説明

炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法、炭素同位体14Cを含まないミドリムシ、炭素同位体14Cを含まない実験用動物の飼育方法、炭素同位体14Cを含まない実験用動物

【課題】放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法、該製造方法で製造された放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシを提供することを目的とする。
【解決手段】ミドリムシが光合成を行うに適する光が照射される水槽2内に少なくとも放射性炭素同位体14Cを含まない水を収容し、該水中に放射性炭素同位体14Cを含まない二酸化炭素を供給し、ミドリムシを生育する炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法、及び該製造方法で製造された放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミドリムシを構成する主要元素である炭素同位体のうち、放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法、該製造方法で製造された放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシ、該放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシで飼育された放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物の飼育方法、及び該飼育方法で飼育された炭素同位体14Cを含まない実験用動物に関するものである。なお、ここで放射性炭素同位体14Cを含まないとは、放射性炭素同位体14Cの濃度がゼロの場合と放射性炭素同位体14Cの濃度が極度に低下した場合を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
医薬品や農薬(以下「医薬品等」という)などの被検体内での動きを調べることにより薬効を調べるなどの研究を行う際に、医薬品等を構成する炭素同位元素の多くを放射性炭素同位体14Cに入れ替えることにより標識化し、このように標識化された医薬品等を実験用動物等の被検体に導入して追跡することで医薬品等の動きを調べるトレーサ実験が行われている。例えば、ラットやマウスなどの実験用動物の生体内に標識化された医薬品を導入し、一定時間経過後のラット等の臓器や組織中の14C濃度を測定することにより、医薬品の体内での動き(吸収、分布、代謝、排泄の特徴や、薬効・毒性発現の予測などの状況)を追跡するトレーサ実験が医薬品研究において幅広く行われている。
【0003】
現在地球上に生存する動植物の生体を構成する主要元素である炭素における安定炭素12C,13Cと放射性炭素同位体14Cとの比(現代炭素同位体比)は、12C:13C:14C=0.989:0.011:1.2×10−12、即ち14C/12C≒1.2×10−12という略一定値に保たれている。そのため、放射性炭素同位体14Cを用いたトレーサ実験において、組織内におけるトレーサ14Cの動き、即ち組織における放射性炭素同位体比の変化を有効に検出するためには、トレーサである放射性炭素同位体比を少なくとも上記現代炭素同位体比の100倍〜1000倍にする必要がある。
【0004】
しかしながら、医薬品の試験研究において、通常の放射線レベルに対して二桁以上高いレベルの放射性同位体を取り扱うということは、実験用医薬品の製造時のみならず、被検体である実験用動植物の飼育・栽培時の領域整備や被曝線量の管理、実験後の環境への放出や汚染の問題等、全ての面において放射線を取り扱う煩雑さが付随するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−190153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで上記課題を解決する方法として、特許文献1に開示するように、被検体である実験用動植物の放射性炭素同位体14Cの濃度を現代炭素同位体比より二桁以下の極度に低いレベルまで低下させることにより、組織における放射性炭素同位体比の変化を有効に検出することができると共に、実験用動植物の飼育・栽培時の領域整備や被曝線量の管理、実験後の環境への放出や汚染等の上記課題は解決できる。しかしながら、マウス等の実験用動物を生育するためには、植物以外に適当な量の動物性タンパク質や各種栄養素などをバランスよく含んだ飼料を作り、生育する実験用動物に摂取させる必要があるが、このように植物以外に適当な量の動物性タンパク質や各種栄養素などをバランスよく含んだ飼料を、その放射性炭素同位体14Cの濃度を現代炭素同位体比より二桁以下と極度に下げることが極めて困難である。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ミドリムシが実験用動物を生育するのに必要な動物性タンパク質や各種栄養素などをバランスよく含んでいることに着目し、放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法、該製造方法で製造された放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシ、該ミドリムシを用いて飼育した炭素同位体14Cを含まない実験用動物の飼育方法、該飼育方法で飼育された放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明は、ミドリムシが光合成を行うに適する光が照射される水槽内に少なくとも放射性炭素同位体14Cを含まない水を収容し、該水中に放射性炭素同位体14Cを含まない二酸化炭素を供給し、ミドリムシを生育することを特徴とする放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法にある。
【0009】
また、本発明は、上記ミドリムシの製造方法において、水槽内の水にはミドリムシの生育に必要な放射性炭素同位体14Cを含まないミネラル成分が含まれていることを特徴とする放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法にある。
【0010】
また、本発明は、上記ミドリムシの製造方法で製造された放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシにある。
【0011】
また、本発明は、上記放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシと、放射性炭素同位体14Cを含まない植物性飼料と、放射性炭素同位体14Cを除去した水とを飼料として実験用動物を飼育することを特徴とする放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物の飼育方法にある。
【0012】
また、本発明は、上記実験用動物の飼育方法で飼育された放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ミドリムシが光合成を行うに適する光(適切な波長と光量の光)が照射される水槽内に少なくとも放射性炭素同位体14Cを含まない水を収容し、該水中に放射性炭素同位体14Cを含まない二酸化炭素を供給し、ミドリムシを生育するので、生育したミドリムシは放射性炭素同位体14Cの濃度がゼロ又は極度に低下したミドリムシとなる。
【0014】
また、水槽内の水にはミドリムシの生育に必要な放射性炭素同位体14Cを含まないミネラル成分が含まれているので、生育したミドリムシは放射性炭素同位体14Cの濃度がゼロ又は極度に低下し、且つ体内にミネラル成分を含んだミドリムシとなる。
【0015】
また、本発明によれば、上記ミドリムシの製造方法で製造された放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシであるので、放射性炭素同位体14Cの濃度がゼロ又は極度に低下しているだけではなく、ミドリムシは動物の生存に必要な栄養素を全て備えていることから、放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物を飼育するのに栄養バランスの取れた好適な飼料となる。
【0016】
また、本発明によれば、上記放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシと、放射性炭素同位体14Cを含まない植物性飼料と、放射性炭素同位体14Cを除去した水とを飼料として実験用動物を飼育するので、放射性炭素同位体14Cを含まない栄養のバランスの取れた健康な実験用動物を飼育することができる。
【0017】
また、本発明によれは、上記実験用動物の飼育方法で飼育された放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物であり、放射性炭素同位体14Cを含まない栄養のバランスの取れた健康な実験用動物であるから、医薬品等の動きを調べるトレーサ実験用の動物として好適であると共に、放射性炭素同位体14Cの濃度がゼロ又は極度に低く、医薬品等にトレーサ用として放射性炭素同位体14Cで標識化する必要はなく、また標識化してもその濃度は現代炭素同位体比を僅かに上回る程度でよいから、実験用医薬品の製造時のみならず、被検体である実験用動植物の飼育・栽培時の領域整備や被曝線量の管理、実験後の環境への放出や汚染の問題も起こらない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法を実施するためのミドリムシ製造(培養)システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。現在の地球上の大気中に存在する二酸化炭素を構成する炭素原子は、安定同位元素である炭素同位体12Cと炭素同位体13C以外に放射性同位元素である炭素同位体14Cをごく僅か含んでいる。地球上に存在する放射性炭素同位体14Cの大部分は、宇宙線が地球上の大気に突入したときに発生する中性子が大気中の窒素に吸収されて核反応により生成されるが、放射性炭素同位体14Cは半減期が5730年の放射性元素なので、生成と崩壊が釣り合っているときは、14Cは12Cに対して上記のように1.2×10−12、約1兆分の1という平衡状態の割合で存在する。
【0020】
太古の昔に石油や石炭の元になった動植物等の体を構成した炭素中の放射性炭素同位体14Cは数億年という長い時間の間に崩壊して無くなるので、現在の石油や石炭には放射性炭素同位体14Cを殆ど含んでいない。この状態の炭素をデッドカーボン(dead carbon)という。従って、石油や石炭などの化石燃料を燃焼させた時に発生する二酸化炭素は、デッドカーボンの炭素で構成されている。また、珊瑚などの海洋生物の化石である石灰岩などに酸を反応すると発生する二酸化炭素もデッドカーボンの炭素で構成されている。
【0021】
ミドリムシは、水中に含まれる二酸化炭素を使って光合成により体を作る動物と植物の中間的微生物であり、動物の生育するために必要な動物性タンパク質や各種栄養素を全て備えた完全栄養素といわれている。従って、ミドリムシの育成に適切な波長の光と光量が照射する場で、放射性炭素同位体14Cを含まない水中でデッドカーボンの二酸化炭素を与えてミドリムシを生育することにより、ミドリムシの体をデッドカーボン、即ち放射性炭素同位体14Cを含まない炭素で作ることができる。
【0022】
上記デッドカーボンで作られたミドリムシはマウス等の実験用動物の育成に必要な動物性タンパク質や各種栄養素を全て備えた完全栄養素であるから、例えば、このデッドカーボンで作られたミドリムシの乾燥体に、例えば特許文献1に開示されているような、放射性炭素同位体14Cを含まない植物で作られた乾燥飼料を混合した飼料と、放射性炭素同位体14Cを含まない水を与えて、マウス等の実験用動物を生育すると、この実験用動物は放射性炭素同位体14Cを含まないか或いは炭素同位体14Cの濃度が現代炭素同位体比より極度に低い(以下本実施形態ではこの状態を「放射性炭素同位体14Cを含まない」という)の実験用動物となる。
【0023】
以下、放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法を具体的に説明する。図1は、本発明に係る放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法を実施するためのミドリムシ製造(培養)システムの概略構成を示す図である。図中1は密閉された作業室であり、該作業室1内にはミドリムシを培養する水槽2が設置されている。3はソーダライム等の二酸化炭素を吸収する物質が充填された二酸化炭素吸収器、4は大気導入ポンプであり、該二酸化炭素吸収器3及び大気導入ポンプ4は大気導入管12に接続されている。
【0024】
大気導入ポンプ4を運転することにより、大気導入管12を通って導入された大気中の放射性炭素同位体14Cを含む二酸化炭素は該二酸化炭素吸収器3内に充填されたソーダライム等の二酸化炭素を吸収する物質により除去され、二酸化炭素の除去された大気が作業室1内に導入される。ここで作業室1内の気圧を大気圧より僅かに高くすることにより、外部大気に含まれる通常の放射性炭素同位体14Cを含む二酸化炭素が作業室1内に漏れ込むことを防ぐと共に、ミドリムシの生育に必要な酸素を作業室1内に供給することができる。
【0025】
ミドリムシの生育に必要な二酸化炭素は、ガスボンベ等のデッドカーボンの二酸化炭素を充填した二酸化炭素充填容器5から流量制御弁13を通して作業室1内に供給する。作業室1内の二酸化炭素濃度は二酸化炭素濃度計6により検出しながら、流量制御弁13の開度を調整しながら制御する。これにより、作業室1内は放射性炭素同位体14Cを含まない二酸化炭素を所定濃度で含む空気で満たされる。なお、上記大気導入ポンプ4、二酸化炭素除去器3及び大気導入管12からなる空気導入装置に代え、約20%の酸素と約80%の窒素を混ぜた人工空気にデッドカーボンの二酸化炭素を混ぜる方法を採用してもよい。
【0026】
作業室1に隣接して前室7が設けられており、作業室1内への作業員の出入は前室7を通って行い、前室7内の空気を入れ換えることにより、外気中の通常の放射性炭素同位体14Cを含む二酸化炭素が作業室1内に入り込まないようにすることが望ましい。
【0027】
例えば、作業室1内への作業員の入室に際しては前室7の扉7aを開いて該前室7に入室し、該扉7aを閉じて、該前室7内を作業室1内の同じ空気に入れ換える。そして前室7と作業室1の間に在る扉(図示せず)を開いて作業室1内に入る。作業室1から出るときは、前室7の扉7aを閉じて前室7内を作業室1と同じ空気で満たした後、前室7と作業室1の間に在る扉を開いて前室7内に入室した後、前室7と作業室1の間の扉を閉じてから、前室7の扉7aを開いて外部に出る。該前室7内を作業室1内と同じ空気に入れ換えるために、作業室1から前室7に空気を導くためのバルブ付き導入口(図示せず)と、前室7の空気を外部に逃がすための逆流防止弁付き導入口(図示せず)が取り付けられていて、バルブ付き導入口を開けることにより作業室1内の陽圧の空気が自動的に前室7内に流入して空気の入れ換えが行われる。
【0028】
作業室1内の空気中の二酸化炭素を厳密にデッドカーボンにするためには、作業員の呼気に含まれる二酸化炭素を作業室1内に排出しないように注意する必要かある。例えば、ソーダライムなどを使って呼気中の二酸化炭素を吸着する機能を持つマスク等を装着することが望ましい。或いは、作業員の呼気に含まれる14Cの影響を出来る限り少なくして植物などを育てるもう一つの方法は、植物やミドリムシなどの光合成機能が殆ど働かない状態即ち光量をできる限り少なくした薄暗い中で作業する、或いは光合成をあまり活発に行わないような波長の光の中で作業する等の方法が考えられ、場合によって選定する必要がある。
【0029】
ミドリムシを培養するため水槽2に収容する水は、純水製造装置で製造した純水や脱気膜等を使って水中の通常の放射性炭素同位体14Cを含む二酸化炭素を予め除去した水を使用する。ミドリムシの生育に必要なデッドカーボンの二酸化炭素と酸素は、作業室1内の空気をエアーポンプ8により二酸化炭素送気管14を通して水槽2内の水中にバブリングすることにより供給する。二酸化炭素の濃度は上記のように作業室1内の空気の二酸化炭素濃度を二酸化炭素濃度計6で検知しながら、二酸化炭素充填容器5からのデッドカーボンの二酸化炭素の供給量を流量制御弁13の開度を調整しながら制御する。
【0030】
また、ミドリムシの生育にミネラル成分が必要であるから、水槽2の水中には放射性炭素同位体14Cを含まないミネラル成分が含まれていることが望ましい。水中にこのミネラル成分を供給する方法としては、ここではミネラル成分が水中に溶出しやすい麦飯石(花崗斑岩)を水槽2内に浸漬配置しておく。なお、放射性炭素同位体14Cを含まないミネラル成分を供給する方法としては、他のミネラル成分が水中に溶出しやすい岩石や鉱物等を浸漬する方法、或いはミネラル成分を直接水中に供給する方法もある。
【0031】
ミドリムシを光合成により増殖させるために必要な光は、窓9より太陽光を取り入れることにより、略必要な光量を確保できるが、蛍光灯やLED等の人工光源10を作業室1内の水槽2を照射することができる所定箇所に設置し、人工光源10からの光の波長や光量、点灯時間、点灯消灯の周期等が最適条件を満たすようにすることにより、ミドリムシの培養効率を向上させることが可能である。
【0032】
また、作業室1内には冷暖房装置11を設置し、室温をミドリムシの培養に適する温度に制御する。なお、作業室1内で使用される電力は全て作業室1外から電力供給ケーブル(図示せず)を通して供給する。
【0033】
上記のようにして生育したミドリムシは放射性炭素同位体14Cの濃度がゼロ又は極度に低下しているだけではなく、ミドリムシはマウス等の実験用動物に必要な栄養素を全て備えていることから、放射性炭素同位体14Cを含まないマウス等の実験用動物を飼育するのに栄養バランスの取れた好適な飼料となる。この放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシを乾燥させた飼料と、例えば特許文献1に開示されている生産方法で作られた放射性炭素同位体14Cを含まない植物性の乾燥飼料と、放射性炭素同位体14Cを除去した水との混合飼料で実験用動物を飼育することで、飼育された実験用動物は放射性炭素同位体14Cを含まず、且つ栄養のバランスの取れた健康な実験用動物となる。
【0034】
また、上記実験用動物は栄養のバランスの取れた、健康で且つ放射性炭素同位体14Cがゼロ又は極度に低下した実験用動物であるから、医薬品等をトレーサ用として放射性炭素同位体14Cにより標識化しなくともトレーサ実験が可能、又は放射性炭素同位体14Cにより標識化してもその濃度は上記現代炭素同位体比を僅かに上回る程度でよいから、実験用医薬品の製造時のみならず、被検体である実験用動植物の飼育・栽培時の領域整備や被曝線量の管理、実験後の環境への放出や汚染の問題も起こらない。
【0035】
また、ミドリムシ製造(培養)システムの作業室1は密閉型植物工場の一形態であり、デッドカーボンの実験動物を飼育するためにミドリムシの生育の他に、実験動物を飼育するためのデッドカーボンの植物飼料を該作業室内1で同時に栽培することもできる。
【0036】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用効果を奏する以上、本願発明の技術範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ミドリムシが光合成を行うに適する光(適切な波長と光量の光)が照射される水槽内に少なくとも放射性炭素同位体14Cを含まない水を収容し、該水中に放射性炭素同位体14Cを含まない二酸化炭素を供給し、ミドリムシを生育するので、生育したミドリムシは放射性炭素同位体14Cの濃度がゼロ又は極度に低下したミドリムシとなる。また、ミドリムシは動物に必要な栄養素を全て備えていることから、放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物を飼育するのに栄養バランスの取れた好適な飼料として利用できる。また、本発明に係る実験用動物の飼育方法で飼育した実験用動物は、放射性炭素同位体14Cを含まないか又はその濃度が極度に低下した栄養のバランスの取れた健康な実験用動物であるから、医薬品等の動きを調べるトレーサ実験用の動物として好適であると共に、放射性炭素同位体14Cの濃度がゼロ又は極度に低く、医薬品等を放射性炭素同位体14Cにより標識化する必要がなく、又標識化しても、その濃度は現代炭素同位体比と同程度であるから、実験用医薬品の製造時のみならず、被検体である実験用動植物の飼育・栽培時の領域整備や被曝線量の管理、実験後の環境への放出や汚染の問題も起こらない実験用動物として利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 作業室
2 水槽
3 二酸化炭素吸収器
4 大気導入ポンプ
5 二酸化炭素充填容器
6 二酸化炭素濃度計
7 前室
8 エアーポンプ
9 窓
10 人工光源
11 冷暖房装置
12 大気導入管
13 流量制御弁
14 二酸化炭素送気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミドリムシが光合成を行うに適する光が照射される水槽内に少なくとも放射性炭素同位体14Cを含まない水を収容し、該水中に放射性炭素同位体14Cを含まない二酸化炭素を供給し、ミドリムシを生育することを特徴とする放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法。
【請求項2】
請求項1の放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法において、
前記水槽内の水にはミドリムシの生育に必要な放射性炭素同位体14Cを含まないミネラル成分が含まれていることを特徴とする放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2のミドリムシの製造方法で製造された放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシ。
【請求項4】
請求項3の放射性炭素同位体14Cを含まないミドリムシと、放射性炭素同位体14Cを含まない植物性飼料と、放射性炭素同位体14Cを除去した水とを飼料として実験用動物を飼育することを特徴とする放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物の飼育方法。
【請求項5】
請求項4の実験用動物の飼育方法で飼育された放射性炭素同位体14Cを含まない実験用動物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−44969(P2012−44969A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192635(P2010−192635)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(510233943)株式会社パレオ・ラボ (1)
【Fターム(参考)】