説明

無線受信装置

【課題】送信装置のメーカーと受信装置のメーカーとの間でのレベルダイヤの自動調整を行う手段を提供する。
【解決手段】無線送信装置のインターフェース(24)に基準信号発生装置(22)を接続し、テストモードの実行を行う。テストモード実行時は、無線受信装置10の受信信号レベル調整部13にて受信信号のレベルが調整される。レベル調整後の受信信号のレベルは受信信号レベル検出部14で検出され、受信信号レベル比較部15にて閾値との比較が行われる。比較結果に従い、受信信号レベル比較部15は受信信号レベル調整部13にフィードバックを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システムを構築する無線器の装置信号レベルダイヤの自動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
警察、消防などで用いられる業務用無線通信システムは、複数の所定の移動局間、または所定の移動局と制御局との間を接続する。
【0003】
従来は、これらの業務用無線通信システムに属する移動局、制御局は全て一のメーカーが納品することが多かった。しかし、調達価格の抑制等の要請から移動局及び制御局が異なるメーカーの製品で構成される機会も増えている。
【0004】
移動局は無線送信装置及び無線受信装置から構成される。無線送信装置は入力された音声データを所定のレベルに調整して出力する。出力された音声データは無線受信装置によって受信された後、無線受信装置内で定義された設定でレベル調整がなされる。
【0005】
従来の技術としては特開平3−285424号公報に記載されるようなものがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−285424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、無線送信装置及び無線受信装置のメーカーが同一であれば、送信側及び受信側で好適な調整がなされることが補償されているはずである。しかし、無線送信装置及び無線受信装置のメーカーが異なる場合には、必ずしも適した調整がなされている補償は無い。
【0008】
本発明の目的は、送信装置のメーカーと受信装置のメーカーとの間でのレベルダイヤの自動調整を行う手段を提供することにある。
【0009】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0011】
本発明の代表的な実施の形態に関わる無線受信装置は、動作形態にテストモード及び通常モードを持ち、レベル調整用変数を用いて入力信号の受信レベルを調整する受信信号レベル調整部と、受信信号レベル調整部からの出力レベルの測定結果をメモリ中の閾値と比較し比較結果に基づき受信信号レベル調整部の設定の変更を指示する受信信号レベル比較部と、を含み、受信信号レベル調整部はテストモード中にファクトリデフォルト値を読み出しレベル調整用変数に代入し、通常モード時にはユーザデフォルト値を読み出してレベル調整用変数に代入し、受信レベルを調整し、受信信号レベル比較部は、テストモード中に受信信号レベル調整部からの出力レベルの測定結果に基づき、受信信号レベル調整部に対してレベル調整用変数の値を変更する指示を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の代表的な実施の形態に関わる基準信号発生装置は、無線送信装置の外部接続用のインターフェースを介して該無線送信装置に接続され、受信側でレベルダイヤの調整を行うための基準信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に関わる無線受信装置などを用いる事で、送信装置と受信装置との間でのレベルダイヤの自動調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に関わる無線受信装置の構成例を表すブロック図である。
【図2】本発明に関わる無線送信装置の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。しかし、特に明示した場合を除き、それは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものでなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0016】
以下、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は本発明に関わる無線受信装置10の構成例を表すブロック図である。また、図2は本発明に関わる無線送信装置20の構成例を表すブロック図である。
【0018】
本実施の形態における無線受信装置10は、受信部11、受信信号復調部12、受信信号レベル調整部13、受信信号レベル検出部14、受信信号レベル比較部15、メモリ16、D/A変換部17、受信音声出力部18を含んで構成される。
【0019】
また無線送信装置20は、送信部21、基準信号発生装置22、送信データ生成部23、インターフェース24を含んで構成される。
【0020】
ここで、無線受信装置10と無線送信装置20が同一のメーカー製であれば、無線受信装置10の受信音声出力部18からの出力は一定になる。しかし、無線受信装置10と無線送信装置20が異なるメーカー製であれば、想定以上に大きくなったり、聞き取れないほど小さくなったりする場合も考えられる。
【0021】
このため、無線受信装置10と無線送信装置20との間のレベル調整を図ることが本発明の目的となる。
【0022】
無線受信装置10において、受信部11はアンテナANT1から受信される電波より、有意のアナログ信号を抽出するためのアナログ受信回路である。
【0023】
受信信号復調部12は、受信部11から受信されるアナログ受信信号の復号を行う受信モジュールである。具体的には受信部11の信号を受け取るインターフェース、アナログ・デジタル変換器、復号モジュールなどが含まれる。
【0024】
受信信号レベル調整部13は、受信した受信信号のレベルをレベル設定するための調整回路である。受信信号レベル調整部13は固定値である工場出荷時のデフォルト値(ファクトリデフォルト値)及び不揮発性の変数である使用時のデフォルト値(ユーザデフォルト値)の二つの値を持つ。
【0025】
受信信号レベル検出部14は、受信信号レベル調整部13でレベル設定された受信信号のレベル検出を行う検出回路である。
【0026】
受信信号レベル比較部15は、受信信号レベル検出部14が検出した受信信号のレベルと、メモリ16中に予め記録した閾値とを比較するコンパレータである。受信信号のレベルが閾値より小さい場合には、受信信号レベル調整部13の利得を上げる。また、受信信号のレベルが閾値より大きい場合には、受信信号レベル調整部13の利得を下げるよう受信信号レベル比較部15は動作する。
【0027】
D/A変換部17は、受信信号レベル検出部14のアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器である。
【0028】
受信音声出力部18は、D/A変換部17により変換されたデジタル信号から音声データを抽出し、操作者が聴取できるように出力するスピーカなどである。
【0029】
無線送信装置20はレベルダイヤの自動調整の対象となる送信器である。
【0030】
送信部21は伝送路符号化を行った後にアンテナANT2を介して出力を行う無線送信器である。本発明においては、送信データ生成部23に近い順に、増幅器、アナログ・デジタル変換器、DSP、変調器、パワーアンプの並びで構成されるのが一般的ではあるが、この構成に拘るものでもない。
【0031】
上述のメーカー間でのレベル変動はこの送信部21のレベルダイヤの考え方がメーカー毎に相違する点が原因となっている。
【0032】
基準信号発生装置22は、この無線送信装置20の基準信号を生成し、送信部21に出力するアナログ信号の基準信号生成回路である。本明細書では、基準信号発生装置22は1KHzのトーン信号を出力することを想定しているが、これに拘るものではない。基本的に基準信号は送信器の仕様に左右されるものであろう。
【0033】
送信データ生成部23は、無線送信装置20から無線受信装置10に送信するアナログの音声を入力するようなマイクなどである。
【0034】
インターフェース24は、基準信号発生装置22または送信データ生成部23を生成するためのコネクタ等の接続部である。既に述べたように、このインターフェース24はマイクなどの送信データ生成部23を接続することを想定した汎用的なものである。特に、異なるメーカーの無線受信装置と無線送信装置間のレベルダイヤの調整を想定したものであるため汎用的なものでなくてはならない。
【0035】
本発明は、無線システムの構築に関するものである。システム構築に際しては、運用モードとテストモードが存在する。上述するレベル調整はテストモードでの調整を想定するものである。このテストモード時にはインターフェース24に基準信号発生装置22を接続する。一方運用モード時にはインターフェース24に送信データ生成部23が接続される。
【0036】
次に、全体の動作について説明する。
【0037】
既述の通り、本発明の無線システムはテストモードと運用モードの二つのモードが存在する。まず、テストモードについての説明を行う。
【0038】
テストモード時には、インターフェース24に基準信号発生装置22を接続する。
【0039】
送信側は、基準信号発生装置22から基準信号を出力する。この出力された基準信号は送信部21内の増幅器、アナログ・デジタル変換器、DSP、変調器、パワーアンプを経由して、アンテナANT2より出力される。
【0040】
アンテナANT2から出力された基準信号は、アンテナANT1を経由して、無線受信装置10の受信部11に入力される。
【0041】
受信部11により受信された基準信号は、受信信号復調部12を経由して信号処理部A1中の受信信号レベル調整部13に入力される。
【0042】
工場出荷直後の無線受信装置10の受信信号レベル調整部13は工場出荷時のデフォルト値(ファクトリデフォルト値)が設定されている。このファクトリデフォルト値に従って、レベル調整が行われる。
【0043】
まずテストモードの開始時に、受信信号レベル調整用の変数xに固定値であるファクトリデフォルト値を代入する。この変数xは、現在の受信信号レベル調整に用いる値を表すものである。
【0044】
そして、この変数xに基づき受信信号レベル調整部13はレベル調整を開始する。
【0045】
この受信信号レベル調整部13によるレベル調整の結果を受信信号レベル検出部14が検出し、検出結果を受信信号レベル比較部15に出力する。なお、基準信号(トーン信号)を受信音声出力部18から出力することを希望する場合には、受信信号レベル検出部14はレベル調整後の基準信号をそのままD/A変換部17に出力する。
【0046】
受信信号レベル比較部15は、受信信号レベル検出部14の検出結果を受け取る。テストモード時には、受信信号レベル比較部15は事前にメモリ16から閾値を読み出しておく。この閾値と受信信号レベル検出部14の検出結果を対比する。
【0047】
この閾値は単一の物であっても良いし、上限と下限のように一定の範囲内に含まれるかを判定するものであっても良い。
【0048】
対比の結果、受信信号のレベルが閾値より小さい場合には、受信信号レベル調整部13の利得を上げる旨受信信号レベル比較部15は指示する。また、受信信号のレベルが閾値より大きい場合には、受信信号レベル調整部13の利得を下げるよう受信信号レベル比較部15は受信信号レベル調整部13に対して指示する。
【0049】
受信信号レベル調整部13は受信信号レベル比較部15の指示に従い変数xの値を加算もしくは減算する。これによりフィードバックループが形成される。
【0050】
上述の処理を反復することで、最終的には一定の範囲内に受信信号レベル調整部13の出力(=受信信号レベル検出部14の入力)が収まることとなる。この収束時の受信信号レベル調整部13の変数xの値を、受信信号レベル調整部13はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ内のユーザデフォルト値に記録する。
【0051】
上記によりテストモードの動作が完了する。
【0052】
次に通常モード時の動作について説明する。通常モードとは、これらの無線受信装置10及び無線送信装置20を音声通話用に用いる際のモード(=通常使用時のモード)である。したがって、無線送信装置20のインターフェース24には送信データ生成部23が接続される。
【0053】
上記テストモードによるレベル調整が終了し通常モードによる動作の開始または通常の電源投入時に、受信信号レベル調整部13は上記のユーザデフォルト値を変数xに代入する。そして、この変数xに基づき受信信号レベル調整部13はレベル調整を行う。
【0054】
基本的に通常モード時には、受信信号レベル検出部14によるレベル検出及び検出結果を受信信号レベル比較部15によるフィードバックは行わない。しかし、受信信号レベル検出部14によるレベル検出結果があまりにも想定されるレベルとかけ離れている場合に、受信信号レベル比較部15により受信信号レベル調整部13へのレベル調整を行わせる、またはテストモードの実施を操作者に促す等を行っても良い。
【0055】
本発明により実際の通話時に極端に大きい音声が受信音声出力部18から出力される、聞き取れないほどの小さな音声しか出力されないという事態を防止することが可能となる。
【0056】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【0057】
例えば、上記の説明では、受信信号レベル調整部13及び受信信号レベル比較部15はCPU等を含むものとして説明した。しかし、別個にCPUなどを持つ制御部を用意し、制御部が受信信号レベル調整部13及び受信信号レベル比較部15を一元的に制御するような構成を取っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、Peer to Peerの接続形態をとる無線システムでの適用を想定しているが、必ずしもこれに拘るものではない。1の基地局と複数の移動局などの接続トポロジの異なるものに適用することも本発明の射程に入る。
【0059】
また、複数のベンダにより無線器の納品がなされることを想定される公共交通機関向けの配車用無線システム、自治体などの防災無線システムなどへの適用も可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…無線受信装置、11…受信部、12…受信信号復調部、
13…受信信号レベル調整部、14…受信信号レベル検出部、
15…受信信号レベル比較部、16…メモリ、17…D/A変換部、
18…受信音声出力部、
20…無線送信装置、21…送信部、22…基準信号発生装置、
23…送信データ生成部、24…インターフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作形態にテストモード及び通常モードを持ち、
レベル調整用変数を用いて入力信号の受信レベルを調整する受信信号レベル調整部と、前記受信信号レベル調整部からの出力レベルの測定結果をメモリ中の閾値と比較し比較結果に基づき前記受信信号レベル調整部の設定の変更を指示する受信信号レベル比較部と、を含み、
前記受信信号レベル調整部は前記テストモード中にファクトリデフォルト値を読み出し前記レベル調整用変数に代入し、前記通常モード時にはユーザデフォルト値を読み出して前記レベル調整用変数に代入し、受信レベルを調整し、
前記受信信号レベル比較部は、前記テストモード中に前記受信信号レベル調整部からの出力レベルの測定結果に基づき、前記受信信号レベル調整部に対して前記レベル調整用変数の値を変更する指示を行う無線受信装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−175652(P2012−175652A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38655(P2011−38655)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】