説明

無機微粒子分散ペースト

【課題】焼結性及び貯蔵安定性に優れ、高いスクリーン印刷性を有する無機微粒子分散ペーストを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル樹脂と、無機微粒子と、有機溶剤と、常温固体の有機化合物を含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、前記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基にシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を30〜80重量%、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を5〜50重量%含有し、前記常温固体の有機化合物は、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満である無機微粒子分散ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結性及び貯蔵安定性に優れ、高いスクリーン印刷性を有する無機微粒子分散ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性粉末、セラミック粉末等の無機微粒子をバインダー樹脂に分散させた無機微粒子分散ペーストが、様々な形状の焼結体を得るために用いられている。特に、無機微粒子として蛍光体をバインダー樹脂に分散させた蛍光体ペーストや、低融点ガラスを分散させたガラスペーストは、プラズマディスプレイパネル等に用いられている。
また、無機微粒子としてチタン酸バリウムやアルミナをバインダー樹脂に分散させたセラミックペーストや、ニッケルや白金、パラジウムなどの金属粉を用いた導電ペーストが積層型の電子部品、例えば、セラミック基材や積層セラミックコンデンサに用いられている。
更に、太陽電池パネルの電極は、銀やアルミニウム粉を分散させたペーストをスクリーン印刷等によって塗布し、乾燥した後、焼成することにより形成されている。
【0003】
それらのペーストのうち、多くのものはスクリーン印刷を用いて印刷され、その後、焼成脱脂されることで、印刷した形状の無機像が形成される。このようなスクリーン印刷用バインダー樹脂としては、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂が従来用いられてきた。スクリーン印刷において、厚膜を印刷する場合には、樹脂間の絡み合いが少なく剛直な直鎖状構造を有し、スクリーンメッシュの透過性が高い、セルロース樹脂が適しているためである。
しかしながら、エチルセルロースは焼結性が悪く、焼結後に炭素残渣が無機微粒子の表面に残る等の問題が生じていた。
また、無機微粒子として金属微粒子を用いた導電ペーストにおいては、導電性を良くするために、焼成後の膜密度を高めることが要求されるため、導電ペースト中の金属微粒子の含有量を多くして、樹脂固形分組成を少なくする必要がある。
しかしながら、金属微粒子の組成比を高め、樹脂の組成比を下げると、金属微粒子が導電ペースト中で沈降しやすくなるという問題も生じていた。
【0004】
そこで、特許文献1では、熱分解性に優れる樹脂として、2−エチルヘキシルメタクリレート等を用いて得られる(メタ)アクリル樹脂を用いたプラズマディスプレイパネルの誘電体層用組成物が開示されている。
一方で、特許文献1では、ガラスの凝集や沈降を防止するため、ポリエーテルアミンを添加しているが、ポリエーテルアミン等のアミン系材料は、焼成時に煤となりやすく、少量を添加した場合でも、ガラスの透明性に悪影響を及ぼしていた。
【0005】
更に、特許文献2では、無機金属酸化物微粒子の分散性を向上させるため、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の水溶性樹脂を分散剤として用いることが検討されている。
このような水溶性樹脂を用いた場合、無機金属酸化物微粒子の分散性を向上させることが可能となるものの、樹脂自体の分解終了温度が高く、ガラスやウェハー基材が保持できる温度領域では分解することができなかった。また、特許文献2に水溶性樹脂として記載されているポリメチルメタクリレートやポリプロピレングリコールについては、低温で分解するが、無機微粒子の分散性に劣り、無機微粒子の沈降等の不具合を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4426767号公報
【特許文献2】特開2007−87636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、焼結性及び貯蔵安定性に優れ、高いスクリーン印刷性を有する無機微粒子分散ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル樹脂と、無機微粒子と、有機溶剤と、常温固体の有機化合物を含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、前記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基にシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を30〜80重量%、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を5〜50重量%含有し、前記常温固体の有機化合物は、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満である無機微粒子分散ペーストである。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、無機微粒子分散ペーストのバインダーとして、(メタ)アクリル樹脂を用いることを検討してきた。そして、本発明者らは、先に、シクロヘキシル(メタ)アクリレートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーとを重合して得られる(メタ)アクリル樹脂を、エチルセルロースと併用することで、ガラスペーストとして優れた特性が得られることを見出した。
しかしながら、このような技術でも、(メタ)アクリル樹脂の水酸基量が多い場合に、エチルセルロースとの相溶性が悪化し、ペースト化することができないという課題があった。また、エチルセルロースは、焼結性が悪い等の問題があるため、エチルセルロースを使用しない無機微粒子分散ペーストのバインダーが求められていた。
これに対して、本発明者らは、(メタ)アクリル樹脂として、所定構造を有するものを用い、更に、高極性の有機化合物と併用することで、エチルセルロースを用いなくても、高いスクリーン印刷性と貯蔵安定性を実現することができ、更には、エチルセルロースを添加する場合と比較してもより良い焼結性を得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、(メタ)アクリル樹脂を含有する。
上記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基にシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を30〜80重量%、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を5〜50重量%含有する。
上記(メタ)アクリル樹脂の熱分解によって生じるモノマーは、有機溶剤のように蒸発する場合もあるが、一部は再結合し、脱水、脱炭酸と組み合わさることにより、煤(ベンゼン環の集合体)として無機微粒子の表面に付着する。上記(メタ)アクリル樹脂のモノマーとして、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーのみを用いた場合は、分子中に酸素を有することに起因して、脱水や脱炭酸反応が進みやすく、焼成時に煤になりやすくなるが、本発明では、(メタ)アクリル樹脂を上述のような組成とすることで、シクロヘキシル環の立体障害により、分解終了温度を低くすることができる。更に、シクロヘキシル環が比較的安定な構造であるため、焼成終了後における無機微粒子表面への煤の残留を阻害することができる。
【0011】
上記シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分の含有量の下限は30重量%、上限は80重量%である。上記シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーの添加量が30重量%未満であると、分解終了温度が高くなり、80重量%を超えると、(メタ)アクリル樹脂の極性が低くなりすぎて、添加剤等との相溶性が悪化し、無機微粒子分散ペーストの貯蔵安定性が損なわれる可能性がある。好ましい下限は30重量%、好ましい上限は60重量%である。
【0012】
上記シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。上記シクロヘキシル(メタ)アクリレートは、ガラス転位温度が低いことから、少量で増粘することができ、無機微粒子分散ペースト中の樹脂量を低下させるとともに、スクリーン印刷性を高めることが可能となる。
【0013】
上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量の下限は5重量%、上限は50重量%である。上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分の含有量が5重量%未満であると、無機微粒子との吸着力が低下して、無機微粒子分散ペーストの貯蔵安定性が悪化し、50重量%を超えると、焼成時の煤発生量が多くなり、残留炭素量が多くなる。好ましい下限は10重量%、好ましい上限は30重量%である。
【0014】
上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノメタアクリレート等が挙げられる。
【0015】
上記(メタ)アクリル樹脂は、上記エステル置換基にシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマー及び水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分以外に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を含有していてもよい。
上記カルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されないが、メタクリル酸、イタコン酸、メタクリル酸エチルコハク酸、メタクリル酸エチルフタル酸等が挙げられる。
【0016】
上記(メタ)アクリル樹脂におけるカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分の含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は20重量%である。
上記含有量が5重量%未満であると、無機微粒子との吸着力が少なく、ペースト貯蔵安定性が悪化することがあり、20重量%以上では、ポリマー焼成時の煤発生量が多すぎ、シクロヘキシル基を持つモノマーを用いても低残留炭素性が得られないことがある。
【0017】
上記(メタ)アクリル樹脂は、分子末端に親水性官能基を有することが好ましい。上記親水性官能基は特に限定されないが、カルボニル基、アミノ基、アミド基類であることが好ましい。
分子末端にカルボニル基、アミノ基、アミド基等を有する(メタ)アクリル樹脂を用いた場合には、熱分解終了温度にはほとんど影響しない。また、ガラス粉末等の無機微粒子はカルボニル基、アミノ基、アミド基等との相互作用性が高いことから、分子末端にカルボニル基、アミノ基、アミド基等を有する(メタ)アクリル樹脂を用いた場合には、該(メタ)アクリル樹脂の一方の分子末端が無機微粒子表面に吸着し、他方は有機溶剤側へ伸びた形態となり、無機微粒子の再凝集を防ぎ、分散安定性をさらに向上させることができる。
【0018】
上記(メタ)アクリル樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量の好ましい下限は2万、好ましい上限は10万である。上記重量平均分子量が2万未満であると、無機微粒子分散ペーストは、充分な粘度が得られず、無機微粒子が沈降することがあり、上記重量平均分子量が10万を超えると、ペースト中の樹脂組成を少なくしても、スクリーン透過性が悪くなり、スクリーン印刷性が悪くなることがある。上記重量平均分子量の好ましい上限は9万であり、より好ましい上限は8万である。特に、上記(メタ)アクリル樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量が2万〜8万であると、後述する有機溶剤を用いることで少量の樹脂で充分な粘度が確保でき、かつ、印刷性に優れた無機微粒子分散ペーストが得られるため好ましい。
なお、ポリスチレン換算による重量平均分子量は、カラムとして例えばカラムLF−804(昭和電工社製)を用いてGPC測定を行うことで得ることができる。
【0019】
上記(メタ)アクリル樹脂を作製する方法は特に限定されず、例えば、カルボニル基、アミノ基、アミド基等を有する重合開始剤のもとで、上述したエステル置換基にシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマー及び水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーをフリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等の従来公知の方法で共重合する方法や、カルボニル基、アミノ基、アミド基等を有する連鎖移動剤のもとで、上述したエステル置換基にシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマー及び水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーをフリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等の従来公知の方法で共重合する方法等が挙げられる。これらの方法は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル樹脂を作製する方法においては、ラジカル重合開始剤としてカルボニル基、アミノ基、アミド基等を有する重合開始剤を用いることにより、より多くの分子末端にカルボニル基、アミノ基、アミド基等を導入することができる。なお、上記(メタ)アクリル樹脂の分子末端のみにカルボニル基、アミノ基、アミド基等が導入されたことは、例えば、13C−NMRにより確認することができる。
【0020】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける上記(メタ)アクリル樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記(メタ)アクリル樹脂の含有量が1重量%未満であると、得られる無機微粒子分散ペーストは、充分な粘度が得られず、貯蔵安定性が悪くなることがあり、無機微粒子の沈降や溶液の分離等が発生することがある。樹脂量が20重量%を超えると、得られる無機微粒子分散ペーストは、糸曳きが強く、粘着力が高くなりすぎて印刷性が悪くなることがある。より好ましくは15重量%以下である。
【0021】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満である常温固体の有機化合物を含有する。
これらは常温で固体であるが、後述する有機溶剤と組み合わせて用いることで、無機微粒子分散ペースト中に溶解させることができ、有機溶剤と同様に用いることができる。
また、上記常温固体の有機化合物は、無機微粒子分散ペーストを印刷した後、乾燥工程において有機溶剤と同じように蒸発し、焼結時の炭素残渣にはほとんど影響しない。上記常温固体の有機化合物と、後述する有機溶剤とを組み合わせて用いることにより、液状成分のみで無機微粒子分散ペーストの粘度を向上させることができ、無機微粒子分散ペースト中に添加する樹脂量を少なく抑えることができる。
【0022】
上記有機化合物は水酸基を2つ以上有する。
上記水酸基を2つ以上有することで、得られる無機微粒子分散ペーストの貯蔵安定性を高めることができ、また、水酸基と、(メタ)アクリル樹脂及び有機溶剤との相互作用により、無機微粒子分散ペーストの粘度を高めることができ、スクリーン印刷等に適した粘度とすることができる。また、水酸基を2つ以上有することが好ましい。
【0023】
また、上記有機化合物は、(炭素数/水酸基数)が5未満である。上記有機化合物の(炭素数/水酸基数)が5以上であると、上記(メタ)アクリル樹脂との相互作用が弱くなることから、優れたスクリーン印刷性を実現できず、緻密な印刷膜を形成することができない。また、(炭素数/水酸基数)は4未満であることが好ましい。
【0024】
上記常温固体の有機化合物は、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール及び2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらは常温で固体であるが、有機溶剤に溶解し、また沸点が200〜300℃であるので、スクリーン印刷等のプロセスに好ましく用いることが出来るうえ、焼結時の炭素残渣にはほとんど影響しない。
【0025】
上記常温固体の有機化合物の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は40重量%である。上記常温固体の有機化合物の含有量が5重量%未満であると、得られる無機微粒子分散ペーストは、充分な粘度が得られず、スクリーン印刷性が悪くなることがある。上記常温固体の有機化合物の含有量が40重量%を超えると、得られる無機微粒子分散ペーストの粘度、粘着力が高くなりすぎてスクリーン印刷性が悪くなることがある。
【0026】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては、芳香環又はシクロヘキシル環を有するアルコール、又は、分子中に水酸基を少なくとも1つ有する化合物からなるテルペン系溶剤が好ましい。
上記有機溶剤は、直鎖状ポリエステル又はポリエーテル系の溶剤と比較すると、上記常温固体の有機化合物との相溶性が優れており、低温でも安定して相溶させることができるため、高極性添加剤の組成比を高めることができる。
【0027】
上記芳香環又はシクロヘキシル環を有するアルコール、又は、分子中に水酸基を少なくとも1つ有する化合物からなるテルペン系溶剤は、沸点が200℃以上300℃未満であることが好ましい。上記沸点が200℃未満であると、スクリーン印刷に用いた場合、連続印刷中に無機微粒子分散ペーストが版の上で乾いてしまうため好ましくない。300℃以上であると、印刷後、乾燥工程で脱溶剤に時間がかかってしまい好ましくない。好ましくは、200℃以上、290℃未満である。
【0028】
上記芳香環又はシクロヘキシル環を有するアルコールとしては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等の多価アルコールのモノアリールエーテルが上げられ、シクロヘキシル環を有するアルコールとしては、イソボルニルシクロヘキサノール、ターシャリーブチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、エトキシシクロヘキサノール等が挙げられる。また、分子中に水酸基を少なくとも1つ有する化合物からなるテルペン系溶剤としては、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等が挙げられる。なかでも、エチレングリコールモノフェニルエーテルとジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオールは(メタ)アクリル樹脂の溶解性が良く、好ましく用いることができる。
【0029】
また、上記有機溶剤としては、上記芳香環又はシクロヘキシル環を有するアルコール、又は、分子中に水酸基を少なくとも1つ有する化合物からなるテルペン系溶剤と、常温液状で高粘度を示す溶剤とを併用してもよい。
上記常温液状で高粘度を示す溶剤としては、例えば、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(分子量118、粘度173cps)、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(分子量160.3、粘度1650cps)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(分子量146.2、粘度320cps)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(分子量104、粘度253cps)等が挙げられる。
これらの常温液状で高粘度を示す溶剤は、上記芳香環又はシクロヘキシル環を有するアルコール、又は、分子中に水酸基を少なくとも1つ有する化合物からなるテルペン系溶剤と併用することで、分子量が低い樹脂を用いて、樹脂組成比が低い場合でも、高粘度を発現することができるとともに、無機微粒子の分散性も向上するため、貯蔵安定性が良好となる。但し、上記常温液状で高粘度を示す溶剤は多量に添加すると(メタ)アクリル樹脂との相溶性が乏しくなり、無機微粒子分散ペーストの貯蔵安定性が悪化しやすくなる。
なお、本願において、「高粘度を示す」とは、20℃におけるB型粘度計評価において高粘度を示すことをいう。
【0030】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける上記有機溶剤の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は80重量%である。上記有機溶剤の含有量が10重量%未満であると、得られる無機微粒子分散ペーストの粘度、粘着力が高くなりすぎてスクリーン印刷性が悪くなることがある。上記有機溶剤の含有量が80重量%を超えると、得られる無機微粒子分散ペーストは、充分な粘度が得られず、スクリーン印刷性が悪くなることがある。
【0031】
また、本発明では、上記有機溶剤に併せて他の有機溶剤を添加してもよい。
上記他の有機溶剤は特に限定されず、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールドデシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールドデシルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノオレエートアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノステアレート、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートテトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールドデシルエーテル、等が挙げられる。
【0032】
本発明では、上記他の有機溶剤を併用する場合、全有機溶剤量に対する上記他の有機溶剤の含有量が50重量%以下であることが好ましい。上記50重量%を超えると、上記有機溶剤に対して多くなりすぎ、本発明の効果が損なわれるおそれがある。
【0033】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子は特に限定されず、例えば、ガラス粉末、セラミックス粉末、蛍光体微粒子、珪素酸化物等、金属微粒子等が挙げられる。
【0034】
上記ガラス粉末は特に限定されず、例えば、酸化ビスマスガラス、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、亜鉛ガラス、ボロンガラス等のガラス粉末や、CaO−Al2O3−SiO2系、MgO−Al2O3−SiO2系、LiO2−Al2O3−SiO2系等の各種ケイ素酸化物のガラス粉末等が挙げられる。
また、上記ガラス粉末として、PbO−B2O3−SiO2混合物、BaO−ZnO−B2O3−SiO2混合物、ZnO−Bi2O3−B2O3−SiO2混合物、Bi2O3−B2O3−BaO−CuO混合物、Bi2O3−ZnO−B2O3−Al2O3−SrO混合物、ZnO−Bi2O3−B2O3混合物、Bi2O3−SiO2混合物、P2O5−Na2O−CaO−BaO−Al2O3−B2O3混合物、P2O5−SnO混合物、P2O5−SnO−B2O3混合物、P2O5−SnO−SiO2混合物、CuO−P2O5−RO混合物、SiO2−B2O3−ZnO−Na2O−Li2O−NaF−V2O5混合物、P2O5−ZnO−SnO−R2O−RO混合物、B2O3−SiO2−ZnO混合物、B2O3−SiO2−Al2O3−ZrO2混合物、SiO2−B2O3−ZnO−R2O−RO混合物、SiO2−B2O3−Al2O3−RO−R2O混合物、SrO−ZnO−P2O5混合物、SrO−ZnO−P2O5混合物、BaO−ZnO−B2O3−SiO2混合物等のガラス粉末も用いることができる。なお、Rは、Zn、Ba、Ca、Mg、Sr、Sn、Ni、Fe及びMnからなる群より選択される元素である。
特に、PbO−B2O3−SiO2混合物のガラス粉末や、鉛を含有しないBaO−ZnO−B2O3−SiO2混合物又はZnO−Bi2O3−B2O3−SiO2混合物等の無鉛ガラス粉末が好ましい。
【0035】
上記セラミック粉末は特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。
また、透明電極材料に用いられるナノITOや色素増感太陽電池に用いられるナノ酸化チタン等も好適に用いることができる。
上記蛍光体微粒子は特に限定されず、例えば、蛍光体物質としては、ディスプレイ用の蛍光体物質として従来知られている青色蛍光体物質、赤色蛍光体物質、緑色蛍光体物質などが用いられる。青色蛍光体物質としては、例えば、Y2SiO5:Ce系、CaWO4:Pb系、BaMgAl14O23:Eu系、BaMgAl16O27:Eu系、BaMg2Al14O23:Eu系、BaMg2Al14O27:Eu系、ZnS:(Ag,Cd)系のものが用いられる。赤色蛍光体物質としては、例えば、Y2O3:Eu系、Y2SiO5:Eu系、Y3Al5O12:Eu系、Zn3(PO4)2:Mn系、YBO3:Eu系、(Y,Gd)BO3:Eu系、GdBO3:Eu系、ScBO3:Eu系、LuBO3:Eu系のものが用いられる。緑色蛍光体物質としては、例えば、Zn2SiO4:Mn系、BaAl12O19:Mn系、SrAl13O19:Mn系、CaAl12O19:Mn系、YBO3:Tb系、BaMgAl14O23:Mn系、LuBO3:Tb系、GdBO3:Tb系、ScBO3:Tb系、Sr6Si3O3Cl4:Eu系のものが用いられる。その他、ZnO:Zn系、ZnS:(Cu,Al)系、ZnS:Ag系、Y2O2S:Eu系、ZnS:Zn系、(Y,Cd)BO3:Eu系、BaMgAl12O23:Eu系のものも用いることができる。
【0036】
上記金属微粒子は特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、アルミニウム、タングステンやこれらの合金等からなる粉末等が挙げられる。
また、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等との吸着特性が良好で酸化されやすい銅や鉄等の金属も好適に用いることができる。これらの金属粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける上記無機微粒子の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は90重量%である。
上記無機微粒子の含有量が20重量%未満であると、得られる無機微粒子分散ペーストは、充分な粘度が得られず、スクリーン印刷性が悪くなることがあり、上記無機微粒子の含有量が90重量%を超えると、得られる無機微粒子分散ペーストは、粘度が高くなりすぎてスクリーン印刷性が悪くなることがある。
【0038】
本発明の導電性微粒子分散ペーストは、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて他の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0039】
本発明の無機微粒子分散ペーストを作製する方法は特に限定されず、従来公知の攪拌方法が挙げられ、具体的には、例えば、上記(メタ)アクリル樹脂、上記有機溶剤、上記有機化合物、上記無機微粒子及び必要に応じて添加される他の成分を3本ロール等で攪拌する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、焼結性及び貯蔵安定性に優れ、高いスクリーン印刷性を有する無機微粒子分散ペーストを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。なお、下記において、有機溶剤の粘度は20℃条件下でBH型粘度計(TOKI産業社製)を用いて測定したものである。
【0042】
(重合例1)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)50重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)50重量部、連鎖移動剤としてメルカプトプロパンジオール1.0重量部、有機溶剤として酢酸エチル100重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
【0043】
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯槽が沸騰するまで昇温した。重合開始剤としてジアシルパーオキサイド(日油社製;パーロイル355)を酢酸エチルで分散させた溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤を含む酢酸エチル溶液を数回添加し、合計で(メタ)アクリルモノマー100重量部に対して2重量部の重合開始剤を添加した。
【0044】
重合開始から7時間後、反応液を室温まで冷却し重合を終了させた。これにより(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は4万であった。
【0045】
(重合例2)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)95重量部、グリセロールメタクリレート(GLMA)5重量部、連鎖移動剤としてメルカプトプロパンジオール0.4重量部、有機溶剤として酢酸エチル50重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した。重合開始剤としてジアシルパーオキサイド(日油社製;パーロイル355)を酢酸エチルで分散させた溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤を含む酢酸エチル溶液を数回添加し、合計で(メタ)アクリルモノマー100重量部に対して2重量部の重合開始剤を添加した。
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/GLMA))の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は8万であった。
【0046】
(重合例3)
2Lセパラプルフラスコに仕込む(メタ)アクリルモノマー組成をシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)80重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20重量部、連鎖移動剤1.1重量部としたこと以外は重合例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は3万であった。
【0047】
(重合例4)
2Lセパラプルフラスコに仕込む(メタ)アクリルモノマー組成をシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)50重量部、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)50重量部、連鎖移動剤0.8重量部としたこと以外は重合例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HPMA))の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は5万であった。
【0048】
(重合例5)
2Lセパラプルフラスコに仕込む(メタ)アクリルモノマー組成をメチルメタクリレート(MMA)90重量部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)40重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20重量部、連鎖移動剤1重量部としたこと以外は重合例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は4万であった。
【0049】
(重合例6)
2Lセパラプルフラスコに仕込む(メタ)アクリルモノマー組成をメチルメタクリレート(MMA)50重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)50重量部としたこと以外は重合例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/HEMA))の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は4万であった。
【0050】
(重合例7)
2Lセパラプルフラスコに仕込む(メタ)アクリルモノマー組成をブチルメタクリレート(BMA)30重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)70重量部としたこと以外は重合例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂(Poly(BMA/HEMA))の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は4万であった。
【0051】
(重合例8)
2Lセパラプルフラスコに仕込む(メタ)アクリルモノマー組成をシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)40重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)60重量部としたこと以外は重合例4と同様にして(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は5万であった。
【0052】
(重合例9)
2Lセパラプルフラスコに仕込む(メタ)アクリルモノマー組成をシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)97重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)3重量部としたこと以外は重合例2と同様にして(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は8万であった。
【0053】
(重合例10)
2Lセパラプルフラスコに仕込む(メタ)アクリルモノマー組成をシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)100重量部としたこと以外は重合例3と同様にして(メタ)アクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。
重合例1と同様に重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は3万であった。
【0054】
(実施例1)
重合例1で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、エチレングリコールモノフェニルエーテルを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。樹脂固形分を乾燥重量法により評価し、追加溶剤としてエチレングリコールモノフェニルエーテル、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。
無機微粒子としてアルミニウム微粒子(平均粒子径5μm)、と、ファイヤースルーを可能にする低融点ガラス微粒子(平均粒子径1μm)を表1の組成で添加し、高速撹拌装置を用いて充分混練した後、アルミニウム微粒子が扁平につぶれないように留意しながら3本ロールミルにて処理を行い、導電性微粒子分散ペーストを調製した。
【0055】
(実施例2)
重合例2で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/GLMA))の酢酸エチル溶液に、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてジエチレングリコールモノフェニルエーテル、有機化合物として2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。
無機微粒子として銀粉(平均粒子径1.0μm)と、ファイヤースルーを可能にする低融点ガラス微粒子(平均粒子径1μm)を表1の組成で添加し、高速攪拌機と三本ロールとで混練することにより、導電性微粒子分散ペーストを得た。
【0056】
(実施例3)
重合例3で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、テルピネオールを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてテルピネオール、有機化合物としてトリメチロールプロパンを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。
無機微粒子として緑色蛍光体(ZnSiO;Mn、日亜化学社製))を用い、表1の組成で添加した後、高速攪拌機と三本ロールとで混練することにより、蛍光体ペーストを得た。
【0057】
(実施例4)
重合例4で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HPMA))の酢酸エチル溶液に、ジヒドロテルピネオールを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてジヒドロテルピネオール、有機化合物としてトリメチロールプロパンを用いて表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。
無機微粒子として平均粒子径2.0μmのガラス微粒子(SiO2を32.5重量%、B2O3を20.5重量%、ZnOを18重量%、Al2O3を10重量%、BaOを3.5重量%、Li2Oを9重量%、Na2Oを6重量%、SnO2を0.5重量%含有)を表1の組成で添加し、高速攪拌機と三本ロールとで混練することにより、ガラスペーストを得た。
【0058】
(実施例5)
重合例5で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、エチレングリコールモノフェニルエーテルを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてエチレングリコールモノフェニルエーテル、有機化合物として有機化合物として2,2−ジメチル‐1,3−プロパンジオールを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。
無機微粒子として平均粒子径2.0μmのガラス微粒子(SiO2を32.5重量%、B2O3を20.5重量%、ZnOを18重量%、Al2O3を10重量%、BaOを3.5重量%、Li2Oを9重量%、Na2Oを6重量%、SnO2を0.5重量%含有)を表1の組成で添加し、高速攪拌機と三本ロールとで混練することにより、ガラスペーストを得た。
【0059】
(比較例1)
重合例6で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、エチレングリコールモノフェニルエーテルを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてエチレングリコールモノフェニルエーテル、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。その後、表1の組成比になるよう配合を行い、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0060】
(比較例2)
重合例7で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(BMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、エチレングリコールモノフェニルエーテルを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてエチレングリコールモノフェニルエーテル、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。その後、表1の組成比になるよう配合を行い、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0061】
(比較例3)
重合例8で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、ジヒドロテルピネオールを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてジヒドロテルピネオール、有機化合物としてトリメチロールプロパンを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。その後、表1の組成比になるよう配合を行い、実施例4と同様にしてガラスペーストを作製した。
【0062】
(比較例4)
重合例9で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてジエチレングリコールモノフェニルエーテル、有機化合物として2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。その後、表1の組成比になるよう配合を行い、実施例2と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0063】
(比較例5)
重合例10で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA))の酢酸エチル溶液にテルピネオールを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてテルピネオール、有機化合物としてトリメチロールプロパンを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。その後、表1の組成比になるよう配合を行い、実施例3と同様にして蛍光体ペーストを作製した。
【0064】
(比較例6)
重合例7で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(BMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、ジヒドロテルピネオールを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてジヒドロテルピネオール、有機化合物としてミリスチルアルコールを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。その後、表1の組成比になるよう配合を行い、実施例4と同様にしてガラスペーストを作製した。
【0065】
(比較例7)
重合例7で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(BMA/HEMA))の酢酸エチル溶液に、テルピネオールを加え、減圧処理を行うことで溶媒置換を行った。追加溶剤としてテルピネオール、さらにエチルセルロースSTD100をテルピネオールに溶解させた溶液、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを表1に記載された組成比になるように加え、ビヒクル組成物を得た。その後、表1の組成比になるよう配合を行い、実施例3と同様にして蛍光体ペーストを作製した。
【0066】
【表1】

【0067】
<評価>
実施例及び比較例で得られたビヒクル組成物、及び、無機微粒子分散ペーストについて以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0068】
(1)ビヒクル貯蔵安定性
実施例及び比較例で得られたビヒクル組成物について、4℃にて24時間養生後、各成分の相溶状態を促進しビヒクル組成物の状態を確認した。白濁や液分離を起こした場合を×、状態に変化が見られなかった場合を○とした。
【0069】
(2)ビヒクル焼結性評価
実施例及び比較例で得られたビヒクル組成物を120℃で10分間乾燥させて、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をTG−DTA(SDT2960、TA instruments社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。
○:樹脂組成物の分解終了温度が400℃以下であった。
×:樹脂組成物の分解終了温度が400℃を超えるものであった。
【0070】
(3)粘度評価
得られた無機微粒子分散ペースト組成物について、B型粘度計(DVII+Pro、BROOK FILED社製)を用い、温度25℃、回転数10rpmの条件下における粘度η(cps)を測定した。
【0071】
(4)ペースト貯蔵安定性評価
得られた導電性微粒子分散ペーストを、23℃、湿度50%の恒温恒湿下にて貯蔵した。1ヶ月後に確認し、ペーストの分離沈降等ないものを○、分離沈降しているものを×とした。
【0072】
(5)スクリーン印刷性
実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペーストを、スクリーン印刷機(マイクロテック社製「MT−320TV」)、スクリーン製版(東京プロセスサービス社製、SX320、乳剤20μ、ライン/スペース:100μ/500μ、スクリーン枠:320mm×320mm)、印刷ガラス基板(ソーダーガラス:150mm×150mm、厚み:1.5mm)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下にて30枚連続して印刷を行った。
印刷後、ガラス板を120℃×10分の条件下で送風オーブンにて溶媒を乾燥した。得られた印刷像を顕微鏡によって観察し、印刷像がムラなく厚く、ラインパターンが版の設計通り真っ直ぐである場合を○、薄かったり、くびれがあったり、ムラがある場合を×とした。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示すように、実施例1〜5で得られた無機微粒子分散ペーストは、焼結性、貯蔵安定性が良好で、スクリーン印刷性も良好であった。
一方で、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを用いなかった比較例1及び2、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの添加量の多い比較例3は、焼結性が悪い結果となった。逆に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの添加量の少ない比較例4、5は、ビヒクル組成物の貯蔵安定性が悪く、無機微粒子分散ペーストのスクリーン印刷性も悪かった。
水酸基1つの有機化合物を用いた比較例6ではビヒクルの貯蔵安定性が悪く、エチルセルロースを添加した比較例7では焼結性が悪くなった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、焼結性及び貯蔵安定性に優れ、高いスクリーン印刷性を有する無機微粒子分散ペーストを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂と、無機微粒子と、有機溶剤と、常温固体の有機化合物を含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基にシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を30〜80重量%、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を5〜50重量%含有し、
前記常温固体の有機化合物は、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満である
ことを特徴とする無機微粒子分散ペースト。
【請求項2】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が20000〜100000であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子分散ペースト。
【請求項3】
常温固体の有機化合物が、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール及び2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の無機微粒子分散ペースト。
【請求項4】
有機溶剤は、芳香環又はシクロヘキシル環を有するアルコール、又は、分子中に水酸基を少なくとも1つ有する化合物からなるテルペン系溶剤であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の無機微粒子分散ペースト。

【公開番号】特開2012−184316(P2012−184316A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47926(P2011−47926)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】