説明

無機分散型エレクトロルミネッセンス素子及び発光素子システム

【課題】 高輝度発光及び高発光効率を実現できるEL素子を提供する。
【解決手段】 少なくとも一方が透明な、対向する一対の電極間に蛍光体粒子を含有する蛍光体層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、上記少なくとも一つの透明な電極における透明導電性フィルムの表面抵抗率が0.5Ω/□〜80Ω/□であり、蛍光体粒子の平均粒子サイズが12μm〜22μmであり、粒子サイズの変動係数が35%以下であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大面積で高輝度かつ効率の高いエレクトロルミネッセンス素子及び発光素子システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子とも称する)は、高誘電体中に蛍光体粒子を分散してなる粒子分散型素子と、誘電体層間に蛍光体薄膜を挟んでなる薄膜型素子等の無機エレクトロルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子に大別される。本発明は、主に、粒子分散型無機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0003】
分散型は、少なくとも一方が光透過性の一対の導電性電極シート間に、フッ素系ゴムあるいはシアノ基を有するポリマーのような高誘電性ポリマー中に蛍光体粉末を含んで成る発光層が設置された素子であり。さらに絶縁破壊を防ぐ為に高誘電性ポリマー中にチタン酸バリウムのような強誘電体の粉末を含んで成る誘電体層が設置されるのが通常の形態である。
【0004】
粒子分散型素子は、素子構成時に高温プロセスを用いない為、プラスチックを基板としたフレキシブルな材料構成が可能であること、真空装置を使用しなくても比較的簡便な工程で、低コストで製造が可能であること、また発光色の異なる複数の蛍光体粒子を混合することで素子の発光色の調節が容易であるという特長を有し、バックライト、表示素子へ応用されている。しかしながら発光輝度が低く、また発光寿命が短いために、その多くが、応用範囲を限られていた。また、発光効率も低く、発光輝度を上げると発熱や消費電力増大の問題が顕在化した。従って更なる発光輝度および発光効率の改良が望まれていた。
また現実には、大面積化時や高輝度発光時には、発熱による劣化や故障を起こしやすくなり、原理的には、大面積化が可能にもかかわらず、実際に高輝度と大面積は、両立していなかった。
【0005】
従来のエレクトロルミネッセンス素子には、通常表面抵抗率が、100Ω/□から300Ω/□の透明導電性フィルムが用いられてきた。大面積を均一に発光するには、透明導電フィルムの低抵抗化が原理的に予想されるものであるが、実際には、透明導電性材料を厚塗りする必要が生じ、光透過率の減少やコスト高の為に採用されなかった。
また、透明導電膜に関しては、多くの従来技術が存在し、例えば、非特許文献1、特許文献1等に記載されているが、単に低抵抗の透明導電膜を用いるだけでは、単に抵抗分消費電力が減るだけで、充分な高輝度化や高効率化を得ることは出来なかった。
【0006】
一方、通常用いられる蛍光体粉末は通常ZnSを母体としているものが一般的である。
エレクトロルミネッセンス用蛍光体における異種の金属ドーパントは、通常付活材として発光中心に用いられる銅及びマンガンないし希土類元素から選択された少なくとも一種のイオン及び塩素、臭素、ヨウ素、及びアルミニウム等が挙げられる。これらは、発光中心を与えるか、もしくは銅のように、硫化銅を形成して電子(正孔)を発生させるなどの機能を有している。
【0007】
これらのエレクトロルミネッセンス素子に用いられる蛍光体の平均粒子サイズは通常24μm〜30μm程度の大きさのものがほとんどで、小さい粒子を用いない理由としては、小サイズ化により低輝度化し耐久性が低下することが、当業界では良く知られている。
特許文献2には、蛍光体粒子のサイズおよび分布と蛍光体層の膜厚の関係を一定条件に保つことで、高輝度のエレクトロルミネッセンス素子を提供できることが記載されているが、この方法では、エレクトロルミネッセンス素子を高輝度に発光させることは、十分では無かった。また、高輝度化しても極端に輝度半減寿命が短くなったり、大面積化すると輝度が低下した。
【0008】
更に、分散型EL素子において発光粒子含有層と透明電極の間に層を設ける例としては、層間の密着性の改良に関するもの(特許文献3)が知られているが効率については、何ら記載が無い。また軟化点が200℃以下の熱可塑性樹脂を用いて中間層を形成するもの(特許文献4)も知られているが、この方法では高輝度を発生させる条件(例えば周波数800Hz以上、および電圧120V以上の駆動)において効果が十分でなかった。
【非特許文献1】東レリサーチセンター発行「電磁波シールド材料の現状と将来」
【特許文献1】特開平9−147639号公報
【特許文献2】特公平7−85636号公報
【特許文献3】特開平8−288066号公報
【特許文献4】特開平10−134963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の通り、従来のEL素子技術において、充分な高輝度化や高効率化を得ることができなかった。特に、展示広告は大判であればあるほど広告効果も大きいため、展示広告用のバックライト光源としては、大判での利用が求められている。しかしながら、従来のEL素子は、低輝度の為、これらへの応用は、限られたものであった。一方蛍光管や冷陰極管などを用いた大型平面光源が用いられているが、これらは重量も大きく、持ち運びも出来ず、大きな設置スペースを必要とし消費電力も大きくて、設置場所や使用環境に大きな制約があった。
【0010】
さらに、これらの展示広告や間接照明に無機ELを用いる場合のもう一つの問題は、赤色発光が従来充分で無いことによる。Mnを用いた硫化亜鉛蛍光体は、橙色に発光することから、白色発光エレクトロルミネッセンス素子にしばしば用いられる。またローダミンB系の蛍光染料を固体分散したものが、しばしば白色発光を得るために、硫化亜鉛蛍光体と混ぜて用いられてきた。しかしながら、これらの発光ピークは、ほとんど590nm以下になるため、充分な演色性を示すための610nm以上の発光成分が少なく、演色性の極めて低いエレクトロルミネッセンス材料しか得られなかった。
【0011】
エレクトロルミネッセンス素子の劣化による輝度低下を補う手段として、様々な電源技術が知られているが、これらのほとんどのものは、小サイズ、低電力の発光システムに関するもので、0.1m2以上、特には、0.5m2以上の大型パネルを発光させる大型電源で特に80W以上の大型インバータ電源に関する知見は極めてすくない。
【0012】
本発明は上記の通り、高輝度発光及び高発光効率を実現できるEL素子の提供を目的とするものであり、特に0.1m以上の大面積のEL素子を、高輝度発光でき、高い効率を実現することが更なる課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、本発明を特定する下記の事項およびその好ましい態様により達成された。
(1) 少なくとも一方が透明な、対向する一対の電極間に蛍光体粒子を含有する蛍光体層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、上記少なくとも一つの透明な電極における透明導電性フィルムの表面抵抗率が0.5Ω/□〜80Ω/□であり、蛍光体粒子の平均粒子サイズが12μm〜22μmであり、粒子サイズの変動係数が35%以下であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(2) 上記(1)において、透明導電性フィルムの透明導電膜と蛍光体層の間に有機物からなる絶縁性の中間層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(3) 上記(1)又は(2)において、蛍光体層の膜厚が30μm以上60μm以下であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、600nm以上に発光強度のピークを有し、白色発光し、初期輝度400cd/m以上で使用することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【0014】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、蛍光体粒子がAu、Mo、W及びPtの少なくとも1種を含有していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかにおいて、蛍光体粒子がAuを含み、さらにMo、Bi、Sb、W、Pt及び8族金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかににおいて、発光面積が、0.1m2以上であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子を用いた発光素子システムにおいて、該エレクトロルミネッセンス素子を駆動する電源が、電流を検出して、それを一定に保つ機能を有していることを特徴とする発光素子システム。
【0015】
本発明によれば、ある抵抗値以下の透明導電膜と小さい粒子サイズの蛍光体を組み合わることにより、従来予想し得ない大きな効率向上、特に300cd/m2以上の高輝度領域を実現できることを見出したものである。
本発明者らの検討によれば、小サイズ粒子は、しばしば中心サイズ以下の微粒子が、透明導電膜との間に多数の接触点をもたらし、この導通部分が、余分な電流となって系の効率を下げ、熱となるものと推定される。またこれらの接触点は、発熱による粒子の劣化を促進するばかりでなく、透明導電膜層自身の分解や、破壊を引き起こして素子性能の低下、特に輝度の低下をもたらすものと推定される。
エレクトロルミネッセンス蛍光体の発光機構に関しては、従来技術において明記されたものも少なくないが、その輻射発光過程の効率を上げる手段について開示されたものはほとんど無いか、本質的なメカニズムに関するものではなく、調節の範囲を開示したものとして従来知見に包含されてしまうものが多かった。
【0016】
本発明者らは、更に、従来の発光中心や電子発生源を提供するドーパント技術ではなく、発光過程を変調し、輻射再結合発光の効率を改良することで、エレクトロルミネッセンスの効率を改良することを見出した。これらの技術と中間層技術、蛍光体層の厚みの最適設計および蛍光体粒子のサイズ、分布の選択、透明導電膜の設計を行うことで、従来予想できないレベルの特に大面積素子での高輝度・高効率化を実現する手段を提供することができる。
更に本発明者らは、鋭意検討した結果80W以上のエレクトロルミネッセンス素子を駆動する電源の場合には、電流検出して素子の劣化に伴う輝度の保証としては、電圧と周波数にて電流を補償することで、電力を補い輝度低下を抑制することが、最も好ましいことを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のEL素子は、基本的には蛍光体層(「発光層」とも言う)を、少なくとも一方が透明で、対向する一対の電極で挟持した構成をもつ。また、発光層と電極の間に誘電体層を隣接することが好ましい。
【0018】
(透明導電性フィルム)
本発明に好ましく用いられる透明導電性フィルムの抵抗値は、0.5Ω/□〜80Ω/□が好ましい。特に 1Ω/□〜30Ω/□が好ましい。
透明導電フィルムの表面抵抗率は、JIS K6911に記載の方法に準じて測定することができる。
【0019】
透明導電性フィルムは、ポリエチレンテレフタレートやトリアセチルセルロースベース等の透明フィルム(支持体)上に、インディウム・錫酸化物(ITO)や錫酸化物、酸化亜鉛等の透明導電性物質を蒸着、塗布、印刷等の方法で付着、成膜して透明導電膜を形成することで得られる。
透明電導膜の調製法はスパッタ、真空蒸着等の気相法であっても良い。ペースト状のITO等を塗布やスクリーン印刷で作成したり、膜を過熱して成膜しても良い。
【0020】
本発明のEL素子において、透明導電性膜には一般的に用いられる任意の透明電極材料が用いられる。例えば錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫などの酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどの共役系高分子などが挙げられる。
これら単独の技術では十分に低抵抗化できない場合には、例えば櫛型あるいはグリッド型等の網目状ないしストライプ状金属細線を配置して通電性を改善することが好ましい。金属や合金の細線としては、銅や銀、アルミニウムが好ましく用いられる。この金属細線の太さは、任意であるが、0.5μm程度から20μmの間が好ましい。金属細線は、50μmから400μmの間隔のピッチで配置されていることが好ましく、特に100μmから300μmピッチが好ましい。金属細線を配置することで、光の透過率が減少するが、この減少は出来るだけ小さいことが重要で、好ましくは、80%以上100未満の透過率を確保することが好ましい。
【0021】
金属細線は、メッシュを透明導電性フィルムに張り合わせてもよいし、予めマスク蒸着ないしエッチングによりフィルム上に形成した金属細線上に金属酸化物等を塗布、蒸着しても良い。また、予め形成した金属酸化物薄膜上に上記の金属細線を形成してもよい。
【0022】
これとは異なる方法となるが、金属細線の代わりに、100nm以下の平均厚みを有する金属薄膜を金属酸化物と積層して本発明に適した透明導電膜とすることができる、金属薄膜に用いられる金属としては、AuやIn、Sn、Cu、Niなど耐腐食性が高く、天延性等に優れたものが好ましいが、特にこの限りではない。
これらの複層膜は、高い光透過率を実現することが好ましく、70%以上の光透過率を有することが好ましく、80%以上の光透過率を有することが特に好ましい。光透過率を規定する波長は、550nmである。
【0023】
(蛍光体粒子)
本発明に用いるエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子は、平均球相当直径が12μm以上22μm以下であり、好ましくは12m以上20μm以下、さらに好ましくは、14μm以上18μm以下である。球相当直径の変動係数は35%以下であり、好ましくは5%以上30%以下である。その調製方法としては、焼成法、尿素溶融法、噴霧熱分解法、水熱合成法(Hydrothermal method)を好ましく用いることができる。
粒子サイズ、分布をコントロールする具体的方法としては、例えば焼成法では、フラックスの使用方法や篩による。水熱合成法では、過飽和度を制御することで再核発生を防止し、粒子サイズ分布を狭く保ちながら、サイズを上げ下げすることができる。
【0024】
本発明の蛍光体粒子の平均サイズや変動係数は、例えば堀場製作所製・レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920のような、レーザー散乱による方法を用いることができる。ここで、平均粒径はメジアン径を指すものとする。
【0025】
合成された粒子は、多重双晶構造を有することが好ましい。硫化亜鉛の場合、多重双晶(積層欠陥構造)の面間隔は、1nm〜10nmが好ましく、より好ましくは、2nm〜5nmが好ましい。
【0026】
本発明に利用可能な蛍光体微粒子は、当業界で広く用いられる焼成法(固相法)で形成することができる。例えば、硫化亜鉛の場合、液相法で10nm〜50nmの微粒子粉末(通常生粉と呼ぶ)を作成し、これを一次粒子として用い、これに付活剤と呼ばれる不純物を混入させて融剤とともに坩堝にて900℃〜1300℃の高温で30分〜10時間、第1の焼成をおこない、粒子を得る。
第1の焼成によって得られる中間蛍光体粉末をイオン交換水で繰り返し洗浄してアルカリ金属ないしアルカリ土類金属及び過剰の付活剤、共付活剤を除去する。
次いで、得られた中間体蛍光体粉末に第2の焼成をほどこす。第2の焼成は、第1の焼成より低温の500〜800℃で、また短時間の30分〜3時間の加熱(アニーリング)をする。
これら焼成により蛍光体粒子内には多くの積層欠陥が発生するが、微粒子でかつより多くの積層欠陥が蛍光体粒子内に含まれるように、第1の焼成と第2の焼成の条件を適宜選択することが好ましい。
【0027】
また、第1の焼成物に、ある範囲の大きさの衝撃力を加えることにより、粒子を破壊することなく、積層欠陥の密度を大幅に増加させることができる。衝撃力を加える方法としては、中間蛍光体粒子同士を接触混合させる方法、アルミナ等の球体を混ぜて混合させる(ボールミル)方法、粒子を加速させ衝突させる方法、超音波を照射する方法、静水圧を利用する方法などを好ましく用いることができる。
【0028】
これらの方法により、5nm以下の間隔で10層以上の積層欠陥を有する粒子を形成することができる。その頻度の評価法としては、粒子を乳鉢ですりつぶし、ほぼ0.2μm以下の厚みの砕片に砕いたものを加速電圧200KVの電子顕微鏡で観察した際に、5nm以下の間隔で10層以上の積層欠陥を含む破片粒子の頻度で評価することができる。もちろん粒子サイズが、0.2μmを下回る厚みの粒子は、破砕の必要は無く、そのまま観察する。
本発明の粒子は、この頻度が50%個を超えるものが好ましく、さらに好ましくは、70%を超えるものが好ましい。頻度は、高いほど良い。積層欠陥の間隔は、狭いほど良い。
【0029】
その後、該中間蛍光体を、HCl等の酸でエッチングして表面に付着している金属酸化物を除去し、さらに表面に付着した硫化銅を、KCNで洗浄して除去する。続いて該中間蛍光体を乾燥してEL蛍光体を得ることができる。
【0030】
蛍光体粒子は、特許第2756044号公報や米国特許第6458512号明細書に記載のごとく0.01μm以上の金属酸化物や金属窒化物で構成される非発光シェル層で被覆されることにより、防水性・耐水性を付与することが好ましい。
またWO02/080626に記載のごとく、発光中心を含むコア部と非発光のシェル部からなる2重構造化することで、光取り出し効率を高める技術を好ましく用いることができる。
【0031】
蛍光体粒子は、粒子の表面に非発光シェル層を有することがより好ましい。このシェル層形成は、蛍光体粒子のコアとなる半導体微粒子の調製に引き続いて化学的な方法を用いて0.01μm以上の厚みで設置するのが好ましい。好ましくは0.01μm以上1.0μm以下である。
非発光シェル層は、酸化物、窒化物、酸窒化物や、母体蛍光体粒子上に形成した同一組成で発光中心を含有しない物質から作成することができる。また、母体蛍光体粒子材料上にエピタキシャルに成長させた異なる組成の物質により形成することができる。
非発光シェル層の形成方法として、レーザー・アブレーション法、CVD法、プラズマCVD法、スパッタリングや抵抗加熱、電子ビーム法などと、流動油面蒸着を組み合わせた方法などの気相法と、複分解法、ゾルゲル法、超音波化学法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、水熱合成法、尿素溶融法、凍結乾燥法などの液相法や噴霧熱分解法なども用いることができる。
特に、蛍光体の粒子形成で好適に用いられる、水熱合成法、尿素溶融法や噴霧熱分解法は、非発光シェル層の合成にも適している。
【0032】
蛍光体粒子の付活剤として銅、マンガン、銀、金及び希土類元素から選択された少なくとも一種のイオンを好ましく用いることができる。
本発明の蛍光体粒子には、亜鉛に対し1×10-7モル以上1×10-3モル以下のAu、Mo、W、Ptの少なくとも1種を含有していることが好ましい。特に3×10-6モル以上3×10-4モル以下が好ましい。
さらに好ましい状態としては、前述の量の範囲でAuを含み、さらにMo、Bi、Sb、W、Pt及び8族金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有することが、好ましい。これら2種目の金属イオンの好ましい添加量は、亜鉛に対し1×10-7モル以上1×10-3モル以下のAu、Mo、W、Ptの少なくとも1種を含有していることが好ましい。特に3×10-6モル以上3×10-4モル以下が好ましい。
共付活剤としては、塩素、臭素、ヨウ素及びアルミニウムから選択された少なくとも一種のイオンを好ましく用いることができる。
【0033】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子においては、蛍光体層の厚みは30μm以上60μm以下が好ましい。特に好ましいのは、40μm以上55μm以下である。
【0034】
素子の構成としては、少なくとも一方が透明な、対向する一対の電極で狭持した蛍光体物質を含む発光層を有する構成になっており、蛍光体物質を含む蛍光体発光層と必要に応じて隣接させる無機誘電体物質を含む絶縁層との合計膜厚みが、該蛍光体の平均粒子サイズの2倍〜10倍であることが好ましく、特に3倍から5倍であることが好ましい。
上記素子構成において電極間距離のバラツキを中心線平均粗さRaとして見たとき、発光層厚みdに対して(d*1/8)以下の平滑性を有していることが好ましい。
【0035】
エレクトロルミネッセント蛍光体について、さらに詳しく以下に述べる。
本発明に好ましく用いられる粒子の母体材料としては、具体的には第II族元素と第VI族元素とから成る群から選ばれる元素の一つあるいは複数と、第III族元素と第V族元素とから成る群から選ばれる一つあるいは複数の元素とから成る半導体の微粒子であり、必要な発光波長領域により任意に選択される。例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CaS、MgS、SrS、GaP、GaAs及びそれらの混晶などが挙げられるが、中でもZnS、CdS、CaSなどを好ましく用いることができる。
【0036】
さらに、粒子の母体材料としては、BaAl、CaGa、Ga、ZnSiO、ZnGaO、ZnGa、ZnGeO、ZnGeO、ZnAl、CaGa、CaGeO、CaGe、CaO、Ga、GeO、SrAl、SrGa、SrP、MgGa、MgGeO、MgGeO、BaAl、GaGe、BeGa、YSiO、YGeO、YGe、YGeO、Y、YS、SnO及びそれらの混晶などを好ましく用いることができる。
また、発光中心は、MnやCrなどの金属イオン及び、希土類を好ましく用いることができる。
このような、母体材料の選択により、いくつかの蛍光体を用いることで、実質的に、染料や蛍光染料を用いることなく、色度図上 0.3<x<0.4、0.3<y<0.4の範囲の白色発光を得ることもできる。
【0037】
(中間層)
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、透明導電膜と発光粒子含有層との間に少なくとも1層の中間層を有することが好ましい。
中間層は有機高分子化合物または無機化合物、またはこれらが複合されていても良いが、有機高分子化合物を含む層を少なくとも1層有することが好ましい。
中間層の厚みは10nm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは100nm以上30μm以下であり、特に好ましくは0.5μ以上10μ以下である。
中間層を形成する材料が有機高分子化合物である場合、使用できる高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリビニルアルコール、プルランやサッカロース、セルロース等の多糖類、塩化ビニル、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース、または多官能アクリル酸エステル化合物から得られる紫外光硬化型樹脂やエポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂が挙げられる。またここで使用する高分子化合物は絶縁体であっても導電体で有っても良い。
これら有機高分子化合物またはその前駆体は、適当な有機溶媒(例えば例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレンなど)に溶解し透明電極上あるいは発光粒子含有層に塗布して形成することができる。
【0038】
中間層は実質的な透明性(好ましくは波長550nmの透過率が70%以上、より好ましくは80%以上)を有する範囲で、種々の機能を付与するための添加物を有していても良い。例えばチタン酸バリウム粒子などの誘電体、または酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズ−インジウム、金属粒子などの導電体、または染料、蛍光染料、蛍光顔料、または本発明の効果を失わない程度(エレクトロルミネッセンス素子全体の輝度のうち30%以下)の発光体粒子を存在させても良い。
中間層は二酸化ケイ素、その他金属酸化物、金属窒化物などの無機化合物で有っても良い。無機化合物で中間層を形成する方法としては、スパッタ法、CVD法などが採用できる。中間層が無機化合物で形成されている場合、膜厚は10nm以上1μm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
【0039】
また中間層が無機化合物の層と有機高分子化合物の層の組み合わせで構成されているものも好ましい。
本発明においては少なくとも1層の有機高分子化合物を含んでなる厚み0.5μ以上10μ以下の中間層を有することが好ましく、該有機高分子化合物はポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース、または多官能アクリル酸エステル化合物から得られる紫外光硬化型樹脂やエポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂から選ばれるものが好ましく、更にこれらのうち軟化点が70℃以上(より好ましくは100℃以上)のものが好ましい。これらから選ばれる複数の高分子化合物が組み合わされていることも好ましい。
中間層の有機高分子化合物が軟化点の高い(例えば200℃以上)である場合、透明電極層や発光粒子含有層との密着性を改良するなどの目的で、軟化点の低い有機高分子化合物を含む別な中間層を併用することも好ましい。
【0040】
(白色・蛍光染料)
本発明の用途は、特に限定されるものではないが、光源としての用途を考えると、発光色は白色が好ましい。
発光色を白色とする方法としては、例えば、銅とのマンガンが付活され、焼成後に徐冷された硫化亜鉛蛍光体のように単独で白色発光する蛍光体粒子を用いる方法や、3原色または補色関係に発光する複数の蛍光体を混合する方法が好ましい。(青−緑−赤の組み合わせや、青緑−オレンジの組み合わせなど)また、特開平7−166161号公報、特開平9−245511号公報、特開2002−62530号公報に記載の青色や青緑色発光の蛍光体と蛍光顔料や蛍光染料を用いて発光の一部を緑色や赤色に波長変換(発光)させて白色化する方法も好ましい。このましい、蛍光染料としては、ローダミン系の蛍光染料が用いられる。さらに、CIE色度座標(x,y)は、x値が0.30〜0.4の範囲で、かつy値が0.30〜0.40の範囲が好ましい。
【0041】
(背面電極)
光を取り出さない側の背面電極は、導電性の有る任意の材料が使用出来る。金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウムなどの金属、グラファイトなどの中から、作成する素子の形態、作成工程の温度等により適時選択されるが、その中でも熱伝導率が高いことが重要で、好ましくは、2.0W/cm・deg以上であることであることが好ましい。
また、EL素子の周辺部に高い放熱性と通電性を確保するために、金属シートや金属メッシュを用いることも好ましい。
【0042】
(封止・吸水)
本発明のEL素子は、最後に適当な封止材料を用いて、外部環境からの湿度の影響を排除するよう加工することが好ましい。素子の基板自体が十分な遮蔽性を有する場合には、作成した素子の上方に遮蔽性のシートを重ね、周囲をエポキシ等の硬化材料を用いて封止することが好ましい。また、面状素子をカールさせないために両面に遮蔽性シートを配しても良い。素子の基板が、水分透過性を有する場合は、両面に遮蔽性シートを配する必要がある。
このような遮蔽性のシートは、ガラス、金属、プラスチックフイルム等の中から目的に応じて選択されるが、例えば特開2003−249349号公報に開示されているような酸化珪素からなる層と有機高分子化合物からなる多層構成の防湿フィルムを好ましく用いることができるし、3フッ化塩化エチレン等も好ましく用いることができる。
上記封止工程は、特公昭63―27837号公報に記載の如く、真空ないし不活性ガス置換された雰囲気下で行うことが好ましく、封止工程実施前には、特開平5−166582号公報に記載の如く、含水分量を十分に低減することが重要である。
【0043】
これらのEL素子を作成する際に、防湿フィルムより内部に、吸水層を設けることが、好ましい。給水層は、ナイロンやポリビニルアルコール等の吸水性が高く、水分保持能力
が高い素材からなることが、好ましい。透明性が、高いことも重要である。透明性さえ高ければ、セルロースや紙の様な素材も好ましく用いることが出来る。
特開平4−230996号公報や特開兵11−260557号公報に記載の如くフィルムによる防湿だけでなく蛍光体粒子を金属酸化物や窒化物で被覆することで、防湿性を向上させることも好ましく併用することが出来る。
【0044】
(誘電体層)
また、本発明の誘電体物質は、薄膜結晶層であっても粒子形状であってもよい。またそれらの組み合わせであっても良い。誘電体物質を含む誘電体層は、蛍光体粒子層の片側に設けてもよく、また蛍光体粒子層の両側に設けることが好ましい。薄膜結晶層の場合は、基板にスパッタリング等の気相法で形成した薄膜であっても、BaやSrなどのアルコキサイドを用いたゾルゲル膜であっても良い。粒子形状の場合は、蛍光体粒子の大きさに対し十分に小さいことが好ましい。具体的には蛍光体粒子サイズの1/3〜1/1000の大きさが好ましい。
【0045】
(紫外線吸収剤)
本発明には、特開平9−22781に記載されている酸化セリウム等の無機化合物を用いることができる。より好ましくは有機化合物を用いることができる。
本発明においては紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の公報に記載の化合物を用いることができる。
これらは、写真感光材料に好ましく添加されるが、本発明でも有効である。例えば、特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号及び特表平8−501291号等に記載されている化合物を使用できる。
これらの紫外線吸収剤は、蛍光体粒子ならびに蛍光染料が、紫外線を吸収しない様に配置されることが重要であり、蛍光体粒子ならびに蛍光染料を分散したバインダー中に添加、分散したり、また透明電極層より外側の防湿フィルムや吸水フィルム中に添加して用いることができる。もちろんこれらのフィルム面上に紫外線吸収層として塗布して用いることもできる。
【0046】
(バインダー)
蛍光体層は、蛍光体粒子をバインダーに分散したものを用いる。バインダーとしては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。これらの樹脂に、BaTiOやSrTiOなどの高誘電率の微粒子を適度に混合して誘電率を調整することもできる。分散方法としては、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機などを用いることができる。
【0047】
誘電体層は、誘電率と絶縁性が高く、且つ高い誘電破壊電圧を有する材料であれば任意のものが用いられる。これらは金属酸化物、窒化物から選択され、例えばTiO、BaTiO、SrTiO、PbTiO、KNbO3、PbNbO、Ta、BaTa26、LiTaO3、Y、Al、ZrO、AlON、ZnSなどが用いられる。これらは均一な膜として設置されても良いし、また粒子構造を有する膜として用いても良い。
蛍光体層と誘電体層は、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、あるいはスプレー塗布法などを用いて塗布することが好ましい。特に、スクリーン印刷法のような印刷面を選ばない方法やスライドコート法のような連続塗布が可能な方法を用いることが好ましい。例えば、スクリーン印刷法は、蛍光体や誘電体の微粒子を高誘電率のポリマー溶液に分散した分散液を、スクリーンメッシュを通して塗布する。メッシュの厚さ、開口率、塗布回数を選択することにより膜厚を制御できる。分散液を換えることで、発光層や誘電体層のみならず、背面電極層なども形成でき、さらにスクリーンの大きさを変えることで大面積化が容易である。
【0048】
(蛍光体層厚み)
また、本発明のEL素子は、蛍光体層の厚みが薄いことが好ましく、特に30μm以上60μm以下が好ましい。さらに、誘電体層と蛍光体層の合計膜厚みが、該蛍光体の平均粒子サイズの1.1倍〜10倍であることが好ましい。
上記蛍光体層厚みの下限は、蛍光体粒子サイズであるが、素子の平滑性を確保するためには、蛍光体粒子のサイズに対して蛍光体層の厚みが1.0〜10倍であることが好ましい。
【0049】
本発明の素子構成においては、基板、透明電極、背面電極、各種保護層、フィルター、光散乱反射層などを必要に応じて付与することができる。特に基板に関しては、ガラス基板やセラミック基板に加え、フレキシブルは透明樹脂シートを用いることができる。
本発明は、上記のような特徴を有する蛍光体粒子とEL素子構成を適宜組み合わせることが好ましく、それにより高輝度・高効率のEL素子を提供することができる。
【0050】
(電源)
通常分散型エレクトロルミネッセンス素子は、交流で駆動される。典型的には、100Vで50Hzから400Hzの交流電源を用いて駆動される。輝度は面積が小さい場合には、印加電圧ならびに周波数にほぼ比例して増加する。しかしながら、0.1m以上の大面積素子の場合、素子の容量成分が増大し、素子と電源のインピーダンスマッチングがずれたり、素子への蓄電荷に必要な時定数が大きくなるため、高電圧化や特に高周波化しても電力供給が十分に行われない状態になりやすい。特に0.25m以上の素子では、500Hz以上の交流駆動に対しては、しばしば駆動周波数の増大に対して印加電圧の低下がおこり、低輝度化が起こることがしばしば起こる。これに対し本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、0.1m以上の大サイズでも高い周波数の駆動が可能で、高輝度化することが出来る。その場合、500Hz以上5KHzでの駆動が好ましく、より好ましくは、1KHz以上3KHz以下の駆動が好ましい。
本発明では、EL素子を駆動する電源が、電流を検出して、それを一定に保つ機能を有していることが好ましい。
【実施例】
【0051】
実施例1
<本発明:蛍光体粒子A>
平均粒子径30nmの硫化亜鉛(ZnS)粒子粉末25gと、硫酸銅をZnSに対し0.1モル%と塩化金酸を0.003モル%とNa2[Pt(OH)6]を0.005モル%添加した乾燥粉末に、融剤としてNaClおよびMgClと塩化アンモニウム(NH3Cl)粉末を適量、並びに酸化マグネシウム粉末を蛍光体粉末に対し20質量%アルミナ製ルツボに入れて1200℃で2.0時間焼成したのち降温した。そののち粉末を取り出し、ボールミルにて粉砕分散した。さらに超音波分散を行ったのち、ZnCl2 5gと硫酸銅をZnSに対し0.05モル%添加したのちMgCl2を1g加え、乾燥粉末を作成し、再度アルミナルツボに入れて700℃で6時間焼成した。このとき雰囲気として10%の酸素ガスをフローさせながら焼成を行った。
【0052】
焼成後の粒子は、再度粉砕し、40℃のHOに分散・沈降、上澄み除去を行って洗浄したのち、塩酸10%液を加えて分散・沈降、上澄み除去を行い、不要な塩を除去して乾燥させた。さらに10%のKCN溶液を70℃に加熱して表面のCuイオン等を除去した。
さらに6Nの塩酸で粒子全体の10重量%に相当する表面層をエッチング除去した。
この様にして得られた粒子をさらに篩いにかけて、単分散・小サイズ粒子を取り出した。
このようにして得られた蛍光体粒子は、平均粒径が16.0μm、変動係数が31%で、あった。また、すり鉢で粒子を粉砕し、厚みが0.2μm以下の砕片を取り出して、200KVの加速電圧条件で、その電子顕微鏡観察を行ったところ、砕片粒子の少なくとも80%以上が5nm間隔以下の積層欠陥を10枚以上有する部分を含んでいた。
【0053】
<比較例:蛍光体粒子B>
蛍光体粒子Aの作製において、MgCl2の量と焼成温度・時間を調整し、篩がけを行わず、平均粒子径24μmで変動係数43%の蛍光体粒子Bを作製した。
【0054】
<比較例:蛍光体粒子C>
蛍光体粒子Aの作成において、篩がけを行わずに蛍光体を調製したところ、平均粒子径18μm粒子サイズの変動係数44%の蛍光体粒子Cを得た。
【0055】
平均粒子サイズが0.02μmのBaTiO微粒子を、30質量%の比率で有機溶媒に溶解したシアノレジン液に分散し、誘電体層厚みが25μmになるように厚み75μmのアルミシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて120℃で1時間乾燥した。
上記蛍光体粒子Aを、シンロイヒ社製蛍光染料FA−001と300cd/m2の発光時にCIE色度座標でx=3.3±0.3 y=3.4±0.3となる様、30wt%濃度のシアノレジン液に分散し混練し、上記の誘電体層上に厚みが50μmになるよう塗布した。
【0056】
(中間層の形成)
蛍光体層の上に、平均粒子サイズが0.02μmのBaTiO微粒子を誘電体層の場合の1/5の量、シアノレジン液に分散した塗布液を用い、2μmの厚みになるよう塗布して中間層を形成した。
【0057】
(透明導電膜)
透明導電膜A:ITOを蒸着した透明フィルム0.5m×0.7m基板を作製した。このときの表面抵抗は、150Ω/□で光透過率は、88%であった。
透明導電膜B:ITOを蒸着した透明フィルム0.5m×0.7m基板を作製した。このときの表面抵抗は、30Ω/□で光透過率は、77%であった。
透明導電膜C:これに対しIZO(インジウムジンクオキサイド)を蒸着した表面抵抗350Ω/□で光透過率93%の導電性フィルムを作製しその上に間隔300μmピッチで巾10μm、高さ3μmのNiよりなるストライプ状の金属細線をマスクを用いて蒸着により作製した。結果として、表面抵抗は、15Ω/□となった。
透明導電膜D:IZOを蒸着した表面抵抗350Ω/□で光透過率93%の導電性フィルムを作製しその上にAuを10nm蒸着した。結果として、表面抵抗は、10Ω/□となった。
【0058】
上記素子の透明電極部とアルミの背面電極部から、それぞれ厚み80μmの銅アルミシートを用いて外部接続用の端子を取り出した後、素子2枚のSiO2層を有する防湿フィルムと挟んで熱圧着した。
このようにして作製した本発明の発光素子を試料1(比較例)、2(本発明)、3(本発明)4(本発明)とした。この試料を基本にして、中間層の有無や蛍光体粒子を変更して、試料5〜16を作成した。試料1を基準にして、1KHzで駆動を行った。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例2
実施例1において蛍光染料をシンロイヒ社製F6013に替え、蛍光体層ではなく蛍光体層と誘電体層の間に実施例1の誘電体と混合した塗布液を作成して染料を含有した高誘電体層として、蛍光染料層を塗布した。厚みは、18μmとした。このとき誘電体層の塗布厚みは、18μmに減じた。
この様にして作成したエレクトロルミネッセンス素子の1KHz120V印加時の演色指数を評価したところ80を示した。
このサンプルの輝度を電圧と周波数を替えて表2の如く代えた場合に、色温度を測定したところ、400cd/m2以上で5500Kの色温度を示し、良好な白色が得られ、演色評価数80以上を得た。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例3
実施例1の本発明素子(1)0.5m×0.8mのサイズに加工し、(2)0.05m×0.10mサイズに加工した実施例1の試料の駆動周波数と効率の関係を調べたところ、本発明の素子は、大サイズにも関わらず小サイズ並の優れた効率を維持することが判った。
【0063】
実施例4
本発明の素子を初期条件として1.3KHz 140Vで定電流駆動としたところ、高い輝度と効率を維持したまま、定電圧駆動した場合に対し、2倍以上半減寿命が延びることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な、対向する一対の電極間に蛍光体粒子を含有する蛍光体層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、上記少なくとも一つの透明な電極における透明導電性フィルムの表面抵抗率が0.5Ω/□〜80Ω/□であり、蛍光体粒子の平均粒子サイズが12μm〜22μmであり、粒子サイズの変動係数が35%以下であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
請求項1において、透明導電性フィルムの透明導電膜と蛍光体層の間に有機物からなる絶縁性の中間層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1又は2において、蛍光体層の膜厚が30μm以上60μm以下であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、600nm以上に発光強度のピークを有し、白色発光し、初期輝度400cd/m以上で使用することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、蛍光体粒子がAu、Mo、W及びPtの少なくとも1種を含有していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、蛍光体粒子がAuを含み、さらにMo、Bi、Sb、W、Pt及び8族金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、発光面積が、0.1m2以上であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子を用いた発光素子システムにおいて、該エレクトロルミネッセンス素子を駆動する電源が、電流を検出して、それを一定に保つ機能を有していることを特徴とする発光素子システム。