説明

炭化綿混合紙

【課題】 一般の炭粉はいくら微細化しても、形状は粒状のため、セルロース繊維と絡み合って一体化することがなく、繊維上に付着するだけである。このため乾燥すると炭粉が剥離して汚れてしまう。
【解決手段】 セルロースと容易に絡み合って抄紙が容易で、通常の紙と同様な扱いができる繊維状の炭化綿を得、該炭化綿とセルロース繊維が混合して構成されたことが特徴である炭化綿混合紙、または炭化綿混合不織布を抄紙する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
繊維状炭化物混合紙
【背景技術】
【0001】
特願2003−372052には、古紙を粉砕して成る粉砕古紙を主成分とし、該粉砕古紙を圧縮し造粒した造粒体から成り、該粉砕古紙の圧縮造粒体の表面を覆う鉱物質材から成る被覆層を有し、該鉱物質被覆層で被覆した粉砕古紙の圧縮造粒体を焼成し炭化して成る古紙製炭化粒状材はある。
【0002】
特願2004−046953には、パルプ2と活性炭粉末3とを水中で攪拌混合し、この混合物を成形型内に入れて所定形状に圧縮成形し、乾燥固化する。パルプで構成された容器内に収容されていて、繊維と吸着剤との割合は、繊維の重量割合をnとするとき、吸着剤の重量割合が0.2n〜5nである抄紙構造を有した成型体はある。
【0003】
セルロースに炭粉を混合して抄紙すると、従来の生産工程の変更を要すことなく炭入りの紙は容易にできるが、炭粉が剥離して粉塵が生じる。
【0004】
このように、接着剤を使用しないで、紙に炭粉を固定させることは困難であった。
【参考文献1】
特願2003−372052
【参考文献2】
特願2004−046953
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙は使い勝手のよさや低コストのため身の回りに多く使用されている。
【0006】
本発明は、紙が有する柔軟性、軽さ、吸水性、薄さ、低コスト、絶縁性を変化させないで、炭が持つ、優れた吸着機能を紙に付加し、空気や水の浄化作用を有する新しい紙や不織布を得るためになされたものである。
【0007】
炭は周知のように破砕し汚れる性質がある。そして、一般の炭粉はいくら微細化しても、形状は粒状のため、セルロース繊維と絡み合って一体化することがなく、繊維上に付着するだけである。このため乾燥すると炭粉が剥離して汚れてしまう。
【0008】
接着剤を用いないで、セルロースと絡み合わせて一体化して紙にするためには、柔らかな繊維状の炭化物で、しかも汚れない性質でなければ不可能である。
【0009】
発明者は炭化繊維を利用することに着目した。
【解決するための手段】
【0010】
近年、炭化温度や炭化時間の違いで、従来の木質系炭化物とは違った性質を有する炭化物ができる技術が開発されている。特に繊維状のものは破砕しやすい形状であるが、温度設定によって、炭化と並行して焼締め状態にし、強度を増加した炭化繊維を製造することができるようになった。
【0011】
綿においても、一定の強度を有する炭化綿を得ることができるようになり、一部で使用されている。炭化した綿すなわち炭化綿は直径が5〜15ミクロンで0.5mm〜5mmの長さであり、セルロース繊維との絡みを実現するには適当な材料である。
【0012】
炭化綿はミキサーなどでは砕くことができないほど破砕しにくい性質であり、粘りがあり綿自体が有する性質の多くを保持した炭化物である。
【0013】
炭化綿は炭化後は表面に汚れる破砕片が付着していて汚れるが、水洗いすると洗い流されて汚れなくなる性質を持っている。
【0014】
炭化綿は一般的な活性炭の数倍の比表面積があり、1グラム当り2500平方メートル以上と非常に優れた吸着性を有しているため、少量でも吸着機能は大きい。
【0015】
このように、綿、セルロースを含め繊維状のものを、一定の強度を保ったまま炭化できる技術が近年開発されたため、これを使用して紙を抄紙できることができる。
【0016】
柔らかな繊維状の炭化物であれば、セルロース繊維と混合して抄紙すると、互いに繊維が絡み合って吸着性に優れた紙を得ることができる。
【0017】
炭化綿には移動中などに破砕した炭粉塵が付着しているが、セルロース繊維との混合時に水で洗い流される。そして、紙に抄紙すれば粉塵の発生はない。
【0018】
本発明はセルロースと容易に絡みあい抄紙が容易で、通常の紙と同様な扱いができる炭化綿と混合した炭化綿混合紙、または炭化綿混合不織布であることが特徴である。
【発明の効果】
【0019】
炭化綿とセルロース繊維の混合比率によって吸着性に違いがでるが、微少粉塵や揮発性有機溶剤の吸着に優れ強度がある、炭を使用しているに関わらず汚れのない新機能紙ができる。
【実施例1】
【0020】
NBクラフトパルプ9重量に炭化綿1重量の比率で抄紙して炭化綿紙を得た。
NBクラフトパルプを水に投入し、攪拌してばらばらのセルロースに分解する。ここに炭化綿を投入しゆっくりと攪拌して繊維をばらばらにすると共に均等に分散させる。これらを均等に網上に載せて乾燥させて炭化綿紙を得る。
【実施例2】
【0021】
実施例1と同様の生産工程を経て、セルロース8重量に炭化綿2重量の比率で抄紙して炭化綿紙を得た。
【実施例3】
【0022】
実施例1と同様の生産工程を経て、セルロース7重量に炭化綿3重量の比率で抄紙して炭化綿紙を得た。
【実施例4】
【0023】
ポリエステル短繊維を水に投入し、攪拌してばらばらに分解する。ここに炭化綿を投入しゆっくりと攪拌して繊維をばらばらにすると共に均等に分散させる。これらをネットに掬い上げて乾燥させ炭化綿不織布を得る。
【実施例5】
炭化綿紙はNBクラフトパルプと炭化綿の混合物であり、試験片1は炭化綿含有重量比が10%、試験片2は炭化綿含有重量比が20%、試験片3は炭化綿含有重量比が30%であり、試験片4はNBクラフトパルプ100%で比較基準とする紙である。1種類の試験サンプル各々1.2gで寸法8cm×8cmの4種類を、10リットルのテドラーバッグに入れて密閉し次に空気を注入、さらに、アンモニア水試薬、30%トリメチルアミン試薬、イソ吉草酸試薬をメタノールで希釈した溶液又はメチルメルカプタン標準試薬を注入してそのときの開始時間とした。その後、経過時間ごとに、テドラーバッグ内のガス濃度をガス検知器にて測定した。
結果は下記の通りであり、炭化綿混合紙は少量を使用しても、吸着性に優れ、特にアンモニア、イソ吉草酸の吸着性に優れていることが判明した。
【産業上の利用分野】
紙のほか湿式不織布にも容易に炭化綿を混合して炭化綿混合不織布を得ることができ、水の浄化や空気の浄化ができるフィルターとして使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状の炭化綿とセルロース繊維を水中で混合して、セルロース繊維、炭化綿の混合物を得て、これを抄紙した炭化綿紙。
【請求項2】
繊維状の炭化綿と化学繊維を水中で混合して、化学繊維、炭化綿の混合物を得て、これを抄紙した炭化綿不織布。

【公開番号】特開2010−144316(P2010−144316A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−336110(P2008−336110)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(593196724)合鹿製紙有限会社 (2)
【Fターム(参考)】