説明

無水フタル酸を製造するための3層もしくは4層からなる触媒系

o−キシレン及び/又はナフタレンの気相酸化を用いて無水フタル酸を製造するための触媒系、並びに触媒系の使用下での無水フタル酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、o−キシレン及び/又はナフタレンの気相酸化を用いて無水フタル酸を製造するための触媒系、並びに触媒系の使用下での無水フタル酸の製造方法に関する。
【0002】
無水フタル酸は、管束反応器中でのo−キシレン又はナフタレンの接触気相酸化により工業的に製造される。出発物質は、分子状酸素を含有しているガス、例えば空気、及び酸化すべきo−キシレン及び/又はナフタレンからなる混合物である。混合物は、少なくとも1つの触媒の積重ね物が存在する、反応器中に配置された多数の管(管束反応器)に導かれる。近年、異なる活性の触媒を触媒積重ね物中に層状に配置することに移行されてきており、その際に通例、より活性でない触媒はガス入口側に最初の最上の触媒層中に存在し、より活性な触媒はガス出口側に最後の最下の触媒層中に存在する。この手段を用いて、触媒系は反応器中でその活性が反応過程に相応して適合されることができる。
【0003】
活性増大の極めて異なる手法は技術水準に記載されている、例えば:
DE-A-22 38 067には、異なる活性の2つの触媒帯域の使用が記載されている。前記活性材料は、カリウムイオンの含分が異なる。
【0004】
DE-A-198 23 275には2層からなる触媒系が記載されている。活性構築は、担体上での活性材料の量を介して及び活性材料中のアルカリ金属化合物の形の添加されるドープの量を介して行われる(WO 03/70680も参照)。
【0005】
EP-A 1 063 222において、3層又は多層からなる触媒系の使用の際に、個々の帯域の活性は、活性材料のリン量、担体リング上での活性材料の量、活性材料のアルカリ金属ドープの量及び反応管中での個々の触媒層の充填高さにより変更される。
【0006】
WO 98/17608には、多様な触媒層の異なる空隙率を用いる活性構築が記載されている。空隙率は、反応管中の積重ね物の被覆された成形体間の自由体積により定義される。
【0007】
個々の触媒層中で、鋭錐石変態の二酸化チタンが無水フタル酸触媒の活性材料の主成分であり、かつ触媒活性で選択的な五酸化バナジウム成分を他の金属酸化物に加えて担持するのに利用される。
【0008】
DE-A 21 06 796には、無水フタル酸へのo−キシレンの酸化のための担持触媒の製造が記載されており、その際に二酸化チタンは15〜100m/g、好ましくは25〜50m/gのBET表面積を有する。7〜11m/gのBET表面積の鋭錐石及び>100m/gのBET表面積の二酸化チタン−水和物からなる混合物が特に適していることが開示され、その際に成分単独では適していない。
【0009】
EP-A 744 214には、1:3〜3:1の混合比の5〜11m/gのBET表面積を有する二酸化チタン及び100m/gを上回るBET表面積を有する二酸化チタン水和物の混合物が記載されている。
【0010】
7〜11m/gのBET表面積を有する二酸化チタンと>100m/gのBET表面積を有する二酸化チタン−水和物との混合物がさらにDE-A 196 33 757に記載されている。双方の成分はTiOのg数に基づいて、1:9〜9:1の比で含まれていてよい。
さらに二酸化チタンと二酸化チタン水和物との混合物が3:1の量比でDE-A 22 38 067に記載されている。
【0011】
二酸化チタンと二酸化チタン水和物とのこれらの混合物の問題は、寿命を過ぎてのこれらの混合物のBET表面積の減少である。
【0012】
EP-A 522 871には、二酸化チタンのBET表面積と触媒活性との間の関係が記載されている。この明細書によれば、触媒活性は10m/gを下回るBET表面積を有する二酸化チタンを使用する場合には僅かである。60m/gを上回るBET表面積を有する二酸化チタンを使用する場合に、触媒の寿命は減少されており、かつ無水フタル酸収率は激しく低下する。15〜40m/gのBET表面積が好ましい。
【0013】
多層からなる触媒系の場合に、一番目の触媒層の活性の減少は触媒の寿命に関して負の影響を及ぼす。増大する老化と共に、一番目の高選択性の層の範囲内での転化率は減少する。主反応帯域は、触媒寿命の経過で触媒床中へますます深く移行し、すなわちo−キシレンフィード又はナフタレンフィードはますます頻繁に、次のより選択的でない層中ではじめて変換される。その結果は、低下された無水フタル酸収率及び副生物又は未反応の出発物質の高められた濃度である。次の層中への主反応帯域の移行を回避するために、塩浴温度は連続的に上昇されることができる。しかしながら、触媒の寿命が増大すると共にこの措置も無水フタル酸収率の低下をまねく。
【0014】
さらに無水フタル酸収率が少なくなればなるほど、酸化すべき炭化水素を有する空気の装入量(Beladung)がより高くなる、それというのも、高い装入量は、より深く触媒床中への主反応帯域の移行を増強するからである。しかし経済的な製造のためには、80〜120g/Nmの高い装入量が望ましい。それに応じて高い装入量は、触媒のより迅速な損傷、ひいてはより短い運転時間をまねく。
【0015】
故に、高い装入量にもかかわらず高い収率及び良好な品質で、すなわち特に僅かなフタリド含分を有する無水フタル酸を与える、無水フタル酸の製造方法を提供するという課題が本発明の基礎となっていた。さらに触媒の運転時間が改善されるべきである。
【0016】
意外なことに、この課題は、反応管中で相互に重なり合って配置された少なくとも3つの触媒層を有し、前記層の触媒活性が層から層へ増大し、かつ前記層の活性材料が金属酸化物に加え鋭錐石変態の二酸化チタン70〜99質量%を含有し、その際に前記の二酸化チタンは、
(i)最上層中で5〜30m/gのBET表面積を有し、
(ii)一又は複数の中心層中で10〜40m/gのBET表面積を有し、かつ
(iii)最下層中で15〜50m/gのBET表面積を有し、
但し、最上層中の二酸化チタンのBET表面積は一又は複数の中心層中の二酸化チタンのBET表面積よりも小さく、かつ最下層中の二酸化チタンのBET表面積は一又は複数の中心層中の二酸化チタンのBET表面積よりも大きい、
触媒系を用いて解決されることができたことが目下見出された。
【0017】
さらに、無水フタル酸が本発明による触媒系の使用下に有利に製造されることができることが見出された。
【0018】
好ましくは触媒系は3〜5の層から、特に4層からなる。3層からなる触媒系の場合には、鋭錐石変態の使用される二酸化チタンのBET表面積には次のことが適用される:
BET帯域(i) < BET帯域(ii) < BET帯域(iii)
4層からなる触媒系の場合には:
BET帯域(i) < BET帯域(iia) ≦ BET帯域(iib) < BET帯域(iii)
及び5層からなる触媒系の場合には:
BET帯域(i) < BET帯域(iia) ≦ BET帯域(iib) ≦ BET帯域(iic) < BET帯域(iii)
【0019】
好ましくは二酸化チタンは、
(i)最上層中で7〜25m/gのBET表面積を有し、
(ii)一又は複数の中心層中で10〜35m/gのBET表面積を有し、かつ
(iii)最下層中で15〜45m/gのBET表面積を有する。
【0020】
4層からなる触媒系において、上方の中心層(iia)の二酸化チタンは例えば10〜35m/g、特に10〜30m/gのBET表面積を有し、かつ下方の中心層(iib)の二酸化チタンは15〜40m/g、特に15〜35m/gのBET表面積を有する。
【0021】
5層からなる触媒系において、上方の中心層(iia)の二酸化チタンは例えば10〜35m/g、特に10〜30m/gのBET表面積、中央の中心層(iib)の二酸化チタンは10〜40m/g、特に10〜35m/gのBET表面積、及び下方の中心層(iic)の二酸化チタンは15〜40m/g、特に15〜38m/gのBET表面積を有する。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つの触媒層において使用される二酸化チタンは異なるBET表面積の二酸化チタンの混合物からなる。二酸化チタンタイプからなるこの混合物は例えば、有利には5〜15m/g、特に5〜10m/gのBET表面積を有する低表面積の二酸化チタン、及び有利には10〜70m/g、特に15〜50m/gのBET表面積を有するより高表面積の二酸化チタンを含んでいる。特に、使用される二酸化チタンは、挙げられた2つの二酸化チタンタイプからなる。
【0023】
技術水準に記載された酸化チタン水和物及びそれらと低表面積のTiOとの混合物に比較して、本発明により使用される混合物は、BET表面積が本発明による触媒の寿命に亘って変わらないという利点を有する。それゆえ活性の高い安定性、すなわち触媒のより長い寿命が保証される。
【0024】
使用される二酸化チタンは有利には、5〜15m/gのBET表面積を有する二酸化チタン及び15〜50m/gのBET表面積を有する二酸化チタンの混合物からなり、
(i)最上層中で1:1.5〜1:3
(iia)上方の中心層中で1:2〜1:4
(iib)下方の中心層中で1:2.5〜1:4及び
(iii)最下層中で1:3〜1:5
の比である。
【0025】
最上の触媒層(i)の積重ね物長さは、有利には、80〜160cm、上方の中心の触媒層(iia)の積重ね物長さは20〜60cm、下方の中心の触媒層(iib)の積重ね物長さは30〜100cm及び最下の触媒層(iii)の積重ね物長さは40〜90cmである。
【0026】
触媒として酸化物担持触媒が適している。o−キシレン又はナフタレン又はそれらの混合物の気相酸化による無水フタル酸の製造のためには、通例、ケイ酸塩、炭化ケイ素、磁器、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化スズ、ルチル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(ステアタイト)、ケイ酸ジルコニウム又はケイ酸セリウム又はそれらの混合物からなる、球状の、環形の又は皿状の担体が使用される。特に、触媒活性材料がシェルの形で担体上に施与されている、いわゆるシェル触媒(Schalenkatalysatoren)が有用であることが判明している。触媒活性成分として、好ましくは五酸化バナジウムが利用される。さらに、助触媒として触媒の活性及び選択率に、例えばその活性を低下させるか又は高めることによって、影響を及ぼす多数の他の酸化物化合物が僅かな量で触媒活性材料中に含まれていてよい。そのような助触媒は、例えばアルカリ金属酸化物、酸化タリウム(I)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化スズ、酸化銀、酸化銅、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ヒ素、酸化アンチモン、酸化セリウム及び五酸化リンである。アルカリ金属酸化物は、例えば活性を低下させ、かつ選択率を高める助触媒として作用する。さらに、触媒活性材料に有機結合剤、好ましくはコポリマーが、有利には酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/アクリレート、スチレン/アクリレート、酢酸ビニル/マレエート、酢酸ビニル/エチレン並びにヒドロキシエチルセルロースの水性分散液の形で、添加されることができ、その際に活性材料成分の溶液の固体含量に対して、3〜20質量%の結合剤量が使用された(EP-A 744 214)。好ましくは、DE-A 198 24 532に記載されたような有機結合剤が使用される。触媒活性材料が有機結合剤なしで担体上に施与される場合には、150℃を上回る被覆温度が有利である。前記の結合剤の添加の場合に、有用な被覆温度は、使用される結合剤に応じて50〜450℃である(DE-A 21 06 796)。施与された結合剤は、触媒の充填及び反応器の始動後に短い時間で焼け尽きる。そのうえ結合剤添加は、活性材料が担体上に良好に付着するので、触媒の輸送及び充填が容易になるという利点を有する。
【0027】
触媒に供給される反応ガス(出発ガス混合物)は一般的に、分子状酸素を含有しており、酸素以外にさらに適している反応減速材、例えば窒素及び/又は希釈剤、例えば蒸気及び/又は二酸化炭素を含有していてよいガスを、酸化すべき、芳香族炭化水素と混合することにより製造される。分子状酸素を含有するガスは、一般的に酸素1〜100mol%、好ましくは2〜50mol%及び特に好ましくは10〜30mol%、水蒸気0〜30mol%、好ましくは0〜10mol%並びに二酸化炭素0〜50mol%、好ましくは0〜1mol%、残余の窒素を含有していてよい。反応ガスを製造するために、分子状酸素を含有するガスに一般的にガス1Nmあたり酸化すべき芳香族炭化水素30g〜150g、特に1Nmあたり60〜120gが装入される。
【0028】
多層からなる触媒系において、一般的により活性ではない触媒は、反応ガスがまず最初にこの触媒と、それに引き続いてはじめて二番目の層中のより活性な触媒と接触されるように、固定床中に配置される。引き続いて反応ガスはさらにより活性な触媒層と接触される。異なる活性の触媒は、同じ温度にか又は異なる温度にサーモスタット調節されることができる。
【0029】
こうして準備された触媒積重ね物に、反応ガスは一般的に300〜450℃、好ましくは320〜420℃及び特に好ましくは340〜400℃の温度で導かれる。有利には一般的に0.1〜2.5bar、好ましくは0.3〜1.5barのゲージ圧(Ueberdruck)が使用される。空間速度は一般的に750〜5000h−1である。
【0030】
最上層のホットスポット温度は、好ましくは400〜470℃であり、特に最高温度は450℃を下回る。多層からなる触媒系の一又は複数の中心層中でホットスポット温度は有利には420℃未満、特に410℃未満である。
【0031】
3層からなる触媒系の好ましい実施態様において、触媒は例えば次の組成を有する:
・ 一番目の、最上層(層(i))について:全触媒に対して活性材料 7〜10質量%、その際にこの活性材料は:
五酸化バナジウム 6〜11質量%
三酸化アンチモン 0〜3質量%
アルカリ、特に酸化セシウム 0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)
を含有し、かつ残余として5〜30m/gのBET表面積を有する鋭錐石変態の二酸化チタン100質量%まで
・ 二番目の、中心層(層(ii))について:
全触媒に対して活性材料 7〜12質量%、その際にこの活性材料は:
五酸化バナジウム 5〜13質量%
三酸化アンチモン 0〜3質量%
アルカリ、特に酸化セシウム 0〜0.4質量%(アルカリ金属として計算)
五酸化リン 0〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有し、かつ残余として10〜40m/gのBET表面積を有する鋭錐石変態の二酸化チタン100質量%まで
・ 三番目の、最下層(層(iii))について:
全触媒に対して活性材料 8〜12質量%、その際にこの活性材料は:
五酸化バナジウム 5〜30質量%
三酸化アンチモン 0〜3質量%
アルカリ、特に酸化セシウム 0〜0.3質量%(アルカリ金属として計算)
五酸化リン 0.05〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有し、かつ残余として、特に15〜50m/gのBET表面積を有する鋭錐石変態の、二酸化チタン100質量%まで。
【0032】
4層からなる触媒系の好ましい実施態様において、触媒は例えば次の組成を有する:
・ 一番目の層(層(i))について:全触媒に対して活性材料 7〜10質量%、その際にこの活性材料は:
五酸化バナジウム 6〜11質量%
三酸化アンチモン 0〜3質量%
アルカリ、特に酸化セシウム 0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)
を含有し、かつ残余として5〜30m/gのBET表面積を有する鋭錐石変態の二酸化チタン100質量%まで
・ 二番目の層(層(iia))について:
全触媒に対して活性材料 7〜12質量%、その際にこの活性材料は:
五酸化バナジウム 4〜15質量%
三酸化アンチモン 0〜3質量%
アルカリ、特に酸化セシウム 0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)
五酸化リン 0〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有し、かつ残余として10〜35m/gのBET表面積を有する鋭錐石変態の二酸化チタン100質量%まで
・ 三番目の層(層(iib))について:
全触媒に対して活性材料 7〜12質量%、その際にこの活性材料は:
五酸化バナジウム 5〜15質量%
三酸化アンチモン 0〜3質量%
アルカリ、特に酸化セシウム 0〜0.4質量%(アルカリ金属として計算)
五酸化リン 0〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有し、かつ残余として15〜40m/gのBET表面積を有するの鋭錐石変態の二酸化チタン100質量%まで
・ 四番目の層(層(iii))について:
全触媒に対して活性材料 8〜12質量%、その際にこの活性材料は:
五酸化バナジウム 5〜30質量%
三酸化アンチモン 0〜3質量%
五酸化リン 0.05〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有し、かつ残余として15〜50m/gのBET表面積を有する鋭錐石変態の二酸化チタン100質量%まで。
【0033】
所望の場合には、無水フタル酸製造のためにさらに、例えばDE-A 198 07 018又はDE-A 20 05 969に記載されているような、後接続されたフィニッシング−反応器が備えられていてよい。その際に触媒として、最後の層の触媒に比較して好ましくはさらにより活性な触媒が使用される。
【0034】
本発明による触媒系により、運転時間は、触媒積重ね物にわたってより均質な反応熱分布により高められることができた。それゆえ、最高ホットスポット温度は低下し、かつ無水フタル酸−収率は僅かな副生物濃度で上昇されることができる。
【0035】
無水フタル酸は、本発明によれば、o−キシレン及び/又はナフタレンの高い装入量でも、例えば80〜120g/Nmで、及び高い空間速度で高い収率及び副生物、特にフタリドの僅かな濃度で、製造されることができる。本発明による方法の条件下で、フタリド−濃度は、無水フタル酸に対して0.05質量%以下である。
【実施例】
【0036】
触媒1: 4層 上層(i)
鋭錐石(BET表面積9m/g)29.3g、鋭錐石(BET表面積20m/g)69.8g、V 7.8g、Sb 1.9g、CsCO 0.49gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、外径(AD)×長さ(L)×内径(ID))の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
このようにして施与された触媒活性材料は400℃で4hのか焼後にV 7.1質量%、Sb 1.8質量%、Cs 0.36質量%を有していた。
TiO混合物のBET表面積は16.7m/gであった。
【0037】
上方の中心層(iia)
鋭錐石(BET表面積9m/g)24.6g、鋭錐石(BET表面積27m/g)74.5g、V 7.8g、Sb 2.6g、CsCO 0.35gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
このようにして施与された触媒活性材料は、400℃で4hのか焼後にV 7.1質量%、Sb 2.4質量%、Cs 0.26質量%を含有していた。
TiO混合物のBET表面積は22.5m/gであった。
【0038】
下方の中心層(iib)
鋭錐石(BET表面積9m/g)24.8g、鋭錐石(BET表面積27m/g)74.5g、V 7.8g、Sb 2.6g、CsCO 0.13gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液50g(50質量%)を添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
このようにして施与された触媒活性材料は、400℃で4hのか焼後にV 7.1質量%、Sb 2.4質量%、Cs 0.10質量%を含有していた。
TiO混合物のBET表面積は22.5m/gであった。
【0039】
下層(iii)
鋭錐石(BET表面積9m/g)17.2g、鋭錐石(BET表面積27m/g)69.1g、V 21.9g、NHPO 1.5gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)55gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8.0%であった。
このようにして施与された触媒活性材料は400℃で4hのか焼後にV 20.0質量%、P 0.38質量%を含有していた。
TiO混合物のBET表面積は23.4m/gであった。
【0040】
触媒2: 4層
上層(i)
鋭錐石(BET表面積9m/g)29.3g、鋭錐石(BET表面積20m/g)69.8g、V 7.8g、Sb 1.9g、CsCO 0.49gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
このようにして施与した触媒活性材料は400℃で4hのか焼後にV 7.1質量%、Sb 1.8質量%、Cs 0.36質量%を含有していた。
TiO混合物のBET表面積は16.7m/gであった。
【0041】
上方の中心層(iia)
鋭錐石(BET表面積9m/g)24.6g、鋭錐石(BET表面積20m/g)74.5g、V 7.8g、Sb 2.6g、CsCO 0.35gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
このようにして施与された触媒活性材料は400℃で4hのか焼後にV 7.1質量%、Sb 2.4質量%、Cs 0.26質量%を含有していた。
TiO混合物のBET表面積は17.3m/gであった。
【0042】
下方の中心層(iib)
鋭錐石(BET表面積9m/g)24.8g、鋭錐石(BET表面積20m/g)74.5g、V 7.8g、Sb 2.6g、CsCO 0.13gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
このようにして施与された触媒活性材料は400℃で4hのか焼後にV 7.1質量%、Sb 2.4質量%、Cs 0.10質量%を含有していた。
TiO混合物のBET表面積は17.3m/gであった。
【0043】
下層(iii)
鋭錐石(BET表面積9m/g)17.2g、鋭錐石(BET表面積27m/g)69.1g、V 21.9g、NHPO 1.5gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)55gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
このようにして施与された触媒活性材料は、400℃で4hのか焼後にV 20.0質量%、P 0.38質量%を含有していた。
TiO混合物のBET表面積は23.4m/gであった。
【0044】
触媒3: 4層(比較例)
上層(i)
鋭錐石(BET表面積20m/g)99.5g、V 7.8g、Sb 1.9g、CsCO 0.49gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
TiOのBET表面積は20.1m/gであった。
【0045】
上方の中心層(iia)
鋭錐石(BET表面積20m/g)99.3g、V 7.8g、Sb 2.6g、CsCO 0.35gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液50g(50質量%)を添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
TiOのBET表面積は20.0m/gであった。
【0046】
下方の中心層(iib)
鋭錐石(BET表面積20m/g)99.0g、V 7.8g、Sb 2.6g、CsCO 0.13gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液50g(50質量%)を添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
TiOのBET表面積は20.3m/gであった。
【0047】
下層(iii)
鋭錐石(BET表面積20m/g)86.5g、V 21.9g、NHPO 1.5gを脱イオン水550ml中に懸濁させ、15時間撹拌した。引き続いてこの懸濁液に酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる水性分散液(50質量%)55gを添加した。引き続いてリング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200g上への懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性材料シェルの質量は完成した触媒の全質量の8%であった。
TiOのBET表面積は20.2m/gであった。
【0048】
触媒試験:
3.85mの長さ及び25mmの内径を有し、塩浴冷却された反応器中で試験を行った。温度プロフィールを記録するために、反応器は反応器全長に亘って動かせる熱電対を備えていた。前記熱電対は2mmの外径を有するシース中に保持されていた。管に、0〜100g/Nmのo−キシレン(純度少なくとも98.5%)を有する空気を毎時4Nm導いた。その際に以下にまとめられた結果が得られた(“PSA−収率”は100%のo−キシレンに対して、得られたPSA[質量%]を意味する)。
【0049】
【表1】

【0050】
次の省略形を使用した:
HST−OS 上層中のホットスポット温度
SBT 塩浴温度
PHD フタリド
PSA 無水フタル酸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応管中に相互に重なり合って配置された少なくとも3つの触媒層を有し、触媒活性が層から層へ増大し、かつ活性材料が鋭錐石変態の二酸化チタン70〜99質量%を有する、無水フタル酸を製造するための触媒系において、前記二酸化チタンが
(i)最上層中で5〜30m/gのBET表面積を有し、
(ii)一又は複数の中心層中で10〜40m/gのBET表面積を有し、かつ
(iii)最下層中で15〜50m/gのBET表面積を有し、
但し、最上層中の二酸化チタンのBET表面積が、一又は複数の中心層中の二酸化チタンのBET表面積よりも小さく、かつ最下層中の二酸化チタンのBET表面積が、一又は複数の中心層中の二酸化チタンのBET表面積よりも大きいことを特徴とする、無水フタル酸を製造するための触媒系。
【請求項2】
2つの中心層(ii)が存在し、上方の中心層中の二酸化チタンが10〜35m/gのBET表面積及び下方の中心層中の二酸化チタンが15〜40m/gのBET表面積を有し、但し、上方の中心層中の二酸化チタンのBET表面積が下方の中心層のBET表面積よりも小さいか又は同じである、請求項1記載の触媒系。
【請求項3】
少なくとも1つの触媒層中の二酸化チタンが、異なるBET表面積の二酸化チタンの混合物からなる、請求項1又は2記載の触媒系。
【請求項4】
混合物が、5〜15m/gのBET表面積を有する二酸化チタン及び15〜50m/gのBET表面積を有する二酸化チタンからなり、
(i)最上層中で1:1.5〜1:3、
(iia)上方の中心層中で1:2〜1:4、
(iib)下方の中心層中で1:2.5〜1:4及び
(iii)最下層中で1:3〜1:5
の比である、請求項3記載の触媒系。
【請求項5】
(i)最上の触媒層の積重ね物長さが80〜160cm、
(iia)上方の中心の触媒層の積重ね物長さが20〜60cm、
(iib)下方の中心の触媒層の積重ね物長さが30〜100cm及び
(iii)最下の触媒層の積重ね物長さが40〜90cm
である、請求項1から4までのいずれか1項記載の触媒系。
【請求項6】
相互に重なり合って配置された3つの層を有し、その場合に
(i)担持材料上の最も活性ではない触媒が、V 6〜11質量%、Sb 0〜3質量%、アルカリ0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)及び残余として5〜30m/gのBET表面積を有する鋭錐石型のTiOを含有する活性材料7〜10質量%を全触媒に対して有し、
(ii)担持材料上の次により活性な触媒が、V 5〜13質量%、Sb 0〜3質量%、P 0〜0.4質量%、アルカリ0〜0.4質量%(アルカリ金属として計算)及び残余として10〜40m/gのBET表面積を有する鋭錐石型のTiOを含有する活性材料7〜12質量%を全触媒に対して有し、
(iii)担持材料上の最も活性な触媒が、V 5〜30質量%、Sb 0〜3質量%、P 0.05〜0.4質量%、アルカリ0〜0.3質量%(アルカリ金属として計算)及び残余として15〜50m/gのBET表面積を有する鋭錐石型のTiOを含有する活性材料8〜12質量%を全触媒に対して有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の触媒系。
【請求項7】
相互に重なり合って配置された4つの層を有し、その場合に
(i)担持材料上の最も活性ではない触媒が、V 6〜11質量%、Sb 0〜3質量%、アルカリ0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)及び残余として5〜30m/gのBET表面積を有する鋭錐石型のTiOを含有する活性材料7〜10質量%を全触媒に対して有し、
(iia)担持材料上の次により活性な触媒が、V 4〜15質量%、Sb 0〜3質量%、アルカリ0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)、P 0〜0.4質量%及び残余として10〜35m/gのBET表面積を有する鋭錐石型のTiOを含有する活性材料7〜12質量%を全触媒に対して有し、
(iib)担持材料上の次により活性な触媒が、V 5〜15質量%、Sb 0〜3質量%、アルカリ0〜0.4質量%(アルカリ金属として計算)、P 0〜0.4質量%及び残余として15〜40m/gのBET表面積を有する鋭錐石型のTiOを含有する活性材料7〜12質量%を全触媒に対して有し、
(iii)担持材料上の最も活性な触媒が、V 5〜30質量%、Sb 0〜3質量%、P 0.05〜0.4質量%及び残余として15〜50m/gのBET表面積を有する鋭錐石型のTiOを含有する活性材料8〜12質量%を全触媒に対して有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の触媒系。
【請求項8】
管束反応器中でのキシレン、ナフタレン又はそれらの混合物の気相酸化による無水フタル酸の製造方法において、
出発物質を請求項1から7までのいずれか1項記載の触媒系に導くことを特徴とする、管束反応器中でのキシレン、ナフタレン又はそれらの混合物の気相酸化による無水フタル酸の製造方法。

【公表番号】特表2007−533426(P2007−533426A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529840(P2006−529840)
【出願日】平成16年5月15日(2004.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005247
【国際公開番号】WO2004/103561
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】