説明

無機有機ハイブリッド耐薬品性塗料

シラン硬化性耐薬品性塗料組成物ならびにこの組成物の製造方法および使用方法を提供する。この組成物は、たとえば、化学兵器剤への耐久性があり、有用である。一実施形態は、湿気硬化性シラン官能基を介して架橋された相互侵入型無機有機ポリマー網目構造の耐久性耐薬品性耐食性塗膜を提供する。塗料は、たとえば、2つの同時プロセスまたは逐次プロセスにより製造可能である。第1のプロセスでは、遊離アミン部位または遊離ヒドロキシル部位を有するシリカやアルミナのような無機材料が、オキシラン、アミン、またはヒドロキシルのような末端官能基を有する有機部分と反応する。第2のプロセスでは、この物質が、イソシアナト官能性、アミノ官能性、または他の官能性のアルコキシシラン基、メトキシシラン基、アシルオキシシラン基、または他のシラン基とさらに反応する。末端官能性部分は、アルコキシシラン、メトキシシラン、アシルオキシシラン、または他のシランになり、これらのシランは、湿気と接触したとき、および/または、紫外光を吸収したときにもう1つのそのようなシラン基と架橋可能である。他のプロセスは、当業者であればわかるであろう。場合により、可撓性、硬度、および他の望ましい物理的性質をさらに付与するために、シラン末端ポリマーをさらに添加することが可能である。塗料は、たとえば、環境にやさしい高性能の工業用途、軍事用途、および自動車用途をはじめとする種々の用途に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トップコート系およびプライマー系は、種々の基材、たとえば、アルミニウム、鋼、および複合基材を保護するために必要とされる。塗料系は、基材の腐食を最小限に抑えるために、ならびに自然な操作環境、工業的な操作環境、自動車の操作環境、および軍事的な操作環境において工業化学物質および環境化学物質による汚染/劣化に耐えるようにするために、使用される。これらの用途のトップコートは、歴史的には、二液型溶剤性のウレタン系およびアクリル系に基づくものであった。より最近になって、室温で7日間以内に完全硬化性を達成する一液型溶剤性および二液型水分散性のウレタントップコートが開発された。この技術は、現在、所望の0g/lのVOCレベルを優に超える210〜420g/lの揮発性有機化合物(VOC)レベルを有している。アクリルおよびウレタンのトップコート技術により、満足すべき性能の塗料が得られるが、多液型塗料を用いる分野では、液混合誤差や塗布誤差のような要件を生じ、許容しうる結果を得るには至っていない。同様に、プライマー塗料も、化学物質による汚染および劣化に対して少なくともいくらかの耐性を提供しなければならない。良好な塗料凝集強度ならびに基材−プライマー境界およびプライマー−トップコート境界での良好な接着性は、塗料の全体性能に対し不可欠である。プライマーおよびトップコートはいずれも、最新の工業用、自動車用、および軍事用の系の全体性能に機能性を付与する。
【0003】
耐薬品性および耐化学剤性の塗料
耐化学剤性塗料(CARC)は、1985年以来、米軍用の標準的カモフラージュであった。脂肪族ジイソシアネートと飽和ポリエステルとを含む二液型ウレタンは、MIL−C−46168仕様を満たすべくその時期に導入された。そのような塗料は、より長い耐用寿命および改良された耐食性を有し、化学兵器剤による浸透に耐える。Escarsegaら(米国特許第5,691,410号明細書)は、ポリウレタンとポリイソシアネートと、溶剤として主に水とを含む水分散性多液型CARCを教示する。この塗料は、VOCの顕著な減少を達成したが、依然として塗布箇所での混合を必要とした。
【0004】
シラン末端ポリマー塗料
シラン末端ポリマー、特にシラン末端ポリウレタン(STP)は、シーラント工業および接着剤工業で広範囲に使用されてきた。また、最近では工業用塗料に使用されている。Frischらは、STPに関する多数の技術を特許請求している。たとえば、米国特許第6,887,964号明細書および同第6,833,423号明細書には、反応性シラン残基を有する湿気硬化性ポリエーテルウレタンと、イソシアナト残基へのアルコキシシランまたはアシルオキシシランの反応性を介したシーラント、接着剤、および塗料としてのその使用とが記載されている。米国特許第6,855,759号明細書には、シランで表面処理されたシリカ粒子およびその製造プロセスが提示されている。米国特許第6,784,272号明細書には、非スズ触媒を用いたメタルフリーシラン末端ポリウレタンの調製法が示されている。米国特許第6,197,912号明細書には、シリコンキャップ化湿気硬化性組成物およびその作製方法が示されており、米国特許第6,646,048号明細書には、ガラス結合に関連してシラン官能性アクリルポリマー組成物が示されている。また、シラン末端ポリウレタンがさらに記載されている米国特許第5,554,709号明細書、同第4,857,623号明細書、同第5,227,434号明細書、同第3,632,557号明細書、同第3,979,344号明細書、同第4,345,053号明細書、および同第4,645,816号明細書も参照されたい。
【0005】
シラン末端エポキシポリマーの技術がこれまでに実用化されてきた。チェコスロバキア特許第245889号明細書(1985年、芳香族ジシラン)には、アミノプロピルトリアルコキシシランを用いてビスフェノール−Aエポキシ樹脂を官能基化する方法が教示されている。この方法は、前記化合物の調製およびガラスファイバーコーティングとしてのその有用性を記述する。日本では、シラン末端エポキシ樹脂と、食品工業用ガスバリヤーフィルムとしてのその有用性について、多くの報告がなされてきた。日本特許特開2001−192485号公報、同2001−191445号公報、同2000−326448号公報、および同2000−327817号公報には、トリアルコキシシラン末端ビスフェノール−ジグリシジルエーテルおよびトリアルコキシシラン末端レゾルシノールジグリシジルエーテルの調製方法およびそれらの有用性が教示されている。国際公開第01/08639号パンフレットには、歯科学分野における有用性に関して、いくつかのトリアルコキシシラン末端アクリルマクロマーおよびトリアルコキシシラン末端アクリルエポキシマクロマーの有用性が記載されている。これらの特許のいずれにおいても、水蒸気を用いてアルコキシシラン部分をシラノールに加水分解し、次に、シラノールを縮合させて架橋しポリマー網目構造にすることにより、モノマー/マクロマーを大きいポリマー網目構造の形態に硬化させる方法が記載されている。
【0006】
表面改質金属酸化物
金属酸化物は、多くの場合、塗料として使用すべく改質可能な表面を有する粒子として存在する。たとえば、金属酸化物とオキシランポリマーとから生成されるオキシランプレポリマー材料と方法とが記載されている、Keehanによる米国特許第5,026,816号明細書を参照されたい。また、特殊形態の酸化アルミニウムであるアルモキサンと反応性ポリマーとの反応に基づくポリマー組成物が教示されている、Cookらによる米国特許第6,369,183号明細書、および再凝集を防止することにより分散性を増大させるためにシリカ粒子にシラン処理を施すことが記載されている、工藤らによる米国特許第6,855,859号明細書も参照されたい。
【0007】
こうした研究および他の関連研究にもかかわらず、現在の耐薬品性耐食性塗料系には2つの点で問題が残っている。第1に、こうした塗料で使用されるVOC溶剤は、環境に影響を及ぼし、たとえば、スモッグの生成に直接寄与する可能性がある。結果として、塗料業界は、その指定塗料中のVOC含有率を低減させるという積極的な立場をとっている。
【0008】
一般に現在の塗料系が抱えている第2の問題は、ウレタンの使用に起因するものであり、塗料塗布者の健康への影響に関連する。潜在的VOC溶剤に加えて、ウレタン中に見いだされるイソシアネートは、呼吸器系の問題を引き起こすことが知られており、強烈な皮膚感作物質および粘膜感作物質である(United States Naval Flight Surgeon’s Manual:Third Edition 1991:Chapter 21:Toxicology:Isocyanate)。ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)への暴露、たとえば、現在のウレタン塗料のスプレー塗布時に放出されるHDI含有空中浮遊ドロップレットの吸入に関して、健康に有害な作用を及ぼすと警鐘を鳴らすことには理由が存在する。全身的作用の研究の結果、吸入暴露が喘息、息切れ、および他の呼吸促迫作用を引き起こす可能性があることが確認されている(International Consensus Report on:Isocyanates−Risk assessment and management(http://www.arbeidstilsynet.no/publikasjoner/rapporter/pdf/rapport1c.pdf))。イソシアネート材料の安全な取扱いを行うには、送気マスク、および、未硬化塗料の吸入や皮膚への接触が確実に回避できるようにする防護服を用いて、こうした蒸気に暴露される者を保護することが必要である。これらの問題の両方を軽減または排除する耐薬品性耐食性塗料を実現することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
多くの現代の塗料系が抱えている問題は、架橋用骨格として無機媒体を使用した無機有機ハイブリッド塗料組成物によるシラン架橋を用いることにより、軽減可能である。無機材料と、オキシラン、アミン、またはヒドロキシルのような末端官能性残基を有する複数の有機結合部との組合せを、シラン残基との反応によりさらに修飾する。この結果、末端官能性残基は、湿気との接触時にもう1つのシラン残基と架橋しうるアルコキシシラン、メトキシシラン、アシルオキシシラン、または他のシランになる。したがって、一実施形態では、同時にまたは逐次的に行われうる2つの反応を用いて、一液型塗料組成物を形成する。
【0010】
さまざまな材料を用いて本明細書に記載の一液型塗料組成物を形成し、使用することが可能である。次に記載されるように、さまざまな無機材料、カップリングされる有機化合物(以下、「有機部分」)、およびシラン化学構造(Silane Chemistry)を利用することが可能である。いくつかの実施形態では、本開示の技術を用いて形成された塗料は、0g/l〜210g/l(たとえば、0〜100g/l、0〜50g/l、10〜20g/l)のVOCを有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好適な無機材料
好適な無機材料は、少なくとも1個の加水分解性酸素を含む無機酸化物である。たとえば、本技術で使用される無機材料は、1以上の金属酸化物粒子を含む。金属酸化物の酸素原子は、こうした酸素原子が有機部分と自由に相互作用するように、粒子の表面で結合されている。本技術で使用される無機材料の例としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ニッケル、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、およびこれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されるものではない。シリカおよび/または酸化アルミニウムは、2種の好ましい酸化物である。最も好ましくは、シリカが使用される。粒子サイズは、1μm〜1mmの範囲内の平均直径を有する粒子であるミクロンスケールの粒子、および1nm〜1μmの範囲内の平均直径を有する粒子であるナノスケールの粒子をはじめとして、広い直径範囲にわたりうる。たとえば、一実施形態では、粒子は、0.5nm〜10nmの範囲の直径を有しうる。別の実施形態では、粒子は、10nm〜100nmまたは10nm〜1000nmの範囲の平均直径を有しうる。他の実施形態では、粒子は、500nm〜500μmの範囲の平均直径を有しうる。もう1つの実施形態では、粒子は、10μm〜1mmの範囲の平均直径を有しうる。他の範囲もまた可能である。こうした粒子は、硬化時の収縮を低下させたり、熱膨張係数を減少させたり、熱伝導率を向上させたり、硬化塗料の耐久性および硬度を増大させたりするのに役立ちうる。より小さい直径の粒子(たとえば、0.5nm〜500nm、10nm〜100nm、5nm〜50nm)は、塗料の機械的特性および耐衝撃性を向上させうるが、こうした粒子の充填率が高すぎると塗料が粘稠になりすぎて、簡単な製造ができなくなる。より大きい直径の粒子(たとえば、10μm〜100μm、50μm〜500μm、100μm〜1mm)は、より小さい直径の粒子により付与される耐久性および硬度の利点を有意に損なうことなく他の所望の性質を達成するために、小さい直径の粒子との混合物の形態で使用することができる。
【0012】
無機材料へのカップリングに好適な有機部分
無機材料へのカップリングのための有機部分は、無機材料上の加水分解性酸素と反応する官能基を有していなければならない。そのような部分としては、オキシラン、アミン、ヒドロキシル、カルボキシ、およびチオール(たとえば、炭素数1〜2000個の有機部分)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。カップリング反応を誘導または加速するために触媒を添加することが可能である。たとえば、Keehanは、ジオキシランとシリカとの反応におけるイミダゾール触媒の使用を教示している(米国特許第5,026,816号明細書)。ヒドロキシル部分およびチオール部分を用いる場合、前記部分と無機材料または他の材料の表面との縮合を加速するために、第三級アミン触媒を使用することが可能である。スズ系触媒やチタン系触媒のような触媒を使用することも可能である。
【0013】
シラン化学構造
シラン化学構造としては、有機部分と反応して、末端反応性シラン基を含む炭素数1〜2000の有機部分を形成する官能基を有するものが選択される。そのような官能基としては、アミノ官能基、メルカプト官能基、イソシアナト官能基、およびエポキシド官能基が挙げられる。これらの官能基は、1〜10炭素長、より好ましくは1〜3炭素長の炭化水素鎖を介してケイ素原子に結合される。ケイ素原子と官能基との間の炭化水素主鎖に、炭化水素側鎖を結合することが可能である。こうした側鎖により、立体障害を提供したり、および/または、有機部分とシランとの間のカップリング反応の速度を有利に変化させたりすることが可能である。アミノ官能基の場合、アミノ基は第一級アミンまたは第二級アミンでありうる。また、第二級アミンの場合、もう1つの炭化水素鎖は、より大きい立体障害を生じるように、および/または、もう1つのケイ素原子を結合させてビス−アミノシランを生成するように結合可能である。また、ケイ素原子には、2個または3個のアルコキシ基も結合される。アルコキシ基は、塗料が表面に塗布された後、大気中の湿気により加水分解される。次に、得られたシラノール官能基は、縮合して架橋を形成し、それにより塗料を硬化させる。場合により、縮合は、ジブチルスズジラウレートなどの触媒の存在下で行われる。許容しうるシラン化学構造の例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、N−エチル−アミノイソブチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、およびγ−イソシアナトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0014】
反応条件/使用条件
有機部分を無機材料にカップリングする反応は、当該技術分野で公知である。教示は、Keehanらによりなされている。一例(米国特許第5,026,816号明細書)では、レゾルシノールジグリシジルエーテルとシリカとイミダゾール触媒とを、100〜135℃の初期温度で高剪断ミキサーにより30分間〜2時間混合して、存在する全ての湿気を蒸発させる。温度を140〜220℃の所定温度に上昇させて、反応を1〜4時間進行させる。全ての残留湿気をより完全に除去するために、混合および反応を減圧下で(under vacuum)行ってもよい。
【0015】
シラン化学構造としては、当該技術分野で公知の反応により有機部分と反応する官能基を有するものが選択される。一例では、乾燥した環境中、たとえばアルゴンガスシール下60〜80℃で、アミノシランをエポキシ部分と共に30分間〜2時間混合する。この工程で調製されるシリル化有機無機ハイブリッドの早期硬化が開始されないように混合するために、湿気を含まない環境を保持することが重要である。着色顔料、艶消し剤、溶剤、レオロジー改質剤、および当該技術分野で公知の他の添加剤を添加することにより、シリル化有機無機ハイブリッドを、ブラシ塗布またはスプレー塗布に好適な完成塗料製品の形態になるように配合することが可能である。
【0016】
望ましい実施形態では、湿気との接触により、および/または、紫外光により硬化される一液型系として塗料組成物が提供される。そのような湿気および光は、環境から、たとえば空気中の湿分から、供給可能である。一液型組成物を用いることにより、当該技術分野で一般に教示されるような第2の成分を反応に使用する複雑さを最小限に抑えることが可能である。たとえば、Keehanにより教示されるような反応性オキシラン系は、硬化プロセスを完了させるためにエポキシ硬化剤との反応を必要とする。Cookらにより教示されたカルボキシレートアルモキサンの場合、高分子化合物を形成するために「化学反応性置換基」が必要とされる。
【実施例】
【0017】
実施例1
容器内に277gの水素化ビスフェノール−Aジグリシジルエーテルを仕込み、85gのシリカおよび0.4gのイミダゾール触媒と混合する。容器を減圧下に配置して激しく2時間撹拌する。減圧下のまま、混合物を345°Fまで2時間加熱する。200°Fまで冷却し、アルゴンで満たし、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン182gを添加する。3回のアルゴンパージを1サイクル行う。アルゴン下で系を251°Fまで、穏やかに2時間加熱する。系を室温まで冷却し、乾燥させた無水顔料混合物を添加して色付けする。この実施例では、38.9gのイエロー42、3.4gの赤色酸化鉄、0.6gのカーボンブラック、および117.1gの二酸化チタンを添加することにより、黄褐色を生成させた。混合物を減圧下で迅速に撹拌して、顔料を分散させた。
【0018】
上記樹脂混合物から58.6gの樹脂を取り、ポリプロピレンビーズ9.0g、有機処理シリカ6.0g、およびエアロゲル0.1gと混合することにより、塗料を調製した。p−クロロトリフルオロメチルベンゼン85gで溶液を希釈した。これに、ジブチルスズジラウレート0.5gを硬化触媒として添加した。この溶液は、基材にスプレー塗布可能である。
【0019】
25時間硬化させた後(環境中の湿気により)、この混合物から形成された塗膜は、2.5の85°光沢、1.0の60°光沢を呈し、2−ブタノンおよびメチレンクロリド双方の250回の往復摩擦に耐えた。塗膜はまた、酢酸(水中10%)中への1時間30分の浸漬に耐えて残存し、除染液DS−2への3日間の暴露にも耐えて残存した。
【0020】
実施例2
容器内に250gの水素化ビスフェノール−Aジグリシジルエーテルを仕込み、77gのシリカおよび0.5gのイミダゾール触媒と混合する。容器を減圧下に配置して、激しく2時間撹拌する。減圧下のまま、混合物を345°Fまで2時間加熱する。200°Fまで冷却し、アルゴンで満たし、顔料混合物を添加して色付けする。この実施例では、緑色塗料が望まれた。これを達成すべく、カーボンブラック4.048gとHostapermグリーン36.08gとBayferroxアイアンイエロー120.16gとの顔料混合物を添加して、減圧下250°Fの温度で分散した。200°Fまで冷却してアルゴンで満たした後、N,N−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン302gを添加した。3回のアルゴンパージを1サイクル行ってから減圧処理する。減圧下で系を、251°Fまで穏やかに2時間加熱する。
【0021】
上記樹脂混合物から55.0gの樹脂を取り、ポリプロピレンビーズ9.0g、シリカ6.0g、およびエアロゲル0.1gと混合することにより、塗料を調製した。p−クロロトリフルオロメチルベンゼン85gで溶液を希釈した。これに、ジブチルスズジラウレート0.5gを硬化触媒として添加した。この溶液は、基材にスプレー塗布可能である。
【0022】
24時間硬化させた後(環境中の湿気により)、塗膜は、依然として軟質であり流動可能であった。塗膜は、48時間後、指触乾燥状態であった。1週間硬化させた後、この混合物から形成された塗膜は、1.7の85°光沢、0.5の60°光沢を呈し、2−ブタノンの200回の往復摩擦に耐えた。塗膜はまた、酢酸(水中10%)中への1時間10分間の浸漬に耐えて残存した。
【0023】
実施例3
容器内に376gの水素化ビスフェノール−Aジグリシジルエーテルを仕込み、115.4gのシリカおよび0.5gのイミダゾール触媒と混合する。容器を減圧下に配置して激しく2時間撹拌する。減圧下のまま、混合物を345°Fまで2時間加熱する。200°Fまで冷却し、アルゴンで満たし、顔料混合物を添加して色付けする。この実施例では、緑色塗料が望まれた。これを達成すべく、カーボンブラック6gとHostapermグリーン54gとBayferroxアイアンイエロー180gとの顔料混合物を添加して、減圧下250°Fの温度で分散した。200°Fまで冷却してアルゴンで満たした後、N−エチル−2−メチルプロピルトリメトキシシラン243gを添加した。3回のアルゴンパージを1サイクル行ってから減圧処理する。減圧下で系を、251°Fまで穏やかに2時間加熱する。
【0024】
上記樹脂混合物から55.0gの樹脂を取り、ポリプロピレンビーズ9.0g、シリカ6.0g、およびエアロゲル0.1gと混合することにより、塗料を調製した。p−クロロトリフルオロメチルベンゼン85gで溶液を希釈した。これに、ジブチルスズジラウレート0.5gを硬化触媒として添加した。この溶液は、基材にスプレー塗布可能である。
【0025】
24時間硬化させた後(環境中の湿気により)、塗膜は指触乾燥状態であった。5日間硬化させた後、この混合物から形成された塗膜は、1.5の85°光沢、0.7の60°光沢を呈し、2−ブタノンの200回の往復摩擦に耐えた。1週間硬化させた後、塗膜は、酢酸(水中10%)中への1時間の浸漬に耐えて残存した。
【0026】
実施例4
容器内に200gのレゾルシノールジグリシジルエーテルを仕込み、98.3gのシリカおよび0.3gのイミダゾール触媒と混合する。容器を減圧下に配置して、75℃まで加熱しながら激しく45分間撹拌する。減圧下のまま、混合物を145℃まで2時間加熱する。110℃まで冷却し、顔料混合物を添加して色付けする。この実施例では、緑色塗料が望まれた。これを達成すべく、カーボンブラック3.6gとHostapermグリーン16.4gとBayferroxアイアンイエロー92gとの顔料混合物を添加して、減圧下110℃の温度で分散した。75℃まで冷却してアルゴンで満たした後、ポリオキシプロピレンジアミン74.5gを添加し、5分間混合してプレポリマーの鎖長を伸長させた。混合物を65℃以上に保持したまま、188gのN−エチル−2−メチルプロピルトリメトキシシランを30分間かけて滴下し、さらに30分間混合した。混合物を冷却し、アルゴン下でガスシールし、一晩放置した。
【0027】
個別に、ポリイソシアネート289.5gにN−エチル−2−メチルプロピルトリメトキシシラン333gを滴下した。混合物をアルゴンガスシール下で撹拌し、70℃まで加熱した。添加終了の1時間後、このシリル化ポリイソシアネートを、必要時までアルゴン下で冷却保存した。
【0028】
翌日、塗料を調製するために、この実施例に記載の第1の混合物250gを、湿気捕捉剤としてのビニルトリメトキシシラン9.3gの共にアルゴン下で加熱して、60℃に戻した。ビニルトリメトキシシランを添加してから10分間後、さらに10分間混合しながらシリカエアロゲル5.5gを添加した。次に、混合物にポリプロピレンビーズ70gおよび有機処理シリカ5gを添加し、アルゴン下のまま、混合を95分間継続した。この時間の間、p−クロロトリフルオロメチルベンゼン337gと有機処理シリカ43.1gとビニルトリメトキシシラン8.5gとのスラリーを調製した。95分間の混合の終了時、スラリーおよび上記記載のシリル化ポリイソシアネート114.7gを主混合物に添加し、アルゴン下60℃でさらに20分間混合した。最後に、紫外光吸収剤5.7g、ヒンダードアミン光安定剤5.7g、ジブチルスズジラウレート1.6g、および最終のp−クロロトリフルオロメチルベンゼン82.7gをアルゴン下で添加混合し、混合物を冷却して塗料用の最終生成物を得た。この生成物は、ブラシ塗布に好適であり、スプレー塗布用の追加の溶剤で希釈可能であった。UV光源を利用して塗膜を硬化させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.金属酸化物の形態で結合された酸素を表面に有する、1以上の金属酸化物を含む粒子と、
b.酸素結合を介して前記表面金属酸化物に反応する炭素数1〜2000個の有機部分であって、末端反応性シラン基を含み、前記末端シラン基は、湿気または紫外光のうちの少なくとも一方の存在下で制御可能に架橋して塗膜を形成可能である有機部分と
を含む、塗膜形成に適した無機および有機マトリックス一液型組成物。
【請求項2】
前記有機部分が、アミン反応性残基、イソシアネート反応性残基、ヒドロキシル反応性残基、およびオキシラン反応性残基からなる群から選択される末端残基を含む、請求項1に記載の一液型組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物が、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化マンガン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、および酸化鉄からなる群から選択される、請求項1に記載の一液型組成物。
【請求項4】
紫外光および湿気に対して耐性を有するパッケージ内の、請求項1に記載の一液型組成物を含む、塗膜形成用キット。
【請求項5】
a.遊離アミン部位および遊離ヒドロキシル部位のうちの少なくとも一方を有する粒子を、末端官能性残基を含む1以上の有機部分と反応させることにより、無機粒子マトリックスを形成する工程と、
b.前記粒子をシラン試薬と反応させて、湿気または紫外光との接触時に他のシラン残基と架橋しうる末端官能性シラン残基を生成する工程と
を含む、塗料の製造方法。
【請求項6】
工程bが工程aと同時に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
シラン末端ポリマーを添加する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程aの1つ以上の有機部分の前記末端官能性残基が、オキシラン、アミン、およびヒドロキシルからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程bの前記試薬が、イソシアナト官能性、アミノ官能性、または他の官能性のアルコキシシラン、メトキシシラン、またはアシルオキシシランからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法により調製された塗料。
【請求項11】
a.5〜100%のプレポリマーを含有し、前記プレポリマーは、加水分解性酸素を表面に含有する金属酸化物粒子と、炭素数が1〜2000個であり且つ反応性シラン基を末端に有する有機部分とを含み、前記有機部分および前記金属酸化物粒子は、前記加水分解性酸素で連結され、
b.湿気またはUV光の存在下でシラン基の反応を介して硬化される、
一液型塗料組成物。
【請求項12】
前記硬化されるプレポリマーが芳香族基を含有する、請求項11に記載の一液型塗料。
【請求項13】
前記硬化されるプレポリマーが脂環式基を含有する、請求項11に記載の一液型塗料。
【請求項14】
前記有機部分が、エステル化反応を介して前記金属酸化物粒子と反応する、請求項11に記載の一液型塗料。
【請求項15】
前記有機部分が、加水分解反応を介して前記金属酸化物粒子と反応する、請求項11に記載の一液型塗料。
【請求項16】
前記加水分解反応が、カルボン酸と前記金属酸化物粒子表面との反応を介して行なわれる、請求項15に記載の一液型塗料。
【請求項17】
前記有機部分が、オキシラン部分と前記金属酸化物粒子表面との反応を介して前記金属酸化物粒子と反応する、請求項11に記載の一液型塗料。
【請求項18】
前記プレポリマーが二工程で合成される、請求項11に記載の一液型塗料。
【請求項19】
プレポリマー合成の第1の工程により、アミン反応性基、イソシアネート反応性基、ヒドロキシル反応性基、またはオキシラン反応性基を末端に有する物質が生じる、請求項18に記載の一液型塗料。
【請求項20】
第2の工程が、アミン官能性、イソシアネート官能性、オキシラン官能性、またはヒドロキシル官能性のシランの反応を介する前記プレポリマーのシリル化を含む、請求項18に記載の一液型塗料。
【請求項21】
前記金属酸化物が、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化マンガン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、または酸化鉄のうちの少なくとも1種を含む、請求項11に記載の一液型塗料。
【請求項22】
揮発性有機化合物レベルが0〜210g/lである、請求項11に記載の一液型塗料。

【公表番号】特表2010−519354(P2010−519354A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550150(P2009−550150)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/054072
【国際公開番号】WO2008/101155
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(508043567)アイソトロン コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】