説明

無機質窯業系化粧板の施工方法

【課題】 開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面に接着剤を塗布し、これを下地上に貼り付けた場合に、経時による下地と無機質窯業系化粧板との寸法変化に差異が生じた場合でも、無機質窯業系化粧板の開口部に膨張または収縮応力が集中せず、該開口部の周辺部に亀裂が発生することを防止する施工方法を提供すること。
【解決手段】 下地上に、開口部を有する無機質窯業系化粧板を設置する無機質窯業系化粧板の施工方法であって、前記無機質窯業系化粧板10の裏面の前記開口部102付近および外周部付近に接着剤を塗布し、前記無機質窯業系化粧板の裏面を前記下地上に接着させる工程を少なくとも有し、前記外周部付近に塗布された接着剤104の硬化後の硬度が、前記開口部102付近に塗布された接着剤106の硬化後の硬度よりも低いことを特徴とする無機質窯業系化粧板の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質窯業系化粧板の施工方法に関し、詳しくは無機質窯業系化粧板に設けられた開口部の周辺部に亀裂が発生しにくい施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
けい酸カルシウム板や繊維強化セメント板等の無機質窯業系材料を基材とし、その表面に塗膜や印刷フィルムや化粧紙等からなる化粧層を設けた無機質窯業系化粧板は、内装材として幅広く用いられ、例えば建築物の天井部や壁部に取り付けられている。
これら建築物の天井部や壁部には、通常、照明器具、空調機器、点検口などが設置され、そのため、用いられる無機質窯業系化粧板には、これらの機器を設置する対応箇所に開口部が設けられる。
【0003】
無機質窯業系化粧板の施工方法としては、例えば、下地に対し無機質窯業系化粧版を釘やネジを用いて取り付ける方法がある。しかし、釘やネジの頭部が無機質窯業系化粧版の表面に残るため、外観上好ましくないという欠点がある。そこで、釘やネジを用いずに、無機質窯業系化粧板の裏面に接着剤を塗布し、これを下地上に貼り付ける方法がよく採用されている。その代表的な施工方法としてTM工法がある。TM工法とは、接着剤と両面粘着テープとを併用して無機質窯業系化粧板を下地上に固定する施工方法であり、無機質窯業系化粧板の裏面に両面粘着テープを貼り付けるとともに接着剤を塗布して下地上に貼り付けることにより、無機質窯業系化粧板は、両面粘着テープの接着力により下地上に仮止めされ、接着剤が硬化することにより下地上に固定される。
【0004】
しかしながら、開口部を有する無機質窯業系化粧板を従来の施工方法にしたがい、接着剤によって下地に取り付けた場合、経時による下地と無機質窯業系化粧板との寸法変化に差異が生じるために、無機質窯業系化粧板の開口部に膨張または収縮応力が集中し、特に開口部が矩形の場合にはその隅角部に亀裂が生じるという問題点がある。
この問題点を解決するために、例えば下記特許文献1には、開口部の隅角部にL形の補強材を取り付ける技術が開示されている。しかし、L形の補強材を別途用意しなければならず、また該補強材を取り付ける手間もあり、コスト性、取り扱い性に課題がある。
これとは別に、下記非特許文献1には、開口部の隅角部に電動ドリル等で切り欠け部を設け、応力を緩和する方法が開示されている。しかし、生産現場あるいは施工現場で上記のように化粧板を加工することは、コスト性、施工性を大きく損なうものである。
【特許文献1】特開平10−280583号公報
【非特許文献1】「内装接着工法,標準施工マニュアル」、2002年1月、株式会社エーアンドエーマテリアル発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面に接着剤を塗布し、これを下地上に貼り付けた場合に、経時による下地と無機質窯業系化粧板との寸法変化に差異が生じた場合でも、無機質窯業系化粧板の開口部に膨張または収縮応力が集中せず、該開口部の周辺部に亀裂が発生することを防止する施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、無機質窯業系化粧板の裏面の開口部付近と外周部付近に、硬化後の硬度が異なる接着剤をそれぞれ塗布するか、および/または、前記開口部付近と外周部付近とで、接着剤の塗布の形態が異なるように接着剤を塗布することにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は、下地上に、開口部を有する無機質窯業系化粧板を設置する無機質窯業系化粧板の施工方法であって、
前記無機質窯業系化粧板の裏面の前記開口部付近および外周部付近に接着剤を塗布し、前記無機質窯業系化粧板の裏面を前記下地上に接着させる工程を少なくとも有し、
前記外周部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度が、前記開口部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度よりも低いことを特徴とする無機質窯業系化粧板の施工方法を提供するものである。
また本発明は、下地上に、開口部を有する無機質窯業系化粧板を設置する無機質窯業系化粧板の施工方法であって、
前記無機質窯業系化粧板の裏面の前記開口部付近および外周部付近に接着剤を塗布し、前記無機質窯業系化粧板の裏面を前記下地上に接着させる工程を少なくとも有し、
前記無機質窯業系化粧板の裏面の前記開口部付近には、接着剤を連続状に塗布し、かつ前記外周部付近には、前記接着剤と硬化後の硬度が同一または前記接着剤よりも硬化後の硬度が低い接着剤を断続状に塗布することを特徴とする無機質窯業系化粧板の施工方法を提供するものである。
また本発明は、前記外周部付近への断続状の接着剤の塗布量が、連続状に塗布した場合の塗布量の20%以上50%以下となるように接着剤を塗布することを特徴とする前記の無機質窯業系化粧板の施工方法を提供するものである。
また本発明は、前記外周部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度に対し、前記開口部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度が、1.5〜5倍であることを特徴とする前記の無機質窯業系化粧板の施工方法を提供するものである。
また本発明は、前記無機質窯業系化粧板の裏面に両面粘着テープを貼着し、前記接着剤の硬化が完了する前に、前記無機質窯業系化粧板を前記下地上に仮止めすることを特徴とする前記の無機質窯業系化粧板の施工方法を提供するものである。
また本発明は、前記無機質窯業系基材が、けい酸カルシウム板または繊維強化セメント板であるとともに、前記下地が石膏板からなることを特徴とする前記の無機質窯業系化粧板の施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無機質窯業系化粧板の裏面の外周部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度が、開口部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度よりも低いことを特徴としているので、経時による下地と無機質窯業系化粧板との寸法変化に差異が生じた場合でも、外周部付近の接着剤の柔軟性が、無機質窯業系化粧板の開口部への膨張または収縮応力の集中を緩和し、該開口部の周辺部への亀裂を防止することができる。
本発明によれば、無機質窯業系化粧板の裏面の前記開口部付近には、接着剤を連続状に塗布し、かつ前記外周部付近には、前記接着剤と硬化後の硬度が同一または前記接着剤よりも硬化後の硬度が低い接着剤を断続状に塗布することを特徴としているので、経時による下地と無機質窯業系化粧板との寸法変化に差異が生じた場合でも、外周部付近の接着剤の柔軟性が、無機質窯業系化粧板の開口部への膨張または収縮応力の集中を緩和し、該開口部の周辺部への亀裂を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の一実施形態の平面図である。
図1において、本発明に用いられる無機質窯業系化粧板10は、開口部102を有するとともに、施工時は、その外周部付近に第一接着剤104が塗布され、開口部付近に第二接着剤106が塗布され、第一接着剤104の硬化後の硬度が、第二接着剤106の硬化後の硬度よりも低いことを特徴としている。
【0009】
無機質窯業系化粧板10としては、特に制限されず、建築物の内装材として従来から用いられてきたものを適宜採用することができる。例えば、けい酸カルシウム板または繊維強化セメント板等を基材とし、その表面に塗膜や印刷フィルムや化粧紙等の化粧層を設けてなる化粧板が挙げられる。
【0010】
無機質窯業系化粧板の代表的な基材の一つであるけい酸カルシウム板としては、石灰質原料、珪酸質原料および繊維原料を原料とし必要に応じて各種添加材を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法等により板状に成形して、さらに必要に応じて加圧成形後、オートクレーブ養生により硬化させることにより製造されたもの、あるいは、石灰質原料と珪酸質原料に水を加えて混合したスラリー状原料をオートクレーブ処理してけい酸カルシウム結晶が凝してなる二次粒子を形成し、これに繊維原料と必要に応じてその他添加材とを原料として添加して混合分散したスラリーを抄造法等により板状に成形し、乾燥硬化させることにより製造されたものが挙げられる。
また、繊維強化セメント板もけい酸カルシウム板と同様、無機質窯業系化粧板の基材として広く使用されている。繊維強化セメント板としては、繊維材料、水硬性セメントを必須原料とし必要に応じて各種添加材を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形し、さらに必要に応じて加圧成形後、常温下、高温高湿度下(スチーム)、あるいはオートクレーブによる養生で硬化させることにより製造されたものが挙げられる。
また無機窯業系基材としてはこれら以外にも、スラグ、石膏、スラグと石膏との反応を開始させる刺激剤、繊維材料および無機充填剤を混合し、スラリーを形成させ、このスラリーを抄造法等により板状に成形し、必要に応じて加圧成形し、養生硬化し、乾燥することによって得られるスラグ石膏板;半水石膏やII型無水石膏等の水和性石膏、繊維材料、水和性石膏の硬化調整剤、必要に応じてその他の添加材を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法等により板状に成形し、さらに必要に応じて加圧成形し、養生硬化し、乾燥することによって得られる石膏抄造板;等も使用できる。
なお、繊維材料としては特に制限されないが、例えば化学パルプ、木質パルプ、セルロースパルプ、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維、鋼繊維(スチール線繊維)、アモルファス金属繊維等の金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維(カーボンファイバー)、ロックウール繊維、ウィスカー等の無機繊維などが挙げられる。
【0011】
化粧層は、塗料の塗布、印刷フィルムや化粧紙の貼着等によって形成され、公知技術を適宜利用して形成すればよい。また、必要に応じて無機質窯業系基材上に下塗層を設けてもよい。化粧層を形成するための塗料としては、例えば、樹脂と顔料を主成分とする合成樹脂系塗料が挙げられ、樹脂としては、熱硬化型、紫外線硬化型、または電子線硬化型等の各種樹脂を使用することができる。顔料も公知のものを使用すればよい。
【0012】
開口部102の形状は、図1に示す矩形が代表的であるが、内装材の施工場所や目的に応じて真円形、楕円形、その他の複雑な形状等を有する場合がある。開口部102の面積は、例えば無機質窯業系化粧板10の表面の面積全体に対し、5〜20%程度が一般的である。また、外周部と開口部102との距離は、特に制限されないが、通常、100〜500mm程度である。
【0013】
本発明の一形態においては、外周部付近の第一接着剤104の硬化後の硬度が、開口部付近の第二接着剤106の硬化後の硬度よりも低いことを特徴としている。
ここで、本発明でいう接着剤の硬化後の硬度とは、厚さ1mmの硬化した接着剤層を形成して引張り試験を行い、接着剤層を0.5mm変位させるために必要な単位面積あたりの力(N/cm2)をいう。すなわち、接着剤層の硬度が高ければ、0.5mm変位させつためには大きな力が必要であり、接着剤層が柔らかければ、0.5mm変位させるための力はさほど大きくない。接着剤の硬化後の硬度の具体的な測定方法は以下のとおりである。
【0014】
試験体の作製手順
図8は、接着剤の硬化後の硬度を測定するための試験体を説明するための図であり、(a)は試験体の断面説明図であり、(b)は下記で説明する1.0FK基材に接着剤を塗布した際の平面図である。まず、厚さ10mm、長さ140mm、幅40mmの1.0FK基材(JIS−A−5430:2008におけるけい酸カルシウム板タイプ2の1.0けい酸カルシウム板に該当)を2つ用意する(符号61,62)。
次に、長さ40mm、幅40mm、厚さ1mmに調整したTMテープ(TM工法で使用する両面粘着テープ)を6本用意する(符号601〜606)。
TMテープを、両側の1.0FK基材61,62上に3本ずつ、均等間隔で載せ、その間に接着剤を4本塗布する(符号611〜614)。接着剤は、径約8mmのノズルを備えた容器に収容し、該ノズルから一定量を線状に塗布するものとする。なお、TMテープ601〜606は、1.0FK基材に接着させず、接着剤の塗布厚さを1mm、長さを40mmにするためのスペーサーとして使用する。このようにして、接着剤の塗布された1.0FK基材61,62を得る(以下、試験用ボードという)。
続いて、試験用ボードを、引張基材70の両側に図8に示すように貼り合せる。引張基材70も、1.0FK基材から構成されている。引張基材70は、試験用ボードの長さ方向の中央部で分断され、不連続となっている。なお、試験用ボードを引張基材70に貼り合わせるときは、両者の距離がTMテープ601〜606の厚さに相当する1mm付近となるように静的に押し、過度に押し過ぎないように注意する。このとき、試験用ボードからはみ出した接着剤は、硬化しないうちに拭き取る。これにより、接着剤の塗布量は、厚さ1mm、幅40mm、長さ40mmとなり、試験体が形成される。
上記の手順にて作製した試験体を23℃−50%RHに調整された部屋にて10日間養する。
なお、養生5日後、試験体における引張基材70に、下記で説明する試験を行なうための、変位量測定用のパイゲージPI−5−50(東京測器研究所製)取り付け用のコマPIF−21−50(東京測器研究所製)をエポキシ系接着剤で貼り付ける。
【0015】
試験方法
試験機は、オリエンテック製テンシロン万能試験機RTC−1350Aを使用し、試験体における引張基材70の上下部分を試験機のチャックに挟み、上側一方より引張力を加える。
引張力を加えたときの変位量(mm)と荷重値(N)は、変位量測定用のパイゲージと荷重を測定する荷重計TCLZ−5KNA(東京測器研究所製)をデータロガーTDS−302(東京測器研究所製)に接続し、その数値を読み取る。
【0016】
特に本発明では、外周部付近の第一接着剤104の硬化後の硬度に対し、開口部付近の第二接着剤106の硬化後の硬度が、1.5〜5倍であることが好ましく、2〜4倍であることがさらに好ましい。硬度の差が上記の範囲であることにより、開口部102の周辺部の亀裂防止効果をさらに高めることができる。
また、外周部付近の第一接着剤104の硬化後の硬度は、4.7N/cm2〜14.1N/cm2であることが好ましく、6.3N/cm2〜12.5N/cm2であることがさらに好ましい。
開口部102付近の第二接着剤106の硬化後の硬度は、7.0N/cm2〜70.5N/cm2であることが好ましく、9.4N/cm2〜50.0N/cm2であることがさらに好ましい。開口部102付近の第二接着剤106の硬化後の硬度を上記のように設定することにより、開口部102の補強効果を発現することができ、開口部102の周辺部の亀裂防止効果をさらに高めることができる。
第一接着剤104および第二接着剤106は、弾性変形による収縮応力吸収という理由から、1液変性シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂等が好ましい。
なお、第一接着剤104および第二接着剤106は市販されているものを利用することができ、例えば第一接着剤104としては、コニシ社製商品名:ボンドMPX−1等が挙げられ、第二接着剤106としては、セメダイン社製商品名ボードロック310等が挙げられる。
【0017】
無機質窯業系化粧板10のサイズは、内装材としての用途や施工場所等によって適宜決定されるものであるが、通常、1〜2m2であり、厚みは通常4〜10mmである。また、基材の見掛け密度は0.6〜1.6である。なお、基材の見掛け密度は、JIS−A−5430 10.5「見掛け密度試験」により求めた。
【0018】
次に、前記のような開口部を有する無機質窯業系化粧板10を下地上に設置する具体的手段について説明する。なお、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
まず、下地表面のゴミや油分等を除去し、よく乾燥させる。無機質窯業系化粧板10の設置位置を確認した後、無機質窯業系化粧板10の裏面の外周部付近に第一接着剤104を塗布し、開口部付近に第二接着剤106を塗布する。該接着剤が硬化するよりも前に、無機質窯業系化粧板10の裏面を下地上の所定の位置に貼り付け、押圧しながら固定し、該接着剤を硬化させ、養生する。
【0019】
第一接着剤104の塗布厚さは、例えば0.5〜1.5mmであり、好ましくは0.8〜1.2mmである。第二接着剤106の塗布厚さも、例えば0.5〜1.5mmであり、好ましくは0.8〜1.2mmである。
第一接着剤104および第二接着剤106の塗布方法は特に制限されず、接着剤を収納する容器から直接塗布する方法、各種コーターを用いて塗布する方法等、適宜決定される。
第一接着剤104および第二接着剤106の塗布幅は特に制限されないが、例えば 第一接着剤104が20〜60mmであり、好ましくは30〜50mmであり、第二接着剤106も20〜60mmであり、好ましくは30〜50mmである。
なお本発明でいう外周部付近とは、例えば無機質窯業系化粧板10の端部から内側方向に向かって例えば500mmまでの範囲であり、開口部付近とは、例えば開口部102の縁部から外周部方向に向かって例えば50mmまでの範囲である。
【0020】
これとは別に、本発明では、無機質窯業系化粧板10の裏面に両面粘着テープを貼着し、接着剤の硬化が完了する前に、無機質窯業系化粧板10を下地上に仮止めすることが特に好ましい。
図2は、本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の他の実施形態の平面図である。
図2において、本発明に用いられる無機質窯業系化粧板10は、図1と同様に、開口部102を有するとともに、その外周部付近に第一接着剤104が塗布され、開口部付近に第二接着剤106が塗布されているが、第一接着剤104よりもさらに外側に両面粘着テープ204が、また第二接着剤106の内側の開口部周縁部に沿って両面粘着テープ206がそれぞれ貼着されている。
この形態では、無機質窯業系化粧板10の裏面に第一接着剤104および第二接着剤106をそれぞれ塗布した後に下地上に貼り付ける際、両面粘着テープ204,206によって無機質窯業系化粧板10が下地上に仮止めされるために、接着剤が硬化するまで無機質窯業系化粧板10を下地上に押圧しながら固定する必要がないため、作業性に優れ好ましい。
両面粘着テープ204,206は、市販されているものを利用することができ、例えばコニシ社製商品名ボンドTMテープR1等が挙げられる。
両面粘着テープ204,206の幅は、無機質窯業系化粧板10のサイズ等に応じて決定されるが、例えば20〜30mmである。両面粘着テープ204,206の幅が狭すぎると、仮止め効果が不十分となる。逆に幅が広すぎると長期耐久性に問題を生じる。
【0021】
また本発明の別の形態では、第一接着剤104を断続的に塗布し、かつ第二接着剤106を連続状に塗布する形態が特に好ましい。このようにすることにより、開口部102の周辺部への亀裂防止効果を一層高めることができる。
この場合、第一接着剤104の硬化後の硬度と第二接着剤106の硬化後の硬度とが同一、例えば、第一接着剤104と第二接着剤106とが同一の接着剤であっても、開口部の周辺部に亀裂が発生が防止できるという本発明の効果を奏することができる。しかしながら、前記の形態と同様に、第一接着剤104の硬化後の硬度が、第二接着剤106の硬化後の硬度よりも低いことがより好ましい。
図3は、本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の他の実施形態の平面図である。
図3において、本発明に用いられる無機質窯業系化粧板10は、図1と同様に、開口部102を有するとともに、その外周部付近に第一接着剤104が塗布され、開口部付近に第二接着剤106が塗布されているが、第二接着剤106が連続状(連続線状)に、第一接着剤104が断続状(破線状)に塗布されている。図3の形態において、第一接着剤104は、ほぼ等間隔に形成された塗布部からなっている。未塗布部1044の合計の長さは、第一接着剤104を連続状に塗布したと仮定した場合、そのうちの20〜50%を構成するのが好ましい。なお、図3において、図2で示したように両面粘着テープ204,206を貼着するのも好ましい形態である。
【0022】
本発明における下地は、特に制限されないが、石膏板、けい酸カルシウム板、維補強セメント板等が挙げられる。中でも、無機質窯業系化粧板10としてけい酸カルシウム板または繊維強化セメント板を使用し、下地として石膏板を使用した場合は、両者の経時による寸法変化が顕著であるので、本発明の効果が一層良好に発現し、好ましい。なお、下地の形状は特に制限されないが、開口部を有する無機質窯業系化粧板を設置する場合は、下地にも対応箇所に開口部が設けられることが多い。
【0023】
なお上記では、第一接着剤104を外周部全体にわたり塗布し、第二接着剤106を開口部102の外周全体にのみ塗布する形態を説明したが、本発明はこれに制限されない。例えば、図4に示すように、第一接着剤104を外周部の二辺のみに塗布し、第二接着剤106を開口部102から外周部に向かって伸びるように塗布してもよい。
両面粘着テープ204,206の貼着場所も任意であり、例えば図4においては、第一接着剤104よりもさらに外側に両面粘着テープ204を貼着するとともに、外周方向に向かって伸びる第二接着剤106に沿って両面粘着テープ206’をさらに貼着してもよい。
【0024】
また、上記の各形態において、第一接着剤104と第二接着剤106との間に、さらに第三接着剤502を塗布してもよい。この第三接着剤502は、次の二つの態様のうちのいずれかであるのが好ましい。
(1)図5に示すように、第一接着剤104と第二接着剤106との間に、第三接着剤502を、塗布された第二接着剤106を囲うようにさらに塗布する。第三接着剤502は、硬化後の硬度が、第二接着剤106の硬化後の硬度よりも低いものを用いる。例えば、第一接着剤104と同一の接着剤が挙げられる。それ以外の条件は、図1および2で説明した形態と同様である。
(2)図5の形態において、第三接着剤502を断続的に塗布する。このとき、第三接着剤502の硬化後の硬度は、第二接着剤106の硬化後の硬度と同一、例えば第二接着剤106と同一の接着剤を用いることができる。なお、第三接着剤502の硬化後の硬度は、第二接着剤106の硬化後の硬度よりも低いことがより好ましい。それ以外の条件は、図3で説明した形態と同様である。
なお、第三接着剤502を塗布する上記形態は、図4に示す接着剤および両面粘着テープの適用形態に採用するのが特に実用に適している。すなわち、図6に示すように、第一接着剤104を外周部の二辺のみに塗布し、第二接着剤106を開口部102から外周部に向かって伸びるように塗布し、第一接着剤104よりもさらに外側に両面粘着テープ204を貼着するとともに、第三接着剤502を、第一接着剤104と並行するように塗布してもよい。このとき、前記(2)に記載したように、第三接着剤502を断続的に塗布してもよい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は、下記例に制限されるものではない。
【0026】
実施例1
図7に示す試験体を用意した。無機質窯業系化粧板10は、開口部102を有するとともに、その外周部付近に第一接着剤104が塗布され、開口部付近に第二接着剤106が塗布されている。また、第一接着剤104よりもさらに外側に両面粘着テープ204が、また第二接着剤106の内側の開口部周縁部に沿って両面粘着テープ206がそれぞれ貼着されている。
無機質窯業系化粧板10は、見掛け密度が1.0g/cm3のけい酸カルシウム板を基材とし、その表面にウレタン系樹脂塗料による塗膜を形成した化粧板(エーアンドエーマテリアル社製商品名ステンド#500,厚さ6mm)を使用した。
無機質窯業系化粧板10の縦方向の長さL1は900mmであり、横方向の長さL2は900mmである。開口部102の縦方向の長さA1は300mmであり、横方向の長さA2は100mmである。
第一接着剤104の硬化後の硬度は、10.2N/cm2であり、第二接着剤106の硬化後の硬度は、31.3N/cm2である。
第一接着剤104としては、(コニシ社製商品名ボンドMPX−1)を使用し、第二接着剤106としては、(セメダイン社製商品名ボードロック310)を使用した。
第一接着剤104の塗布厚さは1mmであり、第二接着剤106の塗布量も1mmである。
第一接着剤104の塗布幅は40mmであり、第二接着剤106の塗布幅も40mmである。
両面粘着テープ204,206としては、(コニシ社製商品名ボンドTMテープR1)を使用し、テープ幅は25mmである。
【0027】
上記の無機質窯業系化粧板10を石膏板からなる下地上に、所定の位置でもって貼り付け、試験体とした。なお、該石膏板は、無機質窯業系化粧板10の開口部102に対応する箇所に、同じサイズの開口部を形成したものである。
この試験体を、23℃、10%RHの環境を維持する恒温恒湿装置の中に入れ、20日間静置した。
試験終了後、無機質窯業系化粧板10の開口部102の隅角部を観察したところ、亀裂は何ら生じていなかった。
【0028】
実施例2
実施例1において、図3に示すように外周部を第二接着剤106に変更し、これを断続状に塗布したこと以外は、実施例1を繰り返した。なお、未塗布部1044の合計の長さは、第一接着剤104を連続状に塗布したと仮定した場合、そのうちの50%を構成するものとした。また、恒温恒湿装置の環境条件は実施例1と同様とした。
試験終了後、無機質窯業系化粧板10の開口部102の隅角部を観察したところ、亀裂は何ら生じていなかった。
【0029】
実施例3
実施例2において、外周部を第一接着剤104に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
試験終了後、無機質窯業系化粧板10の開口部102の隅角部を観察したところ、亀裂は何ら生じていなかった。
【0030】
なお、上記の実施例1および2において、両面粘着テープ204,206を用いない場合、施工性は損なわれたものの、亀裂に関しては同様の結果を得た。
【0031】
比較例1
実施例1において、第一接着剤104を、第二接着剤106に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。その結果、開口部102の隅角部のすべてに、幅0.1〜0.5mmの各1本の亀裂が確認された。
【0032】
比較例2
実施例1において、第一接着剤104の代わりに第二接着剤106を、第二接着剤106の替わりに第一接着剤104を使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。その結果、開口部102の隅角部のすべてに、幅0.1〜0.5mmの各1本の亀裂が確認された。
【0033】
なお、上記各実施例および比較例において、図4に示すように、第一接着剤104を外周部の二辺のみに塗布し、第二接着剤106を開口部102から外周部に向かって伸びるように塗布し、かつ、第一接着剤104よりもさらに外側に両面粘着テープ204を貼着するとともに、外周方向に向かって伸びる第二接着剤106に沿って両面粘着テープ206’をさらに貼着した場合についても、同様の結果を得た。
また下地として、けい酸カルシウム板を用いた場合も、同様の結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の施工方法は、建築物の天井部や壁部への、開口部を有する無機質窯業系化粧板の取り付けに、特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の一実施形態の平面図である。
【図2】本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の他の実施形態の平面図である。
【図3】本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の他の実施形態の平面図である。
【図4】本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の他の実施形態の平面図である。
【図5】本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の他の実施形態の平面図である。
【図6】本発明の施工方法に用いられる、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の他の実施形態の平面図である。
【図7】実施例1で用いた、開口部を有する無機質窯業系化粧板の裏面の平面図である。
【図8】接着剤の硬化後の硬度を測定するための試験体を説明するための図であり、(a)は試験体の断面説明図であり、(b)は1.0FK基材に接着剤を塗布した際の平面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 無機質窯業系化粧板
102 開口部
104 第一接着剤
106 第二接着剤
204,206 両面粘着テープ
61,62 1.0FK基材
70 引張基材
502 第三接着剤
601,602,603,604,605,606 TMテープ
611,612,613,614 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地上に、開口部を有する無機質窯業系化粧板を設置する無機質窯業系化粧板の施工方法であって、
前記無機質窯業系化粧板の裏面の前記開口部付近および外周部付近に接着剤を塗布し、前記無機質窯業系化粧板の裏面を前記下地上に接着させる工程を少なくとも有し、
前記外周部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度が、前記開口部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度よりも低いことを特徴とする無機質窯業系化粧板の施工方法。
【請求項2】
下地上に、開口部を有する無機質窯業系化粧板を設置する無機質窯業系化粧板の施工方法であって、
前記無機質窯業系化粧板の裏面の前記開口部付近および外周部付近に接着剤を塗布し、前記無機質窯業系化粧板の裏面を前記下地上に接着させる工程を少なくとも有し、
前記無機質窯業系化粧板の裏面の前記開口部付近には、接着剤を連続状に塗布し、かつ前記外周部付近には、前記接着剤と硬化後の硬度が同一または前記接着剤よりも硬化後の硬度が低い接着剤を断続状に塗布することを特徴とする無機質窯業系化粧板の施工方法。
【請求項3】
前記外周部付近への断続状の接着剤の塗布量が、連続状に塗布した場合の塗布量の20%以上50%以下となるように接着剤を塗布することを特徴とする請求項2の無機質窯業系化粧板の施工方法。
【請求項4】
前記外周部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度に対し、前記開口部付近に塗布された接着剤の硬化後の硬度が、1.5〜5倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機質窯業系化粧板の施工方法。
【請求項5】
前記無機質窯業系化粧板の裏面に両面粘着テープを貼着し、前記接着剤の硬化が完了する前に、前記無機質窯業系化粧板を前記下地上に仮止めすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無機質窯業系化粧板の施工方法。
【請求項6】
前記無機質窯業系窯業系基材が、けい酸カルシウム板または繊維強化セメント板であるとともに、前記下地が石膏板からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の無機質窯業系化粧板の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−203689(P2009−203689A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46108(P2008−46108)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】