説明

無機硬化性組成物

【課題】硬化速度を容易にコントロールすることが出来る無機硬化性組成物を提供する。
【解決手段】アルカリ金属珪酸塩、500℃以上、900℃以下で焼成した明礬石を必須成分とし、非晶質珪酸アルミニウムを含む/若しくは含まない無機硬化性組成物を特徴としている。
無機硬化性組成物を構成する際、反応を促進する材料として、明礬石を、主たる成分として、副材料として、前記非晶質珪酸アルミニウムを一部用いるか、或いは用いないで、アルカリ金属珪酸塩と反応させる。
明礬石は、500℃以上、900℃以下で焼成したものを用いると、アルカリ金属珪酸塩と速やかに反応する。
添加量を調整することにより反応速度を、従来の材料であるメタカオリン、フライアッシュに比べ、速い方にコントロールすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等に用いられる無機硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物等の外壁等に用いられる無機硬化性組成物が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一般に、非晶質珪酸アルミニウムとアルカリ金属珪酸塩からなる成形材料は、公知であり、この材料の生成物は、ジオポリマーと呼ばれている(特許文献2参照)。
【0004】
特に、非晶質珪酸アルミニウムとして、メタカオリン、フライアッシュが知られている。これらの材料は、比較的短時間で耐久性の高い硬化体が得られることから、その活用が有望視されている。
【0005】
また、珪酸アルカリと明礬石を含む組合せとして、酸化マグネシウムと珪酸アルカリの反応の助剤として明礬石を含む無機硫酸化合物を反応させる方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
このようなものでは、空気との接触による炭酸化により硬化する反応を利用して、有害物質を土壌等に固定,不溶化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−29728号公報
【特許文献2】特公平4−45471号公報
【特許文献3】特開2007−302885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の無機硬化性組成物では、それらの硬化反応の速度は、非晶質珪酸アルミニウム若しくは酸化マグネシウムに大きく依存しており、室温では数時間から数日必要としている。
【0009】
この為、より広い適用に向けて、その硬化反応をコントロールできることが望まれている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、硬化速度を容易に、コントロールすることが出来る無機硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、アルカリ金属珪酸塩、500℃以上、900℃以下で焼成した明礬石を必須成分とし、非晶質珪酸アルミニウムを含む/若しくは含まない無機硬化性組成物を特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無機硬化性組成物を構成する際、反応を促進する材料として、明礬石を、主たる成分として、また副材料として、前記非晶質珪酸アルミニウムを一部用いるか、或いは用いないで、アルカリ金属珪酸塩と反応させる。
明礬石は、500℃以上、900℃以下で焼成したものを用いると、アルカリ金属珪酸塩と速やかに反応する。
このため、この添加量を調整することにより反応速度を、従来の材料であるメタカオリン、フライアッシュに比べ、速い方にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を表す実施例について、ケースNo.1〜10の実験結果をまとめた表図である。
【図2】実施の形態を表す実施例について、ケースNo.11〜15の実験結果をまとめた表図である。
【図3】実施の形態の比較例1を表す実験結果の表図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の無機硬化性組成物を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1乃至は図3は、この発明の実施の形態の無機硬化性組成物の望ましい配合を表す為に、混合される各成分の配合量を、異ならせた複数のケースNo.1〜15について、無機硬化性組成物の硬化実験を行った結果を示し、各最下欄に、実用的強度に至るまでの硬化時間が、記載されている。
【0016】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の無機硬化性組成物の配合では、図1乃至図3に示すように、無機硬化性組成物を構成する際、硬化する材料としてのアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸カリウム固形分、若しくは珪酸ナトリウム固形分のうち、少なくとも何れか一方を、主材料として用いるか、または、ケースNo.11〜13では、アルカリ金属珪酸塩として、珪酸カリウム固形分、若しくは珪酸ナトリウム固形分の双方を、主材料として用いている。
【0017】
また、反応を促進する材料として、明礬石(KAl3(SO4)2(OH)6)を主たる成分として、副材料として、前記非晶質珪酸アルミニウムとして、メタカオリンを一部用いるか、或いは用いないで、前記アルカリ金属珪酸塩と反応させている。
【0018】
更に、骨材として、8号珪砂等の珪砂若しくは、下水汚泥スラグ粒が、適宜混合されている。
【0019】
これらの硬化反応の前提となる統一条件として、次のものが用いられている。
【0020】
メタカオリン:BASF社 SATINTONE SP-33
明礬石:昭和KDE社製 ベルデンK
珪酸カリウム/ナトリウム:日本化学工業社製を試薬 水酸化カリウム/ナトリウムでモル比調整した。
【0021】
硬化時間は、家庭用ハント゛ミキサーで混合後、23℃室温放置した。
【0022】
この結果、実施例のケースNo.1乃至15と、比較例のケースNo.1とを対比させて明らかなように、実施例のケースNo.1乃至15のように、明礬石が配合されているものの方が、比較例のケースNo.1のように明礬石が配合されていないものよりも、硬化時間が短いことが分かる。
【0023】
このため、この明礬石の添加量を調整することにより反応速度を、従来の材料であるメタカオリン、フライアッシュに比べ、速い方にコントロールすることができる。
【0024】
具体的には、無機硬化性組成物であるジオポリマー材料のうち、非晶質珪酸アルミニウムであるメタカオリンの一部若しくは全部を、明礬石に置換する為、明礬石を必須成分とし、非晶質珪酸アルミニウムを含む/若しくは、含まない配合としている。
特に、これらの明礬石は、500℃以上、900℃以下で焼成したものを用いると、アルカリ金属珪酸塩と速やかに反応する。
【0025】
明礬石の焼成温度が、500℃以上乃至900℃以下の温度範囲から外れると、アルカリ金属珪酸塩との反応性が低下することが分かった。
【0026】
また、アルカリ金属珪酸塩と明礬石との混合物は、短時間で硬化するため、他の無機材料の急結材として使用することができる。
明礬石の添加量は、アルカリ金属珪酸塩100重量部に対し、明礬石20重量部以上が好ましい。この分量以下であると、反応が遅くなり、明礬石の反応速度促進効果がなくなるからである。
また、明礬石の分量は、80重量部以下であることが望ましい。
これは、この分量より多くなると、反応が速過ぎて材料混合中に硬化が始まってしまうからである。例えば、ケースNo.4,ケースNo.5及びケースNo.9及びケースNo.10等では、硬化までの時間が短すぎて、取り扱いにくいといった問題がある。
【0027】
また、この反応を促進する材料の主成分として、明礬石(KAl3(SO4)2(OH)6)を用いている中に、非晶質珪酸アルミニウムとして、メタカオリンを添加する場合は、アルカリ金属珪酸塩100重量部に対し、非晶質珪酸アルミニウム300重量部以下であることが好ましい。
【0028】
この分量以上のメタカオリンが加わると、アルカリ金属珪酸塩との反応が、このメタカオリンが、主体となり、明礬石による反応促進効果が得られなくなるからである。
【0029】
また、本実施の形態では、配合に使用する材料の中には、明礬石および非晶質珪酸アルミニウム以外にアルカリ金属珪酸塩と反応、硬化する材料が、実質上含まれないことが望ましい。
【0030】
ただし、アルカリ金属珪酸塩と反応する材料であっても、その材料自身が他の材料と反応、硬化する物であればかまわない。
【0031】
これは、アルカリ金属珪酸塩と明礬石、非晶質珪酸アルミニウムが反応した硬化体は、短時間で硬化するにもかかわらず、安定で耐久性の高い硬化体が得られるからである。
【0032】
一方、他にアルカリ金属珪酸塩と反応する材料が含まれると、この反応に影響を与え、硬化時間に影響を与える他、得られた硬化体の安定性が損なわれるからである。
【0033】
この材料に該当するものとしては、たとえば酸化マグネシウム、珪フッ化アルカリなどがあげられる。
【0034】
ただし、前述のような場合で、その材料とアルカリ金属珪酸塩が単独で存在する場合は反応が起こっても、本発明の組合せの中に、さらに別の材料を加えても、実質上、本発明の反応に影響を与えないのであれば問題ない。
【0035】
そのような材料の例としては、例えば、セメントや半水石膏、及びそれと反応する水などが挙げられる。
【0036】
このように、添加する硬化促進材として、明礬石を主成分としたものを用いて、硬化促進材の配合及び、硬化促進材の添加量を調整することにより、硬化反応速度を、従来の材料であるメタカオリン、フライアッシュに比べ、速い方にコントロールすることができる。
【0037】
特に、図1に示すケースNo.1乃至No.5と比して、図2に示すケースNo.14及びNo.15を比較すると明らかなように、明礬石の前記アルカリ金属珪酸塩に対する分量を固定したまま、メタカオリンの分量を増減して調整することにより、硬化時間を、最も扱いやすい時間帯内で、調整可能である。
【0038】
従って、建築物等の施工に用いる際の養生時間等を短縮出来て、しかも、硬化完了時間まで短すぎることもなく、取り扱いが容易な無機硬化性組成物を提供出来る。
【0039】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0040】
即ち、前記実施の形態では、アルカリ金属珪酸塩として、珪酸カリウム固形分、若しくは珪酸ナトリウム固形分のうち、少なくとも何れか一方を、主材料として用いたものを各ケースNo.1〜15で示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の珪酸塩が用いられても良く、珪酸とアルカリの比率、SiO2/M2O(Mはアルカリ金属)は、0.5〜3.5が、良好に用いられる。
【0041】
この値が、0.5より小さいと、得られた硬化体の耐水性が劣る。
【0042】
また、この値が、3.5より大きいと、硬化性が劣る。
【0043】
更に、前記アルカリ金属珪酸塩は水溶液であっても、粉末であってもどちらの形態であってもかまわない。
【0044】
そして、水酸化アルカリおよびアルカリに容易に溶解するシリカ、たとえば微粉で非結晶のシリカの双方を、配合として加えてもかまわない。
【0045】
また、本発明の材料系であるアルカリ金属珪酸塩、明礬石、珪酸アルミニウムの他に、前述の他の反応成分、充填材、補強繊維、軽量化材、成形助剤、発泡剤等の成分が加えられていてもかまわない。
【0046】
これらの成分を加える場合は、本発明の組成物の重量の合計が、すべての材料混合物の5重量%以上含まれる事が好ましい。これ以下であると、短時間で必要な強度が得られない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属珪酸塩、500℃以上、900℃以下で焼成した明礬石を必須成分とし、非晶質珪酸アルミニウムを含む/若しくは、含まないことを特徴とする無機硬化性組成物。
【請求項2】
アルカリ金属珪酸塩100重量部に対し、500℃以上、900℃以下で焼成した明礬石20重量部以上、80重量部以下含むことを特徴とする無機硬化性組成物。
【請求項3】
アルカリ金属珪酸塩100重量部に対し、500℃以上、900℃以下で焼成した明礬石20重量部以上、80重量部以下、および非晶質珪酸アルミニウム20重量部以上、300重量部以下を含むことを特徴とする無機硬化性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−254522(P2010−254522A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106573(P2009−106573)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】