説明

無機粉体微粒子の製造法

【課題】 高濃度でしかも微粒化された無機粉体スラリーであっても短時間で脱水することができる効率的な無機粉体微粒子の製造法、無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上方法及び無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上剤の提供。
【解決手段】 ポリカルボン酸塩又は式(I)で表される構成単位を有するカチオン性ポリマーのいずれか一方の存在下、水系媒体中で無機粉体粗粒子を粉砕、スラリー化した後、他方を、ポリカルボン酸塩/カチオン性ポリマー(モル比)=25/75〜85/15となる割合で添加混合した後、脱水する、無機粉体微粒子の製造法。
【化1】


[式中、R1はH又はメチル基、R2及びR3は炭素数1〜4のアルキル基、R4はH、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシ置換アルキル基又はベンジル基、Zは−COO−又は−CONH−、Yは炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシ置換アルキレン基、X-は陰イオンを示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粉体微粒子の製造法、無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上方法並びに無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粉体を製造する方法として、水系の湿式粉砕で均一な粒径のスラリーにした後、このスラリーをフィルターで脱水して乾燥する方法が行われている。この方法において、無機粉体のスラリーを脱水する際に濾水性の向上を図るため、例えばポリアルキレンイミン、ポリアクリルアミドのような濾水性向上剤が用いられている。
【0003】
近年、無機粉体の高機能化、微細化に伴い、無機粉体はより微粒に、また、無機粉体スラリーは乾燥効率の向上等、生産性を高めるためさらに高濃度になってきている。しかしながら、微粒化された無機粉体のスラリーは、脱水する際に、従来の濾水性向上剤では脱水し難く、濾水性が十分満足できるものではない。例えば特許文献1にはアミド基含有重合体からなる濾水性向上剤が、また特許文献2にはアミノ基含有重合体からなる濾水性向上剤が開示されているが、このような濾水性向上剤では、濾水性を十分満足できるレベルまで向上させた無機粉体微粒子スラリーを得ることはできない。
【特許文献1】特開平10−45836号公報
【特許文献2】特開2001−294616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高濃度でしかも微粒化された無機粉体スラリーであっても短時間で脱水することができる効率的な無機粉体微粒子の製造法、無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上方法及び無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリカルボン酸塩又は一般式(I)で表される構成単位を有するカチオン性ポリマー(以下カチオン性ポリマー(I)という)のいずれか一方の存在下、水系媒体中で無機粉体粗粒子を粉砕、スラリー化した後、他方を、ポリカルボン酸塩とカチオン性ポリマー(I)のモル比が、ポリカルボン酸塩/カチオン性ポリマー(I)=25/75〜85/15となる割合で添加混合した後、脱水する、無機粉体微粒子の製造法を提供する。
【0006】
【化2】

【0007】
[式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基、R4は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシ置換アルキル基又はベンジル基、Zは−COO−又は−CONH−、Yは炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシ置換アルキレン基、X-は陰イオンを示す。]
また、本発明は、ポリカルボン酸塩又はカチオン性ポリマー(I)のいずれか一方の存在下、水系媒体中で無機粉体粗粒子を粉砕、スラリー化した後、他方を、ポリカルボン酸塩とカチオン性ポリマー(I)のモル比が、ポリカルボン酸塩/カチオン性ポリマー(I)=25/75〜85/15となる割合で添加混合する、無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上方法、並びにカチオン性ポリマー(I)からなる濾水性向上剤であって、ポリカルボン酸塩と共に、ポリカルボン酸塩/カチオン性ポリマー(I)(モル比)=25/75〜85/15となる割合で無機粉体に別々に添加される、無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、高濃度でしかも微粒化された無機粉体スラリーであっても短時間で脱水することができ、無機粉体微粒子を効率的に得ることができる。また、微粒化された無機粉体の高濃度スラリーの濾水性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられるポリカルボン酸塩としては、不飽和カルボン酸又はその無水物を重合した後に中和して得られるもの、不飽和カルボン酸塩を重合して得られるもの等が挙げられる。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、濾水性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、イタコン酸、フマル酸等が好ましく、これらの1種又は2種以上を用いることができる。このうち経済性の観点から、ポリアクリル酸塩、ポリ(アクリル酸/マレイン酸)塩が好ましい。
【0010】
ポリカルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩や、1級、2級又は3級のアルキルアミン塩、アルカノールアミン塩等の有機アミン塩が挙げられる。これらの中では分散性及び濾水性向上の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましい。
【0011】
本発明に用いられるポリカルボン酸塩の重量平均分子量(Mw)は、無機粉体微粒子スラリーの濾水性を向上させる観点から、10000〜100000が好ましく、20000〜80000がより好ましく、30000〜60000が更に好ましい。
【0012】
尚、ここでポリカルボン酸塩の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載された測定法により測定された値である。
【0013】
本発明に用いられるカチオン性ポリマー(I)は、前記一般式(I)で表される構成単位を有するものである。一般式(I)において、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を示すが、分散性及び濾水性向上の観点から、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。R4は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシ置換アルキル基又はベンジル基を示すが、分散性及び濾水性向上の観点から、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシ置換アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基が好ましい。Zは−COO−又は−CONH−を示すが、分散性及び濾水性向上の観点から、−COO−が好ましい。Yは炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシ置換アルキレン基を示すが、分散性及び濾水性向上の観点から、炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。X-で示される陰イオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、アルキル基を有するアルキル硫酸イオン等が挙げられ、分散性及び濾水性向上の観点から、ハロゲンイオン、アルキル基の炭素数1〜2のアルキル硫酸イオンが好ましい。
【0014】
カチオン性ポリマー(I)は、一般式(II)
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、R1、R2、R3、Z及びYは前記の意味を示す。]
で表される化合物を含むモノマー成分を重合後、4級化するか、又は一般式(II)で表される化合物の4級化物を含むモノマー成分を重合することにより得られる。
【0017】
一般式(II)で表される化合物としては例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミドとはアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0018】
4級化に用いられる4級化剤としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、酸塩などが挙げられる。
【0019】
本発明に用いられるカチオン性ポリマー(I)は、上記一般式(II)で表される化合物又はその4級化物以外のアクリル酸やアクリル酸アミド等のモノマーを、全モノマー成分中0〜30モル%、好ましくは0〜10モル%の範囲で、共重合させたものでもよい。
【0020】
カチオン性ポリマー(I)の重量平均分子量(Mw)は、無機粉体微粒子スラリーの濾水性を向上させる観点から、10000〜500000が好ましく、50000〜300000がより好ましく、70000〜200000が更に好ましい。
【0021】
尚、ここでカチオン性ポリマー(I)の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載された測定法により測定された値である。
【0022】
本発明において対象となる無機粉体は、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、クレー、ベントナイト、サチンホワイト、亜鉛華、ベンガラ、フェライト、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、タルク、ホワイトカーボン、セメント、石膏、カーボンブラック、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、チタン酸塩、珪酸塩等が挙げられ、これらの混合無機粉体であっても良い。
【0023】
本発明において、無機粉体粗粒子とは、平均粒径が1μm以上のものを言い、好ましくは1〜1000μm、更に好ましくは1〜100μmのものである。また、無機粉体微粒子とは平均粒径が1μm未満のものを言い、好ましくは0.6μm以下、更に好ましくは0.1〜0.5μmのものである。
【0024】
尚、無機粉体の平均粒径は、一般的なレーザ解析/散乱式粒度分布測定器を用いて測定することができ、例えば、株式会社堀場製作所製のレーザ解析/散乱式粒度分布測定装置LA−900を用いて測定される。
【0025】
本発明の無機粉体微粒子の製造法において、無機粉体粗粒子は、無機粉体の原鉱石又はその粉砕物等を水系媒体中に混合させて用いられる。水系媒体としては、水、あるいは水と、エチルアルコール、エチレングリコール等の水溶性有機溶媒との混合溶液が挙げられ、好ましくは水である。
【0026】
本発明においては、濾水性向上の観点から、ポリカルボン酸塩又はカチオン性ポリマー(I)のいずれか一方の存在下、水系媒体中で無機粉体粗粒子を粉砕、スラリー化した後、他方を添加混合する。即ち、無機粉体に、ポリカルボン酸塩とカチオン性ポリマー(I)をそれぞれ別々に添加混合する。この際、ポリカルボン酸塩の存在下、水系媒体中で無機粉体粗粒子を粉砕、スラリー化した後、カチオン性ポリマー(I)を添加混合しても、あるいはカチオン性ポリマー(I)の存在下、水系媒体中で無機粉体粗粒子を粉砕、スラリー化した後、ポリカルボン酸塩を添加混合しても良い。
【0027】
尚、ここでポリカルボン酸塩又はカチオン性ポリマー(I)のいずれか一方の存在下とは、いずれか一方のみの存在下を意味しているが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他方が極少量存在していてもよい。また同様に、他方を添加混合する際に、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、もう一方を極少量添加してもよい。
【0028】
ポリカルボン酸塩とカチオン性ポリマー(I)の割合は、無機粉体の分散性と濾水性向上の観点から、ポリカルボン酸塩/カチオン性ポリマー(I)(モル比)=25/75〜85/15であり、30/70〜80/20が好ましく、40/60〜65/35がより好ましい。
【0029】
無機粉体粗粒子に対するポリカルボン酸塩及びカチオン性ポリマー(I)の合計添加量は、0.5〜10重量%が好ましく、1〜8重量%がより好ましく、2〜6重量%が更に好ましい。
【0030】
本発明においては、ポリカルボン酸塩とカチオン性ポリマー(I)を、上記割合で別々に使用することにより、無機粉体微粒子スラリーの濾水性を大幅に向上させることができるが、ポリカルボン酸塩以外のアニオン性ポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸塩やナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物などでは濾水性の効果は弱い。またカチオン性ポリマー(I)以外のもの、例えばポリエチレンイミンやポリアクリルアミドなどでも濾水性の効果は弱い。
【0031】
本発明のメカニズムは明らかではないが、無機粉体粗粒子をまずポリカルボン酸塩の存在下で粉砕、スラリー化すると無機粉体の分散性が向上し、その後カチオン性ポリマー(I)を添加すると、無機粉体に吸着しているポリカルボン酸塩にカチオン性ポリマー(I)が作用して無機粉体そのものの凝集性が上がる結果、濾水性が良好な無機粉体微粒子スラリーが得られるものと推察される。また、無機粉体粗粒子をまずカチオン性ポリマー(I)の存在下で粉砕、スラリー化した場合も同様に分散性が向上し、その後ポリカルボン酸塩を添加すると、無機粉体に吸着しているカチオン性ポリマー(I)にポリカルボン酸塩が作用して無機粉体そのものの凝集性が上がる結果、濾水性が良好な無機粉体微粒子スラリーが得られるものと推察される。
【0032】
本発明において、濾水性が良好な無機粉体微粒子スラリーを得る具体的な方法は、例えばポリカルボン酸塩を溶解した水溶液に無機粉体粗粒子を添加して攪拌、混合、粉砕してスラリー化した後、カチオン性ポリマー(I)を溶解した水溶液を添加して攪拌、混合する方法、無機粉体粗粒子に水とポリカルボン酸塩を加えて攪拌、混合、粉砕してスラリー化した後、カチオン性ポリマー(I)を加えて攪拌、混合する方法、カチオン性ポリマー(I)を溶解した水溶液に無機粉体粗粒子を添加して攪拌、混合、粉砕してスラリー化した後、ポリカルボン酸塩を溶解した水溶液を添加して攪拌、混合する方法、無機粉体粗粒子に水とカチオン性ポリマー(I)を加えて攪拌、混合、粉砕してスラリー化した後、ポリカルボン酸塩を加えて攪拌、混合する方法等が挙げられる。これらの方法の中では、分散性の観点から、ポリカルボン酸塩を溶解した水溶液に無機粉体粗粒子を添加して攪拌、混合、粉砕してスラリー化した後、カチオン性ポリマー(I)を溶解した水溶液を添加して攪拌、混合する方法、無機粉体粗粒子に水とポリカルボン酸塩を加えて攪拌、混合、粉砕してスラリー化した後、カチオン性ポリマー(I)を加えて攪拌、混合する方法が好ましい。
【0033】
上記方法において、攪拌、混合、粉砕は、例えば高速ディスパー、ホモミキサー、ボールミル等一般に用いられる攪拌装置を使用することができる。また、ビーズミル等一般に用いられる湿式粉砕機を使用することも出来る。
【0034】
本発明の無機粉体微粒子スラリー中の無機粉体の濃度は、乾燥効率や生産性を高める観点から、5〜80重量%が好ましく、10〜75重量%がより好ましい。
【0035】
このようにして得られた無機粉体微粒子スラリーを脱水することにより無機粉体微粒子を得ることができる。脱水方法は特に限定されず、フィルター等を用いて脱水することができる。
【実施例】
【0036】
以下の例において、ポリカルボン酸及びカチオン性ポリマー(I)の重量平均分子量は以下の方法で測定した。
【0037】
<重量平均分子量の測定方法>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記条件で測定した。
カラム:TSK PWXL+G4000PWXL+G2500PWXL(いずれも東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
検出器:RI又はUV(210nm)
溶離液:0.2mol/L リン酸緩衝液/アセトニトリル(9/1)
流速:1.0mL/min
注入量:0.1mL
標準:ポリエチレングリコール
実施例1−1
500mLのディスポビーカーに平均粒径が5μmのアルミナ24g、イオン交換水172.8g、及びMw35000のポリアクリル酸ナトリウム塩(水で希釈して固形分30重量%に調整したもの)0.36gを仕込んだ後、特殊機化工業株式会社製のホモディスパーで攪拌・粉砕(2500r/min×60分間)した。次に下記式(III)で表される構成単位を有するMw80000のカチオン性ポリマー(以下カチオン性ポリマー(III)という)(水で希釈して固形分30重量%に調整したもの)を2.84g加え、再度ホモディスパーで攪拌(2500r/min×2分間)し、平均粒径0.38μm、無機粉体濃度12重量%、合計200gの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0038】
【化4】

【0039】
実施例1−2〜1−6
ポリアクリル酸ナトリウム塩とカチオン性ポリマー(III)の添加割合及び合計添加量を表1示すように変えた以外は、実施例1−1と同様にして、平均粒径0.38μmの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0040】
実施例1−7〜1−12
ポリアクリル酸ナトリウム塩とカチオン性ポリマー(III)の添加順序を逆にし、それぞれの添加割合及び合計添加量を表1示すように変えた以外は、実施例1−1と同様にして、平均粒径0.38μmの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0041】
比較例1−1
500mLのディスポビーカーに平均粒径が5μmのアルミナ24g、イオン交換水172.8gを仕込んだ後、特殊機化工業株式会社製のホモディスパーで攪拌・粉砕(2500r/min×60分間)し、平均粒径0.38μm、無機粉体濃度12重量%、合計200gの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0042】
比較例1−2〜1−11
表1に示すポリマー成分を、表1に示す添加順序、添加割合及び添加量で用いる以外は、実施例1−1と同様にして、平均粒径0.38μmの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0043】
実施例1−1〜1−12及び比較例1−1〜1−11で得られた無機粉体微粒子スラリーについて、下記方法で濾水性を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
<濾水性の評価法>
無機粉体微粒子スラリーを、直径125mm、No.2濾紙を敷いた濾過器上に注ぎ、100torrで吸引濾過を行った。濾水の出初めから終了するまでの時間(分)を測定し、濾水時間とした。濾水時間が7分以下であれば濾水性向上の効果がある。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2−1
500mLのディスポビーカーに平均粒径が3μmの窒化珪素40g、イオン交換水155.2g、及びMw45000のポリアクリル酸/マレイン酸アンモニウム塩(アクリル酸/マレイン酸=80/20(モル比)、水で希釈して固形分30重量%に調整したもの)0.57gを仕込んだ後、特殊機化工業株式会社製のホモディスパーで攪拌・粉砕(2500r/min×60分間)し、次に下記式(IV)で表される構成単位を有するMw100000のカチオン性ポリマー(以下カチオン性ポリマー(IV)という)(水で希釈して固形分30重量%に調整したもの)4.23gを加え、再度ホモディスパーで攪拌(2500r/min×2分間)し、平均粒径0.4μm、無機粉体濃度20重量%、合計200gの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0047】
【化5】

【0048】
実施例2−2〜2−6
ポリアクリル酸/マレイン酸アンモニウム塩とカチオン性ポリマー(IV)の添加割合及び合計添加量を表2示すように変えた以外は、実施例2−1と同様にして、平均粒径0.4μmの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0049】
実施例2−7〜2−12
ポリアクリル酸/マレイン酸アンモニウム塩とカチオン性ポリマー(IV)の添加順序を逆にし、それぞれの添加割合及び合計添加量を表2示すように変えた以外は、実施例2−1と同様にして、平均粒径0.4μmの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0050】
比較例2−1
500mLのディスポビーカーに平均粒径が3μmの窒化珪素40g、イオン交換水160gを仕込んだ後、特殊機化工業株式会社製のホモディスパーで攪拌・粉砕(2500r/min×60分間)し、平均粒径0.4μm、無機粉体濃度20重量%、合計200gの無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0051】
比較例2−2〜2−11
表2に示すポリマー成分を、表2に示す添加順序、添加割合及び添加量で用いる以外は、実施例2−1と同様にして無機粉体微粒子スラリーを調製した。
【0052】
実施例2−1〜2−12及び比較例2−1〜2−11で得られた無機粉体微粒子スラリーについて、下記方法で濾水性を評価した。結果を表2に示す。
【0053】
<濾水性の評価法>
無機粉体微粒子スラリーを、直径125mm、No.2濾紙を敷いた濾過器上に注ぎ、100torrで吸引濾過を行った。濾水の出初めから終了するまでの時間(分)を測定し、濾水時間とした。濾水時間が8分以下であれば濾水性向上の効果がある。
【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸塩又は一般式(I)で表される構成単位を有するカチオン性ポリマー(以下カチオン性ポリマー(I)という)のいずれか一方の存在下、水系媒体中で無機粉体粗粒子を粉砕、スラリー化した後、他方を、ポリカルボン酸塩とカチオン性ポリマー(I)のモル比が、ポリカルボン酸塩/カチオン性ポリマー(I)=25/75〜85/15となる割合で添加混合した後、脱水する、無機粉体微粒子の製造法。
【化1】

[式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基、R4は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシ置換アルキル基又はベンジル基、Zは−COO−又は−CONH−、Yは炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシ置換アルキレン基、X-は陰イオンを示す。]
【請求項2】
ポリカルボン酸塩の重量平均分子量(Mw)が10000〜100000である請求項1記載の製造法。
【請求項3】
カチオン性ポリマー(I)の重量平均分子量(Mw)が10000〜500000である請求項1又は2記載の製造法。
【請求項4】
無機粉体微粒子の平均粒径が0.6μm以下である請求項1〜3いずれかに記載の製造法。
【請求項5】
ポリカルボン酸塩又は請求項1記載のカチオン性ポリマー(I)のいずれか一方の存在下、水系媒体中で無機粉体粗粒子を粉砕、スラリー化した後、他方を、ポリカルボン酸塩とカチオン性ポリマー(I)のモル比が、ポリカルボン酸塩/カチオン性ポリマー(I)=25/75〜85/15となる割合で添加混合する、無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上方法。
【請求項6】
請求項1記載のカチオン性ポリマー(I)からなる濾水性向上剤であって、ポリカルボン酸塩と共に、ポリカルボン酸塩/カチオン性ポリマー(I)(モル比)=25/75〜85/15となる割合で無機粉体に別々に添加される、無機粉体微粒子スラリーの濾水性向上剤。

【公開番号】特開2008−1547(P2008−1547A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171346(P2006−171346)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】