説明

炭酸ストロンチウム粒子及びその製造方法

【課題】本発明は、光学用途に適した微細な炭酸ストロンチウム粒子を提供する。
【解決手段】平均短軸径が100nm以下、且つ平均長軸径が400nm以下であって、長軸径の変動係数が30%以下であることを特徴とする炭酸ストロンチウム粒子及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用途に適した微細な炭酸ストロンチウム粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学フィルムやシートなどの光学用途において光学機能性を制御する目的から、無機化合物結晶として炭酸ストロンチウム結晶などの微細な粒子を透明高分子材料と複合化することが検討されており、これらの光学フィルムやシートなどの光学機能性に適した材料設計に対して、用いる無機化合物結晶の粒子サイズは、粒度分布幅が狭くかつ、光散乱することのない微細な粒子が求められている。
【0003】
ここで用いられている無機化合物結晶として、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられ、その製造方法としては、アルカリ土類金属イオンを含む水溶液と炭酸イオンを含む水溶液を混合させて製造する方法や、アルカリ土類金属イオンを含むアルカリ性の水溶液に炭酸ガスを吹き込んで製造する方法などが知られている。
【0004】
しかしながら、単純にアルカリ土類金属イオンと炭酸イオンを反応させるだけでは、制御されたサイズの粒子を得ることはできない。
【0005】
微細な炭酸塩の粒子の例として、可溶性バリウム塩に可溶性炭酸塩又は二酸化炭素(炭酸ガス)を反応させて、可溶性バリウム塩が過剰の状態で反応を行わせると共に、反応前から反応後までのいずれかの時期にカルボン酸を添加することにより、平均粒子サイズ0.5〜1.5μm、BET比表面積が5m/g以上である炭酸バリウムの粒子が報告されている。(例えば、特許文献1参照。)。しかし、ここで用いられるカルボン酸はいずれも低分子化合物であり、得られた粒子も比較的サイズの大きな粒子を含んでいる。又、炭酸ストロンチウム粒子に関しての記載はない。
【0006】
又、狭い粒度分布の炭酸ストロンチウム粉末として、水酸化ストロンチウム溶液に、好ましくはカルボン酸のアンモニウム塩及びアルキルアンモニウム塩の存在下にて、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)を導入して、炭酸ストロンチウム粒子を生成させ、生成した炭酸ストロンチウム粒子を高い回転数2000〜8000rpmで回転する攪拌反応機に導入し、剪断力及び摩擦力を加えることで、BET比表面積が3〜50m/gの範囲にあって、粒子の少なくとも95%以上が1.0μm以下の直径を有する炭酸ストロンチウム粒子が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしこの方法で得られた炭酸ストロンチウム粒子は、粒子生成後に剪断力及び摩擦力によって微細化しているものであり、長軸径が400nm以下であり長軸径の変動係数が30%以下である粒子に関して記載がない。
【0007】
ポリマー系の分散剤としてポリカルボン酸又はその塩の存在下にて水酸化バリウム水溶液と二酸化炭素(炭酸ガス)または可溶性炭酸塩を反応させて得られる比表面積の大きな炭酸バリウムが報告されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この方法で得られる炭酸バリウムの長軸径は、500nm〜3μmであり、しかも炭酸ストロンチウム粒子に関しての記載はない。
【0008】
又、結晶化制御物質としてポリアスパラギン酸、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリアスパラギン酸およびクエン酸より選ばれた物質の存在下、水酸化カルシウムを炭酸化することにより得られる結束したプレート構造粒子となる沈降炭酸カルシウムが報告されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、この方法によって得られた粒子は、高次構造体粒子であって、しかも炭酸ストロンチウム粒子に関して何ら記載はない。
【0009】
又、凝集防止剤としてポリアルキレンオキシド系化合物及びポリビニルアルコール系化合物を含む水溶液中において、アルカリ土類金属イオン源と炭酸イオン源を反応させて得られる、平均長軸径が1μm以下でアスペクト比が2.5以上のアルカリ土類金属の炭酸塩粒子が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかし、実際には平均長軸径が730nmまたは780nmのものであり、長軸径の変動係数も36%または42%と大きいものしか報告されておらず、平均長軸径を400nm以下に制御すること並びに長軸径の変動係数を30%以下であるアルカリ土類金属の炭酸塩について記載がない。
【0010】
又、アニオン性の水溶性高分子であるスチレン−マレイン酸共重合体、ポリメタクリル酸と炭酸イオンを含有する溶液中に、ストロンチウムイオン含有溶液を添加すると、ナノサイズのサブユニットからなる特異的な炭酸ストロンチウムの凝集粒子結晶(約1〜3μmのダンベル状又は、球状凝集体)が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。しかし、炭酸ストロンチウムに関して、平均長軸径が400nm以下の微細な粒子および変動係数に関する記載はない。
【0011】
このように、従来技術においては必ずしも光学用に適した粒子径が小さく且つ、変動係数の小さな炭酸ストロンチウム粒子は得られていない。
【0012】
【特許文献1】特開平07−025611号公報
【特許文献2】特表平11−514961号公報
【特許文献3】特開2000−103617号公報
【特許文献4】特開2004−533396号公報
【特許文献5】特開2006−176367号公報
【非特許文献1】J.Yu,Journal of Solid State Chemistry,179,800−803(2006)
【非特許文献2】Q.L.Min,X.Kai,M.J.Ming,Acta Chimica Sinica,61,126−128(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の事実に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、光学用途に適した特定の大きさ及び変動係数を有する炭酸ストロンチウム粒子に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討した結果、平均短軸径が100nm以下、且つ平均長軸径が400nm以下であって、長軸径の変動係数が30%以下の炭酸ストロンチウム粒子が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させたものである。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径が100nm以下であり、好ましくは80nm以下、特に好ましくは60nm以下である。平均短軸径が、100nmを超えると、粒子サイズが大きく光学用途に適さない。また、平均長軸径が400nm以下であり、好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。平均長軸径が400nmを超えると、粒子サイズが大きいために、光学用途に適さない。
【0017】
下記の数式で表される長軸径の変動係数は、長軸径の粒度分布を表す指標であり、本発明の炭酸ストロンチウム粒子では、数1で表される長軸径の変動係数が30%以下であり、好ましく27%以下、特に好ましくは22%以下である。長軸径の変動係数が30%を超えると、粒子のばらつきが大きいために、光学用途に適さない。
【0018】
【数1】

【0019】
(ここで、rは平均長軸径、nはサンプル数、rはi番目に測定した粒子の長軸径を表す)。
【0020】
本発明の炭酸ストロンチウム粒子は、水溶性高分子であるカルボン酸系重合体とストロンチウムイオン源を溶媒に溶解させた溶液を、pHを8.0以上として炭酸ガスを導入して反応させることにより製造する。
【0021】
ここで、用いる溶媒としては、カルボン酸系重合体及びストロンチウムイオン源を溶解させる溶媒であれば特に制限はなく、水あるいは水と有機溶媒との混合溶媒が好ましく、該有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。
【0022】
ストロンチウムイオン源は、工業的に入手できるものであれば、特に制限はなく、例えば水酸化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム等が挙げられ、これらは1種以上用いることができる。また、ストロンチウムイオン源の溶液中の濃度は本発明の目的を達成できればよく、溶液中の濃度は、0.1〜40重量%が好ましく、特に好ましくは1〜20重量%である。
【0023】
水溶性高分子であるカルボン酸系重合体は、カルボキシル基を含有した水溶性高分子であり、アルカリ土類金属イオンに対してキレート能を有するものが好適であり、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリヒドロキシアクリル酸、スチレン−マレイン酸共重合体、イソブチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブテン共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体及びこれらの塩などを挙げることができ、その中でもポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、スチレン−マレイン酸共重合体、イソブチレン−マレイン酸共重合体及びそれらの塩等が好ましい。これらの1つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
カルボン酸系重合体の重量平均分子量としては特に制限はなく、粒子サイズの制御の観点から、好ましくは500〜300,000であり、特に好ましくは500〜100,000である。
【0025】
水溶性高分子であるカルボン酸系重合体の割合は、ストロンチウムイオン源100重量部に対して20〜2,000重量部が好ましく、特に50〜1,000重量部が好ましい。
【0026】
水溶性高分子であるカルボン酸系重合体の添加時期については、炭酸ガス吹き込み開始前であればよく、ストロンチウムイオン源が存在する溶液中にカルボン酸系重合体を添加しても、カルボン酸系重合体が存在する溶液中にストロンチウムイオン源を配合してもよい。しかし、炭酸ガス吹き込み開始後または反応終了後にカルボン酸重合体を添加すると、本発明の平均長軸径及び平均短軸径ならびに長軸径の変動係数の炭酸ストロンチウム粒子が得られない。
【0027】
本発明における炭酸ガスを吹き込む前の原料溶液のpHは8.0以上であり、好ましくはpH10.0以上、特に好ましくはpH12.0以上である。また、前記pHとするためにはアルカリ剤で調整することが好ましく、該アルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0028】
反応温度としては、本発明の目的を達成できればよく、−10〜100℃が好ましく、特に好ましくは5〜90℃である。
【0029】
炭酸ガスの供給速度は、特に制限はなく、0.1〜100mlが好ましく、ストロンチウムイオン源1gあたりでは0.1〜200ml/分が好ましく、特に1〜100ml/分が好ましい。
【0030】
炭酸ガスの供給方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、気泡をより微細化させ、反応系中への拡散を効率的に行うために、ガラスフィルター、分散板などをガス吹き込み口に用い、且つ、反応容器に出来るだけ均一に供給するために、容器の底部から吹き込むことが好ましい。
【0031】
反応中の溶液の混合・攪拌方法としては、例えば、攪拌羽根を有するモーター攪拌式の装置、ディスパーミキサー、ホモジナイザー、スクリューミキサー、スタティックミキサーなど用い混合・攪拌を行うことができる。
【0032】
必要に応じて、反応開始後の液中に粒子表面処理剤として、例えばテトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩型の各種カチオン性界面活性剤;ステアリン酸およびその塩などの脂肪酸または脂肪酸塩;シランカップリング剤;チタネートカップリング剤などを目的に応じて適宜選択して配合することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、平均短軸径が100nm以下、且つ平均長軸径が400nm以下、更に長軸の変動係数が30%以下の微細な炭酸ストロンチウム粒子に関するものであり、光学フィルムやシートなどの光学用途において、該炭酸ストロンチウム粒子と透明高分子材料との複合化による光学機能材料の設計に適した微細な粒子として利用できる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
以下、実施例の評価・測定に用いた方法を記す。
【0036】
〜炭酸ストロンチウム粒子の粒子形状の評価方法〜
反応により得られた炭酸ストロンチウム粒子をキーエンス株式会社製の走査型電子顕微鏡(装置名:VE−9800)を用いて、拡大倍率を3万倍にて粒子形状を測定した。サンプル点数として50点のデータから平均長軸径と平均短軸径を求めた。
【0037】
〜粒子の長軸径の変動係数(CV値)の算出〜
上記の走査型電子顕微鏡観察の結果から得られた50点の長軸径を基に下記の数式を用いて長軸径の変動係数を算出した。
【0038】
【数2】

【0039】
(ここで、rは平均長軸径、nはサンプル数、rはi番目に測定した粒子の長軸径を表す)。
【0040】
実施例1
1000ccのガラス製セパラブルフラスコ中、水300ccに対して水酸化ストロンチウム(和光純薬製試薬)2.5gを秤量し、加温し溶解させ、予め水100ccに対してポリアクリル酸(和光純薬製試薬、重量平均分子量5,000)を6.25g(水酸化ストロンチウム100重量部に対して、250重量部)溶解させた水溶液を加えた後、1M水酸化ナトリウムの水溶液を100cc加え溶液温度を25℃に調整した。そのときのpHは12.5であった。この溶液を攪拌羽根を取り付けたスリーワンモーターを用いて、800rpmにて攪拌した状態にて、ガラスフィルターが付けられた管を通して容器底から炭酸ガスを40ml/分(ストロンチウムイオン源1gあたり:16ml/分)の速度にて供給し反応を行った。反応挙動は溶液のpH変化と導電率変化によりモニタリングを行い、反応進行と反応終了を確認した。反応開始から30分経過後に導電率が一定となった時点で炭酸ガスの吹き込みを停止し反応を終了させた。反応終了時のpHは10.3であった。
【0041】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、球状体であり、長軸、短軸に相当する粒子径は50nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は18%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0042】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径に相当する粒子径が小さく、長軸径に相当する粒子径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0043】
実施例2
実施例1においてポリアクリル酸の代わりにポリメタクリル酸ナトリウム(Aldrich製、重量平均分子量9,500)を用い、炭酸ガスの供給速度を10ml/分(ストロンチウムイオン源1gあたり:4ml/分)、溶液温度を60℃とした以外は同様にして反応を行った。
【0044】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均短軸径が55nm、平均長軸径が90nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は22%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0045】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径が小さく、長軸径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0046】
実施例3
実施例1において水酸化ストロンチウムの代わりに塩化ストロンチウムを用いた以外は同様にして反応を行った。
【0047】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、球状体であり、長軸、短軸に相当する粒子径は55nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は20%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0048】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径に相当する粒子径が小さく、長軸径に相当する粒子径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0049】
実施例4
実施例1において水酸化ストロンチウムの添加量を1.0g、ポリアクリル酸の添加量を12.5g(水酸化ストロンチウム100重量部に対して、1250重量部)、炭酸ガスの供給速度を40ml/分(ストロンチウムイオン源1gあたり:40ml/分)とした以外は同様にして反応を行った。
【0050】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、球状体であり、長軸、短軸に相当する粒子径は54nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は17%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0051】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径に相当する粒子径が小さく、長軸径に相当する粒子径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0052】
実施例5
実施例1において水酸化ストロンチウム2.5gの代わりに酢酸ストロンチウム5.0g、ポリアクリル酸の添加量を2.5g(酢酸ストロンチウム100重量部に対して、50重量部)、炭酸ガスの供給速度を40ml/分(ストロンチウムイオン源1gあたり:8ml/分)とした以外は同様にして反応を行った。
【0053】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、球状体であり、長軸、短軸に相当する粒子径は56nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は20%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0054】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径に相当する粒子径が小さく、長軸径に相当する粒子径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0055】
実施例6
実施例1において水酸化ストロンチウムの添加量を1.0g、ポリアクリル酸6.25gをイソブチレン−マレイン酸共重合体のナトリウム塩(Aldrich製)18g(水酸化ストロンチウム100重量部に対して、1800重量部)、炭酸ガスの供給速度を40ml/分(ストロンチウムイオン源1gあたり:40ml/分)とした以外は同様にして反応を行った。
【0056】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均短軸径が55nm、平均長軸径が75nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は26%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0057】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径が小さく、長軸径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0058】
実施例7
実施例1において水酸化ストロンチウムの添加量を1.0g、ポリアクリル酸の添加量を12.5g(水酸化ストロンチウム100重量部に対して、1250重量部)、水酸化ナトリウムの水溶液の添加量を50cc、炭酸ガスの供給速度を40ml/分(ストロンチウムイオン源1gあたり:40ml/分)とした以外は同様にして反応を行った。炭酸ガスを吹き込む前のpHは12.0、吹き込み停止後のpHは8.9であった。
【0059】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、球状体であり、長軸、短軸に相当する粒子径は49nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は17%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0060】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径に相当する粒子径が小さく、長軸径に相当する粒子径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0061】
実施例8
実施例1において水酸化ストロンチウムの代わりに硝酸ストロンチウム(和光純薬)、ポリアクリル酸の代わりにポリイタコン酸を用い、温度を60℃とした以外は同様にして反応を行った。
【0062】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均短軸径は56nm、平均長軸径88nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は24%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0063】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径が小さく、長軸径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0064】
実施例9
実施例1において水酸化ストロンチウムの添加量を1.0g、ポリアクリル酸6.25gをポリスチレン−マレイン酸共重合体のナトリウム塩(Aldrich製)6.25g(水酸化ストロンチウム100重量部に対して、625重量部)、炭酸ガスの供給速度を40ml/分(ストロンチウムイオン源1gあたり:40ml/分)とした以外は同様にして反応を行った。
【0065】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、球状体であり、長軸、短軸に相当する粒子径は60nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は25%であり、粒径の揃った粒子が得られた。
【0066】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径に相当する粒子径が小さく、長軸径に相当する粒子径の変動係数が小さいことから、光学用途に適したものであった。
【0067】
比較例1
実施例1において、ポリアクリル酸を用いなかった以外は同様にして反応行った。得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均短軸径が140nm、平均長軸径が440nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は50%であり、粒子サイズのばらつきが大きかった。
【0068】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径が大きく、長軸径の変動係数が大きいことから、光学用途に適したものではなかった。
【0069】
比較例2
実施例1において、水溶性高分子をポリビニルアルコール(和光純薬製試薬、重量平均分子量7,500)に変えた以外は同様にして反応を行った。
【0070】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均短軸径が150nm、平均長軸径が520nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は42%であり、粒子サイズのばらつきが大きかった。
【0071】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径が大きく、長軸径の変動係数が大きいことから、光学用途に適したものではなかった。
【0072】
比較例3
実施例1において、ポリアクリル酸水溶液の添加時期を炭酸ガスの吹き込み開始から2分後に添加した以外は同様にして反応を行った。
【0073】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均短軸径が100nm、平均長軸径が350nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は36%であり、粒子サイズのばらつきが大きかった。
【0074】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径および平均長軸径は小さいが、長軸径の変動係数が大きいことから、光学用途に適したものではなかった。
【0075】
比較例4
実施例1において、ポリアクリル酸の代わりにクエン酸ナトリウム(和光純薬製)を用いた以外は同様にして反応を行った。
【0076】
得られた炭酸ストロンチウム粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均短軸径が115nm、平均長軸径が320nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は29%であった。
【0077】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均短軸径が大きく、光学用途に適したものではなかった。
【0078】
比較例5
実施例1において水酸化ストロンチウムの代わりに硝酸ストロンチウム(和光純薬製)、ポリアクリル酸の代わりにポリビニルアルコール(和光純薬製)を用いた以外は同様にして反応を行った。
【0079】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均短軸径が90nm、平均長軸径が475nmであった。又、長軸径の変動係数(CV値)は27%であった。
【0080】
これらの結果から得られた炭酸ストロンチウム粒子は、平均長軸径が大きく、光学用途に適したものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均短軸径が100nm以下、且つ平均長軸径が400nm以下であって、長軸径の変動係数が30%以下であることを特徴とする炭酸ストロンチウム粒子。
【請求項2】
水溶性高分子であるカルボン酸系重合体とストロンチウムイオン源を溶媒に溶解させた溶液を、pHを8.0以上として炭酸ガスを導入して反応させることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ストロンチウム粒子の製造方法。
【請求項3】
ストロンチウムイオン源が、水酸化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウムであることを特徴とする請求項2に記載の炭酸ストロンチウム粒子の製造方法。
【請求項4】
カルボン酸系重合体が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、スチレン−マレイン酸共重合体、イソブチレン−マレイン酸共重合体及びこれらの塩であることを特徴とする請求項2又は3に記載の炭酸ストロンチウム粒子の製造方法。
【請求項5】
カルボン酸系重合体の重量平均分子量が500〜300,000であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム粒子の製造方法。
【請求項6】
カルボン酸系重合体の割合が、ストロンチウムイオン源100重量部に対して20〜2,000重量部であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム粒子の製造方法。
【請求項7】
アルカリ剤でpH8.0以上に調整してから、炭酸ガスを吹き込むことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の炭酸ストロンチウム粒子の製造方法。

【公開番号】特開2009−173487(P2009−173487A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13947(P2008−13947)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】