説明

無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置

【課題】ツリー型のマルチホップネットワークを構成する無線通信端末にメッセージをなるべく短時間に伝送することができる無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置を提供すること。
【解決手段】無線通信装置10bが、上位の無線通信装置10aからブロードキャストされた緊急メッセージを受信したとき、受信した緊急メッセージから自身が優先された無線通信装置であるか否かを判定し、自身が優先された無線通信装置である場合、下位の無線通信装置の中から優先する無線通信装置を選択し、選択された無線通信装置が優先であるとした旨を設定した緊急メッセージを直ちにブロードキャストし、無線通信装置10eが、上位の無線通信装置10aからブロードキャストされた緊急メッセージを受信したとき、自身が優先された無線通信装置でない場合、待機時間待ち合わせた後に緊急メッセージをブロードキャストする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置で構成されるマルチホップネットワークでブロードキャストを行う無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線を使用したネットワークの形態として、無線通信端末同士が直接接続してネットワークを構築するアドホックネットワークというものがあり、アドホックネットワークを利用した無線ネットワークシステムが盛んに開発されている。アドホックネットワークには、無線通信を使ったデータの転送が無線通信端末を中継することによって行われるマルチホップネットワークがある。
【0003】
メッシュ型のマルチホップネットワークにおいて、メッセージのブロードキャストを無線で行う際、メッシュ型であるからメッセージの転送経路がループしている場合があるため、メッセージが同じ経路を巡るブロードキャストストームが発生してしまうことがある。ブロードキャストストームが発生すると、メッセージ同士が衝突(混信)してメッセージが無線通信端末で受信できなくなる確率を高め、メッセージの伝送遅延を招く恐れがある。
【0004】
これに対し、無線によるツリー型のマルチホップネットワークでは、転送経路がループしないため、ブロードキャストストームは発生しない。それでもなお、1つの無線通信端末からブロードキャストされたメッセージを受信した複数の無線通信端末が、同時にメッセージのブロードキャストを行うと、メッセージ同士が衝突してメッセージが無線通信端末で受信できなくなることがある。このようなメッセージの衝突が発生する確率は無線通信端末の密度が高まると大きくなる。
【0005】
メッセージの衝突を回避するために、マルチホップネットワークを構成する無線通信端末それぞれがメッセージをブロードキャストするタイミングを見計らうタイミングスケジュールする方法がある。この方法では、緊急度の低いメッセージの伝送しかない伝送遅延が許容されるシステムであれば問題ないが、緊急性のあるメッセージを伝送したい場合には、無線通信端末にメッセージが伝送されるまで時間がかかってしまうため、有効な方法ではない。
【0006】
一方、従来のマルチホップネットワークでは、ブロードキャストの送信元の無線通信端末が、メッセージの衝突などでメッセージを送信先の無線通信端末で受信できていないことを検出した場合、メッセージを再伝送するものがある。
【0007】
例えば、アドホックネットワークを利用した従来の無線ネットワークシステムにおけるブロードキャスト方法では、データパケットが伝送されたか否かを確認するため、ブロードキャストの送信元の無線通信端末が、送信毎に更新されるシーケンス番号をデータパケットに設定し、そのデータパケットをブロードキャストし、データパケットを受信した送信先の無線通信端末が、データパケットに設定されたシーケンス番号をハローパケットに設定して送信元の無線通信端末に送信し、ハローパケットを受信した送信元の無線通信端末が、送信したときのシーケンス番号とハローパケットに設定されたシーケンス番号とを比較して一致しない場合、ブロードキャスト時にデータパケットが紛失されたものと判断してデータパケットを再伝送するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−274753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のブロードキャスト方法でも、メッセージの衝突などでメッセージを送信先の無線通信端末で受信できない場合があるため、無線通信端末の密度が高まるとメッセージを再伝送することになり、結果的にメッセージをブロードキャストする際に無線通信端末にメッセージが伝送されるまで時間がかかってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、ツリー型のマルチホップネットワークでブロードキャストする際に、メッセージをなるべく短時間に伝送することができる無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線ネットワークシステム通信方法は、複数の無線通信装置によって上位の該無線通信装置から下位の該無線通信装置に対してマルチホップ通信がなされるツリー型のマルチホップ無線ネットワークでブロードキャストする無線ネットワークシステム通信方法において、前記無線通信装置が、前記上位の無線通信装置からブロードキャストされたメッセージを受信したとき、受信したメッセージから自身が優先された無線通信装置であるか否かを判定する優先判定段階と、前記優先判定段階で、自身が優先された無線通信装置である場合、前記下位の無線通信装置の中から優先する無線通信装置を選択する優先選択段階と、前記優先選択段階で、選択された無線通信装置が優先であるとした旨を設定した前記メッセージを直ちにブロードキャストする段階と、前記優先判定段階で、自身が優先された無線通信装置でない場合、所定の待機時間が経過したときに前記メッセージをブロードキャストする段階と、を備えている。
この方法により、受信したメッセージから自身が優先された無線通信装置である場合、下位の無線通信装置の中から選択された無線通信装置が優先であるとした旨を設定したメッセージを直ちにブロードキャストし、一方、自身が優先された無線通信装置でない場合、所定の待機時間が経過したときにメッセージをブロードキャストすることで、優先された無線通信装置がブロードキャストするメッセージと衝突しないようにするため、優先されたツリーにおいてメッセージをなるべく短時間に伝送することができる。
【0012】
また、本発明の無線ネットワークシステム通信方法においては、前記待機時間が、メッセージ送信の所要時間の3倍の時間に、ランダムな時間を加算した時間である。
この方法により、待機時間がメッセージ送信の所要時間の3倍以上であるため、優先された無線通信装置が送信するメッセージと優先でない無線通信装置が送信するメッセージの衝突を防ぐとともに、ランダムな時間を加算した時間であるため、それぞれの優先でない無線通信装置がブロードキャストするタイミングを異なるようにして、他のブロードキャストするメッセージと衝突する可能性を低くすることができる。ブロードキャストするメッセージ同士が衝突しなければ、短時間にメッセージを伝送することができる。
【0013】
また、本発明の無線ネットワークシステム通信方法においては、前記優先選択段階で、それぞれの前記下位の前記無線通信装置の配下にいる前記無線通信装置の個数が最も多い前記下位の前記無線通信装置を、優先する無線通信装置として選択する。
この方法により、それぞれの下位の無線通信装置の配下にいる無線通信装置の個数が最も多い下位の無線通信装置を、優先する無線通信装置として選択するため、配下にいる無線通信装置の個数が最も多い下位の無線通信装置にメッセージを短時間に効率的に伝送することができる。
【0014】
また、本発明の無線ネットワークシステム通信方法は、前記無線通信装置が、受信したメッセージの送信元が自身の上位の前記無線通信装置であるか否かを判定する上位判定段階を備え、前記上位判定段階で、受信したメッセージの送信元が自身の上位の前記無線通信装置でない場合、受信したメッセージをブロードキャストしない。
この方法により、受信したメッセージの送信元が自身の上位の無線通信装置でない場合、受信したメッセージをブロードキャストしないため、ブロードキャストストームを防止することができる。
【0015】
本発明の無線通信装置は、複数の無線通信装置によって上位の該無線通信装置から下位の該無線通信装置に対してマルチホップ通信がなされるツリー型のマルチホップ無線ネットワークでブロードキャストする無線通信装置において、前記上位の無線通信装置からブロードキャストされたメッセージを受信したとき、受信したメッセージから自身が優先された無線通信装置であるか否かを判定する優先判定部と、前記優先判定部によって自身が優先された無線通信装置であると判定された場合、前記下位の無線通信装置の中から優先する無線通信装置を選択する優先選択部と、前記優先選択部によって選択された無線通信装置が優先であるとした旨を設定した前記メッセージを直ちにブロードキャストするブロードキャスト部とを備え、前記ブロードキャスト部は、前記優先判定部によって自身が優先された無線通信装置でないと判定された場合、所定の待機時間が経過したときに前記メッセージをブロードキャストする構成を備えている。
この構成により、受信したメッセージから自身が優先された無線通信装置である場合、下位の無線通信装置の中から選択された無線通信装置が優先であるとした旨を設定したメッセージを直ちにブロードキャストし、一方、自身が優先された無線通信装置でない場合、所定の待機時間が経過したときにメッセージをブロードキャストすることで、他のブロードキャストするメッセージと衝突しないようにするため、メッセージをなるべく短時間に伝送することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、メッセージをなるべく短時間に伝送することができる無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るマルチホップネットワークの構成図
【図2】本発明の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図
【図3】図1に示したマルチホップネットワークにおいて、緊急メッセージがブロードキャストされるときのシーケンス図
【図4】緊急メッセージを受信したときの無線通信装置の動作を表したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るマルチホップネットワークの構成図を示したものである。図1に示したツリー型のマルチホップネットワークは、制御装置6および複数の無線通信装置10によって構成されており、例えば、災害時などに緊急情報を所定の地域の住戸に伝達する無線ネットワークシステムとして使われる。制御装置6は、ツリー型のマルチホップネットワークのルートに相当するものである。
【0020】
また、制御装置6は、配下に無線通信装置10と無線で接続されており、例えば、周りに障害物が無いなど無線通信を行う上で好条件の場所に設置されている。無線通信装置10は、例えば、住戸毎や家屋毎に配備されている。
【0021】
以下の説明においては、無線通信装置10の個々を区別する場合は、無線通信装置10a〜無線通信装置10f、無線通信装置10x、無線通信装置10yと記載する。なお、図1において、8つの無線通信装置10が示されているが、本発明に係る無線通信装置の数を限定するものではない。本発明の実施の形態では、制御装置6および複数の無線通信装置10は、1つのチャネルで信号を送受信するものとする。
【0022】
図1に示したマルチホップネットワークを構成する制御装置6および無線通信装置10は、それぞれ上位下位の関係があり、例えば、制御装置6の下位は、無線通信装置10aおよび無線通信装置10xである。無線通信装置10aの下位は、無線通信装置10bおよび無線通信装置10eであり、無線通信装置10bの下位は、無線通信装置10cおよび無線通信装置10dである。無線通信装置10cの下位は、無線通信装置10yであり、無線通信装置10eの下位は、無線通信装置10fである。
【0023】
逆に、無線通信装置10fの上位は、無線通信装置10eであり、無線通信装置10yの上位は、無線通信装置10cである。無線通信装置10cおよび無線通信装置10dの上位は、無線通信装置10bであり、無線通信装置10bおよび無線通信装置10eの上位は、無線通信装置10aである。無線通信装置10aおよび無線通信装置10xの上位は、制御装置6である。
【0024】
本発明の実施の形態では、制御装置6は、例えば緊急事態が発生した場合などに1つの通信用チャネルで下位の無線通信装置10に緊急情報を含む緊急メッセージをブロードキャストすることで、配下の無線通信装置10に緊急情報が伝達されるようになっている。なお、図1の括弧内の数値は、制御装置6からのホップ数を表している。
【0025】
通信用のチャネルは、例えば、上述したように緊急メッセージを一斉に配信するなどの用途や、制御装置6が各無線通信装置10に関する情報の収集の用途や、各無線通信装置10が自身のホップ数や下位の無線通信装置10の配下個数を知るときなどの無線信号の送受信の用途で用いられる。配下個数は、下位の無線通信装置10の配下(下位以降)の全ての無線通信装置10の個数である。
【0026】
各無線通信装置10は、下位の無線通信装置10毎に対応した配下個数を認識している。図1では、制御装置6は、下位の無線通信装置10aに対応した配下個数が無線通信装置10a〜無線通信装置10fおよび無線通信装置10yの7つ、下位の無線通信装置10xに対応した配下個数が自身の1つであることを認識している。
【0027】
無線通信装置10aは、下位の無線通信装置10bに対応した配下個数が無線通信装置10b〜無線通信装置10dおよび無線通信装置10yの4つ、下位の無線通信装置10eに対応した配下個数が無線通信装置10eおよび無線通信装置10fの2つであることを認識している。
【0028】
無線通信装置10bは、下位の無線通信装置10cの配下個数が無線通信装置10cおよび無線通信装置10yの2つ、下位の無線通信装置10dの配下個数が自身の1つであることを認識している。
【0029】
無線通信装置10cは、下位の無線通信装置10yに対応した配下個数が自身の1つであることを認識しており、無線通信装置10eは、下位の無線通信装置10fに対応した配下個数が自身の1つであることを認識している。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図を示したものである。図2に示すように、無線通信装置10は、アンテナ20と、アンテナ20を介して高周波信号を送受信するRF(Radio Frequency)部21と、高周波信号と中間周波数信号とを相互に周波数変換する周波数変換部22と、中間周波数信号を処理して無線通信装置10の各部を後述するように機能させる信号処理部23と、信号処理部23によってデータが読み書きされるメモリ24と、災害を報知する外部装置や災害検知センサ等と無線または有線で通信するための通信インターフェイス(IF)25と、情報を表示する表示部26とを備えている。本発明の実施の形態では、本発明の優先判定部、優先選択部、およびブロードキャスト部を、信号処理部23として例示している。
【0031】
無線通信装置10のメモリ24には、上位下位の関係の下位の無線通信装置10の識別情報(ID)が予め登録されている。例えば、無線通信装置10bのメモリ24には、下位の無線通信装置10として無線通信装置10cのIDおよび無線通信装置10dのIDが登録され、上位の無線通信装置10として無線通信装置10aのIDが登録されている。
【0032】
また、メモリ24には、無線通信装置10自身のID、制御装置6からのホップ数、下位の無線通信装置10の配下個数、および使用チャネルの周波数などを含む個別装置情報が登録されている。
【0033】
配下個数は次のように登録される。例えば、制御装置6が、各無線通信装置10を監視するための監視信号を用いて、無線通信装置10の個別装置情報を収集するが、各無線通信装置10は、下位の無線通信装置10から受信した監視信号にある個別装置情報の数によって配下個数を求め、配下個数をメモリ24に登録する。なお、配下個数は、無線通信装置10の通信IF25に接続された入力機器からメモリ24に登録されてもよい。
【0034】
以下、図1に示したマルチホップネットワークにおいて、緊急メッセージがブロードキャストされるときの動作について図1および図3を参照しながら説明する。図3は、図1に示したマルチホップネットワークにおいて、緊急メッセージがブロードキャストされるときのシーケンス図である。
【0035】
まず、図1において、制御装置6は、緊急事態が発生した場合等において、自身の下位の無線通信装置10aおよび無線通信装置10xのうち、配下個数の多い無線通信装置10aを優先とし、優先が無線通信装置10aであるとした旨を設定した緊急メッセージをブロードキャストする。
【0036】
図3に示すように、無線通信装置10aは、制御装置6から緊急メッセージを受信すると、受信した緊急メッセージの内容を解析した結果、優先が自身の無線通信装置10aであることが判るため、直ちにブロードキャストする。このとき、無線通信装置10aは、自身の下位の無線通信装置10bおよび無線通信装置10eのうち、配下個数の多い無線通信装置10bを優先とし、優先が無線通信装置10bであるとした旨を設定した緊急メッセージをブロードキャストすると共に、受信した緊急メッセージに応じた処理を実行する。
【0037】
一方、図1において、無線通信装置10xは、制御装置6から緊急メッセージを受信すると、自身が下位の無線通信装置10をもたないため、ブロードキャストせずに受信した緊急メッセージに応じた処理を実行する。
【0038】
次に、図3に示すように、無線通信装置10bは、無線通信装置10aから緊急メッセージを受信すると、受信した緊急メッセージの内容を解析した結果、優先が自身の無線通信装置10bであることが判るため、直ちにブロードキャストすると共に、受信した緊急メッセージに応じた処理を実行する。このとき詳細には、無線通信装置10bは、自身の下位の無線通信装置10cおよび無線通信装置10dのうち、配下個数の多い無線通信装置10cを優先とし、優先が無線通信装置10cであるとした旨を設定した緊急メッセージをブロードキャストする。
【0039】
一方、無線通信装置10eは、無線通信装置10aから緊急メッセージを受信すると、受信した緊急メッセージに応じた処理を実行すると共に、受信した緊急メッセージの内容を解析した結果、自身が優先でないことが判るため、無線通信装置10bがブロードキャストする緊急メッセージと衝突しないように、後述する待機時間待ち合わせる。
【0040】
次に、無線通信装置10cは、無線通信装置10bから緊急メッセージを受信すると、受信した緊急メッセージの内容を解析した結果、優先が自身の無線通信装置10cであることが判るため、直ちにブロードキャストすると共に(図3には示していない)、受信した緊急メッセージに応じた処理を実行する。このとき詳細には、優先が指定された無線通信装置10cは、自身の下位の無線通信装置10が無線通信装置10yであるため、無線通信装置10yを優先とし、優先が無線通信装置10yであるとした旨を設定した緊急メッセージを直ちにブロードキャストする。
【0041】
図1において、無線通信装置10dおよび無線通信装置10yは、緊急メッセージを受信すると、自身が下位の無線通信装置10をもたないため、ブロードキャストせずに受信した緊急メッセージに応じた処理を実行する。
【0042】
一方、図3に示すように、無線通信装置10eは、後述する待機時間が経過すると、ブロードキャストするが、自身が優先でないため、特に優先の設定を行わずに緊急メッセージをブロードキャストする。
【0043】
図1において、無線通信装置10fは、緊急メッセージを受信すると、自身が下位の無線通信装置10をもたないため、ブロードキャストせずに受信した緊急メッセージに応じた処理を実行する。
【0044】
なお、制御装置6は、緊急メッセージをブロードキャストする場合、無線通信装置10間の電波状況が良好でない場合もあるため、所定時間間隔で所定回数繰り返して緊急メッセージをブロードキャストするようにしてもよい。
【0045】
図4は、緊急メッセージを受信したときの無線通信装置10の動作を表したフローチャートである。
【0046】
無線通信装置10の信号処理部23は、緊急メッセージが受信されたか否かを判定し(S1)、緊急メッセージを受信した場合、緊急メッセージが上位の無線通信装置10から受信されたものなのか否かを判定する(S2)。なお、無線通信装置10は、無線で緊急メッセージを送信するため、送信側の無線通信装置10と受信側の無線通信装置10との間が近距離であるなどの位置関係によっては、上位の無線通信装置10でなくても、緊急メッセージが受信されてしまう場合がある。
【0047】
本発明の実施の形態では、受信したメッセージの送信元が自身の上位の無線通信装置10でない場合、受信したメッセージを無線通信装置10がブロードキャストしないため、ブロードキャストストームを防止することができる。
【0048】
ステップS2で、信号処理部23は、受信された緊急メッセージが上位の無線通信装置10のものでない場合、ステップS7を実行する。
【0049】
ステップS2で、信号処理部23は、緊急メッセージが上位の無線通信装置10から受信された場合、下位の無線通信装置10があるか否かを判定し(S3)、下位の無線通信装置10を有していない場合、ステップS7を実行する。図1では、下位の無線通信装置10をもつ無線通信装置10は、無線通信装置10a、無線通信装置10b、無線通信装置10c、無線通信装置10eである。
【0050】
ステップS3で、信号処理部23は、下位の無線通信装置10がある場合、緊急メッセージの内容を解析して、自身が優先された無線通信装置10であるか否かを判定する(S4)。図1では、下位の無線通信装置10をもっており、自身が優先される無線通信装置10は、無線通信装置10a、無線通信装置10b、無線通信装置10cとなる。
【0051】
ステップS4で、自身が優先された無線通信装置10である場合、信号処理部23は、受信した緊急メッセージを引き継いでブロードキャストするが、このとき、自身が優先された無線通信装置10である場合、下位の無線通信装置10の中から優先する無線通信装置10を選択し(S5)、選択した無線通信装置10が優先であるとした旨を設定した緊急メッセージをブロードキャストする(S6)。なお、ステップS5では、下位の無線通信装置10が1つだけである場合、この1つの下位の無線通信装置10が優先に設定される。
【0052】
ステップS5において、具体例としては、複数の下位の無線通信装置10の中から配下個数の最も多い無線通信装置10が優先として選択される。仮に、配下個数が最も多い無線通信装置10が複数あった場合には、ホップ数の最も大きい無線通信装置10が配下にいるものが優先として選択されてもよく、また、無線通信装置10のIDの最も小さいものが優先として選択されてもよい。
【0053】
なお、ステップS5の別の具体例として、信号処理部23は、複数の下位の無線通信装置10の中からホップ数の最も大きい無線通信装置10が配下にいるものを優先として選択されてもよい。
【0054】
また、優先される無線通信装置10が複数あってもよい。優先される無線通信装置10が複数ある場合、例えば、信号処理部23は、下位の無線通信装置10がブロードキャストする期間をいくつかに分けて、ブロードキャストが早くなされる期間から順に第1優先、第2優先、第3優先のように配下個数が多いものから優先順位を無線通信装置10に対応付け、優先順位を設定した緊急メッセージをブロードキャストするようにしてもよい。無線通信装置10が優先順位を設定した緊急メッセージを受信した場合、優先順位に対応した期間のタイミングでブロードキャストする。
【0055】
ステップS6が実行された後、または、ステップS2およびS3で「no」であった場合、信号処理部23は、受信した緊急メッセージに応じた処理の実行を開始する(S7)。ステップS7において、具体例としては、緊急メッセージに含まれる緊急情報に対応した処理が行われ、信号処理部23は、例えば、緊急情報を表示部26に表示させたり、通信IF25を介して災害検知センサを発動させたり、緊急情報を音声で通知したりする。
【0056】
ステップS4で、自身が優先された無線通信装置10でない場合、信号処理部23は、受信した緊急メッセージに応じた処理の実行を開始する(S8)。ステップS8は、ステップS7と同様である。図1では、下位の無線通信装置10を有しかつ自己が優先でない無線通信装置10は、無線通信装置10eである。
【0057】
引き続き、信号処理部23は、緊急メッセージをブロードキャストするときの待機時間分、待ち合わせる(S9)。ステップS9において、待機時間は、具体例としては、他の無線通信装置10がブロードキャストする緊急メッセージと衝突する可能性を低くするための時間であり、優先であるとした旨を設定したメッセージとの衝突の可能性が無い時間、つまりメッセージの送信所要時間の3倍の時間に、ランダムな時間を加算した時間である。ブロードキャストするメッセージ同士の衝突回数が少なければ、短時間にメッセージを伝送することができる。
【0058】
待機時間についてより詳細に説明する。図1において、無線通信装置10dが、無線通信装置10e及び10yの無線通信範囲に含まれる場合、無線通信装置10eと無線通信装置10yが同時にメッセージ送信を行うと、無線通信装置10dにおいて衝突が発生してしまう。無線通信装置10eと無線通信装置10yのメッセージ送信が衝突しないようにするためには、無線通信装置10eの待機時間を、無線通信装置10yのメッセージ送信が完了する時間以上、つまりメッセージ送信の所要時間の3倍以上とすればよい。メッセージ送信の所要時間をtとし、ランダムな時間αとすれば、待機時間は、3t+αとなり、αとしては0〜2秒間などの範囲からランダムに選択される。
【0059】
ステップS9で待機時間が経過したとき、信号処理部23は、優先の設定を行わないで緊急メッセージをブロードキャストする(S10)。
【0060】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置は、受信したメッセージから自身が優先された無線通信装置である場合、下位の無線通信装置の中から選択された無線通信装置が優先であるとした旨を設定したメッセージを直ちにブロードキャストし、一方、自身が優先された無線通信装置でない場合、所定の待機時間が経過したときにメッセージをブロードキャストすることで、他のブロードキャストするメッセージと衝突しないようにするため、なるべく短時間にメッセージを伝送することができる。
【0061】
また、本発明の実施の形態に係る無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置は、それぞれの下位の無線通信装置の配下にいる無線通信装置の個数が最も多い下位の無線通信装置を、優先する無線通信装置として選択するため、配下にいる無線通信装置の個数が最も多い下位の無線通信装置にメッセージを短時間に効率的に伝送することができる。
【符号の説明】
【0062】
6 制御装置
10 無線通信装置
20 アンテナ
21 RF部
22 周波数変換部
23 信号処理部
24 メモリ
25 通信インターフェイス
26 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信装置(10)によって上位の該無線通信装置から下位の該無線通信装置に対してマルチホップ通信がなされるツリー型のマルチホップ無線ネットワークでブロードキャストする無線ネットワークシステム通信方法において、
前記無線通信装置が、前記上位の無線通信装置からブロードキャストされたメッセージを受信したとき、受信したメッセージから自身が優先された無線通信装置であるか否かを判定する優先判定段階と、
前記優先判定段階で、自身が優先された無線通信装置である場合、前記下位の無線通信装置の中から優先する無線通信装置を選択する優先選択段階と、
前記優先選択段階で、選択された無線通信装置が優先であるとした旨を設定した前記メッセージを直ちにブロードキャストする段階と、
前記優先判定段階で、自身が優先された無線通信装置でない場合、所定の待機時間が経過したときに前記メッセージをブロードキャストする段階と、
を備えたことを特徴とする無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項2】
前記待機時間は、メッセージ送信の所要時間の3倍の時間に、ランダムな時間を加算した時間であることを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項3】
前記優先選択段階で、それぞれの前記下位の前記無線通信装置の配下にいる前記無線通信装置の個数が最も多い前記下位の前記無線通信装置を、優先する無線通信装置として選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項4】
前記無線通信装置が、受信したメッセージの送信元が自身の上位の前記無線通信装置であるか否かを判定する上位判定段階を備え、
前記上位判定段階で、受信したメッセージの送信元が自身の上位の前記無線通信装置でない場合、受信したメッセージをブロードキャストしないことを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項5】
複数の無線通信装置(10)によって上位の該無線通信装置から下位の該無線通信装置に対してマルチホップ通信がなされるツリー型のマルチホップ無線ネットワークでブロードキャストする無線通信装置において、
前記上位の無線通信装置からブロードキャストされたメッセージを受信したとき、受信したメッセージから自身が優先された無線通信装置であるか否かを判定する優先判定部と、
前記優先判定部によって自身が優先された無線通信装置であると判定された場合、前記下位の無線通信装置の中から優先する無線通信装置を選択する優先選択部と、
前記優先選択部によって選択された無線通信装置が優先であるとした旨を設定した前記メッセージを直ちにブロードキャストするブロードキャスト部と、を備え、
前記ブロードキャスト部は、前記優先判定部によって自身が優先された無線通信装置でないと判定された場合、所定の待機時間が経過したときに前記メッセージをブロードキャストすることを特徴とする無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−226326(P2010−226326A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70276(P2009−70276)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(307030588)アンリツネットワークス株式会社 (8)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【Fターム(参考)】