説明

炭素繊維の製造方法

【課題】再生可能な材料に由来する原料から炭素繊維を製造する方法と、この方法で得られる繊維とその使用。
【解決手段】(a)植物由来のグリセロールからアクロレインを合成し、(b)アクロレインをアンモ酸化してアクリロニトリルにし、(c)アクリロニトリルをアクリロニトリルのホモポリマーまたはコポリマー(PAN)に重合し、(d)PANをPAN繊維に加工し、(e)PAN繊維を部分酸化し、(f)部分酸化したPAN繊維を炭化する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生可能な材料に由来する原料から炭素繊維を製造する方法と、この方法で得られる繊維とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は直径が5〜10ミクロンの極細繊維から成る材料で、その主たる化学元素は炭素である。その他の原子、例えば酸素、窒素、水素および頻度は一般に低いが、硫黄も存在する。炭素原子は互いに結合し、軸線に対してほぼ平行な黒鉛型の結晶を形成する。この繊維が数千本撚り合わされてストランドが形成される。このストランドは単独で使用でき、ファブリック(織布)の形にすることもできる。
【0003】
炭素繊維は現在、最も急速に開発されている材料の一つである。炭素繊維は架橋ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂用の強化剤あるいはある種の熱可塑性樹脂、例えばポリアミドの改良剤として用いられる。炭素繊維を用いることで単位重量当たり強度が鋼より強い、重量の割に極めて強い複合材料が得られる。
【0004】
これらの複合材料は優れた引張係数と、極めて高い引張強度および低い熱膨張係数とを有する。これらは多くの用途、例えば航空機または宇宙船の部品、スポーツ用品(テニスラケットおよびゴルフクラブ)および風力タービンで用いられる構造用樹脂で金属の代わりに用いることができる。炭素繊維はさらに、高温ガスの濾過材、静電防止材として用いられ、その耐食性により特殊電極または加圧ガスタンク、特に水素貯蔵用加圧ガスタンクの強化材として用いられている。
【0005】
炭素繊維の起源はUnion Carbideによって提案された1958年に遡る。最初の繊維の品質はあまり良くなかったが、前駆体としてポリアクリロニトリル(PAN)を用いることで急速に改良された。繊維は前駆体によって異なり、同一ではない、すなわち、PANから得られた繊維は互いにゼロではない角度を有し且つ不規則に折り畳まれた黒鉛面を有し、かなり乱層構造である。ピッチから得られた繊維は2200℃以上で熱処理した後に黒鉛になる。すなわち、各種前駆体から得られた繊維は互いに異なる特性を有しており、PANから得られたものは一般により強い引張強度を有する。
【0006】
PANからの炭素繊維の合成では一般に繊維を約300℃で燃やし(cussion)、わずかに酸化させる段階を含む。その後、繊維を電気炉中で約2000℃の温度でアルゴンまたは窒素の不活性雰囲気中に置く。続く高温での処理で熱伝導率および弾性率が上がる。
【0007】
従って、炭素繊維はその製造中に高温を必要とするため極めてエネルギー集約型生成物であることは理解できよう。このエネルギー消費は軽量車両を製造し、輸送用途でのエネルギー消費を減少させる能力によって補償されるものではない。
【0008】
主として化石資源を消費して電力を生産している国々では、上記のエネルギー消費に環境に有害な温室効果ガスの排出量の増加が伴う。この排出量を削減するために炭素繊維の合成法を変えることは容易ではない。それに対して、炭素繊維合成で通常用いられているPANより環境影響が低い原料、特に再生可能またはバイオベースの原料を用いることはより容易である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の一つの目的は、再生可能またはバイオベースの材料に由来する原料から炭素繊維を合成する新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの対象は、下記(a)〜(f)の段階を含む炭素繊維の製造方法にある:
(a)植物由来のグリセロールからアクロレインを合成し、
(b)アクロレインをアンモ酸化してアクリロニトリルにし、
(c)アクリロニトリルをアクリロニトリルのホモポリマーまたはコポリマー(PAN)に重合し、
(d)PANをPAN繊維に加工し、
(e)PAN繊維を部分酸化し、
(f)部分酸化したPAN繊維を炭化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明方法をさらに詳細に説明するが、(a)段階の前に上記段階以外の段階、特に一つまたは複数の段階、(f)段階後の一つまたは複数の段階および/または一つまたは複数の中間段階を、これらの段階が本発明方法全体、特に得られる炭素繊維の収率および/または品質を損なわない限り、含むことができることは理解できよう。
本発明方法の第1段階では、アクロレインを植物由来のグリセロールから生成する。
【0012】
本発明の一つの好ましい実施例では、(a)段階で用いるグリセロールを、植物由来のトリグリセリドのトランスエステル化の副生成物として得る。実際には、通常のトランスエステル化反応にはメタノールまたはエタノールのような直鎖C1−C10モノアルコールまたは環式C3−C6モノアルコールを用い、これをトリグリセリドと反応させてC1−C10アルコールおよびグリセロールのアルキルエステルを得る。トリグリセリドは式:R1−CO−O−CH2−CH(OCO−R2)−CH2−O−CO−R3の化合物である〔ここで、R1〜R3は飽和またはポリ(不飽和)の直鎖または分岐鎖のC10−C30、例えばC12−C18のアルキル基を表す〕。この化合物は植物油および脂肪、例えばヤシ油、亜麻仁油、落花生油、ココナッツ油、ヒマワリ油、大豆油または菜種油の重要な成分である。後者は化石燃料の代替燃料として推奨されるバイオディーゼルの製造で特にトランスエステル化される。本発明で用いるグリセロールは植物油からバイオディーゼルを製造する際の副生成物にすることができる。参考として、10トンの脂肪酸トリグリセリドから約1トンのグリセロールが得られる。
【0013】
トランスエステル化段階は一般に20〜150℃の温度、好ましくは25〜100℃、好ましくは25〜80℃で、例えば4〜8時間かけて、酸または塩基性触媒の存在下、好ましくはメトキシドナトリウムまたはカリウムのような塩基性触媒の存在下で、メタノールのような溶剤中で、撹拌反応器内で(特に高剪断下で)または固定または流動床反応器内で実施する。変形例では、トランスエステル化を高い温度および圧力の超臨界メタノールの存在下で実施できる。一般に、全ての反応物を脱水してトリグリセリドの鹸化を防止し、グリセロールを容易に分離できる。
【0014】
本発明の方法の(a)段階ではグリセロールを脱水して液相または気相でアクロレインを生成する。本発明の一つの好ましい実施例ではグリセロールのアクロレインへの脱水を250〜350℃および1〜5バールで、分子状酸素の存在下で、有利には特許文献1に記載のように酸性固体触媒を用いて、好ましくは特許文献2に記載のようにハメット酸度関数H0が−9〜−18の強酸性型の触媒の存在下で行う。
【特許文献1】国際特許出願第WO 2006/087083号公報
【特許文献2】国際特許出願第WO 2006/087084号公報
【0015】
変形例では、グリセロールの脱水を特許文献3に記載のように250〜400℃、好ましくは260〜300℃の温度で加熱することによって、行うことができる。
【特許文献3】米国特許出願第2008/119663号明細書
【0016】
反応を液相で行うときには、圧力を例えば1〜50バールに調節して反応媒体を液体状態に維持する。均一または不均一系酸触媒、および/または無機酸の塩、例えば硫酸(水素)カリウムまたはナトリウムを用いて反応を加速できる。従って、均一系酸触媒、例えば硫酸、燐酸、トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸または不均一系触媒、例えばHZSM−5またはMCM−22型のゼオライト、燐酸のような無機酸で被覆された金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、またはイオン交換樹脂を用いることができる。変形例では、バイオ触媒、例えばリパーゼまたはエステラーゼのようなバイオ触媒を用いることができる。
【0017】
本明細書は[特許文献3](米国特許出願第2008/119663号明細書)に記載のように、上記の脱水触媒の存在下で、グリセロールがトリグリセリドから形成されると同時に、グリセロールを脱水してアクロレインを生成することを除外するものではない。この場合は、次いでアクロレインを任意の適切な手段、例えば蒸留、抽出、相分離または膜分離によって反応媒体から分離することが好ましい。しかし、トランスエステル化と脱水段階とを別々に行ってアクロレインの収率を最適化することが好ましい。このためには、トランスエステル化反応媒体から蒸留、膜分離または相分離によってグリセロールを抽出するのが有利である。このグリセロールをアクロレインに変換する前に、必要に応じてさらに精製して、少量で含まれる石鹸、塩、および塩基を除去することもできる。
【0018】
本発明方法の(a)段階で製造されたアクロレインを次いで、(b)段階で下記の反応方法に従って、アンモ酸化によってアクリロニトリルを得る:
CH2=CH−CHO+NH3+0.5 O2→CH2=CH−CN+2H2
【0019】
このアンモ酸化段階は当業者に周知であり、特に、アクロレイン、アンモニア、空気および不活性ガスの混合物を、ヒ素または低陰性元素の一種以上の酸素化塩から形成された触媒に通して200〜450℃で実施できる。この方法は特許文献4に記載されている。
【特許文献4】フランス国特許出願第1,410,967号公報
【0020】
変形例では特許文献5に記載のように250〜350℃の温度でモリブデンベースの触媒を用いることによって、または、特許文献6に記載のように、反応混合物を錫およびアンチモンをベースにした触媒に300〜550℃の温度で通すことによって、あるいは、特許文献7に記載のようにシリカ、酸化モリブデンおよび燐酸の混合物から形成された触媒の存在下で250〜600℃の温度で実施できる。
【特許文献5】ドイツ国特許第1,070,170号公報
【特許文献6】米国特許第3,094,552号明細書
【特許文献7】英国特許第709,337号公報
【0021】
こうして得られたアクリロニトリルを本発明方法の(c)段階で重合する。アクリロニトリルを単独重合するか、本発明の好ましい実施例に従って、少なくとも一種の他のモノマー、好ましくはアクリルモノマーすなわち(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレートまたはアクリル酸のモノマーと共重合することができる。実際には、このコモノマーは重合するモノマーの全重量に対して10重量%を超えない限り、次の(e)段階で熱的効果をより良く制御できる(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】Gupta,A.K.et al., JMS-Rev.Macromol.Chem.Phys.C31,1991
【0022】
このコモノマー自体は再生可能な材料に由来することができる。すなわち、アクリル酸はグリセロールから得ることができ、メチルメタクリレートはその合成時に再生可能な材料に由来するアセトンおよびメタノールを混和できる。本発明では極性がアクリロニトリルに極めて近いので、メチルアクリレートを用いるのが好ましい。
アクリロニトリルの(共)重合は、特許文献8に記載のように、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルホルムアミド(DMF)型の溶剤を用いて、必要に応じて活性化剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)またはアゾカルボン酸エステルの存在下で、ラジカル溶液重合によって通常の方法で実施できる。
【特許文献8】米国特許出願第2004/068069号明細書
【0023】
変形例では、アクリロニトリルの(共)重合を、例えばチオシアン酸ナトリウム、塩化亜鉛または過塩素酸ナトリウムの存在下で水性分散体中で行うことができる。使用可能な重合方法は特に非特許文献2に記載されている。
【非特許文献2】「アクリル繊維の重合」(ポリマー科学百科辞典、第1巻、334〜338頁、1985年)
【0024】
得られたPANとよばれるホモポリマーまたはコポリマーは一般に重量平均分子量が約80,000〜120,000g/モルである。
このPANを次いで本発明方法の(d)段階で繊維に形成する。この段階は複数の方法で実施できる。
【0025】
一つの方法では、PANを少なくとも一種の可塑剤、例えばアルキルカーボネート、特にエチレンカーボネート(エチレングリコールおよび炭酸のエステル)と混合し、これを110〜160℃で加熱して軟化させ、平ダイを通じて押出し、例えば水から成る浴中に入れて繊維の形に凝固、固化する。この方法は織物アクリル繊維の製造で用いる方法に似ている。
【0026】
別の方法では、PANを溶剤(DMSO、DMF、DMAまたは無機塩の水溶液)に溶かし、平ダイを通じて収容室または乾燥室中に噴射し、そこで溶剤を蒸発させた後にポリマーを固体繊維にする。
【0027】
いずれの場合も、得られた繊維を洗浄し、所望の繊維径が得られるまで延伸する。延伸によってさらに分子種を整合させることもでき、それによって、続く炭化中の炭素−炭素結合の正確な形成が容易になり、繊維の固体性が高くなる。
【0028】
実際の炭化の前に、原子配列をより架橋された構造に変換するために、繊維をわずかに化学的に改質する必要がある。安定化または部分酸化操作として知られるこの操作は本発明の方法の(e)段階を構成する。
【0029】
この操作は空気の存在下に200〜300℃で数十分間、PAN繊維を加熱して行う。この方法で繊維はその原子配列が改質され、極性表面官能基が作られ、塑性状態から熱的に安定な不溶融性状態に変化する。この反応は発熱反応であるため、熱暴走が起こりうるので、確実に熱伝達を制御するのが望ましい。
【0030】
安定化操作後に、本発明方法の(f)段階を構成する炭化を行う。この炭化は、空気が炉に再流入しないように不活性ガスをパージし且つ大気圧以上の圧力に維持された炉中で1200〜1500℃の温度で(e)段階の繊維を加熱することによって行う。
【0031】
炭化時に炭素を除く大部分の原子を放出する。すなわち、酸素および水素は水蒸気の形で、極性表面官能基から生じる窒素原子、気体窒素、一酸化炭素および二酸化炭素はアンモニアおよびシアン化水素の形で放出する。これらの原子の排除することで強い結合を形成し、炭素を微結晶型に組織化できる。炭化は必要に応じて、全プロセスをより良く制御するために、2つの異なる温度で、2段階で行うこともできる。すなわち、第1の炭化段階は400〜800℃で実施でき、この段階では必要に応じて繊維を延伸する。
【0032】
この炭化段階の最後に、処理温度に応じて「高強度」または「中間弾性」繊維として知られる繊維が得られる。必要に応じてさらに、2000〜3000℃の次の黒鉛化段階によって、「高弾性」繊維として知られる繊維を得ることができる。
【0033】
炭化/黒鉛化の後、繊維と繊維を混和するマトリックスとの接触を改良するための他の段階を実施できる。例えば、空気または二酸化炭素の存在下での処理、または、次亜塩素酸ナトリウム、硝酸または硫酸、水酸化ナトリウムおよび重炭酸アンモニウムの溶液を用いた液相中の処理によって繊維表面をわずかに酸化できる。これら全ての操作は表面欠陥(マトリックスに不完全に接着する)が生じるのを防ぐために十分に制御して行わなければならない。
【0034】
繊維の輸送、製織または巻上げ中に繊維を保護するために、繊維にさらにサイジング処理または塗油処理することもできる。この処理は被覆材料を繊維に塗布することにある。この被覆材料は複合材料の製造で用いられる接着剤と相溶性を有するように選択され、例えば、エポキシド樹脂、ポリエステルまたはポリウレタンの中から選択できる。
【0035】
本発明の別の対象は、上記の方法に従って得られる炭素繊維にある。
これらの炭素繊維は、再生可能な材料またはバイオベースの材料に由来するか、モダン炭素に由来する炭素すなわち14Cを、無視し得ない量で含む点に特徴がある。すなわち、本発明方法の第1段階で用いられる生物、特に植物質から得られる全ての炭素のサンプルは3つの同位元素:12C、13Cおよび14Cの混合物である。炭素は環境と絶えず交換しているので、14C/12Cの比は一定に保たれ、1.2×1l0-12に等しい。
【0036】
14Cは放射性であり、その濃度は経時的に減少する。14Cの半減期は5730年である。14Cの含有量は植物質を抽出してから繊維を製造し、さらには繊維の使用が終るまでほぼ一定であるとみなされる。
【0037】
特に、本発明の炭素繊維は14C含有量と12C含有量の同位元素の比が10-12以上、1.2×10-12以下である。ここで14Cは6つの陽子と8つの中性子を有する同位元素を表し、12Cは6つの陽子と6つの中性子とを有する安定同位元素であると考えられる。100%の再生可能な炭素を含む炭素繊維は1.2×10-12以下の14Cを含む。
【0038】
炭素繊維の14C含有量は、考古学的な遺物、古い木材、骨、泥炭さらには貝殻を年代測定する周知な方法に従って測定できる。例えば、下記の方法に従って測定できる:
(1)液体シンチレーションを用いたスペクトロメトリ:
この方法の基本は14Cの崩壊で生じた「β」粒子をカウントすることにある。質量(炭素原子数)が分かっているサンプルに由来するβ線を一定時間測定する。この「放射能」は14C原子の数に比例し、それは求めることができる。サンプル中に存在する14Cはβ線を発し、それがシンチレーション液体(液体発光物質)と接触すると光子が出る。この光子は種々のエネルギー(0〜156keV)を有し、いわゆる14Cスペクトルを形成する。この方法には2つの変形法があり、適当な吸収剤の溶液中で炭素化サンプルによって予め生成したCO2を測定するか、炭素化サンプルを予めベンゼンに変換してベンゼンを測定する。
【0039】
(2)マススペクトル分析:
サンプルを黒鉛またはCO2ガスにし、質量分析機で分析する。この方法では14Cイオンを12Cイオンから分離するための加速器と質量分析装置とを使用して、2つの同位元素の比を求める。
【0040】
材料中の14Cの量を測定するこれらの方法はASTM D6866規格(特にD6866−06)およびASTM D7026規格(特に7026−04)に正確に記載されている。これらの方法でサンプルの14C/12C比を測定し、再生可能な材料に100%由来する参照サンプルの14C/12Cと比較することで、各サンプル中の再生可能な材料に由来する炭素の相対百分比を求めることができる。
【0041】
従って、本発明のさらに別の対象は、14C含有量と12C含有量の同位元素の比が2×10-11以上、例えば5×10-11以上、好ましくは10-12以上でかつ1.2×10-12以下である炭素繊維にある。
本発明の炭素繊維はそれらが通常用いられる全ての用途、特に強化複合材料で使用できる。特に航空機または宇宙船の部品、スポーツ用品(テニスラケットおよびゴルフクラブ)および風力タービンの製造、高温ガスの濾過材、静電防止材、特殊電極または加圧ガスタンク、特に水素貯蔵用加圧ガスタンクの強化材として使用できる。
従って、本発明のさらに別の対象は、上記の炭素繊維のこれらの使用にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(f)の段階を含む炭素繊維の製造方法:
(a)植物由来のグリセロールからアクロレインを合成し、
(b)アクロレインをアンモ酸化してアクリロニトリルにし、
(c)アクリロニトリルをアクリロニトリルのホモポリマーまたはコポリマー(PAN)に重合し、
(d)PANをPAN繊維に加工し、
(e)PAN繊維を部分酸化し、
(f)部分酸化したPAN繊維を炭化する。
【請求項2】
(a)段階で用いるグリセロールを植物由来のトリグリセリドのトランスエステル化の副生成物として得る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記グリセロールを植物油からバイオディーゼルを製造する際の副生成物として得る請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)段階でグリセロールを250〜400℃、好ましくは260〜300℃の温度で加熱、脱水してアクロレインを生成する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(c)段階でアクリロニトリルを少なくとも一種のアクリルコモノマー、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレートまたはアクリル酸と共重合させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記コモノマーが重合するモノマーの全重量に対して10重量%を超えない請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(e)段階でPAN繊維の部分酸化を空気の存在下に200〜300℃で数分間、繊維を加熱することによって行う請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(f)段階でのPAN繊維の炭化を、不活性ガスでパージし且つ大気圧以上の圧力に維持された炉中で1200〜1500℃の温度で繊維を加熱することによって行う請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で得られる炭素繊維。
【請求項10】
14C含有量と12C含有量の同位元素比が5×10-11以上、好ましくは10-12以上である炭素繊維。
【請求項11】
請求項9または10に記載の炭素繊維の、強化複合材料、特に航空機または宇宙船の部品、スポーツ用品(テニスラケットおよびゴルフクラブ)および風力タービンの製造、高温ガスの濾過材、静電防止材、特殊電極または加圧ガスタンク、特に水素貯蔵用加圧ガスタンクの強化材としての使用。

【公表番号】特表2012−500910(P2012−500910A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524435(P2011−524435)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051622
【国際公開番号】WO2010/023403
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】