無声放電式プラズマ発生装置および無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法
【課題】給電部材にアークが到達する前にアークを完全に消弧し、確実な電極間絶縁の回復を実現することができる無声放電式プラズマ発生装置を提供する。
【解決手段】誘電体(3)と、誘電体を挟んで対向配置された第1、第2の電極(1,2)と、電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源(6)とを含み、放電を発生させる放電空間にガスを供給してプラズマを形成する装置であって、第2の電極(2)が誘電体上に形成された導電性の給電薄膜からなり、誘電体が破損して電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電が、アーク放電が発生した部分から給電薄膜に接して交流電源と給電薄膜とを接続する給電部材(7)に至る給電薄膜を部分的に消滅させ、同時に誘電体および給電薄膜の少なくとも給電薄膜と接するように配置されたアーク消弧剤(10)によりアーク放電が消弧される。
【解決手段】誘電体(3)と、誘電体を挟んで対向配置された第1、第2の電極(1,2)と、電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源(6)とを含み、放電を発生させる放電空間にガスを供給してプラズマを形成する装置であって、第2の電極(2)が誘電体上に形成された導電性の給電薄膜からなり、誘電体が破損して電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電が、アーク放電が発生した部分から給電薄膜に接して交流電源と給電薄膜とを接続する給電部材(7)に至る給電薄膜を部分的に消滅させ、同時に誘電体および給電薄膜の少なくとも給電薄膜と接するように配置されたアーク消弧剤(10)によりアーク放電が消弧される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無声放電を利用した大容量のプラズマ装置、特に、電極の破損などに起因する電極間の短絡に伴い発生したアーク放電を速やかに消弧し、装置システム全体を停止することなく、装置を再起動できるヒューズを用いない新たな短絡保護機能を備えた無声放電式プラズマ発生装置および該装置における消孤方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン発生装置に代表される無声放電プラズマ装置の短絡保護には、ヒューズが一般的に使用されている。また、駆動電源側の短絡保護制御と連携し、ヒューズのハードウェア的な保護機能に制御面のソフトウェア的な保護機能を付加した重畳システムも採用されている。しかし、上記プラズマ装置に使用するヒューズは高電圧用の特殊ヒューズであり、その大きさおよびコストは装置の小型化および低コスト化の大きな障害となっていた。
【0003】
下記特許文献1では、上述のようなプラズマ装置において、ヒューズを用いない新たな短絡保護システムを備えたものが提案されている。オゾン発生装置を例にして以下にそのシステムを説明する。図14は円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。実際の装置は図14に示した電極部が図14の紙面の上下方向および奥行き方向に複数・並列に並べて接続されている。金属製の接地電極1と、内面に膜厚100μm以下の薄膜高電圧電極2を配した誘電体(ガラス管)3との間に形成された空間に酸素を含んだ原料ガスを導入し、かつ両電極間に高電圧を印加することにより無声放電プラズマを発生させる。この空間は放電空間4と称され、該空間においては、酸素分子が電子との衝突により解離され、オゾンを生成することになる。
【0004】
この従来装置の最たる特徴は、ガラス管3内面に形成された薄膜高電圧電極2が一般的には高い導電性を確保する観点から、厚膜でガラス管に対して強固な密着力を有するものが求められるが、その常識に反して導電性薄膜であることにある。例えば、厚膜の高電圧電極を有する一般的な円筒多管式オゾン発生装置において、通常のオゾン発生時にガラス管が破損した場合、接地電極1と厚膜高電圧電極間にアーク放電が発生し、電極間短絡が生じる。このアーク放電は電極が存在する限り、また両電極が所定の絶縁距離以内に存在する限り持続し、アークエネルギーが電極に注入され続ける。
【0005】
しかしながら、上記従来装置においては、高電圧電極が薄膜で形成されていることから、アーク放電による入熱により瞬時にアーク放電を停止させるのに十分な絶縁距離を確保するように高電圧電極自身が蒸発または昇華し消失する。すなわち、高電圧電極自身が短絡現象を検知し、自身を消失させることにより電極間の絶縁を回復する、まさにヒューズと同様の効果を備えている。
【0006】
また、上記従来装置の構成では、短絡発生後に自動的に電極間の絶縁が回復されるため、オゾン発生システムを停止することなく、オゾン発生装置の再起動が可能である。さらに、正常なガラス管は当然ながら、破損したガラス管においても、破損部位以外で再度オゾン発生を継続することができる。一度短絡を検知し、エレメントが溶断したヒューズは再使用が不可能であり、溶断したヒューズが接続されたガラス管は二度とオゾン発生に寄与することができないが、この点では、上記従来装置はヒューズを超えた優れた短絡保護・再起動機能を有しているといえる。
【0007】
また、大容量のオゾン発生装置、すなわち電極数が膨大な数になる場合、短絡電流が極めて大きくなるケースが考えられ、その場合は、薄膜高電圧電極2に交流電源からなる駆動電源6側の保護機能を重畳させた保護システムを構築するのが効果的である。上記のように、薄膜高電圧電極2の採用により、短絡保護に必要不可欠であったヒューズが不要となり、信頼性の高い短絡保護システムの構築ならびに装置の小型化・低コストが実現できる。
【0008】
なお、図14の5は冷却水通路、7は給電部材、8,9は管板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2006/103945号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のような従来の装置では、薄膜高電圧電極の自己消失によりヒューズを用いない短絡保護システムが提供され、また短絡電流が大電流の場合は、薄膜高電圧電極の自己消失効果に駆動電源側の短絡保護機能を重畳させるという利点が提供された。しかしながら、短絡電流が数十〜数百Aの大電流となった場合、上記構成では十分な短絡保護を実現できない場合がある。この場合、電極部へ注入されるアークエネルギーが極めて大きくなり、薄膜高電圧電極の消失量が増大する。
【0011】
蒸発・昇華した多量の薄膜高電圧電極の微粒子は、ガラス管内のガスに導電性を付与し、この導電性ガスを経路として、短絡に伴い発生したアークは薄膜高電圧電極の消失により形成される絶縁距離を確保しても消弧することなく、破損箇所(アーク発生起点)から金属製の給電部材(放電空間の外部に設置)7へ持続し到達してしまう。給電部材にアークが到達した場合、オゾン発生装置は完全に短絡することになり、オゾン発生システムの停止および短絡を発生した電極部の交換を余儀なくされる。
【0012】
ここで円筒多管式オゾン発生装置(電極構成部材が同心同軸状に形成される)におけるアークの発生と消弧について図15,図16に従って具体的に説明する。誘電体(ガラス管)3が破損箇所21において破損した場合、概ね破損箇所にはピンホール状の貫通穴が形成される。ただし、誘電体3の材質や破損時に注入されたアークエネルギーの大きさにより、ピンホールだけでなく、亀裂や割れといった二次的な破損を伴う場合もある。また、オゾン発生装置の電極が動作中に破損する原因としては、過度な温度上昇や誘電体3を接地電極1の中に挿入する際に生じる機械的応力、誘電体3に生じるキズや製造時に含有される欠陥に伴い発生する誘電体3の絶縁破壊強度の低下が考えられる。
【0013】
このように、誘電体3が破損した場合、瞬時に接地電極1と誘電体3内面に配されている薄膜高電圧電極2との間にアーク放電が発生し、短絡電流が電極間を流れる。短絡電流が小さい場合は、図15に示すように、破損箇所21の周囲の薄膜高電圧電極2がアーク放電によるエネルギーの注入により瞬時に蒸発・昇華し、自動的に消失する。この消失範囲はアーク放電が消弧されるに十分な絶縁距離Lを確保するように消失し、短絡直後に電極間の絶縁が瞬時に回復され、破損箇所21以外で通常のオゾン発生が再開される。このことは上記特許文献1に開示されている。
【0014】
一方、図16に示すように、短絡電流が数十A以上となる場合、アーク放電により注入されるエネルギーが増大することから、薄膜高電圧電極2の自己消失する範囲が拡大される。さらに多くの薄膜高電圧電極2が消失した空間(誘電体3内部)には、蒸発・昇華した薄膜高電圧電極微粒子を含んだ導電性ガス22が充満し、誘電体3内部は導電性を帯びた空間となる。従って、図15のように瞬時に絶縁が回復できず、導電性ガスを媒体としてアーク放電が持続する。持続したアークは薄膜高電圧電極2を蒸発・昇華し続け、最終的に給電部材7にまで到達し、完全に短絡(オゾン発生システムの停止)を引き起こす場合がある(給電部材はアークエネルギーに対して十分な熱容量を有するバルク金属である)。
【0015】
また、図16において、駆動電源6側の短絡保護機能を薄膜高電圧電極2の自己消失効果に重畳させ、アークを消弧させるためには、アークが給電部材7に到達するまでにインバータ電源のゲート信号を遮断し、停止指令を発令する必要がある。しかし、駆動電源6における短絡保護に関する制御シーケンスでは、その処理時間は100msec程度を要するのが一般的であり、特に短絡が給電部材7に極めて近い箇所で発生した場合には、10msec程度でゲート信号を遮断しないとアークは、給電部材7が接地電極1端部から前述した絶縁距離L以上離れた放電空間4の外側に設置されているにもかかわらず、該給電部材7に到達する。アークの発生、つまり短絡の発生は出力電圧の低下で検知するのが容易であるが、処理時間の高速化が実現できない限り、出力電圧の低下を検知してからゲート遮断に至るまでに、アークが十分に持続してしまい、給電部材7に到達してしまう。すなわち、駆動電源6側の短絡保護機能を重畳させてもアークを消弧することができない場合があり得る。
【0016】
以上のように、薄膜高電圧電極自身がアーク消弧に必要な絶縁距離に相当する量だけを自己消失し、電極間の絶縁を回復しようとしても、また、駆動電源側の短絡保護機能を重畳させても、注入されるアークエネルギーの大きさと導電性ガスの存在により、アークが消弧せず持続し、大量の高電圧電極を消失させながら給電部材にまで到達してしまうという課題があった。
【0017】
この発明は、ヒューズや、駆動電源制御側の複雑かつ遅れ時間を発生する遮断システムを用いず、敢えてアークが持続できる空間(つまりアークを消弧する時間的猶予)を形成し、給電部材にアークが到達する前にアークを完全に消弧し、確実な電極間絶縁の回復を実現することができる無声放電式プラズマ発生装置および該装置における消孤方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、誘電体と、ガスを供給してプラズマを発生させる放電空間を間に設けるように上記誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された導電性の給電薄膜からなる第2の電極からなる1組の電極と、上記1組の電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源と、上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材と、上記誘電体および第2の電極の少なくとも第2の電極と接するように配置されたアーク消弧剤と、を備え、上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極がアーク放電の発生した部分から上記給電部材が接する部分まで部分的に消滅し、同時に上記アーク消弧剤によりアーク放電を消弧することを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置にある。
この発明はまた、該装置における消孤方法も含む。
【発明の効果】
【0019】
この発明では、給電部材にアークが到達する前にアークを完全に消弧し、確実な電極間絶縁の回復を実現することができる無声放電式プラズマ発生装置および該装置における消孤方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1による無声放電式プラズマ発生装置である円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図2】この発明によるオゾン発生装置の電気回路の構成図である。
【図3】この発明によるオゾン発生装置にかかる破損発生時の印加電圧と流れる電流の時間変化を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による円筒多管式オゾン発生装置の変形例を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1による円筒多管式オゾン発生装置の別の変形例を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1による円筒多管式オゾン発生装置の変形例における一組の電極部の断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図8】この発明の実施の形態4による円筒多管式オゾン発生装置の一例による一組の電極部の断面図である。
【図9】この発明の実施の形態4による円筒多管式オゾン発生装置の別の例による一組の電極部の断面図である。
【図10】この発明の実施の形態5による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図11】この発明の実施の形態6による円筒多管式オゾン発生装置の一例による一組の電極部の断面図である。
【図12】この発明の実施の形態6による円筒多管式オゾン発生装置の別の例による一組の電極部の断面図である。
【図13】この発明の実施の形態7による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図14】従来の円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図15】円筒多管式オゾン発生装置におけるアークの発生と消弧について説明するための図である。
【図16】円筒多管式オゾン発生装置におけるアークの発生と消弧について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初にこの発明は、大容量(短絡電流が大電流)のオゾン発生装置に代表される無声放電プラズマ装置においても、電極間短絡に伴い発生するアークを高速かつ確実に遮断し、速やかに消弧するものである。上記特許文献1に示された薄膜高電圧電極の自己消失効果を利用し、アークの発生箇所および持続経路にアーク冷却剤を設置することで、発生したアークを冷却し、給電部材にアークが到達するまでに消弧させるものである。
【0022】
例えば、上記特許文献1で示されたようなガラス管を誘電体とする無声放電を用いた円筒多管式オゾン発生装置において、ガラス管が破損し、アークが発生した際に、
1)ガラス管内面に形成される高電圧電極がアーク熱により蒸発または昇華する薄膜給電膜であること、
2)駆動電源から該給電膜に電流を供給する給電部材が放電空間の外側にて給電膜と接触していること、
3)該給電部材と破損箇所間のアーク持続経路にアーク消弧(冷却)剤を備える
ことにより実現される。
【0023】
この発明においては、以上の構造により、電極間に発生したアークは、給電部材に到達するまでに、アーク持続経路内に設置されたアーク消弧剤により冷却される。冷却されたアークは、瞬時にそのアーク電圧を上昇させ、消弧に至る、つまり電極間の絶縁を回復し、オゾン発生システム全体を停止することなく(短絡した電極管を除去することなく)、一時的に放電を停止したオゾン発生装置の再起動が可能となる。
【0024】
この発明においては、ガラス管およびその内面に配置された薄膜高電圧電極に囲まれた空間にアーク消弧剤が設置される。この発明におけるアークの持続経路は、上述したガラス管および薄膜高電圧電極に囲まれた空間に限定されており、アークは必ずガラス管の破損箇所から給電部材に向かって持続・進展する。すなわち、少なくとも給電部材と放電空間との間にアーク消弧剤を配置することで、発生・持続したアークは必ずアーク消弧剤に接することになる。アーク消弧剤に接したアークは急速に冷却(アーク電界強度の上昇、アーク電圧の上昇)され、消弧に至る。
【0025】
上記特許文献1にも示されているように、給電部材が、放電空間内に存在すれば、その直近でガラス管が破損した場合、破損箇所を介して接地電極と給電部材との間にアークが発生し、瞬時に完全短絡してしまうため、放電空間の外側に配置する。
【0026】
また、この発明における構造では、高電圧電極が薄膜であるために、破損発生後、瞬時に完全短絡するのではなく、薄膜高電圧電極が自己消失、さらにはガラス管内に発生した導電性ガスによりアークが給電部材に至るまでの時間的猶予が設けられる。アーク消弧剤が破損発生箇所のより近くに存在していれば、薄膜高電圧電極の無用な消失量を抑制し、より早期にアークを消弧することができるが、上記時間的猶予が与えられるため、完全短絡を回避するという観点では、給電部材と放電空間の間にのみアーク消弧剤が存在すれば、高電圧電極の消失量は増大する可能性があるものの、アークを消弧することができ、オゾン発生装置は完全短絡に至ることはない。
【0027】
またこの発明の無声放電式プラズマ発生装置は、いわゆる円筒多管式オゾン発生装置に限定されず、平行平板型電極構造を用いた装置にも適用できる。またオゾン発生装置だけではなく、同様の放電形態を用いる炭酸ガスレーザや有害ガス分解装置などにも同様に適用することができる。
【0028】
この発明においては、従来使用されているヒューズや、駆動電源制御側の複雑かつ遅れ時間を発生する遮断システムを用いず、敢えてアークが持続できる空間(つまりアークを消弧する時間的猶予)を形成し、アーク消弧剤を設置することにより、給電部材にアークが到達する前にアークを完全に消弧するため、確実な電極間絶縁の回復を実現することができる。従って、短絡電流が大電流の場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を有効に利用することができ、オゾン発生システムを停止することなく、再度、破損箇所以外において、正規のオゾン発生を実現することができる。また、オゾン発生装置の小型化への障害となっていたヒューズを用いる必要がなく、大幅な小型化を実現することもできる。
【0029】
以下、この発明による無声放電式プラズマ発生装置をオゾン発生装置を例に挙げて、各実施の形態に従って図を使って説明する。
【0030】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。図1において、所定の空隙長dで対向して配置された接地電極1(第1の電極)と給電薄膜である薄膜高電圧電極2(第2の電極)とを有する。また、接地電極1と薄膜高電圧電極2の間には少なくとも1つの誘電体3が配置され、接地電極1と誘電体3は同心同軸状の円筒管となっている。薄膜高電圧電極2は誘電体3の内面に密着して形成されている。空隙長dを放電空隙長、放電空隙長により形成された空間を放電空間4と称する。放電空隙長は0.6mm以下に設定されている(以下、この発明においてはこの構造を用いて説明する)。
【0031】
放電空間4には、酸素を含んだガスが原料ガスとして導入され、また、交流電源である駆動電源6と接続された金属製の給電部材7を介して、接地電極1と薄膜高電圧電極2との間に交流高電圧が印加されることにより、無声放電プラズマが発生する。なお、給電部材7は、接地電極1の外側、つまり放電空間4の外側で薄膜高電圧電極2と接している。
【0032】
放電空間4において生成されたプラズマ中では、原料ガス中の酸素分子が電子と衝突することにより、酸素分子が解離し、三体衝突によりオゾンが生成される。図1中、矢印はガスの流れる方向を示しており、図面右側の電極部右側端部より発生したオゾンが取り出される。接地電極1はその両端が管板8、9に固定されたステンレス管であり、複数の接地電極1が各々隣接する他の接地電極と所定の間隔を有し、固定される。さらに、管板8、9はオゾン発生装置の容器に固定される。管板8、9およびオゾン発生装置の容器内壁(すなわちそれぞれ誘電体3部分を収納する複数の円筒形状の接地電極1)により形成された空間が冷却水通路5となる。また、誘電体3にはガラス管が用いられている。誘電体3に用いたガラス管はSCHOTT社より販売されている商品名「DURAN(登録商標)(8330)」「AR−Glas(登録商標)(8350)」「8250」「8252」「8253」の肉厚が0.5mm以上、外径が30mmφ以下のものを使用した。
【0033】
また、ガラス管のオゾン出口側は、原料ガスがガラス管内部を通り、オゾン発生に寄与しないことを抑制するために端部が封じられている。ガラス管の端部封じはガラス自身を加工してもよいし、シリコンゴムやEPDMゴムなどによる栓を設けてもよい。薄膜高電圧電極2には、ガラス管の内表面に形成した膜厚100μm以下の金属薄膜を用いた。また、プラズマの発生に伴い、放電空間に電力が投入されるが、オゾン発生の場合、注入される電力のおよそ90%が熱として放出される。接地電極1は冷却水通路5に接しており、この通路を流れる冷却水により放電空間4を冷却し、除熱している。
【0034】
この実施の形態で特徴的なのが、誘電体3および薄膜高電圧電極2に囲まれた空間にアーク消弧剤であるアーク冷却剤10が設置されていることにある。図1においては、アーク冷却剤10が給電部材7直後から放電部全体(放電空間4全長)、ガラス管端部に至るまで設置されている。これは、アークの持続経路が上述した空間に限定されていることから、確実にアークの持続・進展経路に設置されていることになり、また、あらゆる場合におけるアークの発生箇所(放電空間の全ての領域)を網羅している。アーク冷却剤10は発生したアークを冷却する作用があり、アーク自身を消弧させることができる。ここでは、ゲル状のCH基を有するポリマー、例えばシリコーンゲル(ゲル状シリコーン化合物)を用いている。該アーク冷却剤10はゲル状であることにより、線膨張係数が極めて小さく、通常のオゾン発生時における薄膜高電圧電極2の温度上昇に伴う熱応力がほとんど発生しないため、アーク冷却剤10の設置により、ガラス管が機械的に破損することはない。
【0035】
図1に示した電極部を複数隣り合わせに並べて並列に組込み、オゾン発生量が数十kg/h以上となる、すなわちガラス管の破損時に発生する短絡電流が数十〜数百Aとなる大容量オゾンを発生するケースを形成し、該アーク冷却剤10を誘電体3および薄膜高電圧電極2により形成された空間、つまりアークの持続・進展経路に設置し、オゾン発生装置の温度や電圧値などの動作条件を変化させ、敢えてガラス管に絶縁破壊が発生する条件下で動作させた。その結果、絶縁破壊が発生した全てのケースにおいて、薄膜高電圧電極2の自己消失効果とアーク冷却剤10の存在により、絶縁破壊の発生と同時に完全短絡が発生することはなかった。
【0036】
また、薄膜高電圧電極2の自己消失量は、上記特許文献1で示した自己消失量とほぼ同程度で停止しており、短絡電流が極めて大きいオゾン発生装置においても、発生したアークは破損箇所近辺で確実に消弧されており、給電部材7に到達することはなかった。従って、アークが消弧した後、オゾン発生システムを停止することなく、またガラス管を交換することなく再起動が可能であり、絶縁破壊が発生したガラス管においても、破損部以外で正常放電が継続していることを確認した。なお、上記特許文献1にも示されているように、高電圧電極が強固に密着された厚膜の場合は、アーク冷却剤を設置しても、接地電極と自己消失しない厚膜高電圧電極間でアークが発生し、瞬時に完全短絡に陥り、オゾン発生装置の再起動は不可能であった。
【0037】
大容量オゾンを発生するこの実施の形態における駆動電源6は、容量性負荷であるオゾン発生装置へ流入する電流を一定制御しており、オゾン発生装置のある電極間に短絡が発生しても駆動電源6は電流を負荷に流し続けようとする。この実施の形態におけるオゾン発生装置の電気回路の構成図を図2に、オゾン発生装置にかかる破損発生時の印加電圧と流れる電流の時間変化を図3に示す。
【0038】
図2に破損電極部19で示すある電極部が破損した場合に、回路に流れる電流Iは電気回路上に残されたリアクトル18(誘導性負荷成分)によりほぼ決定される。一方、オゾン発生装置へ印加される電圧は、破損が発生した瞬間(時間t=t0)に急激な電圧低下が発生する。この場合、回路を流れる電流Iの大半は低インピーダンスの破損電極部19に流れ、高インピーダンスの未破損電極部20には殆ど流れない。また、破損電極部19においては、給電部材7から破損位置に至るまでの薄膜高電圧電極2の電気抵抗に起因した電圧降下ΔVが存在し、電流Iの流入により、薄膜高電圧電極2が自己消失を開始(電気抵抗が減少)するため、アークの持続時間とともにΔVは減少する。
【0039】
この実施の形態で示すアーク冷却剤10が設置されていない場合、電圧は図3の出力電圧の破線で示すように最終的にVarcにまで低下し(時間t=t1)、発生したアークが給電部材7に到達し、完全な短絡に陥る。時間t=t2は完全短絡により電源が異常停止した時間を示す。このVarcがいわゆるアーク電圧であり、電極材料による差異はあるが、概ね数十〜百V程度の値となっている。一方、薄膜高電圧電極2の自己消失期間(Δt=t1−t0)には、アーク電圧Varcに薄膜高電圧電極2の電圧降下分ΔVが加算されたVarc+ΔVなる電圧が印加される。言い換えれば、破損発生直後には正常電圧値から、Varc+ΔVにまで電圧が低下する。薄膜高電圧電極2に投入されるアークエネルギーWarcは式(1)のように表されることになる。
【0040】
Warc=∫((Varc+ΔV)×I)dt (1)
【0041】
この実施の形態で示すアーク冷却剤10は、上記アークエネルギーWarcを吸収し、電流Iを遮断するものである。大電流を有するアークが発生し、該アークがアーク冷却剤10に作用すると、アーク冷却剤10は自身の化学結合を解離し、熱伝導性に優れた水素ガスを反応生成・放出する。この熱伝導性に優れた水素ガスの放出とその放出に伴うアーク発生空間の圧力上昇により、発生したアークは急速に冷却、またアーク径が縮小されることになる。その結果、アークの電界強度が上昇し、Varcを高めることができ、アーク消弧(電流Iの遮断)に至る。このアークの消弧は、アークが給電部材7に到達するまでに完了する必要があるため、時間t=t0からt=t1に至るまでのタイミングでアークがアーク冷却剤10に作用する必要がある。
【0042】
図3において、アーク冷却剤10を設置した場合の電圧・電流の変化は実線で表記されており、時間t=t1に到達することなく、時間t=t0’でアークが消弧し、再起動されている。仮に、アーク冷却剤10が設置されていても、高電圧電極が薄膜ではなく、強固に誘電体に密着した厚膜の場合、時間Δtは存在せず、時間t=t0のタイミングでアークを瞬時に消弧しない限り、完全短絡が発生する可能性が極めて高い。つまり、この実施の形態でアーク消弧剤10が有効に作用するのは、薄膜高電圧電極2の自己消失が生み出す独特の自己消失期間によるものであることに他ならない。
【0043】
アーク消弧の際に発生する水素は少量であり、オゾン発生に影響を与えない。また、破損箇所は概ね直径1mm程度のピンホール状であり、オゾン発生装置に導入された原料ガスが放電空間4ではなく、ガラス管(3)内部を通り、ピンホールから放電空間4へショートパスする量は極めて少量である。また、ガラス管の外周部には、発生する水素量を無視できる程度に大量の原料ガスが流れているため、アーク冷却に作用した水素が外部へ流出し問題となることもない。さらに、破損形態がピンホール状からさらに進展した亀裂や割れを伴った場合においても、ゲル状のアーク冷却剤10が放電空間全域に渡るガラス管内面に密着し存在しているため、ガラスはバラバラになることなく、原料ガスのショートパスは極めて少量であり、破損部でのオゾン発生停止に起因するオゾン発生効率のわずかな低下の他に極端なオゾン発生効率の低下を招く要素はない。
【0044】
図1では、図面の右側のオゾン出口側が封じられた誘電体3を用いているため、全く考慮する必要がないが、誘電体3のオゾン出口側が開放端の場合、設置されたアーク冷却剤10の両端部にはオゾンが接触する場合がある。オゾン出口側に該当する端部は当然生成された高濃度のオゾンに曝露され、原料ガス入口側は、オゾン発生システムを停止させた際に原料ガス入口側にオゾンが拡散し、接触する場合がある。ポリマーをアーク冷却剤10として使用した場合、高濃度かつ長時間のオゾンが接触することにより、その表層が劣化する場合がある。
【0045】
しかし、例えば、200g/Nm3程度の高濃度オゾンに該アーク冷却剤10が1000時間もの間接触しても、表層数mm程度が腐食・硬化するだけであり、またその進行速度は極めて小さいので、原料ガスが放電空間ではなく、誘電体3内部をオゾン発生に寄与することなく通過することもない。すなわち、このアーク冷却剤10には誘電体3の端部封じを兼ねることもできるため、敢えて誘電体3の端部を封じる加工を加えなくてもよい。さらに、一般的に、薄膜高電圧電極2のオゾン出口側端部は接地電極1の端部より内部に存在している。この構成では、薄膜高電圧電極2のオゾン出口側端部から沿面放電(異常放電)が発生するため、該端部には絶縁性または半導電性材料を塗布することにより、沿面放電の発生を抑制している。この実施の形態においては、アーク冷却剤10が図1に符号10aで示すように該端部の位置に存在することから、アーク冷却剤10自身が沿面放電の抑制にも寄与するため、絶縁性または半導電性材料を塗布しなくてもよい。
【0046】
また、ゲル生成および薄膜高電圧電極2内側へのゲル設置は、大気中でゲルを誘電体3内に充填し、焼成成形するのが容易であるが、この場合、成形後にアーク冷却剤10内部に気泡が生じる場合がある。アーク冷却剤10がオゾンと接触し、劣化が気泡部へ達すると、気泡部は当然アーク冷却剤が存在しない空間となっているため、さらに内部へ劣化が進展することになる。従って、アーク冷却剤10は脱泡処理することにより、気泡のない状態に成形しておくのが良い。さらに言えば、上記ゲルは弾性に優れているため、オゾン発生装置外部で誘電体3内に設置できるような形状に成形しておき、成形後に誘電体3内部に挿入、設置してもよい。
【0047】
図1においては、誘電体3内部ほぼ全域にアーク冷却剤10を設置しているが、図4に示すようにガラス棒をスペーサ11として挿入し、このスペーサ11と誘電体3および薄膜高電圧電極2内面に囲まれた空間にシリコーンゲルを充填し、アーク冷却剤10を成型してもよい。また、このスペーサ11にはガラスの他にセラミクス、フッ素樹脂などの比較的耐熱性が高く、軽量な絶縁物によるロッドやパイプを用いることで、ゲル成形後、このスペーサ11を除去する必要なく、そのままオゾン発生装置に組み込み、放電させることができる。
【0048】
同様に、図5に示すように薄膜高電圧電極2内面に囲まれた空間に設置されたアーク冷却剤10は中空構造としてもよい。これらの場合、アーク冷却剤10の厚さにより、薄膜高電圧電極2の自己消失量は異なるが、厚さ100μm以上とすることで、誘電体3のあらゆる部分で破損が発生しようとも、アークを給電部材7に到達させることなく、アーク発生後、瞬時に消弧することができている。ただし、図5の場合、アーク冷却剤10が中空構造であるために、アーク冷却剤10によりガラス管内部を流れるガスをシーリングすることは不可能なため、誘電体3の一方の端部は閉じられる必要がある。
【0049】
以上においては、高電圧電極が薄膜である場合を用いて説明してきたが、図6に示すように接地電極も薄膜により形成されていても同様の効果が得られる。図6においては、管板8、9に固定された金属管1a上(内側)に例えばガラス管からなる誘電体1b、さらにその上(内側)に薄膜接地電極1cが形成されている。他の構造は上記にて説明した構造と同様である。接地側の誘電体1bには電圧は印加されないため、絶縁破壊などによる破損は高電圧側の誘電体のみで発生する。図6の構造では、高電圧側の電極だけでなく、接地側の電極も薄膜であるため、両電極の自己消失効果が利用でき、アークの持続時間が低減される。さらに、アーク冷却剤10の効果が加わることにより、瞬時にアークを完全に消弧することができる。なお、接地電極を薄膜接地電極とすることは以下の実施の形態においても適宜、適用可能であり、同様な効果を奏する。
【0050】
以上、実施の形態1で示したように、アーク冷却剤を誘電体および薄膜高電圧電極により形成された空間、つまりアークの持続・進展経路に設置したことにより、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、ヒューズに発生するような溶断不良(短絡保護失敗)がなく、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないことから、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。
【0051】
さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。また、アーク冷却剤を誘電体内側のほぼ全域に設置した場合、アーク冷却剤は、原料ガスが誘電体内側を通過することを抑制するガスシール効果もあり、誘電体の端部を封じる必要もない。さらに、アーク冷却剤を中空構造とした場合は、アーク冷却剤の使用量を低減することができ、アーク冷却剤の低コスト化にも貢献できる。さらに、アーク冷却剤が薄膜高電圧電極のオゾン出口側端部の位置に存在している場合、該端部から発生する沿面放電も抑制することができる。
【0052】
実施の形態2.
この発明の主旨はアークを発生させないことにあるのではなく、発生・持続するアークを給電部材に到達するまでに消弧させ、オゾン発生装置の完全な短絡を防止することにある。上記特許文献1の発明による薄膜高電圧電極の自己消失効果により、オゾン発生装置は瞬時に完全短絡するのではなく、非完全短絡の状態で薄膜高電圧電極が自己消失するための時間が発生する。この自己消失時間はアーク発生から完全短絡までの時間であり、言い換えればアークを消弧するために与えられた時間的猶予といえる。また、前述のように、アークの持続空間は、誘電体および薄膜高電圧電極に囲まれた空間だけに限定される。
【0053】
図7はこの発明の実施の形態2による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図7の電極部では、上記のことを反映して、アーク冷却剤10は給電部材7と接地電極1との間にのみ設置されている。すなわちアーク冷却剤10は給電部材7と隣接し接地電極1つまり放電空間4の外側部分にのみ設けられている。このアーク冷却剤10には、実施の形態1と同様にシリコーンゲルを用いた。アーク冷却剤10の設置量(設置長)はアーク発生時の薄膜高電圧電極2の消失量と関連し、設置量が大きいまたは設置範囲が広いほどアーク発生から高速でアークを冷却できるのであるが、完全な短絡のみを防止するという観点では、図7のように、発生したアークは最終的に給電部材7に到達しようとするため、給電部材7の直後のみに設置するだけでもよい。
【0054】
アーク冷却剤10はアークが持続する空間断面全てに設置するに限らず、実施の形態1でも示したように中空構造としても良い。さらに、シリコーンゲルは誘電体3の内部に充填してから焼成・成形するのではなく、誘電体3の外部(つまりオゾン発生装置の外部)で焼成・成形してから誘電体3内部に挿入・設置してもよい。この場合、シリコーンゲルをポリアミド樹脂フィルム等で覆うことで、挿入時の摩擦抵抗を減少させることもでき、容易に誘電体3内部に挿入できる(ポリアミド樹脂の有効性は後述する実施の形態4で述べる)。また、この構成では、薄膜高電圧電極2が高濃度オゾンに接触する面積が極めて大きくなるため、寿命の観点からは、誘電体3のオゾン出口側端部は端部封じ加工やシリコンゴム、EPDMゴム栓などによりガスシールした方がよい。さらに、実施の形態1と異なり、薄膜高電圧電極2のオゾン出口側端部にはアーク冷却剤が存在しないため、該端部には絶縁性または半導電性材料を塗布し(図示省略)、該端部から発生する沿面放電を抑制しておくのがよい。
【0055】
以上のように設置したアーク冷却剤10を用い、実施の形態1に示したように、敢えて誘電体であるガラス管に絶縁破壊が発生する条件下でオゾン発生装置を動作させ、実際に絶縁破壊を発生させた結果、絶縁破壊発生地点、つまりアーク発生箇所からアーク冷却剤10に至るまでの薄膜高電圧電極2の大部分は自己消失してしまうものの、アーク冷却剤10に至るまで持続したアークはアーク冷却剤10に接した点で消弧し、給電部材7に到達することはなく、オゾン発生装置が完全短絡に陥ることはない。ただし、薄膜高電圧電極2の自己消失の状態、給電部材7から見たアーク発生箇所に至る薄膜高電圧電極2の導通状態に依存するが、この実施の形態におけるアーク冷却剤10を用いたオゾン発生装置においては、電極間短絡が発生したガラス管は、アークが消弧された後もオゾン発生を継続することができない場合がある。しかし、電極間短絡が発生したガラス管以外の全てのガラス管は、オゾン発生装置システムを停止することなく、再度オゾン発生に寄与することができる。
【0056】
この実施の形態により、薄膜高電圧電極の消失量は増加するものの、実施の形態1と同様にオゾン発生装置を完全な短絡から防止することができる。薄膜高電圧電極の自己消失効果による完全短絡への時間的猶予を有効に利用し、給電部材直前でアークを完全に消弧できる。従って、薄膜高電圧電極とアーク冷却剤の組み合わせにより、いかなる短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置が完全に短絡することを防止でき、オゾン発生装置の再起動のために、オゾン発生システム全体を停止する必要がない。またヒューズを使用しないことにより、オゾン発生装置の小型化および低コスト化にも貢献できる。さらに、アーク冷却剤の設置場所および設置量を限定することにより、アーク冷却剤の低コスト化も実現できる。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態1および2においては、設置するアーク消弧剤がシリコーンゲルの場合について説明したが、アーク消弧剤はシリコーンポリマー(例えばシリコーンゲル)に限らず、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムといった金属水酸化物やけい砂、ホウ酸のいずれかまたはこれらの混合物を含んだ粒または粉状固体、またゲル化したものとしてもよい。この場合、実施の形態1および2と同様の効果が得られ、また上記物質からは、アーク冷却・消弧作用を有効に引き出すことができ、これらを実施の形態1および2と同様に、誘電体、薄膜高電圧電極に囲まれたアークが持続する空間に設置することにより、アークの消弧を実現できる。
【0058】
以上のようにこの実施の形態で示したアーク消弧剤を用いることで、実施の形態1および2同様に、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0059】
実施の形態4.
アークの冷却には上述の実施の形態1〜3に示したようなアーク消弧剤からの反応ガスや消弧作用以外にも、電極部構成部材が有するアブレーション冷却(蒸発・昇華する際に周囲の熱を奪う)や水素発生を利用することも極めて効果的である。すなわち、電極部の構成部品材料が電極間に発生したアークからの入熱により蒸発・昇華、または解離する際に生じる潜熱や、アーク冷却剤と同様の水素発生によりアークからエネルギーを奪い(アークを冷却)、アークを消弧させることができる。
【0060】
図8および図9にこの発明の実施の形態4による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図8では、薄膜高電圧電極として銅を用いたアブレーション電極12を設置している。数百、数千度もの高温となるアークに対して、銅は蒸発温度が1360K、蒸発エネルギーが4.8×106J/kgであり、蒸発温度以上でアークの持続経路にガス状となり流れ込み、そのアブレーション冷却効果により、アークの冷却に寄与することができる。
【0061】
また、図9では、薄膜高電圧電極2がフッ素樹脂(PTFE)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂などのコーティング層13により覆われている。例えば、PTFEの場合、蒸発温度600K、蒸発エネルギー5.7×104J/kgに加えて、解離温度3400K、解離エネルギー1.2×107J/kgであり、蒸発時および解離時にアークからエネルギーを奪うことができ、消弧に至らしめることができる。例えば、ポリアミド樹脂はアークに作用することで水素発生も実現でき、更にアーク冷却効果に貢献できる(この観点から、実施の形態2で示したシリコーンゲルを該樹脂で覆うことは極めて有効である)。
【0062】
上記のような電極部構成部材のアーク消弧作用により、オゾン発生装置に発生した短絡に伴うアークを給電部材に到達させることなく、消弧することができる。また、実施の形態1〜3に示したアーク消弧剤を併用することで、さらに確実な完全短絡防止が実現できる。
【0063】
以上のようなこの実施の形態で示した電極構成部材を用いることで、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0064】
実施の形態5.
図10にこの発明の実施の形態5による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図10では薄膜高電圧電極に水素吸蔵合金電極14を用いる。アークの冷却には極めて効果的である。水素吸蔵合金電極14としては、マグネシウム、チタン、バナジウム、ランタンのいずれかまたは2種類以上を含む水素化物を使用する。水素吸蔵合金電極14には、水素が吸蔵されており、接地電極1と水素吸蔵合金電極14間に短絡が発生し、アークが発生した場合、そのアーク熱を利用し、水素吸蔵合金電極14内部に吸蔵されていた水素を容易に放出することができる。この放出した水素の高い熱伝導性を利用してアークを冷却し、アークが給電部材7に至るまで持続することなく、電極間の絶縁を回復することができる。
【0065】
また、薄膜高電圧電極2は実施の形態1〜4で示した金属薄膜を用い、接地電極1を該水素吸蔵合金電極14で形成、また、接地電極1の放電空間4に接する面に水素吸蔵合金(14)を成膜しても上記と同様の効果が得られる。これらの構成は、実施の形態1〜4に示した構成と併用することで、さらに確実な完全短絡防止が実現できる。
【0066】
以上のようなこの実施の形態で示した水素吸蔵合金を薄膜高電圧電極に用いることで、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0067】
実施の形態6.
アークの冷却に誘電体および薄膜高電圧電極の内側に封入された消弧用ガスを使用しても実施の形態1と同様に電極間短絡により発生したアークを給電部材に到達させることなく、消弧することができる。
【0068】
図11にこの発明の実施の形態6による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図11において、誘電体3および薄膜高電圧電極2の内側にアーク消弧剤である消弧用ガス15が封入されており、誘電体3の両端はガスシールされている。消弧用ガスとしては、水素、ヘリウム、六フッ化硫黄、二酸化炭素、CF3I(トリフルオロヨードメタン)、およびこれらのうちの複数を混合させたガスなどが効果的であり、これらの熱伝導性や消弧性を利用することができる。消弧用ガス15は高圧力、好ましくはオゾン発生器の動作圧力以上で封入されている方が、アークの消弧に対して効果的であるが、大気圧近傍の圧力により封入されてもアーク消弧に十分に作用することを確認した。封入圧力は使用する誘電体3の形状、特に厚さやガスシール部構造により選択する必要がある。
【0069】
特に、高圧力で封入されている場合、誘電体3が破損した瞬間に消弧用ガス15は、アークの消弧に作用すると同時に、誘電体3から放電空間4へ流出するため、薄膜高電圧電極2が蒸発・昇華した際に発生する導電性ガスは一気に放電空間を通り、オゾン発生装置外へ排出される。そのため、アークの持続・進展経路内のガスは導電性を高めることがない。従って、極めて少量の薄膜高電圧電極2の消失量において、消弧を完了できる。また、消弧が発生した場合、これらの消弧用ガス15はオゾン発生装置の出力ガスとしてオゾン化酸素とともに排出される可能性があるが、オゾン化酸素に比して極めて少量であるため、オゾン化酸素の供給上、大きな問題はない。さらに、実施の形態1〜5に示したアーク消弧方法をこの実施の形態と組み合わせれば、より高速かつ確実なアークの消弧を実現できる。
【0070】
また、図12に示すように、消弧用ガス15を容器16に封入して誘電体3および薄膜高電圧電極2内、特に給電部材7と隣接し接地電極1つまり放電空間4の外側部分に設置しても、アークを給電部材7に到達させることなく、消弧させることができる。容器16には、樹脂製カプセル状容器などアークの入熱により一部溶解するものが好ましい。容器材質には、実施の形態4で示した樹脂を用いるのがなお好ましい。また、実施の形態1で示した成形後のシリコーンゲルに消弧用ガスを封入して、容器16と同様に設置してもよい。これらの場合、誘電体3の原料ガス側はガスシーリングする必要がない。また、これらの構成は、実施の形態1〜5に示した構成と併用することで、さらに確実な完全短絡防止が実現できる。
【0071】
以上のようなこの実施の形態で示した消弧用ガスを誘電体および薄膜高電圧電極により形成された空間、つまりアークの持続・進展経路に封入したことにより、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0072】
実施の形態7.
この発明においては、薄膜高電圧電極の消失に伴い発生する導電性ガスがアークの持続経路の形成を担っており、そのアークを給電部材に到達する前に消弧させる手段を実施の形態1〜6において示した。この実施の形態は、導電性ガスそのものをアーク持続空間より除去し、アーク発生後瞬時に消弧させるものである。
【0073】
図13にこの発明の実施の形態7による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図13において、誘電体3および薄膜高電圧電極2の内側にアーク発生に伴い発生する導電性ガスの吸着剤17が設置されている。吸着剤としては、ゼオライト、モレキュラーシーブスおよびカーボンなどを利用するのが効果的である。
【0074】
アーク発生に伴い、空間中に飛散した薄膜高電圧電極2の導電性ガス粒子を該吸着剤17が吸着・吸収することにより、アーク持続空間の導電性を高めることなく、アークの持続を抑制することができる。そのため、アークは該空間を持続伝搬することができず、必要な絶縁距離に応じた薄膜高電圧電極2の自己消失が得られた段階で消弧し、給電部材7まで到達することはなく、オゾン発生装置の完全な短絡は発生しない。また、吸着剤の替わりに金属イオン中和剤を設置し、該持続空間の導電性を維持するイオン種を中和・除去する、また市販の脱臭用途などに使用されているセラミクス基材を用いた粒状、ハニカム状触媒などを用いても同様の効果が得られる。また、これらの構成は、実施の形態1〜6に示したアーク消弧方法と併用することで、さらに確実な完全短絡防止が実現できる。
【0075】
以上のようなこの実施の形態で示した導電性ガス除去剤(吸着剤、金属イオン中和剤、脱臭用粒状、ハニカム状触媒の総称)を誘電体および薄膜高電圧電極により形成された空間、すなわちアークの持続・進展経路に設置したことにより、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失により発生する導電性ガスを吸着または分解することにより、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0076】
この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、上述したように、これらの実施の形態の可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1 接地電極、1a 金属管、1b 誘電体、1c 薄膜接地電極、2 薄膜高電圧電極、3 誘電体(ガラス管)、4 放電空間、5 冷却水通路、6 駆動電源(交流電源)、7 給電部材、8,9 管板、10 アーク冷却剤(アーク消弧剤)、11 スペーサ、12 アブレーション電極、13 コーティング層、14 水素吸蔵合金電極、15 消弧用ガス、16 容器、17 吸着剤、18 リアクトル、19 破損電極部、20 未破損電極部、21 破損箇所。
【技術分野】
【0001】
この発明は、無声放電を利用した大容量のプラズマ装置、特に、電極の破損などに起因する電極間の短絡に伴い発生したアーク放電を速やかに消弧し、装置システム全体を停止することなく、装置を再起動できるヒューズを用いない新たな短絡保護機能を備えた無声放電式プラズマ発生装置および該装置における消孤方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン発生装置に代表される無声放電プラズマ装置の短絡保護には、ヒューズが一般的に使用されている。また、駆動電源側の短絡保護制御と連携し、ヒューズのハードウェア的な保護機能に制御面のソフトウェア的な保護機能を付加した重畳システムも採用されている。しかし、上記プラズマ装置に使用するヒューズは高電圧用の特殊ヒューズであり、その大きさおよびコストは装置の小型化および低コスト化の大きな障害となっていた。
【0003】
下記特許文献1では、上述のようなプラズマ装置において、ヒューズを用いない新たな短絡保護システムを備えたものが提案されている。オゾン発生装置を例にして以下にそのシステムを説明する。図14は円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。実際の装置は図14に示した電極部が図14の紙面の上下方向および奥行き方向に複数・並列に並べて接続されている。金属製の接地電極1と、内面に膜厚100μm以下の薄膜高電圧電極2を配した誘電体(ガラス管)3との間に形成された空間に酸素を含んだ原料ガスを導入し、かつ両電極間に高電圧を印加することにより無声放電プラズマを発生させる。この空間は放電空間4と称され、該空間においては、酸素分子が電子との衝突により解離され、オゾンを生成することになる。
【0004】
この従来装置の最たる特徴は、ガラス管3内面に形成された薄膜高電圧電極2が一般的には高い導電性を確保する観点から、厚膜でガラス管に対して強固な密着力を有するものが求められるが、その常識に反して導電性薄膜であることにある。例えば、厚膜の高電圧電極を有する一般的な円筒多管式オゾン発生装置において、通常のオゾン発生時にガラス管が破損した場合、接地電極1と厚膜高電圧電極間にアーク放電が発生し、電極間短絡が生じる。このアーク放電は電極が存在する限り、また両電極が所定の絶縁距離以内に存在する限り持続し、アークエネルギーが電極に注入され続ける。
【0005】
しかしながら、上記従来装置においては、高電圧電極が薄膜で形成されていることから、アーク放電による入熱により瞬時にアーク放電を停止させるのに十分な絶縁距離を確保するように高電圧電極自身が蒸発または昇華し消失する。すなわち、高電圧電極自身が短絡現象を検知し、自身を消失させることにより電極間の絶縁を回復する、まさにヒューズと同様の効果を備えている。
【0006】
また、上記従来装置の構成では、短絡発生後に自動的に電極間の絶縁が回復されるため、オゾン発生システムを停止することなく、オゾン発生装置の再起動が可能である。さらに、正常なガラス管は当然ながら、破損したガラス管においても、破損部位以外で再度オゾン発生を継続することができる。一度短絡を検知し、エレメントが溶断したヒューズは再使用が不可能であり、溶断したヒューズが接続されたガラス管は二度とオゾン発生に寄与することができないが、この点では、上記従来装置はヒューズを超えた優れた短絡保護・再起動機能を有しているといえる。
【0007】
また、大容量のオゾン発生装置、すなわち電極数が膨大な数になる場合、短絡電流が極めて大きくなるケースが考えられ、その場合は、薄膜高電圧電極2に交流電源からなる駆動電源6側の保護機能を重畳させた保護システムを構築するのが効果的である。上記のように、薄膜高電圧電極2の採用により、短絡保護に必要不可欠であったヒューズが不要となり、信頼性の高い短絡保護システムの構築ならびに装置の小型化・低コストが実現できる。
【0008】
なお、図14の5は冷却水通路、7は給電部材、8,9は管板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2006/103945号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のような従来の装置では、薄膜高電圧電極の自己消失によりヒューズを用いない短絡保護システムが提供され、また短絡電流が大電流の場合は、薄膜高電圧電極の自己消失効果に駆動電源側の短絡保護機能を重畳させるという利点が提供された。しかしながら、短絡電流が数十〜数百Aの大電流となった場合、上記構成では十分な短絡保護を実現できない場合がある。この場合、電極部へ注入されるアークエネルギーが極めて大きくなり、薄膜高電圧電極の消失量が増大する。
【0011】
蒸発・昇華した多量の薄膜高電圧電極の微粒子は、ガラス管内のガスに導電性を付与し、この導電性ガスを経路として、短絡に伴い発生したアークは薄膜高電圧電極の消失により形成される絶縁距離を確保しても消弧することなく、破損箇所(アーク発生起点)から金属製の給電部材(放電空間の外部に設置)7へ持続し到達してしまう。給電部材にアークが到達した場合、オゾン発生装置は完全に短絡することになり、オゾン発生システムの停止および短絡を発生した電極部の交換を余儀なくされる。
【0012】
ここで円筒多管式オゾン発生装置(電極構成部材が同心同軸状に形成される)におけるアークの発生と消弧について図15,図16に従って具体的に説明する。誘電体(ガラス管)3が破損箇所21において破損した場合、概ね破損箇所にはピンホール状の貫通穴が形成される。ただし、誘電体3の材質や破損時に注入されたアークエネルギーの大きさにより、ピンホールだけでなく、亀裂や割れといった二次的な破損を伴う場合もある。また、オゾン発生装置の電極が動作中に破損する原因としては、過度な温度上昇や誘電体3を接地電極1の中に挿入する際に生じる機械的応力、誘電体3に生じるキズや製造時に含有される欠陥に伴い発生する誘電体3の絶縁破壊強度の低下が考えられる。
【0013】
このように、誘電体3が破損した場合、瞬時に接地電極1と誘電体3内面に配されている薄膜高電圧電極2との間にアーク放電が発生し、短絡電流が電極間を流れる。短絡電流が小さい場合は、図15に示すように、破損箇所21の周囲の薄膜高電圧電極2がアーク放電によるエネルギーの注入により瞬時に蒸発・昇華し、自動的に消失する。この消失範囲はアーク放電が消弧されるに十分な絶縁距離Lを確保するように消失し、短絡直後に電極間の絶縁が瞬時に回復され、破損箇所21以外で通常のオゾン発生が再開される。このことは上記特許文献1に開示されている。
【0014】
一方、図16に示すように、短絡電流が数十A以上となる場合、アーク放電により注入されるエネルギーが増大することから、薄膜高電圧電極2の自己消失する範囲が拡大される。さらに多くの薄膜高電圧電極2が消失した空間(誘電体3内部)には、蒸発・昇華した薄膜高電圧電極微粒子を含んだ導電性ガス22が充満し、誘電体3内部は導電性を帯びた空間となる。従って、図15のように瞬時に絶縁が回復できず、導電性ガスを媒体としてアーク放電が持続する。持続したアークは薄膜高電圧電極2を蒸発・昇華し続け、最終的に給電部材7にまで到達し、完全に短絡(オゾン発生システムの停止)を引き起こす場合がある(給電部材はアークエネルギーに対して十分な熱容量を有するバルク金属である)。
【0015】
また、図16において、駆動電源6側の短絡保護機能を薄膜高電圧電極2の自己消失効果に重畳させ、アークを消弧させるためには、アークが給電部材7に到達するまでにインバータ電源のゲート信号を遮断し、停止指令を発令する必要がある。しかし、駆動電源6における短絡保護に関する制御シーケンスでは、その処理時間は100msec程度を要するのが一般的であり、特に短絡が給電部材7に極めて近い箇所で発生した場合には、10msec程度でゲート信号を遮断しないとアークは、給電部材7が接地電極1端部から前述した絶縁距離L以上離れた放電空間4の外側に設置されているにもかかわらず、該給電部材7に到達する。アークの発生、つまり短絡の発生は出力電圧の低下で検知するのが容易であるが、処理時間の高速化が実現できない限り、出力電圧の低下を検知してからゲート遮断に至るまでに、アークが十分に持続してしまい、給電部材7に到達してしまう。すなわち、駆動電源6側の短絡保護機能を重畳させてもアークを消弧することができない場合があり得る。
【0016】
以上のように、薄膜高電圧電極自身がアーク消弧に必要な絶縁距離に相当する量だけを自己消失し、電極間の絶縁を回復しようとしても、また、駆動電源側の短絡保護機能を重畳させても、注入されるアークエネルギーの大きさと導電性ガスの存在により、アークが消弧せず持続し、大量の高電圧電極を消失させながら給電部材にまで到達してしまうという課題があった。
【0017】
この発明は、ヒューズや、駆動電源制御側の複雑かつ遅れ時間を発生する遮断システムを用いず、敢えてアークが持続できる空間(つまりアークを消弧する時間的猶予)を形成し、給電部材にアークが到達する前にアークを完全に消弧し、確実な電極間絶縁の回復を実現することができる無声放電式プラズマ発生装置および該装置における消孤方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、誘電体と、ガスを供給してプラズマを発生させる放電空間を間に設けるように上記誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された導電性の給電薄膜からなる第2の電極からなる1組の電極と、上記1組の電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源と、上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材と、上記誘電体および第2の電極の少なくとも第2の電極と接するように配置されたアーク消弧剤と、を備え、上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極がアーク放電の発生した部分から上記給電部材が接する部分まで部分的に消滅し、同時に上記アーク消弧剤によりアーク放電を消弧することを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置にある。
この発明はまた、該装置における消孤方法も含む。
【発明の効果】
【0019】
この発明では、給電部材にアークが到達する前にアークを完全に消弧し、確実な電極間絶縁の回復を実現することができる無声放電式プラズマ発生装置および該装置における消孤方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1による無声放電式プラズマ発生装置である円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図2】この発明によるオゾン発生装置の電気回路の構成図である。
【図3】この発明によるオゾン発生装置にかかる破損発生時の印加電圧と流れる電流の時間変化を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による円筒多管式オゾン発生装置の変形例を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1による円筒多管式オゾン発生装置の別の変形例を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1による円筒多管式オゾン発生装置の変形例における一組の電極部の断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図8】この発明の実施の形態4による円筒多管式オゾン発生装置の一例による一組の電極部の断面図である。
【図9】この発明の実施の形態4による円筒多管式オゾン発生装置の別の例による一組の電極部の断面図である。
【図10】この発明の実施の形態5による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図11】この発明の実施の形態6による円筒多管式オゾン発生装置の一例による一組の電極部の断面図である。
【図12】この発明の実施の形態6による円筒多管式オゾン発生装置の別の例による一組の電極部の断面図である。
【図13】この発明の実施の形態7による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図14】従来の円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図である。
【図15】円筒多管式オゾン発生装置におけるアークの発生と消弧について説明するための図である。
【図16】円筒多管式オゾン発生装置におけるアークの発生と消弧について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初にこの発明は、大容量(短絡電流が大電流)のオゾン発生装置に代表される無声放電プラズマ装置においても、電極間短絡に伴い発生するアークを高速かつ確実に遮断し、速やかに消弧するものである。上記特許文献1に示された薄膜高電圧電極の自己消失効果を利用し、アークの発生箇所および持続経路にアーク冷却剤を設置することで、発生したアークを冷却し、給電部材にアークが到達するまでに消弧させるものである。
【0022】
例えば、上記特許文献1で示されたようなガラス管を誘電体とする無声放電を用いた円筒多管式オゾン発生装置において、ガラス管が破損し、アークが発生した際に、
1)ガラス管内面に形成される高電圧電極がアーク熱により蒸発または昇華する薄膜給電膜であること、
2)駆動電源から該給電膜に電流を供給する給電部材が放電空間の外側にて給電膜と接触していること、
3)該給電部材と破損箇所間のアーク持続経路にアーク消弧(冷却)剤を備える
ことにより実現される。
【0023】
この発明においては、以上の構造により、電極間に発生したアークは、給電部材に到達するまでに、アーク持続経路内に設置されたアーク消弧剤により冷却される。冷却されたアークは、瞬時にそのアーク電圧を上昇させ、消弧に至る、つまり電極間の絶縁を回復し、オゾン発生システム全体を停止することなく(短絡した電極管を除去することなく)、一時的に放電を停止したオゾン発生装置の再起動が可能となる。
【0024】
この発明においては、ガラス管およびその内面に配置された薄膜高電圧電極に囲まれた空間にアーク消弧剤が設置される。この発明におけるアークの持続経路は、上述したガラス管および薄膜高電圧電極に囲まれた空間に限定されており、アークは必ずガラス管の破損箇所から給電部材に向かって持続・進展する。すなわち、少なくとも給電部材と放電空間との間にアーク消弧剤を配置することで、発生・持続したアークは必ずアーク消弧剤に接することになる。アーク消弧剤に接したアークは急速に冷却(アーク電界強度の上昇、アーク電圧の上昇)され、消弧に至る。
【0025】
上記特許文献1にも示されているように、給電部材が、放電空間内に存在すれば、その直近でガラス管が破損した場合、破損箇所を介して接地電極と給電部材との間にアークが発生し、瞬時に完全短絡してしまうため、放電空間の外側に配置する。
【0026】
また、この発明における構造では、高電圧電極が薄膜であるために、破損発生後、瞬時に完全短絡するのではなく、薄膜高電圧電極が自己消失、さらにはガラス管内に発生した導電性ガスによりアークが給電部材に至るまでの時間的猶予が設けられる。アーク消弧剤が破損発生箇所のより近くに存在していれば、薄膜高電圧電極の無用な消失量を抑制し、より早期にアークを消弧することができるが、上記時間的猶予が与えられるため、完全短絡を回避するという観点では、給電部材と放電空間の間にのみアーク消弧剤が存在すれば、高電圧電極の消失量は増大する可能性があるものの、アークを消弧することができ、オゾン発生装置は完全短絡に至ることはない。
【0027】
またこの発明の無声放電式プラズマ発生装置は、いわゆる円筒多管式オゾン発生装置に限定されず、平行平板型電極構造を用いた装置にも適用できる。またオゾン発生装置だけではなく、同様の放電形態を用いる炭酸ガスレーザや有害ガス分解装置などにも同様に適用することができる。
【0028】
この発明においては、従来使用されているヒューズや、駆動電源制御側の複雑かつ遅れ時間を発生する遮断システムを用いず、敢えてアークが持続できる空間(つまりアークを消弧する時間的猶予)を形成し、アーク消弧剤を設置することにより、給電部材にアークが到達する前にアークを完全に消弧するため、確実な電極間絶縁の回復を実現することができる。従って、短絡電流が大電流の場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を有効に利用することができ、オゾン発生システムを停止することなく、再度、破損箇所以外において、正規のオゾン発生を実現することができる。また、オゾン発生装置の小型化への障害となっていたヒューズを用いる必要がなく、大幅な小型化を実現することもできる。
【0029】
以下、この発明による無声放電式プラズマ発生装置をオゾン発生装置を例に挙げて、各実施の形態に従って図を使って説明する。
【0030】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。図1において、所定の空隙長dで対向して配置された接地電極1(第1の電極)と給電薄膜である薄膜高電圧電極2(第2の電極)とを有する。また、接地電極1と薄膜高電圧電極2の間には少なくとも1つの誘電体3が配置され、接地電極1と誘電体3は同心同軸状の円筒管となっている。薄膜高電圧電極2は誘電体3の内面に密着して形成されている。空隙長dを放電空隙長、放電空隙長により形成された空間を放電空間4と称する。放電空隙長は0.6mm以下に設定されている(以下、この発明においてはこの構造を用いて説明する)。
【0031】
放電空間4には、酸素を含んだガスが原料ガスとして導入され、また、交流電源である駆動電源6と接続された金属製の給電部材7を介して、接地電極1と薄膜高電圧電極2との間に交流高電圧が印加されることにより、無声放電プラズマが発生する。なお、給電部材7は、接地電極1の外側、つまり放電空間4の外側で薄膜高電圧電極2と接している。
【0032】
放電空間4において生成されたプラズマ中では、原料ガス中の酸素分子が電子と衝突することにより、酸素分子が解離し、三体衝突によりオゾンが生成される。図1中、矢印はガスの流れる方向を示しており、図面右側の電極部右側端部より発生したオゾンが取り出される。接地電極1はその両端が管板8、9に固定されたステンレス管であり、複数の接地電極1が各々隣接する他の接地電極と所定の間隔を有し、固定される。さらに、管板8、9はオゾン発生装置の容器に固定される。管板8、9およびオゾン発生装置の容器内壁(すなわちそれぞれ誘電体3部分を収納する複数の円筒形状の接地電極1)により形成された空間が冷却水通路5となる。また、誘電体3にはガラス管が用いられている。誘電体3に用いたガラス管はSCHOTT社より販売されている商品名「DURAN(登録商標)(8330)」「AR−Glas(登録商標)(8350)」「8250」「8252」「8253」の肉厚が0.5mm以上、外径が30mmφ以下のものを使用した。
【0033】
また、ガラス管のオゾン出口側は、原料ガスがガラス管内部を通り、オゾン発生に寄与しないことを抑制するために端部が封じられている。ガラス管の端部封じはガラス自身を加工してもよいし、シリコンゴムやEPDMゴムなどによる栓を設けてもよい。薄膜高電圧電極2には、ガラス管の内表面に形成した膜厚100μm以下の金属薄膜を用いた。また、プラズマの発生に伴い、放電空間に電力が投入されるが、オゾン発生の場合、注入される電力のおよそ90%が熱として放出される。接地電極1は冷却水通路5に接しており、この通路を流れる冷却水により放電空間4を冷却し、除熱している。
【0034】
この実施の形態で特徴的なのが、誘電体3および薄膜高電圧電極2に囲まれた空間にアーク消弧剤であるアーク冷却剤10が設置されていることにある。図1においては、アーク冷却剤10が給電部材7直後から放電部全体(放電空間4全長)、ガラス管端部に至るまで設置されている。これは、アークの持続経路が上述した空間に限定されていることから、確実にアークの持続・進展経路に設置されていることになり、また、あらゆる場合におけるアークの発生箇所(放電空間の全ての領域)を網羅している。アーク冷却剤10は発生したアークを冷却する作用があり、アーク自身を消弧させることができる。ここでは、ゲル状のCH基を有するポリマー、例えばシリコーンゲル(ゲル状シリコーン化合物)を用いている。該アーク冷却剤10はゲル状であることにより、線膨張係数が極めて小さく、通常のオゾン発生時における薄膜高電圧電極2の温度上昇に伴う熱応力がほとんど発生しないため、アーク冷却剤10の設置により、ガラス管が機械的に破損することはない。
【0035】
図1に示した電極部を複数隣り合わせに並べて並列に組込み、オゾン発生量が数十kg/h以上となる、すなわちガラス管の破損時に発生する短絡電流が数十〜数百Aとなる大容量オゾンを発生するケースを形成し、該アーク冷却剤10を誘電体3および薄膜高電圧電極2により形成された空間、つまりアークの持続・進展経路に設置し、オゾン発生装置の温度や電圧値などの動作条件を変化させ、敢えてガラス管に絶縁破壊が発生する条件下で動作させた。その結果、絶縁破壊が発生した全てのケースにおいて、薄膜高電圧電極2の自己消失効果とアーク冷却剤10の存在により、絶縁破壊の発生と同時に完全短絡が発生することはなかった。
【0036】
また、薄膜高電圧電極2の自己消失量は、上記特許文献1で示した自己消失量とほぼ同程度で停止しており、短絡電流が極めて大きいオゾン発生装置においても、発生したアークは破損箇所近辺で確実に消弧されており、給電部材7に到達することはなかった。従って、アークが消弧した後、オゾン発生システムを停止することなく、またガラス管を交換することなく再起動が可能であり、絶縁破壊が発生したガラス管においても、破損部以外で正常放電が継続していることを確認した。なお、上記特許文献1にも示されているように、高電圧電極が強固に密着された厚膜の場合は、アーク冷却剤を設置しても、接地電極と自己消失しない厚膜高電圧電極間でアークが発生し、瞬時に完全短絡に陥り、オゾン発生装置の再起動は不可能であった。
【0037】
大容量オゾンを発生するこの実施の形態における駆動電源6は、容量性負荷であるオゾン発生装置へ流入する電流を一定制御しており、オゾン発生装置のある電極間に短絡が発生しても駆動電源6は電流を負荷に流し続けようとする。この実施の形態におけるオゾン発生装置の電気回路の構成図を図2に、オゾン発生装置にかかる破損発生時の印加電圧と流れる電流の時間変化を図3に示す。
【0038】
図2に破損電極部19で示すある電極部が破損した場合に、回路に流れる電流Iは電気回路上に残されたリアクトル18(誘導性負荷成分)によりほぼ決定される。一方、オゾン発生装置へ印加される電圧は、破損が発生した瞬間(時間t=t0)に急激な電圧低下が発生する。この場合、回路を流れる電流Iの大半は低インピーダンスの破損電極部19に流れ、高インピーダンスの未破損電極部20には殆ど流れない。また、破損電極部19においては、給電部材7から破損位置に至るまでの薄膜高電圧電極2の電気抵抗に起因した電圧降下ΔVが存在し、電流Iの流入により、薄膜高電圧電極2が自己消失を開始(電気抵抗が減少)するため、アークの持続時間とともにΔVは減少する。
【0039】
この実施の形態で示すアーク冷却剤10が設置されていない場合、電圧は図3の出力電圧の破線で示すように最終的にVarcにまで低下し(時間t=t1)、発生したアークが給電部材7に到達し、完全な短絡に陥る。時間t=t2は完全短絡により電源が異常停止した時間を示す。このVarcがいわゆるアーク電圧であり、電極材料による差異はあるが、概ね数十〜百V程度の値となっている。一方、薄膜高電圧電極2の自己消失期間(Δt=t1−t0)には、アーク電圧Varcに薄膜高電圧電極2の電圧降下分ΔVが加算されたVarc+ΔVなる電圧が印加される。言い換えれば、破損発生直後には正常電圧値から、Varc+ΔVにまで電圧が低下する。薄膜高電圧電極2に投入されるアークエネルギーWarcは式(1)のように表されることになる。
【0040】
Warc=∫((Varc+ΔV)×I)dt (1)
【0041】
この実施の形態で示すアーク冷却剤10は、上記アークエネルギーWarcを吸収し、電流Iを遮断するものである。大電流を有するアークが発生し、該アークがアーク冷却剤10に作用すると、アーク冷却剤10は自身の化学結合を解離し、熱伝導性に優れた水素ガスを反応生成・放出する。この熱伝導性に優れた水素ガスの放出とその放出に伴うアーク発生空間の圧力上昇により、発生したアークは急速に冷却、またアーク径が縮小されることになる。その結果、アークの電界強度が上昇し、Varcを高めることができ、アーク消弧(電流Iの遮断)に至る。このアークの消弧は、アークが給電部材7に到達するまでに完了する必要があるため、時間t=t0からt=t1に至るまでのタイミングでアークがアーク冷却剤10に作用する必要がある。
【0042】
図3において、アーク冷却剤10を設置した場合の電圧・電流の変化は実線で表記されており、時間t=t1に到達することなく、時間t=t0’でアークが消弧し、再起動されている。仮に、アーク冷却剤10が設置されていても、高電圧電極が薄膜ではなく、強固に誘電体に密着した厚膜の場合、時間Δtは存在せず、時間t=t0のタイミングでアークを瞬時に消弧しない限り、完全短絡が発生する可能性が極めて高い。つまり、この実施の形態でアーク消弧剤10が有効に作用するのは、薄膜高電圧電極2の自己消失が生み出す独特の自己消失期間によるものであることに他ならない。
【0043】
アーク消弧の際に発生する水素は少量であり、オゾン発生に影響を与えない。また、破損箇所は概ね直径1mm程度のピンホール状であり、オゾン発生装置に導入された原料ガスが放電空間4ではなく、ガラス管(3)内部を通り、ピンホールから放電空間4へショートパスする量は極めて少量である。また、ガラス管の外周部には、発生する水素量を無視できる程度に大量の原料ガスが流れているため、アーク冷却に作用した水素が外部へ流出し問題となることもない。さらに、破損形態がピンホール状からさらに進展した亀裂や割れを伴った場合においても、ゲル状のアーク冷却剤10が放電空間全域に渡るガラス管内面に密着し存在しているため、ガラスはバラバラになることなく、原料ガスのショートパスは極めて少量であり、破損部でのオゾン発生停止に起因するオゾン発生効率のわずかな低下の他に極端なオゾン発生効率の低下を招く要素はない。
【0044】
図1では、図面の右側のオゾン出口側が封じられた誘電体3を用いているため、全く考慮する必要がないが、誘電体3のオゾン出口側が開放端の場合、設置されたアーク冷却剤10の両端部にはオゾンが接触する場合がある。オゾン出口側に該当する端部は当然生成された高濃度のオゾンに曝露され、原料ガス入口側は、オゾン発生システムを停止させた際に原料ガス入口側にオゾンが拡散し、接触する場合がある。ポリマーをアーク冷却剤10として使用した場合、高濃度かつ長時間のオゾンが接触することにより、その表層が劣化する場合がある。
【0045】
しかし、例えば、200g/Nm3程度の高濃度オゾンに該アーク冷却剤10が1000時間もの間接触しても、表層数mm程度が腐食・硬化するだけであり、またその進行速度は極めて小さいので、原料ガスが放電空間ではなく、誘電体3内部をオゾン発生に寄与することなく通過することもない。すなわち、このアーク冷却剤10には誘電体3の端部封じを兼ねることもできるため、敢えて誘電体3の端部を封じる加工を加えなくてもよい。さらに、一般的に、薄膜高電圧電極2のオゾン出口側端部は接地電極1の端部より内部に存在している。この構成では、薄膜高電圧電極2のオゾン出口側端部から沿面放電(異常放電)が発生するため、該端部には絶縁性または半導電性材料を塗布することにより、沿面放電の発生を抑制している。この実施の形態においては、アーク冷却剤10が図1に符号10aで示すように該端部の位置に存在することから、アーク冷却剤10自身が沿面放電の抑制にも寄与するため、絶縁性または半導電性材料を塗布しなくてもよい。
【0046】
また、ゲル生成および薄膜高電圧電極2内側へのゲル設置は、大気中でゲルを誘電体3内に充填し、焼成成形するのが容易であるが、この場合、成形後にアーク冷却剤10内部に気泡が生じる場合がある。アーク冷却剤10がオゾンと接触し、劣化が気泡部へ達すると、気泡部は当然アーク冷却剤が存在しない空間となっているため、さらに内部へ劣化が進展することになる。従って、アーク冷却剤10は脱泡処理することにより、気泡のない状態に成形しておくのが良い。さらに言えば、上記ゲルは弾性に優れているため、オゾン発生装置外部で誘電体3内に設置できるような形状に成形しておき、成形後に誘電体3内部に挿入、設置してもよい。
【0047】
図1においては、誘電体3内部ほぼ全域にアーク冷却剤10を設置しているが、図4に示すようにガラス棒をスペーサ11として挿入し、このスペーサ11と誘電体3および薄膜高電圧電極2内面に囲まれた空間にシリコーンゲルを充填し、アーク冷却剤10を成型してもよい。また、このスペーサ11にはガラスの他にセラミクス、フッ素樹脂などの比較的耐熱性が高く、軽量な絶縁物によるロッドやパイプを用いることで、ゲル成形後、このスペーサ11を除去する必要なく、そのままオゾン発生装置に組み込み、放電させることができる。
【0048】
同様に、図5に示すように薄膜高電圧電極2内面に囲まれた空間に設置されたアーク冷却剤10は中空構造としてもよい。これらの場合、アーク冷却剤10の厚さにより、薄膜高電圧電極2の自己消失量は異なるが、厚さ100μm以上とすることで、誘電体3のあらゆる部分で破損が発生しようとも、アークを給電部材7に到達させることなく、アーク発生後、瞬時に消弧することができている。ただし、図5の場合、アーク冷却剤10が中空構造であるために、アーク冷却剤10によりガラス管内部を流れるガスをシーリングすることは不可能なため、誘電体3の一方の端部は閉じられる必要がある。
【0049】
以上においては、高電圧電極が薄膜である場合を用いて説明してきたが、図6に示すように接地電極も薄膜により形成されていても同様の効果が得られる。図6においては、管板8、9に固定された金属管1a上(内側)に例えばガラス管からなる誘電体1b、さらにその上(内側)に薄膜接地電極1cが形成されている。他の構造は上記にて説明した構造と同様である。接地側の誘電体1bには電圧は印加されないため、絶縁破壊などによる破損は高電圧側の誘電体のみで発生する。図6の構造では、高電圧側の電極だけでなく、接地側の電極も薄膜であるため、両電極の自己消失効果が利用でき、アークの持続時間が低減される。さらに、アーク冷却剤10の効果が加わることにより、瞬時にアークを完全に消弧することができる。なお、接地電極を薄膜接地電極とすることは以下の実施の形態においても適宜、適用可能であり、同様な効果を奏する。
【0050】
以上、実施の形態1で示したように、アーク冷却剤を誘電体および薄膜高電圧電極により形成された空間、つまりアークの持続・進展経路に設置したことにより、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、ヒューズに発生するような溶断不良(短絡保護失敗)がなく、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないことから、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。
【0051】
さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。また、アーク冷却剤を誘電体内側のほぼ全域に設置した場合、アーク冷却剤は、原料ガスが誘電体内側を通過することを抑制するガスシール効果もあり、誘電体の端部を封じる必要もない。さらに、アーク冷却剤を中空構造とした場合は、アーク冷却剤の使用量を低減することができ、アーク冷却剤の低コスト化にも貢献できる。さらに、アーク冷却剤が薄膜高電圧電極のオゾン出口側端部の位置に存在している場合、該端部から発生する沿面放電も抑制することができる。
【0052】
実施の形態2.
この発明の主旨はアークを発生させないことにあるのではなく、発生・持続するアークを給電部材に到達するまでに消弧させ、オゾン発生装置の完全な短絡を防止することにある。上記特許文献1の発明による薄膜高電圧電極の自己消失効果により、オゾン発生装置は瞬時に完全短絡するのではなく、非完全短絡の状態で薄膜高電圧電極が自己消失するための時間が発生する。この自己消失時間はアーク発生から完全短絡までの時間であり、言い換えればアークを消弧するために与えられた時間的猶予といえる。また、前述のように、アークの持続空間は、誘電体および薄膜高電圧電極に囲まれた空間だけに限定される。
【0053】
図7はこの発明の実施の形態2による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図7の電極部では、上記のことを反映して、アーク冷却剤10は給電部材7と接地電極1との間にのみ設置されている。すなわちアーク冷却剤10は給電部材7と隣接し接地電極1つまり放電空間4の外側部分にのみ設けられている。このアーク冷却剤10には、実施の形態1と同様にシリコーンゲルを用いた。アーク冷却剤10の設置量(設置長)はアーク発生時の薄膜高電圧電極2の消失量と関連し、設置量が大きいまたは設置範囲が広いほどアーク発生から高速でアークを冷却できるのであるが、完全な短絡のみを防止するという観点では、図7のように、発生したアークは最終的に給電部材7に到達しようとするため、給電部材7の直後のみに設置するだけでもよい。
【0054】
アーク冷却剤10はアークが持続する空間断面全てに設置するに限らず、実施の形態1でも示したように中空構造としても良い。さらに、シリコーンゲルは誘電体3の内部に充填してから焼成・成形するのではなく、誘電体3の外部(つまりオゾン発生装置の外部)で焼成・成形してから誘電体3内部に挿入・設置してもよい。この場合、シリコーンゲルをポリアミド樹脂フィルム等で覆うことで、挿入時の摩擦抵抗を減少させることもでき、容易に誘電体3内部に挿入できる(ポリアミド樹脂の有効性は後述する実施の形態4で述べる)。また、この構成では、薄膜高電圧電極2が高濃度オゾンに接触する面積が極めて大きくなるため、寿命の観点からは、誘電体3のオゾン出口側端部は端部封じ加工やシリコンゴム、EPDMゴム栓などによりガスシールした方がよい。さらに、実施の形態1と異なり、薄膜高電圧電極2のオゾン出口側端部にはアーク冷却剤が存在しないため、該端部には絶縁性または半導電性材料を塗布し(図示省略)、該端部から発生する沿面放電を抑制しておくのがよい。
【0055】
以上のように設置したアーク冷却剤10を用い、実施の形態1に示したように、敢えて誘電体であるガラス管に絶縁破壊が発生する条件下でオゾン発生装置を動作させ、実際に絶縁破壊を発生させた結果、絶縁破壊発生地点、つまりアーク発生箇所からアーク冷却剤10に至るまでの薄膜高電圧電極2の大部分は自己消失してしまうものの、アーク冷却剤10に至るまで持続したアークはアーク冷却剤10に接した点で消弧し、給電部材7に到達することはなく、オゾン発生装置が完全短絡に陥ることはない。ただし、薄膜高電圧電極2の自己消失の状態、給電部材7から見たアーク発生箇所に至る薄膜高電圧電極2の導通状態に依存するが、この実施の形態におけるアーク冷却剤10を用いたオゾン発生装置においては、電極間短絡が発生したガラス管は、アークが消弧された後もオゾン発生を継続することができない場合がある。しかし、電極間短絡が発生したガラス管以外の全てのガラス管は、オゾン発生装置システムを停止することなく、再度オゾン発生に寄与することができる。
【0056】
この実施の形態により、薄膜高電圧電極の消失量は増加するものの、実施の形態1と同様にオゾン発生装置を完全な短絡から防止することができる。薄膜高電圧電極の自己消失効果による完全短絡への時間的猶予を有効に利用し、給電部材直前でアークを完全に消弧できる。従って、薄膜高電圧電極とアーク冷却剤の組み合わせにより、いかなる短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置が完全に短絡することを防止でき、オゾン発生装置の再起動のために、オゾン発生システム全体を停止する必要がない。またヒューズを使用しないことにより、オゾン発生装置の小型化および低コスト化にも貢献できる。さらに、アーク冷却剤の設置場所および設置量を限定することにより、アーク冷却剤の低コスト化も実現できる。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態1および2においては、設置するアーク消弧剤がシリコーンゲルの場合について説明したが、アーク消弧剤はシリコーンポリマー(例えばシリコーンゲル)に限らず、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムといった金属水酸化物やけい砂、ホウ酸のいずれかまたはこれらの混合物を含んだ粒または粉状固体、またゲル化したものとしてもよい。この場合、実施の形態1および2と同様の効果が得られ、また上記物質からは、アーク冷却・消弧作用を有効に引き出すことができ、これらを実施の形態1および2と同様に、誘電体、薄膜高電圧電極に囲まれたアークが持続する空間に設置することにより、アークの消弧を実現できる。
【0058】
以上のようにこの実施の形態で示したアーク消弧剤を用いることで、実施の形態1および2同様に、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0059】
実施の形態4.
アークの冷却には上述の実施の形態1〜3に示したようなアーク消弧剤からの反応ガスや消弧作用以外にも、電極部構成部材が有するアブレーション冷却(蒸発・昇華する際に周囲の熱を奪う)や水素発生を利用することも極めて効果的である。すなわち、電極部の構成部品材料が電極間に発生したアークからの入熱により蒸発・昇華、または解離する際に生じる潜熱や、アーク冷却剤と同様の水素発生によりアークからエネルギーを奪い(アークを冷却)、アークを消弧させることができる。
【0060】
図8および図9にこの発明の実施の形態4による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図8では、薄膜高電圧電極として銅を用いたアブレーション電極12を設置している。数百、数千度もの高温となるアークに対して、銅は蒸発温度が1360K、蒸発エネルギーが4.8×106J/kgであり、蒸発温度以上でアークの持続経路にガス状となり流れ込み、そのアブレーション冷却効果により、アークの冷却に寄与することができる。
【0061】
また、図9では、薄膜高電圧電極2がフッ素樹脂(PTFE)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂などのコーティング層13により覆われている。例えば、PTFEの場合、蒸発温度600K、蒸発エネルギー5.7×104J/kgに加えて、解離温度3400K、解離エネルギー1.2×107J/kgであり、蒸発時および解離時にアークからエネルギーを奪うことができ、消弧に至らしめることができる。例えば、ポリアミド樹脂はアークに作用することで水素発生も実現でき、更にアーク冷却効果に貢献できる(この観点から、実施の形態2で示したシリコーンゲルを該樹脂で覆うことは極めて有効である)。
【0062】
上記のような電極部構成部材のアーク消弧作用により、オゾン発生装置に発生した短絡に伴うアークを給電部材に到達させることなく、消弧することができる。また、実施の形態1〜3に示したアーク消弧剤を併用することで、さらに確実な完全短絡防止が実現できる。
【0063】
以上のようなこの実施の形態で示した電極構成部材を用いることで、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0064】
実施の形態5.
図10にこの発明の実施の形態5による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図10では薄膜高電圧電極に水素吸蔵合金電極14を用いる。アークの冷却には極めて効果的である。水素吸蔵合金電極14としては、マグネシウム、チタン、バナジウム、ランタンのいずれかまたは2種類以上を含む水素化物を使用する。水素吸蔵合金電極14には、水素が吸蔵されており、接地電極1と水素吸蔵合金電極14間に短絡が発生し、アークが発生した場合、そのアーク熱を利用し、水素吸蔵合金電極14内部に吸蔵されていた水素を容易に放出することができる。この放出した水素の高い熱伝導性を利用してアークを冷却し、アークが給電部材7に至るまで持続することなく、電極間の絶縁を回復することができる。
【0065】
また、薄膜高電圧電極2は実施の形態1〜4で示した金属薄膜を用い、接地電極1を該水素吸蔵合金電極14で形成、また、接地電極1の放電空間4に接する面に水素吸蔵合金(14)を成膜しても上記と同様の効果が得られる。これらの構成は、実施の形態1〜4に示した構成と併用することで、さらに確実な完全短絡防止が実現できる。
【0066】
以上のようなこの実施の形態で示した水素吸蔵合金を薄膜高電圧電極に用いることで、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0067】
実施の形態6.
アークの冷却に誘電体および薄膜高電圧電極の内側に封入された消弧用ガスを使用しても実施の形態1と同様に電極間短絡により発生したアークを給電部材に到達させることなく、消弧することができる。
【0068】
図11にこの発明の実施の形態6による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図11において、誘電体3および薄膜高電圧電極2の内側にアーク消弧剤である消弧用ガス15が封入されており、誘電体3の両端はガスシールされている。消弧用ガスとしては、水素、ヘリウム、六フッ化硫黄、二酸化炭素、CF3I(トリフルオロヨードメタン)、およびこれらのうちの複数を混合させたガスなどが効果的であり、これらの熱伝導性や消弧性を利用することができる。消弧用ガス15は高圧力、好ましくはオゾン発生器の動作圧力以上で封入されている方が、アークの消弧に対して効果的であるが、大気圧近傍の圧力により封入されてもアーク消弧に十分に作用することを確認した。封入圧力は使用する誘電体3の形状、特に厚さやガスシール部構造により選択する必要がある。
【0069】
特に、高圧力で封入されている場合、誘電体3が破損した瞬間に消弧用ガス15は、アークの消弧に作用すると同時に、誘電体3から放電空間4へ流出するため、薄膜高電圧電極2が蒸発・昇華した際に発生する導電性ガスは一気に放電空間を通り、オゾン発生装置外へ排出される。そのため、アークの持続・進展経路内のガスは導電性を高めることがない。従って、極めて少量の薄膜高電圧電極2の消失量において、消弧を完了できる。また、消弧が発生した場合、これらの消弧用ガス15はオゾン発生装置の出力ガスとしてオゾン化酸素とともに排出される可能性があるが、オゾン化酸素に比して極めて少量であるため、オゾン化酸素の供給上、大きな問題はない。さらに、実施の形態1〜5に示したアーク消弧方法をこの実施の形態と組み合わせれば、より高速かつ確実なアークの消弧を実現できる。
【0070】
また、図12に示すように、消弧用ガス15を容器16に封入して誘電体3および薄膜高電圧電極2内、特に給電部材7と隣接し接地電極1つまり放電空間4の外側部分に設置しても、アークを給電部材7に到達させることなく、消弧させることができる。容器16には、樹脂製カプセル状容器などアークの入熱により一部溶解するものが好ましい。容器材質には、実施の形態4で示した樹脂を用いるのがなお好ましい。また、実施の形態1で示した成形後のシリコーンゲルに消弧用ガスを封入して、容器16と同様に設置してもよい。これらの場合、誘電体3の原料ガス側はガスシーリングする必要がない。また、これらの構成は、実施の形態1〜5に示した構成と併用することで、さらに確実な完全短絡防止が実現できる。
【0071】
以上のようなこの実施の形態で示した消弧用ガスを誘電体および薄膜高電圧電極により形成された空間、つまりアークの持続・進展経路に封入したことにより、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失効果を効果的に利用することができ、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0072】
実施の形態7.
この発明においては、薄膜高電圧電極の消失に伴い発生する導電性ガスがアークの持続経路の形成を担っており、そのアークを給電部材に到達する前に消弧させる手段を実施の形態1〜6において示した。この実施の形態は、導電性ガスそのものをアーク持続空間より除去し、アーク発生後瞬時に消弧させるものである。
【0073】
図13にこの発明の実施の形態7による円筒多管式オゾン発生装置の一組の電極部の断面図を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図13において、誘電体3および薄膜高電圧電極2の内側にアーク発生に伴い発生する導電性ガスの吸着剤17が設置されている。吸着剤としては、ゼオライト、モレキュラーシーブスおよびカーボンなどを利用するのが効果的である。
【0074】
アーク発生に伴い、空間中に飛散した薄膜高電圧電極2の導電性ガス粒子を該吸着剤17が吸着・吸収することにより、アーク持続空間の導電性を高めることなく、アークの持続を抑制することができる。そのため、アークは該空間を持続伝搬することができず、必要な絶縁距離に応じた薄膜高電圧電極2の自己消失が得られた段階で消弧し、給電部材7まで到達することはなく、オゾン発生装置の完全な短絡は発生しない。また、吸着剤の替わりに金属イオン中和剤を設置し、該持続空間の導電性を維持するイオン種を中和・除去する、また市販の脱臭用途などに使用されているセラミクス基材を用いた粒状、ハニカム状触媒などを用いても同様の効果が得られる。また、これらの構成は、実施の形態1〜6に示したアーク消弧方法と併用することで、さらに確実な完全短絡防止が実現できる。
【0075】
以上のようなこの実施の形態で示した導電性ガス除去剤(吸着剤、金属イオン中和剤、脱臭用粒状、ハニカム状触媒の総称)を誘電体および薄膜高電圧電極により形成された空間、すなわちアークの持続・進展経路に設置したことにより、オゾン発生装置の短絡電流が極めて大きい場合においても、薄膜高電圧電極の自己消失により発生する導電性ガスを吸着または分解することにより、短絡に伴い発生したアークの持続を抑制し、速やかに消弧することができる。そのため、誘電体のあらゆる部分でその破損が発生しようとも、いかなる大きさの短絡電流が発生した場合においても、アークが持続し、給電部材に到達することがないため、ヒューズ等の短絡防止手段を用いることなくオゾン発生装置の完全短絡を防止でき、オゾン発生装置の小型化・低コスト化にも大きく貢献することができる。さらに、オゾン発生システム全体を停止する必要がなく、速やかにオゾン発生装置を再起動することができる。
【0076】
この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、上述したように、これらの実施の形態の可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1 接地電極、1a 金属管、1b 誘電体、1c 薄膜接地電極、2 薄膜高電圧電極、3 誘電体(ガラス管)、4 放電空間、5 冷却水通路、6 駆動電源(交流電源)、7 給電部材、8,9 管板、10 アーク冷却剤(アーク消弧剤)、11 スペーサ、12 アブレーション電極、13 コーティング層、14 水素吸蔵合金電極、15 消弧用ガス、16 容器、17 吸着剤、18 リアクトル、19 破損電極部、20 未破損電極部、21 破損箇所。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と、
ガスを供給してプラズマを発生させる放電空間を間に設けるように上記誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された導電性の給電薄膜からなる第2の電極からなる1組の電極と、
上記1組の電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源と、
上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材と、
上記誘電体および第2の電極の少なくとも第2の電極と接するように配置されたアーク消弧剤と、
を備え、
上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極がアーク放電の発生した部分から上記給電部材が接する部分まで部分的に消滅し、同時に上記アーク消弧剤によりアーク放電を消弧することを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項2】
上記アーク消弧剤が、シリコーン化合物により形成されることを特徴とする請求項1記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項3】
上記アーク消弧剤が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、けい砂、ホウ酸の材料群から選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項1記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項4】
上記アーク消弧剤が、水素、ヘリウム、六フッ化硫黄、二酸化炭素、トリフルオロヨードメタンのガス材料群から選択される少なくとも1つのガスを含むことを特徴とする請求項1記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項5】
上記第2の電極およびアーク消弧剤の少なくとも一方に沿って、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂のいずれかからなるコーティング層を備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項6】
上記交流電源が、上記放電空間の外部で上記第2の電極に上記給電部材を介して接続され、上記給電部材と、上記第2の電極に対向配置された上記第1の電極の給電部材側の端部との間に上記アーク消弧剤が設置されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項7】
誘電体と、
ガスを供給してプラズマを発生させる放電空間を間に設けるように上記誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置されたアブレーション電極または水素吸蔵合金電極からなる第2の電極からなる1組の電極と、
上記1組の電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源と、
上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材と、
を備え、
上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極がアーク放電の発生した部分から上記給電部材が接する部分まで部分的に蒸発または水素放出してアーク放電を消孤することを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項8】
誘電体と、
ガスを供給してプラズマを発生させる放電空間を間に設けるように上記誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された導電性の給電薄膜からなる第2の電極からなる1組の電極と、
上記1組の電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源と、
上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材と、
上記誘電体および第2の電極により形成された空間に配置された、第2の電極の消滅に起因して発生する導電性ガスを除去する導電性ガス除去剤と、
を備え、
上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極がアーク放電の発生した部分から上記給電部材が接する部分まで部分的に消滅し、同時に上記導電性ガス除去剤により第2の電極の消滅に起因して発生する導電性ガスを除去してアーク放電を消孤することを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項9】
上記第1の電極が、水素吸蔵合金電極からなることを特徴とする請求項1から6、8のいずれか1項に記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項10】
上記第1の電極が、誘電体上に形成された導電性の薄膜からなることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項11】
放電空間を間に設けるように誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された第2の電極からなる1組の電極と、上記電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源とを含み、上記放電空間にガスを供給してプラズマを形成する無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法であって、
上記第2の電極を導電性の薄膜で形成し、上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極をアーク放電の発生した部分から上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材が接する部分まで部分的に消滅させ、
同時に上記誘電体および第2の電極の少なくとも第2の電極と接するようにアーク消弧剤を配置してアーク放電を消弧させる、
ことを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項12】
上記アーク消弧剤としてシリコーン化合物を使用することを特徴とする請求項11記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項13】
上記アーク消弧剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、けい砂、ホウ酸の材料群から選択される少なくとも1つの材料を使用することを特徴とする請求項11記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項14】
上記アーク消弧剤として水素、ヘリウム、六フッ化硫黄、二酸化炭素、トリフルオロヨードメタンのガス材料群から選択される少なくとも1つのガスを使用することを特徴とする請求項11記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項15】
上記第2の電極およびアーク消弧剤の少なくとも一方に沿って、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂のいずれかからなるコーティング層を形成することを特徴とする請求項11から13までのいずれか1項記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項16】
上記交流電源を、上記放電空間の外部で上記第2の電極に上記給電部材を介して接続させ、上記給電部材と、上記第2の電極に対向配置された上記第1の電極の給電部材側の端部との間に上記アーク消弧剤を配置することを特徴とする請求項11から15までのいずれか1項記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項17】
放電空間を間に設けるように誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された第2の電極からなる1組の電極と、上記電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源とを含み、上記放電空間にガスを供給してプラズマを形成する無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法であって、
上記第2の電極をアブレーション電極または水素吸蔵合金電極で形成し、上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極をアーク放電の発生した部分から上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材が接する部分まで部分的に蒸発または水素放出させてアーク放電を消孤させる、
ことを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項18】
放電空間を間に設けるように誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された第2の電極からなる1組の電極と、上記電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源とを含み、上記放電空間にガスを供給してプラズマを形成する無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法であって、
上記第2の電極を導電性の薄膜で形成し、上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極をアーク放電の発生した部分から上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材が接する部分まで部分的に消滅させ、
同時に、上記誘電体および給電薄膜により形成された空間に、給電薄膜の消滅に起因して発生する導電性ガスを除去する導電性ガス除去剤を設置してアーク放電を消弧させる、
ことを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項19】
上記第1の電極として水素吸蔵合金電極を使用することを特徴とする請求項11から16、18のいずれか1項に記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項20】
上記第1の電極として導電性の薄膜を使用することを特徴とする請求項11から18までのいずれか1項に記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項1】
誘電体と、
ガスを供給してプラズマを発生させる放電空間を間に設けるように上記誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された導電性の給電薄膜からなる第2の電極からなる1組の電極と、
上記1組の電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源と、
上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材と、
上記誘電体および第2の電極の少なくとも第2の電極と接するように配置されたアーク消弧剤と、
を備え、
上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極がアーク放電の発生した部分から上記給電部材が接する部分まで部分的に消滅し、同時に上記アーク消弧剤によりアーク放電を消弧することを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項2】
上記アーク消弧剤が、シリコーン化合物により形成されることを特徴とする請求項1記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項3】
上記アーク消弧剤が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、けい砂、ホウ酸の材料群から選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項1記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項4】
上記アーク消弧剤が、水素、ヘリウム、六フッ化硫黄、二酸化炭素、トリフルオロヨードメタンのガス材料群から選択される少なくとも1つのガスを含むことを特徴とする請求項1記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項5】
上記第2の電極およびアーク消弧剤の少なくとも一方に沿って、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂のいずれかからなるコーティング層を備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項6】
上記交流電源が、上記放電空間の外部で上記第2の電極に上記給電部材を介して接続され、上記給電部材と、上記第2の電極に対向配置された上記第1の電極の給電部材側の端部との間に上記アーク消弧剤が設置されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項7】
誘電体と、
ガスを供給してプラズマを発生させる放電空間を間に設けるように上記誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置されたアブレーション電極または水素吸蔵合金電極からなる第2の電極からなる1組の電極と、
上記1組の電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源と、
上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材と、
を備え、
上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極がアーク放電の発生した部分から上記給電部材が接する部分まで部分的に蒸発または水素放出してアーク放電を消孤することを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項8】
誘電体と、
ガスを供給してプラズマを発生させる放電空間を間に設けるように上記誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された導電性の給電薄膜からなる第2の電極からなる1組の電極と、
上記1組の電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源と、
上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材と、
上記誘電体および第2の電極により形成された空間に配置された、第2の電極の消滅に起因して発生する導電性ガスを除去する導電性ガス除去剤と、
を備え、
上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極がアーク放電の発生した部分から上記給電部材が接する部分まで部分的に消滅し、同時に上記導電性ガス除去剤により第2の電極の消滅に起因して発生する導電性ガスを除去してアーク放電を消孤することを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項9】
上記第1の電極が、水素吸蔵合金電極からなることを特徴とする請求項1から6、8のいずれか1項に記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項10】
上記第1の電極が、誘電体上に形成された導電性の薄膜からなることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の無声放電式プラズマ発生装置。
【請求項11】
放電空間を間に設けるように誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された第2の電極からなる1組の電極と、上記電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源とを含み、上記放電空間にガスを供給してプラズマを形成する無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法であって、
上記第2の電極を導電性の薄膜で形成し、上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極をアーク放電の発生した部分から上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材が接する部分まで部分的に消滅させ、
同時に上記誘電体および第2の電極の少なくとも第2の電極と接するようにアーク消弧剤を配置してアーク放電を消弧させる、
ことを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項12】
上記アーク消弧剤としてシリコーン化合物を使用することを特徴とする請求項11記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項13】
上記アーク消弧剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、けい砂、ホウ酸の材料群から選択される少なくとも1つの材料を使用することを特徴とする請求項11記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項14】
上記アーク消弧剤として水素、ヘリウム、六フッ化硫黄、二酸化炭素、トリフルオロヨードメタンのガス材料群から選択される少なくとも1つのガスを使用することを特徴とする請求項11記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項15】
上記第2の電極およびアーク消弧剤の少なくとも一方に沿って、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂のいずれかからなるコーティング層を形成することを特徴とする請求項11から13までのいずれか1項記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項16】
上記交流電源を、上記放電空間の外部で上記第2の電極に上記給電部材を介して接続させ、上記給電部材と、上記第2の電極に対向配置された上記第1の電極の給電部材側の端部との間に上記アーク消弧剤を配置することを特徴とする請求項11から15までのいずれか1項記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項17】
放電空間を間に設けるように誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された第2の電極からなる1組の電極と、上記電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源とを含み、上記放電空間にガスを供給してプラズマを形成する無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法であって、
上記第2の電極をアブレーション電極または水素吸蔵合金電極で形成し、上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極をアーク放電の発生した部分から上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材が接する部分まで部分的に蒸発または水素放出させてアーク放電を消孤させる、
ことを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項18】
放電空間を間に設けるように誘電体と対向して設けられた第1の電極および上記誘電体上に上記第1の電極と上記誘電体を挟んで対向配置された第2の電極からなる1組の電極と、上記電極間に交流電圧を印加して放電させる交流電源とを含み、上記放電空間にガスを供給してプラズマを形成する無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法であって、
上記第2の電極を導電性の薄膜で形成し、上記誘電体が破損して上記電極間にアーク放電が発生した場合に、アーク放電により、上記第2の電極をアーク放電の発生した部分から上記第2の電極に接して上記交流電源を第2の電極に接続する給電部材が接する部分まで部分的に消滅させ、
同時に、上記誘電体および給電薄膜により形成された空間に、給電薄膜の消滅に起因して発生する導電性ガスを除去する導電性ガス除去剤を設置してアーク放電を消弧させる、
ことを特徴とする無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項19】
上記第1の電極として水素吸蔵合金電極を使用することを特徴とする請求項11から16、18のいずれか1項に記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【請求項20】
上記第1の電極として導電性の薄膜を使用することを特徴とする請求項11から18までのいずれか1項に記載の無声放電式プラズマ発生装置における消孤方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−173885(P2010−173885A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16814(P2009−16814)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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