冷コンベア下流端に直接冷却水を噴霧し、コンベア自体の撹拌力を利用して炭化物に均一に冷却水を接触させ炭化物を冷却する構成となっているため、冷却装置を設置する必要がなく装置を小型化、低コスト化することができる。
【0012】
さらに、前記水冷コンベアの搬送方向に異なる2点の炭化物温度を夫々測定し、該測定した2点間の温度差及び2点間の距離から降温勾配を求め、該降温勾配と前記温度を測定した地点から水冷コンベア下流端までの距離とから該水冷コンベア下流端における炭化物温度を求めることを特徴とする。
このように、水冷コンベア下流端よりも上流側で測定した異なる2点の炭化物温度から水冷コンベア下流端の炭化物温度を推定し、該推定した炭化物温度に基づき冷却水流量を制御しているため、制御の追従性を向上させることが可能となる。
【0013】
また、炭化炉から排出された炭化物を搬送冷却する水冷コンベアと、該水冷コンベアの後段に設けられ前記炭化物に冷却水を噴霧する水噴霧手段を備えた水冷装置と、該水冷装置から炭化物を受け入れる貯留ホッパとを備えた炭化物の冷却システムにおいて、
前記水噴霧手段の冷却水流量を調整する流量制御弁と、前記貯留ホッパに設けられ炭化物重量を測定する重量測定手段と、水冷コンベア下流端の炭化物温度を測定する温度測定手段とを備えるとともに、
前記温度測定手段にて測定された炭化物温度と、前記重量測定手段にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように前記流量制御弁を制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに、炭化物自体の含水率も制御でき、また、水冷コンベアの後段に設けた水冷装置にて冷却水を噴霧するため、炭化物に対してまんべんなく冷却水を噴霧することができる。
さらに、水冷コンベア下流端の炭化物温度を直接測定するようにしており、一つの温度測定手段と重量測定手段からの測定結果に基づき適切な水冷制御を行うことができるため、簡単な演算処理にて制御が可能で且つ装置構成を簡素化することが可能である。
【0015】
さらに、炭化炉から排出された炭化物を搬送冷却する水冷コンベアと、該水冷コンベアの後段に設けられ前記炭化物に冷却水を噴霧する水噴霧手段を備えた水冷装置と、該水冷装置から炭化物を受け入れる貯留ホッパとを備えた炭化物の冷却システムにおいて、
前記水噴霧手段の冷却水流量を調整する流量制御弁と、前記貯留ホッパに設けられ炭化物重量を測定する重量測定手段と、前記水冷コンベアの搬送方向に異なる2点の炭化物温度を夫々測定する温度測定手段とを備えるとともに、
前記温度測定手段にて測定した2点間の温度差及び前記水冷コンベアの距離から求められる水冷コンベア下流端における炭化物温度と、前記重量測定手段にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために必噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように前記流量制御弁を制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに、炭化物自体の含水率も制御でき、また、水冷コンベアの後段に設けた水冷装置にて冷却水を噴霧するため、炭化物に対してまんべんなく冷却水を噴霧することができる。
さらに、水冷コンベア下流端より上流側で測定した異なる2点の炭化物温度から水冷コンベア下流端の炭化物温度を推定し、該推定した炭化物温度に基づき冷却水流量を制御しているため、制御の追従性を向上させることが可能となる。
【0017】
さらにまた、炭化炉から排出された炭化物を搬送冷却する水冷コンベアと、該水冷コンベアの下流端に設けられ冷却水を噴霧する水噴霧手段と、該水冷コンベアから炭化物を受け入れる貯留ホッパとを備えた炭化物の冷却システムにおいて、
前記水噴霧手段の冷却水流量を調整する流量制御弁と、前記貯留ホッパに設けられ炭化物重量を測定する重量測定手段と、前記水冷コンベアの搬送方向に異なる2点の炭化物温度を夫々測定する温度測定手段とを備えるとともに、
前記温度測定手段にて測定した2点間の温度差及び前記水冷コンベアの距離から求められる水冷コンベア下流端における炭化物温度と、前記重量測定手段にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように前記流量制御弁を制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに、炭化物自体の含水率も制御でき、また、水冷コンベア下流端よりも上流側で測定した異なる2点の炭化物温度から水冷コンベア下流端の炭化物温度を推定し、該推定した炭化物温度に基づき冷却水流量を制御しているため、制御の追従性を向上させることが可能となる。
さらに、水冷コンベア下流端に直接冷却水を噴霧し、コンベア自体の撹拌力を利用して炭化物に均一に冷却水を接触させ炭化物を冷却する構成となっているため、冷却装置を設置する必要がなく装置を小型化、低コスト化することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上記載のごとく本発明によれば、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに、炭化物自体の含水率も制御できる。即ち、本発明では適切な冷却水流量の制御が可能であるため、炭化炉から排出される炭化物の温度、性質或いは水冷コンベアの冷却性能に関わらず、確実に発火を防止できる温度まで炭化物を冷却することができるとともに、冷却水の噴霧量が過多となることなく炭化物の燃焼を阻害しない含水率に調整できる。
また、水冷コンベアの後段に設けた水冷装置にて冷却水を噴霧する構成とすることにより、炭化物に対してまんべんなく冷却水を噴霧することができる。
また、水冷コンベア下流端に直接冷却水を噴霧し、コンベア自体の撹拌力を利用して炭化物に均一に冷却水を接触させ炭化物を冷却する構成とすることにより、冷却装置を設置する必要がなく装置を小型化、低コスト化することができる。
さらに、水冷コンベア下流端の炭化物温度を直接測定することにより、一つの温度測定手段と重量測定手段からの測定結果に基づき適切な水冷制御を行うことができるため、簡単な演算処理にて制御が可能で且つ装置構成を簡素化することが可能である。
さらにまた、水冷コンベア下流端よりも上流側で測定した異なる2点の炭化物温度から水冷コンベア下流端の炭化物温度を推定し、該推定した炭化物温度に基づき冷却水流量を制御することにより、制御の追従性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例1に係るシステムの全体構成図、図2は図1に示した実施例1を応用したシステムの全体構成図、図3は本発明の実施例2に係るシステムの全体構成図、図4は炭化物の時間経過に対する温度上昇を示すグラフである。
【実施例1】
【0021】
図1を参照して、本実施例1に係る炭化物冷却システムの構成につき説明する。
同図において、本実施例1の冷却システムは、炭化炉1の炭化物排出口に接続される水冷コンベア2と、該水冷コンベア2の後段に配設される加湿器(冷却装置)3と、該加湿器3に設けられた水噴霧ノズル4と、前記加湿器3に接続される貯留ホッパ5と、を備える。
前記水冷コンベア2は、一段又は複数段が直列に接続された構成を有し、炭化炉1から排出された高温の炭化物10を水冷しながら搬送する。図1では、一例として上流側コンベア21と下流側コンベア22が直列に配設された2段構成の水冷コンベアを示している。該水冷コンベア2としては、例えば水冷式スクリューコンベアが好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、間接的に水冷により炭化物10を冷却する冷却機構を備えるコンベアであればよい。
また該水冷コンベア2は、炭化物10が空気に接触して発火することを防止するために密閉状の構造を有することが好ましく、さらに好適にはコンベア内に窒素ガス等の不活性ガスを供給するとよい。該水冷コンベア2の水冷構造としては、例えばコンベアを囲繞する水冷ジャケットに冷却水を通流させ、コンベアを搬送される炭化物を間接的に冷却する構造が用いられる。
【0022】
前記加湿器3は、一又は複数の水噴霧ノズル4を備え、炭化物10を該水噴霧ノズル4から噴霧される冷却水11により冷却する装置である。尚、本実施例では水噴霧ノズル4を示しているが、炭化物10に冷却水を供給する構成であれば何れでもよく、水を滴下する構成、水を流下する構成を含むものである。また前記加湿器3は、噴霧された冷却水11が炭化物10に均一に行き渡るように、撹拌手段又は混合手段を備えていることが好ましい。
前記貯留ホッパ5は、冷却された炭化物10を所定期間貯留する装置であり、好適には低酸素又は無酸素雰囲気に維持される。不活性ガスを供給する手段を備えていてもよい。
これらの装置間の接続部には、空気の進入を極力防止するためにロータリーバルブ等が配置されている。
【0023】
上記構成を備えたシステムにおいて、炭化炉1から排出された300〜700℃の炭化物10は、水冷コンベア2を上流側コンベア21から下流側コンベア22に向けて搬送されながら冷却される。このとき、例えば炭化物は100℃程度まで冷却される。冷却された炭化物は加湿器3に供給され、該加湿器3にて水噴霧ノズル4より冷却水を噴霧されてさらに冷却され、貯留ホッパ5に送られて該貯留ホッパ5にて所定期間貯留される。
【0024】
また本実施例1では、水噴霧ノズル4に冷却水11を供給する冷却水供給ライン30上に、冷却水流量を検出する流量計31と、冷却水流量を調整する流量制御弁32とを備えている。
また、下流側コンベア22の下流端の炭化物温度を測定する温度測定手段35を備えている。該温度測定手段35は、熱電対を挿入して計測する手段が好適に用いられるが、これに限定されず、該熱電対等の接触式温度計測装置、又は放射温度計等の非接触式温度測定手段等が適宜用いられる。
さらに、貯留ホッパ5には、該貯留ホッパ5内に投入される炭化物の時間当たりの重量を測定する重量測定手段33が設けられている。該重力測定手段33としては、ロードセル等が用いられる。
【0025】
さらにまた、各測定手段からの測定結果が入力され、該測定結果に基づいて後述する演算処理を行い、演算結果を流量制御弁32に出力して該流量制御弁32を制御する制御装置6を備えている。
具体的には、該制御装置6にて、温度測定手段35にて測定された温度T1と、重量測定手段33にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、炭化物10の発火温度より低い目標温度T4以下まで該炭化物10を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように流量計31をみながら流量制御弁32を制御する。
【0026】
前記冷却水流量は、以下の熱量計算式(1)により求められる。
Wt×Cp×T1+Ww×Cpw×Tw=(Wt×Cp+Ww×Cpw)×T4
∴Ww=Wt×(Cp/Cpw)×(T1−T4)/(T4−Tw) ・・・(1)
ここで、T1;コンベア下流端炭化物温度、T4;目標(炭化物)温度(℃)、Tw;水温度(℃)、Cp;炭化物比熱(kcal/kg℃)、Cpw;水比熱(kcal/kg℃)=1.0、Wt;炭化物流量(kg/h)、Ww;冷却水流量(kg/h)である。
尚、Wtは重力計測手段33で測定した値Wより、噴霧した水量Wwを差し引いた値であり、実際には前の時間でのWwを用いて算出する。
また、炭化物の比熱Cpは温度依存性があるため、予めデータを取得し、温度の関数として算出することが好ましい。
【0027】
前記目標温度T4は、原則として、冷却水噴霧直後から炭化物を燃料などとして燃焼させるまでの時間に基づき設定されるが、他にも、貯留ホッパ5での炭化物貯留環境(酸素濃度等)、炭化物貯留状態(積載状態等)、炭化物の原料種類、炭化処理条件(処理温度、時間等)などを考慮した上で、確実に発火を防げる温度に適宜設定することが好ましい。
図4に、時間経過に対する温度上昇を示す。このグラフに示されるように、冷却水噴霧後の炭化物温度により発火時間は大きく変化する。上記したように、冷却水噴霧後の炭化物の設定温度は、噴霧後からどの時間範囲で燃料などとして燃焼させるか(貯留時間)により決定されるが、図4に示すグラフから、炭化物温度を70℃以下とすることにより運用上十分な時間が得られることがわかる。従って、目標温度T4は70℃以下とすることが好ましい。
また、目標温度T4を70℃に設定した時、上記式(1)から求められる冷却水流量Wwは炭化物1kg当たり0.144kgとなり、冷却水噴霧後の炭化物含水率は13%となる。尚、この算出の根拠としては木炭の比熱Cp=0.24(kcal/kg℃)、コンベア下流端の炭化物温度T1=100℃、水温度Tw=20℃とする。よって、目標温度を達成する冷却水流量を噴霧しても炭化物含水率は13%にとどまり十分に燃焼に用いられる含水率となる。
【0028】
本実施例1によれば、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに、炭化物自体の含水率も制御できる。
即ち、適切な冷却水流量の制御が可能であるため、炭化炉から排出される炭化物の温度、性質或いは水冷コンベアの冷却性能に関わらず、確実に発火を防止できる温度まで炭化物を冷却することができるとともに、冷却水の噴霧量が過多となることなく炭化物の燃焼を阻害しない含水率に調整できる。
さらに本実施例1によれば、一つの温度測定手段と重量測定手段からの測定結果に基づき適切な冷却制御を行うことができるため、簡単な演算処理にて制御が可能で且つ装置構成を簡素化することが可能である。
また本実施例1では、水冷コンベアの後段に設けた加湿器に水噴霧ノズルを設けているため、炭化物にまんべんなく冷却水を噴霧することができる。
【0029】
図2に、本実施例1を応用させたシステムの構成を示す。同図に示すように、本構成では水冷コンベア2の搬送方向に異なる2点の炭化物温度を夫々測定する温度測定手段36、37を設けて、制御装置6にて該2点間の温度差及び2点間の距離から、距離に対する降温勾配を求め、該降温勾配と前記温度を測定した地点(温度測定手段37)から水冷コンベア下流端までの距離とから該水冷コンベア下流端における炭化物温度を算出して求める。尚、前記温度測定手段36、37は、水冷コンベア2の中流域又は上流域に設置することが好ましい。本実施例では一例として、温度測定手段36を上流側コンベア21の入口に設置し、温度測定手段37を上流側コンベア21の出口(下流側コンベア22の入口)に設置している。
【0030】
上流側に設置された温度測定手段36にて計測された温度をT2、下流側に設置された温度測定手段37にて計測された温度をT3とすると、水冷コンベア下流端の温度T1は以下の式(2)により算出される。
T1=T3−(T2−T3)×(L2/L1) ・・・(2)
ここで、L1;上流側コンベア長さ(m)、L2;下流側コンベア長さ(m)である。
尚、実質は温度レベルにより冷却効果は変わる為、詳細な制御においては対数平均温度差などを用いるが、本制御では温度レベルに応じた温度勾配には大きな変動が無い場合についての例であり、上記式による算出においても十分な結果を得られるものである。
【0031】
そして、制御装置6にて、上記式(2)にて算出した水冷コンベア下流端の炭化物温度T1を用いて、上記式(1)により冷却水流量を算出し、流量制御弁32を制御することにより冷却水噴霧水量を調整する。
このように本構成によれば、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに、炭化物自体の含水率も制御でき、また水冷コンベア下流端よりも上流側で測定した温度に基づき冷却水流量を制御しているため、制御の追従性を向上させることが可能となる。
【実施例2】
【0032】
図3に、本実施例2に係る炭化物冷却システムの構成を示す。本実施例2において、上記した実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
図3に示すシステムは、実施例1の構成から加湿器を除いた構成としている。即ち、炭化炉1から排出される炭化物10を搬送冷却する水冷コンベア2と、該水冷コンベア2からの炭化物10を受け入れる貯留ホッパ5とを備える。前記水冷コンベア2は、一例として上流側コンベア21と下流側コンベア22からなる2段構成の水冷コンベアを示している。
【0033】
冷却水11を供給する冷却水ライン30上に流量計31と流量制御弁32とを設け、該冷却水11を水冷コンベア下流端にて炭化物10に直接噴霧する水噴霧ノズル4を設けている。該水噴霧ノズル4は、一又は複数設置されるが、好適には炭化物にまんべんなく冷却水を噴霧するために複数設置するとよい。このとき、水噴霧ノズル4より水冷コンベア下流端に噴霧された冷却水は、水冷コンベア2自身の撹拌能力によって撹拌、混合されて冷却水が炭化物に均一に接触される。
【0034】
また、貯留ホッパ5には重力測定手段33を設けている。
さらに、水冷コンベア2の搬送方向に異なる2点の炭化物温度を夫々測定する温度測定手段36、37を設けている。本実施例2では、一例として温度測定手段36を上流側コンベア21の入口に設置し、温度測定手段37を上流側コンベア21の出口(下流側コンベア22の入口)に設置している。
【0035】
さらにまた、温度測定手段36、36にて測定された温度T2、T3から求められる水冷コンベア下流端の炭化物温度T1と、重量測定手段33にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、炭化物10の発火温度より低い目標温度T4以下まで該炭化物10を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように流量計31をみながら流量制御弁32を制御する制御装置6を備える。該制御装置6では、上記式(1)、(2)を用いて実施例1と同様に冷却水流量を算出する。
【0036】
本実施例2によれば、実施例1と同様に、過不足ない冷却水流量で炭化物の貯留時温度を制御できるとともに炭化物自体の含水率も制御でき、また水冷コンベア下流端よりも上流側で測定した温度に基づき冷却水流量を制御しているため、制御の追従性を向上させることが可能となる。
また本実施例2では、水冷コンベア下流端に直接水噴霧ノズルを設け、コンベア自体の撹拌力を利用して炭化物に対して均一に冷却水を接触させ炭化物を冷却する構成となっており、この構成によれば加湿器を設置する必要がなく装置を小型化、低コスト化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、炭化炉から排出される炭化物の温度に関わらず、貯留時温度を適切に維持することが可能であるため、下水汚泥、木質バイオマス等を炭化処理する各種炭化炉の冷却システムとして幅広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1に係るシステムの全体構成図である。
【図2】図1に示した実施例1を応用したシステムの全体構成図である。
【図3】本発明の実施例2に係るシステムの全体構成図である。
【図4】炭化物の時間経過に対する温度上昇を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
1 炭化炉
2 冷却コンベア
21 上流側コンベア
22 下流側コンベア
3 加湿器
4 水噴霧ノズル
5 貯留ホッパ
6 制御装置
30 冷却水ライン
31 流量計
32 流量制御弁
33 重量測定手段
35〜37 温度測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化炉から排出された炭化物を水冷コンベアにて搬送冷却し、該水冷コンベアの後段に設けられた水冷装置にて前記炭化物に冷却水を直接噴霧して該炭化物を冷却する炭化物温度の水冷制御方法において、
前記水冷コンベアの下流端における炭化物温度と、前記水冷コンベアを移送される炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように冷却水の流量制御を行うことを特徴とする炭化物温度の水冷制御方法。
【請求項2】
炭化炉から排出された炭化物を水冷コンベアにて搬送冷却し、該水冷コンベアの下流端にて前記炭化物に冷却水を直接噴霧して該炭化物を冷却する炭化物温度の水冷制御方法において、
前記水冷コンベアの下流端における炭化物温度と、前記水冷コンベアを移送される炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように冷却水の流量制御を行うことを特徴とする炭化物温度の水冷制御方法。
【請求項3】
前記水冷コンベアの搬送方向に異なる2点の炭化物温度を夫々測定し、該測定した2点間の温度差及び2点間の距離から降温勾配を求め、該降温勾配と前記温度を測定した地点から水冷コンベア下流端までの距離とから該水冷コンベア下流端における炭化物温度を求めることを特徴とする請求項1若しくは2記載の炭化物温度の水冷制御方法。
【請求項4】
炭化炉から排出された炭化物を搬送冷却する水冷コンベアと、該水冷コンベアの後段に設けられ前記炭化物に冷却水を噴霧する水噴霧手段を備えた水冷装置と、該水冷装置から炭化物を受け入れる貯留ホッパとを備えた炭化物の冷却システムにおいて、
前記水噴霧手段の冷却水流量を調整する流量制御弁と、前記貯留ホッパに設けられ炭化物重量を測定する重量測定手段と、水冷コンベア下流端の炭化物温度を測定する温度測定手段とを備えるとともに、
前記温度測定手段にて測定された炭化物温度と、前記重量測定手段にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように前記流量制御弁を制御する制御装置を備えたことを特徴とする炭化物の冷却システム。
【請求項5】
炭化炉から排出された炭化物を搬送冷却する水冷コンベアと、該水冷コンベアの後段に設けられ前記炭化物に冷却水を噴霧する水噴霧手段を備えた水冷装置と、該水冷装置から炭化物を受け入れる貯留ホッパとを備えた炭化物の冷却システムにおいて、
前記水噴霧手段の冷却水流量を調整する流量制御弁と、前記貯留ホッパに設けられ炭化物重量を測定する重量測定手段と、前記水冷コンベアの搬送方向に異なる2点の炭化物温度を夫々測定する温度測定手段とを備えるとともに、
前記温度測定手段にて測定した2点間の温度差及び前記水冷コンベアの距離から求められる水冷コンベア下流端における炭化物温度と、前記重量測定手段にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように前記流量制御弁を制御する制御装置を備えたことを特徴とする炭化物の冷却システム。
【請求項6】
炭化炉から排出された炭化物を搬送冷却する水冷コンベアと、該水冷コンベアの下流端に設けられ冷却水を噴霧する水噴霧手段と、該水冷コンベアから炭化物を受け入れる貯留ホッパとを備えた炭化物の冷却システムにおいて、
前記水噴霧手段の冷却水流量を調整する流量制御弁と、前記貯留ホッパに設けられ炭化物重量を測定する重量測定手段と、前記水冷コンベアの搬送方向に異なる2点の炭化物温度を夫々測定する温度測定手段とを備えるとともに、
前記温度測定手段にて測定した2点間の温度差及び前記水冷コンベアの距離から求められる水冷コンベア下流端における炭化物温度と、前記重量測定手段にて測定された炭化物重量から求められる炭化物流量とに基づいて、炭化物の発火温度より低い目標温度以下まで該炭化物を冷却するために噴霧する冷却水流量を算出し、該冷却水流量となるように前記流量制御弁を制御する制御装置を備えたことを特徴とする炭化物の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−197077(P2009−197077A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38287(P2008−38287)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】