説明

無機材メンブレンの作製方法

例えば分子レベルガス分離及び/または液体濾過に有用であり得る、無機材メンブレンの作製方法、例えばγ-アルミナ無機材メンブレンの作製方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2008年8月29日に出願された米国仮特許出願第61/092969号及び2009年2月20日に出願された米国特許出願第12/389911号の優先権の恩典を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施形態は、無機材メンブレンの作製方法に関し、さらに詳しくは、例えば分子レベルガス分離及び/または液体濾過に有用であり得る、γ-アルミナ無機材メンブレンの作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
CO,H及びCOを含むことができるガス流を生成する数多くの工業プロセス、例えば、石炭ガス化、バイオマスガス化、炭化水素の水蒸気改質、天然ガスの不完全酸化、等がある。例えば、金属イオン封鎖目的のために COを捕捉するため、及びHまたはH濃縮ガス製品を作製するために、そのような混合気からのCOの除去が望ましいことが多い。
【0004】
天然ガス流からCOを分離するような、分子分離のための、高分子材料でつくられたメンブレンが開発され、商業的に用いられている。しかし、高分子材メンブレンは熱安定性及び化学的安定性が乏しく、透過流束は小さいことが多い。さらに、化石燃料源から得られたCO混合気内には炭化水素が遍在し、そのような炭化水素は、溶解、ファウリング、等により高分子材メンブレンを劣化させ得る上に、高分子材メンブレンの広汎な使用を制限し得る。
【0005】
無機材メンブレンは新興の技術領域であり、高分子メンブレン材料に付随する熱安定性及び化学的安定性の問題を克服すできる見込みが大いにある。しかし、無機材メンブレンのCO分離機能は、おそらくは実用的方法での無欠陥無機材メンブレンの作製には多大な材料プロセス上の困難が残されているため、未だに十分には実証されていない。
【0006】
無機材メンブレン、例えばメソ多孔質γ-アルミナメンブレンには、液体濾過及びガス分子分離のいずれの領域においても用いられる可能性がある。これらは現在限外濾過及びナノ濾過のために市販されており、一方では、シリカのようなガス分子選択性メンブレンの被着のための基板として調べられている。いずれの用途に対しても、大透過流束を達成するため及び/またはフロー抵抗を下げるために、ピンホール及び亀裂を生じさせずに、薄いメンブレンを提供することが有利である。
【0007】
一般に、0.5〜1.0M(3〜6重量%)の濃度のベーマイト(AlOOH)ゾルを用いるゾルコーティングが商業的に用いられ、得られるγ-アルミナメンブレンの厚さは一般に5〜50μmである。市販のメンブレンの厚さは一般に10〜50μmである。メンブレンを薄くするほど、透過率が高くなり、亀裂発生のリスクが低くなり得る。
【0008】
希釈コーティングゾルの使用によってメンブレンを薄くすることはできるが、一方で、例えばゾル粒子の粒径が支持体の気孔径より小さければ、ゾル粒子の支持体気孔への侵入が容易におこり得る。これは不連続コーティングあるいは全くの無コーティングさえも、生じさせ得る。メンブレンはコーティング工程及び後続する乾燥工程及びさらに後続する焼成工程のサイクルを反復することで最終的に形成され得るであろうが、製造コストがかなり増大し得るし、製造時間がかなり長くなり得るであろう。また、支持体への粒子侵入はフロー抵抗を高め、したがって透過率を低下させ得るであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
粒径制御及びメンブレン形成が改善され、及び/または透過率が高められた、無機材メンブレンの作製方法を有することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、第1の端面、第2の端面及び複数本の内部チャネルを有し、この複数本の内部チャネルが、多孔質壁体によって定められる表面を有し、第1の端面から第2の端面まで貫通している、無機材多孔質支持体を提供する工程、ベーマイト粒子を含有する第1の混合物を提供する工程、第1の混合物内のベーマイト粒子の粒径を調節する工程、及び粒径調節工程後に、無機材メンブレンを形成するために、無機材多孔質支持体の内部チャネル表面に第1の混合物を塗布する工程を含む方法である。
【0011】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者には、その説明から容易に明らかであろうし、あるいは、記述及び添付される特許請求の範囲に、また添付図面にも、説明されるように本発明を実施することによって認められるであろう。
【0012】
上記の全般的説明及び以下の詳細な説明がいずれも本発明の例示に過ぎず、特許請求されるような本発明の本質及び特質の理解のための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。
【0013】
添付図面は本発明のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす。図面は本発明の1つないしさらに多くの実施形態を示し、記述とともに本発明の原理及び動作の説明に役立つ。
【0014】
本発明は、以下の詳細な説明だけから、あるいは添付図面と合わせて、理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、粒径調節工程の前の、2つの第1の混合物の粒径分布を示すグラフである。
【図2】図2は、第1の混合物の粒径調節工程の後の、粒径分布の変化を示すグラフである。
【図3】図3は、異なる高分子結合剤及び溶液のpH値への、第1の混合物内の集塊粒径の依存性を示すグラフである。
【図4】図4は、第1の混合物の粒径調節工程の後の、粒径分布の変化を示すグラフである。
【図5a】図5aは一実施形態にしたがって作製された無機材多孔質支持体の走査型電子顕微鏡(SEM)断面像である。
【図5b】図5bは一実施形態にしたがって作製された無機材多孔質支持体のSEM断面像である。
【図6】図6は一実施形態にしたがって作製された無機材多孔質支持体の上面α-アルミナ層の気孔径分布を示すグラフである、
【図7】図7は一実施形態にしたがって作製されたγ-アルミナメンブレンのSEM断面像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の様々な実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、全図面を通して同じ参照数字が同じかまたは同様の特徴/様相を指して用いられるであろう。
【0017】
本発明の一実施形態は、第1の端面、第2の端面及び複数本の内部チャネルを有し、この複数本の内部チャネルが、多孔質壁体によって定められる表面を有し、第1の端面から第2の端面まで貫通している、無機材多孔質支持体を提供する工程、ベーマイト粒子を含有する第1の混合物を提供する工程、第1の混合物内のベーマイト粒子の粒径を調節する工程、及び粒径調節工程後に、無機材メンブレンを形成するために、無機材多孔質支持体の内部チャネル表面に第1の混合物を塗布する工程を含む方法である。
【0018】
いくつかの実施形態にしたがえば、粒径を調節する工程は粒径中央値を調節する工程を含む。
【0019】
第1の混合物を塗布する工程は、いくつかの実施形態において、γ-アルミナを形成するためにベーマイト粒子を乾燥する工程及び焼成する工程を含む。
【0020】
別の実施形態にしたがえば、方法はさらに、ベーマイト粒子を含有する第2の混合物を提供する工程、第2の混合物内のベーマイト粒子の粒径を調節する工程及び、第1の混合物内のベーマイト粒子の乾燥及び焼成工程後かつ第2の混合物内のベーマイト粒子の粒径調節工程後に、無機材メンブレンに第2の混合物を塗布する工程を含む。第2の混合物内のベーマイト粒子の粒径調節工程は粒径中央値を調節する工程を含むことができる。第2の混合物内のベーマイト粒子の調節された粒径中央値は、いくつかの実施形態において、第1の混合物内の調節された粒径中央値より小さい。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1の混合物と第2の混合物は同じ混合物である。別の実施形態において、第1の混合物と第2の混合物は異なる。差異は、例えば、粒径、高分子結合剤、pH調節のための酸及び/または本明細書で説明される別その他のパラメータの差異とすることができる。
【0022】
一実施形態にしたがえば、混合物内のベーマイト粒子の乾燥及び焼成工程後かつ粒径調節工程後の無機材メンブレンへの混合物の塗布工程は、さらに1回、2回または3回反復される。例えば、多重層を有し得る無機材メンブレンのコーティングのために、第3,第4及び/または第5の混合物を用いることができる。
【0023】
第3,第4及び/または第5の混合物は先行する混合物のいずれかと同じ混合物とすることができる。別の実施形態において、第3,第4及び/または第5の混合物は、互いに異なり、また第1の混合物及び第2の混合物とも異なる。差異は、例えば、粒径、高分子結合剤、pH調節のための酸及び/または本明細書で説明されるその他のパラメータの差異とすることができる。例えば、粒径調節工程後の第1の混合物から第5の混合物の粒径は、第1の混合物から第5の混合物まで順次に小さくしていくことができる。別の実施形態において、全ての混合物の粒径中央値調節工程後の混合物の粒径中央値は同じである。
【0024】
いくつかの実施形態において、第2の混合物を塗布する工程はγ-アルミナを形成するためにベーマイト粒子を乾燥する工程及び焼成する工程を含む。
【0025】
第2の混合物内のベーマイト粒子の粒径を調節する工程は、一実施形態にしたがえば、第2の混合物のpH値を制御する工程を含む。
【0026】
一実施形態において、ベーマイト粒子を含有する第1の混合物を提供する工程は、ゾルを作製する工程を含む。ゾルを作製する工程は、加水分解及び縮合を含むことができる。
【0027】
第1の混合物内のベーマイト粒子の粒径を調節する工程は、一実施形態にしたがえば、第1の混合物のpH値を制御する工程を含む。
【0028】
第1の混合物内のベーマイト粒子の粒径を調節する工程は、いくつかの場合に、第1の混合物を高分子結合剤、高分子剤結合剤を含有する溶液、酸、酢酸、硝酸またはこれらの混合物と合わせる工程を含む。高分子結合剤は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール及びこれらの組合せから選ぶことができる。高分子材結合剤を含有する溶液は、水、蒸留水またはこれらの組合せを含有することができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、第1の混合物内のベーマイト粒子の調節された粒径は無機材多孔質支持体の気孔径より大きい。
【0030】
一実施形態にしたがえば、無機材多孔質支持体はハニカムモノリス構造体である。ハニカムモノリス構造体は、例えば、混合バッチ材料をダイに通して押し出して未焼成体を形成する工程及び技術上既知の方法を利用する熱の印加により未焼成体を焼結する工程によって作製することができる。いくつかの実施形態において、無機材多孔質支持体はセラミックモノリス構造体の形態にある。いくつかの実施形態において、モノリス構造体、例えばセラミックモノリス構造体は複数本の平行内部チャネルを有する。
【0031】
無機材多孔質支持体は、500m/mより大きく、750m/mより大きく、及び/または1000m/mより大きい表面積対体積比のような、高面積対体積比を有することができる。
【0032】
上述したように、無機材多孔質支持体は多孔質壁体で定められる表面を有する複数本の内部チャネルを有する。内部チャネルの本数、間隔及び配置は無機材メンブレンの想定用途の観点から選ばれる。例えば、チャネルの本数は、5〜500,5〜50,5〜40,5〜30,10〜50,10〜40,10〜30,等のような、2〜1000ないしさらに多くまでの範囲とすることができ、これらのチャネルは実質的に同じ断面形状(例えば、円形、長円形、正方形、六角形、等)を有することができ、あるいは異なる断面形状をとることもできる。チャネルは無機材多孔質支持体の断面内に実質的に一様に分散させることができ、あるいは(例えば、無機材多孔質支持体の中央より外端に近くなるようにチャネルが配置される場合におけるように)非一様配置とすることができる。チャネルは何らかのパターン(例えば、行と列、オフセットされた行と列、無機材多孔質支持体の中心の周りの同心円、等)で配置することもできる。
【0033】
いくつかの実施形態において、無機材多孔質支持体の内部チャネルは、無機材多孔質支持体の内部チャネルが、1±0.5mm、2±0.5mm、2.5mm〜3mm及び/または0.8mm〜1.5mmの水力内径を有する場合におけるように、0.5mm〜3mmの水力内径を有する。いくつかの実施形態において、無機材多孔質支持体の内部チャネルは3mm以下、例えば3mm未満の水力内径を有する。明解さのため、本文脈で用いられるような「内径(直径)」は内部チャネルの断面寸法を指すとされ、内部チャネルの断面が非円形である場合には、非円形内部チャネルの断面積と同じ断面積を有する仮想円の直径を指すとされることに注意されたい。
【0034】
いくつかの実施形態において、内部チャネル表面を定める多孔質壁体は25μm以下の粒径中央値を有する。いくつかの実施形態において、内部チャネル表面を定める多孔質壁体は、内部チャネル表面を定める多孔質壁体が、10±5nm、20±5nm、30±5nm、40±5nm、50±5nm、60±5nm、70±5nm、80±5nm、90±5nm、100±5nm、100±50nm、200±50nm、300±50nm、400±50nm、500±50nm、600±50nm、700±50nm、800±50nm、900±50nm、1000±50nm、1±0.5μm及び/または2±0.5μmの気孔径中央値を有する場合におけるように、5nm〜25μmの気孔径中央値を有する。別の実施形態において、内部チャネル表面は5μm〜15μmの気孔径中央値を有する。
【0035】
内部チャネル表面を定める多孔質壁体は、いくつかの実施形態にしたがえば、1μm以下の気孔径中央値を有する。いくつかの実施形態において、内部チャネル表面を定める多孔質壁体は、内部チャネル表面を定める多孔質壁体が、5nm〜500nm、5nm〜400nm、5nm〜300nm、5nm〜200nm、5nm〜100nm、5nm〜50nm、等の気孔径中央値を有する場合におけるように、500nm以下の気孔径中央値を有する。明解さのため、本文脈で用いられる「径」は気孔の断面直径を指すとされ、気孔の断面が非円形である場合は、非円形気孔の断面積と同じ断面積を有する仮想円の直径を指すとされることに注意されたい。
【0036】
内部チャネル表面を定める多孔質壁体は、いくつかの実施形態にしたがえば、1μm以下の気孔径中央値を有する。いくつかの実施形態において、内部チャネル表面を定める多孔質壁体は、内部チャネル表面を定める多孔質壁体が、10nm〜500nm、10nm〜400nm、10nm〜300nm、10nm〜200nm、10nm〜100nm、10nm〜50nm、等の気孔径中央値を有する場合におけるように、500nm以下の気孔径中央値を有する。明解さのため、本文脈で用いられる「径」は気孔の断面直径を指すとされ、気孔の断面が非円形である場合は、非円形気孔の断面積と同じ断面積を有する仮想円の直径を指すとされることに注意されたい。
【0037】
いくつかの実施形態にしたがえば、無機材多孔質支持体は、30%〜60%、50%〜60%または35%〜50%の気孔率のような、20%〜80%の気孔率を有する。無機材多孔質支持体として、ステンレス鋼のような金属が用いられる場合、ステンレス鋼支持体の気孔率は、例えば、3次元プリンティングによるか、高エネルギー粒子トンネリングによるか、及び/または気孔率及び気孔径を調節するために造孔剤を用いる粒子焼結によってつくられる、加工形成気孔またはチャネルを用いて与えることができる。
【0038】
支持体を流過している流体流とコーティングされた支持体自体の間の一層密な接触を可能にするため、例えば分離用途に用いられる場合に、いくつかの実施形態においてチャネルの少なくともいくつかを支持体の一方の端面において閉塞し、他のチャネルを支持体の他方の端面において閉塞することが望ましい。いくつかの実施形態では、支持体のそれぞれの端面において、閉塞チャネルと未閉塞チャネルが相互に市松模様をなすことが望ましい。いくつかの実施形態において、注目するチャネルが(「基準端面」と称される)一方の端面では閉塞されるが、対向端面では閉塞されていない場合に、注目するチャネルに直近のチャネル(注目するチャネルと少なくとも1つの壁体を共有するチャネル)の内の少なくともいくらか、例えば大半(別のいくつかの実施形態においてはそのようなチャネルの全てであることが好ましい)が、支持体のそのような対向端面においては閉塞されるが基準端面においては閉塞されていないことが望ましい。
【0039】
個々の無機材多孔質支持体を様々な態様で積み重ねるかまたは筐体に収めて、様々な要求使用条件を満たすために、様々な寸法、供用期間、等を有するさらに大きな無機材多孔質支持体を形成することができる。
【0040】
適する無機材多孔質支持体材料には、セラミック、ガラス-セラミック、ガラス、金属及びこれらの組合せがある。無機材多孔質支持体をつくることができるかまたは無機材多孔質支持体内に含めることができる上記及びその他の材料の実例は、金属酸化物、アルミナ(例えば、α-アルミナ、δ-アルミナ、γ-アルミナまたはこれらの組合せ)、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、チタニア(二酸化チタン)、ゼオライト、金属(例えばステンレス鋼)、セリア(酸化セリウム)、マグネシア(酸化マグネシウム)、タルク、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、ジルコン(ZrSiO)、ジルコン酸塩、ジルコニア-スピネル、スピネル、ケイ酸塩、ホウ化物、アルミノケイ酸塩、ポーセレン、アルミノケイ酸リチウム、長石、アルミノケイ酸マグネシウム及び石英ガラスである。
【0041】
無機材多孔質支持体は、いくつかの実施形態において、アルミナ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、ムライト、コージェライト、ペロブスカイト、ステンレス鋼及びこれらの組合せから選ばれる材料を含む。
【0042】
一実施形態において、無機材多孔質支持体はガラスである。別の実施形態において、無機材多孔質支持体はガラス-セラミックである。別の実施形態において、無機材多孔質支持体はセラミックである。別の実施形態において、無機材多孔質支持体は金属である。
【0043】
別の実施形態において、無機材多孔質支持体は内部チャネル表面に少なくとも1つの無機材多孔質中間層を有する。この場合、無機材メンブレンは少なくとも1つの無機材多孔質中間層の表面にコーティングされる。「少なくとも1つの無機材多孔質中間層の表面」が、中間層の外表面(すなわちチャネル側に露出している表面)を指し、1つより多くの多孔質中間層がある場合には、最外中間層(すなわち無機材多孔質支持体の内部チャネル表面から最も遠い中間層)の外表面を指すことは、当然であろう。特に、語句「無機材メンブレンは少なくとも1つの無機材多孔質中間層の表面にコーティングされる」は、無機材メンブレンが無機材多孔質中間層毎にまたは無機材多孔質中間層毎の側面毎にコーティンがなされる必要があると解されるべきではないとされる。
【0044】
少なくとも1つの無機材多孔質中間層を用いるか否かは、無機材多孔質支持体の性質、無機材多孔質支持体の内部チャネルの内径中央値、無機材メンブレンが利用される用途及び無機材メンブレンがその下で用いられる条件(ガス流量、ガス圧、等)、内部チャネル表面の粗さまたは平滑度、内部チャネル表面を定める多孔質壁体の気孔径中央値、等のような様々な要因に依存し得る。
【0045】
少なくとも1つの無機材多孔質中間層は、例えば、チャネルを通過するガスのフローを向上させるため、無機材メンブレンの一様性を向上させるため、無機材メンブレン内のいかなる空隙、ピンホールまたはその他の破断の数及び/または大きさも減少させるため、許容カバレッジ(例えば、最小の数の空隙、ピンホールまたはその他の破断)を達成するに必要な無機材メンブレン厚を薄くするために、無機メンブレンがその上にコーティングされる表面の平滑度を高めるために用いることができる。さらにまたはあるいは、無機材多孔質中間層は無機材多孔質支持体の内部チャネルの実効内径を減じるために用いることができる。なおまた、さらにまたあるいは、無機材多孔質中間層は無機メンブレンがその上にコーティングされる表面の化学的、物理的またはその他の特性を変えるために用いることができる。
【0046】
例示として、いくつかの実施形態において、無機材多孔質支持体の多孔質壁体は5nm〜100nm、例えば10nm〜100nm(例えば5nm〜50nm)の気孔径中央値を有し、無機材多孔質支持体は少なくとも1つの無機材多孔質中間層を有しておらず、無機材メンブレンは無機材多孔質支持体の内部チャネル表面にコーティングされる。
【0047】
別の実施形態において、無機材多孔質支持体の多孔質壁体は100nm〜25μm(例えば100nm〜15μmまたは5μm〜15μm)の気孔径中央値を有し、無機材多孔質支持体は少なくとも1つの無機材多孔質中間層を有し、無機材メンブレンは少なくとも1つの無機材多孔質中間層の表面にコーティングされる。
【0048】
別の実施形態において、無機材多孔質支持体の多孔質壁体は100nm〜25μm(例えば100nm〜15μmまたは5μm〜15μm)の気孔径中央値を有し、無機材多孔質支持体は少なくとも1つの無機材多孔質中間層を有していない。
【0049】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの無機材多孔質中間層は、α-アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、ムライト、コージェライト、ペロブスカイト、またはこれらの組合せを含む。
【0050】
第1の混合物内のベーマイト粒子の調節された粒径中央値は、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの無機材多孔質中間層の気孔径中央値より大きい。
【0051】
いくつかの実施形態において、γ-アルミナメンブレン製品を作製する場合、第1の混合物は1リットルあたり0.1〜0.4モルのAl(OOH)として定められる0.1〜0.4Mのゾル濃度を有する。
【0052】
一実施形態において、第1の混合物は、粒径中央値が、メンブレンがその上にコーティングされる無機材多孔質支持体の気孔径中央値の1〜5倍、例えば3倍の、大きなベーマイト粒子、例えば集塊粒子を含む。
【0053】
粒径は、いくつかの実施形態においてはPEGまたはPVAのような高分子結合剤及び第1の混合物のpH値を調節するためのいくらかの量の酸の添加によって、調節することができる。pH値及び高分子結合剤はゾルの集塊粒径及び無機材メンブレン形成のいずれにも直接に影響を与えることができる。
【0054】
別の実施形態にしたがえば、第1の混合物は、粒径中央値が支持体の気孔径中央値より小さい、微細ベーマイト粒子を含有する。
【0055】
無機材メンブレンは、一実施形態において、0.3〜5μm、例えば0.5〜2μmの厚さを有する。
【0056】
第1の混合物内の大きな集塊ベーマイト粒子は、原ゾル合成及び引き続く粒径調節のいずれをも慎重に制御することで得ることができる。原ゾル合成において肝要なパラメータは加水分解時間及びアルコキシドに対する酸のモル比であり、粒径調節において肝要なパラメータにはpH値及び高分子結合剤のタイプがある。
【0057】
精確な加水分解時間及びアルコキシドに対する解膠酸(硝酸、塩酸または酢酸)の比を用いる、アルミニウムアルコキシド(アルミニウムトリセカンダリーブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、等)の加水分解及び縮合により、粒径が様々なベーマイト粒子を含有する原ベーマイトゾルを得ることができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、80℃の温度まで加熱された600mlの脱イオン水に0.4モルのアルミニウムイソプロポキシドを加えた。イソプロポキシドの加水分解及びベーマイト沈殿物の形成のために、混合物を0.5時間〜24時間撹拌した。次いで沈殿物を92℃の温度に加熱し、H/アルコキシドモル比が0.04または0.13になる量の酢酸または硝酸を用いて解膠した。溶液を90〜95℃の温度で20時間還流させて、透明またはやや半透明のゾルを得た。これが第1の混合物または原ゾルと称される。
【0059】
いくつかの実施形態において、24時間の加水分解時間及び0.04のH/アルコキシドモル比で酢酸を用いた解膠によって、大粒子の第1の混合物を作製した。
【0060】
いくつかの実施形態において、0.5時間の加水分解時間及び0.13のH/アルコキシドモル比で硝酸を用いた解膠によって、小粒子の第1の混合物を作製した。得られる原ゾルの濃度は一般に0.70〜1.0Mの範囲にある。
【0061】
粒径が様々なベーマイト粒子を含有する第1の混合物は粒径が相異なる第1の混合物を混合することによって得ることができ、粒径の調節は異なる高分子結合剤溶液の添加及び混合物のpH値の調節によって行うことができる。
【0062】
高分子結合剤は亀裂防止添加剤として用いることができる。いくつかの実施形態において、高分子結合剤溶液は、酸を加えるかまたは加えずに、室温または60〜80℃の温度において脱イオン水にPEG(ポリエチレングリコール)またはPVA(ポリビニルアルコール)のような高分子材結合剤粉末のある量を溶解させることによって作製される。
【0063】
粒径調節後の第1の混合物のゾル濃度は、一実施形態において、0.1〜0.4Mであり、PVAまたはPEGの濃度は大体0.3〜1.0重量%である。
【0064】
コーティングプロセスにより、粒径調節後の第1の混合物の無機材多孔質支持体の内部チャネル表面との接触及び第1の混合物の表面への堆積が可能になる。コーティングは、浸漬コーティング、フローコーティングまたはその他のコーティング方法を用いて実行することができる。メンブレン材料が液体からチャネル壁に輸送され、壁面上に堆積して、液体が排出された後にできたばかりの堆積層が残る。
【0065】
一実施形態において、室温またはさらに高い、例えば120℃未満の温度で15〜25時間の乾燥が実行される。第1の混合物内の成分の揮発性にしたがって温度を調節することができる。乾燥は空気環境あるいは、例えば、窒素、アルゴンまたはこれらの組合せを用いる、不活性環境において実施することができる。いくつかの実施形態において、60〜90%の湿度が用いられる。
【0066】
焼成は、いくつかの実施形態にしたがえば、加熱速度及び冷却速度を0.5〜2.0℃/分とし、600〜900℃のピーク温度で、2〜10時間かけて行った。焼成は、空気環境内で実施することができ、あるいは窒素、酸素またはこれらの組合せのような別の供給ガスを利用することができる。高分子結合剤は焼成中に除去される。また、ベーマイトが分解して、γ-アルミナが形成される。いくつかの実施形態において、乾燥及び焼成は兼ねて行われる。
【0067】
一実施形態において、一実施形態において、コーティング工程−乾燥工程−焼成工程は、粒径調整後に、同じかまたは異なる第1の混合物を用いて反復することができる。
【実施例】
【0068】
実施例1
第1の混合物の作製
この実施例において、第1の混合物は、アルミニウムイソプロポキシド及び酢酸をそれぞれアルミナ前駆体及び解膠剤として用いて作製した大径ベーマイト粒子を含有するコロイド状ベーマイトゾルである。
【0069】
600ミリリットル(ml)の脱イオン水を80℃に加熱し、次いで、Aldrich社から入手できる、アルミニウムイソプロポキシド(AIP)粉末を81.76g(0.40モル)を添加した。添加の前にポーセレンの乳鉢及び乳棒を用いてAIP粉末をひき、微細粒子にした。次いでこの組合せを磁気スタラーで高速度撹拌して、80℃〜85℃の温度で24時間維持し、アルミニウムアルコキシドの加水分解をおこさせて、白い沈殿物を形成した。沈殿物を次いで約90℃に加熱し、生成されてくるアルコールを蒸発させるため、容器を開いた。アルコールはロータリーエバポレータを用いることで収集できるであろう。1〜2時間蒸発させた後、容器を閉じて、温度をほぼ92℃に維持しながら還流させた。1時間の安定化後、Fisher Scientific社から入手できる、100%酢酸を0.96g(0.016モル)用いて沈殿物を解膠した。H/Alモル比は0.04であった。混合物を90℃〜95℃の温度に維持しながら20時間還流させ、やや半透明のゾルを得た。
【0070】
ゾルの体積を測定することでゾル濃度を0.87Mと決定した。ゾルのpH値は、HACH社から入手できるpHメータ、モデルHQ40dで測定して、4.4であった。Microtrac Inc.から入手できる、ダイナミック光散乱アナライザNanotracを用いてゾルの粒径分布を測定した。得られた第1の混合物は1100nmの粒径中央値及び図1に示される粒径分布10を有していた。
【0071】
アルミニウムトリセカンダリーブトキシドをアルミナ前駆体として用い、硝酸を解膠材として用いて、別の第1の混合物の、微細粒子を含有するコロイド状ベーマイトゾルを作製した。上述と同じ方法を用いた。98.53gのアルミニウムトリセカンダリーブトキシドを80℃〜85℃の温度の脱イオン水600mlで0.5時間加水分解し、次いでこの組合せを4.918gの濃硝酸(68〜70%;TME(商標))を用いて約92℃で20時間解膠した。H/Alモル比は0.13であった。ゾル濃度は0.8Mであり、ゾルのpH値は3.7であった。得られたゾルは70nmの粒径中央値及び図1に示される粒径分布12を有していた。
【0072】
実施例2
粒径調節
この実施例は、この実施例では実施例1に説明した大径ベーマイト粒子の原ゾルの粒径を調節する、第1の混合物の粒径の調節を説明する。この実施例では、ポリビニルアルコール(PVA)を高分子結合剤として用いた。
【0073】
第1に、PVAフラット(flat)を脱イオン水に溶解させることで,PVA4.0重量%含有溶液を作製した。脱イオン水190mlを50℃〜60℃の温度まで加熱し、次いで8.0gのPVAを水に加えた。混合物を磁気スタラーを用いて撹拌し、続いて10mlの1MHNO溶液を添加した。PVAが水に完全に溶解して、透明溶液が得られると、PVA溶液の準備ができた。
【0074】
第2に、実施例1からの大径ベーマイト粒子を含有する第1の混合物を脱イオン水及びPVA溶液と混合することで、600mlの混合物を作製した。184mlの脱イオン水を撹拌し、60℃〜80℃の温度まで加熱して、140mlのPVA4%溶液を加えた。次いで、上述した組合せに第1の混合物を276ml注ぎ込んだ。2〜4時間混合した後、ゾル濃度が0.4MでPVAが0.9重量%の混合物が得られた。冷却後に測定した、混合物のpH値は3.8であり、粒径中央値は190nmであった。
【0075】
粒径分布14が図2に示される。希釈及び酸性PVA溶液との混合による粒径調節後、曲線15で示される、第1の混合物のベーマイト粒子の粒径中央値が、1100nmから190nmに減じた。大径集塊ベーマイト粒子が、希釈及びpH値低下により、崩されて小径粒子になった。
【0076】
図3は、第1の混合物のベーマイト粒子の粒径中央値の、線18で示される、PVAのpH値の変化に対する依存性及び、線20で示される、pHが1MHNO溶液または濃HNO溶液の添加によって調節された、P EGのpH値の変化に対する依存性を示す。pHが4.0から2.5まで小さくなるにつれて、粒径中央値は600nmから280nmに減じた。PVA含有溶液に比較して、PEGを含有する溶液は同じPH値において大きなベーマイト粒子を有する。
【0077】
実施例3
粒径調節
この実施例では、ポリエチレングリコール(PEG)を高分子結合剤として用いた。実施例2と同じ第1の混合物の原ベーマイトゾルを用いた。
【0078】
第1に、固形PEGを脱イオン水に溶解させることでPEG20.0重量%含有溶液を作製した。40.0gのPEGを200mlの脱イオン水に加えた。PEGが水に完全に溶解して透明な溶液が得られるまで、混合物を4〜6時間撹拌した。
【0079】
第2に、原ゾルを脱イオン水及びPEG溶液と混合することで、600mlの混合物を作製した。263mlの脱イオン水を撹拌し、50℃〜60℃の温度まで加熱して、61mlのPEG20%溶液及び276mlの原ゾルをこれに加えた。
【0080】
1MHNO溶液を13滴加えることで、混合物のpH値を4.0に調節した。2〜4時間混合した後、ゾル濃度が0.4MでPEGが0.4重量%の混合物が得られた。冷却後に測定した、混合物の粒径中央値は600nmであり、粒径分布は図2の線16で示されるような分布であった。
【0081】
実施例4
粒径調節
この実施例では、実施例1からの小径ベーマイト粒子を含有する第1の混合物の原ゾルをPVA溶液と混合することで混合物を作製した。上述と同じ方法にしたがって、150mlの第1の混合物を380mlの脱イオン水及び70mlのPVA4重量%溶液と混合することで600mlの混合物を作製した。粒径調節後、第1の混合物は、3.7のpH、0.2Mのゾル濃度及び0.47重量%のPVA濃度を有していた。ベーマイト粒子の粒径中央値は60nmであり、粒径分布は図4の線22で示されるような分布であった。第1の混合物24と比較すると、大径集塊粒が希釈によって崩れたため、混合物の粒径調節後の粒径分布は狭くなっていた。
【0082】
実施例5
無機材多孔質支持体
以下に説明される無機材メンブレン実施例に用いられる無機材多孔質支持体は、第1の端面、第2の端面及び複数本の内部チャネルを有し、この複数本の内部チャネルは、多孔質壁体によって定められる表面を有し、第1の端面から第2の端面まで貫通している。支持体はハニカムモノリス構造体の形態にある。支持体はα-アルミナでつくられ、8.7〜10.0mmの範囲の外径及び75ミリの長さを有していた。支持体は、平均内径が0.75mmであり、断面積内に一様に分布している、19本の丸形チャネルを有していた。支持体の気孔径中央値は8.4〜8.7μmであり、気孔率は水銀ポロシメトリーで測定して43.5〜50.8%であった。
【0083】
以下に説明される無機材メンブレン実施例に用いられる無機材多孔質支持体は、内部チャネル表面上に少なくとも1つの無機材多孔質中間層を有する。無機材多孔質中間層は、平均気孔径が約800nmから約170nmに減じている、2つのα-アルミナ層で形成した。この層はスリップコーティング法で作製した。図5a及び図5bはそれぞれ、無機材多孔質支持体の走査型電子顕微鏡(SEM)断面像500及び、同じ無機材多孔質支持体のさらに高倍率のSEM断面像501である。第1の無機材多孔質中間層28及び第2の無機材多孔質中間層30は30μm及び5μmの厚さをそれぞれ有し、内部チャネル表面26上にある。図6の線32は、気孔径中央値(d50)が180nmで気孔率が52.6%の上面α-アルミナ層の気孔径分布を示す。
【0084】
実施例6
無機材メンブレンの作製
この実施例は、ゾル濃度は同じであるが粒径は異なる、異なるコーティング溶液を用いるγ-アルミナメンブレンの作製プロセス、及びメンブレンコーティング品質へのベーマイト粒子の粒径の効果を説明する。実施例5で説明したような無機材多孔質支持体を用いた。支持体の内部チャネル表面上にメンブレンをコーティングした。
【0085】
無機材多孔質支持体の内部チャネル表面上にフローコーターを用いてベーマイトゾル層を被着した。ほぼ160nmの気孔径を有する75mm無機材多孔質支持体をフローコーター内に載せ、次いで圧力差を用いて0.4Mの混合物#1を支持体のチャネルに吸い込ませた。吸込み時間は20秒とした。コーティングされた支持体を725rpmの速度で60秒間回転させてチャネル内の過剰なコーティング混合物を除去し、120℃で2時間乾燥させて、1℃/分で加熱し、650℃で2時間焼成した。表1に示される他の5つの混合物をそれぞれ用いて同じ手順を反復した。
【0086】
得られた6つの試料のコーティング品質をSEMで解析した。1回のコーティングによる結果が表1に挙げられている。粒径d50が小さくとも170nmまでのゾル粒子を有する0.4Mコーティング混合物の単コーティングにより、連続無機材メンブレンコーティングを形成できることがわかった。170nmは支持体の気孔径中央値に極めて近い。粒径が、コーティング混合物#2についての140nmのように気孔径より小さい場合、不完全メンブレンコーティングが見られた。図7の無機材メンブレンの断面SEM700で示されるように、0.4Mコーティング#2でも、1回より多いコーティングによって連続メンブレン34が形成された。
【表1】

【0087】
実施例7
無機材メンブレンの作製及び気体透過特性
この実施例は3種のγ-アルミナメンブレンの合成及びそれらの対応する気体透過特性を説明する。3種のメンブレンは全て、コーティング工程−乾燥工程−焼成工程の3サイクルによって作製し、初めの2サイクルには、粒径が異なるゾル粒子を含有する異なるコーティング混合物を用い、最終サイクルには同じコーティング混合物を用いた。
【0088】
3種のメンブレンの第1のコーティングは実施例6で説明したようなフローコーティング手法で行った。従来の溶液、0.6M-CS60-PVAを含む、表2に挙げられているような、粒径が異なるゾル粒子を含有する3種のコーティング混合物を用いた。コーティング工程、乾燥工程及び焼成工程後、第2の混合物として第1のコーティングと同じ混合物を用いて、同じ手順を繰り返した。実施例4に説明したものと同じコーティング材料を用いることでメンブレンの第3のコーティングを行った。
【表2】

【0089】
600℃においてメンブレンを流過する試験気体の流量によって気体透過特性を測定した。初めに、メンブレン試験モジュール内で黒鉛フェルールを用いてモノリス構造体メンブレン試料を組み立てた。次いでモジュールを、ArまたはNにチューブ側及びシェル側のいずれも流過させながら、1℃/分の加熱速度で600℃まで加熱した。5〜6時間の安定化後、デッドエンドモードで試験を行った。それぞれのメンブレンをHe及びNのそれぞれで試験した。
【0090】
透過試験結果が表3に示される。ゾル粒子が大きくなるほど作製したメンブレンのHe及びNに対する透過度が高くなることがわかり、メンブレンの透過性が高くなることを示す。他方で、N透過率に対するHe透過率の比として定められる、メンブレンについてのNに対するHeの透過選択度は同様であり、クヌードセン拡散機構で予測される値に近く、3種のメンブレンの全てで巨視的寸法の欠陥はないことを暗示している。
【表3】

【0091】
本発明の実施形態は、侵入をそれほどおこさずに薄いメソ多孔質メンブレンを作製する実用的方法を提供する。薄層メソ多孔質メンブレン及び侵入しにくさのいずれもが、高透過流束の達成を可能にし、一方では亀裂及びピンホール問題のリスクを軽減する。メンブレンが薄いという特徴から応力の蓄積を容易に低めることができ、よって耐熱衝撃性が向上することも明らかである。透過フロー抵抗を低めた無機材多孔質支持体を使用することで、無機材メンブレン形成後の総合透過率を高めることが可能になり得る。
【0092】
本発明の精神または範囲を逸脱することなく本発明に様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内に入れば、本発明はそのような改変及び変形を包含するとされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法において、
第1の端面、第2の端面及び複数本の内部チャネルを有し、前記複数本の内部チャネルが、多孔質壁体によって定められる表面を有し、前記第1の端面から前記第2の端面まで貫通している、無機材多孔質支持体を提供する工程、
ベーマイト粒子を含有する第1の混合物を提供する工程、
前記第1の混合物内の前記ベーマイト粒子の粒径を調節する工程、及び
前記粒径を調節する工程の後に、無機材メンブレンを形成するために前記無機材多孔質支持体の前記内部チャネル表面に前記第1の混合物を塗布する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の混合物を塗布する工程が、γ-アルミナを形成するために前記ベーマイト粒子を乾燥させる工程及び焼成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベーマイト粒子を含有する第2の混合物を提供する工程、
前記第2の混合物内の前記ベーマイト粒子の粒径を調節する工程、及び
前記第1の混合物の前記ベーマイト粒子の前記乾燥工程及び前記焼成工程の後に、かつ前記第2の混合物内の前記ベーマイト粒子の前記粒径調節工程の後に、前記無機材メンブレンに前記第2の混合物を塗布する工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベーマイト粒子を含有する第1の混合物を提供する工程が、ゾルを作製する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の混合物内の前記ベーマイト粒子の粒径を調節する工程が、前記第1の混合物のpH値を制御する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−501286(P2012−501286A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524996(P2011−524996)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/004872
【国際公開番号】WO2010/024901
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】