説明

無端形状ベルト、中間転写ユニット、画像形成装置、および無端形状ベルトの製造方法

【課題】良好な走行性および耐久性を実現することが可能な無端形状ベルト、これを備えた中間転写ユニットおよび画像形成装置、ならびに無端形状ベルトの製造方法を提供する。
【解決手段】中間転写ベルトは、ベルト本体および第1、第2の走行ガイドリブ942、944を備える。第1、第2の走行ガイドリブ942、944は、ベルト本体の内周面における幅方向の第1の端部および第2の端部にそれぞれ設けられる。第1の走行ガイドリブ942の第1の継ぎ目12および第2の走行ガイドリブ944の第2の継ぎ目14は、周方向において、少なくとも中間転写ベルト駆動ローラ85の半周に相当する距離以上ずれるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、両端に走行ガイド部材が設けられた無端形状ベルト、これを備えた中間転写ユニットおよび画像形成装置、ならびに無端形状ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のローラによって張架される無端形状ベルトにおいて、ローラの回転に伴ってローラの軸方向に無端形状ベルトがずれることを防止するために、無端形状ベルトの両端に走行ガイド部材を設ける構成を採用するものがあった。
【0003】
例えば、従来技術の中には、中間転写ベルトの内周両側に細線状のリブ部材を周方向に沿って貼り付けることによって中間転写ベルトの横ズレを防止するようにした画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)
また、この特許文献1に係る技術では、中間転写ベルトを張架するテンションローラの両側にサポートローラを設け、リブ部材の継ぎ目のスリットにあってもサポートローラによりリブの両端を支持することにより、リブの継ぎ目のスリットを原因とする中間転写ベルトのベルト搬送速度の変動を小さくする構成も採り入れられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−52417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に係る技術では、図1(A)および図1(B)に示すように、中間転写ベルト194の内周面の両端に設けられたリブ部材196および198の継ぎ目の位置が周方向で同じになるように設けられているため、両端のリブ部材196および198の継ぎ目が同時に同一のローラを通過することになる。このため、中間転写ベルト194の走行中にローラ部分を通過する際における中間転写ベルト194の挙動変化の影響を受け易く、画像欠陥を発生させてしまい易い。
【0006】
また、両端のリブ部材196および198の継ぎ目が同時に同一のローラに巻き付いた状態での停止時間が長期に及ぶと中間転写ベルト194に負荷が作用し易く、継ぎ目部分で曲げ癖や折れ曲がりが発生する等、中間転写ベルト194の耐久性の低下を招くことがあった。
【0007】
この発明の目的は、良好な走行性および耐久性を実現することが可能な無端形状ベルト、これを備えた中間転写ユニットおよび画像形成装置、ならびに無端形状ベルトの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る無端形状ベルトは、ベルト本体および走行ガイド部材を備える。ベルト本体は、無端形状を呈するとともに複数のローラによって張架されるように構成される。
【0009】
走行ガイド部材は、ベルト本体の内周面における幅方向の第1の端部および第2の端部にそれぞれ設けられる。走行ガイド部材は、長尺状のシート体をベルト本体の周方向に沿って貼り付けることによって形成される。
【0010】
さらに、第1の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目と第2の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目とが、周方向において、少なくとも複数のローラのうちの最大径を有するローラの半周に相当する距離以上ずれるように配置される。
【0011】
この構成においては、第1の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目と第2の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目とが同時に同じローラを通過することが防止される。このため、走行ガイド部材の継ぎ目がローラを通過するときの無端形状ベルトの挙動変化を小さく抑えることが可能になるため、無端形状ベルトの円滑な走行性が担保され、無端形状ベルトの挙動変化に起因する画像欠陥等の不具合の発生が適切に抑制される。
【0012】
また、第1の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目および第2の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目が共に同じローラに巻き付いた状態で、無端形状ベルトが長期間放置されることが確実に防止される。このため、継ぎ目部分で曲げ癖や折れ曲がりが発生する等の不具合の発生が抑制され、その結果、無端形状ベルトの耐久性の低下が防止される。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、内周面の両端に走行ガイド部材を備えた無端形状ベルトにおいて良好な走行性および耐久性を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の無端形状ベルトの構成の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略を示す図である。
【図3】中間ベルトユニットの概略を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る無端形状ベルトの構成の概略を示す図である。
【図5】走行ガイド部材の継ぎ目のずれ量の意義を説明する図である。
【図6】走行ガイド部材貼付装置の概略構成の一例を示す図である。
【図7】走行ガイド部材貼付工程の一例を説明する図である。
【図8】走行ガイド部材貼付装置の概略構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る画像形成装置50の概略を示す図である。画像形成装置50は、外部から伝達された画像データに応じて、所定の用紙(記録用紙)に対して多色および単色の画像を形成するもので、画像形成部82および原稿読取部58を備えている。
【0016】
画像形成部82は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のカラー画像をそれぞれ形成する4つ画像形成ステーションを備える。各画像形成ステーションは、現像器91、感光体ドラム90、クリーナユニット93、および帯電器92を備える。
【0017】
画像形成部82はさらに、光走査装置88、中間転写ベルトユニット95、定着ユニット74、給紙カセット71、第1の排紙トレイ80、第2の排紙トレイ100、および用紙の搬送方向を切り換えるための複数のフラッパ(図示省略)等を備える。
【0018】
画像形成部82の上部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台54が設けられ、原稿載置台54の上側には自動原稿処理装置56が取り付けられている。自動原稿処理装置56は、原稿載置台54の上に自動で原稿を搬送する。また自動原稿処理装置56は回動自在に構成され、原稿載置台54の上を開放することにより原稿を手置きで置くことができるようになっている。
【0019】
帯電器92は、感光体ドラム90の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、図2に示すような非接触型帯電器の他に、ローラやブラシ等の接触型の帯電器が用いられることもある。
【0020】
光走査装置88は、入力された画像データに基づいて各感光体ドラム90の表面に静電潜像を形成するように構成される。
【0021】
各現像器91は対応する感光体ドラム90上に形成された静電潜像を4色のトナーにより顕像化するものである。またクリーナユニット93は、転写処理後における感光体ドラム90上の表面に残留したトナーを除去および回収する。
【0022】
感光体ドラム90の上方に配置されている中間転写ベルトユニット95は、中間転写ベルト94、中間転写ベルト駆動ローラ85、中間転写ベルト従動ローラ84、4つの中間転写ローラ96、および中間転写ベルトクリーニングユニット86を備えている。
【0023】
中間転写ベルト駆動ローラ85、中間転写ベルト従動ローラ84、および中間転写ローラ96は、中間転写ベルト94を張架するように構成される。また、各中間転写ローラ96は、対応する感光体ドラム90のトナー像を、中間転写ベルト94上に転写するように構成される。
【0024】
中間転写ベルト94は、各感光体ドラム90に接触するように設けられている、そして、感光体ドラム90に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト94に順次的に重ねて転写することによって、中間転写ベルト94上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する機能を有している。中間転写ベルト94は、例えば厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0025】
感光体ドラム90から中間転写ベルト94へのトナー像の転写の際に、中間転写ローラ96には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ96は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面が導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト94に対して均一に高電圧を印加することができる。本実施形態では転写電極としてローラ形状を使用しているが、それ以外にブラシ形状の転写電極なども用いることが可能である。
【0026】
上述の様に各感光体ドラム90上で各色相に応じて顕像化された静電像は中間転写ベルト94で積層される。このように、積層された画像情報は中間転写ベルト94の回転によって、後述の用紙と中間転写ベルト94の接触位置に配置される二次転写ローラ87によって用紙上に転写される。
【0027】
このとき、中間転写ベルト94と二次転写ローラ87は所定ニップで圧接されると共に、二次転写ローラ87にはトナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。さらに、二次転写ローラ87は上記ニップを定常的に得るために、二次転写ローラ87もしくは中間転写ベルト駆動ローラ85の何れか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ、または発泡性樹脂ローラ等々)が用いられる。
【0028】
また、上記のように、感光体ドラム90に接触することにより中間転写ベルト94に付着したトナー、もしくは二次転写ローラ87によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト94上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット86によって除去・回収されるように設定されている。中間転写ベルトクリーニングユニット86には、中間転写ベルト94に接触する例えばクリーニング部材としてクリーニングブレードが備えられており、クリーニングブレードが接触する中間転写ベルト94は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ84で支持されている。
【0029】
給紙カセット71は、画像形成に使用する用紙(記録用紙)を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成部82の光走査装置88の下側に設けられている。また手差し給紙カセット78にも画像形成に使用する用紙を置くことができる。
【0030】
なお、第1の排紙トレイ80は、画像形成部82の上方に設けられており、印刷済みの用紙を印刷面が下になった状態で集積するように構成される。一方で、第2の排紙トレイ100は、画像形成装置50の筐体の外側に配置されており、印刷済みの用紙を印刷面が上になった状態で集積するように構成される。
【0031】
また画像形成部82には、給紙カセット71および手差し給紙カセット78の用紙を二次転写ローラ87や定着ユニット74を経由させて第1の排紙トレイ80または第2の排紙トレイ100に送るための用紙搬送路77が設けられている。給紙カセット71ないし手差し給紙カセット78から第1の排紙トレイ80および第2の排紙トレイ100までの用紙搬送路77の近傍には、ピックアップローラ73,75、複数の搬送ローラ62,64,66,68、レジストローラ79、二次転写ローラ87、定着ユニット74等が配されている。
【0032】
搬送ローラ62,64,66,68は、用紙の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路77に沿って複数設けられている。またピックアップローラ73は、給紙カセット71の端部近傍に備えられ、給紙カセット71から用紙を1枚ずつピックアップして用紙搬送路77に供給する。同様にまたピックアップローラ75は、手差し給紙カセット78の端部近傍に備えられ、手差し給紙カセット78から用紙を1枚ずつピックアップして用紙搬送路77に供給する。
【0033】
また、レジストローラ79は、用紙搬送路77を搬送されている用紙を一旦保持するものである。そして、感光体ドラム90上のトナー像の先端と用紙の先端を合わせるタイミングで用紙を二次転写ローラ87に搬送する機能を有している。
【0034】
定着ユニット74は、ヒートローラ72および加圧ローラ76を備えており、ヒートローラ72および加圧ローラ76は、用紙を挟んで回転するようになっている。またヒートローラ72は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部によって所定の定着温度となるように設定されている。ヒートローラ72は、加圧ローラ76とともにトナーを用紙に熱圧着することにより、用紙に転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、用紙に対して熱定着させる機能を有している。またヒートローラ72を外部から加熱するための外部加熱ベルト70が設けられている。
【0035】
次に用紙搬送経路を詳細に説明する。上述のように、画像形成装置には予め用紙を収納する給紙カセット71、および手差し給紙カセット78が設けられている。これら給紙カセット71,78から用紙を給紙するために、各々ピックアップローラ73,75が配置され、用紙を1枚ずつ搬送路77に導くようになっている。
【0036】
各給紙カセット71,78から搬送される用紙は用紙搬送路77の搬送ローラ62によってレジストローラ79まで搬送される。そして用紙はその先端と中間転写ベルト94上の画像情報の先端を整合するタイミングで二次転写ローラ87に搬送され、用紙上に画像情報が書き込まれる。その後、用紙は定着ユニット74を通過することによって用紙上の未定着トナーが熱で溶融固着され、その後に配された搬送ローラ68を経て第1の排紙トレイ80または第2の排紙トレイ100上に排出される。
【0037】
上記の搬送経路は、用紙に対する片面印刷のときのものである。これに対して両面印刷の時は、上記のように片面印刷が終了し定着ユニット74を通過した用紙の後端を最終の搬送ローラ68で把持させる。その後、搬送ローラ68が逆回転させ、フラッパ(図示省略)の位置を切り換えることによって、用紙を搬送ローラ66および64が配置された帰還搬送路に用紙を導く。用紙は、帰還搬送路からレジストローラ79を経て中間転写ベルト94との接触位置に至り、そこで裏面に印刷が行われる。用紙は、その後、第1の排紙トレイ80に排出される。
【0038】
続いて、図3(A)および図3(B)を用いて、中間ベルトユニット95の構成を説明する。同図に示すように、中間ベルトユニット95の中間転写ベルト94は、中間転写ベルト従動ローラ84、中間転写ベルト駆動ローラ85、および中間転写ローラ96を含む複数のローラに張架されている。この実施形態では、中間転写ベルト従動ローラ84、中間転写ベルト駆動ローラ85、および中間転写ローラ96の中で中間転写ベルト駆動ローラ85が最も大径になるように設計されている。
【0039】
中間転写ベルト駆動ローラ85に回転駆動力を供給すると、中間転写ベルト駆動ローラ85が回転し中間転写ベルト94の走行が開始するとともに、中間転写ベルト従動ローラ84および中間転写ローラ96がこれに従動する。このとき、中間転写ベルト従動ローラ84、中間転写ベルト駆動ローラ85、および中間転写ローラ96の軸方向に中間転写ベルト94がずれることを防止するために、中間転写ベルト94の内周面の幅方向(各ローラの軸方向と平行な方向)の両端には、第1の走行ガイドリブ942および第2の走行ガイドリブ944が設けられている。
【0040】
ここで、図4(A)および図4(B)を用いて、中間転写ベルト94の構成を説明する。同図に示すように、中間転写ベルト94の内周面の幅方向の第1の端部には、第1の走行ガイドリブ942が設けられる一方で、幅方向の第2の端部には、第2の走行ガイドリブ944が設けられる。第1の走行ガイドリブ942および第2の走行ガイドリブ944は、長尺状のシート部材(例えば、ウレタンシート)によって構成されており、接着剤を介して中間転写ベルト94の内周面に貼り付けられている。
【0041】
第1の走行ガイドリブ942および第2の走行ガイドリブ944は、中間転写ベルト94の内周面において周方向に沿って貼り付けられているため、第1の走行ガイドリブ942の貼り付け開始点と貼り付け終了点との間に第1の継ぎ目12が形成されるとともに、第2の走行ガイドリブ944の貼り付け開始点と貼り付け終了点との間に第2の継ぎ目14が形成される。ここでは、中間転写ベルト94の走行の安定性を考慮して第1の走行ガイドリブ942および第2の走行ガイドリブ944の長さ方向の両端を斜め方向にカットしている例を示しているが、必ずしもこの構成を採用する必要はない。
【0042】
また、第1の継ぎ目12および第2の継ぎ目14にそれぞれ所定の間隙が設けられることが好ましい。その理由は、中間転写ベルト94の本体(基材)と、第1の走行ガイドリブ942および第2の走行ガイドリブ944とでは熱膨張が異なるため、継ぎ目位置に適当なスペースを設けることにより、第1の走行ガイドリブ942および第2の走行ガイドリブ944の重なり合いを防止することが可能になるからである。
【0043】
この実施形態では、第1の継ぎ目12および第2の継ぎ目14が、中間転写ベルト94の周方向において、少なくとも中間転写ベルト駆動ローラ85の周長の半分に相当する距離(図4(B)における矢印16を参照。)以上離れるように配置される。その理由は、第1の継ぎ目12および第2の継ぎ目14が同時に同じローラに巻き付くことを防止するためである。なお、ここでは、中間転写ベルト従動ローラ84、中間転写ベルト駆動ローラ85、および中間転写ローラ96の中で中間転写ベルト駆動ローラ85が最も大径になるように設計されているため、中間転写ベルト駆動ローラ85の周長の半分に相当する距離を基準にしているが、他のローラが最大径を有する場合にはそのローラの周長の半分に相当する距離を基準にすると良い。
【0044】
続いて、図5(A)〜図5(C)を用いて、第1の継ぎ目12および第2の継ぎ目14を、中間転写ベルト94の周方向において、中間転写ベルト駆動ローラ85の周長の半分に相当する距離以上離す技術的意義について説明する。同図に示すように中間転写ベルト94を張架する支持ローラの数が減るにつれて、中間転写ベルト94の支持ローラへの巻き付き角度(抱き角度)が大きくなる。そして、中間転写ベルト94を2つの支持ローラで支持する場合に、中間転写ベルト94の支持ローラへの巻き付き角度(抱き角度)が180度に到達するが、2つの支持ローラの径が極端に異なる等の特殊な場合を除くと、中間転写ベルト94の支持ローラへの巻き付き角度(抱き角度)が180度を超えることはない。
【0045】
このため、本実施形態に係る構成のように、第1の継ぎ目12および第2の継ぎ目14を、中間転写ベルト94の周方向において、最大径を有する中間転写ベルト駆動ローラ85の周長の半分に相当する距離以上離しておけば、第1の継ぎ目12および第2の継ぎ目14が同時に同じローラに巻き付くことを確実に防止することが可能になる。この結果、第1、第2の走行ガイドリブ942、944の第1、第2の継ぎ目12、14が各ローラを通過するときの中間転写ベルト94の挙動変化を小さく抑えることが可能になる。したがって、中間転写ベルト94の円滑な走行性が担保され、中間転写ベルト94の挙動変化に起因する画像欠陥等の不具合の発生が適切に抑制される。
【0046】
また、第1、第2の継ぎ目12、14が共に同じローラに巻き付いた状態で長期間中間転写ベルト94が停止することが確実に防止される。このため、中間転写ベルト94における第1、第2の継ぎ目12、14の部分で曲げ癖や折れ曲がりが発生する等の不具合の発生が抑制され、その結果、中間転写ベルト94の耐久性の低下が防止される。
【0047】
続いて、図6を用いて、中間転写ベルト94の製造方法を説明する。中間転写ベルト94に第1、第2の走行ガイドリブ942、944を貼り付ける際には、図6に示すガイドリブ貼付装置30が用いられる。
【0048】
ガイドリブ貼付装置30は、中間転写ベルト94を支持するための従動ローラ22、駆動ローラ24、ガイドローラ20、およびテンションローラ26を備える。テンションローラ26は、昇降可能に支持されており、テンションローラ26を下降させることにより、中間転写ベルト94に張力を発生させることが可能になる。また、ガイドローラ20に対応する位置には、ガイドローラ20に対して離接可能に支持された加圧ローラ18が設けられる。
【0049】
中間転写ベルト94に貼り付けられる前の第1、第2の走行ガイドリブ942、944は、接着面が剥離紙によって覆われている。第1、第2の走行ガイドリブ942、944を貼り付ける際には、先端部の剥離紙を10センチ程度剥がして、露出した接着面を中間転写ベルト94の内周面に対向させた状態で、ガイドローラ20および加圧ローラ18の圧接部に第1、第2の走行ガイドリブ942、944の先端部を案内する。
【0050】
この状態で、第1、第2の走行ガイドリブ942、944の剥離紙を剥がしつつ駆動ローラ24を回転させて中間転写ベルト94を走行させると、第1、第2の走行ガイドリブ942、944が中間転写ベルト94の内周面に周方向に沿って貼り付いていく。
【0051】
ここで、図7(A)〜図7(C)を用いて、中間転写ベルト94の内周面に第1、第2の走行ガイドリブ942、944を貼付する工程を説明する。図7(A)に示すように、まず中間転写ベルト94の内周面における第1の端部に、第1の走行ガイドリブ942を周方向に沿って貼り付ける。
【0052】
続いて、図7(B)に示すように、駆動ローラ24を回転させることによって、中間転写ベルト駆動ローラ85の周長の半分に相当する距離以上、中間転写ベルト94を空送りする。
【0053】
続いて、図7(C)に示すように、中間転写ベルト94の内周面における第2の端部に、第2の走行ガイドリブ944を周方向に沿って貼り付ける。このような工程を経ることによって、簡易かつ確実に、第1の継ぎ目12および第2の継ぎ目14を、周方向において、中間転写ベルト駆動ローラ85の周長の半分に相当する距離以上離すことが可能になる。
【0054】
図7(A)〜図7(C)では、第1、第2の走行ガイドリブ942、944を順次的に中間転写ベルト94の内周面に貼り付ける例を説明したが、第1、第2の走行ガイドリブ942、944を同時に中間転写ベルト94の内周面の両端に貼り付けることも可能である。
【0055】
ここで、図8を用いて、ガイドリブ貼付装置30のバリエーションとして、ガイドリブ貼付装置32を説明する。ガイドリブ貼付装置30およびガイドリブ貼付装置32の基本構成は同一である。ただし、ガイドリブ貼付装置32は、第1の走行ガイドリブ942を貼り付けるためガイドローラ202および加圧ローラ182と、第2の走行ガイドリブ944を貼り付けるためのガイドローラ204および加圧ローラ184とが、別々に設けられている。ガイドローラ202および加圧ローラ182の圧接部と、ガイドローラ204および加圧ローラ184の圧接部とは、中間転写ベルト94の周方向において、中間転写ベルト駆動ローラ85の周長の半分に相当する距離以上離間するように配置されている。また、ガイドローラ204および加圧ローラ184は、第1の走行ガイドリブ942の貼り付け作業の作業性を考慮して、ガイドローラ202および加圧ローラ182よりも奥側に引っ込むように配置されている。
【0056】
このようなガイドリブ貼付装置32において、第1の走行ガイドリブ942の先端部を接着面が中間転写ベルト94の内周面に対向する状態で、ガイドローラ202および加圧ローラ182の圧接部にセットし、かつ、第2の走行ガイドリブ944の先端部を接着面が中間転写ベルト94の内周面に対向する状態で、ガイドローラ204および加圧ローラ184の圧接部にセットして、駆動ローラ24を回転させることにより、第1、第2の走行ガイドリブ942、944が同時に中間転写ベルト94の内周面の両端に貼り付けられる。また、その際に自動的に、第1の継ぎ目12および第2の継ぎ目14が周方向において、中間転写ベルト駆動ローラ85の周長の半分に相当する距離以上離れるようになる。
【0057】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
18−加圧ローラ
20−ガイドローラ
22−第1の支持ローラ
24−第2の支持ローラ
26−テンションローラ
30、32−リブ貼付装置
50−画像形成装置
94−中間転写ベルト
95−中間転写ベルトユニット
942−第1の走行ガイドリブ
944−第1の走行ガイドリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラによって張架される無端形状のベルト本体と、
前記ベルト本体の内周面における幅方向の第1の端部および第2の端部にそれぞれ設けられた走行ガイド部材であって、長尺状のシート体を前記ベルト本体の周方向に沿って貼り付けることによって形成される走行ガイド部材と、を備え、
前記第1の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目と前記第2の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目とが、周方向において、少なくとも前記複数のローラのうちの最大径を有するローラの半周に相当する距離以上ずれるように配置された
無端形状ベルト。
【請求項2】
前記第1の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目と前記第2の端部に設けられた走行ガイド部材の継ぎ目に所定の間隙が設けられた請求項1に記載の無端形状ベルト。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無端形状ベルトと、
前記無端形状ベルトを張架する複数のローラと、を備えた電子写真方式の画像形成装置に用いられる中間転写ベルトユニットであって、
前記複数のローラのうちの最大径を有するローラが駆動ローラである中間転写ベルトユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の中間転写ベルトユニットを備えた電子写真方式の画像形成装置。
【請求項5】
複数のローラによって張架される無端形状のベルト本体の内周面の両端部に走行ガイド部材を貼り付ける中間転写ベルトの製造方法であって、
ベルト本体を走行させつつベルト本体に走行ガイド部材を押圧貼付するように構成された複数のローラを有するガイド部材貼付装置にベルト本体をセットするステップと、
前記ベルト本体の内周面における幅方向の第1の端部に、長尺状のシート体によって構成される第1の走行ガイド部材を前記ベルト本体の周方向に沿って貼り付けるステップと、
前記ガイド部材貼付装置を用いて、前記ベルト本体を、少なくとも前記複数のローラのうちの最大径を有するローラの半周に相当する距離以上、周方向に走行させるステップと、
前記ベルト本体の内周面における幅方向の第2の端部に、長尺状のシート体によって構成される第2の走行ガイド部材を前記ベルト本体の周方向に沿って貼り付けるステップと、
を含む中間転写ベルトの製造方法。
【請求項6】
複数のローラによって張架される無端形状のベルト本体の内周面の両端部に走行ガイド部材を貼り付ける中間転写ベルトの製造方法であって、
ベルト本体を走行させつつベルト本体に走行ガイド部材を押圧貼付するように構成された複数のローラを有するガイド部材貼付装置であって、ベルト本体に走行ガイド部材を押圧貼付する2組のローラ対が、少なくとも前記複数のローラのうちの最大径を有するローラの半周に相当する距離以上離れて配置されるガイド部材貼付装置にベルト本体をセットするステップと、
前記ガイド部材貼付装置を用いて、前記ベルト本体の内周面における幅方向の第1の端部および第2の端部に、長尺状のシート体によって構成される第1の走行ガイド部材および第2の走行ガイド部材を前記ベルト本体の周方向に沿って同時に貼り付けるステップと、
を含む中間転写ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−42636(P2012−42636A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182758(P2010−182758)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】