説明

点検ルート決定システム

【課題】敷地内で地震が観測された場合に、工程が少なく簡単な解析方法で各建物の被災度が推定でき、地震発生後の効果的な点検ルートを迅速に決定することが可能な点検ルート決定システムを提供すること。
【解決手段】地震観測部12で観測され記録された地震の速度応答スペクトルを解析するスペクトル解析部14と、建物の固有周期を予め解析しそのデータを格納する固有周期データ格納部18と、建物の重要度を予め所定の基準で決定しそのデータを格納する重要度データ格納部22と、スペクトル解析部14によって解析された敷地内の地震の速度応答スペクトルと固有周期データ格納部18に格納された建物の固有周期によって複数の建物の被災度の順位を決定する被災度順位決定部26と、被災度順位決定部26により決定された建物の被災度の順位と重要度データ格納部22に格納された建物の重要度によって点検ルートを決定する点検ルート決定部28とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検ルート決定システム、特に敷地内で地震を観測した場合に、地震発生直後に行われる建物の点検の点検ルートを、建物の重要度、固有周期及び地震の速度応答スペクトルによって決定する点検ルート決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所の敷地内には、発電所本館建物以外にも様々な大きさや構造形式の建物・構築物が存在している。それらの建物に対しては、例えば1回/年といった定期的な点検が行われている。しかし、定期的な点検以外にも例えば敷地内で所定以上の大きな地震による揺れを観測した場合には、地震発生後に直ちに点検を行っている。
【0003】
その場合、敷地内に存在するどの建物にどの程度の被害が発生しているのか予測することは難しく、全ての建物の点検を行うことが必要とされる。ここで、全ての建物の点検を実行することには多くの時間を要するので、点検する建物の順番を決めること、即ち点検ルートを決めることが重要である。予想以上に甚大な被害を被っている建物が存在しているならば、そのような建物は大地震の後に続く余震で壊滅的な被害を受けないように、迅速に点検すること、状況によっては補修等の対応を行うことが必要とされるからである。
【0004】
現状では、前述のように地震発生後、どの建物が特に被害を被っているのかの予測ができないので、建物の点検の優先順位を決めることに苦慮している。発電所本館建物のように重要な建物は優先して点検を行うが、それ以外の付属建物については、通常行われている定期点検等のルートで敷地内の各建物を順番に点検していくしか方法がない。しかしながら、発電所本館以外の付属建物が被害を受け地震発生直後の点検が遅れた場合に、重大な結果を招く恐れもあり、これまでの点検ルートの決め方では問題があった。
【0005】
建物の被災度の推定に関して、特許文献1は地震動に対する構造物の被害推定ができ、異なる特性の地震動や、対象の構造物の構造条件が異なる場合や、地盤条件が過去と異なる場合でも正確に被害推定ができる構造物の被災度推定方法および推定表示方法を提供することを課題としている。
【0006】
この課題の解決手段として、工学的基盤面上に多数の地震動を作成する工程と、地表面応答波形を作成する工程と、地表面応答波形より算出した地表面加速度応答スペクトルから計測震度を推定する工程と、各計測震度に対応した多数の地震動のうち、特性の異なる地震動を複数抽出する工程と、計測震度毎に選定した複数の地震動に基き、地盤条件、構造条件を考慮して解析的手法により各種構造物の耐震検討を実施する工程と、計測震度階に対応した被害判定を行う工程とを含む構造物の被災度推定方法および構造物の被災度推定表示方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−205467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1の構造物の被災度推定方法によれば、推定結果を得るまでの工程が複雑であり、各工程での解析方法も簡単ではない。然も、地震が発生した後で解析するのではなく、発生前に種々の特性の地震を想定して被災度を推定しているので、実際に地震が発生した後に、起きた地震の特性に的確に対応する推定結果を、これまで解析して得られた数多い推定結果の内から見つけ出す必要があり、地震発生後の迅速な対応は難しいと考えられる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、敷地内で地震が観測された場合に、工程が少なく簡単な解析方法で各建物の被災度が推定でき、地震発生後の効果的な点検ルートを迅速に決定することが可能な点検ルート決定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の点検ルート決定システムは、複数の建物が存在する敷地内における地震発生後の前記建物の点検順を示す点検ルートを決定する点検ルート決定システムにおいて、前記敷地内で地震を観測し記録する地震観測部と、予め解析した前記建物毎の固有周期又は固有振動数を格納した固有周期データ格納部と、前記地震観測部で観測され記録された地震の速度応答スペクトル又は加速度応答スペクトルを解析するスペクトル解析部と、前記建物の重要度を予め所定の基準で決定し、そのデータを格納した重要度データ格納部と、前記スペクトル解析部によって解析された前記敷地内の地震の速度応答スペクトル又は加速度応答スペクトルと前記固有データ格納部に格納された建物の固有周期又は固有振動数とに基づいて複数の前記建物の被災度の順位を決定する被災度順位決定部と、前記被災度順位決定部によって決定された複数の前記建物の被災度の順位と前記重要度データ格納部に格納された前記建物の重要度とに基づいて点検ルートを決定する点検ルート決定部と、を有することを特徴とする。
【0011】
斯かる構成を採用することにより、被災度順位決定部により、建物の被災度の順位が、スペクトル解析部によって解析された敷地内の地震の速度応答スペクトル又は加速応答スペクトルと、固有周期データ格納部に格納された建物の固有周期又は固有振動数とに基づいて決定される。次いで、点検ルート決定部により、点検ルートが、建物の被災度の順位と重要度データ格納部に格納された建物の重要度とに基づいて決定される。従って、地震が発生した後に、地震の速度応答スペクトル又は加速度応答スペクトルが解析され、次いで建物の被災度順位が決定され、そして点検ルートが決定されるので、点検ルート決定までの工程が少なく迅速に決定することが可能である。また、被災度順位の決定は、地震の速度応答スペクトル又は加速度応答スペクトルと建物の固有周期又は固有振動数によって簡単に決定される。この様に、実際に発生した地震のデータにより迅速に的確な点検ルートが決められ、その点検ルートによれば、建物の被災度と重要度が考慮されているので、点検すべき必要度の高い建物から順に点検されることとなり実際的且つ効果的である。
【0012】
請求項2に記載の点検ルート決定システムは、請求項1に記載の点検ルート決定システムにおいて、前記被災度順位決定部による前記建物の被災度の順位の決定は、複数の前記建物の固有周期と前記地震の応答スペクトルのピークの固有周期とを比較して、当該ピークの固有周期に近い順に行われることを特徴とする。
【0013】
従って、地震の応答スペクトルのピークの固有周期と一致する固有周期を持つ建物が共振して一番被害を受けると推定されることから、複数の建物の固有周期と地震の応答スペクトルのピークの固有周期とを比較して、当該ピークの固有周期に近い順に複数の建物を並べて得られた被災度の順位は、地震によって建物が揺れ被害を受ける順番になっていると確信することができる。然も、複雑な解析や工程を必要とすることなく、簡単且つ一義的に被災度の順位が決定できるので、地震発生後の点検ルートを迅速に決定することに貢献する。
【0014】
請求項3に記載の点検ルート決定システムは、請求項2に記載の点検ルート決定システムにおいて、前記重要度データ格納部に格納される前記建物の重要度は、数値化されて1から順に等級付けられており、当該等級と前記建物の被災度の順位との総和の小さい順に点検ルートが決定されることを特徴とする。従って、建物の重要度が数値化され客観的に扱うことが可能となり、この重要度と前述の建物の被災度の順位の総和を求めることにより簡単・迅速に地震発生後の点検の必要度の高さに応じた効果的な点検ルートを決定することが可能である。
【0015】
請求項4に記載の点検ルート決定システムは、請求項3に記載の点検ルート決定システムにおいて、前記建物の等級と前記建物の被災度の順位との総和が同数となる建物が複数存在する場合、点検ルートの総合距離が最小となるように点検ルートが決定されることを特徴とする。従って、点検ルートが無駄に長くならないように決定されるので、より合理的且つ実際的に点検ルートが決定されることとなる。
【0016】
請求項5に記載の点検ルート決定システムは、請求項1〜4の何れか1項に記載の点検ルート決定システムにおいて、前記建物の重要度及び前記建物の固有周期又は固有振動数並びに前記建物の敷地内配置は、データベースに記録されており、必要に応じて参照されることを特徴とする。従って、地震発生後の点検ルートの決定を行う際に、必要に応じて建物の固有周期及び重要度が参照できるので、点検ルートの決定を迅速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の点検ルート決定システムによれば、地震が発生した後に、地震の速度応答スペクトル又は加速度応答スペクトルが解析され、次いで建物の被災度順位が決定され、そして点検ルートが決定されるので、点検ルート決定までの工程が少なく迅速に決定することが可能である。また、被災度順位の決定は、地震の速度応答スペクトル又は加速度応答スペクトルと建物の固有周期又は固有振動数によって簡単に決定される。この様に、実際に発生した地震のデータにより迅速に的確な点検ルートが決められ、その点検ルートによれば、建物の被災度と重要度が考慮されているので、点検すべき必要度の高い建物から順に点検されることとなり実際的且つ効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を、以下図面を参照しながら詳述する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。また、実施の形態において、地震に関しては速度応答スペクトル、建物に関しては固有周期を用いているが、地震の速度応答スペクトルは加速度応答スペクトルでも良い。また、建物の固有周期は固有振動数でも良い。
【0019】
図1は、本発明の点検ルート決定システムの概略構成図である。点検ルート決定システム10は、点検ルート決定部28を中心にして、この点検ルート決定部28に地震観測部12、スペクトル解析部14、固有周期データ格納部18、重要度データ格納部22、被災度順位決定部26が接続されている。更に、決定した点検ルートを表示する表示部22が接続されている。なお、スペクトル解析部14と固有周期データ格納部18と重要度データ格納部22と点検ルート決定部28とには、後述するデータベース(DB)16、20、24、30が接続されている。
【0020】
地震観測部12は、複数の建物が存在する敷地内での地震を観測し記録する。スペクトル解析部14は、地震観測部12で観測され記録された地震の速度応答スペクトルを求めるものである。図2にその速度応答スペクトルの一例を示す。横軸は固有周期であり、縦軸は速度応答スペクトルである。図中、地震動1、2、3とあるのは、同じ敷地内で観測され記録された異なる3つの地震について示している。これより、地震によってその特性、即ちピークの固有周期が異なることが解る。なお、応答スペクトルのピークの固有周期は、地震動1では2.2秒程度であり、建物の固有周期が2.2秒であれば、その建物は地震に共振して最も強く揺れ、最も被害を受けることとなる。言い換えれば、ピークの固有周期と同一又はそれに近い固有周期を持つ建物が最も震動し、被災することとなる。
【0021】
固有周期データ格納部18は、各建物の固有周期を予め解析しそのデータを格納する。建物の固有周期は、どの周期の波が到来したとき最も振動するかを表したもので、建物の大きさや構造等により異なる。重要度データ格納部22は、建物の重要度を予め所定の基準により決定し、そのデータを格納する。ここで、建物の重要度は、所定の基準、即ちその建物に収容されている機器や安全性を考慮して決められ、1、2、3…nのように自然数で与えられる。重要度1の場合、最も重要であることを示す。なお、通常は、建物の固有周期及び重要度は頻繁に変化することがないので、例えば年1回評価し、その結果をデータベースに記憶しておけば良い。
【0022】
表1は、建物を本館建物A、Bと付属建物C、D、Eとして、築年月日、構造、延面積、建物高さ、固有周期及び重要度の一例を示したものである。この表は、後述の固有周期DBと重要度DBを参照して、例えば、点検ルート決定部28内で作成される。この表より、建物の固有周期は、建物の構造や建物高さ等により、それぞれ異なることが解る。なお、表1内の構造でRCとあるのは鉄筋コンクリート、Sとあるのは鉄骨を意味する。
【0023】
【表1】

【0024】
被災度順位決定部26は、前述のようにスペクトル解析部14によって解析された敷地内の地震の速度応答スペクトルと、固有周期データ格納部18に格納された建物の固有周期とによって複数の建物の被災度の順位を決定する。点検ルート決定部28は、被災度順位決定部26により決定された建物の被災度の順位と重要度データ格納部22に格納された建物の重要度とによって点検ルートを決定するものである。以下、それぞれの決定の仕方について説明する。
【0025】
被災度順位決定部26による複数の建物の被災度の順位の決定は、複数の建物の固有周期と地震の応答スペクトルのピークの固有周期とを比較して、当該ピークの固有周期に近い順に複数の建物を並べて行われる。即ち、被災度は建物の固有周期が、応答スペクトルのピークの固有周期に近いもの程大きいとの推定に根拠を置いており、このようにして得られた建物の被災度の順位は、実際に建物が地震により揺れて被害を受ける順番になっているものと確信することができる。
【0026】
点検ルート決定部28は、上記の建物の被災度の順位に、建物の重要度を足して、その総数が小さなものから点検するように決定する。詳細は後述するフローチャートと共に説明するが、建物の重要度は、数値化されて1から順に等級付けられており、当該等級と建物の被災度の順位とを足して、その総数が小さい順に点検ルートが決定されるので、一義的且つ簡単・迅速に点検ルートを決定することが可能である。従って、実際に発生した地震のデータを用いて迅速に的確な点検ルートが決められる。また、この様にして決定した点検ルートによれば、建物の被災度と重要度が考慮されているので、点検すべき必要度の高い建物から順に点検されることとなり実際的且つ効果的である。
【0027】
表示部32は、点検ルート決定部28により決定された点検ルートを、建物の配置図と共に表示するものである。これにより、点検のルートが一目瞭然であり、地震発生直後の慌ただしさの中でも誤認する心配がない。
【0028】
なお、上述したスペクトル解析部14による解析結果、固有周期データ格納部18に格納されているデータ、重要度データ格納部22に格納されているデータ、敷地内建物配置図は、それぞれスペクトルDB16、固有周期DB20、重要度DB24、敷地内建物配置DB30に記録されており、必要に応じて参照できるように構成されている。従って、地震発生後の点検ルートの決定を行う際に、必要に応じて建物の固有周期及び重要度が参照できるので、点検ルートの決定を迅速に行うことが可能となる。
【0029】
図3は、本発明の点検ルート決定システムのフローチャートである。地震が発生した場合、地震観測部12で観測・記録し(S1)、スペクトル解析部14で速度応答スペクトルを解析する(S2)。次に、被災度順位決定部26は、固有周期データ格納部18の固有周期DB20を参照して、各建物の固有周期を求める。そして、スペクトル解析部14で解析された速度応答スペクトルと比較して、速度応答スペクトルのピークの固有周期に近い順に建物を並べて、建物の被災度順位と決定する(S3)。即ち、前述のように、地震の速度応答スペクトルのピークの固有周期に近い固有周期を有する建物が一番被災するとの推定に根拠を置いている。
【0030】
次いで、点検ルート決定部28は、重要度データ格納部22の重要度DB24を参照して、各建物の重要度を得る(S4)。ここで、重要度は1から自然数で与えられており、前述の被災度順位とこの重要度を足してその総数を求め、その総数の小さい建物から点検を行うように仮のルートを決定する(S5)。
【0031】
表2は、先に述べた建物本館A、Bと付属建物C、D、Eに係り、被災度順位、重要度、総数(被災度順位と重要度の和)、仮の点検ルートについて示す。仮の点検ルートとあるのは、被災度順位と重要度の和が同じになる建物が存在する場合、点検ルートが未だ確定しないためである。表2では、付属建物Cと付属建物Dが同じ総数となっており、このままでは点検ルートが確定しない。
【0032】
【表2】

【0033】
そこで、建物の被災度順位と建物の重要度とを足して、その総数が同じとなる建物があるかどうか調べ(S6)、総数が同じの建物が複数存在する場合、点検ルートの総合距離を計算し(S7)、その距離が最小となるように点検ルートを決定する(S8)。建物の被災度順位と建物の重要度とを足して、その総数が同じとなる建物がない場合は、仮の点検ルートがそのまま決定した点検ルートとなる。決定したルートは、敷地内建物配置DB30から読み出した建物の配置図に矢印等で表示される(S9)。
【0034】
点検ルートの総合距離は、例えば表3の距離テーブルを用いて算出することができる。表3は、各建物間の距離と、各建物と点検作業開始小屋Sとの距離を示したものである。表2では、付属建物Cと付属建物Dが同じ総数になっており、開始小屋S→付属建物C→付属建物D→建物本館B→建物本館A→付属建物Eの点検ルート(ルート1、R1)と、開始小屋S→付属建物D→付属建物C→建物本館B→建物本館A→付属建物Eの点検ルート(ルート2、R2)とで総合距離の短い方が決定した点検ルートとなる。
【0035】
【表3】

【0036】
表3の距離テーブルを用いると、総合の距離は、R1=(L13+L8+L6+L1+L4)であり、R2=(L14+L8+L5+L1+L4)である。仮に、R1<R2であるとすると決定される点検ルートはR1と決定される。表3の右欄には決定した点検ルート、即ち点検する建物の順番について示している。これにより、点検ルートが無駄に長くなることがないので、合理的且つ実際的に点検ルートを決定することが可能である。
【0037】
図4は、決定した点検ルートを、敷地内建物配置DB30から読み出した建物配置図に矢印で書き込んだ例について示す。建物A、B、C、D、Eは表1及び表2に示す建物本館A、Bと付属建物C、D、Eを、Sは点検作業開始小屋(作業小屋、又は点検作業準備小屋等)を示す。ここでは、例として建物本館A、Bは1箇所に集まって位置しており、付属建物C、Dは海の近くに位置しているものとする。また、付属建物Dは海から山を越え、建物本館A、Bに比較的近い場所に位置しているものとする。また、図4に示すように、表示部32に表示された決定した点検ルートは、一目瞭然であるから、地震発生後の慌ただしい中でも誤認する心配がない。
【0038】
以上に説明したように、本発明の点検ルート決定システムによれば、地震が発生した後に、地震の速度応答スペクトルが解析され、次いで建物の被災度順位が決定され、そして点検ルートが決定されるので、点検ルート決定までの工程が少なく迅速に決定することが可能である。また、被災度順位の決定は、地震の速度応答スペクトルと建物の固有周期によって簡単に決定される。この様に、実際に発生した地震のデータを用いて迅速に的確な点検ルートが決められる。そして、その点検ルートによれば、建物の被災度と重要度が考慮されているので、点検すべき必要度の高い建物から順に点検されることとなり実際的且つ効果的である。
【0039】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、建物の被災度順位と重要度を足した総数が同じの場合、点検ルートの総合距離が最小となるように決定したが、点検作業開始小屋、又は特定の建物から近い順に決定しても良い。更に、前述したように、地震の速度応答スペクトルは加速度応答スペクトルでも良く、建物の固有周期は固有振動数でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の点検ルート決定システムの概略構成図である。
【図2】地震の速度応答スペクトルの一例である。
【図3】本発明の点検ルート決定システムのフローチャートである。
【図4】決定した点検ルートを、敷地内建物配置DBから読み出した建物配置図に書き込んだ例について示す。
【符号の説明】
【0041】
10 点検ルート決定システム
12 地震観測部
14 スペクトル解析部
16 スペクトルDB
18 固有周期データ格納部
20 固有周期DB
22 重要度データ格納部
24 重要度DB
26 被災度順位決定部
28 点検ルート決定部
30 敷地内建物配置DB
32 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建物が存在する敷地内における地震発生後の前記建物の点検順を示す点検ルートを決定する点検ルート決定システムにおいて、
前記敷地内で地震を観測し記録する地震観測部と、
予め解析した前記建物毎の固有周期又は固有振動数を格納した固有周期データ格納部と、
前記地震観測部で観測され記録された地震の速度応答スペクトル又は加速度応答スペクトルを解析するスペクトル解析部と、
前記建物の重要度を予め所定の基準で決定し、そのデータを格納した重要度データ格納部と、
前記スペクトル解析部によって解析された前記敷地内の地震の速度応答スペクトル又は加速度応答スペクトルと、前記固有データ格納部に格納された建物の固有周期又は固有振動数と、に基づいて複数の前記建物の被災度の順位を決定する被災度順位決定部と、
前記被災度順位決定部によって決定された複数の前記建物の被災度の順位と前記重要度データ格納部に格納された前記建物の重要度とに基づいて点検ルートを決定する点検ルート決定部と、
を有することを特徴とする点検ルート決定システム。
【請求項2】
前記被災度順位決定部による前記建物の被災度の順位の決定は、
複数の前記建物の固有周期と前記地震の速度応答スペクトルのピークの固有周期とを比較して、当該ピークの固有周期に近い順に行われることを特徴とする請求項1に記載の点検ルート決定システム。
【請求項3】
前記重要度データ格納部に格納される前記建物の重要度は、
数値化されて1から順に等級付けられており、
当該等級と前記建物の被災度の順位との総和の小さい順に点検ルートが決定されることを特徴とする請求項2に記載の点検ルート決定システム。
【請求項4】
前記建物の等級と前記建物の被災度の順位との総和が同数となる建物が複数存在する場合、点検ルートの総合距離が最小となるように点検ルートが決定されることを特徴とする請求項3に記載の点検ルート決定システム。
【請求項5】
前記建物の重要度及び前記建物の固有周期又は固有振動数並びに前記建物の敷地内配置は、データベースに記録されており、必要に応じて参照されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の点検ルート決定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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