説明

点鼻薬注出ノズル

【課題】構造が簡単で、かつ点鼻薬を泡状にして噴出させ得る注出ノズルを提案する。
【解決手段】テーパ状の先細り外観形状をなす本体部分2aを有し、その先端から点鼻薬を噴出させる注出ノズル2において、本体部分2aの先端に、点鼻薬をエアと混合して泡状に噴出させる泡生成ノズルチップ3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点鼻薬を投与するのに適した注出ノズルに関するものであり、該点鼻薬を簡単な仕組みでもって泡状にして噴出させようとするものである。
【背景技術】
【0002】
鼻孔を通して直接患部に薬剤を供給する点鼻薬用の容器は、刺激による不快感を最小限に留めるために薬剤を霧状にして噴霧する噴霧器を備えたものが多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004-844号公報
【0003】
ところで、近年では、薬剤による刺激をより一層軽減するため薬剤を泡状にして噴出することができる噴霧器の開発が望まれるところ、かかる噴霧器は、それそのものの構造が複雑になることからサイズの大型化が避けられない状況にあり、未だ実用的なものがないのが現状であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、点鼻薬を簡単な仕組みで泡状に噴出させることができる注出ノズルを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、テーパ状の先細り外観形状をなす本体部分を有し、その先端から点鼻薬を噴出させる注出ノズルであって、
前記注出ノズルは、本体部分の先端に固定保持され、点鼻薬をエアと混在させて泡状に噴出する泡生成ノズルチップを有することを特徴とする点鼻薬注出ノズルである。
【0006】
上記の構成になる点鼻薬注出ノズルにおいては、前記本体部分に、その先端で外向きに開放され、泡生成ノズルチップを該先端から押し込んで底壁との間で若干の隙間を残して抜け出し不能に嵌合させる凹部を設け、
前記泡生成ノズルチップを、点鼻薬をエアとともに撹乱させる凹凸状の壁部を持った経路と、該チップの先端面から後端面にわたって貫通し、前記隙間へ向けてエアを送給する少なくとも一つのエア導入経路からなるものにて構成することができる。
【0007】
また、本発明における点鼻薬注出ノズルは、前記本体部分に、その先端で外向きに開放され、泡生成ノズルチップを該先端から押し込んで底壁との間で若干の隙間を残して抜け出し不能に嵌合させる凹部を設け、
前記泡生成ノズルチップを、該凹部に適合する周壁と、この周壁の末端につながりその内側に点鼻薬をエアとともに通過させる開口を有するフランジ部からなるものとし、
該泡生成ノズルチップのフランジ部の端面にメッシュ部材を配置した構成を採用することができ、さらには、前記凹部の内壁と泡生成ノズルチップの周壁外面との相互間に、該チップの先端から後端にわたって伸延し該隙間にエアを送給する少なくとも1つのエア導入路を設けることもできる。
【0008】
また、本発明における点鼻薬注出ノズルは、前記本体部分を、点鼻薬を通す通路を有し先端部が開放された内筒と、この内筒の先端部分を残して包囲する外筒からなるものとし、
前記泡生成ノズルチップを、内筒の先端部に隙間を隔てて配置されるチップ本体と、このチップ本体につながり該外筒及び内筒の相互間で固定保持される周壁からなるものとし、
該周壁に、外筒の内壁段部に当接して泡生成ノズルチップを抜け止め保持する凸部と、チップ本体の後端と内筒の先端との相互間にエアを送給する少なくとも1つのエア導入孔を設けた構成を採用してもよい。
【0009】
さらに本発明における点鼻薬注出ノズルは、前記本体部分を、点鼻薬を通す通路を有し、該通路を取り囲む内筒と、この内筒の通路につながる貫通路を有し、環状溝において該内筒の先端部を嵌合させてそれらを相互に連結する外筒からなるものとし、
前記泡生成ノズルチップを、外筒の貫通路に配置されるチップ本体と、このチップ本体につながり該外筒及び内筒の相互間で抜け出し不能に保持される周壁からなるものとし、
該周壁に、外筒の内壁と泡生成ノズルの外壁との間を通して入り込んだエアをチップ本体の後端部に導入する少なくとも1つのエア導入孔を設けた構成を採用することもできる。
【0010】
前記泡生成ノズルチップのチップ本体には、点鼻薬をエアとともに撹乱させる凹凸状の壁部を持った経路を形成することが可能であり、また、前記泡生成ノズルチップのチップ本体の裏面にメッシュ部材を配置してもよい。
【発明の効果】
【0011】
注出ノズルの先端に配設されるノズルチップにおいて液状の点鼻薬をエアとともに撹乱させて泡状にするので、注出ノズルや噴出器自体が複雑になることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう点鼻薬注出ノズルの実施の形態を、ポンプ機構を備えた噴出器のボディとともに示した図であり、図2にはその要部拡大断面図である。
【0013】
図1において1はポンプ機構を内蔵するボディである。このボディ1の上部には注出ノズル2と一体になるフランジ部1aが設けられており、このフランジ部1aに指をあてがい注出ノズル2とともに上下に移動させるか、あるいは容器を上下に移動させることによりポンプ機構を駆動する(ポンプ機構は図示せず)。
【0014】
注出ノズル2は、テーパ状の先細り外観形状をなす本体部分2aを有するものであり、その先端には図2に符号を付して示した如く、外向きに開放された凹部2bが設けられている。
【0015】
また、3は泡生成ノズルチップである。この泡生成ノズルチップ3は、本体部分2aの凹部2bに、その底壁との間で若干の隙間t(隙間tは点鼻薬とエアとの混合室として機能する)を残して抜け出し不能に嵌合されており(凹部2bからの脱落を防止するため該ノズルチップ3の外側壁には、注出ノズル2の先端側へ向けてより突出代を大とするテーパ状の嵌め殺し突起dが設けられている)、該泡生成ノズルチップ3には、凹凸状の壁部eを持った経路3aと、ノズルチップ3の先端面から後端面にわたって貫通するエア導入経路3bがそれぞれ設けられている。
【0016】
かかる構成になる注出ノズル2は、点鼻薬の噴出に際して図2中矢印で示すように、エア導入経路3bを通して隙間tにエアが送給され、通路2a′から排出された点鼻薬は、隙間tでエア導入経路3bを通して送給されたエアと混合され、さらに混合されたエアとともに凹凸状の壁部eで撹乱され泡状になってノズルチップ3の先端から噴出することとなり、これにより薬剤による刺激が緩和される。
【0017】
上記の注出ノズル2においては、凹凸状の壁部eは、図示したように、経路3aの任意の箇所でその径を局所的に大きくする(又は小さくする)ことによって形成することができるが、その他、螺旋状の溝部を複数設けるか、縦に伸びる凹凸や格子状凹凸、あるいは突起や突条をランダムに配置することによって形成してもよく、この点については適宜変更を可能とする。
【0018】
図3、図4は本発明にしたがう注出ノズルの他の実施の形態を示したものである。この例は、泡生成ノズルチップ3が、凹部2bに適合する周壁3cと、この周壁3cの末端につながりその内側に点鼻薬をエアとともに通過させる開口hを有するフランジ部3dからなり、該フランジ部3dの端面(裏面)にメッシュ部材4を配置し、凹部2bの内壁及び周壁3cの少なくとも一方に、泡生成ノズルチップ3の先端から後端にわたって伸延し隙間tにエアを送給するエア流通路5(縦溝等)を設けた構造のものである。
【0019】
かかる構成になる注出ノズル2は、本体部分2aの通路2a′から排出された点鼻薬が、隙間tへ送給されたエアと混合され、さらに混合されたエアとともにメッシュ部材4を通過することで泡状となってノズルチップ3の先端から噴出する。
【0020】
この例の注出ノズル2は、点鼻薬を、エアとともにメッシュ部材4を通過させることで泡状にするが、周壁3cの内壁には、上掲図1、図2に示したような凹凸状の壁部eを設けて点鼻薬のより一層の撹乱を図ることもできる。
【0021】
なお、上掲図3、図4においては、エア流通路5を設けたものを図示したが、開口hの面積が大きい場合には該開口hにおいてエアとの混合が十分に促進されるので該エア流通路5は省略してもよい。
【0022】
図5、図6は本発明にしたがう注出ノズルのさらに他の実施の形態を示したものである。この例は、本体部分2aが、点鼻薬を通す通路2a′を有し、先端部が開放された内筒2a1と、この内筒2a1の先端部分を残して包囲する外筒2a2 からなり、泡生成ノズルチップ3が、内筒2a1の先端部に隙間t1を隔てて配置されるチップ本体3eと、このチップ本体3eに一体的につながり外筒2a2及び内筒2a1の相互間で固定保持される周壁3fからなり、周壁3fに、外筒2a2の内壁段部gに当接して泡生成ノズルチップ3を抜け止め保持する凸部6と、該泡生成ノズルチップ3の後端と内筒2a1との相互間に形成された隙間t1にエアを送給するエア導入孔7を設けた構造のものである。
【0023】
かかる構成の注出ノズル2においても、点鼻薬が隙間t1に送給されたエアと混合された後、エアとともに凹凸状の壁部eを通過する際に撹乱され、泡状になってノズルチップ3の先端から噴出する。
【0024】
この例は、周壁3fに設けられた凸部6を外筒2a2の内壁段部gに当接させて、泡生成ノズルチップ3の抜け出しを確実に防止する。
【0025】
図7、図8は本発明にしたがう注出ノズルのさらに他の実施の形態を示したものである。この例は、本体部分2aが、点鼻薬を通す通路2a′を有し、該通路2a′を取り囲む内筒2a1と、この内筒2a1の通路2a′につながる貫通路8を有し、環状溝mにおいて該内筒2a1の先端部を嵌合させてそれらを相互に連結する外筒2a2からなり、また、泡生成ノズルチップ3が、外筒2a2の貫通路8に配置されるチップ本体3eと、このチップ本体3eに一体的につながり該外筒2a2及び内筒2a2の相互間で抜け出し不能に挟持される周壁3fからなり、該周壁3fに、外筒2a2の内壁と泡生成ノズルチップ3の外壁との間を通して入り込んだエアをチップ本体3eの後端部に導入するエア導入孔9(横抜き孔)を1つ以上設けた構造のものである。
【0026】
かかる構成になる注出ノズル2は、外筒2a2の内壁及び泡生成ノズルチップ3の外壁の少なくとも一方にリブ又は溝を形成することによりエア導入経路10を設け、本体部分2aの通路2a′から排出された点鼻薬が、エア導入孔9から導入されたエアと混合された後、エアとともに凹凸状の壁部eにおいて撹乱され、泡状になってノズルチップ3の先端から噴出する。
【0027】
この例の泡生成ノズルチップ3は、周壁3fに段部3f′が形成され、この段部3f′から後端部に至るまでの領域Lが該外筒2a2及び内筒2a2の相互間に位置することになるので、これにより泡生成ノズルチップ3が抜け出し不能に保持される。
【0028】
上掲図1、2、図5〜8は、泡生成ノズルチップ3の経路3aに凹凸状の壁部eを形成した場合について示したが、メッシュ部材4を配置することができるのは言うまでもない。
【0029】
また、図1〜4については、泡生成ノズルチップ3の抜け出し防止手段として嵌め殺し突起dを設けたものを示したが、図5〜8に示した構造を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
構造の複雑化を伴うことなにし点鼻薬を泡状にして噴出可能な注出ノズルが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にしたがう注出ノズルの実施の形態を示した図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明にしたがう注出ノズルの他の実施の形態を示した図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明にしたがう注出ノズルの他の実施の形態を示した図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】本発明にしたがう注出ノズルのさらに他の実施の形態を示した図dである。
【図8】図7の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ボディ
1a フランジ部
2 注出ノズル
2a 本体部分
2b 凹部
3 泡生成ノズルチップ
3a 経路
3b エア導入経路
3c 周壁
3d フランジ部
4 メッシュ部材
5 エア導入経路
6 凸部
7 エア導入孔
8 貫通路
9 エア導入孔
10 エア導入経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパ状の先細り外観形状をなす本体部分を有し、その先端から点鼻薬を噴出させる注出ノズルであって、
前記注出ノズルは、本体部分の先端に固定保持され、点鼻薬をエアと混在させて泡状に噴出する泡生成ノズルチップを有することを特徴とする点鼻薬注出ノズル。
【請求項2】
前記本体部分に、その先端で外向きに開放され、泡生成ノズルチップを該先端から押し込んで底壁との間で若干の隙間を残して抜け出し不能に嵌合させる凹部を設け、
前記泡生成ノズルチップは、点鼻薬をエアとともに撹乱させる凹凸状の壁部を持った経路と、該チップの先端面から後端面にわたって貫通し、前記隙間へ向けてエアを送給する少なくとも一つのエア導入経路を有する、請求項1記載の点鼻薬注出ノズル。
【請求項3】
前記本体部分に、その先端で外向きに開放され、泡生成ノズルチップを該先端から押し込んで底壁との間で若干の隙間を残して抜け出し不能に嵌合させる凹部を設け、
前記泡生成ノズルチップは、該凹部に適合する周壁と、この周壁の末端につながりその内側に点鼻薬をエアとともに通過させる開口を有するフランジ部からなり、
該泡生成ノズルチップのフランジ部の裏面にメッシュ部材を配置した、請求項1記載の点鼻薬注出ノズル。
【請求項4】
前記凹部の内壁と、泡生成ノズルチップの周壁外面との相互間に、該チップの先端から後端にわたって伸延し該隙間にエアを送給する少なくとも1つのエア導入経路を設けた、請求項3記載の点鼻薬注出ノズル。
【請求項5】
前記本体部分は、点鼻薬を通す通路を有し先端部が開放された内筒と、この内筒の先端部分を残して包囲する外筒からなり、
前記泡生成ノズルチップは、内筒の先端部に隙間を隔てて配置されるチップ本体と、このチップ本体につながり該外筒及び内筒の相互間で固定保持される周壁からなり、
該周壁に、外筒の内壁段部に当接して泡生成ノズルチップを抜け止め保持する凸部と、チップ本体の後端と内筒の先端との相互間にエアを送給する少なくとも1つのエア導入孔を設けた、請求項1記載の点鼻薬注出ノズル。
【請求項6】
前記本体部分は、点鼻薬を通す通路を有し、該通路を取り囲む内筒と、この内筒の通路につながる貫通路を有し、環状溝において該内筒の先端部を嵌合させてそれらを相互に連結する外筒からなり、
前記泡生成ノズルチップは、外筒の貫通路に配置されるチップ本体と、このチップ本体につながり該外筒及び内筒の相互間で抜け出し不能に保持される周壁からなり、
該周壁に、外筒の内壁と泡生成ノズルの外壁との間を通して入り込んだエアをチップ本体の後端部に導入する少なくとも1つのエア導入孔を設けた、請求項1記載の点鼻薬注出ノズル。
【請求項7】
前記泡生成ノズルチップのチップ本体は、点鼻薬をエアとともに撹乱させる凹凸状の壁部を持った経路を有する、請求項5又は6記載の点鼻薬注出ノズル。
【請求項8】
前記泡生成ノズルチップのチップ本体の裏面にメッシュ部材を配置した、請求項5又は6記載の点鼻薬注出ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−132406(P2008−132406A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318688(P2006−318688)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】