説明

無段変速機

【課題】 無段変速機の偏心カムに対する偏心ディスクの組み付けを容易化する。
【解決手段】 偏心ディスク19を偏心カム18に組み付けた状態では、入力軸12の開口12aから露出するピニオン15に偏心ディスク19のリングギヤ19bが噛合するが、偏心ディスク19を偏心カム18に組み付けるべく、偏心ディスク19のリングギヤ19bを入力軸12の外周に嵌合して軸線L方向に挿入する過程で、ピニオン15の手前の入力軸12がリングギヤ19bと干渉してしまい、偏心ディスク19を偏心カム18に対して正しい位置に位置決めできなくなって組み付けが不能になる。しかしながら、リングギヤ19bの一部に入力軸12の肉厚Tよりも大きい深さDの切欠き部19dを形成したので、リングギヤ19bの切欠き部19dをピニオン15の手前の入力軸12に嵌合させることで、偏心ディスク19を偏心カム18に対して正しい位置に位置決めして組み付けを可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸によりコネクティングロッドの一端部を偏心回転させ、コネクティングロッドの他端部がワンウエイクラッチを介して接続された出力軸を間欠回転させるとともに、コネクティングロッドの一端部の偏心量を変化させることで変速比を変更する無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる無段変速機は下記特許文献1により公知である。この無段変速機は、入力軸に円板状の偏心カムを偏心状態で固設し、この偏心カムの外周に円板状の偏心ディスクを偏心状態で相対回転自在に支持し、入力軸の内部に配置した変速軸で偏心カムに対して偏心ディスクを相対回転させることで、入力軸の軸線に対する偏心ディスクの偏心量を変化させて変速比を変更するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国公開102009039993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかる無段変速機の組立時に、偏心カムの外周に偏心ディスクを嵌合して変速軸のピニオンを偏心ディスクのリングギヤに噛合させる作業を行う場合、偏心ディスクを入力軸の軸線方向に挿入して組み付けようとすると、「発明を実施するための形態」の欄で詳述するように、入力軸がリングギヤと干渉して組み付けが不能になる問題がある。そこで、上記特許文献1に記載されたものは、偏心ディスクをリングギヤの直径線上で2分割して径方向外側から組み付けている。
【0005】
しかしながら、偏心ディスクを2分割すると、部品点数や製造コストが増加するだけでなく、リングギヤの精度が低下してスムーズな変速操作が妨げられる可能性がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、無段変速機の偏心カムに対する偏心ディスクの組み付けを容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源に接続された中空の入力軸と、前記入力軸の外周に偏心状態で固設された偏心カムと、前記偏心カムの外周に偏心状態で相対回転可能に支持された偏心ディスクと、前記入力軸の内部に同軸に嵌合する変速軸と、前記変速軸に固設されて前記入力軸に形成した開口を通して前記偏心ディスクのリングギヤに噛合するピニオンと、出力軸の外周に設けられたワンウェイクラッチと、前記偏心ディスクおよび前記ワンウエイクラッチに両端を接続されて往復運動するコネクティングロッドとを備え、前記入力軸の回転を前記コネクティングロッドおよび前記ワンウエイクラッチを介して前記出力軸に間欠的に伝達するとともに、前記変速軸により前記ピニオンおよび前記リングギヤを介して前記入力軸の軸線に対する前記偏心ディスクの偏心量を変化させて変速比を変更する無段変速機であって、前記リングギヤの一部に、前記入力軸の肉厚よりも大きい深さの切欠き部を形成したことを特徴とする無段変速機が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記切欠き部は、変速比の変更時に前記ピニオンと噛合しない部分に形成されることを特徴とする無段変速機が提案される。
【0009】
尚、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、駆動源に接続された入力軸が回転すると、入力軸の外周に偏心状態で固設した偏心カムが偏心回転し、この偏心カムの外周に偏心状態で支持した偏心ディスクが偏心回転する。偏心ディスクに一端を接続されたコネクティングロッドが往復運動すると、コネクティングロッドの他端が接続されたワンウエイクラッチを介して出力軸が間欠回転する。入力軸の内部に同軸に嵌合する変速軸で偏心カムに対して偏心ディスクを相対回転させると、入力軸に対する偏心ディスクの偏心量が変化してコネクティングロッドの往復ストロークが変化することで、出力軸の間欠回転角が変化して変速比が変更される。
【0011】
偏心ディスクを偏心カムに組み付けた状態では、入力軸の開口から露出するピニオンに偏心ディスクのリングギヤが噛合するが、偏心ディスクを偏心カムに組み付けるべく、偏心ディスクのリングギヤを入力軸の外周に嵌合して軸線方向に挿入する過程で、ピニオンの手前の入力軸(開口が形成されていない部分)がリングギヤと干渉してしまい、偏心ディスクを偏心カムに対して正しい位置に位置決めできなくなって組み付けが不能になる問題がある。
【0012】
しかしながらリングギヤの一部に入力軸の肉厚よりも大きい深さの切欠き部を形成したので、リングギヤの切欠き部をピニオンの手前の入力軸に嵌合させることで、偏心ディスクを偏心カムに対して正しい位置に位置決めして組み付けを可能にすることができる。
【0013】
また請求項2の構成によれば、偏心ディスクのリングギヤの切欠き部は、変速比の変更時にピニオンと噛合しない部分に形成されるので、リングギヤに切欠き部を形成しても変速比の変更を支障なく行うことができ、しかも切欠き部を設けたことで偏心ディスクの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】無段変速機の全体視図。
【図2】無段変速機の要部の一部破断斜視図。
【図3】図1の3−3線断面図。
【図4】図3の4部拡大図。
【図5】図3の5−5線断面図。
【図6】偏心ディスクの形状を示す図。
【図7】偏心ディスクの偏心量と変速比との関係を示す図。
【図8】偏心ディスクの組み付け時の作用説明図。
【図9】図8に対応する比較例の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図9に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1〜図5に示すように、自動車用の無段変速機Tのミッションケース11は、フレーム本体51aおよび一対の第1、第2側壁51b,51cを有して上面が開放するフレーム51と、フレーム51の周囲を覆う2分割された上部カバー52および下部カバー53とで構成される。ミッションケース11の第1、第2側壁51b,51cに入力軸12および出力軸13が相互に平行に支持されており、エンジンEに接続された入力軸12の回転が6個の変速ユニット14および出力軸13を介して駆動輪に伝達される。中空に形成された入力軸12の内部に、その入力軸12と軸線Lを共有する変速軸15が7個のニードルベアリング16…を介して相対回転可能に嵌合する。6個の変速ユニット14の構造は実質的に同一構造であるため、以下、一つの変速ユニット14を代表として構造を説明する。
【0017】
変速ユニット14は変速軸15の外周面に設けられたピニオン17を備えており、このピニオン17は入力軸12に形成した開口12aから露出する。ピニオン17を挟むように、入力軸12の外周に軸線L方向に2分割された円板状の偏心カム18がスプライン結合される。偏心カム18の中心O1は入力軸12の軸線Lに対して距離dだけ偏心している。また6個の変速ユニット14…の6個の偏心カム18…は、その偏心方向の位相が相互に60°ずつずれている。
【0018】
偏心カム18の外周面には、円板状の偏心ディスク19の軸線L方向両端面に形成した一対の偏心凹部19a,19aが、一対のニードルベアリング20,20を介して回転自在に支持される。偏心ディスク19の中心O2に対して偏心凹部19a,19aの中心O1(つまり偏心カム18の中心O1)は距離dだけずれている。即ち、入力軸12の軸線Lおよび偏心カム18の中心O1間の距離dと、偏心カム18の中心O1および偏心ディスク19の中心O2間の距離dとは同一である。
【0019】
軸線L方向に2分割された偏心カム18の割り面には、その偏心カム18の中心O1と同軸に一対の三日月状のガイド部18a,18aが設けられており、偏心ディスク19の一対の偏心凹部19a,19aの底部間を連通させるように形成されたリングギヤ19bの歯先が、偏心カム18のガイド部18a,18aの外周面に摺動可能に当接する。そして変速軸15のピニオン17が、入力軸12の開口12aを通して偏心ディスク19のリングギヤ19bに噛合する。
【0020】
入力軸12の一端側はボールベアリング21を介してミッションケース11の第1側壁51bに直接支持される。また入力軸12の他端側に位置する1個の偏心カム18に一体に設けた筒状部18bが、ボールベアリング22を介してミッションケース11の第2側壁51cに支持されており、その偏心カム18の内周にスプライン結合された入力軸12の他端側は、ミッションケース11に間接的に支持される。
【0021】
入力軸12に対して変速軸15を相対回転させて無段変速機Tの変速比を変更する変速アクチュエータ23は、モータ軸24aが軸線Lと同軸になるようにミッションケース11の側部カバー42に支持された電動モータ24と、電動モータ24に接続された遊星歯車機構25とを備える。遊星歯車機構25は、電動モータ24にニードルベアリング26を介して回転自在に支持されたキャリヤ27と、モータ軸24aに固定されたサンギヤ28と、キャリヤ27に回転自在に支持された複数の2連ピニオン29…と、中空の入力軸12の軸端(厳密には、前記1個の偏心カム18の筒状部18b)にスプライン結合された第1リングギヤ30と、変速軸15の軸端にスプライン結合された第2リングギヤ31とを備える。各2連ピニオン29は大径の第1ピニオン29aと小径の第2ピニオン29bとを備えており、第1ピニオン29aはサンギヤ28および第1リングギヤ30に噛合し、第2ピニオン29bは第2リングギヤ31に噛合する。
【0022】
偏心ディスク19の外周には、ローラベアリング32を介してコネクティングロッド33の一端側の環状部33aが相対回転自在に支持される。
【0023】
出力軸13はミッションケース11の第1、第2側壁51b,51cに一対のボールベアリング34,35で支持されており、その外周にはワンウェイクラッチ36が設けられる。ワンウェイクラッチ36は、コネクティングロッド33のロッド部33bの先端にピン37を介して枢支されたリング状のアウター部材38と、アウター部材38の内部に配置されて出力軸13に固定されたインナー部材39と、アウター部材38の内周の円弧面とインナー部材39の外周の平面との間に形成された楔状の空間に配置されて複数個のスプリング40…で付勢された複数個のローラ41…とを備える。
【0024】
図6および図8に示すように、偏心ディスク19の中心O2に対して偏心凹部19a,19aの中心O1(つまり偏心カム18の中心O1)は距離dだけずれているため、偏心ディスク19の外周と偏心凹部19a,19aの内周との間隔は円周方向に不均一になっており、その間隔が大きい部分に三日月状の肉抜き凹部19c,19cが形成される。偏心凹部19a,19aの中心O1から見て、偏心ディスク19の中心O2の方向と直交する方向に位置するリングギヤ19bの一部に円弧状の切欠き部19dが形成される。円弧状の切欠き部19dの直径は入力軸12の直径と同じか僅かに大きく設定されるとともに、切欠き部19dの最大深さDは中空の入力軸12の肉厚tよりも僅かに大きく設定される。尚、図8において入力軸12の外周に設けられた歯12b…は、偏心カム18をスプライン結合するためのスプライン歯である。
【0025】
次に、無段変速機Tの一つの変速ユニット14の作用を説明する。
【0026】
図5および図7(A)〜図7(D)から明らかなように、入力軸12の軸線Lに対して偏心ディスク19の中心O2が偏心しているとき、エンジンEによって入力軸12が回転するとコネクティングロッド33の環状部33aが軸線Lまわりに偏心回転することで、コネクティングロッド33のロッド部33bが往復運動する。その結果、コネクティングロッド33のロッド部33bにピン37で接続されたワンウェイクラッチ36のアウター部材38が所定角度範囲で往復回転し、アウター部材38が一方向に回転したときにローラ41…が楔状の空間に噛み込んでインナー部材39に回転が伝達され、アウター部材38が他方向に回転したときにローラ41…がスリップしてインナー部材39への回転の伝達が遮断される。
【0027】
このようにして、入力軸12が1回転する間に、入力軸12の回転が所定時間だけ出力軸13に伝達されるため、入力軸12が連続回転すると出力軸13は間欠回転する。6個の変速ユニット14…の偏心ディスク19…の偏心方向の位相が相互に60°ずつずれているため、6個の変速ユニット14…が入力軸12の回転を交互に出力軸13に伝達することで、出力軸13は連続的に回転する。
【0028】
このとき、偏心ディスク19の偏心量εが大きいほど、コネクティングロッド33の往復ストロークが大きくなって出力軸13の1回の回転角が増加し、無段変速機Tの変速比が小さくなる。逆に、偏心ディスク19の偏心量εが小さいほど、コネクティングロッド33の往復ストロークが小さくなって出力軸13の1回の回転角が減少し、無段変速機Tの変速比が大きくなる。そして偏心ディスク19の偏心量εがゼロになると、入力軸12が回転してもコネクティングロッド33が移動を停止するために出力軸13は回転せず、無段変速機Tの変速比が最大(無限大)になる。
【0029】
入力軸12に対して変速軸15が相対回転しないとき、つまり入力軸12および変速軸15が同一速度で回転するとき、無段変速機Tの変速比は一定に維持される。入力軸12および変速軸15を同一速度で回転させるには、入力軸12と同速度で電動モータ24を回転駆動すれば良い。その理由は、遊星歯車機構25の第1リングギヤ30は入力軸12に接続されて該入力軸12と同一速度で回転するが、それと同一速度で電動モータ24を駆動するとサンギヤ28および第1リングギヤ30が同一速度で回転するため、遊星歯車機構25はロック状態になって全体が一体に回転する。その結果、一体に回転する第1リングギヤ30および第2リングギヤ31に接続された入力軸12および変速軸15は一体化され、相対回転することなく同速度で回転するからである。
【0030】
入力軸12の回転数に対して電動モータ24の回転数を増速あるいは減速すると、入力軸12に結合された第1リングギヤ30と電動モータ24に接続されたサンギヤ28とが相対回転するため、キャリヤ27が第1リングギヤ30に対して相対回転する。このとき、相互に噛合する第1リングギヤ30および第1ピニオン29aの歯数比と、相互に噛合する第2リングギヤ31および第2ピニオン29bの歯数比とが僅かに異なるため、第1リングギヤ30に接続された入力軸12と第2リングギヤ31に接続された変速軸15とが相対回転する。
【0031】
このようにして入力軸12に対して変速軸15が相対回転すると、各変速ユニット14のピニオン17にリングギヤ19bを噛合させた偏心ディスク19の偏心凹部19a,19aが、入力軸12と一体の偏心カム18のガイド部18a,18aに案内されて回転し、入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εが変化する。
【0032】
図7(A)は変速比が最小の状態(変速比:TD)を示すもので、このとき入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εは、入力軸12の軸線Lから偏心カム18の中心O1までの距離dと、偏心カム18の中心O1から偏心ディスク19の中心O2までの距離dとの和である2dに等しい最大値になる。入力軸12に対して変速軸15が相対回転すると、入力軸12と一体の偏心カム18に対して偏心ディスク19が相対回転することで、図7(B)および図7(C)に示すように、入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εは最大値の2dから次第に減少して変速比が増加する。入力軸12に対して変速軸15が更に相対回転すると、入力軸12と一体の偏心カム18に対して偏心ディスク19が更に相対回転することで、図7(D)に示すように、ついには入力軸12の軸線Lに偏心ディスク19の中心O2が重なり合って偏心量εがゼロになり、変速比が最大(無限大)の状態(変速比:UD)になって出力軸13に対する動力伝達が遮断される。
【0033】
次に、無段変速機Tの組立工程について説明する。
【0034】
先ず、中空の入力軸12の内部にニードルベアリング16…を介して変速軸15を嵌合させ、変速軸15に固設したピニオン17…を入力軸12の開口12a…に臨ませる。続いて、入力軸12の外周に偏心カム18を軸線L方向に嵌合し、入力軸12に対して所定の位相となるようにスプライン結合する。続いて、偏心凹部19aの内周に予めニードルベアリング20を装着した偏心ディスク19を、入力軸12の外周にに軸線L方向に嵌合して偏心カム18に組み付ける。
【0035】
このとき、偏心カム18の中心O1と偏心ディスク19の偏心凹部19aの中心O1とが一致していれば、偏心ディスク19の偏心凹部19aに組み付けたニードルベアリング20が偏心カム18の外周に正しく嵌合し、偏心ディスク19のリングギヤ19bの歯先が偏心カム18の三日月状のガイド部18aの外周に正しく嵌合し、偏心ディスク19のリングギヤ19bが変速軸15のピニオン17に正しく噛合し、偏心ディスク19の組み付けが可能になる。
【0036】
しかしながら、仮に偏心ディスク19が切欠き部19dを備えていないとすると、図9に示すように、偏心カム18の中心O1と偏心ディスク19の偏心凹部19aの中心O1とを一致させた状態で偏心ディスク19を入力軸12の軸線L方向に挿入しようとしても、ピニオン17の手前には中空の入力軸12の開口12aが存在しない部分が位置するため、偏心ディスク19のリングギヤ19bが入力軸12と干渉して組み付けができないという問題がある。
【0037】
一方、本実施の形態によれば、偏心ディスク19のリングギヤ19bの一部に切欠き部19dを形成したので、図8に示すように、偏心カム18の中心O1と偏心ディスク19の偏心凹部19aの中心O1とを一致させた状態で偏心ディスク19を入力軸12の軸線L方向に挿入するときに、切欠き部19dによって入力軸12との干渉を避けながら偏心ディスク19を軸線L方向に挿入することができる。偏心カム18に偏心ディスク19が嵌合した状態では、変速軸15のピニオン17はリングギヤ19bに噛合していないが、ピニオン17を所望の位相でリングギヤ19bに噛合させることで偏心ディスク19の組み付けが完了する。このようにして、全ての偏心カム18…および偏心ディスク19…を、入力軸12の軸線L方向に1個ずつ交互に組み付けることができる。
【0038】
以上のように、本実施の形態によれば、偏心ディスク19を2分割することなく組み付けることができるので、偏心ディスク19の部品点数および製造コストが削減されるだけでなく、2分割されたリングギヤ19bの精度が低下してスムーズな変速が阻害される虞もない。
【0039】
尚、無段変速機Tの変速比をUDとTDとの間で変更するとき、ピニオン15の噛み合うリングギヤ19bは中心角で180°の範囲であるため、リングギヤ19bの変速に使用しない部分に切欠き部19bを形成すれば変速操作に支障を来すことはなく、しかも切欠き部19dを設けたことで偏心ディスク19の軽量化を図ることができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0041】
例えば、本発明の駆動源は実施の形態のエンジンEに限定されず、電動モータ等の他の駆動源であっても良い。
【符号の説明】
【0042】
12 入力軸
12a 開口
13 出力軸
15 変速軸
17 ピニオン
18 偏心カム
19 偏心ディスク
19b リングギヤ
19d 切欠き部
33 コネクティングロッド
36 ワンウェイクラッチ
E エンジン(駆動源)
L 入力軸の軸線
ε 偏心ディスクの偏心量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源(E)に接続された中空の入力軸(12)と、
前記入力軸(12)の外周に偏心状態で固設された偏心カム(18)と、
前記偏心カム(18)の外周に偏心状態で相対回転可能に支持された偏心ディスク(19)と、
前記入力軸(12)の内部に同軸に嵌合する変速軸(15)と、
前記変速軸(15)に固設されて前記入力軸(12)に形成した開口(12a)を通して前記偏心ディスク(19)のリングギヤ(19b)に噛合するピニオン(17)と、
出力軸(13)の外周に設けられたワンウェイクラッチ(36)と、
前記偏心ディスク(19)および前記ワンウエイクラッチ(36)に両端を接続されて往復運動するコネクティングロッド(33)とを備え、
前記入力軸(12)の回転を前記コネクティングロッド(33)および前記ワンウエイクラッチ(36)を介して前記出力軸(13)に間欠的に伝達するとともに、前記変速軸(15)により前記ピニオン(17)および前記リングギヤ(19b)を介して前記入力軸(12)の軸線(L)に対する前記偏心ディスク(19)の偏心量(ε)を変化させて変速比を変更する無段変速機であって、
前記リングギヤ(19b)の一部に、前記入力軸(15)の肉厚よりも大きい深さの切欠き部(19d)を形成したことを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記切欠き部(19d)は、変速比の変更時に前記ピニオン(17)と噛合しない部分に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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