説明

無線による信号発信システム、および発信装置

【課題】 乾電池や商用電源を必要とせず、いかなる場所でも使用することができる信号発信システムを提供する。
【解決手段】 本発明の信号発信システムは、磁石1と発信装置10とを備え、発信装置10は、磁石1との距離を相対的に変化させることにより起電力を発生するコイル11と、コイル11が発生した起電力により駆動して信号を生成する発振器13と、コイル11が発生した起電力により駆動し、発振器13によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線による信号発信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線による信号発信システムは、発信機の電源として、乾電池を内蔵したり商用電源を使用したりしている(例えば下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−14539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の信号発信システムにおいては、電源として乾電池を内蔵する発信機の場合、乾電池の電力が尽きると発信が出来なくなるので、定期的に乾電池を交換する必要があり、管理が面倒である。また、乾電池の購入コストが嵩む等の問題もある。
一方、商用電源を使用する発信機の場合は、乾電池の場合とは異なり、交換等の面倒な管理は不要であるが、商用電源を使用できる場所にしか発信機を設置することができない。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、乾電池や商用電源を必要とせず、いかなる場所でも使用することができる信号発信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成の信号発信システム、および発信装置を採用する。すなわち本発明の信号発信システムは、磁石と;前記磁石との距離を相対的に変化させることにより起電力を発生するコイルと、前記コイルが発生した起電力により駆動して信号を生成する信号生成部と、前記コイルが発生した起電力により駆動し、前記信号生成部によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部とを備える発信装置と;を備える。
【0006】
本発明の信号発信システムは、前記発信装置に、前記コイルを巻かれる鉄芯が設けられることが好ましい。
【0007】
本発明の信号発信システムは、前記発信装置に、前記コイルが発生した起電力を一定の大きさにする定電圧化部を備えることが好ましい。
【0008】
本発明の信号発信システムは、前記磁石が、ネオジウム磁石またはフェライト磁石であることが好ましい。
【0009】
本発明の発信装置は、磁束密度の変化により起電力を発生するコイルと、前記コイルが発生した起電力により駆動して信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部において生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部とを備える。
【0010】
本発明の信号発信システムにおいては、信号を発信させる要求がある場合、発信装置と磁石との距離を相対的に変化させると、電磁誘導によってコイルに起電力が発生し、コイルが発生した起電力により信号生成部が駆動して信号を生成し、信号生成部によって生成された信号が電波に変換されて発信される。
【0011】
本発明の信号発信システムは、磁石と;信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部と、前記信号生成部および前記電波発信部に供給すべき電力を発生する太陽電池と、前記磁石を接近させることにより作動し、前記太陽電池から前記信号生成部および前記電波発信部への電力供給路を開くスイッチとを備える発信装置と;を備える。
【0012】
本発明の発信装置は、信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部と、前記信号生成部および前記電波発信部に供給すべき電力を発生する太陽電池と、磁石を接近させることにより前記磁石に引き寄せられて結線し、前記太陽電池から前記信号生成部および前記電波発信部への電力供給路を開くスイッチとを備える発信装置と;を備える。
【0013】
本発明の信号発信システムにおいては、信号を発信させる要求がある場合、発信装置に磁石を接近させると、スイッチが結線して太陽電池から信号生成部および電波発信部への電力供給路が開かれ、信号生成部が駆動して信号を生成し、信号生成部によって生成された信号が電波に変換されて発信される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の信号発信システムによれば、乾電池を内蔵する従来の発信機とは異なり、別途電源を用意する必要がないので、定期的に乾電池を交換する必要がなく、管理が非常に楽である。また、乾電池の購入コスト等もいっさい不要である。また、商用電源を使用する従来の発信機とも異なり、商用電源を使用できる場所でなくても発信機を設置することができる。したがって、本発明の信号発信システムは、乾電池や商用電源を必要とせず、いかなる場所でも使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の信号発信システムの第1の実施形態を、図1および図2を参照して説明する。
本実施形態の信号発信システムは、図1に示すように、磁石1と、発信装置10とを備えている。磁石1には、ネオジウム磁石またはフェライト磁石が採用されている。発信装置10は、磁石1との距離を相対的に変化させることにより起電力を発生するコイル11と、コイル11を巻かれる鉄芯12と、信号を生成する発振器(信号生成部)13と、発振器13によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部14と、コイル11が発生した起電力を一定の大きさにする定電圧化部15とを備えている。発振器13および電波発信部14は、いずれもコイル11が発生した起電力により駆動する。
【0016】
発振器13は、送出すべき電波と同じ周波数の電気的な振動電流を生成する。これを振動波という。電波発信部14は、発振器13において生成された振動波を増幅する増幅器16と、増幅器16によって増幅された振動波を電磁波として空間に放射する送信アンテナ17とを備えている。
【0017】
発信装置10の外観を図2に示す。発信装置10は、有底の円筒形状をなす樹脂製(例えばポリプロピレン等)のケース18に、上記各機器を内蔵している。ケース18の、コイル11および鉄芯12が内蔵される側の端面には、磁石とコイルとの直接の干渉を防止するために、樹脂製(例えばポリエチレンテレフタレート等)のキャップ19が被着されている。キャップ19を被着された面が、発信装置10の磁場検出面である。送信アンテナ17には、樹脂コーティングされた軟性のコードが採用されている。
【0018】
上記のように構成された信号発信システムの作動の仕方について説明する。
発信装置10のキャップ19が被着された面と、磁石1とを対峙させ、磁石1を発信装置10に接近させると、コイル11の周囲の磁場が変化し、コイル11に作用する磁場の磁束密度が高くなる。これによってコイル11に電磁誘導が起こり、コイル11の両端に起電力が発生する。発生した起電力は、定電圧化部15において一定の大きさの電圧に調整された後、発振器13および増幅器16に供給され、これらを駆動させる。
【0019】
発振器13は、送出すべき電波と同じ周波数の電気的な振動電流(振動波)を生成する。増幅器16は、発振器13において生成された振動波を必要なだけ増幅し、送信アンテナ17に加える。送信アンテナ17は、与えられた振動波のエネルギーを電磁波(電波)として空間に放射する。送信アンテナ17から放射された電波は、図示しない受信装置の受信アンテナに受信される。
【0020】
本実施形態においては、磁石1を発信装置10に接近させることによってコイル11の両端に発生する起電力を3.0ボルトに想定している。コイル11の両端に発生する起電力の大きさは、磁石1を接近させる速度にも依存するが、ある速度を仮定したうえで、3.0ボルトの起電力を発生させるために、磁石1の種類、およびコイル11の巻き数を適宜選定している。例えば、磁石1には大きさの割に磁力の強いネオジウム磁石またはフェライト磁石を採用している。定電圧化部15は、コイル11が発生した3.0ボルトの電力を、発振器13および増幅器16の駆動電圧に等しい1.2ボルトに変圧する。コイル11の目標とする起電力を、発振器13および増幅器16の駆動電圧よりも大きくしたのは、磁石1とコイル11による電磁誘導によって発生する起電力が、様々な要因に依存して安定しない可能性があるからである。本実施形態では、様々な要因の影響を考慮してコイル11が発生する起電力を3.0ボルトとし、その起電力を定電圧化部15によって1.2ボルトにまで低下させて発振器13および増幅器16を駆動することにしたので、作動の確実性が非常に高められている。また、磁石1にネオジウム磁石またはフェライト磁石を採用したことにより、システム自体の小型化にも貢献している。
【0021】
上記のように構成された信号発信システムによれば、信号を発信させる要求がある場合、発信装置10に対して磁石1を接近させる働きかけを行うだけで、所定の信号を発信することができる。したがって、乾電池や商用電源を必要とせず、いかなる場所でも使用することができる。
【0022】
次に、本発明の信号発信システムの第2の実施形態を、図3を参照して説明する。
本実施形態の信号発信システムは、図3に示すように、磁石1と、発信装置100とを備えている。発信装置100は、信号を生成する発振器(信号生成部)101と、発振器101によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部102と、発振器101および電波発信部102に供給すべき電力を発生する太陽電池103と、磁石1を接近させることにより磁石1に引き寄せられて結線し、太陽電池103から発振器101および電波発信部102への電力供給路を開くスイッチ104とを備えている。発振器101よび電波発信部102は、いずれも太陽電池103が発生した電力により駆動する。
【0023】
電波発信部102は、発振器101において生成された振動波を増幅する増幅器105と、増幅器105によって増幅された振動波を電磁波として空間に放射する送信アンテナ106とを備えている。スイッチ104は、磁性体の揺動子104aを備えている。
【0024】
上記のように構成された信号発信システムの作動の仕方について説明する。
発信装置100のスイッチ104と、磁石1とを対峙させ、磁石1をスイッチ104に接近させると、スイッチ104の揺動子104aが磁石1に引き寄せられ、電力供給回路を繋ぐ。これにより、太陽電池で発生した電力が発振器101および増幅器105に供給され、これらを駆動させる。
【0025】
発振器101は、送出すべき電波と同じ所定の周波数の電気的な振動電流(振動波)を生成する。増幅器105は、発振器13において生成された振動波を必要なだけ増幅し、送信アンテナ106に加える。送信アンテナ106は、与えられた振動波のエネルギーを電磁波(電波)として空間に放射する。送信アンテナ106から放射された電波は、図示しない受信装置の受信アンテナに受信される。
【0026】
上記のように構成された信号発信システムによれば、信号を発信させる要求がある場合、発信装置10に対して磁石1を接近させる働きかけを行うだけで、所定の信号を発信することができる。したがって、乾電池や商用電源を必要とせず、いかなる場所でも使用することができる。なお、太陽電池の発電量は日照の加減によって増減するので、発電量が少ないときに電力を補完するために、補助の電池を内蔵してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の信号発信システムは、乾電池や商用電源を必要とせず、いかなる場所でも使用することができるという利点を活かし、屋外で使用する機器(農機具や土木建設機械等)や、通常は使用されないが、かなりの長期間にわたって設置される機器(家屋の防犯センサ等)に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の信号発信システムの第1の実施形態を示す図であって、同システムを構成する発信装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の信号発信システムを構成する磁石および発信装置の外観図である。
【図3】本発明の信号発信システムの第2の実施形態を示す図であって、同システムを構成する発信装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1;磁石、10;発信装置、11;コイル、12;鉄芯、13;発振器(信号生成部)、14;電波発信部、15;定電圧化部、16;増幅器、17;送信アンテナ、18;ケース、19;キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石と;
前記磁石との距離を相対的に変化させることにより起電力を発生するコイルと、前記コイルが発生した起電力により駆動して信号を生成する信号生成部と、前記コイルが発生した起電力により駆動して、前記信号生成部によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部とを備える発信装置と;を備える信号発信システム。
【請求項2】
前記発信装置に、前記コイルを巻かれる鉄芯が設けられている請求項1記載の信号発信システム。
【請求項3】
前記発信装置に、前記コイルが発生した起電力を一定の大きさにする定電圧化部を備える請求項1記載の信号発信システム。
【請求項4】
前記磁石が、ネオジウム磁石またはフェライト磁石である請求項1記載の信号発信システム。
【請求項5】
磁束密度の変化により起電力を発生するコイルと、前記コイルが発生した起電力により駆動して信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部において生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部とを備える発信装置。
【請求項6】
磁石と;
信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部と、前記信号生成部および前記電波発信部に供給すべき電力を発生する太陽電池と、前記磁石を接近させることにより作動し、前記太陽電池から前記信号生成部および前記電波発信部への電力供給路を開くスイッチとを備える発信装置と;を備える信号発信システム。
【請求項7】
信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部によって生成された信号を電波に変換して発信する電波発信部と、前記信号生成部および前記電波発信部に供給すべき電力を発生する太陽電池と、磁石を接近させることにより前記磁石に引き寄せられて結線し、前記太陽電池から前記信号生成部および前記電波発信部への電力供給路を開くスイッチとを備える発信装置と;を備える発信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−304010(P2006−304010A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124120(P2005−124120)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000114938)ヤマト農磁株式会社 (12)
【Fターム(参考)】