説明

無人の水中航走体および無人の水中航走体を運転するための方法

【課題】無人の水中航走体による水中範囲の調査に対する手間を減少させる。
【解決手段】無人の水中航走体1が、制御装置3によって、設定可能な制御情報に基づき制御可能である。無人の水中航走体1が、自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードで選択的に制御可能であり、自律運転モードでは、制御装置3に、記憶素子13からの事前に求められた内的な制御情報が設定可能であり、遠隔操舵運転モードでは、制御装置3に、水中航走体1の通信装置11を介して外的な制御情報が設定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人の水中航走体であって、該水中航走体が、制御装置によって、設定可能な制御情報に基づき制御可能である無人の水中航走体に関する。
【0002】
さらに、本発明は、無人の水中航走体を制御装置によって、設定された制御情報に基づき制御して、特に前述した形式の無人の水中航走体を運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
無人の水中航走体は、種々異なる水中作業に対する多数の可能性を見い出す。有人の水中航走体と異なり、無人のシステムはより大きな作業深さに到達することができ、ダイバまたは有人のシステムに対して過度に危険である環境において作業することができる。さらに、無人の水中航走体は、より大きな研究船によって事前に認知された大部分の任務を果たすことができる。これによって、無人の水中航走体は有人のシステムに比べて高いコスト利点を提供する。無人の水中航走体は、遠隔操舵される水中航走体(ROV=Remotely Operated Vehicle)と自律型の水中航走体(AUV=Autonomous Underwater Vehicle)とに大まかに分類することができる。遠隔制御される水中航走体(ROV)は、一般的に接続ケーブルを介して、たいてい人間のオペレータによって遠隔制御される。このオペレータは、たとえば、システムプラットフォーム、たとえば水上艦船の制御室から水中航走体に対する制御命令を設定する。
【0004】
自律型の水中航走体(AUV)はその各作業を人間のオペレータによる常時の監視なしに果たし、それどころか、設定された作業プログラムに従動する。自律型の水中航走体は固有の給電手段を有していて、作業の間に人間のオペレータとの通信を必要としない。作業プログラムの実施後、自律型の水中航走体は同じく自動的に浮上し、たとえば相応の引上げ装置を有する母船によって引き上げられる。自律型の水中航走体は、通常、適切なセンサ、たとえばソナーセンサを備えている。測定結果は記録されるかまたはケーブルレスで母船に伝送される。自律型の水中航走体は、特に水中での広域にわたるかもしくは広範囲の偵察のために適していて、一般的に水中の検出された対象物との接触なしに水中環境を調査する。
【0005】
遠隔操舵される水中航走体は、特にリアルタイム条件のもと、局所的に制限されたより詳細な調査を伴う作業のために使用される。水中航走体は、しばしば対象物にも、たとえば修繕目的のために作用しなければならない。
【0006】
多数の水中作業、たとえばパイプラインのような沖合設備の検査および場合により修繕の際には、リアルタイム条件のもと、広域にわたる偵察または調査だけでなく、局所的に制限された作業も必要となる。しばしば、水中の鉛直な壁が調査されなければならない。この壁は水中での長さに相応して長い検査範囲にわたって調査され、損傷の確認時には、この損傷がより詳細に診断され、場合により修繕されなければならない。無人の水中航走体の所望される使用範囲は、たとえば通路壁、岸壁、矢板壁の検査を含めた港検査、特に水中壁の下方の浸食に関する港検査にもある。この港検査は船体の調査および場合により操作を含んでいてもよい。前述したような任務に対して、従来では、両航走体タイプが使用される。具体的な要求に応じて、自律型の水中航走体または遠隔制御される水中航走体が使用されるかまたは両航走体が、それぞれ1つの共通の作業の部分任務によって連続して使用される。
【0007】
無人の水中航走体の2つのタイプ、つまり、AUVならびにROVの提供は、機器手間の増加ひいては高いコストに繋がる。しばしばフル装備された複数の水中航走体が提供されなければならないことは別として、種々異なる航走体タイプに対して、一般的には、それぞれ異なる引上げシステムが提供されなければならず、これによって、両航走体タイプが作業の終了後に引き上げられ、たとえば母船の甲板にもたらされるようになっている。従来では、たいてい、自律型の水中航走体および遠隔操舵される水中航走体に対して、互いに異なる引上げシステムが使用される。複数の水中航走体と、これらに対応する引上げシステムとに対する高い機器手間は、通常、母船の甲板への機器の収納における難題に繋がる。特にデッキには、たいてい、ほとんどスペースが提供されていない。さらに、AUVだけでなくROVの提供は、無人の水中航走体のメンテナンスに対する著しい手間と、さらに、水中航走体および各引上げシステムのオペレータを訓練するための高い訓練手間とを招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、無人の水中航走体による水中範囲の調査に対する手間を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明に係る無人の水中航走体では、該水中航走体が、自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードで選択的に制御可能であり、前記自律運転モードでは、制御装置に、記憶素子からの事前に求められた内的な制御情報が設定可能であり、前記遠隔操舵運転モードでは、制御装置に、水中航走体の通信装置を介して外的な制御情報が設定可能であるようにした。
【0010】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、水中航走体が、運転モード選択手段を有しており、該運転モード選択手段によって、前記自律運転モードまたは前記遠隔操舵運転モードが調整可能である。
【0011】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、運転モード選択手段が、外部から接近可能に水中航走体に配置されていて、マニュアル操作可能である。
【0012】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、運転モード選択手段が、ケーブルレスの通信手段または接続ケーブルを介して遠隔制御可能である。
【0013】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、水中航走体が、接続ケーブルを接続するためのケーブル収容部を有している。
【0014】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、運転選択手段と通信装置とが、ケーブルレスの共通の通信手段または共通の接続ケーブルに接続可能である。
【0015】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、水中航走体が、その長手方向において働く主推進装置と、長手方向と異なる方向において働く少なくとも1つの操縦推進装置とを有している。
【0016】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、操縦推進装置が、水中航走体の前部の領域に配置されている。
【0017】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、水中航走体が、制御可能な操作装置を有している。
【0018】
本発明に係る無人の水中航走体の有利な態様によれば、水中航走体が、対象物の収容、搬送および/または格納のための収容装置を有している。
【0019】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る方法では、水中航走体を自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードで選択的に運転し、前記自律運転モードでは、制御装置に、記憶素子からの事前に求められた内的な制御情報を設定し、前記遠隔操舵運転モードでは、制御装置に、水中航走体の通信装置を介して外的な制御情報を設定するようにした。
【0020】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、水中航走体の運転モード選択手段によって、前記自律運転モードまたは前記遠隔操舵運転モードを調整し、選択された運転モードを調整するかまたは運転モードを変換するために、対応する運転モード選択信号を発生させる。
【0021】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、運転モード選択手段をマニュアル操作する。
【0022】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、運転モード選択手段をケーブルレスにまたは接続ケーブルを介して遠隔制御する。
【0023】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、前記自律運転モードまたは前記遠隔操舵運転モードを、制御装置に対応させられた運転ソフトウェアの設定および/または作業プログラムの設定に基づき調整する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、無人の水中航走体が自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードで選択的に制御可能であることが提案されている。これによって、本発明に係る無人の水中航走体が自律的に作業することができるだけでなく、遠隔制御されて作業することもできる。これによって、広域にわたる偵察要求を伴う水中任務と同時にポイント的な調査、すなわち、局所的に制限された調査を、リアルタイム条件のもと、ただ1つの無人の水中航走体によって実施することができる。制御装置は水中航走体の運転装置を、設定された制御情報に基づき制御する。なお、運転装置とは、エネルギ供給装置、ナビゲーションおよび通信のための装置ならびに水中航走体を運転するために設けられた別の装置を意味している。制御情報に基づき、制御装置の運転ソフトウェアが、水中航走体の設定された操縦に対する運転装置の適切な手段を検出する。
【0025】
自律運転モードでは、無人の水中航走体の制御装置に、記憶素子からの事前に求められた内的な制御情報が設定され、これによって、作業が自律運転モードでは人間のオペレータによる監視なしに内的な制御によって実施される。制御情報は、不変にプログラミングされた運転ソフトウェアの一部または具体的な作業プログラムの一部として制御装置に設定されていてよい。たとえば作業プログラムの範囲内での操縦が制御情報として格納されていてもよいし、割り当てられた事象の存在時の規定の制御手段の実施が事前に規定されてもよい。「インテリジェント」制御の範囲内では、たとえば水中航走体のセンサによって確認可能な規定の状況に対応させられた操縦、たとえば回避操縦に対する制御情報が設定されていてよい。この制御情報は、入力されるセンサ測定値を評価するための評価アルゴリズムも有している。有利には、対象物または調査したい建造物における損傷の発見のケースに対する広域にわたる水中偵察の範囲内では、作業の間、対象物のより詳細な検査を許容する操縦の即座のまたはのちの実施も提案されている。
【0026】
遠隔操舵運転モードでは、制御装置に、水中航走体の通信装置を介して外的な制御情報が設定され、これによって、自体公知のROVによりリアルタイム条件のもと水中作業を実施することができる。
【0027】
有利には、水中航走体が運転モード選択手段を有しており、この運転モード選択手段によって、自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードが必要に応じて調整可能となる。これによって、水中航走体を、具体的に果たしたい作業の要求に応じて、AUVまたはROVとして運転することができる。こうして、たとえば自律運転モードによるインターバルの間、たとえば水中に位置する壁の調査時に、水中航走体が、壁の調査したい作業範囲を迅速に巡察することができる。損傷の確認時には、水中航走体が遠隔制御運転モードに切り換えられる。遠隔操舵運転モードでは、オペレータが該当箇所を局所的に調査することができ、場合により、水中航走体によって修繕することができる。
【0028】
運転モード選択手段は、選択された運転モード(自律運転/遠隔操舵運転)の調整または運転モードの間の変換のために、対応する運転モード選択信号を発生させる。この運転モード選択信号は、有利には制御装置に入力され、これによって、この制御装置が運転モード選択信号によって、内的なまたは外的な制御命令の今後の受信、この制御命令の処理および水中航走体の運転装置の相応の制御に調整されている。制御装置は運転装置を、選択された運転モードに応じて、内的に設定された制御情報(自律運転)または外的に設定された制御情報(遠隔操舵運転)に基づき、その運転ソフトウェアに基づき制御する。
【0029】
有利な態様では、運転選択手段が、外部から接近可能に水中航走体に配置されていて、マニュアル操作可能である。運転モード選択手段のマニュアル操作によって、本発明に係る無人の水中航走体を作業の開始前に、たとえば母船の甲板において、各作業に適した運転モードに簡単に調整することができる。運転選択手段はスイッチであってよい。このスイッチは、無人の水中航走体の胴体の外面に取り付けられていて、操作時に運転モード選択信号を水中航走体の内部に案内し、最終的に制御装置に案内する。
【0030】
有利には、運転モード選択手段が、ケーブルレスの通信手段または接続ケーブルを介して遠隔制御可能である。これによって、運転モードを、作業の間、すなわち、水中航走体の着水後でも、必要に応じて遠隔制御に基づき変換することができる。また、運転モード選択手段の操作によって遠隔操舵運転を休止させることもでき、これによって、水中航走体がその偵察・巡察航行を自律運転において開始することができるかもしくは継続することができる。運転モードの切換のケーブルレスの遠隔制御は、有利には無線、音またはこれに類するものを介して行われる。
【0031】
有利には、水中航走体は、有利には光導波路ケーブルである接続ケーブルを接続するためのケーブル収容部を有している。このケーブル収容部は、有利には、水中航走体の後部の領域に配置されており、これによって、水中航走体が接続ケーブルを引っ張る。こうして、接続ケーブルが水中航走体によって固持され、損傷に対して防護される。ケーブル収容部と接続ケーブルとは、有利には差込み接続部として形成されており、これによって、接続ケーブルを簡単に水中航走体に適合させることができる。
【0032】
本発明の有利な態様では、外的な制御情報に対して運転選択手段および通信装置を接続するために、ケーブルレスの共通の通信手段または共通の接続ケーブルが使用される。共通の接続部材を介して、運転モードの遠隔制御される切換が行われるだけでなく、遠隔操舵運転では、水中航走体とシステムプラットフォーム、たとえば母船との間で通信が行われる。共通の接続ケーブルは、無人の水中航走体への給電のために使用されてもよく、これによって、遠隔操舵運転での無人の水中航走体の作業時に水中航走体の固有のエネルギ源が緩和されるかもしくは決して必要とならない。こうして、ROVとしての作業を必要に応じて即座にかつバッテリの使用なしに行うことができる。
【0033】
さらに、無人の水中航走体は、有利には自律運転モードの間でも、ケーブルレスの共通の通信手段または共通の接続ケーブルを介して母船と通信する。通信は、有利には遠隔制御要求に対して、情報をシステムプラットフォームに伝送するために使用される。たとえば遠隔制御によって、情報を提供するための設定可能なプログラムを作動させる信号を制御ユニットに供給することができる。無線ブイまたはトランスポンダを制御するための操縦または連行された無線ブイの解離も設定されていてよく、これによって、情報が高い伝送レートでシステムプラットフォームに伝送される。
【0034】
本発明の別の有利な態様では、自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードが、水中航走体の、記憶された運転ソフトウェアの設定および/または特殊な作業に対してファイルされた作業プログラムの設定に基づき選択的に調整される。このために、有利には記憶素子が、運転ソフトウェアの設定に対応して運転モード変換信号の供給を行うことができる。特に制御装置がセンサ測定値に基づき、遠隔操舵運転への切換が設定されている規定の状況の存在を認識した場合には、自律運転から遠隔操舵運転への切換を行うことができる。運転ソフトウェアまたは作業プログラムによる運転モードの直接的な切換に対して択一的には、制御装置が運転モード変換を間接的に開始し、システムプラットフォームにおいて要求し、これによって、オペレータが直接的な運転モード変換を行うかもしくは行うことができる。
【0035】
本発明の有利な態様では、水中航走体が、その長手方向において働く主推進装置と、長手方向と異なる方向において働く少なくとも1つの操縦推進装置とを有している。こうして、本発明に係る無人の水中航走体を遠隔操舵運転モードの間に制御室での人間のオペレータの制御命令によって正確に位置決めすることができ、これによって、リアルタイム条件下での精密な調査または修繕が行われる。
【0036】
有利には、操縦推進装置が、水中航走体の前部の領域に設けられていて、これによって、場合により、主推進装置と適切に調和されて、水中航走体の改善されたナビゲーションを可能にする。左右推進装置は、有利には胴体の両側への左右推進装置として設けられている。択一的または付加的には、操縦推進装置として垂直推進装置が設けられていてよい。
【0037】
有利には、水中航走体が、制御可能な操作装置、有利にはロボットアームを有しており、これによって、特に遠隔操舵運転モードにおいて操作任務、たとえば修繕を実施することができる。
【0038】
別の態様では、水中航走体が、対象物の収容、搬送および/または格納のための収容装置を有している。このような対象物は、たとえば装薬であってもよいし、作業範囲で採集されて操作装置によって収容装置の内部にもたらされる試料であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る無人の水中航走体の概略的な側面図である。
【図2】本発明に係る無人の水中航走体の第2の実施の形態の概略的な側面図である。
【図3】本発明に係る無人の水中航走体の第3の実施の形態の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0041】
図1には、無人の水中航走体1が示してある。この水中航走体1は耐圧性の胴体2を備えている。この胴体2には、水中航走体1の種々異なる運転装置、たとえばエネルギ供給、通信およびナビゲーション(航行指示)のための装置および推進のための装置が配置されている。詳しく図示していない運転装置は、水中航走体1の制御装置3によって、設定可能な制御命令に基づき制御される。さらに、水中航走体1は適切なセンサ、たとえばソナーセンサを有している。このセンサの測定結果は制御装置3によって運転装置の制御、たとえばナビゲーションのために使用される。
【0042】
無人の水中航走体1はその後部5の領域に主推進装置4を有している。この主推進装置4は水中航走体1の長手方向6において働く。水中航走体1は主推進装置4に対して付加的に操縦推進装置7を有している。この操縦推進装置7は、長手方向6と異なる方向において働き、水中航走体1の作業の間、具体的な使用箇所への正確な位置決めを可能にする。操縦推進装置7は、図示の実施の形態では、左右推進装置として形成されていて、水中航走体1の前部8の領域に配置されている。有利には、胴体2の両側にそれぞれ操縦推進装置7が配置されている。左右推進装置に対して択一的または付加的には、操縦推進装置7として1つまたはそれ以上の垂直推進装置が設けられていてよい。
【0043】
無人の水中航走体1は、自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードで選択的に運転可能である。遠隔操舵運転モードでは、制御装置3に対する制御情報が人間のオペレータによって設定される。制御情報は、オペレータによるガイドのもと水中航走体1によってリアルタイムで実施される具体的な操縦を実施するための制御命令であってよい。このためには、水中航走体1が、有利には光導波路ケーブルである接続ケーブル9を介してシステムプラットフォームに接続されている。このシステムプラットフォームは、図示の実施の形態では、母船10、つまり、水上艦船である。システムプラットフォームは、図示していない別の実施の形態では、不動であるかまたは母船としての潜水艦によって形成される。
【0044】
接続ケーブル9に対して択一的には、ケーブルレスの通信手段が設けられていてよい。この形態では、通信装置11がケーブルレスに無線、音またはこれに類するものによってシステムプラットフォームと通信する。
【0045】
接続ケーブル9は水中航走体1の通信装置11に接続可能であり、これによって、遠隔操舵運転モードにおいて制御装置3に接続ケーブル9と通信装置11とを介して外部制御命令または別の制御情報が設定可能となる。また、通信装置11を介して、水中航走体1が情報、たとえば画像情報を母船10に提供し、これによって、遠隔操舵運転モードにおいて、操縦をリアルタイム条件のもと遠隔制御することができる。
【0046】
接続ケーブル9を接続するためには、水中航走体1がケーブル収容部12を有している。このケーブル収容部12は、接続ケーブル9を簡単に適合させるために差込み接続部として形成されている。接続ケーブル9を適合させるためには、この接続ケーブル9の端部が矢印方向でケーブル収容部12内に導入され、通信装置11に信号伝送接続される。ケーブル収容部12は、有利には、水中航走体1の後部5の領域に配置されており、これによって、作業の間、接続ケーブル9が水中航走体1によって引っ張られる。
【0047】
無人の水中航走体1の自律運転モードでは、制御装置3に、記憶素子13からの事前に求められた内的な制御情報が設定される。これによって、水中航走体1を自律的に、すなわち、システムプラットフォームおよび人間のオペレータから独立して操作することができる。制御情報は、プログラミングされた運転ソフトウェアおよび/または作業プログラミングによって設定され、作業の基本的なパラメータに関する制御情報だけでなく、具体的に予見可能ではないものの、規定可能な種類の事象における操縦に対する制御命令も含んでいる。たとえば、回避操縦に対する制御命令と、より詳細な局所的な調査のために、水中航走体1の設定された巡察を(一時的に)変更するための制御情報とが設けられている。
【0048】
選択的に自律運転可能であるかまたは遠隔操舵運転可能である水中航走体1によって、従来の自律型の水中航走体(AUV)の利点と、従来の遠隔操舵される水中航走体(ROV)の利点とが、ただ1つの水中航走体1にまとめられている。この水中航走体1は自律型の水中航走体(AUV)または遠隔操舵される水中航走体(ROV)として多角的に使用可能である。
【0049】
自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードで選択的に運転可能である本発明に係る水中航走体1の有利な使用目的は、港設備、たとえば矢板壁の水中検査、特に港壁または矢板壁の下方の浸食に関する水中検査である。別の使用目的は、船体または通路壁、たとえばパイプラインの検査であるかまたは水中航走体1が自律運転でAUVとして、調査したい対象物をより長い区間にわたって巡察し、特に関心のある箇所でROVとして遠隔操舵運転でより詳細な検査を実施するような別のあらゆる使用例である。
【0050】
運転モードの選択的な調整もしくは自律運転モードと遠隔操舵運転モードとの間の変換のためには、水中航走体1が運転モード選択手段15を有している。この運転モード選択手段15は、選択された運転モードを調整するために、対応する運転モード選択信号14を発生させ、制御装置3に設定する。図1に示した実施の形態では、運転選択手段15が、マニュアル操作可能な運転モードスイッチとして形成されている。この運転モードスイッチは、外部から接近可能に水中航走体1の胴体2に配置されている。
【0051】
水中航走体1は、水中での操作任務、たとえば修繕作業を実施するための制御可能な操作装置16を有している。この操作装置16は、有利には、制御装置3によって制御されるロボットアームである。このロボットアームは、図示の実施の形態では、前部8の領域に配置されている。しかし、図示していない別の実施の形態では、更なる操作装置16または別の操作装置16が水中航走体1の別の領域に配置されていてもよい。ロボットアームによって、特に遠隔操舵運転において、正確に制御可能な操作任務、たとえば修繕作業または収容装置17内に格納することができる試料の採集を実施することができる。収容装置17は、対象物、たとえば装薬の搬送および/または格納のために使用されてもよい。
【0052】
自律運転でまたは遠隔操舵運転モードで選択的に運転可能である本発明に係る水中航走体1によって、従来の自律型の水中航走体(AUV)および遠隔操舵される水中航走体(ROV)の全使用範囲をただ1つの水中航走体1でカバーすることができる。また、水中航走体1を水中に放ち、作業後に引き上げるためには、母船10の甲板に設けられたただ1つの引上げ装置18で十分である。ただ1つの水中航走体1と、これに対応した引上げ装置18とによって、水中航走体1と引上げ装置18との取扱いに対する訓練手間と、母船10の甲板におけるスペース要求とが、複数の航走体タイプによる従来の解決手段と比較して著しく減少させられている、つまり、約半分にされてる。より僅かな機器・訓練手間と、減少させられたスペース要求とによって、水中範囲の調査に対するコストが著しく削減されている。
【0053】
図2には、別の無人の水中航走体1’の実施の形態が示してある。それぞれ同一の特徴または構成部材には、図1と同じ符号が使用してある。水中航走体1’は、以下に詳しく説明する違いを除いて、図1に示した水中航走体1の構造に対応している。
【0054】
図2に示した水中航走体1’は、図1に示したマニュアル操作可能な運転モードスイッチの代わりに、遠隔制御可能な運転モード選択手段15’を有している。この遠隔制御可能な運転モード選択手段15’は、図示の実施の形態では、受信器である。この受信器は、運転モードの変換または調整の意思に対応した遠隔制御信号に応答する。水中航走体1’の運転モードの変換を行うためには、たとえば母船から制御信号が、たとえば音または無線またはこれに類する形式で供給される。遠隔制御信号の受信時には、運転選択手段15’の受信器が応答し、これによって、制御装置3に運転モード選択信号14が供給される。運転選択手段15’と通信装置11とは、図示していない実施の形態では、ケーブルレスの共通の通信手段に接続されている。
【0055】
図示していない実施の形態では、遠隔制御される運転選択手段が接続ケーブルを介して遠隔制御可能となる。この遠隔制御のための接続ケーブルは、有利には光導波路ケーブルである。遠隔制御のための接続ケーブルは、有利な実施の形態では、遠隔制御運転でのシステムプラットフォームとの通信に用いられる水中航走体1’の接続ケーブル9である。したがって、運転選択手段15’と通信装置11とが共通の接続ケーブル9に接続されており、これによって、構造的な手間が減少させられている。
【0056】
図3には、さらに別の無人の水中航走体1’’の実施の形態が示してある。それぞれ同一の特徴または構成部材には、図1および図2と同じ符号が使用してある。水中航走体1’’は、以下に詳しく説明する違いを除いて、図1に示した水中航走体1の構造に対応している。
【0057】
図3に示した無人の水中航走体1’’では、自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードが、水中航走体1’’の運転ソフトウェア19の設定および/または作業プログラムの設定に基づき調整される。自律運転と遠隔制御運転との間の運転モードの変換のための情報は、この実施の形態では、制御装置3に設定されている制御情報の一部である。
【0058】
運転ソフトウェア19もしくは設定された作業プログラムは、制御装置3がアクセスする記憶素子13にファイルされている。この記憶素子13は制御装置3の一部であってよい。
【0059】
運転ソフトウェア19は、規定の作業に対して個別に作成されて記憶された作業プログラムによって万が一の運転モード変換に関して実現することができる。作業プログラムの設定に準じた運転モードの間の切換時には、たとえば運転モード変換の時点または運転モード変換の順序が、水中航走体1’’の一連のプログラミングされた操縦に設定されている。
【0060】
運転ソフトウェア19による運転モードの調整に際して、運転ソフトウェア19が水中航走体1’’の測定装置の結果に基づき、それぞれ現在の運転モードと異なる運転モードへの変換が設定された規定の状況の存在を検出した場合には、有利には作業の間に運転モードが変換される。インテリジェント運転ソフトウェアは、可能な運転モード変換に関するセンサ装置の連続的に入力される測定値を評価する。このためには、運転ソフトウェア19が相応の評価アルゴリズムを有している。この評価アルゴリズムは作業プログラムによって規定することができるかもしくは実現することができる。
【0061】
前述した図面の説明、特許請求の範囲および明細書冒頭に記載した全ての特徴は個々に使用可能でもあり、任意に互いに組み合わせて使用可能でもある。したがって、本発明の開示内容は、説明したかもしくは請求した特徴の組合せに限定されるものではない。それどころか、あらゆる特徴の組合せが開示されているものと見なすことができる。
【符号の説明】
【0062】
1,1’,1’’ 水中航走体
2 胴体
3 制御装置
4 主推進装置
5 後部
6 長手方向
7 操縦推進装置
8 前部
9 接続ケーブル
10 母船
11 通信装置
12 ケーブル収容部
13 記憶素子
14 運転モード選択信号
15,15’ 運転モード選択手段
16 操作装置
17 収容装置
18 引上げ装置
19 運転ソフトウェア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人の水中航走体であって、該水中航走体が、制御装置(3)によって、設定可能な制御情報に基づき制御可能である無人の水中航走体において、該水中航走体(1,1’,1’’)が、自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードで選択的に制御可能であり、前記自律運転モードでは、制御装置(3)に、記憶素子(13)からの事前に求められた内的な制御情報が設定可能であり、前記遠隔操舵運転モードでは、制御装置(3)に、水中航走体(1,1’,1’’)の通信装置(11)を介して外的な制御情報が設定可能であることを特徴とする、無人の水中航走体。
【請求項2】
水中航走体(1,1’,1’’)が、運転モード選択手段(15,15’)を有しており、該運転モード選択手段(15,15’)によって、前記自律運転モードまたは前記遠隔操舵運転モードが調整可能である、請求項1記載の無人の水中航走体。
【請求項3】
運転モード選択手段(15,15’)が、外部から接近可能に水中航走体(1,1’,1’’)に配置されていて、マニュアル操作可能である、請求項2記載の無人の水中航走体。
【請求項4】
運転モード選択手段(15’)が、ケーブルレスの通信手段または接続ケーブル(9)を介して遠隔制御可能である、請求項2または3記載の無人の水中航走体。
【請求項5】
水中航走体(1,1’,1’’)が、接続ケーブル(9)を接続するためのケーブル収容部(12)を有している、請求項4記載の無人の水中航走体。
【請求項6】
運転選択手段(15’)と通信装置(11)とが、ケーブルレスの共通の通信手段または共通の接続ケーブル(9)に接続可能である、請求項2から5までのいずれか1項記載の無人の水中航走体。
【請求項7】
水中航走体(1,1’,1’’)が、その長手方向(6)において働く主推進装置(4)と、長手方向(6)と異なる方向において働く少なくとも1つの操縦推進装置(7)とを有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の無人の水中航走体。
【請求項8】
操縦推進装置(7)が、水中航走体(1,1’,1’’)の前部(8)の領域に配置されている、請求項7記載の無人の水中航走体。
【請求項9】
水中航走体(1,1’,1’’)が、制御可能な操作装置(16)を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の無人の水中航走体。
【請求項10】
水中航走体(1,1’,1’’)が、対象物の収容、搬送および/または格納のための収容装置(17)を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の無人の水中航走体。
【請求項11】
無人の水中航走体(1,1’,1’’)を制御装置(3)によって、設定された制御情報に基づき制御して、特に請求項1から10までのいずれか1項記載の無人の水中航走体を運転するための方法において、水中航走体(1,1’,1’’)を自律運転モードまたは遠隔操舵運転モードで選択的に運転し、前記自律運転モードでは、制御装置(3)に、記憶素子(13)からの事前に求められた内的な制御情報を設定し、前記遠隔操舵運転モードでは、制御装置(3)に、水中航走体(1,1’,1’’)の通信装置(11)を介して外的な制御情報を設定することを特徴とする、無人の水中航走体を運転するための方法。
【請求項12】
水中航走体(1,1’,1’’)の運転モード選択手段(15,15’)によって、前記自律運転モードまたは前記遠隔操舵運転モードを調整し、選択された運転モードを調整するかまたは運転モードを変換するために、対応する運転モード選択信号(14)を発生させる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
運転モード選択手段(15)をマニュアル操作する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
運転モード選択手段(15’)をケーブルレスにまたは接続ケーブル(9)を介して遠隔制御する、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記自律運転モードまたは前記遠隔操舵運転モードを、制御装置(3)に対応させられた運転ソフトウェア(19)の設定および/または作業プログラムの設定に基づき調整する、請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−51560(P2012−51560A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188850(P2011−188850)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(303062772)アトラス エレクトロニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (13)
【氏名又は名称原語表記】ATLAS ELEKTRONIK GmbH
【住所又は居所原語表記】Sebaldsbruecker Heerstrasse 235, D−28309 Bremen, Germany