説明

無機酸化物ネットワーク含有層を含む多層コーティングおよびその適用方法

【課題】無機酸化物ネットワークを含むコーティング層と、親水性でありかつ本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む液体組成物から堆積されたコーティング層とを含む、多層コーティングを提供すること。
【解決手段】本願において、多層コーティングが、開示される。この多層コーティングは、(1)無機酸化物ネットワークを含む第一層と;(2)その第一層の少なくとも一部の上に適用された第二層とを備える。この第二層は、親水性である少なくとも1つの液体組成物から堆積される。この液体組成物は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む。このような多層コーティングでコーティングされた基材もまた、本願において開示される。このような多層コーティングを基材に適用するための方法もまた、本願において開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の援用)
本願は、2004年5月28日に出願された、米国仮特許出願番号60/575,438号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、第一層および第二層を備える、多層コーティングに関する。このコーティングは、親水性かつ耐久性である。このコーティングは、例えば、有利な、洗浄容易特性、自己洗浄特性、防汚特性、曇り止め(anti−fogging)特性、静電気防止特性、および/または抗菌特性を示し得る。このコーティングは、特定の実施形態において、光触媒材料の光励起の際に優れた親水性を与えられ得る。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
親水性コーティングは、特定のコーティング適用(例えば、防汚特性、洗浄容易特性、自己洗浄特性、および/または曇り止め特性を示すコーティングされた表面が望ましいコーティング適用)のために有利である。このようなコーティングは、例として、野外環境に曝露される表面への適用のために、特に有用であり得る。建物構造および野外に曝露される他の物品は、とりわけ、種々の汚染物(例えば、土、油、埃、粘土)と接触する可能性がある。例えば、降雨は、このような汚染物を載せ得る。親水性コーティングが堆積された表面は、そのコーティングされた表面に沿って雨水が流れた場合にその雨水中の汚染物が表面に付着することを妨げることによって、防汚性であり得る。さらに、好天の間、空気により運ばれる汚染物は、表面に接触して付着し得る。親水性コーティングが堆積された表面は、この表面が、例えば、降雨の間に水と接触した場合にこれらの汚染物を洗い流す能力を有するので、自己洗浄性であり得る。
【0004】
自己洗浄特性、洗浄容易特性、および/または防汚特性を有するコーティングはまた、屋内汚染物(例えば、油および/または脂肪などの台所汚染物)に曝露される表面への適用のために有利であり得る。親水性コーティングが堆積された物品は、洗剤を使用することなく汚染物をそのコーティングから遊離させてその物品の表面からこれらの汚染物を除去するために、水中に浸漬されるか、水で濡らされるか、または水でリンスされ得る。
【0005】
曇り止め特性を有するコーティングは、同様に、多くの適用において特に有用であり得る。例えば、可視性が重要である表面を備える物品(例えば、風防、窓ガラス、眼鏡のレンズ、鏡、および他の類似の物品)は、曇り止め特性を有するコーティングから利益を得ることができる。なぜなら、それらの物品は、蒸気または水分凝縮液によって曇り得る表面を含むか、またはその表面に付着する水滴によってぼやけ得る表面を含むからである。物品の表面の曇りは、その表面が周囲大気の露点未満の温度に維持され、それによって、周囲空気中の水分の凝縮が生じてその物品の表面に水分凝縮物を形成する場合に生じることが、公知である。その凝縮物粒子が十分に小さく、その直径が可視光線の波長の約半分である場合、その粒子は、光を散乱し得、その表面は、見かけ上不透明になり、可視性の低下を引き起こす。
【0006】
親水性コーティングが堆積された表面は、曇り止め性であり得る。なぜなら、このようなコーティングは、別々の水滴を形成することなく、凝縮粒子を比較的均一な水の膜へと変換し得るからである。同様に、親水性コーティングが堆積された表面は、降雨または水の跳ね返りがその表面上に別個の水滴を形成することを妨げ得、これによって、窓、鏡および/またはアイウェアを通しての可視性を改善し得る。
【0007】
これらの利点および他の利点を考慮して、種々の親水性コーティング組成物が提唱されている。これらのコーティングのうちのいくつかは、ケイ素含有結合剤中に分散された光触媒物質の作用によって、親水性を達成する。例えば、特許文献1(’867特許)は、コーティング形成要素中に分散された粒子性光触媒を開示する。その光触媒は、好ましくは、0.1ミクロン以下の平均粒径を有する二酸化チタン粒子からなり、その二酸化チタンは、アナターゼ型またはルチル型のいずれかで使用され得る。コーティング形成要素は、硬化された場合にシリコーン樹脂のコーティングを形成し得る。このコーティング形成要素は、加水分解性シランの部分的加水分解と、その後に続く重縮合とによって形成されるオルガノポリシロキサンから構成される。’867特許において、シリコーンコーティング形成要素は、本質的に、かなり疎水性であるが、分散された光触媒の励起の際に、高い程度の水親和性(すなわち、親水性)がこのコーティングに与えられ得る。
【0008】
特許文献2は、1ナノメートル〜500ナノメートルの平均粒子直径を有する酸化チタンと、加水分解性ケイ素化合物の加水分解物と、溶媒とを含む、コーティングフィルム形成組成物を開示する。この加水分解性ケイ素化合物は、式Sin−1(OR)2n+2(nは、2〜6であり、そしてRは、C〜Cアルキル基である)によって表されるケイ酸アルキル縮合物である。その加水分解物は、50%〜1500%の加水分解割合でこのケイ酸アルキル縮合物を加水分解することから生じる。しかし、この加水分解物自体は、親水性であるとは考えられない。
【0009】
特許文献3および特許文献4は、光触媒コーティング組成物を開示する。この光触媒コーティング組成物において、光触媒の粒子が、未硬化のシリコーン(オルガノポリシロキサン)もしくは部分的に硬化されたシリコーン(オルガノポリシロキサン)またはその前駆体のフィルム形成要素中に分散されている。その光触媒は、金属酸化物の粒子(例えば、二酸化チタンのアナターゼ型およびルチル型)を含み得る。これらの特許によると、そのコーティング組成物は、基材の表面上に適用され、次いで、そのフィルム形成要素が、硬化に供される。次いで、その光触媒の光励起の際に、そのフィルム形成要素のシリコーン分子のケイ素原子に結合した有機基が、その光触媒の光触媒作用のもとでヒドロキシル基で置換される。その光触媒コーティングの表面は、このようにして「超親水性」になる。すなわち、その表面は、水との接触角が約10°未満になる程度まで、高度に親水性になる。しかし、これらの特許において、そのフィルム形成要素自体は、かなり疎水性である。すなわち、水との初期接触角度は、50°よりも大きい。結果として、そのコーティングは、最初に疎水性である。親水性がそのコーティングに与えられるのは、分散された光触媒の励起の際のみである。
【0010】
特許文献5は、部材の表面を親水性にしてその部材の表面に曇り止め特性を与え得る組成物を開示する。この特許に開示される組成物は、(a)金属酸化物の光触媒粒子、(b)シリコーン樹脂フィルムを形成可能な前駆体またはシリカフィルムを形成可能な前駆体、および(c)溶媒(例えば、水、有機溶媒、およびこれらの混合物)を含む。この溶媒は、この組成物中の上記光触媒粒子および上記前駆体の固体の全含有量が0.01重量%〜5重量%であるような量で添加される。しかし、先の例におけるように、このコーティングの親水性化は、その光触媒の光励起の際に行われ、一方、そのフィルム形成物質自体は、親水性ではない。従って、このようなコーティングは、その光触媒の励起の前では、親水性であるとは考えられない。
【0011】
しかし、ケイ素含有結合剤中に分散された光触媒物質の作用を介して親水性を達成するこれらの先行技術の親水性コーティングは、いくつかの欠点を被っている。1つの注目すべき欠点は、これらのコーティングが、その光触媒の光励起までは親水性を示さないことである。さらに、これらの組成物は、代表的に、強制的な硬化を必要とする。すなわち、これらは、室温で効率的には硬化し得ない。
【0012】
特許文献6(’229特許)は、光触媒材料を含み得る別の組成物を開示する。’229特許に開示されるコーティングは、結合剤として作用しかつ特定の四官能性アルコキシシランを加水分解および縮合重合することによって得られる、シリコーン樹脂を含むコーティング組成物を適用することから形成される。このコーティング組成物はまた、コロイド状シリカを含み得る。結果として、’229特許に開示される組成物から形成されるコーティングされたフィルムは、最初に親水性であり得る。しかし、この最初の親水性は、シリコーン樹脂自体から生じるのではなく、その組成物中のコロイド状シリカの存在から生じると考えられる。’229特許に開示されるシリコーン樹脂は、それ自体は親水性ではない。なぜなら、その樹脂の望ましいpHは、3.8〜6.0であり、これは、Si−OR基がゲル化および親水性を妨げる量でその樹脂中に存在することを示すからである。
【特許文献1】米国特許第5,755,867号明細書
【特許文献2】特開平8−164334号公報
【特許文献3】米国特許第6,013,372号明細書
【特許文献4】米国特許第6,090,489号明細書
【特許文献5】米国特許第6,165,256号明細書
【特許文献6】米国特許第6,303,229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
無機酸化物ネットワークを含むコーティング層と、親水性でありかつ本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む液体組成物から堆積されたコーティング層とを含む、多層コーティングを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
1つの点において、本発明は、多層コーティングに関し、この多層コーティングは、(1)無機酸化物ネットワークを含む第一層と;(2)上記第一層の少なくとも一部の上に適用された第二層であって、この第二層は、親水性である少なくとも1つの液体組成物から堆積され、この液体組成物は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む、第二層と;を備える。
【0015】
別の点において、本発明は、多層コーティングに関し、この多層コーティングは、(1)無機酸化物ネットワークを含む第一層と;(2)上記第一層の少なくとも一部の上に適用された第二層と;を備え、この第二層は、少なくとも1つの液体組成物から堆積され、この液体組成物は、(a)光触媒物質と、(b)親水性であり、かつ本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートと、を含む。
【0016】
なお別の点において、本発明は、本発明の多層コーティングでコーティングされた基材に関する。
【0017】
さらに別の局面において、本発明は、多層コーティングを基材に適用する方法に関し、この方法は、(1)無機酸化物ネットワークを含む第一層を、基材に対して適用する工程;(2)液体組成物を、その第一層の少なくとも一部の上に適用する工程であって、その液体組成物から、第二層が堆積される工程(この第二層の組成物は、親水性であり、かつ本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む);および(3)この第二層を硬化する工程;を包含する。
【0018】
本発明はまた、多層コーティングを基材に適用する方法に関し、この方法は、(1)無機酸化物ネットワークを含む第一層を、基材に対して適用する工程;(2)液体組成物を、その第一層の少なくとも一部の上に適用する工程であって、その液体組成物から、第二層がその第一層の上に堆積される工程(この第二層の組成物は、(a)光触媒物質と、(b)親水性であり、かつ本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む、結合剤と、を含む);および(3)この第二層を硬化する工程;を包含する。
【0019】
本発明はまた、物品の防汚特性、自己洗浄特性、洗浄容易特性、および/または曇り止め特性を改善するための方法に関し、この物品は、無機酸化物ネットワークが堆積されたコーティング層を含む表面を備え、この方法は、(1)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む液体組成物を、その表面の少なくとも一部に対して適用する工程;および(2)工程(1)において適用された上記組成物を硬化する工程、を包含する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
多層コーティングであって、
(1)無機酸化物ネットワークを含む第一層と;
(2)該第一層の少なくとも一部の上に適用された第二層であって、該第二層は、親水性である少なくとも1つの液体組成物から堆積され、該液体組成物は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む、第二層と;
を備える、多層コーティング。
(項目2)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記第一層は、ネットワーク形成金属アルコキシドを含むゾルを含む組成物から堆積される、多層コーティング。
(項目3)
項目2に記載の多層コーティングであって、前記ネットワーク形成金属アルコキシドは、一般式RSi(OR’)4-xのアルコキシシランを含み、Rは、有機ラジカルであ
り、R’は、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、およびブチルラジカルからなる群より選択されるアルキルラジカルであり、xは、4未満の整数である、多層コーティング。
(項目4)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記第一層は、透明である、多層コーティング。
(項目5)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記第二層が堆積する液体組成物は、光触媒物質をさらに含む、多層コーティング。
(項目6)
項目5に記載の多層コーティングであって、平均結晶直径が3ナノメートル〜35ナノメートルである、多層コーティング。
(項目7)
項目5に記載の多層コーティングであって、前記光触媒物質は、板チタン石型の二酸化チタン、火炎熱分解により化学修飾された二酸化チタン、窒素ドープ二酸化チタン、プラズマ処理済み二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、多層コーティング。
(項目8)
項目5に記載の多層コーティングであって、前記光触媒物質は、前記液体組成物中に、該組成物の総重量に基づいて0.1重量%〜0.75重量%の範囲の量で存在する、多層コーティング。
(項目9)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記第二層が堆積する液体組成物のオルガノシリケートは、オルガノキシシラン、オルガノキシシロキサン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、該オルガノキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、多層コーティング。
(項目10)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記オルガノシリケートは、前記第二層が堆積する液体組成物中に、該組成物の総重量に基づいて、SiOとして計算されて0.1重量%〜2重量%の量で存在する、多層コーティング。
(項目11)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記第二層が堆積する液体組成物のpHは、3.5以下である、多層コーティング。
(項目12)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記第二層が堆積する液体組成物のpHは、7.0〜8.5である、多層コーティング。
(項目13)
項目1に記載の多層コーティングでコーティングされた、基材。
(項目14)
項目13に記載の基材であって、該基材は、ポリマー性基材を含む、基材。
(項目15)
項目14に記載の基材であって、前記ポリマー性基材は、固体の透明な物質または光学的に透明な固体物質を含む、基材。
(項目16)
項目15に記載の基材であって、前記ポリマー性基材は、フォトクロミック物質を含む、基材。
(項目17)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記第二層は、20ナノメートル〜60ナノメートルの乾燥膜厚で適用されている、多層コーティング。
(項目18)
項目1に記載の多層コーティングであって、前記結合剤は、
(a)多段階プロセスであって、第1段階および第2段階を含み、該第1段階において、部分的加水分解重縮合反応生成物が、酸加水分解触媒の存在下においてオルガノシリケートと水とを反応させることによって形成され、該水は、該オルガノシリケートのオルガノキシ基を加水分解可能な化学量論量未満の量で存在し、該第2段階において、該部分的加水分解重縮合反応生成物が大量の水と接触されて、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを形成する、多段階プロセス;および
(b)有機酸加水分解触媒および/または有機溶媒の存在下で、テトラアルコキシシランオリゴマーと水とを反応させるプロセスであって、該水は、該アルコキシシランのオルガノキシ基を加水分解可能な化学量論量よりもかなり多い量で存在して、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを形成する、プロセス;
から選択されるプロセスによって調製される、多層コーティング。
(項目19)
項目18に記載の多層コーティングであって、前記結合剤は、前記多段階プロセスによって調製されている、多層コーティング。
(項目20)
項目19に記載の多層コーティングであって、前記水は、前記オルガノシリケートのオルガノキシ基のうちの50%を加水分解可能な化学量論量で、第1段階の間に存在する、多層コーティング。
(項目21)
項目19に記載の多層コーティングであって、前記第1段階は、前記加水分解反応の結果として形成されるSi−OH基の縮合度を制限する条件下で行われる、多層コーティング。
(項目22)
項目21に記載の多層コーティングであって、前記加水分解反応の結果として形成されるSi−OH基の縮合度を制限する条件は、外部冷却による反応の発熱の制御、前記酸触媒の添加速度の制御、および/またはいかなる有機共溶媒も実質的に存在しない状態での前記第1段階の加水分解の実行から選択される、多層コーティング。
(項目23)
物品の防汚特性、自己洗浄特性、洗浄容易特性、および/または曇り止め特性を改善するための方法であって、該物品は、無機酸化物ネットワークが堆積されたコーティング層を含む表面を備え、該方法は、
(1)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む液体組成物を、該表面の少なくとも一部に対して適用する工程;および
(2)工程(1)において適用された該組成物を硬化する工程、
を包含する、方法。
(項目24)
項目23に記載の方法であって、工程(2)が、自然乾燥によって達成される、方法。
(項目25)
項目23に記載の方法であって、前記無機酸化物ネットワークを含むコーティング層は、ネットワーク形成金属アルコキシドを含む、方法。
(項目26)
項目25に記載の方法であって、前記ネットワーク形成金属アルコキシドは、一般式RSi(OR’)4-xのアルコキシシランを含み、Rは、有機ラジカルであり、R’は
、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、およびブチルラジカルからなる群より選択されるアルキルラジカルであり、xは、4未満の整数である、多層コーティング。
(項目27)
項目23に記載の方法であって、前記工程(1)において適用される液体組成物は、光触媒物質をさらに含む、方法。
(項目28)
項目27に記載の方法であって、前記光触媒物質は、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄(II)、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属酸化物を含む、方法。
(項目29)
項目27に記載の方法であって、前記光触媒物質の少なくとも一部は、平均結晶直径3ナノメートル〜35ナノメートルを有する粒子の形態で存在する、方法。
(項目30)
項目27に記載の方法であって、前記光触媒物質は、板チタン石型の二酸化チタン、火炎熱分解により化学修飾された二酸化チタン、窒素ドープ二酸化チタン、プラズマ処理済み二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、方法。
(項目31)
項目27に記載の方法であって、前記光触媒物質は、前記工程(1)において適用される液体組成物中に、該組成物の総重量に基づいて0.1重量%〜0.75重量%の範囲の量で存在する、方法。
(項目32)
項目23に記載の方法であって、前記工程(1)において適用される液体組成物のオルガノシリケートは、オルガノキシシラン、オルガノキシシロキサン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、方法。
(項目33)
項目23に記載の方法であって、前記オルガノシリケートは、前記工程(1)において適用される液体組成物中に、該組成物の総重量に基づいて、SiOとして計算されて0.1重量%〜2重量%の量で存在する、方法。
(項目34)
項目23に記載の方法であって、前記工程(1)において適用される液体組成物のpHは、3.5以下である、方法。
(項目35)
項目23に記載の方法であって、前記表面は、固体の透明な物質または光学的に透明な固体物質を含む、方法。
(項目36)
項目23に記載の方法であって、前記表面は、フォトクロミック物質を含む、方法。
(項目37)
項目23に記載の方法であって、前記工程(1)において適用される液体組成物は、20ナノメートル〜60ナノメートルの乾燥膜厚で適用されている、方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の特定の非限定的な実施形態に従って使用された結合物質から形成された乾燥フィルムのフーリエ変換赤外分光法(「FTIR」)分析を反映するチャートである。
【図2】図2は、本発明の多層コーティングの第二層の特定の非制限的な実施形態の拡大スケールでの概略的な断面図である。
【図3】図3は、本発明の多層コーティングの第二層の特定の非制限的な実施形態を示す、電界放出走査電子顕微鏡二次電子顕微鏡写真(倍率、40,000倍)である。
【図4】図4は、実施例2に記載されるように実施された耐久性試験の結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の実施形態の詳細な説明)
以下の詳細な説明のために、本発明は、明示的に反対に特定される場合を除いて、種々の代替的な改変形および工程順序を採用し得ることが、理解されるべきである。さらに、何らかの作動実施例以外の例において、または他のように示される場合において、例えば、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量を表す全ての数字は、用語全ての場合において「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。従って、反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において記載される数値パラメーターは、本発明によって得られるべき望ましい特性に依存して変化し得る近似である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、報告される有効数字の数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって、解釈されるべきである。
本発明の幅広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例において示される数値は、できる限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、それらの個々の試験測定において見出される標準偏差から必ず生じる特定の誤差を固有に含む。
【0022】
本出願において、そうではないと具体的に記載されない限り、単数形の使用は、複数形を含み、複数形は、単数形を含む。例えば、限定するものではないが、本出願は、「光触媒物質(a photocatalytic material)」を含む液体組成物に言及する。「光触媒物質(a photocatalytic material)」に対するこのような言及は、一種の光触媒物質を含む組成物、および一種よりも多くの光触媒物質を含む組成物(例えば、2種の異なる光触媒物質を含む組成物)を包含する。さらに、本出願において、「または」の使用は、そうではないと具体的に示されない限り、「および/または」を意味するが、「および/または」は、特定の場合において明示的に使用され得る。
【0023】
また、本明細書中で示されるいかなる数値範囲も、その数値範囲中に包含される全ての部分範囲を含むことが意図される。例えば、「1〜10」の範囲は、1という示された最小値と10という示された最大値との間の(1という示された最小値と10という示された最大値とを含む)全ての部分範囲を含む(すなわち、1以上の最小値および10以下の最小値を有する)ことを意図する。
【0024】
1つの点において、本発明は、多層コーティングに関し、この多層コーティングは、(1)無機酸化物ネットワークを含む第一層と;(2)上記第一層の少なくとも一部の上に適用された第二層であって、この第二層は、親水性である少なくとも1つの液体組成物から堆積され、この液体組成物は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む、第二層と;を備える。
【0025】
本発明の多層コーティングは、無機酸化物ネットワークを含む第一層を備える。本明細書中で使用される場合、用語「ネットワーク」とは、相互に連結した分子鎖または分子基を指す。
【0026】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第一層は、ネットワーク形成金属アルコキシド(例えば、アルコキシシランおよび/または別の金属(例えば、ジルコニウム、チタン、およびアルミニウム)のアルコキシド)を含むゾルを含む組成物から堆積される。そのアルコキシシランは、使用される場合には、オルガノアルコキシシラン(例えば、アルキルアルコキシシランまたはオルガノ官能性アルコキシシラン)であり得る。そのアルコキシドは、アルキル基またはアリール基を含み得、そしてそのアルコキシドは、加水分解可能なアルコキシド基が残る限りは、ダイマー形態またはより高次の縮合形態であり得る。
【0027】
特定の実施形態において、上記ネットワーク形成金属アルコキシドは、一般式RSi(OR’)4-xのアルコキシシランであり、Rは、有機ラジカルであり、R’は、低分
子量アルキルラジカル(例えば、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、およびブチルラジカル)からなる群より選択され、xは、整数であり、そしてxは、少なくとも1でありかつ4未満である。Rの有機ラジカルは、例えば、とりわけ、アルキル、ビニル、メトキシエチル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、またはγ−メタクリルオキシプロピル(それらの混合物を含む)であり得る。上記アルコキシドは、下記に示される一般反応に従って加水分解する。R、R’、およびxは、上記の通りであり、yは、4未満である。
【0028】
【化1】

その加水分解されたアルコキシドの縮合は、一般反応
【0029】
【化2】

または
【0030】
【化3】

に従って進行する。さらなる加水分解および縮合が続く。
【0031】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第一層は、他の成分(例えば、紫外線照射吸収剤、有機フィルム形成ポリマー、ならびに流れ特性改良成分、磨耗耐性改良成分、および/または耐久性改良成分)を含み得る。本発明の多層コーティングの第一層が形成され得る組成物の非限定的例およびその生成方法が、米国特許第4,753,827号、同第4,754,012号、同第4,799,963号、同第5,035,745号、同第5,199,979号、同第6,042,737号、および同第6,106,605号(これらは、本明細書において参考として援用される)において記載される。
【0032】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第一層は、透明である。本明細書において、用語「透明(transparent)」とは、硬化されたコーティングが、そのコーティングが適用され得る透明なポリマー性基材を通して伝達される可視光の割合を実質的には変化させないことを意味することが意図される。コーティングの着色性は、米国特許第6,042,737号の第4欄第57行〜第5欄第8行(これは、本明細書において参考として援用される)において記載されるように測定され得る。
【0033】
本発明の多層コーティングの第一層を堆積する際に使用するために適切な市販の組成物の例は、とりわけ、PPG Industries,Inc.から入手可能なHi−GardコーティングTM溶液およびSolGard(登録商標)コーティング溶液、Essilor International,S.A.から入手可能なCrizol(登録商標)製品、およびSDC Technologies,Inc.から入手可能なCrystalCoatTM製品である。
【0034】
本発明の多層コーティングは、上記第一層の少なくとも一部の上に適用された第二層を備え、この第二層は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む少なくとも1つの液体組成物から堆積される。本明細書中で使用される場合、用語「オルガノシリケート」とは、酸素原子をケイ素原子に結合された有機基を含む化合物を指す。適切なオルガノシリケートとしては、酸素原子を介してケイ素原子に結合している4つの有機基を含むオルガノキシシラン、およびケイ素原子によって構成されるシロキサン主鎖((Si−O))を有するオルガノキシシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
上記オルガノシリケート中の酸素原子を介してケイ素原子に結合している有機基としては、限定はされないが、例えば、直鎖状アルキル基、分枝型アルキル基、または環状アルキル基が挙げられ得る。上記オルガノシリケート中の酸素原子を介してケイ素原子に結合している有機基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチルなどが挙げられるが、これらに限定はされない。これらのアルキル基のうち、Cアルキル基〜Cアルキル基が、しばしば使用される。他の適切な有機基の例としては、アリール、キシリル、ナフチルなどが挙げられ得る。上記オルガノシリケートは、2種以上の異なる種類の有機基を含み得る。
【0036】
適切なオルガノキシシランの具体的な非限定的例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、およびジメトキシジエトキシシランである。これらのオルガノシリケートは、単独で使用されても、これらのうちのいずれか2つ以上の組み合わせの状態で使用されてもよい。これらのオルガノシリケートのうち、テトラメトキシシランおよび/またはその部分的に加水分解された縮合物は、高い加水分解反応性を示し、従って、シラノール基を容易に生成し得る。
【0037】
適切なオルガノシロキサンの具体的な非限定的例は、上記のオルガノキシシランの縮合物である。上記のオルガノシロキサンの縮合度は、特には制限されない。特定の実施形態において、その縮合度は、式SiO(OR)によって示される範囲内に存在し、xは、0〜1.2であり、yは、1.4〜4であり、但し、(2x+y)は4であり、Rは、有機基(例えば、Cアルキル〜Cアルキル)である。
【0038】
因子または下付き文字xは、シロキサンの縮合度を示す。そのシロキサンが分子量分布を示す場合、因子xは、平均縮合度を意味する。x=0である上記の式によって示される化合物は、モノマーとしてのオルガノキシシランであり、0<x<2である上記の式によって示される化合物は、部分的加水分解縮合によって得られる縮合物に対応するオリゴマーである。また、x=2である上記の式によって示される化合物は、SiO(シリカ)に対応する。特定の実施形態において、本発明において使用されるオルガノシリケートの縮合度xは、0〜1.2の範囲内(例えば、0〜1.0)にある。上記シロキサンの主鎖は、直鎖状構造、分枝型構造、もしくは環状構造、またはそれらの混合物を有し得る。上記の式(SiO(OR))は、米国特許第6,599,976号の第5欄第10行〜第41行(本明細書において参考として援用される)に記載されるように、Si−NMRによって決定され得る。
【0039】
上記のように、上記の第二層が堆積される液体組成物のオルガノシリケートは、本質的に完全に加水分解されている。本明細書中で使用される場合、用語「本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケート」とは、親水性になる程度までオルガノシリケートのオルガノキシ基がシラノール基によって実質的に置換されている、物質を指す。本明細書中で使用される場合、用語「親水性」とは、その物質が水親和性を有することを意味する。物質の親水性を評価するための一方法は、水と、その物質から形成された乾燥フィルムとの接触角を測定することである。本発明の特定の実施形態において、上記第二層が堆積される組成物は、加水分解されたオルガノシリケートを含み、20°以下の水接触角を示し、また他の実施形態においては15°以下の水接触角を示し、またはなお他の実施形態においては10°以下の水接触角を示す、乾燥フィルムを形成し得る。この加水分解は、以下の
【0040】
【化4】

に示すように、ネットワークポリマーを生成し得る。ここで、mおよびnは、正の数であり、mは、n以下である。本発明の特定の実施形態において、上記の本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートは、FTIRまたは他の適切な分析技術によって決定された場合、−OR基を実質的には含まない。
【0041】
結果として、本発明の特定の実施形態において、上記の多層コーティングは、20°以下の初期水接触角を示すか、または他の実施形態においては15°以下の初期水接触角を示すか、またはなお他の実施形態においては10°以下の初期水接触角を示し、その後、下記に示されるように、上記第二層が堆積される液体組成物中に存在し得るあらゆる光触媒物質の光励起が生じる。本明細書において報告される水接触角とは、接触点における液滴形状に対する接線と、その液滴を通して測定される基材表面との間の角度の尺度であり、これは、Gaertner Scientificゴニオメーター光学機器を備えた改変型捕捉式気泡指示器(Lord Manufacturing,Inc.製造)を使用して液適法によって測定され得る。測定されるべき表面は、水平位置において、上向きに光源の前に配置される。水の液滴が、その表面の上部にその光源の前において配置され、その結果、その液滴の輪郭が観察され得るようになり、そしてその接触角が、円形分度器目盛りを備えたゴニオメーター望遠鏡を介して「°」として測定され得るようになる。
【0042】
ここで、図1を参照すると、このような親水性物質から形成された乾燥フィルムのFTIR分析を反映するチャートが観察される。明らかなように、有意なピークが、Si−OH結合波数(これは、920〜950である)およびSi−O−Si結合波数(これは、1050〜1100である)において観察される。他方、Si−OR波数(これは、2900〜3000である)におけるいかなる実質的なピークも存在しないことによって示されるように、上記フィルムは、−OR基を実質的には含まない(ここで、Rは、Cアルキル基〜Cアルキル基を表す)ことが明らかである。
【0043】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二層が堆積される組成物中に含まれる本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートは、酸加水分解触媒の存在下で大量の水を用いたオルガノシリケートの加水分解の生成物である。この加水分解は、そのオルガノシリケートのオルガノキシ基を加水分解可能な化学量論量よりもかなり多い量で存在する水を用いて行われ得る。このような過剰な量の水の添加によって、このオルガノシリケートの加水分解によって生成されるシラノール基が大量の水と共存し得、これによって、そのシラノール基の縮合反応を妨げる、と考えられる。
【0044】
このオルガノシリケートの加水分解は、一種以上の酸加水分解触媒の存在下で実行され得る。適切な触媒の具体的な例としては、無機酸(例えば、とりわけ、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸);有機酸(例えば、とりわけ、酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、ギ酸、クエン酸、およびシュウ酸);アルカリ触媒(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア);ならびに有機アミン化合物、有機金属化合物、または上記オルガノシリケート以外の金属アルコキシド化合物(例えば、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、およびジブチルスズジアセテート)、有機アルミニウム化合物(例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、およびエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピオネート)、有機チタン化合物(例えば、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)、チタンビス(ブトキシ)−ビス(アセチルアセトネート)およびチタンテトラ−n−ブトキシド)、ならびに有機ジルコニウム化合物(例えば、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)−ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウム(イソプロポキシ)−ビス(アセチルアセトネート)およびジルコニウムテトラ−n−ブトキシド))、ならびにホウ素化合物(例えば、ホウ素トリ−n−ブトキシド、およびホウ酸)などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0045】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二層として堆積される液体組成物はまた、水に加えて、有機溶媒(例えば、アルコール、グリコール誘導体、炭化水素、エステル、ケトン、エーテルなど)を含み得る。これらの溶媒は、単独で、またはこれらの2種以上の混合物の形態で、使用され得る。
【0046】
使用され得るアルコールの具体的な例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセチルアセトンアルコールなどが挙げられるが、これらに限定はされない。使用され得るグリコール誘導体の具体的な例としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられるが、これらに限定はされない。使用され得る炭化水素の具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ケロセン、n−ヘキサンなどが挙げられるが、これらに限定はされない。使用され得るエステルの具体的な例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどが挙げられるが、これらに限定はされない。使用され得るケトンの具体的な例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどが挙げられるが、これらに限定はされない。使用され得るエーテルの具体的な例としては、エチルエーテル、ブチルエーテル、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0047】
本発明の多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物における使用のために適切な物質およびそれらの作製方法は、米国特許第6,599,976号の第3欄第57行目〜第10欄第58行目(本明細書中において参考として援用される)に記載される。本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートであり、かつ本発明の多層コーティングの第二層が堆積される組成物における使用のために適した、市販物質の非限定的な例は、MSH−200シリケート、MSH−400シリケートおよびMSH−500シリケート(Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから入手可能)、ならびにShinsui Flow MS−1200(Dainippon Shikizai,Tokyo,Japanから入手可能)である。
【0048】
特定の実施形態において、上記結合剤は、多段階プロセスで調製される。このプロセスにおいて、第1段階において、オルガノキシシラン(例えば、上記のもののいずれか)が、酸加水分解触媒(例えば、上記のもののいずれか)の存在下で水と反応する(この水は、上記オルガノキシシランのオルガノキシ基を加水分解可能な化学量論量よりも少ない量で存在する)。特定の実施形態において、上記酸加水分解触媒は、有機酸を含む。特定の実施形態において、上記水は、上記オルガノキシシランのオルガノキシ基のうちの50%を加水分解可能な化学量論量で、この第1段階の間に存在する。この第1段階の結果は、部分加水分解重縮合反応生成物である。
【0049】
特定の実施形態において、上記の多段階結合剤調製プロセスの第1段階は、上記加水分解反応の結果として形成されるSi−OH基の縮合度を制限する条件下で実行される。このような条件としては、例えば、外部冷却などによる反応の発熱の制御、酸触媒の添加速度の制御、および/またはいかなる有機共溶媒も実質的には存在しない条件下(または完全な非存在下)でのこの第1段階の加水分解の実行が挙げられ得る。
【0050】
第2段階において、次いで、上記部分加水分解重縮合反応生成物は、大量の水と、しばしば、酸加水分解触媒の非存在下で接触させられる。この第2段階において使用される水の量は、上記オルガノキシシランのオルガノキシ基を加水分解可能な化学量論量よりもかなり多い(「かなり多い」によって、得られる溶液が、2%以下の固体を含むことを意味する)。
【0051】
なお他の実施形態において、上記結合剤は、テトラアルコキシシランオリゴマー(例えば、商品名MKC Silicate MS−51、MKC Silicate MS−56およびMKC Silicate MS−60(全て、商標;Mitsubishi
Chemical Corp.の製品)でMitsubishi Chemical Corp.から市販されるもの)を用いて開始することによって調製される。このようなオリゴマーは、有機酸加水分解触媒(例えば、酢酸)および/または有機溶媒の存在下で、水と反応する。ここで、上記水は、上記テトラアルコキシシランのオルガノキシ基を加水分解可能な化学量論量よりもかなり多い量で存在する。
【0052】
特定の実施形態において、上記多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物中に存在するオルガノシリケートの量は、上記組成物の全重量に基づいて、そのオルガノシリケート中のSiOとして計算して、0.1重量%〜2重量%(例えば、0.2重量%〜0.90重量%)の範囲である。これらの実施形態において、上記第二層が堆積される液体組成物中に存在し得るオルガノシリケートの量は、示される値の任意の組合せの間の範囲(示された値を含む)にあり得る。上記多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物中に存在するオルガノシリケートの量は、その組成物中に組み込まれることが望まれる特性によって決定されることが、当業者によって理解される。
【0053】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングは、上記第一層の少なくとも一部の上に適用される第二層を備える。この第二層は、少なくとも1つの液体組成物から堆積され、この液体組成物は、(a)光触媒物質と、(b)結合剤と、を含む。これらの実施形態において、この結合剤は、親水性であり、かつこの結合剤は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケート(例えば、上記で考察されるもの)を含む。本明細書中で使用される場合、用語「結合剤」とは、上記光触媒物質の粒子が堆積されている連続的な物質を指す。
【0054】
これらの実施形態において、上記第二層は、液体組成物から堆積され、この液体組成物は、光触媒物質を、上記親水性結合剤に加えて含む。本明細書中で使用される場合、用語「光触媒物質」とは、放射線(例えば、紫外線または可視光線)に対して曝露されてそれを吸収した際に光励起可能である物質を指す。光触媒物質とは、伝導帯と結晶の価電子帯との間のエネルギーギャップよりも高いエネルギーを有する光に対して曝露された場合に、その価電子帯中の電子の励起を引き起こして伝導電子を生成し、その特定の価電子帯に正孔を残す、物質である。特定の実施形態において、この光触媒物質は、酸化金属(例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄(II)、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、三酸化ストロンチウム、二酸化チタン、またはそれらの混合物)を含む。
【0055】
特定の実施形態において、上記光触媒物質のうちの少なくとも一部は、上記第二層が堆積される液体組成物中に、平均結晶直径1nm〜100nm(例えば、3nm〜35nmまたはさらに他の実施形態においては7nm〜20nm)を有する粒子の形態で存在する。これらの実施形態において、上記粒子の平均結晶直径は、示される値の任意の組み合わせの間(示される値を含む)の範囲にあり得る。上記粒子の平均結晶直径は、上記第二層中に組み込まれることが望まれる特性に基づいて選択されることが、当業者によって理解される。いくつかの実施形態において、上記光触媒物質のうちの実質的にすべては、上記第二層が堆積される組成物中に、そのような粒子の形態で存在する。上記光触媒性金属酸化物粒子の平均結晶直径は、走査電子顕微鏡または走査透過電子顕微鏡によって決定され得る。そのような粒子の結晶相は、当業者によって公知であるように、x線回折によって決定され得る。
【0056】
上記のように、特定の物質は、例えば、紫外(UV)線および/または可視光線に対して曝露およびその吸収の際に、光触媒性であり得る。特定の実施形態において、存在する光触媒物質は、これらの機構のうちの1つ以上に光励起可能である物質を含む。本発明の多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物の一部として使用され得、かつUV線に対して曝露された際に光触媒性である、物質の例としては、酸化スズ、酸化亜鉛、および板チタン石型の二酸化チタン、アナターゼ型の二酸化チタン、およびルチル型の二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物の一部として使用され得、かつ可視光線に対して曝露された際に光触媒性である、物質の例としては、板チタン石型の二酸化チタン、火炎熱分解により化学修飾された二酸化チタン、窒素ドープ二酸化チタン、およびプラズマ処理済み二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0057】
特定の実施形態において、上記光触媒物質は、水中に分散された光触媒物質粒子を含むゾル(例えば、チタンゾル)の形態で提供される。そのようなゾルは、市場において容易に入手可能である。そのような物質(本発明の多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物の一部として使用するために適切である)の例としては、S5−300AおよびS3−33B(Milenium Chemicalsから入手可能)、STS−01、STS−02、およびSTS−21(Ishihara Sangyo Corporationから入手可能)、ならびにNTB−1、NTB−13、およびNTB−200(Showa Denko Corporationから入手可能)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0058】
特定の実施形態において、上記光触媒物質は、水中に分散された板チタン石型二酸化チタン粒子を含むゾルの形態、または板チタン石型二酸化チタンとアナターゼ型および/またはルチン型の二酸化チタンとの混合物が水中に分散されたゾルの形態で、存在する。そのようなゾルは、特定の条件下で四塩化チタンを加水分解すること(例えば、米国特許第6,479,031号(本明細書中に参考として援用される)によって教示される)によって調製され得る。本発明における使用のために適切なこの型のゾルとしては、NTB−1チタンゾルおよびNTB−13チタンゾル(Showa Denko Corporationから入手可能)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0059】
特定の実施形態において、上記光触媒物質は、化学修飾された二酸化チタンを含む。そのような物質の例としては、Khanら、「Efficient Photochemical Water Splitting by a Chemically Modified n−TiO」Science Reprint,Volume 297,pp.2243〜2245(2002)(これは、本明細書において参考として援用される)によって記載されるような、火炎熱分解により化学修飾された二酸化チタン;米国特許出願公開第2002/0169076A1号の例えば段落[0152]〜[0203](これは、本明細書において参考として援用される)において記載されるような、窒素ドープ二酸化チタン;ならびに/または米国特許第6,306,343号の第2欄第49行〜第7欄第17行(これは、本明細書において参考として援用される)において記載されるような、プラズマ処理済み二酸化チタンが挙げられる。
【0060】
特定の実施形態において、上記多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物中に存在する光触媒物質の量は、0.05固体重量%〜5固体重量%(例えば、0.1固体重量%〜0.75固体重量%)の範囲であり、この固体重量%は、その組成物の総液体重量に基づく。これらの実施形態において、存在し得る光触媒物質の量は、示される値の任意の組み合わせの間(示される値を含む)の範囲にあり得る。上記多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物中に存在する光触媒物質の量は、その層中に組み込まれることが望まれる特性によって決定されることが、当業者によって理解される。
【0061】
特定の実施形態において、上記光触媒材料および上記の本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートは、上記第二層が堆積される液体組成物中に、0.05:0.95〜5:0.3の重量比、または他の実施形態において0.10:0.90〜3:0:0.5の重量比、またはなお他の実施形態において0.2:0.6の重量比で存在する。これらの実施形態において、上記光触媒材料とオルガノシリケートとの比は、示される値の任意の組合せの間(示された値を含む)の範囲にあり得る。上記第二層の組成物中の光触媒材料とオルガノシリケートとの比は、その層中に組み込まれることが望ましい特性(例えば、その組成物が適用されるべき基材に関して決定され得る、その組成物にとって望ましい屈折率)によって決定されることが、当業者によって理解される。
【0062】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二層が堆積される液体組成物は、静電防止特性を示す結合剤(すなわち、この結合剤は、静電電荷を散逸する能力を有する乾燥フィルムを形成する)を含む。当業者によって認識されるように、物質の静電防止特性を評価するための一方法は、その物質の表面抵抗を測定することである。特定の実施形態において、上記第二層の組成物の結合剤は、表面抵抗7.5×10Ω/cm〜1.5×1012Ω/cmを示すかまたは他の実施形態においては表面抵抗1.0×1010Ω/cm以下を示す乾燥フィルムを形成し得る物質を含む。本明細書において報告される表面抵抗は、ACL Statitide Model 800 Megohmeterを用いて、(1)サンプル上のいくつかの位置において5mm間隔を空けた大きな拡張プローブか、または(2)サンプル上のいくつかの位置において2・(3/4)インチ間隔を空けたメートルオンボードプローブのいずれかを使用して、測定され得る。結果として、本発明はまた、そのような静電特性を有する第二層を有する多層コーティングに関する。
【0063】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層として堆積される液体組成物は、無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ(処理されたアルミナ(例えば、アルファアルミニウムオキシドとして公知のシリカ処理アルミナ)を含む)、炭化ケイ素、ダイアモンドダスト、立方晶窒化ホウ素、および炭化ホウ素)をさらに含み得る。このような無機粒子は、例えば、実質的に無色であり得、例えば、シリカ、例えば、コロイド状シリカであり得る。このような材料は、向上した傷(mar)耐性およびひっかき(scratch)耐性を提供し得る。このような粒子は、この組成物の最終使用適用および所望の効果に依存して、サブミクロンサイズ(例えば、ナノサイズ粒子)〜10ミクロンの範囲の平均粒径を有し得る。
【0064】
特定の実施形態において、このような粒子は、液体組成物中へ組み込まれる前に、1〜10ミクロン、または1〜5ミクロンの範囲の平均粒径を有する無機粒子を含む。他の実施形態において、この粒子は、液体組成物に組み込む前に、1〜1000ナノメートル未満(例えば、1〜100ナノメートル、または他の実施形態において、5〜50ナノメートル)の範囲の平均粒径を有し得る。いくつかの実施形態において、無機粒子は、液体組成物に組み込む前に、5〜50ナノメートル、または5〜25ナノメートルの範囲の平均粒径を有する。この粒径は、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲(示された値を含む)であり得る。
【0065】
特定の実施形態において、粒子は、多層コーティングの第二の層として堆積される液体組成物中に、組成物の全重量に基づいて、5.0重量%まで、または0.1〜1.0重量%、または0.1〜0.5重量%の範囲の量で、存在し得る。液体組成物中に存在する粒子の量は、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲(示された値を含む)であり得る。
【0066】
特定の実施形態において、多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物はまた、抗菌増強物質(例えば、金属(例えば、銀、銅、金、亜鉛、それらの化合物、またはそれらの混合物);四級アンモニウム化合物(例えば、ベンザルコニウムクロリド、ジアルキルジメチル−アンモニウムクロリド、セチルトリメチル−アンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、および3−(トリメトキシシリル)−プロピルジメチル−オクタデシル−アンモニウムクロリド);フェノール(例えば、2−ベンジル−4−クロロフェノール、o−フェニルフェノール、ナトリウムo−フェニルフェネート(sodium
o−phenylphenate)、ペンタクロロフェノール、2(2’,4’−ジクロロフェノキシ)−5−クロロフェノール、および4−クロロ−3−メチルフェノール);ハロゲン化合物(例えば、トリクロロイソシアヌレート、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、モノトリクロロイソシアヌレート、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、1:4ジクロロジメチルヒダントイン、ブロモクロロジメチルヒダントイン、2,2’−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ビス(1,4−ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、およびブロモ酢酸ベンジル);有機金属(例えば、10,10’−オキシビスフェノキシ−ヒ素、トリブチルスズオキシド、フッ化トリブチルスズ、銅8−キノリノレート、ナフテン酸銅、クロム酸化ヒ酸銅、アンモニア性ヒ酸銅、および酸化第一銅);有機硫黄化合物(例えば、メチレンビスチオシアネート(MBT)、ビニレンビスチオシアネート、クロロエチレンビスチオ−シアネート、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、エチレンビスジチオカルバミン酸二ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびビス(トリクロロメチル)スルホン);複素環(例えば、テトラヒドロ−3,5−ジメチル−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン(DMTT)、ピリジンチオンナトリウム、ピリジンチオン亜鉛、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシミド、N−(トリクロロメチルチオ)−フタルイミド、および5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン);ならびに窒素化合物(例えば、N−ココトリメチレンジアミン、N−[α−(1−ニトロエチル)ベンジル]−エチレンジアミン、2−(ヒドロキシメチル)アミノ−エタノール、2−(ヒドロキシメチル)アミノ−2−メチルプロパノール、2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジン、4−(2−ニトロブチル)モルホリン+4,4’−(2−エチル−2−ニトロ−トリメチレン)−ジモルホリン、グルタルアルデヒド、1,3−ジメチロール−5,5−ジメチル−ヒダントイン、およびイミダゾリジニル尿素)、ならびにこれらの混合物)を含有する。
【0067】
第二の層が堆積される液体組成物は、特定の実施形態において、微生物に対して、特に、種々の真菌に対して効力を示すために十分な量の抗菌剤を含有し得る。より具体的には、特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層は、MTCC(American Association of Chemists & Colorists)試験方法30、第III部に従って試験されると、基材上での微生物の増殖を阻害するために十分な量の抗菌剤を含有する液体組成物から堆積され得る。当業者は、この試験方法およびそのパラメータをよく知っている。特定の実施形態において、第二の層が堆積される液体組成物中に存在する抗菌増強物質の量は、この組成物の総重量に基づいて、0.01重量%〜1.0重量%(例えば、0.1重量%〜1.0重量%、または他の実施形態において、0.1重量%〜0.5重量%)の範囲である。これらの実施形態において、液体組成物中に存在し得る、抗菌増強物質の量は、記載される値を含めて、記載される値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0068】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、光学活性増強剤(例えば、白金、金、パラジウム、鉄、ニッケル、またはこれらの可溶性塩)を含有し得る。これらの物質を、光触媒物質を含有する組成物に添加することは、光触媒のレドックス反応を増強し、コーティング表面に接着する汚染物質の分解を促進することが公知である。特定の実施形態において、多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物中に存在する光学活性増強剤の量は、この組成物の総重量に基づいて、0.01重量%〜1.0重量%(例えば、0.1重量%〜1.0重量%、または他の実施形態においては、0.1重量%〜0.5重量%)の範囲である。これらの実施形態において、存在し得る光学活性促進剤の量は、記載される値を含めて、記載される値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、カップリング剤を含有し得、このカップリング剤は、例えば、第一の層への第二の層の接着を改善し得る。この目的に適したカップリング剤の例としては、米国特許第6,165,256号の第8欄第27行〜第9欄第8行に記載される物質が挙げられるが、これらに限定されない(この米国特許は、本明細書中に参考として援用される)。
【0069】
特定の実施形態において、多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物中に存在するカップリング剤の量は、この組成物の総重量に基づいて、0.01重量%〜1重量%(例えば、0.01重量%〜0.5重量%)の範囲である。これらの実施形態において、この液体組成物中に存在し得るカップリング剤の量は、記載される値を含めて、記載される値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0070】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、表面活性剤を含有し得、この表面活性剤は、例えば、この組成物が第一の層の上に塗布される場合に、この組成物の濡れ性の改善を補助し得る。本発明において使用するために適した表面活性剤の例としては、米国特許第6,610,777号の第37欄第22行〜第38欄第60行、および米国特許第6,657,001号の第38欄第46行〜第40欄第39行に記載される材料が挙げられるが、これらに限定されない(これらの米国特許は両方とも、本明細書中に参考として援用される)。
【0071】
特定の実施形態において、多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物中に存在する表面活性剤の量は、この組成物中の固形分の総重量に基づいて、0.01重量%〜3重量%(例えば、0.01重量%〜2重量%、または他の実施形態において、0.1重量%〜1重量%)の範囲である。これらの実施形態において、この液体組成物中に存在し得る表面活性剤の量は、記載される値を含めて、記載される値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0072】
特定の実施形態において、多層コーティングの第二の層が塗布される液体組成物はまた、清浄化組成物を含有する。適切な清浄化組成物としては、界面活性剤、溶媒系、水、およびpH調整剤(例えば、酢酸またはアンモニア)を含有する材料が挙げられる。適切な清浄化組成物は、米国特許第3,463,735号に開示されており、この米国特許は、低沸点溶媒(例えば、イソプロパノール)および適度に高沸点の溶媒(例えば、合計3個〜8個の炭素原子を有する、C〜Cのアルキレングリコールアルキルエーテル)を含有する溶媒系を含有する清浄化組成物を開示する。適切な市販の清浄化組成物としては、WINDEX(登録商標)が挙げられ、これは、SC Johnson and Son,Inc.から市販されている。その結果、本発明の特定の実施形態は、親水性であり、そして(a)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケート、および(b)清浄組成物、を含有する、液体組成物に関する。このような組成物の特定の実施形態はまた、光触媒物質を含有する。
【0073】
特定の実施形態において、清浄化組成物は、このような液体組成物中に、この液体組成物の総重量に基づいた重量で、少なくとも10重量%(例えば、少なくとも20重量%、またはいくつかの場合には、少なくとも25重量%)の量で存在する。
【0074】
所望であれば、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、コーティングの技術の当業者に周知の他の任意のコーティング材料を含有し得る。
【0075】
本発明の多層コーティングの第二の層の特定の実施形態が堆積される液体組成物は、種々の方法によって作製され得る。特定の場合において、組成物は、(i)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する親水性物質を提供する工程であって、この親水性物質のpHは、3.5以下である、工程;(ii)希釈剤中に分散された光触媒物質を含有するゾルまたはペーストを提供する工程であって、このゾルのpHは、3.5以下である、工程;および(iii)(i)において提供された親水性物質を(ii)において提供されたゾルまたはペーストと混合して、この光触媒物質をこの親水性物質中に分散させる工程によって調製される。この方法によって作製される液体組成物は、凝集または沈殿をほとんどまたは全く起こさずに、12ヶ月を超えて安定であり得ることが見出された。本明細書中に報告されるpH値は、Fisher Scientificから市販されているACCUMET pHメーターを使用して決定され得る。
【0076】
特定の場合において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する親水性物質を提供する工程によって生成され、ここで、この親水性物質のpHは、3.5以下であるか、またはいくつかの場合には、1.3〜3.5であるか、またはなお他の場合には、3.0〜3.5である。特定の実施形態において、この親水性物質は、最初に、親水性物質のpHが望ましいpHより大きい、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを提供する工程、次いで、この親水性物質のpHが3.5以下になるまで、いくつかの場合には、1.3〜3.5になるまで、またはなお他の場合には、3.0〜3.5になるまで、この親水性物質に酸を添加する工程によって得られる。例えば、先に言及されたように、この親水性物質は、MSH−200および/またはShinsui Flow MS−1200シリケートを含有し得、これらは、代表的に、3.5〜4.5のpHで、供給業者により提供される。
【0077】
特定の実施形態において、この親水性物質は、希釈剤(例えば、水または有機溶媒)で希釈され得、その後、例えば、この親水性物質の固形分含有量を低下させるために、酸が添加され、これによって、より薄いフィルムの形成を可能にする。
【0078】
この親水性物質のpHを調整するためにこの親水性物質に添加され得る酸としては、無機酸と有機酸との両方が挙げられる。適切な無機酸としては、とりわけ、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機酸としては、とりわけ、酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、ギ酸、およびシュウ酸が挙げられる。
【0079】
特定の場合において、多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、ゾルまたはペーストのpHが3.5以下であるか、またはいくつかの場合には、1.3〜3.5であるか、またはなお他の場合には、3.0〜3.5である、希釈剤中に分散された光触媒物質を含有するゾルまたはペーストを提供することによって生成される。特定の実施形態において、このゾルまたはペーストのpHは、上記親水性物質のpHと実質的に同じである。特定の実施形態において、このようなゾルまたはペーストは、最初に、pHが望ましいpHより大きいゾルまたはペーストを提供する工程、次いで、このゾルまたはペーストのpHが3.5になるまで、またはいくつかの場合には、1.3〜3.5になるまで、またはなお他の場合には、3.0〜3.5になるまで、このゾルまたはペーストに酸を添加する工程によって、得られる。例えば、先に言及されたように、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物の特定の実施形態において使用される、光触媒物質は、Showa Denko CorporationからNTB−1および/またはNTB−13の名称で入手可能な酸化チタンのゾルを含有し得、ここで、このゾルは、水中に分散した、板チタン石型酸化チタン粒子、あるいは板チタン石型酸化チタン粒子とアナターゼ型酸化チタンおよび/またはルチル型酸化チタン粒子との混合物を含有する。NTB−1およびNTB−13は、代表的に、2〜4のpHで、供給業者により提供される。
【0080】
光触媒物質を含有するゾルまたはペーストのpHを調整するためにこのゾルまたはペーストに添加され得る酸としては、無機酸と有機酸との両方が挙げられ、とりわけ、先に記載されたものが挙げられる。特定の実施形態において、この光触媒物質を含有するゾルまたはペーストに添加される酸は、上記のように、親水性物質に添加される酸と同じである。
【0081】
本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、上記のように提供される親水性物質を、上記のように提供されるゾルまたはペーストと混合し、この光触媒物質をこの親水性物質中に分散させることによって、作製され得る。この混合する工程は、具体的には限定されず、この混合が、親水性物質中での光触媒物質の分散を生じる限り、当業者に公知の任意の従来の混合技術によって、達成され得る。その結果、本発明の特定の実施形態は、第二の層が、3.5以下(例えば、1.3〜3.5、またはいくつかの場合には、3.0〜3.5)のpHを有する液体組成物から堆積される、多層コーティングに関する。
【0082】
他の場合において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、(i)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する親水性物質を提供する工程であって、この親水性物質のpHが、7.0〜8.5である、工程;(ii)希釈剤中に分散された光触媒物質を含有するゾルまたはペーストを提供する工程であって、このゾルまたはペーストのpHが、7.0〜8.5である、工程;および(iii)(i)において提供された親水性物質を(ii)において提供されたゾルまたはペーストと混合して、この光触媒物質をこの親水性物質中に分散させる工程によって、調製される。
【0083】
特定の場合において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される組成物は、親水性物質のpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)である、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する親水性物質を提供することによって、生成される。特定の実施形態において、このような親水性物質は、最初に、親水性物質のpHが所望のpHより低い、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを提供し、次いで、この親水性物質のpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)になるまで、この親水性物質に塩基を添加することによって、得られる。
【0084】
特定の実施形態において、この親水性物質は、希釈剤(例えば、水または有機溶媒)で希釈され得、その後、例えば、この親水性物質の固形分含有量を低下させるために塩基が添加され、これによって、より薄いフィルムの形成を可能にする。
【0085】
親水性物質のpHを調整するためにこの親水性物質に添加され得る物質としては、有機塩基と無機塩基との両方が挙げられる。この親水性物質のpHを上昇させるために使用され得る塩基の具体的な例としては、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウムおよび水酸化リチウム);水酸化アンモニウム、第四級アンモニウム水酸化物(例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドおよびテトラエタノールアンモニウムヒドロキシド);アンモニア;アミン(例えば、トリエチルアミンおよび3−(ジエチルアミノ)−プロパン−1−オール);第三級スルホニウム水酸化物(例えば、トリメチルスルホニウムヒドロキシドおよびトリエチルスルホニウムヒドロキシド);第四級ホスホニウムヒドロキシド(例えば、テトラメチルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラエチルホスホニウムヒドロキシド);有機シラノレート(例えば、三カリウムγ−アミノプロピルシラントリオレート、三カリウムN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルシラントリオレート、二カリウムジメチルシランジオレート、カリウムトリメチルシラノレート、ビス−テトラメチルアンモニウムジメチルシランジオレート、ビス−テトラエチルアンモニウムジメチルシランジオレート、およびテトラエチルアンモニウムトリメチルシラノレート);酢酸ナトリウム;ケイ酸ナトリウム;重炭酸アンモニウム;ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
特定の場合において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、ゾルまたはペーストのpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの実施形態においては、7.5〜8.0)である、希釈剤中に分散された光触媒物質を含有するゾルまたはペーストを提供することによって、提供される。特定の実施形態において、このゾルまたはペーストのpHは、上記親水性物質のpHと実質的に同じである。特定の実施形態において、このようなゾルまたはペーストは、最初に、ゾルまたはペーストのpHが望ましいpHより低いゾルまたはペーストを提供する工程、次いで、このゾルまたはペーストのpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)になるまで、このゾルまたはペーストにアルカリ性物質を添加する工程によって、得られる。
【0087】
光触媒物質を含有するゾルまたはペーストのpHを調整するためにこのゾルまたはペーストに添加され得る塩基としては、無機塩基および有機塩基が挙げられ、とりわけ、先に記載されたものが挙げられる。特定の実施形態において、光触媒物質を含有するゾルまたはペーストに添加される塩基は、上記親水性物質に添加される塩基と同じである。
【0088】
本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、上記のような親水性物質を、上記のように提供されたゾルまたはペーストと混合し、この光触媒物質をこの親水性物質中に分散させることによって、得られ得る。この混合する工程は、具体的には限定されず、そしてこの混合が、親水性物質中への光触媒物質の分散を生じる限り、当業者に公知の任意の従来の混合技術によって、達成され得る。その結果、本発明の特定の実施形態は、7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)のpHを有する液体組成物から第二の層が堆積する、多層コーティングに関する。
【0089】
ここで図2および図3を参照すると、(i)本発明の多層コーティングの第二の層の特定の実施形態の、拡大されたスケールでの概略断面図、および(ii)本発明の多層コーティングの第二の層の実施形態を図示する顕微鏡写真が、それぞれ見られる。図2および図3から明らかであるように、特定の実施形態において、本発明のコーティングの第二の層は、光触媒物質が親水性結合剤の全体にわたって分散している液体組成物から堆積される。これらの実施形態において、この多層コーティングの第二の層は、ナノサイズの光触媒粒子10の形態の光触媒物質(これらの特定の例において、これらの粒子は、20ナノメートル以下の平均結晶直径を有する)を含有し、これらの粒子は、親水性結合剤20の全体にわたって、比較的均一に分散している。具体的には、図3に示されるように、粒子10は、集合していない。すなわち、これらの粒子の全てまたはほぼ全てが、互いに結合しているのではなく、結合剤によって包まれており、そして結合剤によって分離されている。いずれの理論によっても限定されないが、親水性物質と、光触媒物質のゾルまたはペーストとのpHを、混合する前に制御することによって、これらの光触媒粒子はこの親水性物質中に十分に分散され得、その結果、集合が防止され、それにより、低濁度の液体組成物が得られると考えられる。従って、本発明の特定の実施形態において、多層コーティングの第二の層は、低い濁度を有する液体組成物から堆積される。
【0090】
本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物、および/またはこの組成物の生成の方法の1つの利点は、これらの組成物が、安定な1パッケージング形態組成物を形成し得ることである。従って、特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層は、1パックの液体組成物から堆積される。本明細書中において使用される場合、用語「1パックの液体組成物」とは、この液体組成物を構成する成分が、単一の容器内で一緒に貯蔵される液体組成物をいう。
【0091】
本発明の多層コーティングの第二の層を形成するために使用され得る、1パックの液体組成物は、先に議論された光触媒物質および親水性結合剤を含めて、少なくとも2つの成分を含有する。さらに、このような1パックの液体組成物は、少なくとも3ヶ月の貯蔵寿命を有する。本明細書中において使用される場合、用語「貯蔵寿命」とは、これらの成分が単一の容器内で合わされた時点と、この液体組成物がもはやヘーズの低いフィルムを形成し得ないほどこの組成物の濁度が増加する程度までの沈殿または集合の発生との間の、時間の量をいう。特定の実施形態において、1パックの液体組成物は、少なくとも3ヶ月、または他の特定の実施形態においては、少なくとも6ヶ月、またはいくつかの場合には、少なくとも12ヶ月の貯蔵寿命を有する。
【0092】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、3ヵ月後、6ヵ月後、またはいくつかの場合には、12ヵ月後に、600NTU(比濁法の濁度単位)以下、またはいくつかの場合には、400NTU以下の濁度を有する。本明細書中に報告される濁度の値は、Shaban Manufacturing Inc,H.F.Instruments Divisionによって製造されるTurbidimeter,Model DRT−100Dによって、28mmの直径×91mmの長さの、平坦な底部を有するサンプルキュベットを使用して、決定され得る。さらに、特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層は、低いヘーズを有する。本明細書中において使用される場合、「低いヘーズ」とは、フィルムが、0.3%以下のヘーズを有することを意味する。本明細書中に報告されるヘーズの値は、ヘーズ計(例えば、Pacific Scientific Company,Silver Spring,Mdから入手可能なHazegard(登録商標) Model No.XL−211)を用いて決定され得る。
【0093】
本発明はまた、基材に多層コーティングを塗布する方法に関し、この方法は、以下の工程を包含する:(1)基材に、無機酸化物ネットワークを含有する第一の層を塗布する工程;(2)この第一の層の少なくとも一部分に、液体組成物を塗布する工程であって、この液体組成物から、第二の層が堆積され、この第二の層の組成物は、親水性であり、そして本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する、工程;および(3)この第二の層を硬化させる工程。
【0094】
これらの方法において、第一の層は、無機酸化物ネットワークを含有し、そしてこのような層が堆積され得る組成物は、コーティング技術において使用される任意の方法(例えば、とりわけ、スプレーコーティング、ロールコーティング、浸漬、スピンコーティング、フローコーティング、ブラッシング、およびワイピング)によって、基材に塗布され得る。塗布後、このような組成物は、硬化され得る。例えば、多層コーティングの第一の層が堆積される組成物は、適切な溶媒(例えば、水、有機溶媒、またはこれらの混合物)中の固体の溶液として、基材に塗布され得る。次いで、高温(例えば、80℃〜130℃)で1時間〜16時間加熱することによって、この溶媒が蒸発され得、そしてこのコーティングが硬化され得る。
【0095】
本発明のこれらの方法において、第二の層が堆積される液体組成物は、先に言及されたもののような、コーティング技術において使用される任意の方法によって、基材に塗布され得る。
【0096】
本発明のこれらの方法において、第二の層は、第一の層の上に塗布された後に硬化(すなわち、乾燥)される。いずれの理論によっても束縛されないが、硬化の際に、本質的に完全に加水分解された結合剤のシラノール基のいくらかが縮合し、その結果、Si−O−Ti結合が、この組成物中で形成されると考えられる。これらの基の存在は、以下により詳細に記載されるように、本発明の多層コーティングにおける第二の層の耐久性を増強すると考えられる。
【0097】
本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、自己硬化し得、その結果、この組成物は、いかなる硬化触媒の補助もなしで、硬化し得る。さらに、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、例えば、周囲温度で硬化し得る。換言すれば、第二の層の液体組成物の硬化は、この組成物を空気中に静置することによって、達成され得る(すなわち、自然乾燥)。本発明の特定の実施形態によれば、この液体組成物は、この組成物を、25℃で2時間〜3時間、空気に曝露して、超親水性(superhydrophilicity)を達成し、そして16時間曝露して、長期間の耐久性を達成させることにより、硬化される。このような液体組成物はまた、熱乾燥によって硬化され得る。例えば、本発明の特定の実施形態によれば、第二の層は、空気に3分間〜5分間曝露し、次いで、少なくとも3秒間、80℃〜100℃で強制的に乾燥させることによって、硬化される。
【0098】
本発明の多層コーティングは、ポリマー基材、セラミック基材、コンクリート基材、セメント基材、ガラス基材、木材基材、紙製基材または金属基材、これらの複合材料、または他の材料(塗装された基材を含む)に、塗布され得る。特定の具体的な実施形態において、本発明の多層コーティングは、ポリマー基材に塗布される。特定の実施形態において、このようなポリマー基材としては、固体の透明な材料、または光学的にクリアな固体材料(例えば、米国特許第6,042,737号の第6欄第66行〜第8欄第34行に開示されるものであり、この米国特許は、本明細書中に参考として援用される)が挙げられ得る。特定の実施形態において、このようなポリマー基材は、フォトクロミック材料(例えば、米国特許第6,042,737号の第8欄第35行〜第10欄第19行に開示されるものであり、この米国特許は、本明細書中に参考として援用される)を含有し得る。
【0099】
本発明の多層コーティングが塗布され得る物品の具体的な例としては、窓;自動車、航空機、船などの防風ガラス;屋内または屋外の鏡;レンズ、眼鏡または他の光学機器;保護用スポーツゴーグル;マスク;ヘルメットシールド;冷凍食品の展示容器のスライド式ガラス蓋;ガラスカバー;建物の壁;建物の床;建物の外側タイル;建築用の石材;塗装された鋼板;アルミニウムパネル;窓枠;スクリーンドア;門扉;サンルーム;手すり;温室;交通信号;透明な防音壁;掲示板;広告版;ガードレール;道路の反射物;装飾用パネル;太陽電池;自動車、船、航空機などの塗装された表面;照明具、備品および他の物品の塗装された表面;空気処理システムおよび精製器;台所および浴室の内部の備品および器具;セラミックタイル;空気濾過ユニット;店の陳列棚;コンピュータディスプレイ;空調機の熱交換器;高電圧ケーブル;建物の外側および内側の部材;窓ガラス;食器類;生活空間、浴室、台所、病室、工場の空間、事務所の空間などの壁;衛生陶器(例えば、洗面器、浴槽、便器(closet bowl)、小便器、流しなど);ならびに電子設備(例えば、コンピュータディスプレイ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積する液体組成物は、非常に低い固形物含有量(この組成物の総重量に基づいて、約1重量%の全固形分)を有し得る。その結果、このような液体組成物は、非常に小さいフィルム厚で塗布され得る。具体的には、本発明の特定の実施形態によれば、液体組成物は、第一の層の少なくとも一部の上に、200ナノメートル(0.2マイクロメートル)以下、またはいくつかの実施形態においては、10ナノメートル〜100ナノメートル(0.01マイクロメートル〜0.1マイクロメートル)、本発明のなお他の実施形態においては、20ナノメートル〜60ナノメートル(0.02マイクロメートル〜0.06マイクロメートル)の乾燥フィルム厚を有する薄膜の形態で塗布される。本発明の多層コーティングの第二の層の、このような低いフィルム厚での塗布は、この組成物の屈折率を第一の層の屈折率と合わせる必要なしに、光学薄膜を提供する際に、特に有利であり得る。
【0101】
先に言及されたように、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積される液体組成物は、最初は親水性である。すなわち、塗布の際であって、第二の層の組成物中に存在し得る光触媒の励起の前に、この第二の層は、水に対する親和性を示す。この最初の親水性は、20°以下、またはいくつかの実施形態においては、15°以下、なお他の実施形態においては、10°以下の初期の水接触角度によって説明され得る。光触媒物質(存在する場合)の励起の際に、本発明の多層コーティングの第二の層は、「超親水性」にされ得る。すなわち、光触媒の励起の後に、本発明の多層コーティングの第二の層は、5°未満の水接触角度を示し得、0°程度に小さい角度さえも示し得る。
【0102】
光触媒を励起させるために使用され得る手段は、第二の層が堆積される液体組成物中に存在する場合、その組成物において使用される光触媒物質に依存する。例えば、可視光への曝露の際に光励起される物質(例えば、板チタン石型の二酸化チタン、および窒素または炭素をドープされたに酸化チタン)は、少なくとも400ナノメートルの波長の任意の放射線を含む、任意の可視光源に曝露され得る。他方で、アナターゼ型およびルチル型の二酸化チタン、酸化スズ、および酸化亜鉛は、それぞれ、387ナノメートル未満、413ナノメートル未満、344ナノメートル未満、および387ナノメートル未満の波長のUV放射線に曝露することによって、光励起され得る。このような光触媒を光励起させるために適切なUV放射線源としては、UVランプ(例えば、商品名UVA−340のもとでCleveland,OhioのQ−Panel Companyによって販売されているもので、コーティング表面において、1平方メートルあたり28ワット(W/m)の強度を有する)が挙げられるが、これに限定されない。
【0103】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングは、少なくとも0.5cm−1min−1(例えば、少なくとも1.0cm−1min−1)の光活性を示す。光活性は、米国特許第6,027,766号の第11欄第1行〜第12欄第55行に記載されているように評価され得、この米国特許は、本明細書中に参考として援用される。
【0104】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングは、太陽光に1時間〜2時間の間曝露すると、超親水性にされる。あるいは、本発明の多層コーティングは、28W/mの強度のUV放射線に1時間曝露すると、超親水性にされ得る。
【0105】
先に議論されたように、本発明の多層コーティングは、とりわけ、非常に好ましい親水性の、抗静電性の、かつ/または抗菌性の特性を示し得る。これらのコーティングは、親水性であるので、本発明の多層コーティングは、有利な自己清浄化特性、汚れ防止特性、および/または曇り止め特性を示し得る。従って、本発明はまた、物品の汚れ防止特性、自己清浄化特性、清浄化が容易な特性、および/または曇り止め特性を改善するための方法に関し、ここで、この物品は、その表面に堆積した無機酸化物ネットワークを備えるコーティング層を有する表面を有し、この方法は、以下の工程を包含する:(1)機材の少なくとも一部に、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する液体組成物を塗布する工程;および(2)工程(1)において塗布された組成物を硬化させる工程。
【0106】
本発明の多層コーティングの別の特徴は、このコーティングが、特に耐久性のある第二の層を生じ得ることである。このようなコーティングの驚くべき耐久性は、このフィルム表面が、加速された天候条件下で長時間にわたって、接触角度を維持する能力の観点で測定され得る。長時間にわたって、または多数回のワイピングサイクルにわたって試験されたサンプルによって維持され得る接触角度の程度が低いほど、このフィルムはより耐久性がある。このフィルムの耐候性のシミュレーションは、耐候性試験チャンバ(Cleveland Condensing Cabinet(CCC)およびQUV Tester(Cleveland,OhioのQ−Panel Companyの製品)が挙げられる)を介して得られ得る。
【0107】
特定の実施形態において、光触媒物質は、本発明の多層コーティングの第二の層が堆積する液体組成物中に、CCCチャンバへの4000時間の曝露後に10°未満(例えば、5°未満)の接触角度、および/または3cm−1min−1の光活性を維持する多層コーティングを生じるために十分な量で、存在する。ここで、CCCチャンバは、140°F(60℃)の蒸気温度で、室内の周囲環境で作動され、これは、試験表面への一定した水凝集を生じる。実際に、本明細書中の実施例によって示されるように、このような組成物の特定の実施形態への光触媒物質の含有は、本明細書中に記載される型の親水性結合剤を含有するが光触媒物質を含有しない組成物と比較して、劇的に改善された耐久性を示すコーティングを生じることが見出された。図4によって示されるように、特定の実施形態において、光触媒物質は、本発明の多層コーティング組成物の第二の層が堆積される組成物中に、このコーティングを上記のようにCCCチャンバ内に4000時間曝露した後でさえも、その初期の水接触角度を維持する(すなわち、水接触角度が、初期の水接触角度の4°以内であり、ここで、「初期の水接触角度」とは、実施例に記載されるように、UV光に2時間曝露した後であるがCCCチャンバに曝露する前に観察される水接触角度をいう)多層コーティングを与えるために十分な量で含有され得る。一方で、光触媒物質が存在しない場合、約2000時間〜3000時間のこのような曝露の後にその初期の水接触角度を維持し得ないコーティングが得られた。実際に、これらの実施例は、光触媒物質が存在しない場合、この表面の接触角度は、3500時間のCCCへの曝露後に、初期の接触角度のほぼ3倍に増加することを示す。いずれの理論によっても束縛されないが、本発明者らは、この驚くべき結果が、光触媒物質のオルガノシランとの部分的な架橋(これは、このコーティング中にSi−O−Ti結合を与える)に起因し得ると考える。本発明者らは、いくらかの光触媒物質は、このような架橋に関与し、一方で、いくらかの光触媒物質は、4000時間のCCC曝露後でさえも、光触媒活性化のために利用可能なままであると考える。
【0108】
特定の実施形態において、本発明の多層コーティングは、65℃〜70℃のブラックパネル温度で蛍光管(B313ナノメートル)を備えるQUV Tester中での650時間の曝露、および50℃で4時間の凝縮湿度への曝露後に、5°〜6°の接触角度を維持し得る。
【0109】
以下の実施例が、本発明を説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をその細部まで限定するとみなされるべきではない。他に示されない限り、以下の実施例および本明細書全体における全ての部および百分率は、重量に基づく。
【実施例】
【0110】
(実施例1:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
酸加水分解触媒溶液(本明細書中で、溶液「A」と称される)を、7,000グラムの脱イオン水を、清浄な乾燥した2ガロンの容器に添加することによって、調製した。攪拌しながら、1.0グラムの70%硝酸を添加し、そしてとっておいた。
【0111】
15.5グラム(約0.10モル)の、98% TMOS(テトラメトキシシラン)(約6グラムのSiOに相当する)を、清浄な乾燥した1リットルのガラスビーカーに添加した。3.6グラムの溶液A(約0.20モルのHO)を、このTMOSにゆっくりと添加し、氷浴を使用することによってその発熱を制御し、温度を25℃未満に維持した。溶液Aの添加の完了時に、この部分的に加水分解されたシラン溶液を、約25℃で1時間保持した。別の清浄な乾燥したビーカーで、290.5グラムのエタノールおよび290.5グラムの脱イオン水を混合し、次いで、1時間の保持時間の後に、攪拌しながら、部分的加水分解物に添加した。次いで、この希釈されたシラン溶液のpH(pH約5)を、0.80グラムの氷酢酸を攪拌しながら添加することによって、pH約3.9に調整した。得られた1% SiO結合剤溶液を、攪拌しながら一晩かけて、完全に加水分解させた。
【0112】
上記溶液を用いる試験パネルへの塗布は、良好な濡れを示し、光学的な傷がなく、そして良好な親水性を維持しながら、50回の浸水/乾燥サイクルをパスした。
【0113】
(実施例2:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
15.5グラム(約0.10モル)の、98% TMOS(約6グラムのSiOに相当する)および3.6グラムの無水メタノール(共溶媒)を、清浄な乾燥した1リットルのガラスビーカーに添加した。3.6グラムの溶液A(約0.20モルのHO)を、このTMOS溶液にゆっくりと添加し、溶液Aの添加の速度によってその発熱を制御した。この添加の間に達したピーク温度は、33℃であった。溶液Aの添加の完了時に、この部分的に加水分解されたシラン溶液を、約25℃で1時間保持した。別の清浄な乾燥したビーカーで、287グラムのエタノールおよび290.5グラムの脱イオン水を混合し、次いで、1時間の保持時間の後に、攪拌しながら、部分的加水分解物に添加した。次いで、この希釈されたシラン溶液のpH(pH約5)を、0.80グラムの氷酢酸を攪拌しながら添加することによって、pH約3.9に調整した。得られた1% SiO結合剤溶液を、攪拌しながら一晩かけて、完全に加水分解させた。
【0114】
上記溶液を用いる試験パネルへの塗布は、水をはじく(dewetting)問題を示し、斑が生じた(mottling)。これらの試験結果は、共溶媒の含有が、より十分な加水分解および対応するより高分子量のオリゴマーを形成するための縮合を提供することを示した。このことは、塗布の際に観察された挙動を示した。
【0115】
(実施例3:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
15.5グラム(約0.10モル)の、98% TMOS(テトラメトキシシラン)(約6グラムのSiOに相当する)を、清浄な乾燥した1リットルのガラスビーカーに添加した。3.6グラムの溶液A(約0.20モルのHO)を、このTMOSにゆっくりと添加し、溶液Aの添加の速度によってその発熱を制御した。この添加の間に達したピーク温度は、40℃であった。溶液Aの添加の完了時に、この部分的に加水分解されたシラン溶液を、約25℃で1時間保持した。別の清浄な乾燥したビーカーで、290.5グラムのエタノールおよび290.5グラムの脱イオン水を混合し、次いで、1時間の保持時間の後に、攪拌しながら、部分的加水分解物に添加した。次いで、この希釈されたシラン溶液のpH(pH約5)を、0.80グラムの氷酢酸を攪拌しながら添加することによって、pH約3.9に調整した。1% SiO結合剤溶液を、攪拌しながら一晩かけて、完全に加水分解させた。
【0116】
上記溶液を用いる試験パネルへの塗布は、水をはじく問題を示し、斑が生じた。これらの試験結果は、発熱を制御せず、そして加水分解の温度を約40℃にまで達せさせることが、より高分子量のオリゴマーを形成するためのより高度の縮合を提供することを示した。このことは、塗布の際に観察された挙動を示した。
【0117】
(実施例4:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
メタノールおよび脱イオン水を、1:1(w:w)の比で、攪拌しながら混合した。この混合物を、室温まで冷却した。10.0gのMS−51シリケート溶液(Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japan)を、ガラス反応器に入れ、続いて、504.8gの、予め混合したメタノール/水溶媒混合物を、一度に添加した。この溶液を、20℃〜22℃で15分間攪拌した。次いで、5.2gの氷酢酸を、攪拌しながらこの反応器に添加した。この溶液混合物を、周囲温度でさらに24時間攪拌した。この溶液の最終SiO含有量は、1%であり、pHは3.5であった。
【0118】
(実施例5:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
1−プロパノールおよび脱イオン水を、1:1(w:w)の比で、攪拌しながら混合した。この混合物を、室温まで冷却した。別の容器内で、10.0gの氷酢酸を90.0gの1−プロパノール/水溶媒混合物で希釈することによって、酢酸溶液を調製した。5.0gのMS−51シリケート溶液をガラス反応器に入れ、続いて、253.7gの、予め混合した1−プロパノール/水溶媒混合物を、一度に添加した。この溶液を、20℃〜22℃で15分間攪拌した。次いで、1.4gの予め調製した酢酸溶液を、攪拌しながらこの反応器に添加した。この溶液混合物を、周囲温度でさらに24時間攪拌した。この溶液の最終SiO含有量は、1%であり、pHは4.1であった。
【0119】
(実施例6:液体組成物の調製)
表1の液体組成物A〜Gを、以下のように調製した。充填物Iを、磁気攪拌機を備えた1リットルのガラス容器内で調製した。充填物Iを、結合剤物質をこの容器に入れ、次いで脱イオン水を、攪拌しながらこの容器に添加することによって、調製した。この混合物のpHを、所望のpHに達するまで2Nの塩酸を攪拌しながら添加することによって、1.8に調整した。
【0120】
充填物IIを、磁気攪拌機を備えた4オンスのガラス容器内で調製した。チタニアゾルをこの容器に添加し、そしてそのpHを、所望のpHに達するまで2Nの塩酸を攪拌しながら添加することによって、1.8に調整した。次いで、充填物IIを、攪拌しながら充填物Iに添加し、親水性組成物A〜Gを生成した。
【0121】
【表1】

MSH−200 Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから市販されている加水分解したオルガノシリケート(1%固形分)
NTB−1 Showa Denko K.K.,Tokyo,Japanから市販されているチタニアゾル
STS−01 Ishihara Sangyo Kaisha Ltd.から市販されているチタニアゾル。
【0122】
(実施例7−フロートガラス試験基材)
9インチ×12インチのフロートガラス試験基材の表面を、希釈したDart 210溶液(Madison Chemical Co.,Inc.から市販されている)でこの基材を清浄化することによって、準備した。この溶液を、溶液が5%〜10%のDart 210の濃度を有するように、濃Dart 210を脱イオン水で希釈することによって、調製した。次いで、この基材を熱水道水で、次いで脱イオン水でリンスした。この試験基材に、Windex(登録商標)をスプレーし、そしてペーパータオル(Kimberly−Clark Corp.から市販されているKaydry(登録商標))で拭いて乾燥させた。
【0123】
実施例6の液体組成物の各々を、Fisher Scientificから市販されているBLOODBLOC Protective Padを使用するワイプ塗布によって、試験基材に塗布した。このパッドで、泡適用器の周りを包んだ。次いで、1.5グラムの親水性組成物を、点眼器または滴下用頂部を有するプラスチックビンを使用して、このパッドに塗布した。次いで、この湿ったパッドをガラス試験基材と接触させることによって、この組成物を、真っ直ぐな、わずかに重なる行程で塗布した。塗布後、この基材を室温で少なくとも2乾燥させ、その後、試験した。結果を、表2にまとめる。
【0124】
【表2】

サンプルを、X線蛍光分析を使用して分析した
光触媒活性を、米国特許第6,027,766号の第11欄第1行〜第12欄第55行に記載されているように評価した
表面抵抗を、ACL Statitide Model 800 Megohmeterを用いて、(1)サンプル上の数箇所に5ミリメートルの間隔を空けて配置した大きい範囲のプローブ、または(2)サンプル上の数箇所に2.75インチの間隔を空けて配置した、計器のオンボードプローブのいずれかを使用して、評価した。
ヘーズを、Pacific Scientific Company,Silver
Spring,Mdから入手可能なHazegard(登録商標) Model No.XL−211ヘーズメーターを用いて評価した。
【0125】
(耐久性試験−試験1)
液体組成物AおよびBでコーティングされた試験基材を、140°F(60℃)で作動するCleveland Condensation Chamberに入れた。各試験基材を、このチャンバから毎週取り出し、そして水接触角度を決定するために試験した。この組成物の光活性を、この基材をUV光に曝露する前と後との水接触角度の差を測定することによって決定した。曝露の間隔は、Cleveland,OhioのQ−Panel Companyによって供給されるUVA−340ランプまたは直接の太陽光に対して、2時間であった。報告される水接触角度を、定着液滴法によって、Gartner Scientific角度計光学機器を備えた、Lord Manufacturing,Inc.によって製造される改変された捕捉気泡インジケータを使用して、測定した。測定されるべき表面を、水平位置に、上に向けて、光源の正面に配置した。水の定着液滴を、この光源の正面で、この表面の頂部に配置し、これによって、円形の分度器の目盛を備える角度計の望遠鏡を通して定着液滴の輪郭が見え、そして接触角度が、度で測定されるようにした。結果を、表3にまとめる。
【0126】
【表3】

(耐久性試験−試験2)
液体組成物A〜Gでコーティングした試験基材の耐久性を、上に記載されたようなUV光得の曝露の後であるがCleveland Condensation Chamber内への配置の前の水接触角度を測定することによって、試験した。次いで、同じ基材を、上記のように少なくとも4000時間CCC内に配置し、次いで取り出した。次いで、これらの基材を、上記のようにUV光に曝露し、そして水接触角度を測定することによって、試験した。結果を、表4にまとめる。
【0127】
【表4】

(耐久性試験−試験3)
本発明の組成物でコーティングした試験基材の耐久性をまた、親水性オルガノシリケート結合剤を含有するが光触媒物質を含有しない組成物でコーティングした基材と比較した。実施例6の親水性組成物BおよびF、ならびに0.95/0.5の結合剤対二酸化チタンの比を有する類似の組成物(組成物J)を、上記のようにCleveland Condensation Chamber内に配置し、定期的に取り出し、そして上記のように、UV光に曝露した。比較用組成物Aは、Dainippon Shikizai,Tokyo,Japanから入手可能なShinsui Flow MS−1200であり、そして比較用組成物Bは、Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから入手可能なMSH−200であった。これらの試験基材を、上記のように、水接触角度について試験した。結果を、図4に示す。
【0128】
(実施例8−液体組成物の調製)
液体組成物HおよびIを、WINDEXを表5に示される量でこの組成物に含有させ、そして結合剤/TiOの重量比を表5に記載されるように調整したことを除いて、実施例6に記載される様式で調製した。次いで、これらの組成物の耐久性を、耐久性試験−試験1に記載される様式で分析した。結果を、表6に記載する。
【0129】
【表5】

【0130】
【表6】

(実施例9−液体組成物の濁度)
液体組成物K、L、M、およびOを、pHを表7に記載される値に調整し、そして結合剤/TiOの重量比を表7に記載されるように調整したことを除いて、実施例6に記載される様式で調製した。液体組成物N、P、およびQを、充填物IのpHを調整せず、そして充填物IIが、チタニアゾルを脱イオン水で15%固形分から2%固形分まで希釈するために十分な量のチタニアゾルと脱イオン水との混合物であることを除いて、実施例6に記載されるのと類似の様式で調製した。充填物IIのpHを調整せず、そして充填物IIを、充填物Iに添加して、液体組成物を作製した。次いで、これらの組成物の濁度を、Shaban Manufacturing Inc,H.F.Instruments
Divisionにより製造されるTurbidimeter,Model DRT−100Dによって、28mmの直径×91mmの長さを有する平底のサンプルキュベットを使用して、経時的に分析した。結果を、表7に記載する。
【0131】
【表7】

(実施例10−プラスチックレンズでの曇り耐性)
この実施例は、本発明の曇り止め特性を説明することを意図する。供給業者によって染色不可能なハードコートで予めコーティングされた熱可塑性ポリカーボネートレンズ(Gentex Optics,Inc.から市販されているGentex(登録商標)PDQ(登録商標))を、石鹸水で洗浄し、脱イオン水およびイソプロピルアルコールでリンスし、そして自然乾燥させることによって、表面処理した。次いで、これらのレンズをプラズマ処理した。実施例10Aとして、さらなるコーティングを、このレンズに塗布しなかった。実施例10Bとして、プラズマで表面処理したレンズを、Mitsubishi
Chemical Corporation,Tokyo,Japanから市販されているMSH−200加水分解オルガノシリケート(1%固形分)でコーティングした。実施例10Cとして、プラズマで表面処理したレンズを、実施例6の組成物Eに記載された型の組成物で、浸漬コーティングによって、230mm/分の引き出し速度でコーティングした。
【0132】
曇り特性を、熱湯を満たしたカップ上にこのレンズを配置することによって、評価した。実施例10Aのレンズは、その面積全体にわたって曇った。実施例10Bのレンズは、その面積の50%〜60%にわたって曇った。実施例10Cのレンズは、その表面に曇りを有さない。
【0133】
(実施例11−自動車のブレーキダストによる汚れに対する耐性)
この実施例は、本発明の汚れ防止特性を説明することを意図する。DaimlerChrysierから購入した2つのアルミニウム合金の車輪を、マスキングテープを使用して、等しい5つの領域に分割した。これらの車輪を、1996年モデルのChrysler Jeep Cherokeeに取り付けた。1つの車輪(車輪#1)を、前の客席側に設置し、そして他方の車輪(車輪#2)を、前の運転者側に設置した。設置の前に、車輪#1および車輪#2の各々の5つの領域を、以下のように処理した。
【0134】
(車輪#1の準備)
乗物への設置の前に、車輪#1の5つの領域を、以下のように処理した。領域1には、コーティングを塗布しなかった。領域2を、Hi−GardTM 1080(PPG Industries,Inc.から入手可能な、オルガノシラン含有コーティング溶液)で、洗浄瓶を使用するカーテンコーティングによってコーティングし、5分間自然乾燥させ、そして240°F(116℃)で3時間焼成した。領域3を、領域#2に関して上に記載されたように、Hi−Gard 1080でコーティングした。焼成後、領域3を、Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから市販されているMSH−200加水分解オルガノシリケート(1%固形分)で、浸漬したスポンジを用いるワイプオン塗布によって、コーティングした。次いで、このMSH−200を自然乾燥させ、そして自己縮合させた。領域4を、領域2に関して上に記載されたように、Hi−Gard 1080でコーティングした。焼結後、領域4を、実施例6の組成物Eに記載される型の組成物、および脱イオン水とエタノールとの混合物(50/50の重量比)で、浸漬したスポンジを使用して、ワイプオン塗布によってコーティングした。領域5を、実施例6の組成物Eに記載される型の組成物でコーティングした。
【0135】
この乗物を、1週間運転した。車輪#1の領域1〜領域5は、水ですすぐ前に、清浄さに有意な差を示さなかった。園芸用ホースからの水でのリンス後、車輪#1の領域1〜領域5の清浄さを、1〜10のスケールで測定した。より大きい数字が、より清浄な表面を表す。これらの結果を、表8に要約する。
【0136】
【表8】

(車輪#2の準備)
乗物への設置の前に、車輪#2の5つの領域を、以下のように処理した。領域1には、コーティングを塗布しなかった。領域2を、SolGard(登録商標) 330コーティング(PPG Industries,Inc.から入手可能な、オルガノシラン含有コーティング溶液)で、洗浄瓶を使用するカーテンコーティングによってコーティングし、5分間自然乾燥させ、そして240°F(116℃)で3時間焼成した。領域3を、領域#2に関して上に記載されたように、Hi−Gard 1080でコーティングした。焼成後、領域3を、Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから市販されているMSH−200加水分解オルガノシリケート(1%固形分)で、浸漬したスポンジを用いるワイプオン塗布によって、コーティングした。次いで、このMSH−200を自然乾燥させ、そして自己縮合させた。領域4を、領域2に関して上に記載されたように、Hi−Gard 1080でコーティングした。焼結後、領域4を、実施例6の組成物Eに記載される型の組成物、および脱イオン水とエタノールとの混合物(50/50の重量比)で、浸漬したスポンジを使用して、ワイプオン塗布によってコーティングした。領域5を、実施例6の組成物Eに記載される型の組成物でコーティングした。
【0137】
この乗物を、1週間運転した。車輪#1の領域1〜領域5は、水ですすぐ前に、清浄さに有意な差を示さなかった。園芸用ホースからの水でのリンス後、車輪#1の領域1〜領域5の清浄さを、1〜10のスケールで測定した。より大きい数字が、より清浄な表面を表す。これらの結果を、表9に要約する。
【0138】
【表9】

改変が、本発明に対して、上記記載に開示された概念から逸脱することなくなされ得ることが、当業者によって容易に理解される。このような改変は、特許請求の範囲が、文言上、そうではないことを明白に言及しない限り、添付の特許請求の範囲内に含まれるとみなされるべきである。従って、本明細書中に詳細に記載された実施形態は、説明のみであり、本発明の範囲を限定しない。本発明は、添付の特許請求の範囲およびその任意の全ての均等物の全範囲に与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−23039(P2010−23039A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252489(P2009−252489)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2007−515365(P2007−515365)の分割
【原出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】