説明

無機微粒子凝集体および無機微粒子を含有する樹脂組成物

【課題】組成物中に配合して混練した場合に分散性が良好な無機微粒子凝集体およびそれを用いた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】液体中に組成および等電点が異なる無機微粒子を分散した複数の分散液を混合した後に酸または塩基の添加によって凝集した無機微粒子凝集体から分散媒を除去した無機微粒子凝集体であり、無機微粒子は、アンチモン、ケイ素、ニオブ、ジルコニウム、チタン、スズ、セリウム、アルミニウム、亜鉛、イットリウム、銅のそれぞれの酸化物から選ばれることを特徴とする無機微粒子凝集体、およびそれを配合した樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無機微粒子からなる無機微粒子凝集体、および無機微粒子を含む樹脂組成物に関するものであり、特に樹脂に分散する際に容易に一次粒子まで均一分散できる無機微粒子凝集体および無機微粒子を含有する樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、合成樹脂に無機微粒子を配合することで機械的特性、熱的特性、光学的特性、あるいは化学的特性を向上させる取り組みが行なわれている。
配合する無機微粒子としてはその目的に応じて様々なものが用いられているが、粒径が小さくなるにしたがって、粒子同士が凝集しやすくなり、粒径がおよそ100nmより小さくなると凝集が顕著に起こり易くなってくる。粒子が凝集してしまうと微粒子を配合させた効果が発揮されず目的としている特性が得られなくなる。
【0003】
例えば光学的特性を重視する用途では凝集によって粒径が大きくなると曇ってしまい透明性が損なわれてしまう。
そこでこのような樹脂組成物では粒子の凝集を防ぐため、微粒子の表面を表面処理剤あるいはカップリング剤で処理する方法がある。表面処理剤あるいはカップリング剤は、無機材料あるいは有機材料であって、これを用いることで粒子の表面に薄い膜を形成されるので、樹脂との親和性を向上させることができる。また、樹脂組成物に界面活性剤のような分散剤を添加する方法が行なわれている。
また、無機微粒子と無機塩との混合液から乾燥によって固化物を作製し、該固化物から溶剤を用いて無機塩を除去した後に無機微粒子同士の表面融着が起こらない温度で乾燥を行うことによって、合成樹脂と溶融混合したときに無機微粒子を一次粒子レベルまで分散させることができる無機微粒子凝集体が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ところがこの方法では、一種類の無機微粒子と無機塩との混合液から乾燥によって固化物を作製するものであった。無機微粒子を光学素子用の合成樹脂組成物中へ配合する場合には、異なる無機微粒子を配合することによって屈折率等の光学的な特性の多様な調整が可能となるが、複数種類の無機微粒子凝集体を合成樹脂と混練することによって配合した場合には、それぞれの無機微粒子の凝集状態が異なっているために複数種類の無機微粒子を均一に分散した樹脂組成物を得ることができなかった。
【特許文献1】特開2006−213577号公報
【特許文献2】特開2006−213870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、合成樹脂に配合した場合に、一次粒子まで分散することが可能な組成が異なる複数種の無機微粒子凝集体および無機微粒子を含む樹脂組成物を提供することを課題とするものであり、特に種類が異なる複数の無機粒子からなり、一次粒子に分散可能な無機微粒子凝集体およびその製造方法、さらには無機微粒子を配合した樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体中に組成および等電点が異なる無機微粒子を分散した複数の分散液を混合した後に酸または塩基の添加によって凝集した無機微粒子凝集体から分散媒を除去したものである無機微粒子凝集体である。
前記無機微粒子は金属酸化物である前記の無機微粒子凝集体である。
前記無機微粒子は、アンチモン、ケイ素、ニオブ、ジルコニウム、チタン、スズ、セリウム、アルミニウム、亜鉛、イットリウム、銅のそれぞれの酸化物から選ばれる前記の無機微粒子凝集体である。
【0007】
液体中に組成および等電点が異なる無機微粒子を分散した複数の分散液を混合した後に揮発性の酸または塩基の添加で凝集した無機微粒子凝集体から分散媒を除去することによって得られた無機微粒子凝集体を合成樹脂に配合した樹脂組成物である。
前記無機微粒子は金属酸化物である前記の樹脂組成物である。
前記無機微粒子は、アンチモン、ケイ素、ニオブ、ジルコニウム、チタン、スズ、セリウム、アルミニウム、亜鉛、イットリウム、銅のそれぞれの酸化物から選ばれる合成樹脂に配合した樹脂組成物である。
また、液体中に組成および等電点が異なる無機微粒子を分散した複数の無機微粒子の分散液を混合した後に、酸または塩基の添加によって無機微粒子を凝集させた後に無機微粒子凝集体から分散媒を除去する無機微粒子凝集体の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無機微粒子凝集体は、無機微粒子を分散した等電点が異なる分散液の複数種類を混合した後に、酸または塩基の添加によって凝集を起こさせた後に分散媒を除去したものであって、無機微粒子相互の凝集力が小さく、合成樹脂との混練時に比較的容易に一次粒子まで分散することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、組成が異なる複数種の無機微粒子を合成樹脂に分散した樹脂組成物を作製する際に、あらかじめ組成が異なる無機微粒子を分散した複数の分散液を混合した後に、所定の条件下で無機微粒子を凝集させた後に分散媒を除去することによって得られた無機微粒子凝集体を、合成樹脂に配合して混練した際には一次粒子まで分散した樹脂組成物を提供することが可能であることを見出したものである。
特に複数種の無機微粒子を分散した分散液を配合した後に、pHの調整によって無機微粒子凝集させた後に分散媒を除去した後に得られた無機微粒子凝集体を合成樹脂に配合すると、それぞれの無機微粒子を高度に分散した樹脂組成物が提供できることを見出したものである。
【0010】
また、1種類の無機微粒子を液体中に分散した無機微粒子分散液であって、相互の等電点が異なる分散液の2種類を混合させた混合分散液に、混合分散液のpHを揮発性の酸または揮発性の塩基を加えることによってそれぞれの分散液の等電点の間の値に調整して無機微粒子の凝集体を形成した後に、分散媒を除去する過程で分散液から揮発性の酸または塩基を除去することによって、分散媒の除去工程以外の格別の分離処理操作を適用することなく複数の無機微粒子からなる無機微粒子凝集体を作製するものである。
【0011】
本発明の無機微粒子凝集体の製造に用いる無機微粒子には、各種の無機微粒子を適用することができるが、一例を挙げれば、アンチモン、ケイ素、ニオブ、ジルコニウム、チタン、スズ、セリウム、アルミニウム、亜鉛、イットリウム、銅のそれぞれの酸化物を挙げることができる。
【0012】
また、本発明に用いる無機微粒子は、金属アルコキシドの加水分解によって製造したもの、液相中で合成したり沈殿によって製造する方法、プラズマ、アーク等を利用した気相法、あるいは固相での合成、大粒子を固相で粉砕する粉砕法等によって製造することができる。
【0013】
使用可能な無機微粒子の一次粒径は任意のものを使用することができるが、1nmよりも小さい場合には一般に凝集性が大きくなり、本発明の方法によって作成した無機微粒子凝集体を合成樹脂に分散した場合には一次粒子に分散しにくくなる。また、100nmよりも大きなものでは、光学的な特性を利用する用途においては充分な特性を得ることができなくなる。
したがって、光透過性に優れた光学樹脂組成物を製造する場合には、無機微粒子の平均一次粒径は、1nm以上60nm以下が好ましい。特に透明性を重視する場合は、20nm以下でかつ90%粒径が30nm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の無機微粒子凝集体の製造に使用する無機微粒子を分散した分散液は、水、あるいは水溶性溶剤を含む水溶液を分散媒に用いて分散させることが好ましい。分散液中での無機微粒子の凝集を防ぐには、分散液のpHを含まれている無機微粒子の等電点から遠ざけるように調整することが好ましい。例えば、無機微粒子が二酸化チタンの場合には、二酸化チタンの等電点が6.2であるので、分散液のpHは3以下に調整すると良い。
無機微粒子を分散した分散液から無機微粒子凝集体を製造するためには、まず等電点が異なる複数の無機微粒子分散体を混合して混合分散液とする。この時混合する無機微粒子の組み合わせは、2種類の無機微粒子を混合する場合は、互いの等電点の差が0.5以上になるように組み合わせることが好ましい。
3種類以上の無機微粒子を混合する場合は、1種類の無機微粒子の等電点と、残りのすべての無機微粒子の等電点との差が0.5以上になるように配合することが好ましい。
【0015】
次いで、2種類の無機微粒子を混合した場合は、混合分散液のpHを酸または塩基を加えることによって互いの等電点の間のpHに調整する。また、3種類以上からなる無機微粒子凝集体を調製する場合には、最も等電点が低い無機微粒子の等電点と、他のすべての無機微粒子の等電点との間のpHに調整することによって無機微粒子凝集体を調製する。
【0016】
例えば、異種の無機微粒子が二酸化チタンと二酸化ケイ素である場合には、二酸化チタンの等電点が6.2であり、酸化ケイ素の等電点が2.0であるので、混合分散液のpHを2.0以上6.2以下の間に調整すると良い。
また、他の例を挙げれば、二酸化ケイ素と酸化ジルコニウムではpH2.0〜5.5、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムではpH2.0〜8.6、二酸化ケイ素と酸化スズ(IV)ではpH2.0〜6.6、二酸化ケイ素と酸化イットリウムではpH2.0〜9.3、二酸化ケイ素と酸化セリウムではpH2.0〜8.5、二酸化ケイ素と酸化亜鉛ではpH2.0〜9.2、酸化ニオブ(V)と二酸化チタンではpH2.7〜6.2、酸化ニオブ(V)と酸化ジルコニウムではpH2.7〜5.5、酸化ニオブ(V)と酸化アルミニウムではpH2.7〜8.6、酸化ニオブ(V)と酸化イットリウムではpH2.7〜9.3、酸化ジルコニウムと二酸化チタンではpH5.5〜6.2等に調整することが好ましい。
【0017】
本発明において、pH調整に使用する酸、塩基には各種ものを使用することができ、目的とする無機微粒子凝集体の使用目的に応じて適宜選択することができる。
複数の無機微粒子の複数種を配合した後に、所定の値にpH調整をすることによって分散安定性が低下して無機微粒子凝集体が得られる。
pH調整に使用する酸、塩基として、揮発性の酸、揮発性の塩基を使用した場合には、無機微粒子が凝集した分散液から分散液の調整に使用した酸、塩基を分離するための特別な処理操作は不要であって、無機微粒子凝集体を含む分散液に対して遠心分離等の分離操作を行った後に無機微粒子凝集体を分離し、この無機微粒子凝集体を加熱乾燥、減圧乾燥等を行って分散媒を除去する過程でpH調整に使用した酸、塩基を同時に分離除去することができる。
揮発性の酸としては塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を挙げることができる。また、同様に揮発性の塩基としては、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の4級アンモニウムを挙げることができる。
【0018】
本発明の無機微粒子凝集体は、無機微粒子が分散した分散液の等電点に着目し、pH調整を行うことによって得られた凝集体を製造したものであるので、凝集体を構成する微粒子は相互に強固に結合したものではない。そのため、合成樹脂に配合して樹脂組成物を調製した場合には無機微粒子を一次粒子レベルで合成樹脂中に均一に分散させることができ、樹脂組成物に対して無機微粒子の添加による効果を発揮することができる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、前記無機微粒子凝集体を合成樹脂に均一分散させることで得ることができる。使用することが可能な合成樹脂としては、エネルギー硬化型樹脂、熱可塑性樹脂を挙げることができる。
エネルギー硬化型樹脂としては、熱、光あるいは電子線で重合可能な樹脂を用いることができる。具体的には、メタクリル酸、アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルロールトリシクロデカンジメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、1−アクリロイルオキシ−4−メトキシナフタレンや10−アクリロイルオキシー10−メチルベンジルアントロンなどの縮合多環(メタ)アクリレート、9‐フルオレニルアクリレートや9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどのフルオレン環を有する(メタ)アクリレート、アリルカルバゾールなどのカルバゾール(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、3‐エチル‐3‐(メタクリロイルオキシメチル)オキセタンや3‐エチル‐3‐(メタクリロイルオキシメチル)オキセタンなどのオキセタン、ビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、9‐アントラセンカルボン酸ビニル、2−メタクリロイルオキシエチルイソシナネート、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0020】
なお、本発明において、(メタ)アクリレートはアクリレート、メタクリレートの少なくてもいずれか一方を含むものを意味する。また、モノマーであっても良いし、オリゴマーであっても良い。エネルギー硬化型樹脂として、単独の樹脂を用いても良いし複数種類の樹脂を組み合わせて用いても良い。さらに硬化に重合が必要な場合は重合開始剤を添加する。
重合開始剤の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。0.1質量%未満では十分な硬化性を有する材料組成物が得られず硬化度の低い硬化物になってしまう。5質量%を越えて含有させると硬化物の透明性が低下したり、太陽光による黄変は大きくなる問題がある。
【0021】
光重合開始剤は熱重合開始剤と比較して短時間で樹脂組成物を硬化させることが可能で、生産性良く製造できる。
光重合開始剤は、例えば4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジルおよびベンジル誘導体、ベンゾインおよびベンゾイン誘導体、ンゾインアルキルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントンおよびチオキサントン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種に限らず2種以上を併用することができる。また、これらの光重合開始剤の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物を用いると、十分な硬化性および硬化生成物の透明性が得られるので特に好ましい。
【0022】
エネルギー硬化型樹脂を用いた場合は、ホモジナジザー、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の分散機を用いて前記無機微粒子凝集体とエネルギー硬化型樹脂を均一に分散できる。
分散条件は用いるエネルギー硬化型樹脂の粘度、無機微粒子凝集体の種類と粒径、およびエネルギー硬化型樹脂と無機微粒子凝集体の比率から適宜設定することができる。また、溶媒、重合性希釈剤、酸化防止剤、紫外線防止剤を添加しても良い。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、加熱によって成形可能な各種の合成樹脂を用いることができる。一例を挙げれば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、非晶質ポリオレフィン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール等を用いることができる。熱可塑性樹脂として、単独の樹脂を用いても良いし複数種類の樹脂を組み合わせたコポリマーを用いても良い。
【0024】
熱可塑性樹脂を用いた場合は、溶融混練機を用いて無機微粒子凝集体と熱可塑性樹脂を均一に分散できる。例えば双腕ニーダ、加圧式ニーダ、スクリューを持った連続式溶融混練機などを用いることができる。溶融温度、回転数、スクリュー形状などの条件は熱可塑性樹脂の溶融粘度、無機微粒子凝集体の種類と粒子径、および熱可塑性樹脂と無機微粒子凝集体の比率から適宜設定することができる。
本発明の樹脂組成物中における無機微粒子凝集体の配合比率は、樹脂組成物の使用目的に応じて適宜設定される。
【0025】
本発明の無機微粒子によって光学的特性を利用した樹脂組成物を調製する場合には、エネルギー硬化型樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶質ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、無機微粒子の分散が良好であるので、カメラ、ビデオカメラあるいはカメラ付携帯電話、テレビ電話をはじめとする撮像モジュール等に用いられる撮像光学系のレンズやプリズム、プロジェクターや光源装置等に用いられる照明光学系のレンズやレンズシートに用いた場合には、樹脂組成物の透明性が良好で光学特性の優れた部材を提供することができる。
【実施例】
【0026】
実施例1
等電点が2である1次粒子径57nmの二酸化ケイ素微粒子の40質量%の水性分散液(日産化学工業製 スノーテックスYL)に硝酸を加えてpHを2とし、これに、等電点が6.2でpHが3である1次粒子径30nmの二酸化チタン微粒子の10質量%の水性分散液(シーアイ化成製TIW10WT%−G240)を滴下し、二酸化ケイ素:二酸化チタンの質量比が10:1となる混合分散液を調製した。
次いで、25℃において、混合分散液のpHをアンモニア水を添加して混合前の両者の分散液の等電点の間である4に調整した後、ホットプレート上にて80℃まで5℃/分の昇温速度で加熱し、更に24時間保持することで水を除去して無機微粒子凝集体を得た。
【0027】
実施例2
等電点5.5、pH3の1次粒子径7nmの酸化ジルコニウム微粒子の30質量%の分散液(日産化学工業製ナノユースZR−30A)に、等電点が6.2でpHが3である1次粒子径30nmの二酸化チタン微粒子の10質量%の水性分散液(シーアイ化成製TIW10WT%−G240)を滴下し、酸化ジルコニウム:二酸化チタンの質量比が2:3となる混合分散液を調製した。
次いで、25℃において、混合分散液のpHを、アンモニア水を添加して混合前の両者の分散液の等電点の間の値である6に調整した後、ホットプレート上にて80℃まで5℃/分の昇温速度で加熱し、更に24時間保持することで水を除去して無機微粒子凝集体を得た。
【0028】
実施例3
実施例1で用いて二酸化ケイ素微粒子分散液と、等電点が9の1次粒子径25nmの酸化亜鉛微粒子を水に分散した30質量%の濃度の分散液(住友大阪セメント製 ZW−143)を混合し、二酸化ケイ素と酸化亜鉛の質量比が1:2である混合分散液を調製した。
次いで、25℃において混合分散液のpHを、アンモニア水を添加して混合前の両者の分散液の等電点の間の値である7に調整した後、ホットプレート上にて80℃まで5℃/分の昇温速度で加熱し、更に24時間保持することで水を除去して無機微粒子凝集体を得た。
【0029】
実施例4
実施例1で調製した無機微粒子凝集体と、ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテック HJ560)とを、ポリエチレンに対して無機微粒子凝集体の含有量が5体積%になるように配合し、2軸バッチ式溶融混練機(東洋精機製作所製 セグメントミキサーKF6V付ラボプラストミル マイクロ)を用いて、温度150℃、ミキサー回転数300rpm、混練時間20分間の条件で混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を透過型電子顕微鏡(日立製作所製 H−800)を用いて、加速電圧200kVで無機微粒子の分散状態を観察した。その結果を図1に示す。二酸化ケイ素粒子Aと二酸化チタン粒子Bは、それぞれ凝集体としては残存しておらず、ポリエチレン中に一次粒子の大きさまで解砕・分散していた。
【0030】
実施例5
実施例1で調製した無機微粒子凝集体と、ポリカーボネート(日本ジーイープラスチックス製 レキサン121R)とを、ポリカーボネートに対して無機微粒子凝集体の含有量が5体積%になるように配合し、2軸バッチ式溶融混練機(東洋精機製作所製 セグメントミキサーKF6V付ラボプラストミル マイクロ)を用いて、温度250℃、ミキサー回転数300rpm、混練時間5分間の条件で混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S−800)を用いて、加速電圧20kVで観察し、その結果を図2に示す。実施例4と同様に無機微粒子凝集体は、一次粒子としてポリカーボネート中に解砕・分散していた。
【0031】
実施例6
無機微粒子凝集体として、実施例2で調製した酸化ジルコニウムと二酸化チタンからなる無機微粒子凝集体を用いた点を除き、実施例5と同様にして樹脂組成物を作製し、得られた樹脂組成物を、実施例5と同様に観察してその結果を図3に示す。実施例4、5と同様にポリカーボネート中に一次粒子の大きさまで解砕・分散していることが確認できた。
【0032】
比較例1
実施例1で用いた二酸化ケイ素微粒子分散液に硝酸を加えてpHを2とした。二酸化ケイ素微粒子が凝集した分散液を実施例1と同様の条件で水を除去して二酸化ケイ素微粒子凝集体を調製した。
次いで、無機微粒子凝集体として得られた二酸化ケイ素微粒子凝集体を配合した点を除き実施例4と同様に樹脂組成物を作製し、実施例5と同様にして観察し、その結果を図4に示す。
得られた樹脂組成物中には、二酸化ケイ素微粒子のみからなる無機微粒子凝集体を配合したので、二酸化ケイ素微粒子と二酸化チタン微粒子とを含む凝集体に比べて凝集力が大きいものとみられ、粒径が数十μmである粒径が大きな粒子の凝集体が存在していた。
【0033】
比較例2
実施例1で使用した二酸化チタン微粒子分散液にアンモニア水を加えてpHを6.2にした。二酸化チタン微粒子が凝集した分散液を実施例1と同様に条件で水を除去して二酸化チタン微粒子凝集体を調製した。
次いで、無機微粒子凝集体として得られた二酸化チタン微粒子凝集体を配合した点を除き実施例4と同様に樹脂組成物を作製し、実施例5と同様にして観察し、その結果を図5に示す。
得られた樹脂組成物中には、二酸化チタン微粒子のみからなる無機微粒子凝集体を配合したので、二酸化ケイ素微粒子と二酸化チタン微粒子とを含む凝集体に比べて凝集力が大きいものとみられ、粒径が数十μmである粒径が大きな粒子の凝集体が存在していた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
等電点が異なる複数種の無機微粒子分散液を混合した後に、混合分散液のpHを異なる等電点の間の値に調整することによって、複数種の無機微粒子が凝集した無機微粒子凝集体を調製したので、無機微粒子凝集体を合成樹脂と混練した場合には、無機微粒子凝集体を構成する個々の微粒子が相互に凝集することなく比較的容易に分散することが可能となり、合成樹脂に配合した場合には無機微粒子が分散した特性が優れた樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の1実施例の樹脂組成物の分散状態を説明する図面代用電子顕微鏡の写真である。
【図2】本発明の1実施例の樹脂組成物の分散状態を説明する図面代用電子顕微鏡の写真である。
【図3】本発明の1実施例の樹脂組成物の分散状態を説明する図面代用電子顕微鏡の写真である。
【図4】本発明の比較例の樹脂組成物の分散状態を説明する図面代用電子顕微鏡の写真である。
【図5】本発明の比較例の樹脂組成物の分散状態を説明する図面代用電子顕微鏡の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に組成および等電点が異なる無機微粒子を分散した複数の分散液を混合した後に酸または塩基の添加によって凝集した無機微粒子凝集体から分散媒を除去したものであることを特徴とする無機微粒子凝集体。
【請求項2】
前記無機微粒子は金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子凝集体。
【請求項3】
前記無機微粒子は、アンチモン、ケイ素、ニオブ、ジルコニウム、チタン、スズ、セリウム、アルミニウム、亜鉛、イットリウム、銅のそれぞれの酸化物から選ばれることを特徴とする無機微粒子凝集体。
【請求項4】
液体中に組成および等電点が異なる無機微粒子を分散した複数の分散液を混合した後に酸または塩基の添加で凝集した無機微粒子凝集体から分散媒を除去することによって得られた無機微粒子凝集体を、合成樹脂に配合したことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機微粒子は金属酸化物であることを特徴とする請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機微粒子は、アンチモン、ケイ素、ニオブ、ジルコニウム、チタン、スズ、セリウム、アルミニウム、亜鉛、イットリウム、銅のそれぞれの酸化物から選ばれることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
液体中に組成および等電点が異なる無機微粒子を分散した複数の分散液を混合した後に、酸または塩基の添加によって無機微粒子を凝集させた後に無機微粒子凝集体から分散媒を除去することを特徴とする無機微粒子凝集体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−24329(P2010−24329A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186467(P2008−186467)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】