説明

無線伝送システムにおけるログ情報収集、記録方法

【課題】ログ収集周期に関わらず、その収集期間内の受信電界強度の変動量を精度よく把握でき、A/D変換周期に関わらず、ログ情報量の増大を最小限に抑える事ができ、障害原因探査を効率的に行える監視装置の実現。
【解決手段】無線伝送システムの監視装置において、受信側装置で、少なくとも受信電界強度を表すログ情報を所定間隔で収集する際、当該ログ情報収集間隔内における受信電界強度情報の最大値および最小値を収集し、それらの値を当該ログ情報収集時点の受信電界強度のログとして記録するようにしたものである。また、少なくとも受信電界強度を表すログ情報を所定間隔で収集する際、あるログ情報収集時点から次のログ情報収集時点間の受信電界強度アナログ電圧値を、前記ログ情報収集間隔の数十分の1より短い周期でA/D変換し、当該ログ情報収集間隔内における受信電界強度情報の最大値、最小値をログとして出力、記録するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線伝送システムの監視装置に係り、特に、アラーム情報などのステータスデータの他に、受信電界強度情報などのテレメータデータを含むログを記録する無線伝送システムにおけるログ情報収集、記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放送局で用いられるデジタルSTL(Studio to Transmitter Link)では、障害発生時の現用機/予備機の切替制御を行う他、障害原因探査のためのログ情報を記録する監視制御板を有している。
ここで、デジタル放送機器の遠方監視制御装置の標準仕様が、全国デジタル送信設備検討会オレンジブックDTS400−001(非特許文献1)により規定されており、その中でアラーム情報の他に、テレメータデータを含むログを記録する機能がある。
デジタルSTL受信装置の監視制御板では、テレメータデータとして受信電界強度情報を記録する場合が多い。無線伝送においては、フェージングや降雨減衰などの回線変動によって障害が発生する場合があり、受信電界強度のログは原因調査における重要な情報である。
デジタルSTL受信装置での受信電界強度情報収集、記録システムの構成の一例を図3に示す。
受信変換器1では、アンテナ4から受信した信号を検波し、その受信電界強度を示す情報として、アナログ電圧値を監視制御板2へ出力する。
監視制御板2では、受信電界強度アナログ電圧値をA/D変換し、アラーム情報などの他のログと共に、一定間隔毎にLANなどを介してパソコン3へ出力する。パソコン3では、受信したログをハードディスクなどに保存する。
監視制御板2における受信電界強度情報処理タイミングチャートの一例を図2に示す。図2では、1秒間隔で受信電界強度情報を収集し、LANへ出力する例である。
監視制御板2は、1秒毎に収集した受信電界強度アナログ電圧値をA/D変換し、必要に応じてデシベル単位に変換した後、アラーム情報等と共にログをLANに出力する。
【非特許文献1】全国デジタル送信設備検討会オレンジブックDTS400−001
【特許文献1】特開2006−67047公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、情報を収集する時点での受信電界強度情報のみを扱うため、収集時点以外で起きた受信電界強度の変動は無視される。従って、収集時点以外で実際に受信電界強度変動による障害が起こっても、記録したログの情報ではその変動が捕らえられず、障害調査に支障をきたす場合がある。
この変動を精度よく捕らえようとする方法として収集間隔を短くすることが考えられるが、間隔を短くするに従ってログの情報量が増大する。その場合、パソコン3のハードディスクなどの容量限界によりログの保持期間が短くなり、頻繁にログを外部記録媒体に移し、ログの記録領域を空ける必要が出てくる。
特に、デジタルSTLなどの受信局は山頂部に設置されることが多く、パソコン3に保存されたログ情報を吸い上げるために受信局へ向かう頻度が増すと、非常に多くの労力を使うことになる。
本発明はこれらの欠点を除去し、ログ収集周期に関わらず、その収集期間内の受信電界強度の変動量を精度よく把握でき、また、A/D変換周期に関わらず、ログ情報量の増大を最小限に抑える事ができ、障害原因探査を効率的に行える監視装置の実現を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記目的を達成するために、無線伝送システムの監視装置において、受信側装置で、少なくとも受信電界強度を表すログ情報を所定間隔で収集する際、当該ログ情報収集間隔内における受信電界強度情報の最大値および最小値を収集し、それらの値を当該ログ情報収集時点の受信電界強度のログとして記録するようにしたものである。
また、無線伝送システムの監視装置において、受信側装置で、少なくとも受信電界強度を表すログ情報を所定間隔で収集する際、あるログ情報収集時点から次のログ情報収集時点間の受信電界強度アナログ電圧値を、前記ログ情報収集間隔の数十分の1より短い周期でA/D変換し、当該ログ情報収集間隔内における受信電界強度情報の最大値、最小値をログとして出力、記録するようにしたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ログ収集周期に関わらず、その収集期間内の受信電界強度の最大値、最小値を記録することでその変動量を精度よく把握でき、また、A/D変換周期に関わらず、ログ情報量の増大を最小限に抑える事ができることで、障害原因探査を効率的に行える監視装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の無線伝送システム、例えば、図3のデジタルSTL受信装置における受信電界強度情報収集、記録方法の一実施例について図1を用いて説明する。
図1は、デジタルSTL受信装置の監視制御板2における受信電界強度情報処理タイミングチャートの一例である。ここで、受信電界強度アナログ電圧のA/D変換は、例えば、0.01秒毎に行い、従来技術と同じく1秒間隔で受信電界強度情報を収集し、LANへ出力する例である。
前述のように、受信変換器1では、アンテナ4から受信した信号を検波し、その受信電界強度を示す情報として、アナログ電圧値を監視制御板2へ出力する。
監視制御板2では、受信電界強度アナログ電圧値をA/D変換し、アラーム情報などの他のログと共に、一定間隔毎にLANなどを介してパソコン3へ出力する。パソコン3では、受信したログをハードディスクなどに保存する。
本発明では、監視制御板2において、図1に示すように、例えば、1秒間隔で受信電界強度情報の収集を行う際、0.01秒毎に受信電界強度アナログ電圧値をA/D変換し、この1秒間隔内におけるA/D変換データの最大値及び最小値の2つの値を保持する。
即ち、まず、図1に示す、あるログ収集時点tの次のA/D変換タイミングのA/D変換データを最大値、最小値にセットする。
そして、この最大値、最小値は、それ以降のA/D変換タイミングのA/D変換データと比較し、更新を行う。この処理を次の収集時点tまで繰り返す。
そして、次の収集時点tになった時点でのA/D変換データの最大値、最小値を、必要に応じてデシベル単位に変換した後、アラーム情報などと共にログ情報をLANに出力する。
このように、ログ収集間隔に関わらず、短い周期でA/D変換を行い、そのログ収集間隔内のA/D変換データの最大値、最小値を得ることによって、受信電界強度の変動量を精度よく把握することが可能となる。
また、A/D変換周期に関わらず、ログ収集1回分の情報量増分は、受信電界強度情報1データ分に過ぎない。
また、他の実施例として、常に0.01秒毎にA/D変換、ログ出力を行い、パソコン3のソフトウェアにて受信電界強度情報の最大値、最小値を求め、1秒周期でログを保存する方法でも同様の効果が得られ、監視制御板2、パソコン3の処理負荷、および、LANのトラフィックとの兼ね合いで、その処理方法を選択すればよい。
なお、上記実施例は、1秒間隔で受信電界強度情報の収集を行い、0.01秒毎に受信電界強度アナログ電圧値をA/D変換する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ログ情報収集間隔の数分の1より短い周期でA/D変換し、当該ログ情報収集間隔内における受信電界強度情報の最大値、最小値をログとして出力、記録するものであれば良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の受信電界強度情報収集、記録方法の一実施例を示すタイミングチャート。
【図2】従来の受信電界強度情報収集、記録方法の一例を示すタイミングチャート。
【図3】STL受信装置の受信電界強度情報収集、記録システムの一例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0008】
1:受信変換器、2:監視制御板、3:パソコン、4:アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線伝送システムの監視装置において、
受信側装置で、少なくとも受信電界強度を表すログ情報を所定間隔で収集する際、
当該ログ情報収集間隔内における受信電界強度情報の最大値および最小値を収集し、それらの値を当該ログ情報収集時点の受信電界強度のログとして記録することを特徴とする無線伝送システムにおけるログ情報収集、記録方法。
【請求項2】
無線伝送システムの監視装置において、
受信側装置で、少なくとも受信電界強度を表すログ情報を所定間隔で収集する際、
あるログ情報収集時点から次のログ情報収集時点間の受信電界強度アナログ電圧値を、前記ログ情報収集間隔の数分の1より短い周期でA/D変換し、当該ログ情報収集間隔内における受信電界強度情報の最大値、最小値をログとして出力、記録することを特徴とする無線伝送システムにおけるログ情報収集、記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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