説明

炭酸飲料の製造方法

【課題】溶存二酸化炭素が抜けにくく、飲用時の泡が細かく感じ、且つ炭酸感を自在にコントロール出来るといった、新しい品質を持った炭酸飲料、及び当該炭酸飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】炭酸ガスを含有する液体を、加圧条件下でキャビテーションを発生させることができる装置すなわちマイクロ・ナノバブル発生装置に通過させて、液体中でキャビテーションを発生させることにより、溶存炭酸ガスの直径が、1mm未満に微細化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸水や缶チューハイなどに代表される、いわゆる炭酸飲料とその製造方法に関する。さらに詳しくは、炭酸感が長く持続し、飲用時に感じる泡の大きさが細かくかつ柔らかく感じる品質を持つ炭酸飲料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器詰めされた炭酸飲料の工業的な製造方法は、ツーヘンハーゲン社のカーボネーターに代表されるような、配管中で飲料と二酸化炭素を特殊なミキサーにより混合して炭酸飲料を製造する方法が昨今の主流である(例えば、特許文献1)。また、二酸化炭素が充満したタンク中において飲料を噴霧し、タンク内に設置してある複数の板に飲料を塗布させて、板上に飲料の薄膜を形成させ、そこで効率よく二酸化炭素を飲料に吸収させる方法もある(特許文献2)。従来はこれらの製造方法が主流であるが、これらの手法で得られた炭酸飲料は、炭酸の泡が大きく、炭酸感が強すぎて口や喉においてやや痛みを感じたり、また、炭酸が抜けやすいという問題がある。
【0003】
一方、ヨーロッパにおいては、自然の湧き水、すなわち鉱泉水を採取し、これを容器に詰めた飲料の飲用が古くから定着している。これは地中奥深くから湧き出た水であるため自然由来の二酸化炭素が含まれており、口当たりも柔らかいなど特有の品質を有しており、品質の幅も実に様々である。
【0004】
またフランスのシャンパーニュ、スペインのカヴァに代表される発泡性のワインは、瓶内二次発酵により二酸化炭素を瓶に封じ込めて製造するものであり、その炭酸品質、特に泡の細やかさや炭酸の保持時間の長さには、定評がある。
【0005】
このように、泡が細かく、口当りが柔らかで、炭酸の保持時間が長い炭酸飲料を、工業的に製造できる方法の開発が望まれる。本出願人は、そのような方法について鋭意検討した結果、圧力容器中で、二酸化炭素の微細な気泡を発生する手段を用いて、飲料用液体中に二酸化炭素を供給する方法をすでに開発している(特許文献3)。この方法により製造された炭酸飲料は、従来のカーボネーターを用いて製造された炭酸飲料に比べて、泡が細かく、炭酸ガスのもちが良く、また、適度な炭酸感を感じるという優れた効果を有する。しかしながら、特許文献3の方法は、飲料用液体に、高濃度に炭酸ガスを付与しようとすると、やや時間がかかる傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平7−509181号公報
【特許文献2】特公平8−2415号公報
【特許文献3】特開2009−100705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明における目的は、従来のカーボネーターなどにより製造される炭酸飲料に比べて、溶存二酸化炭素が抜けにくく、飲用時の泡が細かく感じ、且つ炭酸感を自在にコントロール出来るといった、全く新しい品質を持った炭酸飲料を、比較的短時間で製造できる新たな方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、従来の手法とはまったく異なる発想に基づいて、微細な気泡を有する炭酸飲料を製造できる新しい方法を開発するに至り、本発明を完成させた。具体的には、炭酸ガスを予め含有させた飲料あるいは炭酸ガスを天然に含む飲料に、加圧条件下でキャビテーションを発生させることにより、飲料中の溶存炭酸ガスを微細化する。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
1.加圧条件下にある炭酸ガスを含有する液体を、キャビテーションを発生させることができる装置に通過させて、該液体中でキャビテーションを発生させることを含む、炭酸飲料の製造方法。
2.キャビテーションを発生させることができる装置が、マイクロ・ナノバブル発生装置である、上記1に記載の方法。
3.キャビテーションにより発生する気泡の直径が、1mm未満である、上記1または2に記載の方法。
4.前記マイクロ・ナノバブル発生装置が、加圧された液体が流れる流路に、下流側に行くにつれ不連続的に径が大きくなる少なくとも1以上の段差部を有する、上記2または3に記載の方法。
5.前記マイクロ・ナノバブル発生装置が、加圧された液体が流れる複数の流路を有しており、各流路の下流側出口において、少なくとも2以上の流路が、共通の空間に連結するように配置される、上記2〜4のいずれかに記載の方法。
6.前記マイクロ・ナノバブル発生装置が、加圧された液体が流れる流路の内壁に、山の位置が下流側に偏倚しているタップを有する、上記2〜5のいずれかに記載の方法。
7.炭酸飲料の溶存二酸化炭素量が200乃至12000ppmである、上記1〜6のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、二酸化炭素の保持能が高く、かつ泡の大きさも細やかで、従来のカーボネーターなどを用いて製造されたものとは全く異なる品質を有する炭酸飲料を、比較的短時間で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】キャビテーションを発生させる方法の一例を示す。
【図2】キャビテーションを発生させるノズル内壁の形状の一例を示す。
【図3】本発明の炭酸飲料製造プロセスの概略図である。
【図4】本発明の方法により得られた炭酸飲料と、比較例により得られた炭酸飲料における炭酸ガスの残存率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、炭酸ガスを含有する液体に、加圧条件下でキャビテーションを発生させることにより、飲料中に溶存する炭酸ガスを微細化する。
本発明において、炭酸飲料、あるいは炭酸ガスを含有する飲料または炭酸ガスを含有する液体とは、発酵などにより本来的に二酸化炭素を含有する飲料(ビールなど)や、その製造工程のいずれかの段階で強制的に二酸化炭素を含有させた飲料(炭酸水、二酸化炭素を含有する清涼飲料及びアルコール性飲料等)を意味する。本発明の炭酸飲料における炭酸ガス(すなわち、二酸化炭素)の濃度は、特に限定されず、一般的に炭酸飲料として飲用される飲料における濃度であればよく、典型的には、200〜12000ppm程度、より好ましくは、2500〜7500ppm程度である。
【0013】
強制的に炭酸ガスを含有させた液体を製造する方法としては、当業者に通常知られる方法を用いることができ、例えば、これらに限定されないが、加圧下で二酸化炭素を液体に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーターなどのミキサーを用いて配管中で液体と二酸化炭素とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に液体を噴霧することにより二酸化炭素を液体に吸収させてもよいし、飲料用液体と炭酸水とを混合して炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを含有させる液体としては、飲料用に適した液体であれば特に制限はなく、例えば、水や、甘味料、酸味料、香料、アルコールなどの材料を含有する水などを使用することができる。また、ウイスキー、焼酎、スピリッツ類、ワイン及びビールなどの酒類や、その中間原料液を使用することもできる。
【0014】
本発明では、本来的に炭酸ガスを含有する液体または炭酸ガスを強制的に含有させた液体を、まず、加圧条件下におく。加圧条件は、液体中に溶存している炭酸ガスが抜けない程度の圧力であればよく、特に限定されない。例えば、炭酸飲料の貯蔵などに通常用いられる程度の圧力を用いることができ、0.1〜0.5MPa程度、より好ましくは0.1〜0.4MPa程度とすることができる。
【0015】
続いて、加圧下にある液体を、キャビテーションを発生させることができる装置に通過させる。キャビテーションとは、流動中の液体において、流速が部分的に異なることなどにより局所的に圧力の低い箇所が生じ、この圧力低下部分において瞬間的に溶存気体が微細な泡として析出するという現象である。本発明では、炭酸ガスを含有する液体にキャビテーションを発生させ、微細な泡として炭酸ガスを一時的に析出させる。この一時的に析出した微細気泡の炭酸ガスは、液体の渦流によってせん断され、さらに微細化される。そして、加圧下で液体中に再度溶解する。これを繰り返すことにより、液体中に溶存する二酸化炭素が微細化され、液体中に細かく均一分散されることとなる。
【0016】
キャビテーションを発生させることができる装置としては、例えば、特開2008−161829号公報、特開2007−301561号公報及び特開2005−204951号公報等に記載されるような、気体を含有する液体を用いて気泡を微細化させることができるマイクロ・ナノバブル発生装置や、マイクロバブル、ナノバブルをキャビテーションの原理により発生させる気泡粉砕ノズルを特に制限なく使用することができる。
【0017】
例えば、これに限定されないが、特開2007−301561号公報に記載されるような気泡粉砕ノズルを用いて、炭酸ガス含有液体にキャビテーションを発生させることができる。特開2007−301561号公報に記載のノズルは、液体の通過する流路の径が、下流に向かうに従って不連続的に大きくなる形態を有する。このように、不連続的に径が大きくなるノズルを用いた際のキャビテーションの発生の様子を図1(a)及び(b)に概略的に示す。図1(a)及び(b)において斜線部はノズル壁であり、空白部が流路である。流路は不連続的に径が大きくなる形状(段差)を有している。液体は矢印の方向へと流れている。流路における拡大部(段差)は、図1(a)のように流れに対し垂直に設けられていてもよいし、図1(b)のように傾斜を有して設けられていてもよい。液体が、不連続的に径が大きくなる流路を通過すると、流れの垂直方向に速度分布が発生し、乱流による剥離現象が起こる。剥離域は、局所的に低圧となり、溶存気体が一時的に析出する(キャビテーションの発生)。析出したガスは、流路変化による渦流によって微細化される。
【0018】
また、こうしたノズルは複数の流路を有していてよく、これら複数の流路が、流路の下流側出口において共通の空間に連結するように配置されていると、ガスの微細化が促進されるため、好ましい。そのような流路の例を図2(a)および(b)に示す。図2(a)は、流路を上流側から見た図であり、図2(b)は、流路を下流側から見た図である。図2(a)において9つの小さい円で表された9本の流路が、下流側(図2(b))において、3つの空間(中位の3つの円)に連結している。3つの空間(中位の円)には、それぞれ、3本の流路(小さい円)が連結している。なお、図2(b)におけるノズルをA−B面で切断した場合の縦断面図が、図1である。
【0019】
さらに、本発明に用いることができるノズルは、流路の内壁に、山の位置が下流側に偏倚しているタップを有していてもよい。そのようなタップの例を図2(c)に示す。図2(c)において、矢印は、液体の流れる方向を示す。こうしたタップにより、ガスの微細化が促進される。
【0020】
なお、図1及び図2は、本発明に用いることができる気泡粉砕ノズル(マイクロ・ナノバブル発生装置)の一例であり、流路の形状、本数、配置、タップの形状、数等は、必要に応じて、適宜変化させることができる。
【0021】
上記のようなマイクロ・ナノバブル発生装置または気泡粉砕ノズルを用いて、炭酸ガスを含有する液体にキャビテーションを発生させればよく、キャビテーションにより液体中に発生する気泡としては、1mm未満の直径を有するものが好ましい。
【0022】
本発明の炭酸飲料製造プロセスの概略を図3に示す。まず、バルブ1及びバルブ2を閉栓し、炭酸ガスを含有する液体を、公知の手段(図示しない)を用いて加圧タンクに充填する。加圧タンクの圧力を、炭酸飲料の貯蔵に通常用いられる程度の圧力、例えば、0.1〜0.5MPa程度、より好ましくは0.1〜0.4MPa程度に調整する。続いて、バルブ1を開栓し、ロータリーポンプを作動させて、炭酸ガスを含有する液体を加圧タンクからマイクロ・ナノバブル(MNB)発生装置へ循環させる。MNB発生装置において、液体中の溶存炭酸ガスが、キャビテーション現象により一時的に微細な気泡として析出し、析出した気泡は液体の渦流によりさらに微細化され、また、加圧下で再度液体中に溶解する。MNB発生装置を通過した液体は、加圧タンクに戻される。この加圧タンク→MNB発生装置→加圧タンクの循環を何度か繰り返すことにより、液体中の溶存炭酸ガスを微細化することができる。炭酸ガスの微細化が完了したら、バルブ1を閉栓し、バルブ2を開栓して、加圧タンクから貯蔵容器(図示しない)へと炭酸飲料を送出する。
【0023】
循環させる炭酸ガス含有液体の流量又は流速は、目的とする炭酸飲料の種類、気体の溶存量、用いるMNB装置の種類、循環の回数による炭酸感のコントロールなどに応じて、適宜設定することができる。流量又は流速は、循環路中に流量計を設置することによって測定することができる。
【0024】
加圧タンクには、炭酸ガス含有液体の温度を調節するための手段、例えば、冷却用ジャケットや熱交換器等を設置してもよい。図3には、加圧タンクの外周を冷水により冷却する例を示す。炭酸ガス含有液体の温度は適宜設定することができるが、液体の温度が低いほど炭酸ガスの溶解度が高いことから、一般には、本発明の方法の全工程において1〜5℃程度、好ましくは1〜2℃程度に冷却しておくことが好ましい。
【0025】
図3は、本発明の製造方法を実施するための装置の一例であり、本発明の方法の実施が、当該装置に限定されるものではない。また、図3に示された圧力計、流量計、バルブ、ロータリーポンプ等の数及び位置も一例であり、必要に応じて、適宜変化させることができる。
【0026】
本発明の方法により製造された炭酸飲料は、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶など、炭酸飲料用容器として通常用いられる容器に充填して容器詰め飲料としてもよいし、家庭用又は業務用の飲料サーバーを用いて消費者に供してもよい。
【0027】
本発明の方法により得られる炭酸飲料は、泡が非常に細かく、口当りが柔らかいという性質を有する。本発明の炭酸飲料における気泡の大きさは、例えば、アルミ缶などの容器を開栓してグラスに注いだ直後に見られる泡の大きさが好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下である。この泡の大きさは、例えば、高速度カメラにより測定することができる。また、本発明の炭酸飲料は、グラスに注いで数秒たった後でも、微細な泡を維持しやすいという特徴がある。例えば、グラスに注いで開放状態で15秒たった後でも、好ましくは多くの気泡が1mm以下程度の大きさを維持する。
【0028】
また、本発明の方法により製造された炭酸飲料は、開放系で静置した場合の飲料からの炭酸ガスの損失量が、従来のカーボネーターなどにより製造された炭酸飲料での損失量に比べて小さいという特徴を有する。例えば、溶存二酸化炭素量が3600ppmである本発明の方法により製造された炭酸飲料の場合、20℃で30分間静置後の溶存二酸化炭素の残存率は、好ましくは0.55以上である。なお、残存率は、以下の実施例(溶存二酸化炭素の経時変化の測定)に記載の方法によって求めることができる。
【0029】
さらに、本発明の方法は、予め炭酸ガスを含有する液体を用意して、この液体中の炭酸ガスを微細化させる方法であるので、炭酸ガスを微細化させながら液体中に吹き込む特許文献3の方法に比べて、より短時間で泡の細かい炭酸飲料を製造できるという利点を有する。これは、特に、炭酸ガス濃度の高い炭酸飲料を製造する場合に有利である。また、本発明の方法は、元々炭酸ガスを含有している液体(ビールなど)の泡の微細化にも応用することができる。さらに、本発明の方法は、キャビテーションを発生させる装置に循環させる回数を変化させることにより、泡の細かさをコントロールすることができ、飲料の炭酸感をコントロールすることができる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
図3に示した装置を用いて、炭酸飲料を製造した。
(i)炭酸ガス含有液体の準備
スタティックミキサー(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)を3本直列で備えた装置にイオン交換水及び二酸化炭素を供給して(イオン交換水流量8L/分、二酸化炭素流量20L/分)、10Lの炭酸ガス含有液体(炭酸水)を製造した。得られた炭酸水のガス圧は0.2MPa(炭酸ガス濃度3600ppm、20℃品温)であった。
(ii)炭酸ガスの微細化
次いで、炭酸ガス含有液体10Lを、冷却用ジャケットを有する円筒形の加圧タンク(内容量20L、高さ42cm、直径24cm、加圧圧力0.1MPa(液温2℃の場合))に充填し、冷却用ジャケットに冷却水を循環させ、液体を2℃以下の温度に冷却した。冷却後、ロータリーポンプを作動させて、炭酸ガス含有液体を加圧タンクからマイクロ・ナノバブル発生装置へと循環させ(流量:18L/分)、液体中に含まれる炭酸ガスを微細化させた。マイクロ・ナノバブル発生装置としては、特開2007−301561号公報に記載される、複数の流路が下流側出口において共通の空間に連結するように配置されており、各流路は不連続的に径が大きくなる段差を有し、かつ、流路の内壁に山の位置が下流側に偏倚しているタップを有するノズル(株式会社オーラテック製)を用いた。40分間循環させた後、ロータリーポンプの運転を停止した。得られた炭酸水を、加圧状態を保ったまま、200mLのガラス製の瓶に入れて密封した。
【0031】
[実施例2]
循環時間を40分から10分に変更した以外は実施例1と同様にした。
[比較例1]
通常の炭酸飲料の製造法(二酸化炭素の微細化をしない方法)に従って炭酸飲料を製造した。
【0032】
スタティックミキサー(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)を3本直列で備えた装置にイオン交換水及び二酸化炭素を供給して(イオン交換水流量8L/分、二酸化炭素流量20L/分)、10Lの炭酸ガス含有液体(炭酸水)を製造した。得られた炭酸水のガス圧は0.2MPa(炭酸ガス濃度3600ppm、20℃品温)であった。得られた炭酸水を、加圧状態を保ったまま、200mLのガラス製の瓶に入れて密封した。
【0033】
[評価]
(1)溶存二酸化炭素量の経時変化の測定
実施例1、実施例2、及び比較例1で製造した炭酸水入りのガラス製瓶を、20℃の恒温槽に1時間浸漬して炭酸水の温度を20℃とした後、それぞれのガラス製瓶を開封し、炭酸水50mLをプラスチック製カップ(円筒形、口径50mm)に静かに加えた。
【0034】
カップに加えた時点(0分)、並びに、2分、4分、8分、16分、及び30分が経過した時点で、ピペットを用いてカップから炭酸水2.8mLを採取し、0.2mLの25M水酸化ナトリウム水溶液(12gの水酸化ナトリウムと50mLの超純水から調製した)の入ったファルコンチューブに静かに加え、そして、チューブを2回静かに振盪した。この操作により、炭酸水に溶存している二酸化炭素をNa2CO3及びNaHCO3に変換した。
【0035】
次いで、得られた溶液の10μLを、下記条件の高速液体クロマトグラフィーに導入して、Na2CO3及びNaHCO3をH2CO3に変換し、H2CO3量を測定した。
<高速液体クロマトグラフィーの条件>
使用機材:Shimadzu社製、有機酸分析システム
使用カラム:Shimadzu社製、製品名SPR−H
カラム温度:40℃
分析時間:18分
移動相:4mMのp−トルエンスルホン酸水溶液
緩衝液:4mMのp−トルエンスルホン酸水溶液と100μMのEDTAを含む16mMのBis−Tris水溶液との混合溶液
移動相流速:0.8mL/分
緩衝液流速:0.8mL/分
検出器:電気伝導度測定器
これにより、炭酸水中の溶存二酸化炭素量を間接的に定量した。定量は、0ppm、1000ppm、2000ppm、4000ppm、6000ppm、及び8000ppmの炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて予め作成した検量線を用いて行なった。測定はそれぞれのサンプルについて3回ずつ行い、平均値を算出した。そして、実施例1、実施例2、及び比較例1の各水準において、カップに加えた時点(0分)での溶存二酸化炭素量を1とし、2分、4分、8分、16分、及び30分における二酸化炭素の残存率を算出した。結果を図4に示す。
【0036】
図4からわかるように、本発明の方法を用いて製造した炭酸飲料(実施例1、2)は、従来のミキサーを用いて製造した炭酸飲料(比較例1)に比べて、時間が経過してもより多くの二酸化炭素を溶存していた。すなわち、本発明の方法により製造した炭酸飲料は、従来のミキサーを用いて製造した炭酸飲料に比べて、炭酸ガスが抜けにくく、炭酸ガスの保持能に優れていることがわかった。また、本発明の方法(実施例1、2)では、微細な気泡を有する炭酸飲料を、比較的短時間で製造することができた。
【0037】
(2)官能評価
実施例1及び比較例1で製造した炭酸水について官能評価を行なった。結果を表1に示す。本発明の製造方法により、泡が細かく、炭酸感の長持ちする炭酸飲料を製造することができた。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧条件下にある炭酸ガスを含有する液体を、キャビテーションを発生させることができる装置に通過させて、該液体中でキャビテーションを発生させることを含む、炭酸飲料の製造方法。
【請求項2】
キャビテーションを発生させることができる装置が、マイクロ・ナノバブル発生装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キャビテーションにより発生する気泡の直径が、1mm未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ・ナノバブル発生装置が、加圧された液体が流れる流路に、下流側に行くにつれ不連続的に径が大きくなる少なくとも1以上の段差部を有する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ・ナノバブル発生装置が、加圧された液体が流れる複数の流路を有しており、各流路の下流側出口において、少なくとも2以上の流路が、共通の空間に連結するように配置される、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ・ナノバブル発生装置が、加圧された液体が流れる流路の内壁に、山の位置が下流側に偏倚しているタップを有する、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
炭酸飲料の溶存二酸化炭素量が200乃至12000ppmである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−103814(P2011−103814A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262592(P2009−262592)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【出願人】(398005630)株式会社オ−ラテック (15)
【Fターム(参考)】