説明

炭酸飲料のサーバシステム

【課題】時間や環境によって変化する樽内の飲料温度を測定して、炭酸飲料の注出圧を自動で最適化することができるサーバシステムを提供する。
【解決手段】炭酸飲料が入った飲料樽に炭酸ガス源からガス圧を与えて、システム末端の注出弁を開くことで前記飲料樽から冷却装置を経由して前記炭酸飲料を注出するサーバシステムにおいて、前記炭酸ガス源・前記飲料樽間のガス流路に設けたガス圧調整弁と、該ガス圧調整弁・前記飲料樽間のガス圧を測定するガス圧計と、前記飲料樽・前記冷却装置間の飲料温度を測定する液温計と、予め飲料温度ごとに炭酸ガスの供給圧を記憶したデータテーブルと、該データテーブルに基づいて前記液温計で測定された飲料温度に対応する炭酸ガスの供給圧を算出し、前記圧力センサで測定されるガス圧が前記算出した炭酸ガスの供給圧と一致するように前記ガス圧調整弁を制御する弁制御装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビール等の炭酸飲料を適切な炭酸溶解量で注出することができるサーバシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲食店等に設置されている従来一般的なビールサーバシステムは、図2に示すように、ビール樽BTにディスペンサヘッドDHを介してガスボンベGBおよび冷却装置(熱交換装置)CAが接続され、営業中は常時、ガスボンベGBからレギュレタRGによって所定圧力(通常、0.3MPa前後)に減圧した炭酸ガスをビール樽BT内のビール液面に印加しており、この状態でシステム末端のコックCを開ければ、ビール樽BTのビールは冷却装置CAに圧送され、この冷却装置CAを通過する間にビールが急冷されて、飲み頃に冷えたビールが容器に注出される。
【0003】
このようなビールサーバシステムは、特許文献1〜3等により既に公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−001635号公報
【特許文献2】特開2002−046797号公報
【特許文献3】特開2001−240194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ビールを提供する際の品質項目は、温度、泡の量やきめ細かさが代表的であるが、炭酸ガスの溶解量も重要な品質の一つである。炭酸ガスの溶解量が少ないビールは気が抜けた感じになる一方、多すぎると刺激が強すぎて、何れの場合も味覚に悪影響を及ぼすからである。
【0006】
ビール等の炭酸飲料において炭酸ガスの溶解量は、メーカ出荷時の樽詰状態で最適にされており、これをサーバシステムに接続してビール等を注出する際の圧力(ガスボンベから飲料樽に印加する炭酸飲料の注出圧)についても、銘柄ごとにメーカで推奨値なるものが設定されている。しかしながら、実際に推奨圧力にて注出作業を行っても、その注出されたビール等は必ずしも最適な炭酸溶解量を示さない場合があった。つまり、炭酸飲料は一定圧力下において、液温が上昇すると溶解した炭酸ガスが多く遊離するのに対して、液温が下がると炭酸ガスを多く溶解する性質が知られているが、従来のサーバシステムでは、飲料樽に印加する炭酸ガスの圧力がメーカ推奨値に固定されているのに対して、サーバ内の液温は樽の保管温度やサーバシステムの設置温度等によって変化し、当該液温変化によって炭酸溶解量が変化するためである。
【0007】
例えば、ビールサーバシステムの場合は、飲食店において厨房など熱気を有する高温環境下に設置されることが多く、このため樽内の液温が上昇して、注出された炭酸飲料は、炭酸ガスの溶解量が少ない、気の抜けたものとなりやすい。また、炭酸飲料が長時間、注出されない場合は、サーバ内で液温が極端に低下して、炭酸ガスの溶解量が過多となることがある。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、時間や環境によって変化する樽内の飲料温度を測定して、炭酸飲料の注出圧を自動で最適化することができるサーバシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明は、炭酸飲料が入った飲料樽に炭酸ガス源からガス圧を与えて、システム末端の注出弁を開くことで前記飲料樽から冷却装置を経由して前記炭酸飲料を注出するサーバシステムにおいて、前記炭酸ガス源と前記飲料樽間のガス流路に設けたガス圧調整弁と、該ガス圧調整弁と前記飲料樽間のガス圧を測定するガス圧計と、前記飲料樽と前記冷却装置間の飲料温度を測定する液温計とを備え、予め飲料温度ごとに炭酸ガスの供給圧を記憶したデータテーブルに基づいて前記液温計で測定された飲料温度に対応する炭酸ガスの供給圧を算出し、前記圧力センサで測定されるガス圧が前記算出した炭酸ガスの供給圧と一致するように前記ガス圧調整弁を制御するという手段を用いた。
【0010】
また、この種サーバシステムの普及度の高さから、炭酸飲料はビールであることが好ましい。
【0011】
さらに、飲料温度と炭酸ガス供給圧の関係を記憶したデータテーブルは、数種の炭酸飲料ごとに複数のデータを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明ではサーバ内の飲料温度を監視して、予め飲料温度に対する最適なガス供給圧を記憶したデータテーブルとの照合の下、検出した飲料温度に適するガス供給圧によって炭酸飲料を注出するものであるから、外部要因によって飲料温度が変化しても常に炭酸溶解量が一定の炭酸飲料を注出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明システムの一実施形態に係る全体回路図
【図2】従来のビールサーバシステムを示した全体回路図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の飲料サーバシステムの全体回路図であり、同図中、1はビールなどの炭酸飲料を収容した飲料樽、2は飲料樽1の液面を押圧して、炭酸飲料を飲料樽1の外部に押し出すためのガス圧を与える炭酸ガスが入ったガスボンベ(炭酸ガス源)、3は前記ガス圧によって飲料樽1から押し出された飲料を冷却する冷却装置、4はこの冷却装置3の出口に設けられた、システム末端装置としてのコック(注出弁)である。
【0015】
ここまで説明したシステム構成は図2に説明した従来技術と基本的に同じであり、飲料の注出方法も同じである。即ち、ガスボンベ2から炭酸ガスのガス圧を飲料樽1に印加した状態でコック4を開けば、冷却装置3で冷却された飲料がコックノズルから注出されるものである。
【0016】
そして、本発明は飲料樽1に収容した炭酸飲料の温度が外部の温度雰囲気や炭酸飲料の注出頻度等によって変化することに鑑み、飲料温度の変化に応じて、炭酸飲料を注出する際のガス圧も変化させることにより、適切な炭酸ガスの溶解量とした炭酸飲料を注出しようとするものである。
【0017】
そのため、まず飲料樽1とガスボンベ2の間のガス流路5には、後述する弁制御装置で開度調整されることによって、飲料樽1に対するガス圧を調整可能なガス圧調整弁6を接続している。このガス圧調整弁6として電磁弁を採用すればガス圧を無段階で調整することができる。
【0018】
このガス圧調整弁6の二次側ガス流路、即ちガス圧調整弁5と飲料樽1の間のガス流路5aには、当該ガス流路5aのガス圧を測定するガス圧計7を設けている。さらに、飲料樽1と冷却装置3の間の飲料流路8には、ここを流れる炭酸飲料の温度を測定する液温計9を設けている。
【0019】
一方、10はガス圧調整弁6を制御する弁制御装置であり、予め飲料温度ごとに炭酸ガスの供給圧を記憶したデータテーブル11を有している。そして、上述した液温計9およびガス圧計7から出力される飲料温度およびガス圧の測定値を入力し、これら測定値をデータテーブルの値と照合して、ガス圧調整弁6を制御する。
【0020】
生ビールに関してデータテーブル11の一例を示すと、ビール温度が10℃のときはガス圧(炭酸ガス供給圧)を0.13MPaに設定し、同様に15℃では0.16MPa、20℃では0.21MPa、25℃では0.24MPa、30℃では0.32MPa、35℃では0.37MPaといったように、飲料温度ごとに最適なガス供給圧の対照表を有している。このデータテーブルからも明らかなように、飲料温度が高い場合はガス供給圧も高くする必要がある。これは、温度が高い炭酸飲料は炭酸ガスの遊離が大きく、俗に気が抜けやすいことに対応するもので、高いガス供給圧によって必要以上に炭酸ガスが遊離することを回避するものである。これに対して、飲料温度が低い場合はガス供給圧も低くする。これは、温度が低い炭酸飲料には炭酸ガスが容易に溶け込んで、俗に炭酸がきつくなりやすいことに対応するもので、低いガス供給圧によって必要以上に炭酸ガスが炭酸飲料に溶け込まないようにするものである。
【0021】
なお、上記データテーブルはあくまでも生ビールに関する標準的な数値を示したもので、本発明において温度・圧力の関係はこれに限定されない。また、ビールと他の炭酸飲料(コーラやサイダーなど)とでは好ましい炭酸溶解量が違い、ビール同士でも銘柄で好ましい炭酸溶解量が異なることがある。このため、炭酸飲料の種類ごとにデータテーブルを複数作成することが好ましい。
【0022】
弁制御装置10にはマイクロコンピュータを採用することが有効であり、これに対してデータテーブル11は、内蔵または外付けのハードディスク、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、DVD、SDカード等の記録媒体に記憶させておけば、弁制御装置10に読み取り可能に接続することができる。
【0023】
このように構成される本発明システムの動作を説明すると、まずガスボンベ2の炭酸ガスはボンベ出口に接続したレギュレタRGによって一次減圧され、そのガス圧によって飲料樽1の炭酸飲料は冷却装置3に圧送される。なお、一次減圧は、炭酸飲料がビールの場合は0.4MPa程度である。そして、飲料樽1・冷却装置3間の飲料温度を液温計9で常時測定し、その測定値を弁制御装置10がデータテーブル11と照合して、最適なガス供給圧を算出する。これに加えて、弁制御装置10へはガス圧計7からガス圧調整弁6・飲料樽1間のガス圧情報も入力され、当該測定ガス圧と前記算出した最適ガス供給圧を比較する。そして、比較の結果、測定ガス圧がデータテーブル11上の最適ガス供給圧を上回るときはガス圧調整弁5の開度を大きくする一方、下回る場合は前記開度を絞ることで、前記測定ガス圧を最適ガス供給圧に一致させるようにガス圧調整弁5を制御する。この結果、炭酸飲料の温度と圧力が平衡してガス抜けやガス過多とならず、常に最適な炭酸溶解量の炭酸飲料を注出することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 飲料樽
2 ガスボンベ
3 冷却装置
4 コック
6 ガス圧調整弁
7 ガス圧計
9 液温計
10 弁制御装置
11 データテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料樽に炭酸ガス源からガス圧を与えて、システム末端の注出弁を開くことで前記飲料樽から冷却装置を経由して炭酸飲料を注出するサーバシステムにおいて、前記炭酸ガス源と前記飲料樽間のガス流路に設けたガス圧調整弁と、該ガス圧調整弁と前記飲料樽間のガス圧を測定するガス圧計と、前記飲料樽と前記冷却装置間の飲料温度を測定する液温計とを備え、予め飲料温度ごとに炭酸ガスの供給圧を記憶したデータテーブルに基づいて前記液温計で測定された飲料温度に対応する炭酸ガスの供給圧を算出し、前記圧力センサで測定されるガス圧が前記算出した炭酸ガスの供給圧と一致するように前記ガス圧調整弁を制御することを特徴とする炭酸飲料のサーバシステム。
【請求項2】
炭酸飲料はビールである請求項1記載の炭酸飲料のサーバシステム。
【請求項3】
数種の炭酸飲料ごとにデータテーブルを複数備える請求項1または2記載の炭酸飲料のサーバシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate