説明

炭酸ガス保持剤及び容器詰炭酸飲料

【課題】炭酸ガスの保持に優れた炭酸ガス保持剤及びこれを配合した容器詰炭酸飲料、並びに容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法を提供する。
【解決手段】非重合体カテキン類を有効成分として含有することを特徴とする炭酸ガス保持剤。非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレートが含まれており、非重合体カテキン類におけるエピガロカテキンガレートの含有量が30質量%以上であることが好ましい。また、さらにステビア抽出物を有効成分として含有し、非重合体カテキン類の含有量[C](質量%)に対するステビア抽出物の含有量[S](質量%)の比[S]/[C]が0.02〜5であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス保持剤及びこれを含有する容器詰炭酸飲料、並びに容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、その味わいのみならず、飲用した時に炭酸ガスの刺激によって清涼感を得ることができる清涼飲料であり、従来から広く普及している。しかし、炭酸ガスは飲料から抜けやすいという性質を有しており、炭酸ガスが抜けた炭酸飲料は、嗜好的に好ましくないものとなる。特に、近年普及するようになった小型のPETボトル炭酸飲料においては、開栓後から飲み干すまでの間、非冷蔵にて長時間放置されることが多いため、この間に炭酸ガスが抜けてしまうことが問題となっている。
【0003】
上記のような実状において、高甘味度甘味料と、それぞれ特定量の重合カテキン及びカフェインとを含有し、炭酸ガスの気泡感を向上させた炭酸飲料が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−142129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の炭酸飲料では、開栓後における炭酸ガスの保持、特に開栓後、非冷蔵下において長時間放置されたときの炭酸ガスの保持が不十分であり、このような条件下においても炭酸飲料に炭酸ガスを十分に保持させることができる炭酸ガス保持剤が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、炭酸ガスの保持に優れた炭酸ガス保持剤及びこれを配合した容器詰炭酸飲料、並びに容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第一に本発明は、非重合体カテキン類を有効成分として含有することを特徴とする炭酸ガス保持剤を提供する(発明1)。
【0008】
上記発明(発明1)によれば、容器詰炭酸飲料に配合したときに、炭酸ガスを効果的に保持させることができる炭酸ガス保持剤を得ることができる。
【0009】
上記発明(発明1)において、前記非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレートが含まれており、前記非重合体カテキン類における前記エピガロカテキンガレートの含有量が30質量%以上であることが好ましい(発明2)。
【0010】
上記発明(発明1,2)に係る炭酸ガス保持剤は、さらに重合カテキンを含有してもよい。この場合、前記非重合体カテキン類の含有量[C](質量%)に対する前記重合カテキンの含有量[P](質量%)の比[P]/[C]が0.25以下であることが好ましい(発明3)。
【0011】
上記発明(発明1〜3)においては、さらにステビア抽出物を有効成分として含有し、前記非重合体カテキン類の含有量[C](質量%)に対する前記ステビア抽出物の含有量[S](質量%)の比[S]/[C]が0.02〜5であることが好ましい(発明4)。
【0012】
第二に本発明は、上記発明(発明1〜3)の炭酸ガス保持剤を配合したことを特徴とする容器詰炭酸飲料を提供する(発明5)。
【0013】
上記発明(発明5)によれば、炭酸ガスの保持に優れた容器詰炭酸飲料を得ることができる。上記発明(発明5)においては、炭酸ガスのガスボリュームが1.8〜2.85であるか、又は3.15〜4.0であることが好ましい(発明6)。
【0014】
第三に本発明は、上記発明(発明4)の炭酸ガス保持剤を配合したことを特徴とする容器詰炭酸飲料を提供する(発明7)。
【0015】
上記発明(発明7)によれば、炭酸ガスの保持に優れた容器詰炭酸飲料を得ることができる。上記発明(発明7)においては、炭酸ガスのガスボリュームが1.8〜4.0であることが好ましい(発明8)。
【0016】
上記発明(発明5〜8)においては、前記容器詰炭酸飲料における前記非重合体カテキン類の含有量が0.001〜0.035質量%となるように、前記炭酸ガス保持剤を配合することが好ましい(発明9)。
【0017】
第三に本発明は、容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法であって、前記容器詰炭酸飲料に非重合体カテキン類を有効成分として含有させることを特徴とする容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法を提供する(発明10)。
【0018】
上記発明(発明10)において、前記非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレートが含まれており、前記非重合体カテキン類における前記エピガロカテキンガレートの含有量が30質量%以上となるように、前記エピガロカテキンガレートを含有させることが好ましい(発明11)。
【0019】
上記発明(発明10,11)に係る容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法においては、前記容器詰炭酸飲料がさらに重合カテキンを含有していてもよい。この場合、前記容器詰炭酸飲料において、前記非重合体カテキン類の含有量(質量%)に対する前記重合カテキンの含有量(質量%)の比が0.25以下となるように、前記非重合体カテキン類及び前記重合カテキンを含有させることが好ましい(発明12)。
【発明の効果】
【0020】
本発明の炭酸ガス保持剤は、容器詰炭酸飲料に配合したときに、炭酸ガスを効果的に保持させることができる。また、本発明の容器詰炭酸飲料は、炭酸ガスの保持に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る炭酸ガス保持剤は、非重合体カテキン類を有効成分として含有するものである。また、本発明の一実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上記炭酸ガス保持剤を含有するものである。
【0022】
本明細書において、非重合体カテキン類とは、(±)−カテキン(C)、(±)−ガロカテキン(GC)、及びこれらのエピ体である(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、並びにこれらの没食子酸エステル(ガレート体)である(−)−カテキンガレート(Cg)、(−)−ガロカテキンガレート(GCg)、(−)−エピカテキンガレート(ECg)、及び(−)−エピガロカテキンガレート(EGCg)の8種のカテキン類化合物を意味する。
【0023】
本実施形態に係る炭酸ガス保持剤は、非重合体カテキン類を有効成分として含有することで、容器詰炭酸飲料に配合したときに、その容器詰炭酸飲料に炭酸ガスを効果的に保持させることができる。そのため、容器詰炭酸飲料を飲用したときにおいて炭酸ガスによる清涼感が持続し、嗜好的に好ましい炭酸飲料となる。
【0024】
また、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤が含有する非重合体カテキン類においては、ガレート体であるCg、GCg、ECg及びEGCgからなる群より選択される1種又は2種以上のカテキン類化合物を、非重合体カテキン類全体中にて40質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましい。特に、EGCgを非重合体カテキン類全体中にて30質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0025】
なお、本明細書における上述した8種のカテキン類化合物の含有量は、高速液体クロマトグラフィー法により測定した値であり、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。また、本明細書における非重合体カテキン類の含有量は、このように測定した8種のカテキン類化合物の各含有量を合計した値である。
【0026】
なお、本実施形態における非重合体カテキン類は、非重合体カテキン類を含有する天然物(例えば緑茶葉等)から公知の方法により抽出して得られたものでもよく、また市販のものを用いてもよい。上述した好ましい条件を満たす非重合体カテキン類を含有する市販品として、テアフラン90S(伊藤園社製)を例示することができる。
【0027】
本実施形態に係る炭酸ガス保持剤は、さらに重合ポリフェノールを含有する場合があるが、容器詰炭酸飲料に炭酸ガスを効果的に保持させるためには、その含有量はなるべく少ない方が好ましい。ここで、重合ポリフェノールとは、分子内にフェノール性ヒドロキシル基を2以上含有するポリフェノールが2分子以上連結した構造を持つ化合物の総称である。植物から得られる重合ポリフェノールとして、例えば重合カテキンを例示することができる。重合カテキンとは、上述した非重合体カテキン類が、光や酵素等により複数個連結した構造を持つものであり、EGCg二量体、EGCg三量体、EGC二量体、EGC三量体等を例示することができる。
【0028】
本実施形態に係る炭酸ガス保持剤においては、非重合体カテキン類の含有量[C](質量%)に対する重合カテキンの含有量[P](質量%)の比[P]/[C]が0.25以下であることが好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。[P]/[C]がこの範囲にあることで、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料において炭酸ガスを効果的に保持させることできる。ここで、[P]/[C]が0.25以下であるとは、[P]/[C]が0の場合、すなわち重合カテキンを全く含有しない場合を包含するものである。なお、本明細書における重合カテキンの含有量[P]は、公知の高速液体クロマトグラフ法により測定することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤においては、上記EGCgの含有量[E]に対する重合カテキンの含有量[P](質量%)の比[P]/[E]が0.34以下であることが好ましく、0.28以下であることがさらに好ましい。[P]/[E]がこの範囲にあることで、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料において炭酸ガスを効果的に保持させることできる。ここで、[P]/[E]が0.34以下であるとは、[P]/[E]が0の場合、すなわち重合カテキンを全く含有しない場合を包含するものである。
【0030】
本実施形態に係る炭酸ガス保持剤は、さらにステビア抽出物を有効成分として含有することが好ましい。ステビア抽出物を有効成分として含有することで、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料において炭酸ガスを効果的に保持させることできる。
【0031】
ステビア(学名:Stevia rebaudiana)は、南アメリカ原産のキク科の多年草であり、その抽出物は、甘味成分としてステビオールを骨格とする配糖体(ステビオール配糖体)であるステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC及びズルコサイドA等を含有する。本明細書における「ステビア抽出物」には、ステビアを抽出原料として得られる抽出物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。さらに、粗精製物又は精製物には、ステビア抽出物に含有されるステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC及びズルコサイドA等のステビオール配糖体の精製物のほか、上記抽出物又は精製物等を酵素処理して得られる酵素処理ステビアもが含まれる。なお、本実施形態におけるステビア抽出物は、上述した方法により抽出したものを用いても良く、市販のものを用いても良い。
【0032】
本実施形態の炭酸ガス保持剤で使用するステビア抽出物は、ステビア抽出物から精製又は酵素処理により得られたレバウディオサイドA及び/又はステビオサイドを含有するものであることが好ましく、レバウディオサイドAを95質量%以上含有するものであることが特に好ましい。ステビア抽出物におけるレバウディオサイドAの含有量が95質量%以上であることで、炭酸ガスの保持効果がより顕著なものとなる。このような好ましい条件を満たすステビア抽出物の市販品として、レバウディオJ−100(守田化学工業社製)を例示することができる。
【0033】
本実施形態に係る炭酸ガス保持剤においては、上記非重合体カテキン類の含有量[C](質量%)に対するステビア抽出物の含有量[S](質量%)の比[S]/[C]が0.1〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがさらに好ましく、0.3〜2.2であることが特に好ましい。この範囲を満たすように炭酸ガス保持剤に非重合体カテキン類及びステビア抽出物を含有させることで、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料に炭酸ガスを効果的に保持させることができる。特に、容器詰炭酸飲料における後述するガスボリュームが2.85超3.15未満である場合、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤がステビア抽出物を含有しなければ、容器詰炭酸飲料からの炭酸ガスのガス抜けを促進してしまう。しかし、[S]/[C]が上記範囲になるように炭酸ガス保持剤にさらにステビア抽出物を含有させることで、容器詰炭酸飲料のガスボリュームが上述した範囲であっても、炭酸ガスを効果的に保持させることができる。
【0034】
また、[S]/[C]が上記範囲にあることで、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料において、非重合体カテキン類に由来する渋味が感じられず、かつステビア抽出物に由来する甘味が後切れのよいものとなり、嗜好的に極めて好ましい容器詰炭酸飲料となる。なお、本明細書におけるステビア抽出物の含有量[S]は、公知の高速液体クロマトグラフ法により測定することができる。
【0035】
本実施形態に係る炭酸ガス保持剤においては、上記EGCgの含有量[E]に対するステビア抽出物の含有量[S]の比[S]/[E]が0.1〜7であることが好ましく、0.3〜5.4であることがさらに好ましく、0.3〜3であることが特に好ましい。[S]/[E]がこの範囲にあることで、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料において炭酸ガスを効果的に保持させることできる。
【0036】
本実施形態に係る炭酸ガス保持剤においては、非重合体カテキン類の含有量[C](質量%)に対するレバウディオサイドAの含有量[R](質量%)の比[R]/[C]が0.1〜5であることが好ましく、0.2〜3.8であることがさらに好ましく、0.2〜2.1であることが特に好ましい。[R]/[C]がこの範囲にあることで、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料において炭酸ガスを効果的に保持させることできる。なお、本明細書におけるレバウディオサイドAの含有量[R]は、公知の高速液体クロマトグラフ法により測定することができる。
【0037】
本実施形態に係る炭酸ガス保持剤においては、上記EGCgの含有量[E](質量%)に対するに対するレバウディオサイドAの含有量[R](質量%)の比[R]/[E]が0.096〜6.8であることが好ましく、0.28〜5.2であることがさらに好ましく、0.28〜2.9であることが特に好ましい。[R]/[E]がこの範囲にあることで、本実施形態に係る炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料において炭酸ガスを効果的に保持させることできる。なお、本明細書におけるレバウディオサイドAの含有量[R]は、公知の高速液体クロマトグラフ法により測定することができる。
【0038】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、非重合体カテキン類の含有量(質量%)が0.001〜0.035質量%となるように、上述した炭酸ガス保持剤を配合することが好ましく、0.002〜0.03質量%となるように配合することがさらに好ましく、0.002〜0.02質量%となるように配合することが特に好ましい。非重合体カテキン類の含有量が上述した範囲になるように炭酸ガス保持剤を配合することで、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスが効果的に保持され、かつ非重合体カテキン類に由来する渋味が感じられないものとなる。
【0039】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、エピガロカテキンガレート(EGCg)の含有量(質量%)が0.0007〜0.026質量%となるように、上述した炭酸ガス保持剤を配合することが好ましく、0.0014〜0.023質量%となるように配合することがさらに好ましく、0.0014〜0.015質量%となるように配合することが特に好ましい。EGCgの含有量が上述した範囲になるように炭酸ガス保持剤を配合することで、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスが効果的に保持され、かつ風味に優れたものとなる。
【0040】
また、上述した炭酸ガス保持剤がさらにステビア抽出物を含有する場合、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、ステビア抽出物を0.003〜0.05質量%の含有量で含有することが好ましく、0.005〜0.05質量%であることがさらに好ましく、0.005〜0.04質量%であることが特に好ましく、0.005〜0.022質量%であることが極めて好ましい。ステビア抽出物の含有量が上述した範囲になるように炭酸ガス保持剤を配合することで、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスが効果的に保持され、かつステビア抽出物に由来する甘味が後切れのよいものとなる。
【0041】
また、上述した炭酸ガス保持剤がさらにレバウディオサイドAを含有する場合、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、レバウディオサイドAを0.0028〜0.048質量%の含有量で含有することが好ましく、0.0048〜0.048質量%であることがさらに好ましく、0.0048〜0.039質量%であることが特に好ましく、0.0048〜0.022質量%であることが極めて好ましい。レバウディオサイドAの含有量が上述した範囲になるように炭酸ガス保持剤を配合することで、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスが効果的に保持され、かつレバウディオサイドAに由来する甘味が後切れのよいものとなる。
【0042】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において、上述した炭酸ガス保持剤がステビア抽出物を含有しない場合、炭酸ガスのガスボリュームは、1.8〜2.85であるか、又は3.15〜4.0であることが好ましい。炭酸ガスのガスボリュームがこの範囲にあることで、ステビア抽出物を含有しない炭酸ガス保持剤を配合した容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスが効果的に保持される。また、炭酸ガスのガスボリュームが上述した範囲にあることで、炭酸ガスの清涼感と、それによる喉越しの良さを得ることができる。一方、炭酸ガスのガスボリュームが2.85超3.15未満である場合、非重合体カテキン類を含有することにより、容器詰炭酸飲料からの炭酸ガスのガス抜けが促進されてしまう。なお、本明細書における炭酸ガスのガスボリュームとは、20℃において、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を炭酸飲料の体積で除したものをいい、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0043】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において、上述した炭酸ガス保持剤がステビア抽出物を含有する場合、炭酸ガスのガスボリュームは1.8〜4.0であることが好ましい。上述した炭酸ガス保持剤がステビア抽出物を含有する場合、炭酸ガスのガスボリュームが1.8〜2.85又は3.15〜4.0である場合だけでなく、2.85超3.15未満の場合であっても、容器詰炭酸飲料に炭酸ガスを効果的に保持させることができる。また、炭酸ガスのガスボリュームがこの範囲にあることで、炭酸ガスの清涼感と、それによる喉越しの良さを得ることができる。なお、炭酸ガスのガスボリュームが1.8〜2.85又は3.15〜4.0であると、容器詰炭酸飲料に炭酸ガスをさらに効果的に保持させることができるため、より好ましい。
【0044】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上述した炭酸ガス保持剤の他、水や、公知の飲料に含まれる材料(成分)、例えば、ビタミン類、ステビア抽出物以外の甘味付与剤、酸味料、香料、ミネラル分、色素成分、機能性成分等を、本実施形態による効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0045】
水は、飲用に適した水であればよく、例えば、純水、硬水、軟水、イオン交換水等のほか、これらの水を脱気処理した脱気水等が挙げられる。
【0046】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK及びビタミンB群等が挙げられる。
【0047】
ステビア抽出物以外の甘味付与剤としては、糖類又は甘味料を使用することができ、糖類としては、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖等が挙げられる。甘味料としては、例えば、砂糖、異性化糖、キシリトール、パラチノース、エリスリトール等のほか、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、サッカリン、スクラロース等の高甘味度甘味料が挙げられる。また、ソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよいし、シュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料等を含んでいてもよい。
【0048】
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類が挙げられ、中でも、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸等が好ましく、クエン酸が特に好ましい。
【0049】
香料としては、例えば、柑橘その他果実から抽出した香料、果汁又は果実ピューレ、植物の種実、根茎、木皮、葉等又はこれらの抽出物、乳又は乳製品、合成香料等が挙げられる。
【0050】
ミネラル分としては、例えば、カルシウム、カリウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛等が挙げられる。
【0051】
色素成分としては、例えば、マリーゴールド色素等のカロテノイド系色素、ベニバナ色素等のフラボノイド系色素、アントシアニン系色素、クチナシ色素類、ビート色素等のベタニン系色素、クロレラ、葉緑素等、カラメル色素等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
【0052】
機能性成分としては、例えば、コラーゲン、鮫軟骨、牡蛎エキス、キトサン、プロポリス、オクタコサノール、トコフェロール、カロチン、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、乳酸菌、霊芝、アガリクス等が挙げられる。
【0053】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、ガム、油、pH調整剤、品質安定剤等を含有してもよい。
【0054】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料のpHは、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがさらに好ましい。容器詰炭酸飲料のpHが上記範囲内にあると、ほどよい酸味が得られ、嗜好的に好ましい飲料となる。
【0055】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において使用される容器としては、通常用いられる飲料用容器であればよいが、炭酸ガスのガス圧を考慮すると、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの所定の強度を有する容器であるのが好ましい。また、開栓後も炭酸ガスを効果的に保持するために、当該容器は再栓可能な蓋を備えていることが好ましい。
【0056】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上述した炭酸ガス保持剤を配合する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、上述した炭酸ガス保持剤を添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。
【0057】
以上の炭酸ガス保持剤は、容器詰炭酸飲料に配合したときに、炭酸ガスを効果的に保持させることができる。また、以上の容器詰炭酸飲料は、炭酸ガスの保持に優れており、例えば開栓後非冷蔵下にて放置された場合でも炭酸ガスの保持に優れているため、炭酸ガスによる清涼感が持続されるものである。
【0058】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0059】
以下、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。なお、非重合体カテキン類を含有する市販品として、テアフラン90S(伊藤園社製)を用いた。テアフラン90Sに含まれる非重合体カテキン類等の含有量、及び非重合体カテキン類全体中における8種のカテキン類化合物の各含有率を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
〔容器詰炭酸飲料の製造(1)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表2に示す濃度になるように、常温の純水に溶解させたクエン酸水溶液と、純水又は50℃の温純水に溶解させたエピガロカテキンガレート(EGCg)を含有する非重合体カテキン類(伊藤園社製,テアフラン90S)の水溶液とを混合した後、98℃約5秒の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、後殺菌後に炭酸ガスボリュームが約2.1になるよう、無添加炭酸水によって規定量にメスアップし、洗浄殺菌済みの280mL容PETボトルに、充填量が280gとなるように計量し、充填した。その後、コールドスポットで65℃10分が確保できる後殺菌を行い、容器詰炭酸飲料を得た(試料1及び2)。
【0062】
また、容器詰炭酸飲料における最終濃度が表2に示す濃度になるように、常温の純水に溶解させたクエン酸水溶液と、市販の黒烏龍茶(サントリー社製,ウーロン茶重合ポリフェノール表示値:70mg/350mL)とを混合した後、98℃約5秒の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、後殺菌後に炭酸ガスボリュームが約2.1になるよう、無添加炭酸水によって規定量にメスアップし、洗浄殺菌済みの280mL容PETボトルに、充填量が280gとなるように計量し、充填した。その後、コールドスポットで65℃10分が確保できる後殺菌を行い、容器詰炭酸飲料を得た(試料3)。
【0063】
<試験例1>カテキン類、(−)−エピガロカテキンガレート(EGCg)、カフェイン及び重合カテキンの定量
Gotoらの方法(T.Goto,Y.Yoshida,M.Kiso and H.Nagashima,Journal of Chromatography A,749(1996)295-299)に準拠し、高速液体クロマトグラフ法によりカテキン類、及びカフェインの定量を行った。また、特許文献1に記載された方法に準拠し、高速液体クロマトグラフ法により重合カテキンの定量を行った。
【0064】
<試験例2>炭酸ガスボリュームの測定
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。試料1〜3の各容器詰炭酸飲料(サンプル)を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、ガス内圧計を取り付けて、針先でキャップを穿孔し、一度活栓を開いてガス抜き(以下「スニフト」という。)し、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、ゲージの指針が一定の位置に達したときの値(MPa)を読み取り記録した。
【0065】
スニフトした後ガス内圧計を取り外し、開栓して温度計で液温を測定し記録した。測定して得たガス内圧力と液温を炭酸ガス吸収係数表に当てはめ、必要なガス内圧力の温度補正を行い、炭酸ガスボリュームを導いた。結果を表2に示す。
【0066】
<試験例3>炭酸ガス残存率の測定
試料1〜3の各容器詰炭酸飲料(サンプル)の質量を測定後(開栓前)、室温(約16℃)にて開栓した。開栓した各サンプルを室温に放置し、3時間後及び72時間後に再栓して各サンプルの質量を測定した。開栓前のサンプル質量と炭酸ガスが完全に抜けたと考えられる72時間後のサンプル質量との差を、サンプルに含まれていた炭酸ガスの全量として算出した。また、開栓前のサンプル質量と開栓3時間後のサンプル質量との差を、開栓3時間後において放出された炭酸ガス量として算出した。炭酸ガス全量と開栓後3時間後において放出された炭酸ガス量から、開栓3時間後における炭酸ガス残存率を算出した。なお、試験は各試料について4連で実施し、その平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表2から明らかなように、炭酸ガスボリュームが2.1〜2.2の容器詰炭酸飲料においては、飲料にカテキンを配合することにより、開栓後3時間後の炭酸ガス残存率が顕著に増加し、すなわち開栓後における炭酸ガスのガス抜けが抑制された(試料1〜3)。この効果は、試料3よりも試料2において顕著であった。なお、試料2と試料3とでは、エピガロカテキンガレート(EGCg)の含有量及びカフェインの含有量に顕著な差が認められた。これらの結果より、試料2においては、試料2に含まれるEGCg等の非重合体カテキン類が、炭酸ガス保持剤として機能していると考えられる。
【0069】
〔容器詰炭酸飲料の製造(2)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表3に示す濃度になるように、上述したクエン酸水溶液と、純水又は上述した非重合体カテキン類の水溶液とを混合し、かつ炭酸ガスボリュームがそれぞれ約2.6(試料4及び5)、約2.9(試料6及び7)、及び約3.0(試料8及び9)となるよう無添加炭酸水を添加した以外は試料1及び2と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料4〜9)。
【0070】
得られた試料4〜9の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、上述した試験例2及び3と同様にして炭酸ガスボリューム及び炭酸ガス残存率を測定した。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
表3の結果から、炭酸ガスボリュームが2.6〜2.7である場合には、非重合体カテキン類を含有する容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスのガス抜けが抑制されることが示された(試料4及び5)。一方、炭酸ガスボリュームが2.9〜3.0である場合には、非重合体カテキン類を容器詰炭酸飲料に配合すると炭酸ガスのガス抜けが促進されることが明らかとなった(試料6〜9)。これらの結果より、試料5においては、試料5に含まれるEGCg等の非重合体カテキン類が炭酸ガス保持剤として機能していると考えられる。
【0073】
〔容器詰炭酸飲料の製造(3)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表4に示す濃度になるように、上述したクエン酸水溶液と、純水又は上述した非重合体カテキン類の水溶液とを混合し、かつ炭酸ガスボリュームが約3.3となるよう無添加炭酸水を添加した以外は試料1及び2と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料10及び11)。
【0074】
得られた試料10及び11の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、上述した試験例2及び3と同様にして炭酸ガスボリューム及び炭酸ガス残存率を測定した。結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
表4の結果から、炭酸ガスボリュームが3.2〜3.3である場合には、非重合体カテキン類を含有する容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスのガス抜けが抑制されることが示された(試料10及び11)。これらの結果より、試料11においては、試料11に含まれる非重合体カテキン類が炭酸ガス保持剤として機能していると考えられる。
【0077】
したがって、表2〜4の結果を総合すると、炭酸ガスボリュームが2.85以下であるか、又は3.15以上である場合には、非重合体カテキン類を配合することで炭酸ガスのガス抜けが抑制され、一方炭酸ガスボリュームが2.85超3.15未満である場合には、非重合体カテキン類を配合することで炭酸ガスのガス抜けが促進されることが明らかとなった。
【0078】
〔容器詰炭酸飲料の製造(4)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表5に示す濃度になるように、上述したクエン酸水溶液と、純水及び/又は上述した非重合体カテキン類の水溶液とを混合し、かつ炭酸ガスボリュームが約2.5となるよう無添加炭酸水を添加した以外は試料1及び2と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料12〜15)。
【0079】
得られた試料12〜15の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、上述した試験例2及び3と同様にして炭酸ガスボリューム及び炭酸ガス残存率(開栓3時間後、6時間後)を測定した。結果を表5に示す。
【0080】
【表5】

【0081】
表5に示すように、非重合体カテキン類を含有する試料13〜15において、炭酸ガスのガス抜けが抑制されることが明らかとなった。これらの結果より、試料13〜15においては、各試料に含まれる非重合体カテキン類が炭酸ガス保持剤として機能していると考えられる。
【0082】
〔容器詰炭酸飲料の製造(5)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表6に示す濃度になるように、上述したクエン酸水溶液と、上述した非重合体カテキン類の水溶液とを混合し、かつ炭酸ガスボリュームが約2.5となるよう無添加炭酸水を添加した以外は試料1及び2と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料16及び17)。
【0083】
<試験例4>官能評価
得られた試料16、17及び上述した試料12〜15の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された7人のパネラーにより、5℃に冷却保管されたサンプル50mLを試飲することにより行った。次に示す基準でカテキンに由来する渋味に関し、5段階にて評価した。各パネラーによる評点の平均値を表6に示す。また、渋味の評価結果から、次に示す基準にて、炭酸飲料として嗜好的に好ましいか否かを判定した。結果を表6に示す。
【0084】
=渋味の評価=
1:感じない
2:わずかに感じる
3:弱い
4:強い
5:極めて強い
【0085】
=渋味の判定=
○:嗜好的に好ましい(渋味の評点が3.5未満)
△:嗜好的にやや難があるが、概ね良好である
(渋味の評点が3.5以上4.5未満)
×:嗜好的に不適(渋味の評点が4.5以上)
【0086】
【表6】

【0087】
表6に示すように、容器詰炭酸飲料における非重合体カテキン類の含有量が0.040質量%であると、カテキンに由来する渋味が感じられるようになり、嗜好的に好ましくない炭酸飲料となった(試料15)。したがって、上述した炭酸ガス保持剤を容器詰炭酸飲料に配合する場合、非重合体カテキン類の含有量が0.035質量%以下となるように配合することが好ましいと考えられる。
【0088】
〔容器詰炭酸飲料の製造(6)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表7に示す濃度になるように、ステビア抽出物(守田化学工業社製,レバウディオJ−100,レバウディオサイドA含有量:96質量%)及び/又はクエン酸を常温の純水に溶解させた水溶液と、純水又は上述した非重合体カテキン類の水溶液とを混合し、かつ炭酸ガスボリュームが約2.7となるよう無添加炭酸水を添加した以外は試料1及び2と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料18〜25)。
【0089】
得られた試料18〜25の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、上述した試験例2及び3と同様にして炭酸ガスボリューム及び炭酸ガス残存率を測定した。結果を表7に示す。
【0090】
<試験例5>官能評価
試料18〜25の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された7人のパネラーにより、5℃に冷却保管されたサンプル50mLを試飲することにより行った。上述した試験例4と同様の基準によりカテキンに由来する渋味に関し5段階で、また次に示す基準でステビア抽出物に由来する甘味の後切れの悪さに関し5段階で、それぞれ評価した。各パネラーによる評点の平均値を表7に示す。また、上記2項目の結果から総合的に判断し、総合評価を行った。結果を表7に示す。
【0091】
=甘味の後切れの評価=
1:甘味の後引きがない
2:甘味の後引きをわずかに感じる
3:甘味の後引きを感じるが、飲用に問題はない
4:甘味の後引きを、やや強く感じる
5:甘味の後引きを、強く感じる
【0092】
=総合評価=
○:嗜好的に好ましい(いずれの評点も3.5未満)
△:嗜好的にやや難があるが、概ね良好である
(いずれかの評点が3.5以上4.5未満)
×:嗜好的に不適(いずれかの評点が4.5以上)
【0093】
【表7】

【0094】
表7に示すように、炭酸ガスボリュームが2.7〜2.8である場合に、非重合体カテキン類をそれぞれ0.010質量%、0.020質量%含有する容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスのガス抜けが抑制された(試料18,19及び23)。また、非重合体カテキン類を含有する容器詰炭酸飲料において、さらにステビア抽出物を配合することにより、炭酸ガスのガス抜けがさらに抑制された(試料18〜22,試料18及び23〜25)。これらの結果より、試料19及び23においては各試料に含まれる非重合体カテキン類が、また試料20〜22及び24〜25においては各試料に含まれる非重合体カテキン類及びレバウディオサイドA等のステビア抽出物が、それぞれ炭酸ガス保持剤として機能していると考えられる。ただし、ステビア抽出物を0.06質量%配合すると、ガス抜け抑制効果はみられるものの、ステビア抽出物に由来する甘味の後切れの悪さが目立ち、嗜好的に好ましくない炭酸飲料となった(試料22)。
【0095】
〔容器詰炭酸飲料の製造(7)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表8に示す濃度になるように、上述したステビア抽出物及び/又はクエン酸の水溶液と、純水又は上述した非重合体カテキン類の水溶液とを混合し、かつ炭酸ガスボリュームが約3.3となるよう無添加炭酸水を添加した以外は試料1及び2と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料26)。
【0096】
得られた試料26の容器詰炭酸飲料(サンプル)について、上述した試験例2及び3と同様に炭酸ガスボリューム及び炭酸ガス残存率を測定し、かつ上述した試験例4及び5と同様にして官能評価を行った。また、上述した試料10及び11についても、試験例4及び5と同様に官能評価を実施した。結果を表8に示す。
【0097】
【表8】

【0098】
表8に示すように、炭酸ガスボリュームが3.2〜3.3である場合に、非重合体カテキン類を配合することにより炭酸ガスのガス抜けが抑制され、さらにステビア抽出物を配合することにより炭酸ガスのガス抜けがさらに抑制された(試料10,11及び26)。これらの結果より、試料26においては、試料26に含まれる非重合体カテキン類及びレバウディオサイドA等のステビア抽出物が、炭酸ガス保持剤として機能していると考えられる。また、試料10、11及び26の各容器詰炭酸飲料は、いずれも渋味がほとんど感じられず、かつ甘味の後切れの悪さがなく、嗜好的に好ましい炭酸飲料であった。
【0099】
〔容器詰炭酸飲料の製造(8)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表9に示す濃度になるように、上述したステビア抽出物及び/又はクエン酸の水溶液と、純水又は非重合体カテキン類の水溶液とを混合し、かつ炭酸ガスボリュームが約3.0となるよう無添加炭酸水を添加した以外は試料1及び2と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料27〜29)。
【0100】
得られた試料27〜29の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、上述した試験例2及び3と同様にして炭酸ガスボリューム及び炭酸ガス残存率を測定した。結果を表9に示す。
【0101】
【表9】

【0102】
表9に示すように、炭酸ガスボリュームが2.9〜3.0である場合には、非重合体カテキン類を含有する容器詰炭酸飲料において炭酸ガスのガス抜けが促進された(試料27及び28)。一方、非重合体カテキン類に加えてステビア抽出物を含有させることにより、非重合体カテキン類によるガス抜け促進作用を抑制するだけでなく、非重合体カテキン類及びステビア抽出物を含有しない容器詰炭酸飲料と比較しても、炭酸ガスのガス抜けを抑制することができた(試料27〜29)。これらの結果より、試料29においては、試料29に含まれる非重合体カテキン類及びレバウディオサイドA等のステビア抽出物が炭酸ガス保持剤として機能していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、炭酸ガスを効果的に保持させることができる炭酸ガス保持剤、及び炭酸ガスのガス抜けが抑制された容器詰炭酸飲料として有用である。特に、本発明によれば開栓後非冷蔵においても炭酸ガスを保持することができるため、本発明の容器詰炭酸飲料は、開栓後も非冷蔵にて放置されることが多い容器詰炭酸飲料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非重合体カテキン類を有効成分として含有することを特徴とする炭酸ガス保持剤。
【請求項2】
前記非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレートが含まれており、前記非重合体カテキン類における前記エピガロカテキンガレートの含有量が30質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス保持剤。
【請求項3】
さらに重合カテキンを含有し、前記非重合体カテキン類の含有量[C](質量%)に対する前記重合カテキンの含有量[P](質量%)の比[P]/[C]が0.25以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭酸ガス保持剤。
【請求項4】
さらにステビア抽出物を有効成分として含有し、前記非重合体カテキン類の含有量[C](質量%)に対する前記ステビア抽出物の含有量[S](質量%)の比[S]/[C]が0.02〜5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭酸ガス保持剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭酸ガス保持剤を配合したことを特徴とする容器詰炭酸飲料。
【請求項6】
炭酸ガスのガスボリュームが1.8〜2.85であるか、又は3.15〜4.0であることを特徴とする請求項5に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項7】
請求項4に記載の炭酸ガス保持剤を配合したことを特徴とする容器詰炭酸飲料。
【請求項8】
炭酸ガスのガスボリュームが1.8〜4.0であることを特徴とする請求項7に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項9】
前記容器詰炭酸飲料における前記非重合体カテキン類の含有量が0.001〜0.035質量%となるように、前記炭酸ガス保持剤を配合したことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項10】
容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法であって、前記容器詰炭酸飲料に非重合体カテキン類を有効成分として含有させることを特徴とする容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法。
【請求項11】
前記非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレートが含まれており、前記非重合体カテキン類における前記エピガロカテキンガレートの含有量が30質量%以上となるように、前記エピガロカテキンガレートを含有させることを特徴とする請求項10に記載の容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法。
【請求項12】
前記容器詰炭酸飲料がさらに重合カテキンを含有し、
前記容器詰炭酸飲料において、前記非重合体カテキン類の含有量(質量%)に対する前記重合カテキンの含有量(質量%)の比が0.25以下となるように、前記非重合体カテキン類及び前記重合カテキンを含有させる
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の容器詰炭酸飲料における炭酸ガス保持方法。

【公開番号】特開2012−213341(P2012−213341A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79810(P2011−79810)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【特許番号】特許第4815545号(P4815545)
【特許公報発行日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】