説明

無線回路用回路基板及びそれを用いた無線通信装置

【課題】 形態電話機に代表される無線通信装置の無線回路用の基板の設計を共通化して、設計や製造のコストを削減すること。
【解決手段】 無線回路11,12と、これらの無線回路11,12をアンテナ15に接続制御するためのスイッチ14と、同軸ケーブル18を接続するためのコネクタ16とが実装された無線回路用回路基板6において、当該コネクタ16と当該スイッチ14の端子a〜dとの間の信号経路を断続すべくこの回路基板6に対して着脱自在なコンデンサ20〜22を設ける。この回路基板6を共通化部分として、無線回路を追加する時には、同軸ケーブル18に追加する無線回路を接続し、コンデンサ21と終端抵抗19を取外し、アンテナ実装態様を変更する場合には、同軸ケーブル18に変更するアンテナを接続し、コンデンサ22を取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線回路用回路基板及びそれを用いた無線通信装置に関し、特に携帯電話機などの移動通信端末に用いて好適な無線回路用回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機や簡易型携帯電話機(PHS)などに代表される移動通信端末が広く普及している。このような移動通信端末では、1台の端末で、異なる2つの周波数帯に対して対応可能な、いわゆるデュアルバンド仕様のものが開発され製品化されているが、今後は、3以上の異なる周波数帯に対しても対応可能なマルチバンド仕様の端末も出現することが予想される。なお、この様な複数のバンドに対応可能な移動通信端末の例として、特許文献1に開示のものがある。
【0003】
この様なマルチバンド対応の移動通信端末における無線部分の実装例を図7、図8に示す。先ず、図7を参照すると、回路基板1には、互いに異なる周波数帯に対応する無線回路11と無線回路12とが実装されており、また、これら無線回線11,12のいずれかをアンテナ5に接続するためのアンテナ切替スイッチ14が実装されている。更に、上記の無線回路11,12の周波数帯とは異なる周波数帯に対応する無線回路13に接続するための同軸コネクタ16も、基板1に実装されており、この同軸コネクタ16はアンテナ切替スイッチ14に接続されている。
【0004】
そして、無線回路13は他の回路基板2に実装されており、この基板12には、当該無線回路13に接続された同軸コネクタ17も実装されている。基板1と基板2とは、同軸コネクタ16及び17間の同軸ケーブル18により電気的に接続される構成となっている。この様な実装構造により、無線回路11,12及び13の1つが、アンテナ切替スイッチ14を切替制御することによって、アンテナ5に接続されることになって、それぞれ、異なる3つの周波数帯の通信が可能となるのである。
【0005】
次に、図8を参照すると、回路基板3には、互いに異なる周波数帯に対応する無線回路11と無線回路12とが実装されており、また、これら無線回路11,12のいずれかをアンテナ15に接続するためのアンテナ切替回路14が実装されている。更に、アンテナ15が実装された回路基板4に接続するための同軸コネクタ16が実装されており、また、アンテナ切替回路14の空き端子を終端する終端抵抗19も実装されている。
【0006】
そして、アンテナ15が実装された基板4には、アンテナ15に接続された同軸コネクタ17が実装されており、基板3と基板4とは、同軸コネクタ16及び17間の同軸ケーブル18により電気的に接続される構成となっている。この様な実装構造により、無線回路11及び12の1つが、アンテナ切替スイッチ14を切替制御することによって、アンテナ15に接続されることになって、互いに異なる2つの周波数帯の通信が可能となるのである。
【0007】
【特許文献1】特開2001−292073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した図7に示すような実装構造を有する移動通信端末と、図8に示すような実装構造を有する移動通信端末とを製造する必要がある場合、それぞれの実装構造を有する2種類の移動通信端末を、互いに独立して設計製造することが必要になる。すなわち、移動通信端末において、使用無線周波数帯が増加する場合(図7のように、無線回路11,12の他に、更に無線回路13が必要となる場合)や、アンテナの実装態様を変更する必要がある場合(図7のアンテナ5から図8のアンテナ15に変更する必要がある場合)には、それに対応して、図7の基板1や図8の基板3を、それぞれに独立に設計して製造することが必要になる。その結果、移動通信端末を作り直す度に、設計及び製造のためのコストがかかり、コスト増の大きな要因となっている。
【0009】
本発明の目的は、回路や基板設計を共通化可能として装置の製造コストの削減を図った無線回路用回路基板及びそれを用いた無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による回路基板は、無線回路と、前記無線回路をアンテナに接続制御するためのスイッチと、同軸ケーブルを接続するためのコネクタとが実装された無線回路用回路基板であって、前記コネクタと前記スイッチの端子との間の信号経路を断続すべく前記回路基板に対して着脱自在なコンデンサを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明による無線通信装置は、上記の回路基板を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用無線周波数の増加やアンテナ実装態様の変更などに対して、回路や基板設計をできるだけ共通化するようにして、装置の製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1〜図3は本発明の一実施例を示す回路図であり、図7,8と同等部分は同一符号により示している。図1は本発明の一実施例による無線回路の共通化部分を示し、図2は図1の共通化部分を用いた場合における無線周波数帯の増加例を示し、図3は同じくアンテナ実装態様の変更例を示すものである。
【0014】
図1を参照すると、本発明の一実施例による共通化部分は、回路基板6によって実現される。回路基板6には、無線回路11,12と、これら無線回路を択一的にアンテナ15(図2参照)へ接続するためのアンテナ切替スイッチ14と、外部の同軸ケーブル18が接続される同軸コネクタ16とが実装されている。アンテナ切替スイッチ14の端子bは無線回路11に接続され、またスイッチ14の端子cは無線回路12に接続されている。更に、スイッチ14の端子dは、基板6の接続端子28に接続され、端子aは基板6の接続端子24,26に接続されている。
【0015】
接続端子24と23との間には、基板6に対して着脱自在なコンデンサ20が接続されており、接続端子26と25との間には、同じく着脱自在なコンデンサ21が接続されている。接続端子28と27との間には、同じく着脱自在なコンデンサ22が接続されている。また、接続端子28とグランド間には、同じ着脱自在な終端抵抗19が接続されている。そして、接続端子25と27とは、同軸コネクタ16に接続されている。
【0016】
図1に示したこの共通化部分に対して、更に他の無線回路13を追加接続する必要がある場合には、図2に示す如く、追加無線回路13が実装された回路基板2の同軸コネクタ17に、同軸ケーブル18の一端を接続し、この同軸ケーブル18の他端を回路基板6の同軸コネクタ16へ接続するのである。そして、接続端子23にアンテナ5を接続し、コンデンサ21を回路基板6から取外すと共に、終端抵抗19をも取外す。
【0017】
こうすることによって、アンテナ切替スイッチ14の端子aにはアンテナ5が、端子b〜dの各々には無線回路11〜13がそれぞれ接続される。よって、アンテナ切替スイッチ14を切替制御することにより、無線回路11〜13が択一的にアンテナ5に接続され、所望とする無線周波数帯の通信が可能となる。
【0018】
図1に示した共通化部分に対して、アンテナ実装態様を変更する必要がある場合には、図3に示す如く、アンテナ15が実装された回路基板4の同軸コネクタ17に、同軸ケーブル18の一端を接続し、この同軸ケーブル18の他端を回路基板6の同軸コネクタ16へ接続するのである。そして、コンデンサ20及び22を回路基板6から取外す。
【0019】
こうすることにより、アンテナ切替スイッチ14の端子aにはアンテナ15が接続され、スイッチ14の端子b,cには無線回路11,12がそれぞれ接続される。そして、スイッチ14の端子dには終端抵抗19が接続される。よって、アンテナ切替スイッチ14を切替制御することによって、無線回路11,12が択一的に、回路基板4に実装されたアンテナ15に接続されることになるのである。
【0020】
次に、図4〜図6を用いて、本発明の他の実施例について説明する。なお、図4〜図6において、図1〜図3と同等部分は同一符号により示している。図4は本発明の他の実施例による共通化部分を示し、図5は図4の共通化部分を用いた場合における無線周波数帯の増加例を示し、図6は同じくアンテナ実装態様の変更例を示している。
【0021】
図4を参照すると、本発明の他の実施例による共通化部分は、回路基板8によって実現される。回路基板8には、無線回路11と、アンテナ切替スイッチ14と、外部の同軸ケーブル18及び38がそれぞれ接続される同軸コネクタ16及び36とが実装されている。アンテナ切替スイッチ14の端子bは無線回路11に接続され、スイッチ14の端子c及びdは、基板8の接続端子34及び28にそれぞれ接続されている。更に、スイッチ14の端子aは基板の接続端子24及び26に接続され、端子eは接続端子32に接続されている。
【0022】
接続端子24と23との間には、基板8に対して着脱自在なコンデンサ20が接続されており、接続端子26と25との間には、同じく着脱自在なコンデンサ21が接続されている。接続端子32と31との間には、同じく着脱自在なコンデンサ29が、また、接続端子34と33との間には、同じく着脱自在なコンデンサ30が、それぞれ接続されている。そして、接続端子28とグランド間、及び接続端子34とグランド間には、それぞれ終端抵抗19及び35が接続されている。また、接続端子25,27は同軸コネクタ16に接続され、接続端子31,33は同軸コネクタ36に接続されている。
【0023】
図4に示したこの共通化部分に対して、更に他の無線回路12及び13を追加接続する必要がある場合には、図5に示す如く、これら無線回路12,13が実装された回路基板9の同軸コネクタ17,37に、それぞれ同軸ケーブル18,38の各一端を接続し、これら同軸ケーブル18,38の各他端を回路基板8の同軸コネクタ16,36へそれぞれ接続するのである。そして、接続端子23にアンテナ15を接続し、コンデンサ21及び29を回路基板8から取外すと共に、終端抵抗19及び35をも取外す。
【0024】
こうすることによって、アンテナ15がアンテナ切替スイッチ14の端子aに接続され、スイッチ14の端子b,c,dには、それぞれ無線回路11,12,13が接続される。よって、アンテナ切替スイッチ14を切替制御することにより、無線回路11〜13が択一的に、アンテナ15に接続されることになる。
【0025】
図4に示した共通化部分に対して、アンテナ実装態様を変更する必要がある場合には、図6に示す如く、アンテナ15,39が実装された回路基板10の同軸コネクタ17,37に、同軸ケーブル18,38の各一端をそれぞれ接続し、これら同軸ケーブル18,38の各他端を回路基板8の同軸コネクタ16,36にそれぞれ接続する。そして、コンデンサ20,21,30を回路基板8から取外すのである。
【0026】
こうすることにより、アンテナ切替スイッチ14の端子aにはアンテナ15が接続され、また、端子eにはアンテナ39が接続される。更に、スイッチ14の端子bには無線回路11が接続される。なお、スイッチ14の端子c,dには終端抵抗35,19がそれぞれ接続されて終端される。よって、アンテナ切替スイッチ14を切替制御することにより、無線回路11のアンテナとして、アンテナ15かアンテナ39かを選択することが可能になる。
【0027】
以上述べたように、共通化部分の回路基板6や8の同軸コネクタ16や38に接続されている同軸ケーブル18や38を、他の無線回路に接続するか、他のアンテナに接続するか変更できるように、信号経路断続用のコンデンサと、スイッチ14の端子が開放状態になったときに当該端子を終端する終端抵抗とを設け、これらコンデンサや抵抗を回路基板に対して着脱自在に構成することにより、同一の回路基板6や8を用いて2通りの回路構成をとることができることになる。
【0028】
なお、上記の各実施例は、携帯電話機やPHSに代表される移動通信端末に適用可能であるが、それに限らず、広く一般の無線通信装置に適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例の回路構成を示す図である。
【図2】図1の回路を用いた一応用例を示す図である。
【図3】図1の回路を用いた他の応用例を示す図である。
【図4】本発明の他の実施例の回路構成を示す図である。
【図5】図4の回路を用いた一応用例を示す図である。
【図6】図4の回路を用いた他の応用例を示す図である。
【図7】本発明に関連する技術の一例を示す図である。
【図8】本発明に関連する技術の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
2,4,6,8 共通化部分(共通回路基板)
9,10 回路基板
11〜13 無線回路
14 アンテナ切替スイッチ
5,15,39 アンテナ
16,17,36,37 同軸コネクタ
18,38 同軸ケーブル
19,35 終端抵抗
20〜22,29,30 経路切替コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線回路と、前記無線回路をアンテナに接続制御するためのスイッチと、同軸ケーブルを接続するためのコネクタとが実装された無線回路用回路基板であって、
前記コネクタと前記スイッチの端子との間の信号経路を断続すべく前記回路基板に対して着脱自在なコンデンサを含むことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記スイッチの端子が開放状態になった場合に該端子を終端すべく前記回路基板に対して着脱自在な抵抗を、更に含むことを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記コネクタに接続された同軸ケーブルには、外部の他の無線回路が接続されることを特徴とする請求項1または2記載の回路基板。
【請求項4】
前記コネクタに接続された同軸ケーブルには、外部のアンテナが接続されることを特徴とする請求項1または2記載の回路基板。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の回路基板を含むことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
移動通信端末であることを特徴とする請求項5記載の無線通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate