説明

無線印刷装置

【課題】バッテリ駆動の複数の情報端末機器から1つの印刷装置に文書等を印刷させる場合、最初の情報端末機器の文書を印刷実行中は、他の情報端末機器は待たされてしまい、印刷を実行する前にバッテリーが切れてしまう可能性がある。
【解決手段】バッテリー残量が少ない情報端末機器を優先的に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、PDA、ホストコンピュータ等から無線、有線ネットワークを介して印刷データを送信し、記録媒体に印刷する無線印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、PDA等に代表されるようなモバイル性を有する情報端末機器は年々小型化、多機能化が進行している。特に、携帯電話機(或はPHS)はその機能を多様化することによって、過去における電話機のイメージを一新し、情報端末機器として大幅に用途を拡大しつつある。即ち、携帯電話機は単なる音声通信に止まらず文字情報や画像情報の通信を取り込むことによって、これまでコンピュータを介して行われていた通信機能の多くをカバーできるようになってきた。携帯電話機が文字情報や画像情報を扱うようになると、必然的にそれらの情報を出力する手段が必要になってくる。インクジェット方式の記録装置は、比較的安価、且つ、小型でカラー印刷が可能なことから、モバイル機器の出力手段としても適したものであると考えられる。
【0003】
従来技術として、パーソナルコンピュータに接続した音声記録再生装置から録音したデータをパーソナルコンピュータへ転送しているときに、音声記録再生装置のバッテリ残量を検出し、バッテリ残量が所定値以下であるときにはパーソナルコンピュータの画面へ警告表示を行わせるものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−259293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、情報端末機器の小型化、モバイル化により情報端末機器のバッテリーが問題となる。情報端末機器から文字情報や画像情報を印刷装置に印刷する場合、印刷が完了するまではバッテリー切れを起こしてはならない。印刷途中でバッテリーが切れた場合、情報端末機器から送信されるデータも途切れるため印刷は途中で停止してしまう。又、複数の情報端末機器から1つの印刷装置を使用している環境において、他の情報端末機器から印刷実行中は待たされてしまい、印刷を実行する前にバッテリーが切れてしまう可能性がある。そのため、バッテリー残量が少ない情報端末機器を優先的に印刷する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
情報端末装置からデータを送受信して記録媒体に印刷する印刷装置において、
前記情報端末装置と無線通信、有線通信を介して前記データの送受信を行う、少なくとも1つ以上のインターフェース部と、前記データを格納するデータ格納部と、前記情報端末装置の状態を判断する状態判断部と、前記情報端末装置からの印刷要求を管理する印刷要求管理部と、複数の前記情報端末装置から前記印刷要求があった場合に、どの前記情報端末装置からの印刷要求を印刷するかを決定する印刷要求判断部と、前記データを印刷データに変換する印刷データ作成部と、前記印刷データを前記記録媒体に印刷する印刷部と、
を具備することを特徴とする印刷装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、複数の情報端末装置から印刷要求が発生した場合に、印刷要求を発行した情報端末装置のバッテリー残量を検知し、バッテリー残量がしきい値以下の情報端末装置がある場合は、その情報端末装置を優先して印刷を行う。又、全ての情報端末装置のバッテリー残量が閾値以上の場合は、印刷要求を受け付けた順番で印刷を行う。その結果、バッテリー残量が少ない情報端末装置のバッテリーが切れる前に印刷を完了することができ、バッテリー切れによる印刷停止、印刷失敗を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<実施の形態1>
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の実施の形態に係るプリンタ装置1000の外観斜視図である。このプリンタ装置は、有線、無線通信を介して情報端末装置からデータを受信して印刷する機能を備えている。
【0010】
図1において、本実施の形態に係るプリンタ装置(1000)の外殻を成す本体は、下ケース(1001)、上ケース(1002)、アクセスカバー(1003)及び排出トレイ(1004)の外装部材を有している。又、下ケース(1001)は、プリンタ装置(1000)の略下半部を、上ケース(1002)は本体の略上半部をそれぞれ形成しており、両ケースの組合せによって内部に後述の各機構を収納する収納空間を有する中空体構造を成し、その上面部及び前面部にはそれぞれ開口部が形成されている。
【0011】
更に、排出トレイ(1004)は、その一端部が下ケース(1001)に回転自在に保持され、その回転によって下ケース(1001)の前面部に形成される開口部を開閉させ得るようになっている。このため、記録動作を実行させる際には、排出トレイ(1004)を前面側へと回転させて開口部を開成させることにより、ここから記録シートが排出可能となると共に、排出された記録シートを順次積載し得るようになっている。又、排紙トレイ(1004)には、2枚の補助トレイ(1004a)、(1004b)が収納されており、必要に応じて各トレイを手前に引き出すことにより、用紙の支持面積を3段階に拡大、縮小させ得るようになっている。
【0012】
アクセスカバー(1003)は、その一端部が上ケース(1002)に回転自在に保持され、上面に形成される開口部を開閉し得るようになっており、このアクセスカバー(1003)を開くことによって本体内部に収納されている記録ヘッドカートリッジ(不図示)或はインクタンク(不図示)等の交換が可能となる。尚、ここでは特に図示しないが、アクセスカバー(1003)を開閉させると、その裏面に形成された突起がカバー開閉レバーを回転させるようになっており、そのレバーの回転位置をマイクロスイッチ等で検出することにより、アクセスカバーの開閉状態を検出し得るようになっている。
【0013】
又、上ケース(1002)の上面には、電源キー(1005)が押下可能に設けられている。1007は自動給送部で、記録シートを装置本体内へと自動的に給送する。1012は無線通信を行うための送受信部、背面には情報端末装置を接続するためのUSBバスコネクタ(不図示)、有線LAN(不図示)が装備されている。
【0014】
本発明に係る通常の一使用形態について、以下、図2を参照して具体的に説明する プリンタ装置にはIEEE802.11bとBluetooth等の無線LAN、無線通信の機能、更に、USB、IEEE1284、有線LAN等の有線通信機能が装備されており、複数の情報端末装置と有線、無線で接続され、各情報端末装置から印刷を実行することが可能である。しかしながら、同時に印刷を実行できるのは複数の情報端末装置のうち、最初に印刷要求をプリンタ装置に送信した情報端末装置のみである。
【0015】
例えば、複数の情報端末装置(情報端末装置A、情報端末装置B、情報端末装置C)と有線、無線通信を介してプリンタ装置が接続している場合、最初に情報端末装置Bからプリンタ装置に印刷要求を出し、プリンタ装置が印刷要求を許可して印刷を実行する。その後、情報端末装置C、情報端末装置Aの順番で印刷要求をプリンタ装置に出した場合、他の情報端末装置(情報端末装置A、情報端末装置C)は、情報端末装置Bの印刷処理が終了するまで印刷処理が待たされることとなる。情報端末装置Bの印刷処理が終了後、先に印刷要求を発行した情報端末装置Cの印刷要求が許可される。結局、情報端末装置Aは情報端末装置B、情報端末装置Cの印刷が完了するまで印刷を実行することができない。ここで、情報端末装置Aのバッテリー残量が少ない場合、情報端末装置Aからの印刷要求が実行される前、又は印刷を実行中にバッテリーが切れる可能性が高くなる。
【0016】
図3は本発明の実施の形態に係る情報端末装置から送信されるデータ構成の一例である。
【0017】
301は印刷要求データである。印刷要求データは印刷要求データを示す印刷要求タグ、印刷要求を発行した情報端末名称、情報端末装置のバッテリー残量から構成される。302から304は実際に印刷する印刷データである。
【0018】
図4は本発明の実施の形態に係るキューイングテーブルのフォーマットの一例を示す図である。
【0019】
401は印刷要求を受け取った順番を表すインデックスである。402は情報端末名称であり、印刷要求データに含まれる情報端末名称が格納される。403はバッテリー残量であり、印刷要求データに含まれるバッテリー残量が格納される。404は各情報端末装置との接続形態が格納される。
【0020】
図5は本キューイングテーブルの一例を示す図である。
【0021】
図5の501では、4つの情報端末装置からの印刷要求データが格納されており、印刷要求データを受信した順番は情報端末装置A、情報端末装置C、情報端末装置D、情報端末装置Bである。バッテリー残量は情報端末装置Aが20%、情報端末装置Cが100%、情報端末装置Dが80%、情報端末装置Bが40%である。プリンタ装置との接続形態は情報端末装置Aが無線LAN、情報端末装置CがUSB、情報端末装置Dが赤外線、情報端末装置Bが有線LANであることを表している。
【0022】
図5の502では、2つの情報端末装置からの印刷要求データが格納されており、印刷要求データを受信した順番は情報端末装置E、情報端末装置Fである。バッテリー残量は情報端末装置Eが70%、情報端末装置Fが60%である。プリンタ装置との接続形態は情報端末装置Eが無線LAN、情報端末装置FがUSBであることを表している。
【0023】
図6を用いて本実施例で印刷を行う際の処理を説明する。
【0024】
プリンタ装置は情報端末装置から印刷要求を受信すると、他の情報端末装置からの印刷要求による印刷実行状態かを判断する(601)。印刷実行状態を判断した結果、他の情報端末から印刷が実行されている場合は、キューイングテーブルに情報端末名称、バッテリー残量、インターフェースを格納する(602)。
【0025】
他の情報端末装置から印刷が実行されていない場合は、印刷要求を受理し(603)、情報端末装置からのデータ送信を許可する(604)。情報端末装置から送信されたデータを受信し(605)、印刷データを作成し(606)、記録媒体に印刷する(607)。印刷終了後、キューイングテーブルに印刷要求が格納されているかを判断し(608)、キューイングテーブルに印刷要求が格納されている場合は、格納されているバッテリー残量を閾値と比較して、閾値以下のバッテリー残量があるかどうかを判断する(609)。例えば、バッテリー残量の閾値を50%とした場合、図5の501のキューイングテーブルでは、情報端末装置Aのバッテリー残量が20%、情報端末装置Bのバッテリー残量が40%であるため、情報端末装置Aと情報端末装置Bが閾値以下に該当する。更に、情報端末装置Aのバッテリー残量の方が情報端末装置Bのバッテリー残量より少ないため、情報端末装置Aが印刷対象に選択される(610)。選択された情報端末装置Aの印刷要求データはキューイングテーブルから削除され(612)、印刷される(603〜607)。
【0026】
図5の502のキューイングテーブルでは、情報端末装置Eのバッテリー残量が70%、情報端末装置Fのバッテリー残量が60%であるため、閾値以下の情報端末装置が存在しない。そのため、印刷要求を先に受け取った情報端末装置Eが印刷対象に選択される(611)。選択された情報端末装置Eの印刷要求データはキューイングテーブルから削除され(612)、印刷される(603〜607)。
【0027】
図7は本発明の実施の形態に係る情報端末装置から送信される印刷中止要求のデータ構成の一例を示す図である。
【0028】
印刷中止要求データは印刷中止要求を示す印刷中止要求タグ、印刷中止要求を発行した情報端末名称から構成される。
【0029】
図8を用いて本実施の形態で印刷中止を行う際の処理を説明する。
【0030】
プリンタ装置は、情報端末装置から印刷中止要求を受信すると、印刷中止要求の情報端末名称を用いて情報端末装置の印刷要求を印刷実行状態かを判断する(801)。印刷実行状態を判断した結果、印刷実行状態であれば印刷を中止する(802)。又、他の情報端末装置から印刷が実行されている場合は、キューイングテーブルから情報端末名称、バッテリー残量、インターフェースを削除する(803)。
【0031】
このように本発明によると、情報端末装置からバッテリー残量を受信し、バッテリー残量の少ない情報端末装置を優先的に印刷することにより、バッテリー残量が少ない情報端末装置のバッテリーが切れる前に印刷を完了することができ、バッテリー切れによる印刷停止、印刷失敗を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るプリンタ装置の外観斜視図である。
【図2】本発明に係るプリンタ装置の使用形態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る情報端末装置から送信されるデータ構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るキューイングテーブルノフォーマットの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るキューイングテーブルの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における印刷処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る情報端末装置から送信される印刷中止要求のデータ構成の一例を示す図である。
【図8】本実施の形態で印刷中止を行う際の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1000 プリンタ装置
1001 下ケース
1003 上ケース
1004 排出トレイ
1005 電源キー
1007 自動給送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報端末装置とデータを送受信して記録媒体に印刷する印刷装置において、
前記情報端末装置と無線通信、有線通信を介して前記データの送受信を行う、少なくとも1つ以上のインターフェース部と、前記データを格納するデータ格納部と、前記情報端末装置の状態を判断する状態判断部と、前記情報端末装置からの印刷要求を管理する印刷要求管理部と、複数の前記情報端末装置から前記印刷要求があった場合に、どの前記情報端末装置からの印刷要求を印刷するかを決定する印刷要求判断部と、前記データを印刷データに変換する印刷データ作成部と、前記印刷データを前記記録媒体に印刷する印刷部とを具備することを特徴とする無線印刷装置。
【請求項2】
前記状態判断部が前記情報端末装置から送信される前記データに含まれる前記バッテリー残量を基に、前記情報端末装置の状態を判断することを特徴とする請求項1記載の無線情報処理装置。
【請求項3】
前記印刷装置が印刷中に、少なくとも1つ以上の前記情報端末装置から印刷要求を受信した場合には、前記印刷要求管理部が前記印刷要求をキューイングし、前記情報端末装置に対して前記データ送信を不許可とすることを特徴とする請求項1記載の無線印刷装置。
【請求項4】
前記印刷要求判断部がキューイングされた前記印刷要求の中から、前記記録媒体に印刷する前記印刷要求を決定し、決定された前記印刷要求に対応する前記情報端末装置に対して前記データ送信を許可することを特徴とする請求項1記載の無線印刷装置。
【請求項5】
前記印刷要求判断部が前記状態判断部の結果から、前記バッテリー残量が閾値以下の前記情報端末装置がある場合には、前記バッテリー残量が一番少ない前記情報端末装置からの前記印刷要求を優先的に選択し、前記バッテリー残量が閾値以下の前記情報端末装置がない場合には、前記印刷要求を受け取った順番で選択することを特徴とする請求項1記載の無線印刷装置。
【請求項6】
前記情報端末装置から印刷中止要求を受信した場合、前記情報端末装置からの前記印刷要求が選択され印刷が実行されている場合には印刷を中止し、前記印刷要求が選択されずにキューイングされている場合には、キューイングから削除することを特徴とする請求項1記載の無線印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−82240(P2006−82240A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266500(P2004−266500)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】