説明

無機酸化物の製造方法

【課題】 無機酸化物の粒子を凝集させずに反応液から分離・回収し、いつでも無機酸化物を単分散状態に戻すことができる形態で保存する方法、並びに無機酸化物を摂氏数百度以上の高温で焼成しても粒子同士が互いに焼結しない方法を提供する。
【解決手段】 無機酸化物の粒子が懸濁した液に非イオン性高分子凝集剤を添加し、好適には、斯様に非イオン性高分子凝集剤を添加した後に、無機酸化物の粒子が懸濁した液に固体状COを添加して、該無機酸化物の粒子を回収することを特徴とする無機酸化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機酸化物の粒子同士が互いに凝集することを防止し、再分散性の良好な無機酸化物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物の粒子を製造する方法としては種々のものが知られている。特にシリカ,チタニア,ジルコニア,アルミナを主成分とする無機酸化物またはシリカと結合可能な金属酸化物とシリカとを主な構成成分とする単分散した無機酸化物を製造する方法が知られている(特許文献1〜8、及び非特許文献1〜2参照)。
【0003】
上記の方法で作られる無機酸化物は微細な粒子状であり、反応後に得られる反応液は、無機酸化物を含む懸濁液である。このような無機酸化物を反応液から分離するためには、反応液の溶媒成分を揮発する方法や遠心分離機を用いる方法、ミクロフィルターでろ過する方法などが採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−110414号公報
【特許文献2】特開昭58−151321号公報
【特許文献3】特開昭58−152804号公報
【特許文献4】特開昭58−156524号公報
【特許文献5】特開昭58−156526号公報
【特許文献6】特開昭59−101409号公報
【特許文献7】特開昭59−104306号公報
【特許文献8】特開2003−277025号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「コミュニケーションズ・オブ・ジ・アメリカン・セラミックス・ソサエティー(Communications of the American Ceramic Society)」、(米国)、1981年、第65巻、C199−C201
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェイス・サイエンス(Journal of Colloid and Interface Science)」、(米国)、1974年、第48巻、第2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の分離方法で回収された無機酸化物の粒子は、互いに凝集しやすく、長期間保存すると粒子同士が粒子の表面間で結合し合う現象が起きた。このように凝集した上記無機酸化物を溶媒に再び懸濁させても容易に単分散状態の無機酸化物は得られなかった。
【0007】
また、従来の分離方法で回収した無機酸化物の粒子をそのまま摂氏数百度以上の高温で焼成すると粒子同士が互いに焼結し、焼成後に於いても焼成前の粒子の形状を保持させることは容易でなかった。一方、このような問題点を解決するために、エチレングリコールなどのグリコール類を分散剤として添加することによって凝集を軽減させる手段が知られている(例えば、特許文献8段落(0007))。しかしながら、その凝集抑制効果は充分ではなく、改良が望まれていた。
【0008】
このように無機酸化物の粒子を凝集させずに反応液から分離・回収し、いつでも無機酸化物を単分散状態に戻すことができる形態で保存する方法、並びに無機酸化物を摂氏数百度以上の高温で焼成しても粒子同士が互いに焼結しない方法を開発することは重要な技術課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる技術課題を解決すべく、鋭意研究した結果、無機酸化物の粒子が懸濁した液から該無機酸化物の粒子を容易に分離・回収し、単分散状態で長期間保存できると同時に、摂氏数百度以上の高温で焼成しても該無機酸化物を焼結させない方法を見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、無機酸化物の粒子が懸濁した液に非イオン性高分子凝集剤を添加し、無機酸化物の粒子を回収することを特徴とする無機酸化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明は非イオン性高分子凝集剤を無機酸化物の粒子の懸濁液に添加することで、無機酸化物を単分散状態のままで容易に分離・回収し、長期にわたって安定に保存することを可能とした。これらは、非イオン性高分子凝集剤を溶解する溶媒で洗浄、分離するかあるいは焼却することで、極めて容易に再分散可能な無機酸化物の粒子が得られる。また非酸化性雰囲気下で焼成すれば、単分散のまま長期間安定に保存することが可能である。この場合には、カーボンが無機酸化物の粒子に付着しているので、さらに酸化性雰囲気で焼却することで容易に単分散した無機酸化物の粒子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いる無機酸化物の平均粒径は0.05〜5μm、好適には0.07〜1μmであることが、沈降分離させることが容易であるために好ましい。
【0013】
本発明で用いる無機酸化物は特に限定されないが、シリカ,チタニア,ジルコニア,アルミナを主な構成成分とする無機酸化物及びシリカと結合可能な金属酸化物とシリカとを主な構成成分とする無機酸化物であることが、本発明の効果が顕著に現れるために好ましい。
【0014】
これらの無機酸化物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、シリカの場合、珪酸ナトリウムなどの無機珪素化合物あるいはテトラエチルシリケートなどの有機珪素化合物を加水分解して得る方法がある。これらの方法で得られるシリカ粒子は0.1〜1.0μm程度の球形あるいはそれに近い形状のものである。また、シリカと結合可能な金属酸化物とシリカとを主な構成成分とする無機酸化物は、たとえば、以下の方法によって得られる。すなわち、加水分解可能な有機珪素化合物と加水分解可能な金属の有機化合物とを含む混合溶液を該有機珪素化合物および金属の有機化合物は溶解するが、反応生成物は実質的に溶解しないアルカリ性溶媒中に添加し、加水分解を行って得る方法である。この方法では、後述する実施例に示されるような条件下において、球状でその粒度分布の標準偏差値が1.30以下、好適には1.2〜1.0の均一な粒度分布をもつ無機酸化物が得られる(標準偏差値の定義は後述する。)。
【0015】
金属の有機化合物に用いる金属としては、リチウム,カリウム,ナトリウム等の周期律表第I族金属;マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム等の周期律表第II族金属;アルミニウム,イットリウム,インジウム,ホウ素,ランタン等の周期律表第III族金属;チタニウム,ジルコニウム,ゲルマニウム,スズ等の周期律表第IV族金属などが例示される、これらの金属の有機化合物としては、LiOC、KOCH、NaOCH、NaO−isoC、Mg(O−isoC、Mg(OCH、Ca(OC、Sr(OCH、Ba(OCH、Al(O−isoC、Al(O−nC、Y(O−isoC、B(OC、La(O−nC、In(O−isoC、Ti(O−isoC、Ti(O−nC、Ti(OH)〔OCH(CH)COOH〕、Zr(O−nC、Ge(O−nC、Sn(O−nCなどのアルコキサイドが例示される。
【0016】
本発明で用いられる無機酸化物の粒子が懸濁した液(以下、単に懸濁液ともいう。)は、本発明の非イオン性高分子凝集剤が室温で溶解しにくい溶媒であることが好ましい。例えば、メタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等のアルコール又は、これらのアルコールと水の混合物、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性の極性溶媒、あるいは前述の無機酸化物の製造方法で用いられる反応液などが挙げられる。該懸濁液中の無機酸化物は1〜40質量%、好適には2〜25質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明に用いる非イオン性高分子凝集剤は特に限定されず用いられる。陽イオン性又は陰イオン性高分子凝集剤を用いた時は、本発明の効果が得られないので好ましくない。また、非イオン性凝集剤は高分子体であることが重要であり、エチレングリコールなどのグリコール類では、凝集抑制効果は小さく、無機酸化物の粒子を凝集させずに反応液から分離・回収すること充分でないため、単分散状態ではなく凝集が残る。ここで、本発明において非イオン性高分子凝集剤は、重量平均分子量が100以上のものをいい、好適には重量平均分子量が1000〜100000のものである。
【0018】
懸濁液に後に非イオン性高分子凝集剤を添加した後、非イオン性高分子凝集剤を焼却して除去する必要がある場合には、焼却の難易度,分解物の毒性,腐食性などの点で、デンプン,ポリアルキレンオキシドが好ましい。特に好ましくは、その凝集能,単分散性,焼却の容易さの点から重量平均分子量10,000以上、好適には20000〜50000のポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。非イオン性高分子凝集剤の添加量は、特に限定されないが、無機酸化物の粒子表面を覆うのに十分な量であることが好ましく、一般には無機酸化物100質量部に対しおよそ10〜50質量部、好適には15〜45質量部が好ましい。
【0019】
非イオン性高分子凝集剤はあらかじめ無機酸化物の粒子を懸濁した液とよく溶解し合う水あるいは有機溶媒などに室温あるいは加温下で溶解させて懸濁液に添加するのが好ましく、その溶媒量は特に限定されないが、該非イオン性高分子凝集剤を溶解するのに必要な最小量で十分である。
【0020】
非イオン性高分子凝集剤を添加する際、無機酸化物の粒子を懸濁した液の温度は特に限定されないが、無機酸化物の沈降分離を容易に短時間に行うためには、30℃以下、好適には20℃以下、さらに好適には20〜−5℃に冷却しておくか、該非イオン性高分子凝集剤を添加したのちに30℃以下、好適には20℃以下、さらに好適には20〜−5℃に冷却することが好ましい。また、該非イオン性高分子凝集剤を添加したのちに固体状CO(ドライアイス),液体窒素等を適当量、例えば、懸濁液100Lに対して10g以上、好適には100〜5000g添加すれば、懸濁液全体を20℃以下に冷却する必要がなくしかも急速に沈降分離することができ、更に、凝集抑制効果が高まるため工業的には特に好ましい。入手が容易で、取扱い易いことから、固体状COを添加するのが特に好ましい。
【0021】
上記のように、非イオン性高分子凝集剤で凝集させた無機酸化物は通常用いられるデカンテーション,ろ過,遠心ろ過などの方法で容易に分離・回収することができる。
【0022】
分離・回収された無機酸化物はそのまま保存できるが、さらに窒素,アルゴン,水素などの非酸化物性雰囲気中で焼成すれば、焼結させずに単分散状態で保存することができる。焼成温度及び焼成時間は特に制限されないが、非イオン性高分子凝集剤を十分に炭化させ得る条件を選択することが好ましい。例えば、300〜600℃、好ましくは400〜500℃で、10分以上、好ましくは1〜2時間程度保持することにより、該非イオン性高分子凝集剤を十分に炭化させることができる。さらに目的の温度まで昇温し、酸化性雰囲気下で焼成することにより、無機酸化物の粒子同士を焼結させずに焼成することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお以下の実施例に示した無機酸化物の諸物性(粒子径・粒子径分布の標準偏差値・比表面積・50%粒径)の測定は以下の方法にしたがった。
(1)粒子径および粒子径分布の標準偏差値
粉体の走査型電子顕微鏡写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数(n:30個以上)および粒子径(直径Xi)を求め、次式により算出される。
【0024】
【数1】

(2)比表面積
柴田化学器機工業(株)迅速表面測定装置SA−1000を用いた。測定原理はBET法である。
(3)50%粒径
堀場遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−500を用いた。測定原理は液相沈降法である。
【0025】
実施例1
テトラエチルシリケート158g(Si(OC:コルコート社製,製品名エチル−シリケート28)をメタノール1.2Lに溶かし、滴下液を調整した。次に、撹拌機付きの内容器10Lのガラス製反応容器にメタノール2.5Lを導入し、これに500gのアンモニア水溶液(濃度25重量%)を加えて、アンモニア性アルコール溶液を調整し、これに上記の滴下液を反応容器の温度を20℃に保ちながら約2時間かけて添加し、反応生成物を析出させた。得られた反応液を15℃に冷却し、更に1時間撹拌を続けた後、乳白色の反応液にポリエチレングリコール(平均分子量:20000,和光純薬社製)13.7gをイソプロパノール200mLに加熱溶解した液を撹拌下に添加し、さらに15分間撹拌を続けて止めた。一晩静置後、上澄み液をデカンテーションで除き、さらにNo.5C(東洋ろ紙社製)のろ紙を用いてろ別し、乳白色の粉体を得た。この粉体を6ヶ月間室温大気中にて放置したのち、水中で撹拌してポリエチレングリコールを溶解し、遠心分離法にて白色粉体を得た。この粉体の粒度分布を測定した結果、50%粒径が0.23μmであった。
【0026】
他方、ポリエチレングリコールを添加し、ろ別回収した粉体を窒素雰囲気下で500℃,1時間焼成し、さらに900℃に昇温して4時間焼成したのち800℃に降温し、雰囲気を窒素から空気に切り替えて2時間焼成し、シリカを得た。
【0027】
このシリカは走査型電子顕微鏡の観察から粒子径は0.10〜0.18μmの範囲にあり、平均粒子径は0.14μmであり、形状は真球でさらに粒子径の分布の標準偏差値は1.22で、比表面積23m/gであった。また、粒度分布計による測定では50%粒径が0.21μmであった。なおポリエチレングリコールを添加する直前に採取した焼成前のシリカの50%粒径は0.14μmであった。
【0028】
比較例1
実施例1と同様にして得られた反応液にポリエチレングリコール添加せずに遠心分離し、上澄み液をデカンテーションで除いて反応生成物を回収し、6ヶ月間そのまま室温大気中にて放置したのち粒度分布計による測定をおこなった。その結果、得られたシリカの50%粒径は0.43μmであった。さらに、この粉体を窒素雰囲気下で500℃,1時間焼成し、さらに900℃に昇温して4時間焼成したのち800℃に降温し、雰囲気を窒素から空気に切り替えて2時間焼成し、シリカを得た。このシリカの50%粒径が4.1μmであった。
【0029】
比較例2
実施例1と同様にして得られた反応液にエチレングリコール(和光純薬社製)28gをイソプロパノール200mLに溶解した液を撹拌下に添加し、さらに15分間撹拌を続けて止めた。一晩静置後、上澄み液をデカンテーションで除き、さらにNo.5C(東洋ろ紙社製)のろ紙を用いてろ別し、乳白色の粉体を得た。この粉体を6ヶ月間室温大気中にて放置したのち、水中で撹拌してエチレングリコールを溶解し、遠心分離法にて白色粉体を得た。このシリカの50%粒径は0.28μmであった。
【0030】
他方、エチレングリコールを添加し、ろ別回収した粉体を窒素雰囲気下で500℃,1時間焼成し、さらに900℃に昇温して4時間焼成したのち800℃に降温し、雰囲気を窒素から空気に切り替えて2時間焼成し、シリカを得た。このシリカの50%粒径が3.3μmであった。なおエチレングリコールを添加する直前に採取したシリカの50%粒径は0.14μmであった。
【0031】
実施例2
テトラエチルシリケート158g(Si(OC:コルコート社製,製品名エチル−シリケート28)をメタノール1.2Lに溶かし、滴下液を調整した。次に、撹拌機付きの内容器10Lのガラス製反応容器にメタノール2.5Lを導入し、これに500gのアンモニア水溶液(濃度25重量%)を加えて、アンモニア性アルコール溶液を調整し、これに上記の滴下液を反応容器の温度を20℃に保ちながら約2時間かけて添加し、反応生成物を析出させた。得られた反応液を15℃に冷却し、更に1時間撹拌を続けた後、乳白色の反応液にポリエチレングリコール(平均分子量:20000,和光純薬社製)13.7gをイソプロパノール200mLに加熱溶解した液を撹拌下に添加し、さらに15分間撹拌を続けて止めた。その後、固形状CO(ドライアイス)約50gを添加し、一晩静置後、上澄み液をデカンテーションで除き、さらにNo.5C(東洋ろ紙社製)のろ紙を用いてろ別し、乳白色の粉体を得た。この粉体を6ヶ月間室温大気中にて放置したのち、水中で撹拌してポリエチレングリコールを溶解し、遠心分離法にて白色粉体を得た。この粉体の粒度分布を測定した結果、50%粒径が0.14μmであった。
【0032】
他方、ポリエチレングリコールを添加し、ろ別回収した粉体を窒素雰囲気下で500℃,1時間焼成し、さらに900℃に昇温して4時間焼成したのち800℃に降温し、雰囲気を窒素から空気に切り替えて2時間焼成し、シリカを得た。
【0033】
このシリカは走査型電子顕微鏡の観察から粒子径は0.10〜0.18μmの範囲にあり、平均粒子径は0.14μmであり、形状は真球でさらに粒子径の分布の標準偏差値は1.05で、比表面積25m/gであった。また、粒度分布計による測定では50%粒径が0.15μmであった。なおポリエチレングリコールを添加する直前に採取した焼成前のシリカの50%粒径は0.14μmであった。
【0034】
実施例3
0.1%塩酸4.0gとテトラエチルシリケート158g(Si(OC:コルコート社製,製品名エチルシリケート28)とをメタノール1.2Lに溶かし、この溶液を室温で約2時間撹拌しながら加水分解した。その後、これをテトラブチルチタネート(Ti(O−nC:日本曹達社製)40.9gをイソプロパノール0.5Lに溶かした溶液に撹拌しながら添加し、テトラエチルシリケートの加水分解物とテトラブチルチタネートとの混合溶液を調整した。次に、撹拌機付きの内容積10Lのガラス製反応容器にメタノール2.5Lを導入し、これに500gのアンモニア水溶液(濃度25重量%)を加えてアンモニア性アルコール溶液を調整し、これにシリカの種子を作るための有機珪素化合物としてテトラエチルシリケート4.0gをメタノール100mlに溶かした溶液を約5分間かけて添加し、添加終了5分後、反応液がわずかに乳白色のところで、さらに続けて上記の混合溶液を反応容器の温度を20℃に保ちながら約2時間かけて添加し反応生成物を析出させた。その後、さらに続けてテトラエチルシリケート128gをメタノール0.5Lに溶かした溶液を該反応生成物が析出した系に約2時間かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌を続けた後、乳白色の反応液にポリエチレングリコール(平均分子量:20,000,和光純薬社製)28gをイソプロパノール0.4Lに加熱溶解した液を撹拌下に添加し、さらに15分間撹拌を続けて止めた。その後、固形状CO(ドライアイス)約50gを添加し、1時間静置後、ろ布(タナベウィルテック社製)を用いて遠心ろ別し、乳白色の粉体を得た。この際、粉体がろ布を通過してしまうようなことはほとんどなく、ほぼ完全に回収することができた。
【0035】
次に、この乳白色の粉体を窒素雰囲気下で500℃,1時間焼成し、さらに1000℃に昇温して3時間焼成したのち850℃に降温し、雰囲気を窒素から空気に切り替えて2時間焼成し、シリカとチタニアを主な構成成分とする無機酸化物を得た。
【0036】
この無機酸化物は走査型電子顕微鏡の観察から、粒子径は0.20〜0.30μmの範囲にあり、平均粒子径は0.26μmであり、形状は真球で、さらに粒子径の分布の標準偏差値は1.08で、比表面積15m/gであった。また、粒度分布計による測定では50%粒径が0.28μmであった。なおポリエチレングリコールを添加する直前に採取した焼成前の該無機酸化物の50%粒径は0.27μmであった。
【0037】
実施例4
表1に示した混合溶液の原料組成,非イオン性高分子凝集剤,回収法,及び焼成条件以外は全て実施例3の製造方法と同様にして無機酸化物を得、その無機酸化物の物性を併せて表1に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例5
表2に示した混合溶液の原料組成,非イオン性高分子凝集剤,回収法,及び焼成条件以外は全て実施例3の製造方法と同様にして無機酸化物を得、その無機酸化物の物性を併せて表2に示した。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
実施例6
実施例1で用いたものと同様なテトラエチルシリケート52gおよびジルコニウムテトラブトキサイト(Zr(OC:日本曹達社製)15.6gをイソプロパノール0.2Lに溶かし、この溶液を100℃,窒素雰囲気下で30分間還流した。その後、室温まで戻し、これを混合溶液(A)とした。次に、テトラエチルシリケート52gおよびストロンチウムビスメトキサイド6.1gをメタノール0.2Lに仕込み、この溶液を80℃,窒素雰囲気下で30分間還流した。その後、室温まで戻し、これを混合溶液(B)とした。混合溶液(A)と混合溶液(B)とを室温で混合し、これを混合溶液(C)とした。
【0043】
次に撹拌機付の内容積10Lのガラス製反応容器にメタノール2.4Lを満たし、これに500gのアンモニア水(濃度25重量%)を加えてアンモニア性アルコール溶液を調整し、この溶液に先に調整した混合溶液(C)を、反応容器を20℃に保ちながら、約4時間かけて添加し、反応生成物を析出させた。その後、さらに続けてテトラエチルシリケート50gを含むメタノール0.5Lからなる溶液を該反応生成物が析出した系に約2時間かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌を続けた後、乳白色の反応液にポリエチレングリコール(平均分子量:20000,和光純薬社製)12gをイソプロパノール150mLに加熱溶解した液を撹拌下に添加し、さらに15分間撹拌を続けて止めた。その後、固形状CO(ドライアイス)約50gを添加し、1時間静置後、上澄み液をデカンテーションで除き、さらにNo.5C(東洋ろ紙社製)のろ紙を用いてろ別し、乳白色の粉体を得た。この際、粉体がろ紙を通過してしまうようなことはほとんどなく、ほぼ完全に回収することができた。
次に、この乳白色の粉体を窒素雰囲気下で450℃,1時間焼成し、さらに1000℃に昇温して4時間焼成したのち、850℃に降温し、雰囲気を窒素から空気に切り替えて2時間焼成し、シリカとジルコニアと酸化ストロンチウムとを主な構成成分とする無機酸化物を得た。
【0044】
この無機酸化物は、走査型電子顕微鏡の観察から、粒子径は0.10〜0.25μmの範囲にあり、平均粒径は0.17μmであり、形状は球形で、さらに粒子径の分布の標準偏差値は1.25で、比表面積26m/gであった。また、粒度分布計による測定では50%粒径が0.20μmであった。なお、ポリエチレングリコールを添加する直前に採取した焼成前の該無機酸化物の50%粒径は0.18μmであった。
【0045】
実施例7
表3に示した、混合溶液の原料組成、非イオン性高分子凝集剤、回収法及び焼成条件以外は、全て実施例6の製造方法と同様にして無機酸化物を得、その無機酸化物の物性を併せて表3に示した。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
実施例8
反応容器の温度を28℃にする以外は実施例3と同様の原料組成、条件で反応させ、ポリエチレングリコールの添加をおこない撹拌を止めた。その後、固体状CO(ドライアイス)約50gを添加し、1時間静置後ろ布(タナベウィルテック社製)を用いて遠心ろ別し、乳白色の粉体を得た。この際、粉体がろ布を通過してしまうようなことはほとんどなく、ほぼ完全に回収することができた。次に、実施例2と同様の条件で焼成し、シリカとチタニアを主な構成成分とする無機酸化物を得た。この無機酸化物は、走査型電子顕微鏡の観察から、粒子径は0.20〜0.30μmの範囲にあり、平均粒子径は0.25μmであり、形状は真球で、さらに粒子径の分布の標準偏差値は1.07で、比表面積16m/gであった。また、粒度分布計による測定では50%粒径が0.26μmであった。なおポリエチレングリコールを添加する直前に採取した焼成前の該無機酸化物の50%粒径は0.26μmであった。
【0049】
実施例9
実施例3と同様の原料組成及び条件で反応させ、ポリエチレングリコールを添加をおこない、さらに撹拌を続けながら液体窒素を約50g添加し、1時間静置後、実施例3と同様に遠心ろ別し、乳白色粉体を得た。この際、粉体がろ布を通過してしまうようなことはほとんどなく、ほぼ完全に回収することができた。次に、実施例3と同様の条件で焼成し、シリカとチタニアを主な構成成分とする無機酸化物を得た。この無機酸化物は、走査型電子顕微鏡の観察から、粒子径は0.20〜0.30μmの範囲にあり、平均粒子径は0.26μmであり、形状は真球で、さらに粒子径の分布の標準偏差値は1.09で、比表面積15m/gであった。また、粒度分布計による測定では50%粒径が0.26μmであった。なおポリエチレングリコールを添加する直前に採取した焼成前の該無機酸化物の50%粒径は0.27μmであった。
【0050】
実施例10
0.06%硫酸4.0gとテトラエチルシリケート158g(Si(OC:コルコート社製,製品名エチルシリケート28)とをイソプロパノール1.2Lに溶かし、この溶液を室温で約17時間撹拌しながら加水分解した。続いて、得られた反応溶液に、テトラブチルジルコネート(Zr(O−nC:日本曹達社製)40.9gを添加し、テトラエチルシリケートの加水分解物とテトラブチルジルコネートとの混合溶液を調整した。次に、撹拌機付きの内容積10Lのガラス製反応容器にアセトニトリル、イソブチルアルコールをそれぞれ1.9L、0.6Lを導入し、これに500gのアンモニア水溶液(濃度25重量%)を加えてアンモニア性アルコール溶液を調整した。次に、上記の混合溶液を反応容器の温度を40℃に保ちながら約6時間かけて添加し反応生成物を析出させた。その後、さらに続けてテトラエチルシリケート128gをメタノール0.5Lに溶かした溶液を該反応生成物が析出した系に約2時間かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌を続けた後、乳白色の反応液にポリエチレングリコール(平均分子量:20,000,和光純薬社製)28gをイソプロパノール0.4Lに加熱溶解した液を撹拌下に添加し、さらに15分間撹拌を続けて止めた。その後、固体状CO(ドライアイス)約50gを添加し、1時間静置後、ろ布(タナベウィルテック社製)を用いて遠心ろ別し、乳白色の粉体を得た。この際、粉体がろ布を通過してしまうようなことはほとんどなく、ほぼ完全に回収することができた。
【0051】
次に、この乳白色の粉体を窒素雰囲気下で500℃,1時間焼成し、さらに1000℃に昇温して3時間焼成したのち850℃に降温し、雰囲気を窒素から空気に切り替えて2時間焼成し、シリカとジルコニアを主な構成成分とする無機酸化物を得た。
【0052】
この無機酸化物は走査型電子顕微鏡の観察から、粒子径は0.15〜0.21μmの範囲にあり、平均粒子径は0.17μmであり、形状は真球で、さらに粒子径の分布の標準偏差値は1.07で、比表面積20m/gであった。また、粒度分布計による測定では50%粒径が0.18μmであった。なおポリエチレングリコールを添加する直前に採取した焼成前の該無機酸化物の50%粒径は0.19μmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物の粒子が懸濁した液に非イオン性高分子凝集剤を添加し、該無機酸化物の粒子を回収することを特徴とする無機酸化物の製造方法。
【請求項2】
無機酸化物の粒子が、平均粒子径0.05〜5μmである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
無機酸化物の粒子が、球状でその粒度分布の標準偏差値が1.30以下である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
無機酸化物が、シリカ,チタニア,ジルコニア,及びアルミナである請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
無機酸化物が、シリカと結合可能な金属酸化物とシリカとを主な構成成分とするものである請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
金属酸化物が、周期律表第I族,同第II族,同第III族及び同第IV族の金属からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
非イオン性高分子凝集剤がポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
非イオン性高分子凝集剤の添加を、無機酸化物の粒子が懸濁した液を30℃以下に冷却した後に行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
非イオン性高分子凝集剤を添加した後に、無機酸化物の粒子が懸濁した液を30℃以下に冷却することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
非イオン性高分子凝集剤を添加した後に、無機酸化物の粒子が懸濁した液に固体状COを添加することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
無機酸化物の粒子が懸濁した液に非イオン性高分子凝集剤を添加して無機酸化物の粒子を回収し、次いで該無機酸化物を非酸化性雰囲気下で焼成することを特徴とする無機酸化物の製造方法。

【公開番号】特開2011−168456(P2011−168456A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35114(P2010−35114)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】