説明

無端ベルト製造装置

【課題】厚さが一定な無端ベルトを製造できる装置を提供する。
【解決手段】無端ベルト製造装置1は、円筒形の円筒型2と、円筒形2の外周に一定の隙間を空けて配置される環状のブレード25と、円筒型2およびブレード25を一体に回転させる回転駆動手段6と、ブレード25に液状のベルト材料を供給する給液手段32と、ブレード25を円筒型2に沿って移動させる直線駆動手段27とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルト製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無端ベルトを形成する方法として、回転する円筒型の内面に樹脂を流し込む遠心成形が知られている。
【0003】
特許文献1には、表面が平滑な無端ベルトを得るために、円筒型内に塗布した樹脂をナイフで削り取ることが記載されている。また、特許文献2には、回転する円筒型の内部に樹脂を吐出するノズルを挿入し、円筒型の回転に合わせてノズルを回転軸方向に移動させることで、一定量の樹脂を螺旋状に塗布してゆく技術が記載されている。また、同様に、回転する円筒型の外面に、一定量の樹脂を螺旋状に塗布してゆく技術もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−215827号公報
【特許文献2】特開2005−219227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
螺旋状に樹脂を塗布する場合、樹脂の塗布範囲にラップを設ける必要があり、ラップ部分の樹脂が厚くなるという問題がある。そこで、本発明は、厚さが一定な無端ベルトを製造できる装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明による無端ベルト製造装置は、円筒形の円筒型と、前記円筒形の外周に一定の隙間を空けて配置される環状のブレードと、前記円筒型および前記ブレードを一体に回転させる回転駆動手段と、前記ブレードに液状のベルト材料を供給する給液手段と、前記ブレードを前記円筒型に沿って移動させる直線駆動手段とを有するものとする。
【0007】
この構成によれば、環状のブレードを円筒型と共に回転させるので、円周方向にベルト材料を剪断したり塗り重ねたりせず、円周方向に延伸する凹凸ができない。また、ブレードを軸方向に移動させるので、円筒型上にベルト材料を軸方向に均一に塗り拡げることができる。
【0008】
また、本発明の無端ベルト製造装置において、前記回転手段は、前記円筒型の外側に、前記円筒型と平行に配置され、前記ブレードを案内する複数のガイドレールを有してもよい。
【0009】
この構成によれば、ブレードを円筒型と一体に回転させながら、正確に回転軸方向に移動させられる。
【0010】
また、本発明の無端ベルト製造装置において、前記回転駆動手段は、前記ガイドレールの一端を保持して回転駆動する駆動部材と、前記ガイドレールの他端を保持し、前記ガイドレールを介して前記駆動部材によって回転駆動される従動部材と、前記従動部材の外周を支持する支持ローラとを有してもよい。
【0011】
この構成によれば、駆動部材とガイドレールと従動部材とが互いに位置関係を固定し合って一体に回転することができ、従動部材の外周を支持ローラで支持して回転軸を定めることで、従動部材の中心部に円筒型の着脱のための機構を設けたり、従動部材の中心部に開口を設けて円筒型の着脱の経路とすることができる。
【0012】
また、本発明の無端ベルト製造装置において、前記駆動部材は、前記円筒形と係合する係合部を有し、前記従動部材は、前記円筒型を前記係合部に向かって押圧する押圧部材を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、駆動部材に円筒型を係合させることで、円筒型をぶれなく回転させることができる。
【0014】
また、本発明の無端ベルト製造装置は、前記従動部材の中心に軸方向に摺動可能に設けられ、且つ、前記押圧部材に対して回転可能でありながら軸方向に係合するプッシャを有してもよい。
【0015】
この構成によれば、プッシャは円筒型と共に回転する必要がないので、エアシリンダなどの簡単な構成で円筒型を保持できる。
【0016】
また、本発明の無端ベルト製造装置は、前記ガイドレールに摺動可能に係合し、前記ブレードを着脱可能に保持する環状のコーティングヘッドを有してもよい。
【0017】
この構成によれば、ブレードを容易に交換でき、円筒型との隙間を調節して、異なる厚みの無端ベルトを製造できる。
【0018】
また、本発明の無端ベルト製造装置において、前記直線駆動手段は、前記コーティングヘッドの外縁部を挟み込んで、前記円筒型の軸方向に移動する位置決め部材を有してもよい。
【0019】
この構成によれば、ブレードを所望の速度で移動させて、円筒型上にベルト材料を適切な速度で平滑に塗り拡げることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、円筒型の外面に、円筒型と共に回転する環状のブレードによって、ベルト材料を軸方向に塗り拡げるので、ベルト材料を均一な厚みで塗布して、厚みが一定の無端ベルトを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の1つの実施形態の無端ベルト製造装置の正面図である。
【図2】図1の無端ベルト製造装置の側面図である。
【図3】図1の無端ベルト製造装置の円筒型の保持構造の部分断面図である。
【図4】図1の無端ベルト製造装置の直線駆動手段の一部断面正面図である。
【図5】図1の無端ベルト製造装置を使用する製造ラインの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の1つの実施形態である無端ベルト製造装置1を示す。無端ベルト製造装置1は、円筒形の円筒型2と、円筒型2の周囲に円筒型2と平行に保持された3本のガイドレール3と、ガイドレール3に摺動可能に係合した環状のコーティングヘッド4とを有する。
【0023】
ガイドレール3は、一端が回転駆動モータ5によって回転駆動される駆動部材(回転駆動手段)6に固定され、他端が円盤状の従動部材7に固定されている。駆動部材6は、ベアリング8によって回転可能に支持された中空の回転軸9と、円筒型2の一端に設けた駆動軸部10と係合する係合部11とを有する。
【0024】
従動部材7は、図2に示すように、その外周を2つの支持ローラ12によって支持されることで、その中心を駆動部材6の回転軸9と同軸に保持されている。また、図1に示すように、従動部材7は、その中心に、軸方向にスライド可能に設けられ、円筒型2の他端に設けた従動軸部13を駆動部材6の係合部11に向かって押圧できる押圧部材14を有する。
【0025】
図3に詳しく示すように、押圧部14は、エアシリンダ15のピストン(プッシャ)16によって軸方向に駆動される。ピストン16は、スラスト軸受17を介して押圧部材14と接続されており、軸方向には押圧部材14と一体に移動するが、回転方向には押圧部材14から分離されている。これにより、固定されたエアシリンダ15の回転不能なピストン16によって、円筒型2と共に回転する押圧部材16を軸方向に駆動できる。
【0026】
円筒型2の駆動軸部10および押圧部材14は、中心に円錐台状の調芯突起18,19が設けられ、駆動部材6の係合部11および円筒型2の従動軸部13に設けた円錐台状の調芯凹部20,21に嵌合することで、互いに調芯し合うようになっている。また、駆動軸部10と係合部11とは、調芯突起18および調芯凹部20の周囲に設けた係合突起22と係合凹部23とが嵌合して、駆動部材6の回転力を円筒型2に伝達するようになっている。
【0027】
図4に示すように、コーティングヘッド4は、リニアブッシュ24を介してガイドレール3に係合しており、ガイドレール3に沿って、円筒型2の軸方向に移動できる。コーティングヘッド4には、円筒型2の外周に近接するブレード25がボルト26で着脱可能に取り付けられている。ブレード25は、円筒型2と一定の隙間を形成するように環状に形成されている。
【0028】
また、コーティングヘッド4は、その外縁部が、位置決め部材(直線駆動手段)27に設けた2つのローラ28の間に挟み込まれている。位置決め部材27は、リニアスライダ29に支持され、直線駆動モータ30に回転駆動されるボールネジ31によって駆動部材6および円筒型2の回転軸と平行に移動させられる。この位置決め部材27の移動により、コーティングヘッド4は、ガイドレール3に沿って移動させられる。
【0029】
さらに、コーティングヘッド4には、液状のベルト材料を供給するフレキシブルチューブ(給液手段)32が接続されている。フレキシブルチューブ32は、図1に示すように、コイル状に形成され、ガイドレール3に巻き付けられて、他端が中空の回転軸9に接続されている。ベルト材料は、回転軸9の軸端に設けたロータリジョイント33に接続される不図示の配管から供給される。
【0030】
コーティングヘッド4の移動により、円筒型2の表面にブレード25との隙間に応じた一定の厚みのベルト材料の液膜を形成することができ、この液膜を乾燥させることで厚みが一定の無端ベルトを成形できる。この間、円筒型2とブレード25とが一体に回転することにより、液だれによるベルト材料の膜圧の偏りを防止できる。また、円筒型2とブレード25とが同じ速度で回転するので、円筒型2上に塗布した液膜を周方向に剪断することがないので、液膜の表面が荒らされることがない。
【0031】
無端ベルト製造装置1は、ブレード25を内径の異なるものと交換することで、形成する無端ベルトの厚みを変えることができる。また、無端ベルト製造装置1は、径の異なる円筒型2およびブレード25を使用することで、成形する無端ベルトの周長を変えることもできる。また、本実施形態において、円筒型2は、ベルトを形成する範囲が凹状になっており、両端のベルト材料が軸方向外側に流出しないようになっている。
【0032】
本実施形態の無端ベルト製造装置1は、円筒型2が着脱可能であるので、図5に示すように、別に、ベルト材料が塗布された円筒型2を回転させながら加熱してベルト材料を乾燥させる乾燥ユニット34と、円筒型2を冷却する冷却ユニット35とを設けることで、効率よく無端ベルトを製造することができる。
【0033】
無端ベルト製造装置1に円筒型2を着脱する際は、ガイドレール3が所定の角度に位置するように、駆動部材6を一定の位置に停止させ、ガイドレール3の間に円筒型2を支持可能なアーム36(図2参照)を差し込む。円筒型2は、駆動軸部10および従動軸部13の中央がテーパ状に細くなっており、押圧部材14が後退したときに、自重によってアーム上で軸方向に滑ることで係合部11から脱離するようになっている。
【符号の説明】
【0034】
1…無端ベルト製造装置
2…円筒型
3…ガイドレール
4…コーティングヘッド
6…駆動部材(回転駆動手段)
7…従動部材
9…回転軸
10…駆動軸部
11…係合部
12…支持ローラ
13…従動軸部
14…押圧部材
15…エアシリンダ
16…ピストン(プッシャ)
17…スラスト軸受
18,19…調芯突起
20,21…調芯凹部
22…係合突起
23…係合凹部
25…ブレード
27…位置決め部材(直線駆動手段)
28…ローラ
31…ボールネジ
32…フレキシブルチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の円筒型と、
前記円筒形の外周に一定の隙間を空けて配置される環状のブレードと、
前記円筒型および前記ブレードを一体に回転させる回転駆動手段と、
前記ブレードに液状のベルト材料を供給する給液手段と、
前記ブレードを前記円筒型に沿って移動させる直線駆動手段とを有することを特徴とする無端ベルト製造装置。
【請求項2】
前記回転手段は、前記円筒型の外側に、前記円筒型と平行に配置され、前記ブレードを案内する複数のガイドレールを有することを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト製造装置。
【請求項3】
前記回転駆動手段は、前記ガイドレールの一端を保持して回転駆動する駆動部材と、
前記ガイドレールの他端を保持し、前記ガイドレールを介して前記駆動部材によって回転駆動される従動部材と、
前記従動部材の外周を支持する支持ローラとを有することを特徴とする請求項2に記載の無端ベルト製造装置。
【請求項4】
前記駆動部材は、前記円筒形と係合する係合部を有し、
前記従動部材は、前記円筒型を前記係合部に向かって押圧する押圧部材を有することを特徴とする請求項3に記載の無端ベルト製造装置。
【請求項5】
前記従動部材の中心に軸方向に摺動可能に設けられ、且つ、前記押圧部材に対して回転可能でありながら軸方向に係合するプッシャを有することを特徴とする請求項4に記載の無端ベルト製造装置。
【請求項6】
前記ガイドレールに摺動可能に係合し、前記ブレードを着脱可能に保持する環状のコーティングヘッドを有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無端ベルト製造装置。
【請求項7】
前記直線駆動手段は、前記コーティングヘッドの外縁部を挟み込んで、前記円筒型の軸方向に移動する位置決め部材を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の無端ベルト製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−240872(P2010−240872A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89004(P2009−89004)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(390002015)ヒラノ技研工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】