説明

無線タグ

【課題】リーダライタから送信される交流送信信号を交流受信信号として受信する発光ダイオードを備えた無線タグにおいて、その交流受信信号が微弱信号であった場合でも、発光ダイオードを発光させることができる無線タグを提供すること。
【解決手段】無線タグの電源2115を、倍圧整流回路が単数又は複数接続されたN倍圧整流回路2115aで構成する。こうすることにより、交流受信信号が微弱信号であったとしても、その交流受信信号から得られる受信時交流電圧を電源2115によって、昇圧され且つ整流されるので、発光ダイオードを発光させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを備えた無線タグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば複数の物品が近接した場所に位置している場合に、その中からユーザが所望する物品を検索するために、各物品に発光ダイオードを備えた無線タグを装着して、リーダ/ライタと各無線タグとの間で無線通信を行って、ユーザが所望する物品に装着された無線タグの発光ダイオードを発光させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
具体的には、ユーザはリーダ/ライタを用いて、検索したい無線タグのIDコードを示す検索IDコードを含む電波(以下、リーダ/ライタから送信される電波を交流送信信号と言う。) を外部に送信して、各無線タグにその交流送信信号を交流受信信号として受信させる。各無線タグには、自身を識別するためのIDコードである記憶IDコードが記憶されている。そして、各無線タグは、交流受信信号に含まれている検索IDコードと自身に記憶されている記憶IDコードとが所定の関係を満たしているか否かの照合可否判定を行い、照合可の場合には、自身に備えられている発光ダイオードを発光させ、照合否の場合は発光させない。その結果、ユーザは発光されている無線タグ、すなわち、ユーザが所望する物品を容易に検索することができる。
【特許文献1】特開2006−24018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記交流送信信号は伝搬する距離が長くなるほど減衰していく。すなわち、リーダ/ライタと無線タグとの間の距離が長くなるほど、無線タグが受信する上記交流受信信号は微弱信号となる。また、電力抑制の観点から、又は電波の混信を抑制する観点からあえて上記交流送信信号を微弱信号にする場合もある。この場合、交流送信信号が微弱信号なので、交流受信信号はさらに微弱信号となる。
【0005】
一方、発光ダイオードを駆動するのに必要な所定駆動電圧は交流受信信号から得られる受信時交流電圧よりも大きくなっている。したがって、リーダ/ライタと無線タグとの間の距離が長いことにより、又は交流送信信号が微弱信号であることにより、交流受信信号が微弱信号となった場合には、発光ダイオードを発光させることができないことがある。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、発光ダイオードを備えた無線タグにおいて、交流受信信号が微弱信号であった場合でも、発光ダイオードを発光させることができる無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の無線タグは、交流送信信号を外部に送信するリーダ/ライタとの間で無線通信を行う無線タグであって、前記リーダ/ライタから送信された前記交流送信信号を交流受信信号として受信する受信アンテナと、前記交流受信信号から得られる交流電圧を示す受信時交流電圧よりも大きい所定駆動電圧が順方向に印加されたときに発光する発光ダイオードと、前記受信アンテナに接続され、前記受信アンテナが受信した前記交流受信信号から得られる前記受信時交流電圧が前記所定駆動電圧以上となるように、その受信時交流電圧を昇圧するとともに直流電圧に整流する昇圧整流回路と、前記昇圧整流回路によって昇圧され且つ直流電圧に整流された昇圧整流電圧の少なくとも一部が充電される充電回路と、前記充電回路と前記受信アンテナとの間に接続され、前記昇圧整流電圧が前記受信アンテナ側に放電されるのを抑制して、前記充電回路に充電される充電電圧が前記所定駆動電圧以上となるように、前記昇圧整流電圧を前記充電回路に伝達させる伝達回路と、前記充電回路に充電されている充電電圧が前記発光ダイオードの順方向に印加されるように、その充電電圧を放電する充電電圧放電手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の無線タグは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記交流送信信号には、ユーザが検索したい無線タグのIDコードを示す検索IDコードが含まれており、前記無線タグは、記憶IDコードを記憶するIDコード記憶手段と、前記受信アンテナが受信した前記交流受信信号に含まれる前記検索IDコードと前記IDコード記憶手段に記憶されている前記記憶IDコードとが所定の関係を満たすか否かの照合可否判定をする照合可否判定手段とを有し、前記充電電圧放電手段は、前記照合可否判定手段によって、照合否と判定された場合には、前記充電電圧の放電を中止することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の無線タグは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記昇圧整流回路は、ダイオードとコンデンサとを用いて構成された、入力交流電圧を略2倍にして且つ直流電圧に整流して出力する倍圧整流回路を単数又は複数接続した回路であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の無線タグは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の構成に加え、前記充電回路に、前記昇圧整流電圧が徐々に充電されていき、前記充電電圧放電手段は、前記充電電圧が前記所定駆動電圧以上になった以降の、所定のタイミングで前記充電電圧を放電することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の無線タグは、請求項4に記載の発明の構成に加え、前記充電電圧放電手段は、前記充電電圧の値を監視して、前記充電電圧の値が前記所定駆動電圧に達したタイミングで前記充電電圧を放電することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の無線タグは、請求項4に記載の発明の構成に加え、前記受信アンテナが前記交流受信信号を受信した時間を基準として、前記充電電圧が前記所定駆動電圧になると予想される予想充電時間が予め定められており、前記充電電圧放電手段は、前記予想充電時間のタイミングで前記充電電圧を放電することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7の無線タグは、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の構成に加え、前記伝達回路が抵抗素子であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8の無線タグは、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の構成に加え、前記昇圧整流回路は、前記受信時交流電圧を徐々に昇圧し、前記伝達回路は、両端に所定ツェナ電圧以上の電圧が印加されたときに導通するツェナダイオードと、前記昇圧整流回路と前記充電回路の間に接続され、電流の導通/遮断を制御するとともに入力電流を増幅するトランジスタとを有し、前記昇圧整流回路によって徐々に昇圧された電圧が前記ツェナ電圧以上となったときに、前記トランジスタが導通するように、前記ツェナダイオードと前記トランジスタが接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の無線タグによれば、交流受信信号から得られる交流電圧を示す受信時交流電圧のよりも大きい所定駆動電圧が順方向に印加されたときに発光する発光ダイオードを備えている。また、昇圧整流回路は、受信アンテナが受信した交流受信信号から得られる受信時交流電圧が所定駆動電圧以上となるように、その受信時交流電圧を昇圧するとともに直流電圧に整流する。そして、その昇圧整流電圧の少なくとも一部は充電回路に充電される。この際、伝達回路によって、充電回路に充電される充電電圧は所定駆動電圧以上となる。充電電圧放電手段は、充電電圧が発光ダイオードの順方向に印加されるように、その充電電圧を放電する。
【0016】
このように、交流受信信号を受信した場合には、所定駆動電圧以上の充電電圧が発光ダイオードに印加されるので、交流受信信号が微弱信号であったとしても、発光ダイオードを発光させることができる。すなわち、リーダ/ライタと無線タグとの間の距離が長くなっても、無線タグに備えられている発光ダイオードを発光させることができるので、無線タグの使い勝手を向上できる。又は、リーダ/ライタから送信される交流送信信号が微弱信号であっても、発光ダイオードを発光させることができるので、使用電力を抑制することができる。
【0017】
また、請求項2の無線タグは、請求項1に記載の発明の効果に加え、交流送信信号には、ユーザが検索したい無線タグのIDコードを示す検索IDコードが含まれている。そして、照合可否判定手段は、受信アンテナが受信した交流受信信号に含まれる検索IDコードとIDコード記憶手段に記憶されている記憶IDコードとが所定の関係を満たすか否かの照合可否判定をする。その結果、照合否となった場合には、充電電圧放電手段は、充電電圧の放電を中止する。したがって、複数の無線タグの中から、ユーザが所望する無線タグを発見する目的のために本発明の無線タグを使用することができる。
【0018】
また、請求項3の無線タグは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、昇圧整流回路が、ダイオードとコンデンサとを用いて構成された、入力交流電圧を略2倍にして且つ直流電圧に整流して出力する倍圧整流回路が単数又は複数接続された回路であるので、簡易な構成でユーザが所望する電圧となるように受信時交流電圧を昇圧して直流電圧に整流することができる。
【0019】
また、請求項4の無線タグは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、充電電圧放電手段は、充電電圧が所定駆動電圧以上になった以降の、所定のタイミングで充電電圧を放電する。したがって、発光ダイオードの発光タイミングを制御できるので無線タグの使い勝手を向上できる。
【0020】
また、請求項5の無線タグは、請求項4に記載の発明の効果に加え、充電電圧放電手段が充電電圧の値を監視して、その充電電圧の値が所定駆動電圧に達したタイミングで充電電圧を放電するので、迅速且つ確実に発光ダイオードを発光させることができる。
【0021】
また、請求項6の無線タグは、請求項4に記載の発明の効果に加え、受信アンテナが交流受信信号を受信した時間を基準として、充電電圧が所定駆動電圧になると予想される予想充電時間が予め定められている。そして、充電電圧放電手段が、その予想充電時間のタイミングで充電電圧を放電するので、迅速に発光ダイオードを発光させることができる。
【0022】
また、請求項7の無線タグは、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、伝達回路が抵抗素子であるので、簡易な構成で、昇圧整流電圧による負荷を少なくして充電回路に充電させることができる。
【0023】
また、請求項8の無線タグは、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、昇圧整流電圧伝達回路がトランジスタとツェナダイオードとを備えた回路である。そして、昇圧整流電圧が、ツェナ電圧を超えるまでは、トランジスタは導通しないが、昇圧整流電圧がツェナ電圧を超えたときには、トランジスタは導通して、昇圧整流電圧は充電回路に伝達される。この際、トランジスタの電流増幅作用により、請求項3のように伝達回路として抵抗素子を用いたときよりも、早く所定駆動電圧以上の電圧が充電回路に充電される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る無線タグの第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の無線タグ201〜209の使用方法の一例を示した図である。同図に示すように、各無線タグ201〜209は、書籍箱20に収納されている書籍101〜109に貼付されている。また、無線タグ201〜209は、自身を識別するためのIDコードである記憶IDコードが記憶されている。さらに、各無線タグ201〜209には、発光ダイオードを備えている。一方、リーダ/ライタ10は、ユーザが所望する書籍101〜109に貼付されている無線タグ201〜209を検索するための機器である。そのリーダ/ライタ10には、ユーザが検索を所望する書籍101〜109に貼付されている無線タグ201〜209の記憶IDコードを入力する入力部11が備えられている。
【0025】
ユーザは、書籍101〜109のいずれかを検索したいときには、リーダ/ライタ10の入力部11を操作して、検索したい書籍101〜109に貼付されている無線タグ201〜209の記憶IDコードに相当する検索IDコードを入力して、送信スイッチを操作すればよい。すると、リーダ/ライタ10は、ユーザが入力した検索IDコードを含む交流送信信号50を外部に送信する。各無線タグ201〜209はその交流送信信号50を交流受信信号60として受信する。そして、各無線タグ201〜209は、交流受信信号60に含まれている検索IDコードと自身に記憶されている記憶IDコードとが一致するか否かの照合可否判定を実行する。その結果、照合可と判断された場合には、発光ダイオードを発光させ、照合否と判断された場合には、発光ダイオードを発光させない。そして、ユーザは、発光している無線タグ201〜209、すなわち、ユーザが所望する書籍101〜109を容易に発見することができる。
【0026】
次に、リーダ/ライタ10の構成について説明する。図2は、リーダ/ライタ10の電気的構成を示したブロック図である。同図に示すように、リーダ/ライタ10は、入力部11、制御部12、表示部13、電源14、変調部15、復調部16、及び送受信アンテナ17を備えている。
【0027】
入力部11は、上述したように、ユーザが所望する無線タグ201〜209の記憶IDコードに相当する検索IDコードを入力する入力スイッチと、入力スイッチにて入力した無線タグ201〜209の検索IDコードを含む交流送信信号を外部に送信するため送信指示信号を入力する送信スイッチを有している。その入力部11は制御部12に接続されており、入力部11から入力された検索IDコードや、送信指示信号は、制御部12に入力される。
【0028】
制御部12は、後述するリーダ/ライタ制御処理を実行する。この制御部12は、図示しないCPU、ROM、RAMを有している。ROMには、上記リーダ/ライタ制御処理を実行するためのプログラムが記憶されており、CPUは、このROMに記憶されているプログラムに従って、上記リーダ/ライタ制御処理を実行する。また、RAMは、リーダ/ライタ制御処理が実行される過程において、情報を一時的に記憶する役割を担っている。なお、リーダ/ライタ制御処理の詳細については、フローチャートを用いて後述する。
【0029】
表示部13は、液晶ディスプレイで構成されており、入力部11から入力された記憶IDコードを表示したり、制御部12が無線タグ201〜209からの返信信号を受信したときには、その旨を表示する。なお、表示部13として、液晶ディスプレイの代わりに、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイなどを用いてもよい。
【0030】
電源14は、制御部12に接続されており、図示しないオンオフスイッチを有している。そして、そのオンオフスイッチがユーザによって操作されてオン状態になったときには、制御部12を駆動させるために、制御部12に直流の所定電圧を供給している。一方、オンオフスイッチがユーザによって操作されてオフ状態になったときには、電源14による制御部12への電圧の供給が停止される。
【0031】
変調部15は、制御部12に接続されており、制御部12から送信される検索IDコードを外部に送信できる形式である交流送信信号50に変調して、その交流送信信号50を出力する。また、変調部15は送受信アンテナ17に接続されており、変調部15から出力された交流送信信号50は、送受信アンテナ17から外部に送信される。
【0032】
復調部16は、送受信アンテナ17に接続されており、送受信アンテナ17が受信した無線タグ201〜209からの返信信号が入力される。そして、復調部16は、その返信信号を復調して、復調後の信号を制御部12に入力する。なお、上記返信信号は、本実施形態では、交流送信信号50に含まれている検索IDコードと無線タグ201〜209に記憶されている記憶IDコードとが一致した旨を示す信号である。
【0033】
次に、無線タグ201〜209の構成について説明する。なお、無線タグ201〜209は、それぞれに記憶されている記憶IDコードのみが異なっているので、以下、代表として無線タグ201の構成について説明する。
【0034】
図3は、無線タグ201の外観図である。同図に示すように、無線タグ201は、長方形状の基板241の外周にコイル状の送受信アンテナ221が設けられている。その送受信アンテナ221にチップ211が接続されている。また、基板241には、薄膜状の発光ダイオード231が設けられている。なお、基板241は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、発光ダイオード231は有機ELである。
【0035】
図4は、無線タグ201の電気的構成を示したブロック図である。同図に示すように、無線タグ201は、送受信アンテナ221、チップ211、及び発光ダイオード231を備えている。送受信アンテナ221は、本発明の「受信アンテナ」に相当し、リーダ/ライタ10から送信された交流送信信号50を交流受信信号60として受信する。この送受信アンテナ221は、チップ211に接続されており、受信した交流受信信号60をチップ211に入力する。また、送受信アンテナ221は、チップ211から上記返信信号が送信されてきた場合には、その返信信号を外部に送信する。
【0036】
チップ211は、図4に示すように、記憶部2112、復調部2113、変調部2114、電源2115、発光ダイオード駆動ドライバ2116、及びこれらと接続された制御部2111を有している。
【0037】
記憶部2112は、本発明の「IDコード記憶手段」に相当し、記憶IDコードを記憶する。復調部2113は、送受信アンテナ221と接続されており、送受信アンテナ221から送信されてきた交流受信信号60を復調する。この復調部2113は、制御部2111と接続されており、復調後の信号を制御部2111に入力する。変調部2114は、制御部2111に接続されており、制御部2111から入力される返信信号を外部に送信できる形式に変調して、その変調後の返信信号を出力する。また、変調部2114は送受信アンテナ221に接続されており、変調部2114から出力された返信信号は、送受信アンテナ221から外部に送信される。
【0038】
電源2115は、送受信アンテナ221に接続されており、送受信アンテナ221が受信した交流受信信号60から得られる受信時交流電圧を直流電圧に整流している、そして、電源2115は、制御部2111を駆動させるために、制御部2111に接続されており、制御部2111に整流した直流電圧を供給している。また、電源2115は、後述する発光ダイオード駆動ドライバ2116を介して、発光ダイオード231のアノード端子1に接続されており、所定の条件を満たした場合には、電源2115から発光ダイオード231に直流電圧が供給される。
【0039】
図5は、電源2115の電気的構成を示したブロック図である。同図に示すように、電源2115は、ダイオードとコンデンサとを用いて構成された、入力交流電圧を略2倍にして且つ直流電圧に整流して出力する倍圧整流回路をN個(Nは正数)接続したN倍圧整流回路2115a、そのN倍圧整流回路2115aの出力端子2115bに一端が接続された抵抗素子Rl、及びその抵抗素子Rlに接続されたコンデンサCaから構成される。
【0040】
N倍圧整流回路2115aは、上述したように、倍圧整流回路をN個接続した回路であるので、入力交流電圧を略N倍にして且つ直流電圧に整流して出力する。したがって、N倍圧整流回路2115aは、送受信アンテナ221が受信した交流受信信号60から得られる受信時交流電圧を略N倍にして且つ直流電圧に整流して出力する。この出力電圧が、後述する発光ダイオード231の駆動電圧以上となるように、倍圧整流回路の接続段数Nが定められている。このように、N倍圧整流回路2115aは、送受信アンテナ221が受信した交流受信信号60から得られる受信時交流電圧が発光ダイオード231の駆動電圧以上となるように、その受信時交流電圧を昇圧するとともに直流電圧に整流しているので、本発明の「昇圧整流回路」に相当する。
【0041】
N倍圧整流回路2115aで整流された直流電圧の一部は、抵抗素子Rlを介して、コンデンサCaに充電される。したがって、コンデンサCaは、本発明の「充電回路」に相当する。また、抵抗素子Rlは、コンデンサCaに充電された充電電圧が送受信アンテナ221側に放電されるのを抑制している。さらに、コンデンサCaに充電される充電電圧が発光ダイオード231の駆動電圧以上となるように、抵抗素子Rlは、N倍圧整流回路2115aで整流された直流電圧をコンデンサCaに伝達している。したがって、抵抗素子Rlは、本発明の「伝達回路」に相当する。なお、N倍圧整流回路2115aは、受信時交流電圧を徐々に昇圧して整流するので、コンデンサCaには電圧が徐々に充電されていく。
【0042】
図4の説明に戻って、発光ダイオード駆動ドライバ2116は、電界効果トランジスタであり、ゲート端子が制御部2111と接続されており、ソース端子が電源2115に接続されており、ドレイン端子が発光ダイオード231のアノード端子1に接続されている。この発光ダイオード駆動ドライバ2116は、スイッチング素子の役割を担っており、制御部2111から高レベル信号がゲート端子に入力されたときには、ソース−ドレイン間が導通して、制御部2111から低レベル信号がゲート端子に入力されたときには、ソース−ドレイン間は遮断する。本実施形態では、通常時は、制御部2111から低レベル信号(0V)が入力されている。すなわち、通常時は、発光ダイオード駆動ドライバ2116は遮断状態となっている。
【0043】
制御部2111は、後述する無線タグ制御処理を実行する。また、制御部2111は、電源2115から供給される電圧値を監視している。この制御部2111は、CPU2111a、ROM2111b、RAM2111cを有している。ROM2111bには、上記無線タグ制御処理を実行するためのプログラムが記憶されており、CPU2111aは、このROM2111bに記憶されているプログラムに従って、上記無線タグ制御処理を実行する。また、RAM2111cは、無線タグ制御処理が実行される過程において、情報を一時的に記憶する役割を担っている。
【0044】
発光ダイオード231は、上述したように、有機ELであり、アノード端子1が発光ダイオード駆動ドライバ2116のドレイン端子に接続されており、カソード端子2がグランドに接続されている。この発光ダイオード231は、アノード−カソード間に所定駆動電圧以上の電圧が印加されたときに発光する。
【0045】
図6は、発光ダイオード231を基板241に設ける工程を説明するための図である。同図に示すように、発光ダイオード231は、アノード端子1、カソード端子2、陽極231a、陰極231b、発光層231c、絶縁層231d、及び陰極支持ラミネートフィルム231eを有している。このように構成される発光ダイオード231をPETフィルムである基板241に設けるには、アノード端子1として、Cuなどの金属をエッチング若しくはスクリーン印刷する。同様に、カソード端子2として、Cuなどの金属をエッチング若しくはスクリーン印刷する。次いで、陽極231aとして、ITO(Indium Tin Oxide)をスクリーン印刷若しくはインクジェット印刷する。次いで、発光層231cとして、PPV、PF、PVK等をスクリーン印刷若しくはインクジェット印刷する。次いで、絶縁層231dをスクリーン印刷若しくはインクジェット印刷によって形成する。陰極231bは、陰極支持ラミネートフィルム231eに蒸着によって予め形成されている。最後に、この陰極231bが形成された陰極支持ラミネートフィルム231eを熱により圧着する。なお、陰極231bには、Alを用いる。また、陰極支持ラミネートフィルム231eには、PETなどのプラスチックを用いる。このように、印刷技術を用いることにより、低コストで発光ダイオード231を形成することができる。
【0046】
なお、チップ211と送受信アンテナ221は、発光ダイオード231を基板241に形成してから、基板241に設置する。
【0047】
次に、リーダ/ライタ10の制御部12が実行する上記リーダ/ライタ制御処理について、図7のフローチャートに基づいて説明する。このリーダ/ライタ制御処理は、電源14のオンオフスイッチがオン状態になったときに開始され、それ以降、一定期間おきに実行される。
【0048】
先ず、ステップS11では、ユーザによって入力部11が有している入力スイッチが操作されて、検索IDコードが入力されたか否かを判定する。ここで、検索IDコードが入力された場合には、処理をステップS12へ進め、検索IDコードが入力されていない場合には、このフローチャートを抜ける。
【0049】
ステップS12では、入力部11が有している送信スイッチが操作されたか否かを判定する。これは、入力部11から送信指示信号が入力されたか否かで判断する。ここで、入力部11が有している送信スイッチが操作された場合、処理をステップS13へ進め、入力部11が有している送信スイッチが操作されていない場合は、再度、本ステップを実行する。
【0050】
ステップS13では、検索IDコードを外部に送信する。具体的には、検索IDコードを変調部15に入力する。変調部15では、入力された検索IDコードを外部に送信できる形式の信号である交流送信信号50に変調し、その交流送信信号50を送受信アンテナ17から外部に送信する。
【0051】
続くステップS14では、無線タグ201〜209からの返信信号を受信したか否かを判定する。具体的には、無線タグ201〜209が返信信号を外部に送信した場合には、その返信信号を送受信アンテナ17が受信する。そして、送受信アンテナ17で受信された返信信号は、復調部16へ入力される。復調部16へ入力された返信信号は、復調され、その復調後の返信信号が制御部12に入力される。したがって、制御部12は、復調部16から返信信号の入力があるか否かで、無線タグ201〜209からの返信信号を受信したか否かを判定する。ここで、無線タグ201〜209からの返信信号を受信した場合は、処理をステップS15へ進め、無線タグ201〜209からの返信信号を受信していない場合は、このフローチャートを抜ける。この場合、ステップS13において送信した交流送信信号50を無線タグ201〜209が受信していないか、受信していたとしても、照合可否判定において、照合否となった場合が考えられる。交流送信信号50を無線タグ201〜209が受信していない場合には、もう少し、リーダ/ライタ10を無線タグ201〜209に近づけて、交流送信信号50を送信する必要がある。また、照合可否判定において、照合否となった場合は、他の無線タグが貼付されている書籍に向けて、交流送信信号50を送信する必要がある。
【0052】
ステップS15では、ステップS13において送信した交流送信信号50に含まれている検索IDコードと無線タグ201〜209に記憶されている記憶IDコードとが一致した旨を表示部13に表示して報知する。例えば、「照合可となりました」等の表示をする。その後、このフローチャートを終了する。一方、無線タグ201〜209からの返信信号を受信していない場合(ステップS14否定判定)は、報知されないことになる。
【0053】
続いて、無線タグ201の制御部2111が有しているCPU2111aが実行する上記無線タグ制御処理について、図8のフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、上記交流受信信号60を受信したときに開始される。
【0054】
先ず、ステップS21では、検索IDコードを受信する。具体的には、送受信アンテナ221で受信された交流受信信号60は復調部2113に入力される。復調部2113では、入力された交流受信信号60を検索IDコードに復調して、その検索IDコードをCPU2111aに入力する。
【0055】
続くステップS22では、入力された検索IDコードと記憶部2112に記憶されている記憶IDコードとを照合する。続くステップS23では、ステップS22における照合の結果、検索IDコードと記憶IDコードとが一致していたか否かを判定する。なお、ステップS22及びステップS23は、本発明の「照合可否判定手段」に相当する。ここで、検索IDコードと記憶IDコードとが一致していた場合は、処理をステップS24へ進み、検索IDコードと記憶IDコードとが一致していない場合は、このフローチャートを抜ける。この場合、電源2115のコンデンサCaに充電されている充電電圧は発光ダイオード231に放電されないので、発光ダイオード231は発光しないことになる。なお、本実施形態では、ステップS23において、検索IDコードと記憶IDコードとが一致しているか否かを判定しているが、検索IDコードと記憶IDコードとが所定の関係を満たしているか否かを判定するようにしてもよい。
【0056】
ステップS24では、電源2115を構成しているコンデンサCaに発光ダイオード231を発光させるのに必要な駆動電圧が充電されているか否かを判定する。これは、電源2115から入力される電圧(コンデンサCaに充電されている充電電圧)の値に基づいて判定する。ここで、コンデンサCaに上記駆動電圧が充電されている場合は、処理をステップ25へ進み、未だコンデンサCaに上記駆動電圧が充電されていない場合は、再度、本ステップを実行する。
【0057】
ステップS25では、発光ダイオード駆動ドライバ2116が導通状態となるように、発光ダイオード駆動ドライバ2116のゲート端子に高レベルの信号である放電指示信号を入力する。その結果、発光ダイオード駆動ドライバ2116のソース−ドレイン間が導通して、電源2115のコンデンサCaに充電されている充電電圧が発光ダイオード231のアノード−カソード間に印加される。そして、発光ダイオード231は発光する。これにより、ユーザは、発光ダイオード231が発光しているのを視認すると、自身が検索している書籍101を書籍箱20の中から発見することができる。
【0058】
なお、ステップS23肯定判定・ステップS24肯定判定・ステップS25を実行するCPU2111aと発光ダイオード駆動ドライバ2116の構成、及び、ステップS23を否定判定するCPU2111aと発光ダイオード駆動ドライバ2116の構成は、本発明の「充電電圧放電手段」に相当する。
【0059】
続くステップS26では、検索IDコードと記憶IDコードとが一致した旨を示す返信信号を外部に送信する。具体的には、その返信信号を変調部2114に入力する。変調部2114は、入力された返信信号を外部に送信可能な形式に変調して、その変調後の返信信号を送受信アンテナ221から外部に送信する。その後、この返信信号を受信したリーダ/ライタ10は、上述したように、表示部13に、例えば、「照合可となりました」等の表示をする。そして、このフローチャートを終了する。
【0060】
以上、本実施形態の無線タグ201では、リーダ/ライタ10から送信された検索IDコードを含む交流送信信号50を交流受信信号60として受信する。この際、電源2115は、N倍圧整流回路2115aを有しているので、交流受信信号60から得られる受信時交流電圧を略N倍にして、且つ、直流電圧に整流して出力する。この出力電圧が、発光ダイオード231の駆動電圧以上となるように、倍圧整流回路の接続段数Nが定められている。したがって、交流受信信号60が微弱信号であったとしても、電源2115によって、昇圧されて整流されるので、検索IDコードと記憶IDコードとが一致している場合は、発光ダイオード231を発光させることができる。これにより、リーダ/ライタ10と無線タグ201との間の距離が長くなっても、無線タグ201に備えられている発光ダイオード231を発光させることができるので、無線タグ201の使い勝手を向上できる。又は、リーダ/ライタ10から送信される交流送信信号50が微弱信号であっても、発光ダイオード231を発光させることができるので、使用電力を抑制することができる。
【0061】
また、発光ダイオード231を、印刷によって、基板241に形成しているので、低コスト化を図ることができる。
【0062】
また、制御部2111のCPU2111aは、電源2115のコンデンサCaに充電されている充電電圧の値を監視し、その値が、検索IDコードと記憶IDコードとが一致したとの判定後の、発光ダイオード231の駆動電圧に達したタイミングで、発光ダイオード駆動ドライバ2116のゲート端子に放電指示信号を入力している。これにより、迅速、且つ、確実に発光ダイオード231を発光させることができる。
【0063】
また、電源2115において、N倍圧整流回路2115aとコンデンサCaとの間に抵抗素子Rlが接続されている。これにより、簡易な構成で、コンデンサCaに充電された充電電圧が送受信アンテナ221側に放電されるのを抑制することができる。さらに、コンデンサCaに充電される充電電圧が発光ダイオード231の駆動電圧以上となるように、N倍圧整流回路2115aで整流された直流電圧を、効率よくコンデンサCaに伝達することができる。
【0064】
また、本発明の「昇圧整流回路」として、ダイオードとコンデンサとを用いて構成された、入力交流電圧を略2倍にして且つ直流電圧に整流して出力する倍圧整流回路が単数又は複数接続されたN倍圧整流回路2115aを採用しているので、簡易な構成でユーザが所望する電圧となるように受信時交流電圧を昇圧して直流電圧に整流することができる。
なお、無線タグ201以外の無線タグ202〜209も、記憶IDコード以外は無線タグ201と構成は同じなので、無線タグ201と同じ効果を得ることができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の無線タグの第2実施形態について説明する。本実施形態の無線タグの使用方法について、第1実施形態と同様に、複数の書籍にそれぞれ記憶IDコードが異なる無線タグを貼付する。そして、ユーザは、所望する書籍を発見するために、リーダ/ライタを用いて、所望する書籍に貼付されている無線タグを発光させる。
【0066】
図9は、本実施形態の無線タグ251の電気的構成を示したブロック図である。なお、上記第1実施形態と同一の機能を有するものは同一の符号を付している。同図に示すように、本実施形態の無線タグ251は、第1実施形態の無線タグ201〜209と制御部2117が異なるだけで、他の構成は同じである。また、リーダ/ライタ10の構成は第1実施形態と第2実施形態とで同じである。なお、無線タグ251は、書籍151に貼付されるものとする。以下、本実施形態の無線タグ251を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0067】
制御部2117は、第1実施形態と同様に無線タグ制御処理を実行するが、その内容が第1実施形態のそれとは異なっている。その関係から、本実施形態では、制御部2117は、電源2115から供給される電圧値を監視していない。本実施形態における無線タグ制御処理については、フローチャートを用いて後述する。この制御部2117は、CPU2117a、ROM2117b、RAM2117cを有している。ROM2117bには、上記無線タグ制御処理を実行するためのプログラムが記憶されており、CPU2117aは、このROM2117bに記憶されているプログラムに従って、上記無線タグ制御処理を実行する。また、RAM2117cは、無線タグ制御処理が実行される過程において、情報を一時的に記憶する役割を担っている。
【0068】
なお、コンデンサCaの容量、及び、抵抗素子Rlの値から、送受信アンテナ221が交流受信信号60を受信した時間を基準として、電源2115のコンデンサCaに充電される充電電圧が発光ダイオード231の駆動電圧になると予想される予想充電時間を予め定めることができる。そして、ROM2117bにはその予想充電時間が記憶されており、無線タグ制御処理が実行される過程において、その予想充電時間が参照されることになる。
【0069】
続いて、CPU2117aが実行する無線タグ制御処理について、図10に基づいて説明する。このフローチャートは、上記交流受信信号60を受信したときに開始される。なお、第1実施形態と同一の処理については同一の符号を付している。
【0070】
先ずステップS21では検索IDコードを受信する。続くステップS31では、上記予想充電時間を計測するために、時間の計測を開始する。続くステップS22では、入力された検索IDコードと記憶部2112に記憶されている記憶IDコードとを照合する。続くステップS23では、その照合の結果、検索IDコードと記憶IDコードとが一致しているか否かを判定する。ここで、検索IDコードと記憶IDコードとが一致している場合は、処理をステップS32へ進め、検索IDコードと記憶IDコードとが一致していない場合は、このフローチャートを抜ける。この場合、発光ダイオード231は発光しないことになる。
【0071】
ステップS32では、上記ステップS31にて計測開始された計測時間が上記予想充電時間を経過したか否かを判定する。ここで、予想充電時間を経過した場合には、処理をステップS25へ進め、未だ予想充電時間を経過していない場合には、再度本ステップを実行する。
【0072】
ステップS25では、発光ダイオード駆動ドライバ2116が導通状態となるように、発光ダイオード駆動ドライバ2116のゲート端子に高レベルの信号である放電指示信号を入力する。その結果、発光ダイオード駆動ドライバ2116のソース−ドレイン間が導通して、電源2115のコンデンサCaに充電されている充電電圧が発光ダイオード231のアノード−カソード間に印加される。この充電電圧は、およそ発光ダイオード231の駆動電圧と等しくなっている。したがって、発光ダイオード231は発光する。これにより、ユーザは、発光ダイオード231が発光しているのを視認すると、自身が検索している書籍151を書籍箱の中から発見することができる。
【0073】
なお、ステップS23肯定判定・ステップ32肯定判定・ステップS25を実行するCPU2111aと発光ダイオード駆動ドライバ2116の構成、及び、ステップS23を否定判定するCPU2111aと発光ダイオード駆動ドライバ2116の構成は、本発明の「充電電圧放電手段」に相当する。
【0074】
続くステップS26では、検索IDコードと記憶IDコードとが一致した旨を示す返信信号を外部に送信する。そして、このフローチャートを終了する。
【0075】
以上、本実施形態の無線タグ251において、ROM2117bには予想充電時間が記憶されており、無線タグ制御処理が実行される過程において、その予想充電時間が参照される。具体的には、送受信アンテナ221が交流受信信号を受信して、その交流受信信号に含まれている検索IDコードと記憶IDコードとが一致した場合には、制御部2117のCPU2117aは、交流受信信号を受信じた時間を基準として予想充電時間が経過したタイミングで、発光ダイオード駆動ドライバ2116のゲート端子に放電指示信号を入力している。このように、コンデンサCaに充電されている充電電圧の値を監視しないで、予想充電時間のタイミングで発光ダイオード231を発光させてもよい。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(第3実施形態)
次に、本発明の無線タグの第3実施形態について説明する。図11は、本実施形態の無線タグ261の電気的構成を示したブロック図である。なお、第1、第2実施形態と同一の機能を有するものは同一の符号を付している。同図に示すように、無線タグ261は、第1、第2実施形態の無線タグ201〜209、251とは、電源2118が異なるのみで、他の構成については同じである。また、無線タグ261の使用方法、及び無線タグ261の動作も第1、第2実施形態と同じである。さらに、リーダ/ライタ10も第1、第2実施形態と同じものを用いる。なお、無線タグ261は書籍161に貼付されるものとする。以下、本実施形態の無線タグ261を第1、第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0077】
図12は、本実施形態の無線タグ261の電源2118の電気的構成を示したブロック図である。なお、第1、第2実施形態と同一の機能を有するものは同一の符号を付している。同図に示すように、電源2118は、N倍圧整流回路2115a、バイポーラトランジスタTr、ツェナダイオードDz、抵抗素子Rf、及び、コンデンサCaを有している。このように、N倍圧整流回路2115aとコンデンサCaは第1、第2実施形態と同様である。すなわち、電源2118は、送受信アンテナ221で受信した交流受信信号から得られる受信時交流電圧をN倍圧整流回路2115aにて徐々に昇圧して且つ整流して出力し、その出力電圧の一部をコンデンサCaにて充電する。ここで、第1、第2実施形態では、N倍圧整流回路2115aとコンデンサCaの間に抵抗素子Rlを接続していたが、本実施形態では、その抵抗素子Rlの代わりに、バイポーラトランジスタTr、逆方向に所定のツェナ電圧が印加されたときに電流が流れるツェナダイオードDz、及び、抵抗素子Rfから構成される回路が接続されている。
【0078】
バイポーラトランジスタTrは、NPNトランジスタであり、そのエミッタ端子にはN倍圧整流回路2115aの出力端子2115bが接続されており、コレクタ端子にはコンデンサCaが接続されており、ベース端子にはツェナダイオードDzのカソード端子が接続されている。また、ツェナダイオードDzのアノード端子には、抵抗素子Rfを介してグランドに接続されている。
【0079】
このような構成の電源2118において、送受信アンテナ221が交流受信信号60を受信すると、交流受信信号60から得られる受信時交流電圧がN倍圧整流回路2115aに入力されて、その受信時交流電圧が徐々に昇圧され且つ整流されていく。そして、N倍圧整流回路2115aの出力端子2115bの電位が徐々に増加されていくに伴って、バイポーラトランジスタTrのベース端子の電位も徐々に増加されていく。ところが、バイポーラトランジスタTrのベース端子の電位(ツェナダイオードDzのカソード端子の電位)とツェナダイオードDzのアノード端子の電位(グランド)との差(ツェナダイオードDzに印加される電圧)が上記ツェナ電圧に達するまでは、ツェナダイオードDzに電流が流れない。すなわち、バイポーラトランジスタTrのベース端子に電流が流れないので、バイポーラトランジスタTrのエミッタ−コレクタ間に電流は流れない。したがって、コンデンサCaには電圧が充電されない。
【0080】
その後、N倍圧整流回路2115aの出力端子2115bの電位が徐々に増加されていって、ツェナダイオードDzに印加される電圧がツェナ電圧に達したときには、ツェナダイオードDzに電流が流れる。すなわち、バイポーラトランジスタTrのベース端子に電流が流れるので、バイポーラトランジスタTrのエミッタ−コレクタ間に電流が流れるようになる。それに伴って、コンデンサCaに電圧が充電し始める。そして、N倍圧整流回路2115aの出力端子2115bの電位がさらに増加して、ツェナダイオードDzに印加される電圧がツェナ電圧より大きくなるにつれて、ツェナダイオードDzに多くの電流が流れる。すなわち、バイポーラトランジスタTrのベース端子に電流が多く流れる。その結果、トランジスタの電流増幅作用によって、バイポーラトランジスタTrのエミッタ−コレクタ間に急激に電流が流れるようになる。したがって、コンデンサCaに電圧が急激に充電されていく。
【0081】
図13は、コンデンサCaに充電される充電電圧の時間変化を説明するための図である。曲線3は、ツェナダイオードDzに印加される電圧の時間変化を示している。また、曲線4は、第1、第2実施形態のように、N倍圧整流回路2115aとコンデンサCaの間に抵抗素子Rlを接続したときの、コンデンサCaに充電される充電電圧の時間変化を示している。また、曲線5は、抵抗素子Rlの代わりに、N倍圧整流回路2115aとコンデンサCaの間、バイポーラトランジスタTr、ツェナダイオードDz、及び、抵抗素子Rfから構成される回路を接続したときの、コンデンサCaに充電される充電電圧の時間変化を示している。同図に示すように、曲線4は、時間とコンデンサCaに充電される充電電圧とがほぼ比例関係にある。一方、曲線5は、曲線3がツェナ電圧に達するまでは、ほぼゼロとなっており、曲線3がツェナ電圧を超えた時間以降は、コンデンサCaに充電される充電電圧が急激に変化している。そして、曲線5は、曲線4よりも早い時間で発光ダイオード231の駆動電圧に達している。すなわち、バイポーラトランジスタTrとツェナダイオードDzを用いることによって、抵抗素子Rlを用いたときよりも早く発光ダイオード231の駆動電圧をコンデンサCaに充電させることができる。
【0082】
なお、バイポーラトランジスタTr、ツェナダイオードDz、及び、抵抗素子Rfから構成される回路は、N倍圧整流回路2115aで昇圧され且つ整流された電圧の一部をコンデンサCaに伝達している。また、バイポーラトランジスタTrは、コレクタ側からエミッタ側に流れる電流は極めて少ないので、コンデンサCaに充電されている充電電圧が送受信アンテナ221側に放電されるのを抑制している。したがって、バイポーラトランジスタTr、ツェナダイオードDz、及び、抵抗素子Rfから構成される回路は、本発明の「伝達回路」に相当する。
【0083】
以上、本実施形態の無線タグでは、伝達回路として、バイポーラトランジスタTr、ツェナダイオードDz、及び、抵抗素子Rfから構成される回路を採用している。これにより、伝達回路に抵抗素子Rlを採用したときよりも、早く、発光ダイオード231の駆動電圧をコンデンサCaに充電させることができる。
【0084】
(第4実施形態)
上記第1〜第3実施形態では、無線タグ201〜209、251、261を書籍101〜109、151、161に貼付して、ユーザはリーダ/ライタ10を用いて、所望の書籍101〜109、151、161を検索するために無線タグ201〜209、251、261を使用していたが、本実施形態でが、検索の目的ではなく、位置把握の目的で無線タグを使用している。
【0085】
図14は、本実施形態の無線タグ271、リーダ/ライタ70及びサーバ80を備える無線タグシステムを説明するための図である。同図に示すように、リーダ/ライタ70は複数の地点に設置される。また、各リーダ/ライタ70は、サーバ80に有線で接続されている。一方、無線タグ271は、ユーザに所持されている。なお、リーダ/ライタ70の構成はリーダ/ライタ10と同じであるが、図示しない制御部が実行する処理は、制御部12が実行する処理と異なっている。また、無線タグ271の構成は、無線タグ201〜209と同じであるが、図示しない制御部が実行する処理は、制御部2111が実行する処理と異なっている。したがって、リーダ/ライタ70の構成、及び、無線タグ271の構成の説明を省略して、リーダ/ライタ70が実行する処理、無線タグ271が実行する処理、及びサーバ80が実行する処理について、簡単に説明する。
【0086】
各リーダ/ライタ70は、定期的に無線タグ271を呼び出すための交流送信信号51を外部に送信するようにする。一方、無線タグ271は、リーダ/ライタ70の近くにあるときには、交流送信信号51を交流受信信号61として受信し、その後、リーダ/ライタ70に記憶IDコードを送信する。そして、リーダ/ライタ70は、その記憶IDコードを受信して、サーバ80に送信する。サーバ80は、リーダ/ライタ70から送信されてきた記憶IDコードを、リーダ/ライタ70が設置されている地点に関する情報(名称、住所等)、及び現在の時刻に関連付けて記憶しておく。また、サーバ80には、無線タグ271を所持するユーザに関する情報(氏名、年齢、住所等)を無線タグ271に記憶されている記憶IDコードを関連付けて記憶されている。なお、図14では、A地点に無線タグ271を所持しているユーザが居る状態を示している。
【0087】
これにより、サーバ80は、どの人がいつどこに居たのかを、把握することができる。この際、無線タグ271は、リーダ/ライタ70によって記憶IDコードが読み出されたときに、自身に備えられている発光ダイオード231を発光させるようにする。これにより、無線タグ271を所持しているユーザは、リーダ/ライタ70によって、記憶IDコードが読み出されたことを把握することができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。例えば、上記第1〜第4実施形態では、充電電圧の値を監視することによって若しくは時間を計測することによって、充電電圧が発光ダイオード231の駆動電圧に達したタイミングで、充電電圧を放電して発光ダイオード231を発光させていた。しかし、充電電圧が発光ダイオード231の駆動電圧以上であるならば、どのタイミングで充電電圧を放電して発光ダイオード231を発光させてもよい。充電電圧の値が大きければ、それだけ長い時間、発光ダイオード231を発光させることができるので、ユーザは発光ダイオード231が発光しているのを把握し易くなる。
【0089】
また、上記第1〜第4実施形態では、本発明の「昇圧整流回路」として、N倍圧整流回路2115aを用いていたが、N倍圧整流回路2115aの代わりにスイッチングレギュレータを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】無線タグ201〜209の使用方法の一例を示した図である。
【図2】リーダ/ライタ10の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】無線タグ201の外観図である。
【図4】無線タグ201の電気的構成を示したブロック図である。
【図5】電源2115の電気的構成を示したブロック図である。
【図6】発光ダイオード231を基板241に設ける工程を説明するための図である。
【図7】リーダ/ライタ10の制御部12が実行するリーダ/ライタ制御処理を示したフローチャートである。
【図8】CPU2111aが実行する無線タグ制御処理を示したフローチャートである。
【図9】第2実施形態における無線タグ251の電気的構成を示したブロック図である。
【図10】CPU2117aが実行する無線タグ制御処理を示したフローチャートである。
【図11】第3実施形態における無線タグ261の電気的構成を示したブロック図である。
【図12】電源2118の電気的構成を示したブロック図である。
【図13】コンデンサCaに充電される充電電圧の時間変化を説明するための図である。
【図14】第4実施形態における、無線タグ271、リーダ/ライタ70及びサーバ80を備える無線タグシステムを説明するための図である。
【符号の説明】
【0091】
10、70・・・リーダ/ライタ
50、51・・・交流送信信号
60、61・・・交流受信信号
201〜209、251、261、271・・・無線タグ
221・・・送受信アンテナ(受信アンテナ)
231・・・発光ダイオード
2112・・・記憶部(IDコード記憶手段)
2115a・・・N倍圧整流回路(昇圧整流回路)
2111a、2117a・・・CPU
2116・・・発光ダイオード駆動ドライバ
Ca・・・コンデンサ(充電回路)
Rl・・・抵抗素子(伝達回路)
Tr・・・バイポーラトランジスタ
Dz・・・ツェナダイオード
Rf・・・抵抗素子
Tr・Dz・Rf・・・伝達回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流送信信号を外部に送信するリーダ/ライタとの間で無線通信を行う無線タグであって、
前記リーダ/ライタから送信された前記交流送信信号を交流受信信号として受信する受信アンテナと、
前記交流受信信号から得られる交流電圧を示す受信時交流電圧よりも大きい所定駆動電圧が順方向に印加されたときに発光する発光ダイオードと、
前記受信アンテナに接続され、前記受信アンテナが受信した前記交流受信信号から得られる前記受信時交流電圧が前記所定駆動電圧以上となるように、その受信時交流電圧を昇圧するとともに直流電圧に整流する昇圧整流回路と、
前記昇圧整流回路によって昇圧され且つ直流電圧に整流された昇圧整流電圧の少なくとも一部が充電される充電回路と、
前記充電回路と前記受信アンテナとの間に接続され、前記昇圧整流電圧が前記受信アンテナ側に放電されるのを抑制して、前記充電回路に充電される充電電圧が前記所定駆動電圧以上となるように、前記昇圧整流電圧を前記充電回路に伝達させる伝達回路と、
前記充電回路に充電されている充電電圧が前記発光ダイオードの順方向に印加されるように、その充電電圧を放電する充電電圧放電手段とを備えることを特徴とする無線タグ。
【請求項2】
前記交流送信信号には、ユーザが検索したい無線タグのIDコードを示す検索IDコードが含まれており、
前記無線タグは、
記憶IDコードを記憶するIDコード記憶手段と、
前記受信アンテナが受信した前記交流受信信号に含まれる前記検索IDコードと前記IDコード記憶手段に記憶されている前記記憶IDコードとが所定の関係を満たすか否かの照合可否判定をする照合可否判定手段とを有し、
前記充電電圧放電手段は、前記照合可否判定手段によって、照合否と判定された場合には、前記充電電圧の放電を中止することを特徴とする請求項1に記載の無線タグ。
【請求項3】
前記昇圧整流回路は、ダイオードとコンデンサとを用いて構成された、入力交流電圧を略2倍にして且つ直流電圧に整流して出力する倍圧整流回路を単数又は複数接続した回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグ。
【請求項4】
前記充電回路に、前記昇圧整流電圧が徐々に充電されていき、
前記充電電圧放電手段は、前記充電電圧が前記所定駆動電圧以上になった以降の、所定のタイミングで前記充電電圧を放電することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線タグ。
【請求項5】
前記充電電圧放電手段は、前記充電電圧の値を監視して、前記充電電圧の値が前記所定駆動電圧に達したタイミングで前記充電電圧を放電することを特徴とする請求項4に記載の無線タグ。
【請求項6】
前記受信アンテナが前記交流受信信号を受信した時間を基準として、前記充電電圧が前記所定駆動電圧になると予想される予想充電時間が予め定められており、
前記充電電圧放電手段は、前記予想充電時間のタイミングで前記充電電圧を放電することを特徴とする請求項4に記載の無線タグ。
【請求項7】
前記伝達回路が抵抗素子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の無線タグ。
【請求項8】
前記昇圧整流回路は、前記受信時交流電圧を徐々に昇圧し、
前記伝達回路は、両端に所定ツェナ電圧以上の電圧が印加されたときに導通するツェナダイオードと、前記昇圧整流回路と前記充電回路の間に接続され、電流の導通/遮断を制御するとともに入力電流を増幅するトランジスタとを有し、
前記昇圧整流回路によって徐々に昇圧された電圧が前記ツェナ電圧以上となったときに、前記トランジスタが導通するように、前記ツェナダイオードと前記トランジスタが接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の無線タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−2971(P2010−2971A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159029(P2008−159029)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】