説明

無溶剤型硬化性シリコ−ン剥離剤組成物

【課題】 薄膜塗工性、硬化性に優れ、かつ優れた剥離性能を有し、エマルション型粘着剤のハジキが少ない剥離性シリコーン硬化皮膜を与える付加反応型無溶剤タイプのシリコーン組成物を提供する。
【解決手段】 下記(A)〜(E)成分を含む、25℃における粘度が50〜1,000mPa・sの範囲内であり、有機溶剤を含有しない硬化性シリコーン剥離剤組成物。
(A)分子鎖末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、(B)分子鎖末端にケイ素原子に結合した水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、(C)1分子中にけい素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(D)一般式RSiO1/2(M単位)、及びSiO4/2(Q単位)から成るトルエンに可溶な樹脂状共重合体、(E)白金族金属系触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜塗工性、硬化性及び剥離性に優れている上、エマルション型粘着剤を用いた粘着加工紙製造工程において、粘着剤のハジキによる塗工欠陥のない剥離性シリコーン硬化皮膜を与える付加反応型無溶剤タイプのシリコーン剥離剤組成物及びこの組成物の硬化皮膜が形成された剥離紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙やプラスチックフィルムなどの基材と粘着性物質との間の接着又は固着を防止することを目的として、基材面にシリコーン組成物の硬化皮膜を形成させて剥離性を付与することが行われている。
【0003】
この場合、基材表面にシリコーン皮膜を形成する方法としては、白金系化合物を触媒として、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させて剥離性皮膜を形成する方法、(例えば、特開昭47−32072号公報参照)が広く用いられている。
【0004】
シリコーン剥離剤は、近年では安全・衛生等の面から溶剤タイプから無溶剤タイプへの転換が進んでいる。また、生産性の面より高速での塗工が求められており、レベリング性,ミスト発生防止の観点より、より低粘度の無溶剤タイプが要求されている。
【0005】
粘着紙の製造に用いられる粘着剤も、安全・衛生等の面からエマルション型の比率が大きくなっている。また生産性の面より高速での塗工が求められており、同様な理由により、より低粘度のエマルション型粘着剤が要求されている。
【0006】
しかしながら、シリコーン塗工紙のシリコーン塗布面側に粘着剤を塗布し、表面基材を貼り合せる所謂転写法なる粘着紙製造時において、シリコーン塗工紙に低粘度のエマルション型粘着剤を塗布する場合、糊ハジキが生じてピンホールが発生しやすくなり、粘着剤の塗工欠陥が問題となることが多くなる。
【0007】
粘着剤および塗工装置の改善に加え、シリコーン剥離剤の改善も要求されているが、これまではこれに対応できる剥離性能および塗工性能の優れた付加反応型無溶剤タイプのシリコーン剥離剤組成物は得られていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開昭47−32072号公報
【特許文献2】特公昭52−47485号公報
【特許文献3】特開平02−145649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、薄膜塗工性、硬化性に優れ、かつ優れた剥離性能を有し、エマルション型粘着剤のハジキが少ない剥離性シリコーン硬化皮膜を与える付加反応型無溶剤タイプのシリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記目的を達成するため主成分となるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応するオルガノハイドロジェンポリシロキサンさらにMQ型樹脂状共重合体について鋭意検討を行った結果、分子鎖両末端にけい素原子に結合したアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、脂肪族不飽和結合を含有しないMQシリコーンレジン及び分子鎖両末端にけい素原子に結合した水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと1分子中にけい素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用することにより、硬化性,基材との密着性,滑り性,剥離性能を低下させることなくエマルション型粘着剤のハジキ防止に効果が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
(A)下記一般式(1)
【0012】
【化1】


(ここで、Rはアルケニル基、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基であり、45≦n≦350)で示され、25℃における粘度が50〜1,500mPa・sである分子鎖末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを100質量、
(B)下記一般式(2)
【0013】
【化2】


(ここで、Hは水素原子、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基であり、2≦m≦20)で示され、25℃における粘度が2〜30mPa・sである分子鎖末端にケイ素原子に結合した水素原子を有し、(A)成分のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.3〜0.8の範囲であるジオルガノポリシロキサンを0.5〜15.0質量部、
(C)1分子中にけい素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有し、(A)成分のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.4〜3.0の範囲であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.3〜10.0質量部、
(D)一般式RSiO1/2(M単位)、及びSiO4/2(Q単位)から成る(ここで、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基であり、M単位とQ単位との比率が0.6/1 〜 1.2/1の範囲である)トルエンに可溶な樹脂状共重合体を0.1〜20.0質量部、
(E)白金族金属系触媒を、(A)成分100重量部に対して白金族金属量として1〜1,000ppm、とを必須成分とすることを特徴とし、25℃における粘度が50〜1,000mPa・sの範囲内である実質的に有機溶剤を含有しない無溶剤型硬化性シリコ−ン剥離剤組成物及びこの組成物の硬化皮膜が形成されてなる剥離紙を提供する。
【0014】
本発明の無溶剤型シリコーン組成物は薄膜塗工性、硬化性密着性に優れるものであり、(B)、(C)成分のSiH基は何れも(A)成分のアルケニル基と反応するものであるが、反応性の高い末端のみSiH基を有する(B)成分と(A)成分が先ず反応し鎖長延長し、残余のアルケニル基と(C)成分のSiH基が反応するため、硬化皮膜の硬度が低下できエマルション型粘着剤ハジキ防止に効果があることに加え、さらに(D)成分であるMQ樹脂がシリコーン硬化皮膜中に少量分散することにより、剥離性、滑り性を低下させずにエマルション型粘着剤ハジキを更に防止できるものであり、粘着紙製造時において、特に低粘度タイプのエマルション型粘着剤を用いた高速塗工に対応できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の無溶剤型シリコーン組成物は薄膜塗工性、硬化性密着性に優れるものであり、剥離性、滑り性を低下させずにエマルション型粘着剤のハジキを更に防止できるものであり、粘着紙製造時において、特に低粘度タイプのエマルション型粘着剤を用いた高速塗工に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を更に詳しく説明すると、本発明における(A)成分のオルガノポリシロキサンは硬化性及び硬化後の皮膜の硬度を抑えエマルション型粘着剤のハジキを抑えるため分子鎖末端にのみけい素原子に結合したアルケニル基Rを有する下記一般式(1)で示されるものである。
【0017】
【化3】


ここで、Rのアルケニル基としてはビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基等が例示される。
【0018】
Rとしては、炭素原子数1〜12、好ましくは炭素原子数1〜6の脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられるが、硬化性,剥離性の向上の点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0019】
更に、25℃における粘度は50mPa・sより低いと基材への染み込みが多くなるという不具が生じ、1,500mPa・sより高い場合は塗工性が低下し高速塗工におけるミスト発生の問題剥離が生じるため、25℃における粘度が50〜1,500mPa・s、好ましくは70〜1,300mPa・sである。そのためには、重合度nは45から350の範囲とされ、好ましくは、50から300である。
【0020】
本発明における(B)成分のジオルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端にけい素原子に結合した水素原子をそれぞれ1個有する下記一般式(2)で示されるものである。このSiH基と(A)成分中のアルケニル基とが付加反応して鎖長延長の効果を出すものである。
【0021】
【化4】


ここで、Rで示される基としては、上記と同様の炭素原子数1〜12、好ましくは炭素原子数1〜6の脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価の炭化水素基であり、具体的にはメチル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基、フェニル基,トリル基等のアリール基などが挙げられるが、硬化性、剥離性向上の点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0022】
またmが2より小さいと沸点が低くなり加熱硬化時に揮発しまうという不利が発生する。またmが20より大きい場合、基材との密着が低下するため、重合度mは2から20の範囲とされ、好ましくは、4から18である。従って、25℃における粘度は2〜30mPa・s、好ましくは3〜25mPa・sの範囲とされる。
【0023】
また、(B)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0.3〜10.0質量部、好ましくは0.4〜9.5質量部とされるが、アルケニル基量とSiH基量によって調整されるものでありモル比で0.3〜0.8、好ましくは0.35〜0.75の範囲とされる。モル比で0.3より小さいと目標とする糊ハジキ防止の効果が得られなく、モル比で0.8より大きいと基材との密着が低下する。
【0024】
本発明における(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分中にけい素原子に結合した水素原子を少なくとも3個以上有し、このSiH基と(A)成分中のビニル基とが付加反応して硬化皮膜が形成されるものであり、下記一般式
SiO(4−b−C)/2
(ここで、Rは上記したと同様の一価炭化水素基であり、b、cはそれぞれb+c≦3
を満たす正数である。)で示されるものである。
【0025】
この種のポリシロキサンとしては、RHSiO2/2単位、HSiO3/2単位、RSiO2/2単位、RHSiO1/2単位、RSiO3/2単位、RSiO1/2単位から成るポリマ−またはコポリマ−が例示されるが、これは直鎖状、環状の何れであってもよく、25℃における粘度が5〜500mPa・sのものとすればよい。
【0026】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子鎖側差のケイ素原子の全てに一つずつ水素原子を有する(RHSiO2/2)単位及び/または(RHSiO2/2)単位と分子鎖側差のケイ素原子に水素原子を有さない(RSiO2/2)単位とからなるが、(RSiO2/2)単位を多く含むと低温硬化性は改善されるものの基材との密着性が著しく低下するため、一分子中の(RSiO2/2)単位の比率は全体の50%以下であることが好ましい。
【0027】
ここで、上記Rとしては上記したと同様の炭素原子数1〜12、好ましくは炭素原子数1〜6の脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基あげられ、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基,トリル基等のアリール基などが挙げられるが、付加反応速度の向上の点からメチル基であることが好ましい。
【0028】
かかる(C)成分としては、具体的には下記一般式(3)に示すような鎖状のもの、(4)に示すような環状のものがあげられる。
【0029】
【化5】


(ここで、Hは水素原子、Rは上記したと同様の一価炭化水素基、pは 3≦p≦200の整数、qは0≦q≦100の整数で、3≦p+q≦200、xは0または1である。)
【0030】
【化6】


(ここで、Hは水素原子、Rは上記したと同様の一価炭化水素基、rは3≦r≦20の整数、sは0≦s≦10の整数で、3≦r+s≦20である。)
【0031】
また、(C)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0.3〜10.0質量部、好ましくは0.5〜9.5質量部とされるが、アルケニル基量とSiH基量によって調整されるものでありモル比で0.4〜3.0、好ましくは0.5〜2.7の範囲とされる。モル比で0.4より小さいと硬化性が低下し3.0より大きいと剥離性能が低下するためである。
【0032】
(B)、(C)成分のSiH基は何れも(A)成分のアルケニル基と反応するものであるが、反応性の高い末端のみSiH基を有する(B)成分と(A)成分が先ず反応し鎖長延長し、残余のアルケニル基と(C)成分のSiH基が反応するので、硬化皮膜の硬度が低下してのハジキ防止に効果がでる。
【0033】
(D)成分はRSiO1/2(M単位)、及びSiO4/2(Q単位)から成るトルエンに可溶な樹脂状共重合体であり、硬化皮膜中に分散することにより、エマルション型粘着剤の濡れ性が向上してハジキ防止作用を及ぼす。
【0034】
ここで、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基または水酸基であり、Rで示される有機基としては、メチル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基、フェニル基,トリル基等のアリール基などが挙げられるが、相溶性の点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。Rが脂肪族不飽和結合を含有する場合、少量添加ではハジキ防止には効果が少なく、多量の配合ではハジキ防止には効果は出るが剥離性、滑り性が極端に低下するため好ましくない。
【0035】
また、(M単位)と(Q単位)の比は0.6/1 〜 1.2/1、好ましくは0.62/1 〜 1.15/1の範囲であり、0.6より小さいと製造が困難となり、1.2を超えるとハジキ防止には効果が少なくなるためで、より好ましくは0.65/1 〜 1.1/1の範囲とされる。
【0036】
さらに、(D)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0.1〜20.0質量部、好ましくは0.2〜15.0質量部とされる。0.1より少ないとエマルション型粘着剤のハジキ防止には効果が少なく、20.0を超えるとハジキ防止には効果はでるものの剥離性、滑り性が極端に低下するため好ましない。
【0037】
(E)成分の白金族金属系触媒は、(A)成分と(B),(C)成分との付加反応を促進するための触媒であり、付加反応触媒として公知のものが使用できる。このような白金族金属系触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が好ましい。このような白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液やアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体などが挙げられる。
【0038】
これら白金族金属系触媒の添加量は触媒量であるが、良好な硬化皮膜を得ると共に経済的な見地から、(A)成分100重量部に対して白金族金属量として1〜1,000ppm、好ましくは5〜500ppmの範囲とすることが好ましい。
【0039】
本発明の組成物には、上記(A)〜(E)成分の所定量を配合することによって得られるが、以上の各成分の外に、他の任意成分、例えば白金族金属系触媒の触媒活性を抑制する目的で、各種有機窒素化合物、有機りん化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などの活性抑制剤を、また、剥離力、硬化皮膜の摩擦抵抗を制御する目的で末端にけい素原子に結合した水酸基を有するジオルガノポリシロキサン、けい素原子に結合したアルケニル基、水酸基、水素原子を有さないジオルガノポリシロキサン、けい素原子に結合したアルケニル基を有する高分子のジオルガノポリシロキサン等を、必要に応じて添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0040】
本発明のシリコーン組成物の調製に際しては、(A),(D)成分を均一混合後、常法に従って減圧、加熱下で(D)成分中のトルエンを留去し、(B),(C)成分及び任意成分を予め均一に混合した後、(E)成分を添加することが好ましく、各成分は単一で使用しても2種以上を併用してもよい。ただし、組成物全体としての25℃における粘度は50〜1,000mPa・s、好ましくは80〜800mPa・sの範囲内とされ、1,000mPa・sを越えると塗工時における塗工ロール間から発生するミストのため高速塗工出来ず生産性が低下するため実用上の使用困難となる。
【0041】
このようにして調製されたシリコーン組成物は、例えば紙、プラスチックフィルムなどの基材に塗布した後、常法によって加熱硬化される。本発明の組成物を塗布し、硬化皮膜を形成する基材としては、グラシン紙,クラフト紙,クレーコート紙などの紙基材,ポリエチレンラミネート上質紙,ポリエチレンラミネートクラフト紙などのラミネート紙,ポリエステル,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリ塩化ビニル,ポリテトラフルオロエチレン,ポリイミドなどの合成樹脂から得られるフィルム、シートなど及びアルミニウムなどの金属箔が挙げられるが、皮膜との密着性に優れるという観点から、紙基材,ラミネート紙の使用が特に好適である。
【0042】
上記基材に本発明の組成物を塗布するには、グラビア・オフセット3本ロール方式または5本、6本などの多段ロール方式などの公知の方法を用いることができる。塗布量としては0.05〜5.0g/m、特に、0.1〜3.0g/mの範囲内が好適であり、基材の全面または剥離性の必要な箇所に部分的に塗布する。基材に塗布した後、70〜220℃で、1.5〜60秒の加熱によって硬化させて、本発明の剥離紙を得る。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。なお、各例中の部はいずれも質量部であり、粘度は25℃における値である。
また、シリコーン組成物の硬化性,剥離力,残留接着率,シリコーン移行性は下記の方法により測定した。
【0044】
(硬化性)
シリコーン組成物を薄膜状フィルム又はシート状の基材表面に所定量塗布し、所定温度の熱風式乾燥機中で加熱して、形成される硬化皮膜を指で数回こすり、くもり及び脱落のない状態になるまでの時間(秒数)を測定し、これを以って硬化性とする。
【0045】
(糊ハジキ)
シリコーン組成物を薄膜状フィルム又はシート状の基材表面に所定量塗布し、所定温度の熱風式乾燥機中で加熱して硬化皮膜を成形した後、25℃で1日セパレ−タ−エ−ジング後、この硬化皮膜表面にアクリル系エマルション型粘着剤・オリバインBPW−311OH(東洋インキ製造株式会社製)を水で希釈し、Wetで130μm塗布して100℃で3分間加熱処理した後、糊ハジキ具合を(1)基材両側からのハジキの距離の合計(mm)及び(2)ピンホールの数で評価した。
【0046】
(剥離力)
糊ハジキ評価後、坪量64g/mの上質紙を貼り合わせ、25℃で20時間エイジングさせた後、試料を50mm幅に切断し、株式会社島津製作所製DSC−500型引張り試験機を用いて180度の角度で剥離速度0.3m/分で貼り合わせ紙を引張り、剥離するのに要する力(N)を測定した。
【0047】
(滑り性)
20mm×20mm×2mmのネオプレンブタジエンラバー(NBR)を200gの分銅の下面に貼り付けた。これを基材表面に形成されたシリコーン組成物の硬化皮膜の表面に載せて水平方向に0.3m/分の速度で同様に引張り試験機を用いて安定状態になったときの力F(N)を測定する。
動摩擦係数:F/(200×0.0098) の値をもって滑り性の評価とする。
【0048】
[実施例1]
(A)成分として(1)式において、Rをメチル基、Rをビニル基(以下Viと記す。)、n=146とした粘度が390mPa・sである分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(A−1)60部、及びRをメチル基、Rをビニル基,n=216とした粘度が990mPa・sである分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(A−2)40部の混合物に(D)成分としてRをメチル基M単位とQ単位の比が0.75/1である共重合体樹脂(D−1)のトルエン溶液7.1部(共重合体樹脂の有効成分としては5部)を加え、150℃、1,100Paの減圧下で2時間かけてトルエンを留去した。これに(B)成分として(2)式においてRをメチル基、m=8である粘度が5mPa・sである分子鎖両末端がジメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(B−1)3.0部、(SiH/SiVi=0.52)、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された粘度が20mPa・sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)0.65部及びジメチルシロキサン単位を25モル%有する分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された粘度が45mPa・sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−2)0.95部の混合物(SiH/SiVi=1.26)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノ−ル0.2部及び1,1−ジメチル−2−プロペニルオキシトリメチルシラン0.3部を加え、均一になるまで攪拌した後、(E)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A−1)及び(A−2)のジメチルポリシロキサンの合計に対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が490mPa・sであるシリコーン組成物を調製した。
【0049】
ポリジメチルシロキサン(A−1)
【0050】
【化7】

【0051】
ポリジメチルシロキサン(A−2)
【0052】
【化8】

【0053】
ポリジメチルシロキサン(B−1)
【0054】
【化9】

【0055】
メチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)
【0056】
【化10】

【0057】
メチルハイドロジェンポリシロキサン(C−2)
【0058】
【化11】

【0059】
共重合体樹脂(D−1)
【0060】
【化12】

【0061】
次に、得られたシリコーン組成物をポリエチレンラミネート紙(坪量100g/m)に0.6〜0.7g/m塗布し、キュアー性試験用としては120℃で硬化するまでの秒数をもとめた。また糊ハジキ、剥離力、滑り性用サンプルとしては140℃で30秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。粘着剤は85部に対して水15部を加え均一混合し、縦30cm横12cmにカットしたシリコーン塗工紙に塗布した。これらの測定結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
実施例1中で(D)の有効成分を12部とした以外は実施例1と同様にして粘度が510mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0063】
[実施例3]
(A)成分として実施例1で使用したと同じポリジメチルシロキサン(A−1)100部に、(D)成分として実施例1で使用したと同じ共重合体樹脂(D−1)のトルエン溶液1.7部(共重合体樹脂の有効成分としては1.2部)、更に任意追加成分として下記式で示される分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されメチルビニルシロキサン単位を0.05モル%有する重合度10,000のジメチルポリシロキサン1.8部を加え均一溶解し、150℃、1,100Paの減圧下で2時間かけてトルエンを留去した。これに(B)成分として実施例1で使用したと同じポリジメチルシロキサン(B−1)3.3部、(SiH/SiVi=0.5)、(C)成分として実施例1で使用したと同じメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)1.8部(SiH/SiVi=1.5)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノ−ル0.2部及び1,1−ジメチル−2−プロペニルオキシトリメチルシラン0.3部を加え、均一になるまで攪拌した後、(E)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A−1)のジメチルポリシロキサンに対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が430mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0064】
任意追加成分
【0065】
【化13】

【0066】
[比較例1]
(A)成分として実施例1で使用したと同じポリジメチルシロキサン(A−1)100部、(C)成分として実施例1で使用したと同じメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)2.2部(SiH/SiVi=1.9)、(B)成分及び(D)は使用せず、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノ−ル0.3部とした以外は実施例1と同様にして粘度が350mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0067】
[比較例2]
実施例1中で(D)成分は使用しないこととした以外は実施例1と同様にして粘度が460mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0068】
[比較例3]
実施例1中で(B)成分は使用せず、(C)成分とし実施例1で使用したと同じメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)1.0部及び実施例1で使用したと同じメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−2)1.4部の混合物(SiH/SiVi=1.9)とした以外は実施例1と同様にして粘度が510mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0069】
[比較例4]
(A)成分として(1)式において、Rをメチル基、Rをビニル基,n=68とした粘度が99mPa・sである分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(A−3)100部に(D)成分としてRはメチル基またはビニル基であり、ケイ素原子に結合したビニル基量を100g当たり0.07モル%有するM単位とQ単位の比が0.85/1である共重合体樹脂(D−2)のトルエン溶液21.4部(共重合体樹脂の有効成分としては15部)を加え均一溶解し、150℃、1,100Paの減圧下で2時間かけてトルエンを留去した。これに(B)成分として実施例1で使用したと同じポリジメチルシロキサン(B−1)9.0部、(SiH/SiVi=0.48)、(C)成分として実施例1で使用したと同じメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)4.7部(SiH/SiVi=1.40)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノ−ル0.45部を加え、均一になるまで攪拌した後、(E)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記ジメチルポリシロキサンに対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が330mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0070】
ポリジメチルシロキサン(A−3)
【0071】
【化14】

【0072】
共重合体樹脂(D−2)
【0073】
【化15】

【0074】
[比較例5]
比較例4中の(D)の共重合体樹脂成分量を50部として、(B)成分量を10.0部、(SiH/SiVi=0.34)、(C)成分量を8.0部(SiH/SiVi=1.51)とした以外は比較例4と同様にして、粘度が530mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0075】
[比較例6]
比較例1の組成物に、実施例1の中の(D)成分を実施例1と同一量配合し、粘度が390mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】

(ここで、Rはアルケニル基、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基であり、45≦n≦350)で示され、25℃における粘度が50〜1,500mPa・sである分子鎖末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを100質量、
(B)下記一般式(2)
【化2】

(ここで、Hは水素原子、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基であり、2≦m≦20)で示され、25℃における粘度が2〜30mPa・sである分子鎖末端にケイ素原子に結合した水素原子を有し、(A)成分のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.3〜0.8の範囲であるジオルガノポリシロキサンを0.5〜15.0質量部、
(C)1分子中にけい素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有し、(A)成分のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.4〜3.0の範囲であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.3〜10.0質量部、
(D)一般式RSiO1/2(M単位)、及びSiO4/2(Q単位)から成る(ここで、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の一価炭化水素基であり、M単位とQ単位との比率が0.6/1 〜 1.2/1の範囲である)トルエンに可溶な樹脂状共重合体を0.1〜20.0質量部、
(E)白金族金属系触媒を、(A)成分100重量部に対して白金族金属量として1〜1,000ppm、
を含むことを特徴とする、25℃における粘度が50〜1,000mPa・sの無溶剤型硬化性シリコーン剥離剤組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物の硬化皮膜が形成されてなる剥離紙。

【公開番号】特開2007−186804(P2007−186804A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3577(P2006−3577)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】