説明

点字用プリンタ

【課題】小型で安価な点字用プリンタを提供する。
【解決手段】キー操作面に五十音から記号・符号に至るまでの点字形成に必要な7種類の点字キー群が配置される。点字キー群は、利用頻度などを考慮した配置となる。キー操作面の上部には、点字用テープに点字用凸面を形成する点字用打刻手段が配される。これは1列3本の打刻ピンからなる第1および第2の印字用打刻部で構成される。点字用テープは品物に接着できるように両面接着剤が塗布されたものが使用される。裁断された点字用テープは、シールとして購入品物に貼付される。点字キー群と点字用打刻手段用の駆動部とは直接結線される。コンピュータなどの処理手段は使用しない。コンピュータなどを使用しないため、操作された点字キーの判別や、判別結果に基づいて打刻部を駆動するような、一連の打刻処理用処理プログラムが不要となり、点字用プリンタを安価に提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は点字用プリンタに関する。詳しくは、点字の構成要素である7種類の点字群(五十音から記号・符号に至るまでの点字群)に対応した7種類の点字キー群をそれぞれ独立してキー操作面に設け、点字キー群と点字用打刻部とを直接対応付けることで、操作された点字キーに対応した点字を点字用テープに打刻できるようにすると共に、点字キーに点字判別部を備えることで、健常者にも利用できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者が日常生活において、スーパーなどで買い求めた品物を自宅に持ち帰って冷蔵庫や保管箱などに保管する場合、一旦保管された品物の内容を正しく判別するのは容易ではない。
【0003】
このような点を考慮すると、買い求めた品物に、品物の品名などを記した点字シールを貼っておけば、その品物がどのようなものであるかを即座に判別できるので、誤って品物を選択したりすることがなくなる他、必要な品物を素早く手に取ることができるから非常に便利である。
【0004】
シールなどに点字を形成するための点字用プリンタは従来から知られている(例えば、特許文献1,2など)。
【0005】
【特許文献1】特開平09−297527号公報
【特許文献2】特開平10−268756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1や特許文献2などで開示された点字用プリンタは、何れもコンピュータなどを使用したプリンタであって、装置も高価である。実際の日常生活を考えると、卓上で操作できる、簡単で、手軽で、しかも求め易い価格であることが望ましい。また、この点字用プリンタは視覚障害者のみならず、健常者でも利用できた方が好ましい。
【0007】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に点字の構成要素である7種類の点字群(五十音から記号・符号に至るまでの点字群)に対応した7種類の点字キー群をそれぞれ独立してプリンタ本体のキー操作面に設け、点字キー群と点字用打刻部とを直接対応付けることで、操作された点字キーに対応した点字を点字用テープに打刻できるようにすると共に、健常者でも点字キーの種別を容易に判別できるようにした点字用プリンタを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係る点字用プリンタは、プリンタ本体と、
このプリンタ本体のキー操作面に設けられた複数の点字キー群と、
上記プリンタ本体のキー操作面に近接した位置に設けられた点字用打刻手段とからなり、
上記点字キー群は、五十音から記号・符号に至るまでの7種類の点字群に対応した7種類の点字キー群で構成されると共に、
上記点字キー群を構成するそれぞれの点字キーには、点字キーの種別を記した点字判別部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、プリンタ本体のキー操作面に点字キー群を配列する。点字キー群は、五十音から記号・符号に至るまでの点字形成に必要な全ての点字群であって、7種類の点字キー群に分類されている。点字群は、利用頻度などを考慮してキー操作面に配置される。例えば、利き腕を考えて五十音の点字キー群はキー操作面の右下部に配置され、その右横に濁音を示す点字キー群が配置され、そして数字を示す点字キー群は逆に左上部に配置されるが如くである。
【0010】
キー操作面の上部には、点字用打刻手段が配置される。点字用打刻手段は、点字用テープに点字用凸面を形成するためであり、1列3本の打刻ピンからなる第1および第2の打刻部で構成される。点字の基本単位は、2列3行の凸部(凸面)からなる。
【0011】
この基本単位の点字を複数使用して1つの点字語(それ自体意味をなす単語群)となる。点字語は点字用テープに形成される。点字語が形成された点字用テープは裁断されて使用される。点字用テープは品物に接着できるように両面接着剤が塗布されたものが使用される。裁断された点字用テープ(点字シール)を、購入した品物に貼付してから、冷蔵庫などに保管される。
【0012】
点字キー群と点字用打刻手段とはコンピュータなどの処理手段によって連結されるのではなく、ロジック回路によって相互が連結されている。例えば、「ア」の点字キーが操作されると、このロジック回路を介して点字用打刻手段を構成する第1および第2の打刻部のうち、特定の打刻ピンのみが駆動されように構成されている。コンピュータなどを使用しないため、操作された点字キーの判別や、判別結果に基づいて打刻部を駆動するような、一連の打刻処理用処理プログラムが不要となり、点字用プリンタを安価に提供できる。
【0013】
点字キー群を構成するそれぞれの点字キーには、点字キーの種別を記した点字判別部を備える。点字判別部は刻印された点字と、その内容を表す文字等で構成される。点字キーの頂面に直接点字を刻印し、文字等を印刷などして点字判別部を構成する場合と、点字が刻印され、その内容を記した文字等が印刷されたシールで点字判別部を構成する場合とが考えられる。点字判別部を備えることで、点字を習得することなく、誰でも(健常者でも)手軽にこの点字用プリンタを共用の点字用プリンタとして利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、点字の構成要素である7種類の点字群に対応した7種類の点字キー群をそれぞれ独立してプリンタ本体のキー操作面に設けると共に、点字キー群と点字用打刻部とを直接対応付けることで、操作された点字キーに対応した点字を点字用テープに打刻できるようにしたものである。
【0015】
これによれば、コンピュータなどの処理手段を設けないでも点字用プリンタを構成できるので、点字用プリンタを安価に提供できる。さらに、小型化できるので、卓上用として使用することができ、7種類の点字キー群を揃えたので、点字作業も非常に簡単である。
【0016】
また、点字キー群を構成するそれぞれの点字キーには点字キーの種別を記した点字判別部を備えているので、点字を習得することなく、誰でも手軽に利用できる特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
続いて、この発明に係る点字用プリンタの好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
説明の便宜上、図4以下を参照して説明する。図4は点字群の一例を示す。点字群は、7つの点字群で構成される。第1に、五十音用の点字群(50個)であり、第2に、拗音用の点字群(36個)である。以下同様に濁音・半濁音用(以下濁音用という)の点字群(25個)、特殊音用の点字群(33個)、数字などの点字群(14個)およびアルファベットなどの点字群(32個)で構成される。したがって、トータル218個の点字群で、日常的に必要な情報を全て表現できる。
【0019】
図4Aは、五十音のうち「ア」から「オ」までの点字パターンを示す。
図4Bは、拗音のうち「キャ」から「キョ」までの点字パターンを示す。
図4Cは、濁音・半濁音のうち「ガ」から「ゴ」までの点字パターンを示す。
図4Dは、特殊音のうち「ファ」から「フォ」までの点字パターンを示す。
図4Eは、数字などのうち「1」から「5」までの点字パターンを示す。
図4Fは、アルファベッドなどのうち「a」から「e」までの点字パターンを示す。最後に、
図4Gは、記号・符号のうち「第1カギ」、「右向き矢印」および「両向き矢印」の点字パターンを示す。
【0020】
このように点字でも表現する内容(文字、数字、記号・符号等)によっては、基本の点字パターン(基本パターン)を幾つか組み合わせて構成される。ここに基本パターンは、図5に示すように2列3行からなる凸部P1〜P6で構成される。この6つの凸部P1〜P6のうちのどの凸部を凸面として使用するかで、表現する内容が異なってくる。
【0021】
そして、基本パターンを1つあるいはそれ以上組み合わせることによって、文字、数字、記号等が表現される。例えば、図4Aに示す五十音は1つの基本パターンのみで構成される。そして、例えば、「ア」は凸部P1のみが凸面であって、それ以外の凸部P2〜P6を全て平坦面とした基本パターンで構成されることになる。
【0022】
また、拗音、濁音・半濁音などは2つの基本パターンを用いて表現される。同じく、特殊音、数字など、アルファベットなどおよび記号・符号のうちの一部は、何れも2つの基本パターンを並置することで表現される。記号・符号の点字パターンは、上述したように2つの基本パターンのみで構成される場合の他に、基本パターンを3つあるいは4つ並べて表現する場合もある。
【0023】
点字の基本パターンは図5に示すように、凸部P1〜P6の大きさや間隔などが何れも規定されている。すなわち、凸部P1〜P6の直径φは、φ=1.0mmで、その高さは0.2mmの凸面(凸エンボス面)である。
【0024】
凸部P1〜P6の縦の間隔(ライン間隔)Wは、2,0mmであり、1列目と2列目の間隔(コラム間隔)Lも、2,0mmである。このような基本パターンを1つ、あるいは2つ以上組み合わせることで、図4に示すような特定の文字等を表現できる。
【0025】
図1に示すこの発明に係る点字用プリンタ10は、図4のような点字群を刻印するためのものである。図1はこの点字用プリンタ10の一例を示す平面図であり、図2はその右側面図、図3はその背面側に設けられた点字用打刻手段20の構成例を示す。
【0026】
図1および図2に示すように、プリンタ本体11はほぼ台形状の箱型を示す筐体として構成され、プリンタ本体11の上面がキー操作面12となる。キー操作面12には複数の点字キー群13が配置される。
【0027】
配置例を以下に示すと、これら点字キー群は使用頻度や使い勝手などを考慮してその配置および配列が決定される。この例では、特に利用者が右利き向きであると想定したときの配置例である。
【0028】
まず、キー操作面12の右下部側に五十音用の点字キー群131が配置される。その左上部から左下部に向かって、「ア行」から「ナ行」まで配置され、その横に「ハ行」以下の行が配置される。
【0029】
五十音用点字キー群131の左隣りには、濁音用点字キー群132が配置される。濁音用点字キー群132は、5行5列構成である。その隣りには33個の点字キーによって構成される特殊音用の点字キー群133が配置される。そして、最も左端には、36個の点字キーで構成される拗音用の点字キー群134が配置される。
【0030】
これらの点字キー群131〜134の上側には、アルファベッド用点字キー群135が、その左側に「a」が位置するように配置される。アルファベッド用点字キー群135の上側には記号・符号用点字キー群136が3行に亘り配置される。そして、このアルファベッド用点字キー群136の左側であって、記号・符号用点字キー群136の一部下側には残りの点字キー群である、数字用点字キー群137が配置される。
【0031】
それぞれの点字キー群131〜137には、それらの点字キー群がどの点字群に該当するかを示す点字シール141〜147が貼付される。点字シール141〜147には、健常者でも認識できるように、例えば点字の隣りに「五十音」のような表記がなされている。
【0032】
上述した点字キー群131〜137を構成する各点字キーのサイズは同一ではなく、基本パターンが1つの場合と、それ以外とで異なったサイズとなされている。
【0033】
図6は点字キーの構成例を示す。点字キーには点字判別部を備える。この点字判別部は、点字キーの内容(種別)を表示したもので、刻印された点字部と、この点字の内容を記した文字部で構成される。文字部とは、文字の他に、アルファベット、記号等を含むものとする。
【0034】
刻印された点字部または文字部によって、点字キーを特定できるから、点字を習得していない健常者であっても、手軽にこの点字用プリンタを利用して点字用シールを作成できる。つまり、誰でもこの点字用プリンタを活用でき、共用化が可能になる。
【0035】
点字判別部は、点字キー自体に設けることもできれば、判別用シールを点字キーに貼着することでもよい。以下の説明では判別用シールを使用した場合である。そのため、点字キーの頂面には判別用シールが貼付される。判別用シールには実際の点字用基本パターンと同じサイズで凸面が刻印された点字部と、点字部の隣りに文字部が印刷されている。文字部を同時に刻印することもできる。
【0036】
図6Aは1個の基本パターンで構成される点字キーの一例を示す。基本パターンのみで肯定される点字キーとしては、上述したように五十音用の点字とアルファベッドがある。1個の基本パターンで構成される点字キーは、5ミリ×11ミリサイズのキーが使用される。その表面に貼付される判別用シールには、五十音を示す点字面(3ミリ×5ミリ)が形成されると共に、健常者用の表示面(5ミリ×3ミリ)が形成される。図6Aは、カタカナの「メ」を表す点字キーの例である。
【0037】
図6Bは、図6Aの点字キーを左右上下に配列するときの配列間隔を示すもので、互いに隣接する点字キーとの間はそれぞれ1ミリづつの間隔を以て配置される。
【0038】
図6Cは、2つの基本パターンで1つの点字が構成されるときの点字キーの構成例を示す。拗音、濁音、特殊音あるいは数字のように殆どの点字キーがこの例に属する。この場合には2つの基本パターンが表現できるサイズの点字キーが使用される。
【0039】
そのため、点字キー自体は9ミリ×11ミリのサイズとなされ、その表面に貼付される判別用シールのうち、点字面には2つの基本パターンが1ミリ間隔で形成され、表示面には対応する文字などが表示される。
【0040】
図6Dは、4つの基本パターンで1つの点字が構成されるときの点字キーの構成例を示す。記号・符号のうち特別な記号や符号が4つの基本パターンによって構成される。この場合には4つの基本パターンが表現できるサイズの点字キーが使用される。
【0041】
そのため、点字キー自体は17ミリ×11ミリのサイズとなされ、その表面に貼付される判別用シールのうち、点字面には4つの基本パターンが1ミリ間隔でそれぞれ配列形成され、表示面には対応する文字などが表示される。
【0042】
なお、記号・符号であっても、2つの基本パターンで構成されるものも存在する。句読点などは、2つの基本パターンによって1つの記号となるからである。これらの記号・符号であっても、その点字キーのサイズは4つの基本パターンを有する点字キーのサイズと同じサイズであって、判別用シールの表面中央部に2つの点字パターンが形成される。
【0043】
このように、表現すべき点字によって点字キーのサイズが相違することから、図1に示すようにキー操作面12に設けられる点字キー群の点字キーも対応するサイズで図示されている。
【0044】
キー操作面12にはさらに図1に示すように電源キー16が設けられると共に、点字用テープをプリンタ本体に装着された点字用テープを所定位置まで空送りするための、テープセットキー17および完成された点字語(それ自体で意味をなす単語)を貼付用シールとして裁断するときに使用する終了キー(裁断キー)18がそれぞれ設けられている。
【0045】
さらにこのプリンタ本体11には、点字用テープに所定の点字を刻印するための点字用打刻手段40を含めたテープ駆動機構部20が本体背面側に設けられる。この例では、図2に示すように、本体背面側が開閉蓋21となされ、開閉蓋21を開けた状態で点字用テープの装着(交換)を行う。
【0046】
図3にこのテープ駆動機構部20の具体例を示す。プリンタ本体11の背面側に設けられた取り付け軸21aに点字用ロール22が装着され、ロール22に券回されたテープ30がローラ23および第1の送り出しローラ24によって送り出される。第1の送り出しローラ24に近接して点字用打刻手段として機能する点字用打刻部40Aが設けられ、ここを通過する点字用テープ30には、操作された点字キーに応じた打刻処理がなされて点字用凸部が刻印(形成)される。
【0047】
点字処理された点字用テープ30はさらに第2の送り出しローラ25によって繰り出される。第2の送り出しローラ25を通過した点字用テープ30はセンサ26によってその通過が検知される。センサ26よりもさらに下流側には裁断部27が設けられ、裁断部27を構成するこの例では上下に配されたカッタ刃を駆動することで、点字用テープ30の裁断処理が行われる。裁断長は印字すべき字数によって相違する。裁断された点字用テープ(シール)31はトレイ28上に積層される。
【0048】
点字用テープ30の初期セット位置は、その先端がセンサ26に対峙する位置として説明したが、例えば点字用打刻部40Aを通過した位置でもよい。その場合にはセンサ26を点字用打刻部40Aの上流側か、下流側に配置すればよい。続いて、テープ駆動機構部20の具体的構成例を説明する。
【0049】
点字用テープ30は図7に示すようにその幅Wtが9ミリのものを使用した。点字用テープ30はその下面側(凹エンボス側)に両面接着剤が塗布されたものである。この幅内に点字の基本パターンとなる凸部が形成される。この例ではテープの中央部に凸部が形成される。そして、基本パターンと基本パターンとの間は上述したように1ミリ(=Lo)の間隔が空けられる。点字の基本パターンは(5ミリ×9ミリ)であるから、基本パターンをテープ中央部に形成することで、上下に1ミリづつ(凸部を基準にすると2ミリ)空けた状態で形成される。
【0050】
図8は点字用テープ30に打刻ピン(後述する)を用いて打刻することによって得られる凸部(凸エンボス)Pi(i=1〜6)の一例を示す。
【0051】
第1の送り出しローラ24は、図9および図10に示すように一対のローラ24a、24bを有し、下側の駆動ローラ24aに駆動モータ、例えばステッピングモータ35が連結されている。転接する一対のローラ24aと24bとの間に点字用テープ30の先端部が挿入され、その状態で駆動ローラ24aを駆動することで点字用テープ30を送り出すことができる。駆動モータ35と駆動ローラ24aとの間はベルトなどの連結手段36が連結されることで、駆動力の伝達が行われる。第2の送り出しローラ25も同じように構成されているので、その説明は割愛する。
【0052】
点字用テープ30の送り出し量(長さ)は、点字用テープ30に点字する字数によって相違する。点字用テープ30の送り出し量は駆動モータであるステッピングモータ35のステップ数をカウント数によって決まるので、カウント数を監視することで、送り出し量(図3の、L1〜L3)を把握できる。
【0053】
センサ26は、この例では受発光素子からなる反射式のセンサを使用した場合である。反射率の違いに基づいて点字用テープ30の先端位置を検知できる。
【0054】
裁断部27は、一対のカッタ刃27a、27bで構成され、これら一対のカッタ刃27a、27bを上下動させることで、点字用テープ30が裁断される。何れか一方のみを可動刃として、他方を固定刃とすることもできる。
【0055】
点字用打刻手段40の具体例を図11以下に説明する。
図11は点字用打刻手段40の平面図であり、図12はその側面図である。図12を参照して説明すると、この点字用打刻手段40は左右対称に配された第1および第2の点字用打刻部40A、40Bを有する。第1の点字用打刻部40Aは、図11および図12にそれぞれ示すように併設された3本の打刻ピン46からなる打刻部41Aとその駆動部42Aとで構成される。
【0056】
打刻部41Aは、支点45aを中心に上下するレバー44を有し、その先端部(図では右端部)に打刻ピン46が垂設されている。レバー44はプリンタ本体11に垂設されたレバー受け45に回動自在に固定される。
【0057】
レバー44の反対側(左端部)の近傍にはその下面側に係合凹部47が形成されている。係合凹部47には駆動部として機能するこの例ではソレノイド42Aのロッド48の先端部49が係合される。ソレノイド42Aへの通電制御によってロッド48が進退するので、それに伴ってレバー44が上下動する。その結果、打刻ピン46も所定範囲に亘って上下動を繰り返すことになる。
【0058】
図12に示すように、第1の点字用打刻部40Aは併設された3本の打刻ピン46(46a〜46c)を有する。それに伴って、3本のレバー44(44a〜44c)が同一支点45aを中心に回動自在に軸支される。
【0059】
また、3個のソレノイド42A(42Aa〜42Ac)の占有面積との関係から、中心に位置するレバー44bは直線状のレバーであるが、これに隣接するレバー44a、44cは何れもクランク状に折り曲げられた状態で使用される。
【0060】
上述したように、点字パターンは、凸部Piの直径が1ミリで、凸部同士の間隔が2ミリとなるように規定されている。そのため、各レバー44a〜44cの幅は2ミリ以下に選定され、それぞれが独立して駆動できる(上下動できる)ように構成されている。
【0061】
なお、打刻ピン46のストロークとの関係から、打刻ピン46の長さを11ミリ程度としたとき、この例では、支点45aから打刻ピン46までの長さは、大凡10ミリ程度に選定され、支点45aからソレノイド42Aの係合点(作用点)までの長さは、大凡30ミリに選定されている。
【0062】
第2の点字用打刻部40Bもその構成は第1の点字用打刻部40Aと同じであるので、対応する部材には対応する符号を付してその説明を省略するも、この第2の打刻部41Bは、支点65aに回動自在に軸支された3本のレバー64(64a〜64c)を有する他、3本の打刻ピン66(66a〜66c)、3つの駆動部42B(42Ba〜42Bc)からなる。詳細説明は割愛する。
【0063】
さて、図12に示すように打刻ピン46の上方には、打刻ピンのガイド板50と、このガイド板50と少許の間隙ΔWを介して配された受け板(エンボス板)53を有する。少許の間隙ΔW内を上述した点字用テープ30が通過する。
【0064】
図13に示すように、点字用テープ30の厚みが、0.5ミリ程度であるときは、この間隙ΔWは0.7ミリ程度に選定され、殆ど接触状態で点字用テープ30がこの間隙ΔW内を通過するようにしている。ガイド板50と受け板53とで点字用テープ30の両面を抑えることで、打刻時点字用テープ30が歪まないようにするためである。
【0065】
ガイド板50には、第1の点字用打刻部40Aに設けられた3本の打刻ピン46をガイドするための3つの貫通孔51が設けられ、ガイド板50の底面と打刻ピン46の係止リング57との間には図12に示すように圧縮バネ60が介在される。この圧縮バネ60の作用で、打刻ピン46は常に下方への偏倚力が付勢され、打刻ピン46が常時は間隙ΔW内に臨まないようにしている。
【0066】
ガイド板50には、さらに第2の点字用打刻部40Bに対応した同様の構成が施される。したがって貫通孔51に隣接して3つの貫通孔52が穿設され、打刻ピン77の係止リング58と間には圧縮バネ61が介挿される。
【0067】
打刻ピン46、66の各先端部は円弧状となされ、これらに対する受け板53には図13に示すように凹部54,55が設けられている。凹部54,55の深さは図10に示すように、0.2ミリに選定される。
【0068】
点字用打刻手段40を以上のように構成すれば、第1の点字用打刻部40Aと第2の点字用打刻部40Bのそれぞれを独立に駆動することで、基本パターンからなる点字群を刻印できる。この点字群を刻印するため、プリンタ本体11内には図14に示すような制御部(ロジック回路)100が設けられている。
【0069】
図14に示すように、ロジック回路100には、7種類の点字キー群131〜137のそれぞれの点字キーの操作情報が供給される他、電源キー16,テープセットキー17,点字終了キー18などの操作情報や、センサ26からのセンサ情報が供給される。
【0070】
このロジック回路100からの駆動制御信号によって、対応する送り出しローラ24,25用の駆動モータ35や、カッタ刃27などが駆動制御される。
【0071】
さらに、このロジック回路100では第1および第2の点字用打刻部40A,40Bに対するソレノイド駆動部42A,42Bの駆動信号が生成される。ここで、このロジック回路100では、ロジック回路100に供給された操作情報を直接対応する駆動部に伝達するように複数の点字キーと駆動部との間が直接結線されている。
【0072】
したがって例えば、五十音用点字キー群131のうち、「ア」に対応した点字キーが操作されたときは、第1の点字用打刻部を構成するソレノイド42Acのみが付勢され、対応する打刻ピン46cが点字用テープ30を押圧する。その結果、図4Aに示すように1個の凸部からなる点字「ア」を形成できる。
【0073】
また、五十音用点字キー群のうち「ウ」に対応した点字キーが操作されたときは、第1の点字用打刻部を構成するソレノイド42Acと、第2の点字用打刻部40Bを構成するソレノイド42Bcの2個が同時に付勢され、対応する打刻ピン46cと66c点字用テープ30を同時に押圧する。その結果、図4Aに示すように2個の凸部からなる点字「ウ」を形成できる。
【0074】
あるいは、濁音用点字キー群132のうち「ガ」に対応した点字キーが操作されたときは、最初に第2の点字用打刻部40Bを構成するソレノイド42Bbが付勢されて点字用テープ30への打刻処理が行われ、この打刻処理が終了すると、点字用テープ30が1基本パターンピッチだけ送り出された後、今度は第1の点字用打刻部を構成するソレノイド42Acと、第2の点字用打刻部を構成するソレノイド42Baの2個が同時に付勢され、対応する打刻ピン46cと66aが点字用テープ30を同時に押圧する。その結果、図4Cに示すように2つの基本パターンからなるトータル3個の凸部からなる点字「ガ」を形成できる。
【0075】
このようにロジック回路100は、点字キー群の各点字キーと駆動部とを結線し、さらに他のキーと、これに対応する部材とをそれぞれ結線する配線基板として機能する。もちろん、それぞれの部材を正常に駆動するためには、必要な駆動回路や、ステッピングモータ35を制御するためにステッピングモータ35のステップ数を監視するなどの処理回路が必要になることは言うまでもない。このようなロジック回路100を用いることで、小型で、操作が簡単な、しかも安価な卓上式の点字用プリンタを構築できる。
【0076】
以下に、特定のキーを操作したときの動作を以下に説明する。
【0077】
(1)電源キー
電源キーが操作されると、プリンタ本体11の各部に電源が供給され、点字処理が可能な状態となる。
【0078】
(2)テープセットキー
点字用テープ30を装着したり、新たな点字用テープに交換し、点字用テープの先端を第1の送り出しローラ24に差し込んだ状態で、テープセットキー17が操作されると、点字用テープ30が送り出され、その先端がセンサ26で検知されると、その位置でストップする。これが正規の点字処理の待機状態である。
【0079】
(3)点字終了キー
特定の点字キーを操作すると、その都度点字処理が実行され、特定の点字語が点字用テープ30に刻印されたとき、例えば12月31日に購入したお肉のパックに点字シールを貼付して冷蔵庫に保存しようとする場合には、「オニク、12ガツ31ニチ」のような点字語が形成される。全ての点字処理が終了した段階で、点字終了キー18が操作される。
【0080】
点字終了キー18が操作されると、点字用テープ30を、図3に示すように(L1+L2+L3)だけ送り出し、裁断部27を駆動して裁断処理が行われる。
裁断されたシールが上述したパックなどに貼付される。
【0081】
なお、この発明の思想を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更が可能であることは言うまでもない。特に、点字用打刻部40については種々の変形や変更が可能である。
【0082】
上述した実施例1では、日本語向けの点字用プリンタの場合についてその構成を説明したが、使用される言語に限定されるものではない。使用される言語に対応した点字キーを備えればよい。
【0083】
例えば、英語圏でこの点字用プリンタを使用する場合には、五十音用点字キー、拗音用点字キー、濁音・半濁音用点字キー、特殊音用点字キーなどは不要になるので、点字キーの数を大幅に削減することができる。その結果として安価で、小型の卓上式点字用プリンタを提供できる。
【0084】
もちろん、アルファベットに代えて、使用言語に関連した点字判別部を備えた点字キーを設けることで、その使用言語圏に対応した点字用プリンタを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明は、家庭内で利用可能な点字用プリンタに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】この発明に係る点字用プリンタの一例を示す平面図である。
【図2】その側面図である。
【図3】その背面側に装備されるテープ駆動機構部の一例を示す概念図である。
【図4】点字の一例を示す図である。
【図5】点字の基本パターンを説明する図である。
【図6】点字キーとシールとの関係を示す図である。
【図7】点字用テープに打刻された印字の基本パターンを示す図である。
【図8】そのI−I線上断面図である。
【図9】送り出しローラの構成図である。
【図10】その側面図である。
【図11】点字用打刻手段の一例を示す要部の平面図である。
【図12】その側面図である。
【図13】その一部断面図である。
【図14】ロジック回路と制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0087】
10・・・点字用プリンタ
12・・・キー操作面
13・・・点字キー群
131〜137・・・五十音から数字までの点字キー群
141〜147・・・点字シール
40・・・点字用打刻手段
40A,40B・・・点字用打刻部
41A、41B・・・第1および第2の打刻部
44(44a〜44c)・・・レバー
64(64a〜64c)・・・レバー
46(46a〜46c)・・・打刻ピン
66(66a〜66c)・・・打刻ピン
42A(42Aa〜42Ac)・・・駆動部
42B(42Ba〜42Bc)・・・駆動部
50・・・ガイド板
53・・・受け板
P1〜P6・・・凸部(凸面)
30・・・点字用テープ
24,25・・・送り出しローラ
26・・・センサ
27・・・裁断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタ本体と、
このプリンタ本体のキー操作面に設けられた複数の点字キー群と、
上記プリンタ本体のキー操作面に近接した位置に設けられた点字用打刻手段とからなり、
上記点字キー群は、五十音から記号・符号に至るまでの7種類の点字群に対応した7種類の点字キー群で構成され、
上記点字キー群を構成するそれぞれの点字キーには、点字キーの種別を記した点字判別部が設けられている
ことを特徴とする点字用プリンタ。
【請求項2】
上記点字用打刻手段は、
左右対称に配置された一対の点字用打刻部を有し、
この点字用打刻部を用いて、送り出された上記点字用テープ上に点字用凸面が形成される
ことを特徴とする請求項1記載の点字用プリンタ。
【請求項3】
上記点字用打刻部は、
並設された3本の打刻ピンからなる打刻部と、その駆動部で構成され、
上記3本の打刻ピンは、それぞれ独立して駆動できるようになされた
ことを特徴とする請求項2記載の点字用プリンタ。
【請求項4】
上記点字用打刻手段は、点字用テープの駆動機構部として構成され、
このテープ駆動機構部は、さらに点字用テープの送り出しローラと、点字された上記点字用テープの裁断部とを
有することを特徴とする請求項1記載の点字用プリンタ。
【請求項5】
上記点字キーに設けられた点字判別部は、刻印された点字と、点字の内容を記した文字等で構成され、
上記点字キーの頂面には、上記点字が刻印されると共に、この点字の内容を記した文字等が印刷された
ことを特徴とする請求項1記載の点字用プリンタ。
【請求項6】
上記点字キーの頂面には、上記点字判別部用のシールが貼着され、
該シールには、点字キーに対応した点字が刻印されると共に、この点字の内容を記した文字等が印刷された
ことを特徴とする請求項5記載の点字用プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−185916(P2007−185916A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7504(P2006−7504)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(591277256)株式会社小幡製作所 (1)
【Fターム(参考)】