説明

無線データ読取装置拡張モジュール、無線データ読取装置および無線データ管理システム

【課題】 ネットワークおよびサーバへの負荷が軽い無線データ読取装置拡張モジュール、無線データ読取装置および無線データ管理システムを提供する。
【解決手段】 無線データ管理システムは、定期的あるいは外部からの要求に応じて、複数のICタグから無線発信されるIDを同時に読取るリーダライタ110と、リーダライタ110とネットワーク130を介して接続しており、リーダライタ110の読取ったIDを管理するサーバ120とからなる。リーダライタ110は、複数のICタグから無線発信されるIDを同時に読取り、そのIDを格納する。そして、リーダライタ110は、格納したIDと前回読取ったIDとの差分を、ネットワーク130を介してサーバ120に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫の在庫管理システム、レンタルビデオの商品管理システム、図書館の蔵書管理システムなどにおける無線データ読取装置拡張モジュール、無線データ読取装置および無線データ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパッシブ型のICタグを用いたICタグシステムでは、リーダライタが、サーバからICタグの読取を指示されたタイミングもしくは定期的に、ICタグを起動する電波である起動コマンドを無線送信する。リーダライタの近傍に置かれたICタグは、起動コマンドを受けると、その応答として、自身のIDや内部情報を無線発信する。リーダライタから充分に離れたところに置かれたICタグは、起動コマンドを受信できないため、当然、応答の無線発信も行わない。すると、リーダライタは、ICタグの応答として読取れた全てのIDを、LANなどのネットワークを介して、サーバへ送信する。これらの情報を受け取ったサーバは、その内容をデータベースに格納しておき、受け取った情報とデータベースの内容を比較することで、特定のICタグひいては、ICタグが貼付された商品などが、リーダライタの近傍の棚などに追加されたことや、持ち出されるなどして、削除されたことを把握している。
リーダライタの従来技術としては、特許文献1に示すものが知られている。
【特許文献1】特開平11−149530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のリーダライタにあっては、読取った全てのICタグの情報を送信しているため、ICタグの数が多い場合には、例え、前回の読取タイミングとリーダライタの近傍に置かれているICタグの組合せに何も変化が無かったとしても、読取を行う度に大量のデータをLANなどのネットワークに流している。このため、図4のように、ネットワーク負荷はもちろんのこと、データベースを管理するサーバの負荷も重くなり、高速なネットワークおよび高性能なサーバが必要になるという問題がある。多数のリーダライタを用いているシステムでは、このような問題がさらに顕著になる。さらに、同一のネットワークを用いて他のシステムを運用している場合には、他システムの運用に影響を及ぼすこともある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ネットワークとサーバへの負荷を軽くする無線データ読取装置拡張モジュールおよび、ネットワークとサーバへの負荷が軽い無線データ読取装置と無線データ管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、定期的あるいは外部からの要求に応じて、複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る無線データ読取装置と、前記無線データ読取装置と通信路を介して接続しており、前記無線データ読取装置の読取ったデータを管理するサーバとからなる無線データ管理システムにおいて、無線データ読取装置は、複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る読取手段と、前記読取手段が同時に読取ったデータを格納する記憶手段と、前記読取手段が今回同時に読取ったデータと前記記憶手段に格納されている前回同時に読取ったデータとの差分を出力する差分出力手段と、前記差分出力手段の出力を、前記通信路を介して前記サーバに送信する送信手段とを具備することを特徴とする無線データ管理システムである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、定期的あるいは外部からの要求に応じて、複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る無線データ読取装置において、複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る読取手段と、前記読取手段が同時に読取ったデータを格納する記憶手段と、前記読取手段が今回同時に読取ったデータと前記記憶手段に格納されている前回同時に読取ったデータとの差分を出力する差分出力手段とを具備することを特徴とする無線データ読取装置である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、定期的あるいは外部からの要求に応じて、複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る無線データ読取装置に接続する無線データ読取装置拡張モジュールにおいて、前記無線データ読取装置が同時に読取ったデータを格納する記憶手段と、前記無線データ読取装置が今回同時に読取ったデータと前記記憶手段に格納されている前回同時に読取ったデータとの差分を無線データ読取装置に出力する差分出力手段と、を具備することを特徴とする無線データ読取装置拡張モジュールである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、無線データ読取装置が通信路を介してサーバへ送信するデータを、前回の読取り分との差分とすることで、無線データ読取装置が送信するデータ量を削減するので、通信路およびサーバの負荷を減らすことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態によるICタグシステムの構成を示す図である。図に示すように、本実施形態は、本来は多数のICタグを対象として動作可能なシステムだが、ここでは、説明を簡便にするために100〜105の6つのICタグを対象として説明する。ICタグ100〜105は、商品などに貼り付けるパッシブ型のICタグであり、各々異なるID(「100」〜「105」)を無線発信する。110は、定期的に起動コマンドを発信し、ICタグ100〜105がその応答として発信したIDを読取り、その内容と前回読取った内容との差分情報を出力するリーダライタであり、ICタグ100〜105との無線通信用のアンテナ111と、通信を制御するコントローラ112から構成される。120は、ICタグシステムのサーバであり、リーダライタ110からICタグ100〜105の追加・削除などの変化を受信し、ICタグの存在状況を管理する。121は、ICタグの存在状況を格納するデータベースである。130は、リーダライタ110とサーバ120を接続するネットワークである。140は、本ICタグシステムとネットワーク130を共用している他システムのサーバである。
次に、リーダライタ110の構成を示すブロック図である図2を用いて、リーダライタ110の構成を説明する。同図において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。200は、起動コマンドを送信して、全てのICタグの応答を受信し、それらのIDを出力する読取手段である。201は、読取手段200が出力したIDを格納する受信バッファである。202は、取り外し可能で、リーダライタ110に機能を追加する拡張モジュールであり、前回に読取ったICタグのIDを格納している前回バッファ203と、受信バッファ201と前回バッファ203の内容を比較し、追加されたIDおよび削除されたIDを検出し、IDの追加コマンドおよび削除コマンドの伝文を生成して出力する差分出力手段204からなる。205は、差分出力手段204から受けた伝文をネットワーク経由で、サーバ120に送信する送信手段である。
【0010】
次に、このICタグシステムの動作を説明する。仮にICタグ100〜105が貼付された商品のうち、ICタグ100を除くICタグ101〜105を貼付された商品のみが置かれている状態では、前回バッファ203に格納されているIDは、
「101」、「102」、「103」、「104」、「105」・・・(1)
であり、データベース121にも同様に、
「101」、「102」、「103」、「104」、「105」・・・(2)
が格納されている。ここで、新しくICタグ100が貼付された商品が持ち込まれ、ICタグ104と105が貼付された商品が持ち出されたとき、つまり、ICタグ100〜103を貼付された商品のみが存在する状態で、ICタグ読取のタイミングがきたとする。読取手段200は、アンテナ111を介して、全てのICタグに対する起動コマンドを送信する。ICタグ100〜103は、起動コマンドを受信すると、その応答として、各々のID「100」、「101」、「102」、「103」を送信する。ICタグ104および105は、商品とともに持ち出されているため、アンテナ111からの電波が届かず、起動コマンドを受信できないので、何も動作しない。これにより、読取手段200は、アンテナ111を介して、ICタグ100〜103からID「100」、「101」、「102」、「103」を受けて、これらの情報を受信バッファ201に格納する。ここで、受信バッファ201に格納されているIDは、
「100」、「101」、「102」、「103」・・・(3)
となる。
【0011】
一方、差分出力手段204は、受信バッファ201にIDが格納されると、受信バッファ201(上記(3))と前回バッファ203(上記(1))に格納されているIDを比較し、受信バッファ201のみに格納されているIDは追加されたと認識して、該IDを対象とする追加コマンドを生成し、前回バッファ203のみに格納されているIDは削除されたと認識して、該IDを対象とする削除コマンドを生成する。この場合、受信バッファ201のみに格納されているのは(1)と(3)より、ID「100」なので、差分出力手段204は、ID「100」の追加コマンドの伝文を生成して、送信手段205に出力し、さらに、前回バッファ203のみに格納されているのは(1)と(3)より、ID「104」および「105」なので、ID「104」および「105」の削除コマンドの伝文を生成して、送信手段205に出力する。それとともに、差分出力手段204は、次回のICタグ読取タイミングのために、受信バッファ201の内容を前回バッファ203に複写する(複写ではなく、自ら検出した差分を反映させてもよい)。これにより、前回バッファ203に格納されているIDは、
「100」、「101」、「102」、「103」・・・(4)
となる。送信手段205は、差分出力手段204から、ID「100」の追加コマンドの伝文と、ID「104」および「105」の削除コマンドの伝文を受けると、これらの伝文を、ネットワーク130を介して、サーバ120に送信する。サーバ120は、リーダライタ110の送信手段205からID「100」の追加コマンドと、ID「104」および「105」の削除コマンドを受けると、データベース121へのID「100」の追加と、ID「104」、「105」の削除を実施する。データベース121の内容は、上記(2)に「100」を追加し、「104」、「105」を削除すると
「100」、「101」、「102」、「103」・・・(5)
となり、データベース121の内容と、ICタグの存在状態が一致する。
【0012】
このようにして、リーダライタ110は、読取ったICタグのIDの、前回との差分のみをサーバ120に送信するため、ネットワーク130に流れるデータ量が少なくなり、ネットワーク負荷を軽くすることができる。これに伴い、同一のネットワーク上で稼動する他システムのサーバ140などに対する影響も小さくなる。また、サーバ120においては、処理するデータ量が少なくなる上に、従来は追加・削除の判断をするのに必要だった一般的に負荷の高い処理であるデータベースの検索処理を省くことができる。
ただし、ネットワーク130やサーバ120などに障害が発生した場合など、データベース121の内容と実世界の状態が一致しなくなってしまった場合のために、リーダライタ110は、サーバ120からの要求に応じて、前回バッファ203の内容を全て送信するなどの手段で、差分情報の出力だけではなく、全体の情報を出力する機能も持っているべきである。
【0013】
なお、本実施形態では、コントローラ112に接続されているアンテナ111は、一つであるとして説明したが、複数接続されてもよい。例えば、アンテナが二つ接続されている場合のリーダライタの構成を図3に示す。この場合、読取手段200a、差分出力手段204aおよび送信手段205は、アンテナごとに処理を行い、前回バッファ203aには、各アンテナ111aおよびbについて、読取ったIDがアンテナの識別と関連付けられて格納される。
ここで、アンテナ111aの識別を「1」、アンテナ111bの識別を「2」とすると、受信バッファ201aに格納される情報は、例えば、読取手段200aがアンテナ111aにてID「100」、「101」を読取ったところだとすると、
アンテナ識別「1」:ID「100」、「101」・・・(6)
という内容となる。さらにバッファ203aに格納されている情報は、
アンテナ識別「1」:ID「100」、「101」、「102」・・・(7)
アンテナ識別「2」:ID「105」、「106」・・・(8)
だとする。すると、差分出力手段204aは、(6)と(7)を比較し、アンテナ識別「1」におけるID「102」の削除コマンドの伝文を生成して、送信手段205に出力する。さらに、差分出力手段204aは、受信バッファ201aの内容を前回バッファ203aのアンテナ識別が同じところに複写するので、前回バッファ203aの内容は、アンテナ識別「2」についてのデータ(上記(8))は変更されず、
アンテナ識別「1」:ID「100」、「101」・・・(9)
アンテナ識別「2」:ID「105」、「106」・・・(10)
となる。
次に、読取手段200aは、アンテナ111bにて読取を行い、差分出力手段204aは、その結果を前回バッファ203aに格納されている上記(10)と比較し、コマンドの伝文を生成して、送信手段205に出力する。このようにして、コントローラにアンテナが複数接続されている場合は、アンテナごとに処理を行うことで、ICタグがアンテナ間で移動した場合でも、それを把握することができる。
【0014】
また、リーダライタ110は、自ら、定期的に起動コマンドを発しているとしたが、サーバ120あるいは他装置、操作者からの要求に応じて、起動コマンドを発するとしてもよい。
また、本実施形態では、読取手段200にて、全てのICタグからの応答を取得してから、差分出力手段204が動作するように説明したが、読取手段200が一つ応答を受信するたびに、受信バッファ201に格納し、差分出力手段204が動作するようにしてもよい。この場合、差分出力手段204は、受信バッファ201にIDが追加されるたびに、前回バッファ203に該IDの有無を確認し、無ければ、該IDの追加コマンドの伝文を生成して、送信手段205に出力する。読取手段200は、全てのICタグからの応答を取得し、該ICタグのIDを受信バッファ201に格納すると、それを差分出力手段204に通知する。差分出力手段204は、該IDに関する上述の処理を終わらせたあと、前回バッファ203に有って、受信バッファ201に無いIDを検索し、該当するIDの削除コマンドの伝文を生成して、送信手段205に出力する。
さらに、本実施形態では、リーダライタ110が起動コマンドを発し、これにICタグ100〜105が応答するパッシブ型のICタグシステムであるとして説明したが、アクティブ型のICタグシステムでもよい。
【0015】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態によるICタグシステムの構成を示す図である。
【図2】同実施形態におけるリーダライタの機能構成を示すブロック図である。
【図3】複数のアンテナを接続するリーダライタの機能構成を示すブロック図である。
【図4】従来のICタグシステムの課題を説明する図である。
【符号の説明】
【0017】
100…ICタグ
101…ICタグ
102…ICタグ
103…ICタグ
104…ICタグ
110…リーダライタ
111…アンテナ
111a…アンテナ
111b…アンテナ
112…コントローラ
112a…コントローラ
120…サーバ
121…データベース
130…ネットワーク
140…他システムのサーバ
200…読取手段
200a…読取手段
201…受信バッファ
201a…受信バッファ
202…拡張モジュール
202a…拡張モジュール
203…前回バッファ
203a…前回バッファ
204…差分出力手段
204a…差分出力手段
205…送信手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
定期的あるいは外部からの要求に応じて、複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る無線データ読取装置と、前記無線データ読取装置と通信路を介して接続しており、前記無線データ読取装置の読取ったデータを管理するサーバとからなる無線データ管理システムにおいて、
無線データ読取装置は、
複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る読取手段と、
前記読取手段が同時に読取ったデータを格納する記憶手段と、
前記読取手段が今回同時に読取ったデータと前記記憶手段に格納されている前回同時に読取ったデータとの差分を出力する差分出力手段と、
前記差分出力手段の出力を、前記通信路を介して前記サーバに送信する送信手段と
を具備することを特徴とする無線データ管理システム。
【請求項2】
定期的あるいは外部からの要求に応じて、複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る無線データ読取装置において、
複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る読取手段と、
前記読取手段が同時に読取ったデータを格納する記憶手段と、
前記読取手段が今回同時に読取ったデータと前記記憶手段に格納されている前回同時に読取ったデータとの差分を出力する差分出力手段と
を具備することを特徴とする無線データ読取装置。
【請求項3】
定期的あるいは外部からの要求に応じて、複数の発信源から無線発信されるデータを同時に読取る無線データ読取装置に接続する無線データ読取装置拡張モジュールにおいて、
前記無線データ読取装置が同時に読取ったデータを格納する記憶手段と、
前記無線データ読取装置が今回同時に読取ったデータと前記記憶手段に格納されている前回同時に読取ったデータとの差分を無線データ読取装置に出力する差分出力手段と、
を具備することを特徴とする無線データ読取装置拡張モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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