説明

無線タグシステム、無線タグ

【課題】電波の届く範囲に存在する無線タグは勿論、電波の届かない範囲に存在する無線タグの識別情報を確実に取得可能とした無線タグシステム等を提供する。
【解決手段】 本発明は、固有の識別情報が記憶された複数の無線タグ10、10aと、当該無線タグ10、10aと電波を介して通信可能な無線タグ読取装置5と、を備えた無線タグシステムSにおいて、前記無線タグ読取装置5は、所定の信号を発信する信号発信手段を備え、前記無線タグ10、10aは、前記信号に基づいて自身の前記識別情報を含む電波を発信する第1の情報発信制御手段と、前記信号に応じて他の前記無線タグから発信された識別情報を受信する識別情報受信手段と、前記他の無線タグから受信した識別情報に自身の識別情報を加えた電波を発信する第2の情報発信制御手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグに記憶された識別情報を受信する無線タグシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の情報を記憶する記憶部と無線通信用の回路を備えたRFID(Radio Frequency Identification System)タグ(以下、「無線タグ」と称する。)が知られている。また、当該無線タグに自身の識別コード等の識別情報を記憶しておき、その識別情報を無線で読取装置にて受信する無線タグシステムが知られている。
【0003】
なお、RFIDタグを用いた無線タグシステムは種々存在する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−86849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の無線タグシステムにおいて、読取装置は、当該無線タグの識別情報の取得に電波などの無線を利用しているため、電波の届かない範囲に無線タグが存在している場合に、その無線タグの識別情報を取得することができなかった。
【0005】
また、電波の反射や干渉の影響を受けて、物理的には電波の届く範囲に存在する無線タグの識別情報が読取装置によって取得できないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は上記各問題点の解決を課題の一例としてなされたものであり、電波の届く範囲に存在する無線タグは勿論、電波の届かない範囲に存在する無線タグの識別情報を確実に取得可能とした無線タグシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、固有の識別情報が記憶された複数の無線タグと、当該無線タグと電波を介して通信可能な無線タグ読取装置と、を備えた無線タグシステムにおいて、前記無線タグ読取装置は、所定の信号を発信する信号発信手段を備え、前記無線タグは、前記信号に基づいて自身の前記識別情報を含む電波を発信する第1の情報発信制御手段と、前記信号に応じて他の前記無線タグから発信された識別情報を受信する識別情報受信手段と、前記他の無線タグから受信した識別情報に自身の識別情報を加えた電波を発信する第2の情報発信制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、無線タグ読取装置と無線タグにおける情報の通信は勿論、無線タグ同士の情報の通信が可能である。
【0009】
従って、無線タグ読取装置は、無線タグ読取装置の電波範囲外に存在する他の無線タグの情報も、前記他の無線タグが当該無線タグ読取装置の電波範囲内に存在する無線タグの電波範囲内に配置されていれば、前記無線タグを介して、情報を受信することが可能である。また、1の無線タグと無線タグ読取装置間で通信不能な場合でも、他の無線タグを介して、1の無線タグと通信することが可能である。
【0010】
請求項2に記載の無線タグシステムは、請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、前記無線タグは、前記他の無線タグから発信される識別情報を記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする。この発明によれば、他の無線タグの情報を記憶することが可能である。
【0011】
また、請求項3に記載の無線タグシステムは、請求項1、又は2に記載の無線タグシステムいおいて、前記無線タグ読取装置から発信される信号に含まれる特定のコマンドを検出する特定コマンド検出手段を更に備え、前記第1の情報発信手段は、前記特定のコマンドを検出した時に前記特定のコマンドとともに自身の識別情報を含む電波を発信することを特徴とする。この発明によれば、特定のコマンドを検出したときのみ、無線タグ読取装置に識別情報を送信するようになっており、無駄な通信を行わないようにすることが可能である。
【0012】
また、請求項4に記載の無線タグは、固有の識別情報が記憶された複数の無線タグと、当該無線タグと電波を介して通信可能な無線タグ読取装置と、を備え、前記無線タグ読取装置は、所定の信号を発信する信号発信手段を備える無線タグシステムにおける無線タグであって、前記信号に基づいて自身の前記識別情報を含む電波を発信する第1の情報発信制御手段と、前記信号に応じて他の前記無線タグから発信された識別情報を受信する識別情報受信手段と、前記他の無線タグから受信した識別情報に自身の識別情報を加えた電波を発信する第2の情報発信制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、無線タグ読取装置と無線タグにおける情報の通信は勿論、無線タグ同士の情報の通信が可能である。
【0014】
従って、無線タグ読取装置は、無線タグ読取装置の電波範囲外に存在する他の無線タグの情報も、前記他の無線タグが当該無線タグ読取装置の電波範囲内に存在する無線タグの電波範囲内に配置されていれば、前記無線タグを介して、情報を受信することが可能である。また、1の無線タグと無線タグ読取装置間で通信不能な場合でも、他の無線タグを介して、1の無線タグと通信することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、無線タグシステムの無線タグは、無線タグ読取装置から発信される信号に基づいて自身の識別情報を発信し、他の無線タグから発信された識別情報を受信したときには、前記他の無線タグを識別する識別情報とともに自身の前記識別情報を発信するため無線タグ読取装置は、電波範囲外に存在する無線タグの識別情報を読み取ることが可能となり、読取り範囲を容易に拡大することが可能である。また、各無線タグが相互に他の無線タグの識別情報を送受信できるため、無線タグ読取装置は、確実に無線タグの識別情報を読み取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願の最良の実施形態について詳細に説明する。
−第1実施形態−
まず、第1実施形態の無線タグシステムについて図1乃至図3を用いて説明する。図1は無線タグシステムの全体構成図、図2は無線タグの構成図、図3は無線タグシステムの動作例を示すフローチャート図である。
【0017】
図1に示すように、無線タグシステムSは、所定帯域の電波を発信可能な無線タグ読取装置5と、当該所定帯域の電波を受信可能な無線タグ10、10aと、を備えて構成されている。なお、本実施形態では、この無線タグ10は、無線タグ読取装置5から発信される電波の届く電波範囲H内に設けられ、無線タグ10aは、前記電波範囲H外であって、前記無線タグ10の電波範囲H1内に設けられているものとする。
【0018】
図2に示すように、無線タグ10、10aは、所定帯域の電波を発信又は受信可能な無線通信用のアンテナ部12と、所定の情報を記憶する記憶部14と、制御部16と、を備えている。
【0019】
記憶部14には、自身の識別コード(ID番号など)を示す固有の識別情報を記憶する領域と、その他の情報(例えば、アンテナ部12を介して受信した他の無線タグの識別情報や所定の書込装置を介して入力された種々の情報など)を記憶する領域と、を有している。
【0020】
制御部16は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、無線タグ10、10aの各部12、14を統括的に制御するものであって、本願の第1の情報発信制御手段、識別情報受信手段、記憶手段、第2の情報発信制御手段、及び特定コマンド検出手段として機能するようになっている。なお、制御部は、アンテナ部を介して受信した電波を用いて起動される。
【0021】
この制御部16は、外部から発信された電波をアンテナ部12を介して受信し、その電波に重畳された信号に基づいて記憶部14に記憶された所定の情報をアンテナ部12を介して電波に重畳して発信する。また、制御部16は、外部から発信された電波をアンテナ部12を介して受信し、その電波に重畳された信号に含まれる所定の情報を記憶部14に記憶する。
【0022】
なお、無線タグ10、10aは、数cm程度程度の大きさを有し、その形状は、ラベル、カード、コイン、スティック型など様々であり、用途に応じて適宜選択することが可能である。また、通信距離もそのアンテナ形状などで異なり、数mm程度〜数m有する。
【0023】
一方、無線タグ読取装置5は、図示しないが、例えば、所定の信号を重畳した電波を発信する発信部と、無線タグ10から発信される電波を受信する受信部と、制御部と、を備えている。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、各部を統括的に制御する。
【0024】
この制御部は、電波範囲内に存在する無線タグ10に対して所定の信号を重畳した電波を発信する。また、その信号に応じて当該無線タグ10から発信された電波を受信し、その電波に重畳された信号に含まれる所定の情報(たとえば、識別情報など)を読み取る。
【0025】
ここで、このような無線タグシステムにおいて、無線タグ読取装置が無線タグから識別情報を受け取る情報受信動作について図3を用いて詳述する。なお、以下の説明に示す「コマンド」とは、電波を受信した無線タグ10、10aが実行する何らかの処理を意味するものである。具体的には、例えば、無線タグ10、10aの固有の識別情報を取得するコマンド(以下、「タグ取得コマンド」と称する)であって、当該コマンドの種類は複数あるものとする。また、以下の説明において、理解し易いように、一例として図1に対応する符号を付するものとする。
【0026】
まず、無線タグ読取装置5は、所定のコマンドを有する信号が重畳された電波を発信する(ステップS11)。当該電波は所定の電波範囲H内に発信され、当該電波範囲H内に存在する無線タグ10によって受信される(ステップS12)。
【0027】
無線タグ10のアンテナ部12は、この電波の受信によって、制御部16を起動する(ステップS13)。無線タグ10の制御部16は、電波に含まれる信号を解析し、コマンドを取得する(ステップS14)。また、無線タグ10の制御部16は、受信した信号に無線タグ固有の識別情報が含まれているか否かを判断し(ステップS15)、この判断が肯定されれば、次のステップS16に進み、否定されれば、ステップS17に進む。
【0028】
ステップS16では、無線タグ10の制御部16は、信号に含まれる識別情報を記憶部14に書き込む。
【0029】
次に、ステップS17では、無線タグ10の制御部16は、コマンドの種類がタグ取得コマンドであるか否かを判断する。この判断が肯定されれば、ステップS19に進み、否定されれば、制御部は取得したコマンドを実行し(ステップS18)、処理を終了する。
【0030】
次に、ステップS19では、無線タグ10の制御部16は、記憶部14に書き込まれている識別情報を取得し、アンテナ部12を介して当該識別情報とタグ取得コマンドを含む信号を電波に重畳し発信する(ステップS20)。この時、記憶部14に他の無線タグ10aの識別情報が記憶されている場合には、当該無線タグ10の識別情報とタグ取得コマンドに、他の無線タグ10aの識別情報を加えた信号を電波に重畳して発信する。
【0031】
次に、送信された電波の範囲H1内に存在する他の無線タグ10a又は無線タグ読取装置5が当該電波を受信し(ステップS21)、ステップS3に戻る。なお、電波の範囲H1内に他の無線タグ10aが存在しなければ、終了することとなる。
【0032】
このように動作する無線タグシステムSによれば、図1に示すように、無線タグ読取装置5から所定の信号(例えば、タグ取得コマンド)が重畳された電波を発信すると、その電波範囲に存在する無線タグ10は、当該電波を受信し、その電波に重畳された信号に応じて自身の識別情報をその信号とともに電波に重畳して発信する。無線タグ10から発信された電波は、無線タグ読取装置5、及び電波が届く範囲H1に設けられている他の無線タグ10aで受信され、無線タグ読取装置5では、その電波に重畳された無線タグ10の識別情報が読み取られる。
【0033】
一方、他の無線タグ10aでは、その電波に重畳された信号に応じて自身の識別情報をその信号及び無線タグ10の識別情報とともに電波に重畳して発信する。他の無線タグ10aから発信された電波は、無線タグ10を介して、無線タグ読取装置5で受信される。すなわち、無線タグ読取装置5では、無線タグ10及び他の無線タグ10aの識別情報が読み取られる。
【0034】
このように、本実施形態の無線タグシステムSによれば、無線タグ読取装置5が発信する電波の電波範囲外に存在する他の無線タグ10aの識別番号が、電波範囲H内に存在する無線タグ10を介して無線タグ読取装置5に送信されるため、当該無線タグ読取装置5は、電波範囲H外の無線タグ10aの識別情報も取得可能となっている。よって、無線タグ読取装置5が読み取ることができる無線タグ10の範囲を容易に拡大することが可能となる。
【0035】
−第2実施形態−
本実施形態は、無線タグが電源部17を備えている点で第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同一箇所には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0036】
本実施形態の無線タグシステムにおける無線タグは、図4に示すように、アンテナ部12と、記憶部14と、制御部16と、当該制御部16に電力を供給する電源部17と、を備えている。電源部17は、制御部16に電力を逐次供給するものである。当該電源部17の電力は、各部12、14を最低限起動するための電力を有しており、当該電源部17を備えていない無線タグと比較して強い信号を発信可能となる。これにより、電波の届く範囲が拡大されることとなり、複数の無線タグを検出可能となっている。
【0037】
−第3実施形態−
本実施形態は、無線タグ読取装置5の電波の届く電波範囲H内に複数の無線タグ10、10bが配置されている点で第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同一箇所には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0038】
本実施形態の無線タグシステムS2は、図5に示すように、無線タグ読取装置5の電波の届く電波範囲H内に複数の無線タグ10、10bが配置されているため、各無線タグ10、10bが、無線タグ読取装置5から発信される信号を受信する。また、無線タグ10、10b間でも、情報の送受信がされるため、例えば、無線タグ読取装置5と1の無線タグ10間で何らかの電波障害があったとしても、他の無線タグ10bを介して、1の無線タグ10の識別情報が無線タグ読取装置5に発信される。よって、無線タグ読取装置5の無線タグ10、10bの検出率が向上する。
【0039】
なお、上記実施形態は一形態であって、この形態に限定されるものではなく、種々の態様で適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態における無線タグシステムの全体構成図である。
【図2】第1実施形態における無線タグの構成図である。
【図3】第1実施形態における無線タグシステムの動作例を示すフローチャート図である。
【図4】第2実施形態における無線タグの構成図である。
【図5】第3実施形態における無線タグシステムの全体構成図である。
【符号の説明】
【0041】
S 無線タグシステム
H、H1 電波範囲
5 無線タグ読取装置
10、10a 無線タグ
16 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の識別情報が記憶された複数の無線タグと、当該無線タグと電波を介して通信可能な無線タグ読取装置と、を備えた無線タグシステムにおいて、
前記無線タグ読取装置は、
所定の信号を発信する信号発信手段を備え、
前記無線タグは、
前記信号に基づいて自身の前記識別情報を含む電波を発信する第1の情報発信制御手段と、
前記信号に応じて他の前記無線タグから発信された識別情報を受信する識別情報受信手段と、
前記他の無線タグから受信した識別情報に自身の識別情報を加えた電波を発信する第2の情報発信制御手段と、
を備えていることを特徴とする無線タグシステム。
【請求項2】
前記無線タグは、前記他の無線タグから発信される識別情報を記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする無線タグシステム。
【請求項3】
前記無線タグ読取装置から発信される信号に含まれる特定のコマンドを検出する特定コマンド検出手段を更に備え、
前記第1の情報発信手段は、前記特定のコマンドを検出した時に前記特定のコマンドとともに自身の識別情報を含む電波を発信することを特徴とする請求項1、又は2に記載の無線タグシステム。
【請求項4】
固有の識別情報が記憶された複数の無線タグと、当該無線タグと電波を介して通信可能な無線タグ読取装置と、を備え、前記無線タグ読取装置は、所定の信号を発信する信号発信手段を備える無線タグシステムにおける無線タグであって、
前記信号に基づいて自身の前記識別情報を含む電波を発信する第1の情報発信制御手段と、
前記信号に応じて他の前記無線タグから発信された識別情報を受信する識別情報受信手段と、
前記他の無線タグから受信した識別情報に自身の識別情報を加えた電波を発信する第2の情報発信制御手段と、
を備えていることを特徴とする無線タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−218654(P2009−218654A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57291(P2008−57291)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】